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特許7341398感電防止キャップおよび感電防止キャップ付きコネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】感電防止キャップおよび感電防止キャップ付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/44 20060101AFI20230904BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01R13/44 A
H01R13/52 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020007747
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114456
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-032400(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003566(WO,A1)
【文献】特開2011-159590(JP,A)
【文献】特開2020-129461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/44
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状とされて板厚方向に並んで配された一対の端子本体部に装着され、該一対の端子本体部の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部と、
前記一対の周縁被覆部の間に設けられて該一対の周縁被覆部を相互に連結する内側侵入防止部を含み、
前記一対の端子本体部への装着下において、前記端子本体部における板厚方向の少なくとも一方の面が露出する感電防止キャップ。
【請求項2】
前記端子本体部の板厚方向の表面に重ね合わされる脱落防止リブが設けられている請求項1に記載の感電防止キャップ。
【請求項3】
前記周縁被覆部には前記端子本体部に向けて突出して該端子本体部の周縁部に係止される係止突起が設けられている請求項1または請求項2に記載の感電防止キャップ。
【請求項4】
前記内側侵入防止部を貫通する挿通孔が設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感電防止キャップ。
【請求項5】
前記一対の周縁被覆部に対して前記内側侵入防止部と反対側に一対の外側侵入防止部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感電防止キャップ。
【請求項6】
平板状の端子本体部を備えて、該端子本体部の板厚方向に並んで配される一対の端子金具と、
一対の前記端子本体部に装着される感電防止キャップを含み、
前記感電防止キャップは、前記一対の端子本体部の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部と、
前記一対の周縁被覆部の間に設けられて該一対の周縁被覆部を相互に連結する内側侵入防止部を含み、
前記一対の端子本体部への前記感電防止キャップの装着下において、前記端子本体部における板厚方向の少なくとも一方の面が露出する感電防止キャップ付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子金具への接触による感電を防止する感電防止キャップと、端子金具に感電防止キャップが装着された感電防止キャップ付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる高電圧用コネクタでは、コネクタを扱う作業者の指や工具などが端子金具に触れることによる感電を防ぐために、感電防止構造を備える必要がある。例えば、特許文献1には、平板状をなす端子本体部の先端部分の周縁を覆う保護キャップが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-185932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、保護キャップが、平板状とされた端子本体部に対して、端子本体部の板厚方向の両面を外れた周縁を覆うように装着されると、端子本体部に対する保護キャップの接触面積が小さく、保護キャップを端子本体部への装着状態に保持する保持力が小さくなる。その結果、保護キャップを端子本体部に装着し難く、端子本体部に装着された保護キャップが端子本体部から脱落し易かった。
