(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】バイオマス処理システムの再構築方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/64 20060101AFI20230904BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230904BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
C10J3/64
B09B3/40
C10B53/02
(21)【出願番号】P 2021210403
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212058
【氏名又は名称】新和環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181940
【氏名又は名称】緒方 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】飯野 公夫
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200522(JP,A)
【文献】特開平11-323346(JP,A)
【文献】特開平07-008936(JP,A)
【文献】特開2015-165019(JP,A)
【文献】特開2004-035837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/02
C10J 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを炭化する炭化部と、前記炭化部で生じた炭化物に過熱蒸気を混合、熱分解して水性ガス化する熱分解部と、前記熱分解部に前記過熱蒸気を供給する過熱蒸気生成部と、を備えたバイオマス処理システムの再構築方法であって、
前記炭化部を、前記バイオマスを炭化し、生じた炭化物を前記熱分解部に供給する炭化物生成部と、前記炭化物生成部で生じた可燃性ガスを燃焼させ前記熱分解部に熱源の一部として供給する可燃性ガス燃焼部と、に分離することで前記炭化物生成部と前記可燃性ガス燃焼部を独立的に温度制御可能となるようにし、
前記熱分解部からの燃焼ガスと外部からの空気を熱交換する第1の熱交換部と、
前記熱交換によって得られた空気と前記可燃性ガス燃焼部で生じた燃焼ガスを熱交換する第2の熱交換部と、を設け、
前記第2の熱交換部で得られた空気を、前記バイオマス処理システム中の所望のパートに熱源の一部として供給可能となるように再構築す
るバイオマス処理システムの再構築方法。
【請求項2】
前記第2の熱交換部で熱交換された燃焼ガスを、前記熱分解部に熱源の一部として供給可能となるように、前記第2の熱交換部で得られた空気を、前記過熱蒸気生成部に熱源の一部として供給可能となるよう再構築する請求項
1に記載のバイオマス処理システムの再構築方法。
【請求項3】
前記第2の熱交換部から供給され、前記バイオマス処理システム中の所望のパートの熱源の一部とされた前記空気を、前記バイオマス処理システム中の別のパートに熱源の一部として供給可能となるよう再構築する請求項
1に記載のバイオマス処理システムの再構築方法。
【請求項4】
前記第2の熱交換部から供給され、前記過熱蒸気生成部で熱源の一部とされた前記空気を、前記炭化物生成部の熱源の一部として供給可能となるよう再構築する請求項
2に記載のバイオマス処理システムの再構築方法。
【請求項5】
前記第1の熱交換部で熱交換された燃焼ガスを、前記バイオマス処理システム中の所望のパートに熱源の一部として供給可能となるよう再構築する請求項
1~
4のいずれか1項に記載のバイオマス処理システムの再構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のバイオマス処理システムから安定的にバイオマスを炭化処理するシステムを再構築するバイオマス処理システムの再構築方法および再構築されたバイオマス処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスの利用について注目が高まっている。バイオマスとは、動植物等から生まれた生物資源の総称である。バイオマスは、発生源の観点から、林地残材や製材廃材等の木質系、建築廃材系、古紙等の製紙工場系、稲わらやトウモロコシ残渣等の農業残渣や家畜排泄物といった農業・家畜・水産系、食品加工廃棄物や水産加工残渣等の食品産業系、下水汚泥やし尿等の生活系等に分類される。
【0003】
これらの中で、木質系、建築廃材系のバイオマス(以下、木質系バイオマスという)の処理は、燃焼処理の際に熱エネルギーを取り出すサーマルリサイクルが一般的であった。そして、近年では、木質系バイオマスから取り出された水素による発電等も行われるようになってきた。