【0005】
また、特許文献1に示されているように、コネクタが一対の端子金具を備える場合には、各端子金具の端子本体部に保護キャップがそれぞれ装着されるが、保護キャップの数が多くなり、保護キャップを端子本体部へ装着する作業が煩雑になる。さらに、一対の端子本体部の対向面は保護キャップによって覆われておらず、コネクタのハウジングから一対の端子本体部間に突出するリブを感電防止キャップとは別に設けるなどして、一対の端子本体部間への指や工具の侵入を防ぐ必要があった。
【0006】
そこで、一対の端子本体部に容易に装着して比較的に大きな保持力を得ることができ、一対の端子本体部の対向面への接触も防ぐことができる、新規な構造の感電防止キャップと、それを用いた感電防止キャップ付きコネクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の感電防止キャップは、平板状とされて板厚方向に並んで配された一対の端子本体部に装着され、該一対の端子本体部の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部と、前記一対の周縁被覆部の間に設けられて該一対の周縁被覆部を相互に連結する内側侵入防止部を含み、前記一対の端子本体部への装着下において、前記端子本体部における板厚方向の少なくとも一方の面が露出する感電防止キャップである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、一対の端子本体部に容易に装着して比較的に大きな保持力を得ることができ、一対の端子本体部の対向面への接触も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る感電防止キャップの斜視図である。
図2図2は、図1に示された感電防止キャップを別の方向から示す斜視図である。
図3図3は、図1に示された感電防止キャップの正面図である。
図4図4は、図1に示された感電防止キャップの背面図である。
図5図5は、図1に示された感電防止キャップを備える感電防止キャップ付きコネクタの斜視図である。
図6図6は、図5に示された感電防止キャップ付きコネクタの分解斜視図である。
図7図7は、図6に示された感電防止キャップ付きコネクタを別の方向から示す分解斜視図である。
図8図8は、図1に示された感電防止キャップを端子金具への装着状態において示す斜視図である。
図9図9は、実施形態2に係る感電防止キャップの斜視図である。
図10図10は、別の1実施形態に係る感電防止キャップの斜視図である。
図11図11は、実施形態3に係る感電防止キャップを端子金具への装着状態において示す斜視図である。
図12図12は、実施形態4に係る感電防止キャップの斜視図である。
図13図12は、別の1実施形態に係る端子金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の感電防止キャップは、
(1)平板状とされて板厚方向に並んで配される一対の端子本体部に装着されて、該一対の端子本体部の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部と、前記一対の周縁被覆部の間に設けられて該一対の周縁被覆部を相互に連結する内側侵入防止部を含み、前記一対の端子本体部への装着下において、前記端子本体部における板厚方向の少なくとも一方の面が露出する感電防止キャップである。
【0011】
本開示の感電防止キャップによれば、一対の周縁被覆部が内側侵入防止部によって相互に連結されていることから、並んで配された一対の端子本体部に対して一括で同時に装着することができる。また、感電防止キャップは、一対の端子本体部に一括で装着されて、端子本体部への重ね合わせ面積が大きいことから、端子本体部に対する感電防止キャップの保持力が大きく得られて、感電防止キャップの端子本体部からの脱落が生じ難くなる。
【0012】
端子本体部の先端部分の周縁が周縁被覆部によって覆われることにより、端子本体部の先端面を含む周縁に指や工具が触れることによる感電が防止される。また、一対の端子本体部の対向間への指や工具の侵入が内側侵入防止部によって防止されることにより、一対の端子本体部の対向内面への接触による感電も、感電防止キャップによって防止することができる。
【0013】
(2)前記端子本体部の板厚方向の表面に重ね合わされる脱落防止リブが設けられていることが好ましい。脱落防止リブと端子本体部の係止によって、感電防止キャップが端子本体部に対する板厚方向への脱落を防止されるからである。
【0014】
(3)前記周縁被覆部には前記端子本体部に向けて突出して該端子本体部の周縁部に係止される係止突起が設けられていることが好ましい。係止突起が端子本体部の周縁部に係止されることによって、感電防止キャップが端子本体部の先端側への移動を制限されて、感電防止キャップの端子先端側への脱落が防止されるからである。
【0015】
(4)前記内側侵入防止部を貫通する挿通孔が設けられていることが好ましい。これによれば、例えば、相手端子が端子本体部に対して板厚方向の内側の表面に重ね合わされる場合には、相手端子を挿通孔に挿通させて端子本体部に重ね合わせることが可能になる。また、例えば、相手端子の間に触指防止のリブが突出している場合には、触指防止リブを挿通孔に挿通させることも可能であり、触指防止リブが端子本体部と相手端子の接続の邪魔になり難い。
【0016】
(5)前記一対の周縁被覆部に対して前記内側侵入防止部と反対側に一対の外側侵入防止部が設けられていることが好ましい。例えば、端子本体部の板厚方向の外側に指や工具を挿入可能なスペースがある場合に、当該スペースへの指や工具の挿入が外側侵入防止部によって防止されて、端子本体部の外側表面への接触による感電も、感電防止キャップによって防止されるからである。
【0017】
本開示の感電防止キャップ付きコネクタは、
(6)平板状の端子本体部を備えて、前記端子本体部の板厚方向に並んで配される一対の端子金具と、一対の前記端子本体部に装着される感電防止キャップを含み、前記感電防止キャップは、前記一対の端子本体部の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部と、前記一対の周縁被覆部の間に設けられて該一対の周縁被覆部を相互に連結する内側侵入防止部を含み、前記一対の端子本体部への前記感電防止キャップの装着下において、前記端子本体部における板厚方向の少なくとも一方の面が露出する感電防止キャップ付きコネクタである。
【0018】
本開示の感電防止キャップ付きコネクタによれば、感電防止キャップの一対の周縁被覆部が内側侵入防止部によって相互に連結されていることから、並んで配された一対の端子本体部に対して感電防止キャップを一括で同時に装着することができる。それ故、感電防止キャップの装着に要する作業工程数が少なくなる。また、感電防止キャップは、一対の端子本体部に一括で装着されて、端子本体部への重ね合わせ面積が大きいことから、端子本体部に対する感電防止キャップの保持力が大きく得られて、感電防止キャップの端子本体部からの脱落が生じ難くなる。
【0019】
端子本体部の先端部分の周縁が感電防止キャップの周縁被覆部によって覆われることにより、端子本体部の先端面を含む周縁に指や工具が触れることによる感電が防止される。また、一対の端子本体部の対向間への指や工具の侵入が、感電防止キャップの内側侵入防止部によって防止されることにより、一対の端子本体部の対向内面への接触による感電も、感電防止キャップによって防止することができる。
【0020】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の感電防止キャップの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、図1から図8を参照しつつ説明する。実施形態1の感電防止キャップ10は、例えば、後述する感電防止キャップ付きコネクタ30を構成する一対の端子本体部42,42に装着されて、端子本体部42,42に対する指や工具の接触による感電を防止するものである。以下の説明において、上方向とは図1中のZ方向、前方向とは図1中のX方向、右方向とは図1中のY方向として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0022】
<感電防止キャップ10>
感電防止キャップ10は、合成樹脂などの電気絶縁性材料によって形成されている。感電防止キャップ10は、図1から図4に示すように、後述する端子本体部42,42の先端部分の周縁を覆う一対の周縁被覆部12,12を備えている。
【0023】
<周縁被覆部12>
周縁被覆部12は、全体としてU形状とされており、端子本体部42の先端面に重ね合わされる先端被覆部14と、先端被覆部14の上下方向の両端部から後方へ延び出す一対の側縁被覆部16,16を、一体的に備えている。
【0024】
<先端被覆部14>
先端被覆部14は、後述する端子本体部42の先端面の全体を覆うことが可能な大きさおよび形状を有している。本実施形態の先端被覆部14は、四角断面で上下方向に直線的に延びている。先端被覆部14の具体的な形状は、特に限定されず、例えば端子本体部42の先端面が湾曲して延びていれば、先端被覆部14も湾曲して延びる形状とされ得る。