【0004】
ここで、燃焼処理に係る炭化炉として、具体的には、縦型自燃式炭化炉の燃焼ゾーンへ2次燃焼空気を供給するとともに、精錬ゾーンへ1次燃焼空気を供給して、装入した有機系廃棄物の一部を燃焼させ、その燃焼熱によって炭化させて炭を製造する縦型自燃式炭化炉の操業方法であって、燃焼ゾーン出口又はその後流側の位置の排ガス温度が800℃以上の設定温度になるよう2次燃焼空気量を制御することを特徴とする有機系廃棄物の縦型自燃式炭化炉の操業方法が挙げられる(特許文献1)。
【0005】
また、有機廃棄物を炭化炉で炭化して得た炭化物とガス化剤とを熱分解ガス化炉において前記炭化炉で発生した高熱の燃焼ガスによって加熱して熱分解ガスを発生させる熱分解ガス化装置であって、前記熱分解ガス化炉は、上下端部に開口部を備え下端部の開口部を前記炭化炉に接続される筒状の外筒と、下端部が開口され上端に熱分解ガス排出路を備え中間部乃至下端寄りに炭化物を供給する炭化物供給手段と連結される開口部とガス化剤を供給するガス化剤供給手段と連結される開口部を備え筒状に形成されて前記外筒内部に設けられてなる内筒と、前記内筒の下方に内筒下端部と間隙を開けて回転自在に配置されるターンテーブルと、該ターンテーブルの回転中心部に設けられ前記内筒の周壁と略等間隔に空隙をおいて内筒内部に配設される蓄熱性突起と、を備え、前記内筒と蓄熱性突起との空隙を炭化物のガス化領域として構成し、前記外筒と内筒の空隙には炭化炉で発生した燃焼ガスが導入され、該燃焼ガスによって内筒内部並びに前記蓄熱性突起が加熱されると共にその輻射熱によってガス化領域の炭化物が加熱されることよって温度分布がより安定化するように構成されることを特徴とする熱分解ガス化装置が挙げられる(特許文献2)。
【0006】
また、炭化処理と過熱蒸気による熱分解処理に係るシステムとして、木質系バイオマスを炭化する炭化炉と、前記炭化炉で得られた炭化物および燃焼ガスにより熱分解ガスを発生させる熱分解炉と、前記熱分解ガスを洗浄し得られた水性ガスを用いて電力を得る発電装置とを備え、前記炭化炉に供給する空気の供給量を制御する空気供給制御部を設け、前記空気の供給量により温度制御された燃焼ガスを熱分解炉に供給することを特徴とするバイオマス発電システムが挙げられる(特許文献3)。
【0007】
これらの特許文献に示される炭化炉は、炭化物の生成とともに、炭化の過程で生じた燃焼ガスから熱を得て、次工程に熱供給するものである。当該処理は、上下方向に貫通する装置の下部と上部で行われるものであるため、各部の熱が相互に影響してしまう。結果として、炭化物の収量は、安定しない。
【0008】
また、システムを流動するガス中に不純物が含まれ、これが、システム各部の目詰まりや腐食等の原因となる。例えば、炭化炉における炭化物生成過程で、不完全燃焼によって生じたススやタール、灰分、ダスト等の不純物(以下、「スス等」と言う。)が、高温化した燃焼ガスとともに次工程に送られ、熱分解炉に付着し、炉の目詰まりや腐食等を引き起こす。このように、バイオマス処理過程でシステム中に発生する不純物は、システムの不具合の原因となり、システムの性能を低下させる
【0009】
このように、従来のバイオマス炭化やバイオマス処理システムは、不安定な燃焼によって、不純物の発生や木質系バイオマスから得られる炭化物の品質のバラつきを生じさせる。そして、その炭化過程で生じたスス等の影響によって、システムの保守、安定的な稼働に係る労力が増大するという問題がある。このような炭化炉や炭化炉を含むシステムをベースに、これらの問題を解決する新たなシステムを再構築する方法を示す文献は見当たらない。成分要素中のケイ素と炭素との比率が所定範囲内に規制されている活性化石炭粒状材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-235133号公報
【文献】特開2013-185093号公報
【文献】特開2017-132969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、既存のバイオマス処理システムから、安定的にバイオマスを炭化処理するバイオマス処理システムに再構築するバイオマス処理システムの再構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、バイオマスを炭化する炭化部を備えたバイオマス処理システムの再構築方法であって、前記炭化部を、前記バイオマスを炭化する炭化物生成部と、前記炭化物生成部で生じた可燃性ガスを燃焼させ前記バイオマス処理システム中の所望のパートの熱源とする可燃性ガス燃焼部と、に分離することで前記炭化物生成部と前記可燃性ガス燃焼部を独立的に温度