【0025】
<側縁被覆部16>
側縁被覆部16は、後述する端子本体部42の上下方向の側面を全体にわたって覆うことが可能な大きさおよび形状を有している。本実施形態の側縁被覆部16は、四角断面で前後方向に直線的に延びている。側縁被覆部16の具体的な形状は、後述する端子本体部42の形状に応じて設定され、例えば端子本体部42の側面が湾曲して延びていれば、側縁被覆部16も湾曲して延びる形状とされ得る。
【0026】
<係止突起18>
また、側縁被覆部16の後端部には、上下方向の内側に向けて突出する係止突起18が設けられている。係止突起18は、前側の側面が上下方向の内側に向けて前方へ傾斜する傾斜面とされている。本実施形態では、4つの側縁被覆部16のそれぞれに係止突起18が設けられている。なお、側縁被覆部16における上下方向の内側とは、先端被覆部14の上端部に設けられた側縁被覆部16においては下側を、先端被覆部14の下端部に設けられる側縁被覆部16においては上側を、それぞれ言う。
【0027】
<内側侵入防止部20>
一対の周縁被覆部12,12の間には、内側侵入防止部20が設けられている。内側侵入防止部20は、全体として左右方向に延びる板状とされている。内側侵入防止部20の左右方向の両端が先端被覆部14,14と一体的につながっている。これにより、周縁被覆部12,12は、先端被覆部14,14において、内側侵入防止部20によって一体として連結されている。
【0028】
<挿通孔22>
内側侵入防止部20には、挿通孔22が設けられている。挿通孔22は、四角断面で前後方向に貫通して設けられている。挿通孔22は、左右方向に所定の距離だけ離れて並んだ2つが設けられている。内側侵入防止部20は、挿通孔22よりも上下方向の外側を左右方向に延びる連結部24と、2つの挿通孔22,22の間を上下方向に延びる区分部26を備えている。要するに、内側侵入防止部20は、先端被覆部14,14を相互に連結する上下の連結部24,24と、それら連結部24,24を相互に連結する区分部26を備えている。区分部26が設けられていることによって、上下の連結部24の間に形成される空間が2つの挿通孔22,22に区切られており、各挿通孔22は指や工具などを挿入することが不可能な大きさとされている。
【0029】
<脱落防止リブ28>
先端被覆部14には、一対の脱落防止リブ28,28が設けられている。脱落防止リブ28は、先端被覆部14から基端側へ向けて延びる棒状または板状とされている。本実施形態の脱落防止リブ28は、先端被覆部14において上下方向に離れた2箇所から後方に向けて延び出している。脱落防止リブ28は、側縁被覆部16よりも上下方向の内側に位置していると共に、側縁被覆部16よりも左右方向の内側に位置している。
【0030】
<感電防止キャップ付きコネクタ30>
このような構造とされた感電防止キャップ10は、図5に示すように、感電防止キャップ付きコネクタ30において後述する端子本体部42,42に装着される。感電防止キャップ付きコネクタ30は、コネクタハウジング32に一対の端子金具34,34が取り付けられた構造を有している。
【0031】
<コネクタハウジング32>
コネクタハウジング32は、例えば、電気絶縁性の合成樹脂等によって形成された外側部材と、外側部材にインサートされた金属製の内側部材とによって構成される。コネクタハウジング32は、図5~7に示すように、全体として有底四角筒状とされており、四角筒状の筒状部36を備えていると共に、後端部分において外周へ突出するフランジ状の取付片38を備えている。取付片38の4角には、前後方向に貫通するボルト穴40がそれぞれ形成されている。なお、コネクタハウジング32における筒状部36の内周側には、前後方向に貫通する一対の端子挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0032】
<端子金具34>
端子金具34は、導電性の金属材料によって形成されている。端子金具34は、図6,7に示すように、平板状とされた端子本体部42を備えている。端子本体部42は、凹溝44を備えている。凹溝44は、端子本体部42の前後方向の途中において、端子本体部42の上面および下面に開口して設けられており、端子本体部42を左右方向に貫通している。凹溝44における前側の側壁内面は、上下方向の開口から離れるに従って前方へ傾斜する返り構造とされている。凹溝44における前側の側壁内面は、例えば、開口に近い部分が開口から遠い部分よりも幅狭となるように段付き形状とされていても良い。