制御可能となるように再構築するバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第2の発明は、バイオマスを炭化する炭化部を備えたバイオマス処理システムの再構築方法であって、前記炭化部を、前記バイオマスを炭化する炭化物生成部と、前記炭化物生成部で生じた可燃性ガスを燃焼させ前記バイオマス処理システム中の所望のパートの熱源とする可燃性ガス燃焼部と、分離することで前記炭化物生成部と前記可燃性ガス燃焼部を独立的に温度制御可能となるようにし、前記炭化部で生じた炭化物に過熱蒸気を混合、熱分解して水性ガス化する熱分解部と、前記熱分解部に前記過熱蒸気を供給する過熱蒸気生成部と、を備えたバイオマス処理システムに再構築するバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第3の発明は、バイオマスを炭化する炭化部と、前記炭化部で生じた炭化物に過熱蒸気を混合、熱分解して水性ガス化する熱分解部と、前記熱分解部に前記過熱蒸気を供給する過熱蒸気生成部と、を備えたバイオマス処理システムの再構築方法であって、前記炭化部を、前記バイオマスを炭化し、生じた炭化物を前記熱分解部に供給する炭化物生成部と、前記炭化物生成部で生じた可燃性ガスを燃焼させ前記熱分解部に熱源の一部として供給する可燃性ガス燃焼部と、に分離することで前記炭化物生成部と前記可燃性ガス燃焼部を独立的に温度制御可能となるように再構築するバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第4の発明は、前記熱分解部からの燃焼ガスと外部からの空気を熱交換する第1の熱交換部と、前記熱交換によって得られた空気と前記可燃性ガス燃焼部で生じた燃焼ガスを熱交換する第2の熱交換部と、を設け、前記第2の熱交換部で得られた空気を、前記バイオマス処理システム中の所望のパートに熱源の一部として供給可能となるように再構築する第3の発明のバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第5の発明は、前記第2の熱交換部で熱交換された燃焼ガスを、前記熱分解部に熱源の一部として供給可能となるように、前記第2の熱交換部で得られた空気を、前記過熱蒸気生成部に熱源の一部として供給可能となるよう再構築する第4の発明のバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第6の発明は、前記第2の熱交換部から供給され、前記バイオマス処理システム中の所望のパートの熱源の一部とされた前記空気を、前記バイオマス処理システム中の別のパートに熱源の一部として供給可能となるよう再構築する第4の発明のバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第7の発明は、前記第2の熱交換部から供給され、前記過熱蒸気生成部で熱源の一部とされた前記空気を、前記炭化物生成部の熱源の一部として供給可能となるよう再構築する第5の発明のバイオマス処理システムの再構築方法である。また、第8の発明は、前記第1の熱交換部で熱交換された燃焼ガスを、前記バイオマス処理システム中の所望のパートに熱源の一部として供給可能となるよう再構築する第4~7のいずれかの発明のバイオマス処理システムの再構築方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、既存の炭化部が炭化物生成部と前記可燃性ガス燃焼部に分けられ独立的に温度制御可能なものに再構築(製造)されることで、炭化物の収量を安定化できるとともに、スス等の発生を抑制でき、さらに、可燃性ガス燃焼等に伴う熱を有効に利用できる効果が期待できる。また、本発明は、第1および第2の熱交換によって、回収熱の有効利用と同時に不純物がシステムを循環するのを防ぐことで、システムが安定稼働する効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】再構築された炭化物生成部と可燃性ガス燃焼部の概念の例である。
【
図4】再構築された炭化物生成部と可燃性ガス燃焼部の概念の例(従来システムをベースにした例)である。
【
図5】再構築されたシステムの第2の形態の概念図である。
【
図6】再構築に用いられる熱交換部の装置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
【0016】
<用語>