【0033】
端子本体部42よりも後側には、固定部46と電線接続部48が設けられている。固定部46は、端子本体部42の後端に連続して設けられて、端子本体部42と直交して広がっており、前後方向に貫通するボルト穴50を備えている。電線接続部48は、固定部46の後端に連続して設けられて、端子本体部42と固定部46のいずれに対しても直交して広がっており、上下方向に貫通するボルト穴52を備えている。
【0034】
なお、一対の端子金具34,34は、左右方向において相互に面対称形状とされていることから、一方の端子金具34について説明することにより、他方の端子金具34についての説明を省略する。なお、一対の端子金具34,34が面対称形状であるとは、数学的な対称形状に厳密に限定されず、全体として略面対称形状とみなし得る程度の多少の違いがあってもよい。具体的には、例えば、端子金具34,34において凹溝44の有無、配置、数、形状などが異なっていても、全体として略面対称形状とみなすことができる。
【0035】
<端子金具34のコネクタハウジング32への取付け>
端子金具34は、コネクタハウジング32に固定されている。即ち、固定部46のボルト穴50に挿通されたボルト54が、コネクタハウジング32の後面に開口して設けられたナット部56に螺着されることにより、端子金具34が固定部46においてコネクタハウジング32に固定されている。このように、端子金具34の後部がコネクタハウジング32に固定されていることにより、端子本体部42がコネクタハウジング32に対して位置決めされており、端子本体部42の振れ等の変位が抑制されている。それ故、端子本体部42の振れ等を考慮した周囲のスペースを、従来の編組体等によって支持された雌型端子よりも大幅に狭くすることができて、感電防止キャップ付きコネクタ30の小型化を図ることができる。なお、固定部46をコネクタハウジング32に固定する方法は、特に限定されない。
【0036】
端子金具34は、端子本体部42がコネクタハウジング32に設けられた図示しない端子挿通孔に挿通されており、図5に示すように、端子本体部42がコネクタハウジング32の筒状部36の内周において前方へ向けて突出している。コネクタハウジング32には、一対の端子金具34,34が左右方向に並んで取り付けられている。端子金具34,34がコネクタハウジング32に取り付けられた状態において、端子本体部42,42は左右方向で略平行に並んで配されている。
【0037】
なお、コネクタハウジング32は、例えば、ボルト穴40に挿通される図示しないボルトによって、図示しないシールドケース等に固定される。また、図示しない電線が、端子金具34の電線接続部48に対して、例えば圧着端子を介して取り付けられる。
【0038】
<感電防止キャップ10の端子本体部42への取付け>
コネクタハウジング32に固定された端子金具34の端子本体部42には、感電防止キャップ10が装着される。即ち、感電防止キャップ10が端子本体部42に対して前方から接近して、図8に示すように、感電防止キャップ10の周縁被覆部12が、端子本体部42の先端面と上下方向の両側面を含む周縁部に重ね合わされて装着される。なお、図8では、見易さのために、感電防止キャップ10と一対の端子金具34,34のみを図示した。
【0039】
感電防止キャップ10は、先端被覆部14が端子本体部42の先端面に対して接触状態または僅かに離れた状態で重ね合わされると共に、側縁被覆部16,16が端子本体部42の上下方向の側面に対して接触状態または僅かに離れた状態で重ね合わされる。また、脱落防止リブ28は、一対の端子本体部42,42の対向間に差し入れられており、それら端子本体部42,42の板厚方向の表面である対向内面に対して、接触状態または僅かに離れた状態で重ね合わされる。これにより、感電防止キャップ10は、端子本体部42の先端面と上下方向の両側面と左右方向の内面とに重ね合わされて、端子本体部42の先端部分に保持される。
【0040】
感電防止キャップ10は、周縁被覆部12(先端被覆部14)が端子本体部42の先端面に接することにより、端子本体部42に対する後方への変位が規制される。感電防止キャップ10は、周縁被覆部12(側縁被覆部16)が端子本体部42の上下方向の側面に接することにより、端子本体部42に対する上下方向の変位が規制される。感電防止キャップ10は、脱落防止リブ28が端子本体部42の左右方向の内側面に接することにより、端子本体部42に対する左右方向の外側への変位が規制される。これらによって、感電防止キャップ10は、端子本体部42に対して装着方向において位置決めされていると共に、端子本体部42に対する上下方向および左右方向の脱落が防止されている。
【0041】
側縁被覆部16の後端部分に設けられた係止突起18は、端子本体部42の周縁部に開口する凹溝44へ差し入れられる。そして、感電防止キャップ10が端子本体部42に対して前方へ移動しようとすると、係止突起18が凹溝44の前側の内側面に係止されて、感電防止キャップ10が端子本体部42に対する前方への変位を規制される。これにより、感電防止キャップ10は、端子本体部42に対して前方から装着された後、端子本体部42から前方へ抜けて意図せずに外れてしまうことが防止されている。
【0042】
また、感電防止キャップ10は、左側の先端被覆部14、側縁被覆部16、脱落防止リブ28が、左側の端子本体部42に装着されると共に、右側の先端被覆部14、側縁被覆部16、脱落防止リブ28が、右側の端子本体部42に装着される。ここにおいて、感電防止キャップ10は、左側の先端被覆部14、側縁被覆部16、脱落防止リブ28と、右側の先端被覆部14、側縁被覆部16、脱落防止リブ28が、内側侵入防止部20によって一体的に連結されている。これにより、感電防止キャップ10は、一対の端子本体部42,42に対して、一括して同時に装着することが可能とされている。一対の端子本体部42,42に各別に感電防止キャップを装着する従来の態様に比して、装着作業の工程数が少なくなる。しかも、1つの感電防止キャップ10が端子本体部42,42に重ね合わされる面積が大きくなって、装着が容易になり、意図しない脱落も生じ難い。
【0043】
また、左側の脱落防止リブ28が左側の端子本体部42に接すると共に、右側の脱落防止リブ28が右側の端子本体部42に接することによって、感電防止キャップ10が端子本体部42に対する左右両側への変位を規制される。
【0044】
また、相互に位置決めされた4つの側縁被覆部16にそれぞれ係止突起18が設けられており、それら係止突起18がそれぞれ凹溝44に差し入れられている。それ故、感電防止キャップ10の端子本体部42から前方への抜けが、4組の係止突起18と凹溝44によって、より強く防止されている。しかも、4つの脱落防止リブ28の全てに係止突起18が設けられていることによって、係止突起18と凹溝44の前側内面との係止によって発揮される抜けに対する抗力が、感電防止キャップ10にバランスよく作用する。その結果、例えば、感電防止キャップ10にアンバランスな力が作用することによって、特定の側縁被覆部16や脱落防止リブ28に集中的に荷重が作用するなどの不具合が回避される。
【0045】
感電防止キャップ10の内側侵入防止部20は、一対の端子本体部42,42の対向間の前方に配される。これにより、端子本体部42,42の対向間に対して、前方から指や工具が挿入されないようになっている。その結果、端子本体部42の左右方向の内側面に指や工具が触れることによる感電も、感電防止キャップ10の内側侵入防止部20によって防止される。
【0046】
感電防止キャップ10が装着された端子本体部42,42は、左右方向の外面が図示しない相手端子との接触部分とされていることから、感電防止キャップ10によって保護されることなく露出している。そこで、図5に示すように、端子本体部42,42の左右方向の外側には、コネクタハウジング32の筒状部36が配されている。そして、感電防止キャップ10の先端被覆部14と筒状部36の間の距離が、指や工具の侵入を防止し得る程度に狭くされている。これにより、端子本体部42の左右外面に対する指や工具の接触が、先端被覆部14と筒状部36の協働によって防止されている。
【0047】
なお、例えば、感電防止キャップ付きコネクタ30と図示しない相手側コネクタの接続状態において、図示しない相手端子が感電防止キャップ10よりも左右方向の外側に挿入される。さらに、相手側コネクタにおいて相手端子への触指による感電を防止する感電防止リブが設けられている場合には、感電防止リブが挿通孔22,22に挿通されることにより、感電防止リブが感電防止キャップ10に引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0048】
<実施形態2>
図9には、別の具体例である実施形態2を示す。以下の説明において、実施形態1と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
実施形態2の感電防止キャップ60は、上の側縁被覆部16と下の側縁被覆部16にそれぞれ係止突起18が設けられている。それに対して、下の側縁被覆部62と上の側縁被覆部62には、係止突起18が設けられておらず、全体が略一定の断面形状で前後方向に延びる四角板状または四角棒状とされている。