炭化部とは、バイオマスを燃焼し、炭化処理を行う機能を有するパートのことである(上記特許文献では、炭化炉が炭化部にあたる)。従来システムにおいて、炭化部は、炭化処理を行う機能と炭化処理の過程で生じた可燃性ガスの燃焼を行う機能が炭化炉内で一体的に行うものである。ここで、従来システムとは、本発明に係るシステムの再構築方法のベースとなるシステムの一類型である。本発明に係るシステムの再構築方法によって再構築されたシステムでは、炭化処理を行うのが炭化物生成部、可燃性ガスの燃焼を行うのが可燃性ガス燃焼部である。可燃性ガスの燃焼は、残存不純物の燃焼や所望の熱源利用等のために行われる。炭化物生成部と可燃性ガス燃焼部が独立的に温度制御可能とは、互いの熱的影響によって設定温度範囲から外れることなく、それぞれが個別に温度制御可能なことである。また、熱分解部とは、炭化部で得られた炭化物を高温蒸気(これを「過熱蒸気」という。過熱蒸気については後述。)と反応させ、炭化物を水素、二酸化炭素等に熱分解する機能を有するパートのことである。また、過熱蒸気生成部とは、水を蒸気化し、さらに上記熱分解に資する過熱蒸気にまで高温化する機能を有するパートのことである。また、本発明に係るシステムの熱交換部とは、異なる複数の流体の熱エネルギーを交換する機能を有するパートのことである。
【0017】
<従来システム>
図1は、熱分解処理機能を含む従来システムの概念図である。従来システムは、バイオマスを乾燥させる乾燥部10、乾燥部10から送られたバイオマスを燃焼によって炭化する炭化部20、炭化部20から送られた炭化物を過熱蒸気によって熱分解する熱分解部30、水から過熱蒸気を生成し、熱分解部30に送る過熱蒸気生成部40、が主な構成要素である。ここで示される従来システムは、後述の炭化物生成部と可燃性ガス燃焼部に機能が分離されていない炭化部を有するシステムである。このような炭化部や炭化部を含むシステムが、本発明に係るバイオマス処理システムの再構築対象である。
【0018】
図1に係るシステムでは、炭化部20等における燃焼ガスが、熱源として再利用される。すなわち、炭化部20における燃焼ガスは、熱分解部30に送られ、熱源の一部として利用される。また、熱分解部30における燃焼ガスは、過熱蒸気生成部40に送られ、熱源の一部として利用される。また、過熱蒸気生成部40における燃焼ガスは、乾燥部10に送られ、熱源の一部として利用される。
【0019】
当該システムにおいて生じたガス等は、適宜、回収、放出される。すなわち、乾燥部10において乾燥に使用された燃焼ガスは、大気に放出される。また、熱分解部30で生じた水性ガスから選別された水素ガスは、燃料用として回収、利用される。また、図では省略されているが、熱分解部30では残渣として炭が生じる。この炭は、回収され、各種用途に利用される。
【0020】
<本発明によって再構築されたシステムに用いられる技術>
図2は、本発明によって再構築されたシステム100の第1の形態の概念図である。本発明によって再構築されたシステムの熱分解部30、過熱蒸気生成部40は、特開2016-121256号公報、特開2017-132676号公報、特開2017-132969号公報等に記載された装置や方法、これらに準じた技術が用いられたものでもよい。また、本発明に係るバイオマス処理システムの再構築方法とは、従来システムの炭化部が、炭化物生成部20Aや可燃性ガス燃焼部20Bとして独立的に温度制御可能なものにされることであり、炭化物生成部20Aや可燃性ガス燃焼部20B、熱交換部30は、これらの文献に記載された炭化炉、炭化方法、熱交換器、熱交換方法を基本技術として、本発明の実現に必要な、所望の機能を有するように改良されたものでよい。例えば、炭化炉等の温度制御は上記文献中に記載された、燃焼のための供給空気量の調整に基づく手段が採用されたものでよいし、その他技術常識に基づくものでもよい。
【0021】
<本発明によって再構築されたシステムに供されるバイオマス>
本発明によって再構築されたシステム100に供されるバイオマスは、建築廃材由来の、大きさ50mm以下の木質チップである。ただし、本発明によって再構築されたシステムに用いられるバイオマスは、これに限定されるものではなく、間伐材や製材廃材等の発生起源や、広葉樹、針葉樹等の樹木等の種類は問わない。
【0022】
(実施例1)
本発明に係るバイオマス処理システムの再構築方法により再構築されたシステム100の第1の形態について、以下に説明する。
【0023】
本発明によるバイオマス処理システムの再構築方法の例として、上述の従来システムの炭化部20の、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bの2部構成化が挙げられる。当該方法によって再構築されたシステム100が、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bの2部構成であるのは、相互の熱的影響を小さくし、個別に温度制御を容易なものとするためである。
【0024】
具体的には、
図3に示されるように、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bに分離したものが挙げられる。
図3では、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bが分離されたことから、相互の熱的影響が軽減され、各部が温度制御手段によって所望の温度範囲内に制御が容易となる。
【0025】
炭化物生成部20Aでは、バイオマスが炭化され、その過程で生じた可燃性ガスは可燃性ガス燃焼部20Bに送られる(
図3では、燃焼手段、外気供給手段、炭化物の排出経路等は省略)。可燃性ガス燃焼部20Bでは、可燃性ガスが燃焼され、所望の温度範囲に調整された後に熱分解部に送られる。
【0026】
炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bは、機能的に独立し、互いの熱的影響は少なくなる。すなわち、独立的に温度制御が可能(炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bが個別に稼働した場合、同時に稼働した場合、のいずれにおいても同じ温度制御方法で所望の温度範囲内に制御可能)である。
【0027】
炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bは、従来システムをベースにしたものでもよい。具体的には、
図4に示されるように、従来システムの炭化炉の下段部と上段部の間に、可燃性ガスの流路を有する断熱材が設けられたものが挙げられる(
図4も
図3と同じく、燃焼手段、外気供給手段、炭化物の排出経路等は省略)。
【0028】
このように、本発明における炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bは、独立した処理部でもよいし、従来システムの炭化部において、炭化物燃焼機能と可燃性ガス燃焼機能の間に断熱機構が設けられたものでもよい。
【0029】
本発明によって再構築されたシステムの第1の形態によるバイオマスの処理について、以下に説明する。なお、バイオマスの含水率や炭化処理温度、可燃性ガス燃焼温度は、あくまで再構築されたシステムの一例であり、本発明によって再構築されたシステムは、これらに示された範囲に限定されるものではない。また、本発明に係るシステムは、
図2等の乾燥部のように、炭化物生成部、可燃性ガス燃焼部、熱分解部、過熱蒸気生成部以外のパートや
図2等に示されない機能を有するパートを含むものでもよい。
【0030】
まず、乾燥部10で15%以下の含水率にまで乾燥されたバイオマスが、炭化物生成部20Aに供給される。炭化物生成部20Aは、供給されたバイオマスを燃焼により炭化処理する。炭化処理は、滞留時間と温度によって制御され、炭化物生成部20Aの炭化処理温度は、平均で400~800℃、好ましくは、500~600℃である。バイオマスの炭化の過程では、炭化水素系の可燃性ガス等が発生する。
【0031】
炭化物生成部20Aで生成した炭化物は、熱分解部30に供給される。一方、可燃性ガス等は、可燃性ガス燃焼部20Bに供給される。可燃性ガス燃焼部20Bは、可燃性ガス等を燃焼させる。可燃性ガス燃焼部20Bの燃焼温度は、900~1300℃である。燃焼後のガスは、熱源の一部として熱分解部30に供給される。
【0032】
熱分解部30に供給された炭化物は、過熱蒸気生成部40から供給された過熱蒸気と反応(水性ガス化反応)する。ここで、過熱蒸気生成部40で生成した過熱蒸気の温度は800℃前後であり、熱分解部30における水性ガス化反応は、900~1200℃である。水性ガス化反応は、炭化物(C)が、水(H2O)と反応し、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)等を生成する反応である。
【0033】
また、可燃性ガス燃焼部20Bからの燃焼ガスは、熱分解部30の熱源の一部として利用される。さらに、熱分解部30で熱源の一部として利用された燃焼ガスは、過熱蒸気生成部40に供給され、過熱蒸気生成部40の熱源の一部として利用される。過熱蒸気生成部40で熱源の一部として利用された燃焼ガスは、乾燥部10に供給され、バイオマスの乾燥に利用された後、大気に放出される。なお、乾燥処理が不要な場合、燃焼ガスは、過熱蒸気生成部40から大気に放出されるものでよいし、所望のパートに熱源の一部として供給されるものでもよい。
【0034】
(実施例2)
本発明に係るバイオマス処理システムの再構築方法及び再構築されたシステム100の第2の形態について、以下に説明する。
【0035】