【0050】
このように、係止突起18は、必ずしも実施形態1のように全ての側縁被覆部に設けられていなくてもよい。また、係止突起18が対角方向に配された上の側縁被覆部16と下の側縁被覆部16にのみ設けられることにより、係止突起18が図示しない端子本体部の凹溝に係止されて抜けに対する抗力を発揮する際に、感電防止キャップ60に対して力がバランスよく作用する。なお、感電防止キャップ60が装着される一対の端子本体部は、側の端子本体部の上面に凹溝が設けられると共に、側の端子本体部の下面に凹溝が設けられる。
【0051】
また、図10に示す別の具体例としての感電防止キャップ70のように、1つの側縁被覆部16のみに係止突起18が設けられていてもよい。もっとも、抜けに対する抗力を十分に得るために、係止突起18は、2つ以上の複数の側縁被覆部16に設けられていることが望ましい。また、一方の端子本体部に装着される2つの側縁被覆部16にそれぞれ係止突起18を設けると共に、他方の端子本体部に装着される2つの側縁被覆部62には係止突起を設けないようにしてもよい。しかしながら、感電防止キャップに作用する力のバランスや抜け難さなどの観点から、好適には、各端子本体部に装着される側縁被覆部にそれぞれ係止突起が設けられる。
【0052】
<実施形態3>
図11には、別の具体例である実施形態3を示す。実施形態3の感電防止キャップ80は、脱落防止リブ82が側縁被覆部16よりも左右方向の外側に位置している。そして、図11に示す感電防止キャップ80が端子本体部42,42に装着された状態において、脱落防止リブ82が各端子本体部42の左右方向の外面に重ね合わされる。
【0053】
このように、脱落防止リブ82が端子本体部42の左右方向の外面に重ね合わされるようにしても、脱落防止リブ82が端子本体部42に接することによって、感電防止キャップ80が左右方向において位置決めされる。
【0054】
なお、脱落防止リブは、必ずしも両方の端子本体部42に重ね合わされるように設けられる必要はなく、例えば、一方の端子本体部42にのみ重ね合わされるように設けることもできる。即ち、一方の端子本体部42における左右方向の内面と外面のそれぞれに重ね合わされるように、内側の脱落防止リブ28と外側の脱落防止リブ82を設けてもよい。
【0055】
<実施形態4>
図12には、別の具体例である実施形態4を示す。実施形態4の感電防止キャップ90は、外側侵入防止部92,92を備えている。外側侵入防止部92は、先端被覆部14に対して内側侵入防止部20とは左右方向において反対側である外側に配されており、先端被覆部14と一体形成されている。外側侵入防止部92は、全体として四角板状とされており、前後方向に貫通する相手端子挿通孔94を備えている。図示しない相手端子が相手端子挿通孔94に挿通されることにより、図示しない端子本体部と相手端子が左右方向において重ね合わされて導通されるようになっている。相手端子挿通孔94は、指や想定される工具が通らない断面形状と断面のサイズとされている。
【0056】
例えば、実施形態1(図5参照)において、端子本体部42とコネクタハウジング32の筒状部36が左右方向において大きく離れている場合に、端子本体部42と筒状部36の左右方向の対向面間に指や工具が差し入れ可能となり得る。ここにおいて、実施形態4の外側侵入防止部92を備える感電防止キャップ90を採用すれば、感電防止キャップ90が装着された端子本体部の左右方向の外側に対する指や工具の侵入も、感電防止キャップ90の外側侵入防止部92によって阻止される。
【0057】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)前記実施形態では、内側侵入防止部20が2つの挿通孔22,22を備える構造とされていたが、内側侵入防止部の形状は特に限定されない。具体的には、例えば、内側侵入防止部は、左右方向に延びる板状または棒状とされて、挿通孔22が設けられていなくてもよい。
【0059】
(2)脱落防止リブは、例えば、上下の側縁被覆部16,16をつなぐように上下方向に延びていてもよいし、先端被覆部14と側縁被覆部16に跨って設けられる筋交い状とすることもできる。
【0060】
(3)前記実施形態では、相手端子が端子本体部42の左右方向の外側表面に重ね合わされる例を示したが、例えば、内側侵入防止部20の挿通孔22に相手端子が挿通されて、相手端子が端子本体部42の左右方向の内側表面に重ね合わされるようにもできる。なお、実施形態3において、挿通孔22に挿通された相手端子が端子本体部42の左右方向の内側面に重ね合わされる場合には、脱落防止リブ82が端子本体部42の左右方向の外面を全体にわたって覆うように設けられ得る。また、実施形態4において、挿通孔22に挿通された相手端子が端子本体部42の左右方向の内側面に重ね合わされる場合には、外側侵入防止部92の相手端子挿通孔94はなくてもよい。