図5は、本発明によって再構築されたシステム100の第2の形態の一例の概念図である。上述の第1の形態と同様に、従来システムの炭化部20が、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bの2部構成にされている。さらに、第2の形態は、熱分解部30からの燃焼ガスと外部からの空気を熱交換する第1の熱交換部50、第1の熱交換部50で熱交換された空気と可燃性ガス燃焼部20Bで生じた燃焼ガスを熱交換する第2の熱交換部60が設置されている。これらの熱交換部の目的は、不純物を含む燃焼ガスと清浄な空気を熱交換し、所望のパートに、熱源の一部として供給することである。従って、これらの熱交換部で熱交換され、高温化した空気は、(
図5では、過熱蒸気生成部40に供給されているが、)
図5に記載されたシステム中の所望のパート、又は、
図5に記載のない所望のパートに供給されるものでよい。
【0036】
図5に記載のシステムについて、以下に説明する。乾燥部10、炭化物生成部20A、可燃性ガス燃焼部20B、熱分解部30、過熱蒸気生成部40それぞれの役割、機能は、上述の第1の形態と同じである。
図5に記載のシステムが
図2に記載のシステムと相違する点は、第1の熱交換部50、第2の熱交換部60を介した燃焼ガス、空気の流れである。
図6は、第1の熱交換部50と第2の熱交換部60に用いられる熱交換装置の一例である。この熱交換装置は、管の二重構造となっており、内部の流路を通過する流体とその周囲部の流路を通過する流体が熱交換するものである。ただし、熱交換方式は、これに限定されず、どのような形態の熱交換でもよい。
【0037】
第1の熱交換部50は、熱分解部30からの燃焼ガスと清浄な外部空気を熱交換する。第2の熱交換部60は、第1の熱交換部50における熱交換によって高温化した空気と可燃性ガス燃焼部20Bからの燃焼ガスを熱交換する。これらの熱交換によって得られた空気(第2の熱交換部の熱交換によって得られた空気)は、清浄な高温空気であり、バイオマス処理システム100の所望のパートに、熱源の一部として利用可能なものとなる。
【0038】
図5では、第2の熱交換部60において熱交換された空気は、過熱蒸気生成部40に熱源の一部として供給される。当該空気の温度は、600℃前後である。過熱蒸気生成部40の熱源の一部として利用された後、当該空気は、炭化物生成部20Aに熱源の一部として供給される。当該空気の温度は、200~300℃である。このように、清浄な空気が過熱蒸気生成部40、炭化物生成部20Aに供給される。
【0039】
第2の熱交換部60において熱交換された燃焼ガスは、熱分解部30に熱源の一部として供給される。従来システムにおいて、炭化部20から熱分解部30に熱源の一部として供給される燃焼ガスは、所望の温度よりも高温となることもあり、その場合、外部空気で希釈して温度を下げる必要があった。そのため、第2の熱交換部60は、従来システムにおける燃焼ガスの低温化の役割も担うこともできる。また、第1の熱交換部50において熱交換された燃焼ガスは、乾燥用として乾燥部10に送られ、その後、大気に放出される。
【0040】
このように、
図5に記載のシステムでは、第1の熱交換部50を出発点として、清浄な空気が、第2の熱交換部60、過熱蒸気生成部40、炭化物生成部20Aへと供給され、その後、燃焼ガスと混じり、可燃性ガス燃焼部20B、第2の熱交換部60、熱分解部30、第1の熱交換部50、乾燥部10へと供給され、大気放出される。すなわち、
図5に示されるシステムは、空気、燃焼ガスが循環を繰り返すものではなく、清浄空気をワンパス利用するものである。
【0041】
(実施例3)
本発明に係るバイオマス処理システムの再構築方法及び再構築されたシステム100の考察について、以下に説明する。
【0042】
まず、第1の形態は、従来の炭化部20が、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bに分けられ、熱的に分離、独立的にされたものである。すなわち、炭化物生成部20Aが、供給されるバイオマスの種類、質、量等に応じて、従来システムよりも高温又は低温に設定された場合でも、可燃性ガス燃焼部20Bにおいて、次工程の熱源として燃焼ガスを所望の温度に調整可能となった。
【0043】
例えば、従来システムでは、バイオマスが通常よりも低温で炭化処理される場合、この炭化処理過程で生じた燃焼ガスも低温となるため、燃焼ガスは、炭化炉の後段で高温処理される必要があった。しかしながら、炭化炉の後段が高温になると、炭化炉の前段もその影響を受けて高温になり、炭化物の収量や品質等に影響を与えてしまう。第1の形態では、炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bは、互いの熱的な影響が少ないため、それぞれ所望の温度に制御可能である。従って、第1の形態は、炭化物の収量、品質を確保でき、また、不完全燃焼によるスス等の発生を抑制できる。
【0044】
炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bの互いの熱的影響を少なくするための方法としては、十分な距離がとられること、それぞれの間に断熱材が設けられること等が挙げられる。ただし、当該方法はこれらに限定されるものではない。炭化物生成部20Aと可燃性ガス燃焼部20Bの間の燃焼ガス流路が十分に取られ、当該流路が温度制御機能を備えたものでもよい。また、流路が、冷却用流路、加熱用流路等、複数あり、選択可能なものであってもよい。
【0045】
炭化物生成部20Aから可燃性ガス燃焼部20Bへの燃焼ガスに含まれる飛散物(スス等に係る灰分やダスト)は、当該燃焼ガス流路上に設けられたサイクロン捕集装置によって、除去されるものでもよい。例えば、
図3に記載の炭化物生成部20Aから可燃性ガス燃焼部20Bへの流路へのフィルタ設置が挙げられる。これにより、炭化物生成部20Aで発生したスス等の大部分が除去される。さらに、当該流路は、着脱可能とされることで、本発明に係るシステム100のメンテナンスが軽減されることが示唆される。
【0046】
第2の形態は、第1の熱交換部50と第2の熱交換部60を介し、不純物を含む燃焼ガスを清浄な高温空気とすることで、不純物によるシステム各所の目詰まりや腐食等を抑える構成にされるものである。熱分解部30からの燃焼ガスを利用する第1の熱交換部50と、可燃性ガス燃焼部20Bからの燃焼ガスを利用する第2の熱交換部60とによって、清浄な高温空気が得られる。
【0047】
図5では、この高温空気が過熱蒸気生成部40に供給されているが、これは、過熱蒸気生成部40に用いられる高温化手段(例えば、伝熱管)が不純物から最も保護されるべきものだからである。特に、建築廃材は、塩素系の成分を含むため、高温化環境において、当該成分が伝熱管等の金属系素材等を腐食させる。そのため、熱交換によって生成された清浄な高温空気が利用されることで、金属系素材等の腐食等を防止し、システムが安定的に稼働することが示唆される。
【0048】
ただし、清浄な高温空気の供給先としては、過熱蒸気生成部40に限らず、システムの所望のパート又はシステム外であってもよい。例えば、高温空気の供給先は、熱分解部30に供給されるものでもよいし、所望の供給先とつながる複数の流路が選択的に切り替えられ、状況に応じて所望のパートに供給されるものでもよい。また、高温空気は、外部に放出される等、必要に応じて所望のパートへの供給が止められるものでもよい。
【0049】
また、可燃性ガス燃焼部20Bから熱交換部30までの所定の燃焼ガス流路中に、不純物除去機構が設けられても良い。不純物除去方法としては、例えば、粒子状不純物はサイクロン等の捕集装置の設置が、ガス状不純物は物理吸着や化学吸着特性を有する吸着材の設置が挙げられる。熱分解部30から得られた炭がガス状不純物の除去に利用されるものでもよい。
【0050】
また、
図5では、第1の熱交換部50からの燃焼ガスは、乾燥部10の熱源の一部として利用されている。これらの燃焼ガスは、別の、任意のパートの熱源の一部として利用されてもよい。ただし、バイオマス処理システム100が燃焼ガスに含まれる不純物の影響を受けないよう、十分に配慮されるべきである。
【0051】
その他、再構築される形態として、バイオマス処理システム100外からの熱源の利用が可能な場合、これが第3の熱交換部として利用されるものでもよい。具体的には、第3の熱交換部において得られた清浄な高温空気を熱分解部30に熱源の一部として供給することが挙げられる。この場合、第2の熱交換部60で熱交換された燃焼ガスは大気中に放出されるものでよい。これにより、バイオマス処理システム100の熱分解部30、過熱蒸気生成部40は、清浄に保たれる。
【0052】
このように、本発明に係るシステムの再構築方法は、既存のバイオマス処理システムをベースにシステムを再構築するものである。そのため、新たなシステムを導入することなく、炭化物の収量を安定化でき、また、スス等の発生を抑制でき、さらに、可燃性ガス燃焼に伴う熱の有効利用が可能になる。また、既存の炭化炉から水性ガス化機能を有するシステムへと再構築が可能になる。また、第1および第2の熱交換の設置によって、回収熱の有効利用と同時に不純物がシステムを循環するのを防ぎ、システムの長期安定稼働が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、建築系廃材に限らず、様々な起源のバイオマスを処理するシステムに利用することができる。また、既存のバイオマス処理システムの再構築、高度化に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
20A 炭化物生成部
20B 可燃性ガス燃焼部
30 熱分解部
40 過熱蒸気生成部
50 第1の熱交換部
60 第2の熱交換部
100 バイオマス処理システム