【0061】
(4)相手端子が脱落防止リブ28の間に挿入されるようにすれば、相手端子に摺接して相手端子を所定の接続位置に案内するガイドとして、脱落防止リブ28を利用することもできる。
【0062】
(5)端子金具は、平板状の端子本体部を備えていれば、具体的な構造は適宜に変更され得る。例えば、図13に示す端子金具100のように、端子本体部102が外周端部を構成する枠状部104と、枠状部104の内周側にスリット106を介して設けられた弾性接点部108を有している。
【0063】
弾性接点部108は、端子本体部102を構成する金属板を部分的に切り起こして形成されており、基端において枠状部104と一体的に連続している。弾性接点部108は、切り起こしによって板厚方向において弾性的に変形可能な板ばね状とされており、弾性変形によって枠状部104に対する板厚方向において傾動を許容されている。枠状部104と弾性接点部108の間に形成されるスリット106は、弾性接点部108の前側および上下両側の三方向を囲んで延びている。
【0064】
弾性接点部108は、少なくとも一部が、枠状部104につながる基端である後端からスリット106によって自由端とされた先端である前端に向けて、板厚方向である左右方向において外側へ傾斜している。これにより、弾性接点部108は、枠状部104に対して、図示しない相手端子との重ね合わせ側となる左右方向の外側に突出している。
【0065】
弾性接点部108は、板厚方向において枠状部104からの突出量が最大となる頂部110が、後端から前端へ向かう途中に設定されている。弾性接点部108は、後端から頂部110に向けて板厚方向において図示しない相手端子との重ね合わせ側へ傾斜する第一の傾斜部112を備えており、板厚方向における弾性接点部108の枠状部104からの突出量が、後端から頂部110に向けて次第に大きくなっている。また、弾性接点部108は、頂部110から前端に向けて図示しない相手端子との重ね合わせ側とは反対側へ傾斜する第二の傾斜部114を備えており、板厚方向における弾性接点部108の枠状部104からの突出量が、頂部110から前端に向けて次第に小さくなっている。弾性接点部108の頂部110は、スポット的に凸形状とされており、頂部110が枠状部104に対してより大きく突出している。
【0066】
このような構造とされた端子金具100を採用すれば、端子本体部102の弾性接点部108が図示しない相手端子に対して弾性的に押し当てられることから、端子本体部102と相手端子の接触状態が安定して実現される。しかも、端子本体部102と相手端子を相互に押し当てるためのばね状構造が、端子本体部102の切り起こし加工によって、部品の追加を要することなく簡単な構造によって実現される。また、弾性接点部108の先端部分が第二の傾斜部114を有していることにより、相手端子が弾性接点部108に引っ掛かることもない。
【0067】
また、端子金具100の端子本体部102は、弾性接点部108の周囲に枠状部104が設けられていることにより、実施形態1~4の感電防止キャップの周縁被覆部が枠状部104に装着される。感電防止キャップの装着部分である枠状部104は変形および変位を生じることがなく、端子本体部102に弾性接点部108のような可動部分が設けられていても、感電防止キャップが端子本体部102に対する装着状態に安定して保持される。
【符号の説明】
【0068】
10 感電防止キャップ
12 周縁被覆部
14 先端被覆部
16 側縁被覆部
18 係止突起
20 内側侵入防止部
22 挿通孔
24 連結部
26 区分部
28 脱落防止リブ
30 感電防止キャップ付きコネクタ
32 コネクタハウジング
34 端子金具
36 筒状部
38 取付片
40 ボルト穴
42 端子本体部
44 凹溝
46 固定部
48 電線接続部
50 ボルト穴
52 ボルト穴
54 ボルト
56 ナット部
60 感電防止キャップ
62 側縁被覆部
70 感電防止キャップ
80 感電防止キャップ
82 脱落防止リブ
90 感電防止キャップ
92 外側侵入防止部
94 相手端子挿通孔
100 端子金具
102 端子本体部
104 枠状部
106 スリット
108 弾性接点部
110 頂部
112 第一の傾斜部
114 第二の傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13