(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】カキ殻粉末
(51)【国際特許分類】
A01N 59/06 20060101AFI20230904BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A01N59/06 Z
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2019053568
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019040796
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518353038
【氏名又は名称】株式会社プラスラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】520381090
【氏名又は名称】株式会社ITO知財インベストメント
(73)【特許権者】
【識別番号】518353049
【氏名又は名称】有限会社エルシオン
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】沢田 新一
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-207146(JP,A)
【文献】特開2019-006660(JP,A)
【文献】特開2010-163351(JP,A)
【文献】特開昭61-028494(JP,A)
【文献】特開平09-249416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/06
A01P 3/00
A01K 61/54
A23L 17/00
C02F 1/50
C01F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カキ殻を300℃以上700℃以下で1時間以上焼成して一次焼成物を得る一次焼成工程と;当該一次焼成物を冷却させる工程と;冷却された当該一次焼成物を800℃以上1500℃以下で1時間以上焼成して二次焼成物を得る二次焼成工程と;を含むことを特徴とする、焼成カキ殻粉末
を含む生カキ用殺菌剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌や脱臭等に有効な、カキ殻粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、細菌や糸状菌(カビ)やノロウイルス等の雑菌の繁殖によって引き起こされる食物の腐敗や食中毒を防止するため、多種の合成殺菌剤が提案されている(例えば、次亜塩素酸ナトリウムやエタノール)。但し、これら合成殺菌剤は、安全性に問題があることから、添加量や対象物等を制限せざるを得ないのが現状である。
【0003】
他方、昨今、貝殻焼成カルシウムを有効成分として含む各種殺菌剤が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。この貝殻焼成カルシウムの原料が貝殻という天然物であるため、当該殺菌剤は、合成殺菌剤と比較し、安全性が高いと認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-222796号公報
【文献】特開平11-290044特号公報
【文献】特開2002-272434号公報
【文献】特許第4681693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでの貝殻焼成カルシウムは、用途にもよるが、実際に使用してみると、所望の殺菌効果が達成できないという課題がある。そこで、本発明は、多くの用途にて有効な殺菌レベルを実現できる貝殻焼成カルシウムを提供することを第一の課題とする。
【0006】
更に、本発明者らは、この貝殻焼成カルシウムの一用途として、生カキの殺菌に用いられないかを検証した。しかしながら、従来の貝殻焼成カルシウムを用いた場合には、食品衛生法上で規定される基準を満たす程の殺菌性を実現できないことがあるとか、長時間(例えば20時間)生カキに適用し続けると生カキが死んでしまう可能性がある、といった問題がある新知見を得た。そこで、本発明は、食品衛生法上で規定される基準を満たす殺菌力を担保しつつ、長時間生カキに適用し続けても生カキの死が抑制可能な、貝殻焼成カルシウム粉末の提供を第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、カキ殻を300℃以上で1時間以上焼成して一次焼成物を得る一次焼成工程と;当該一次焼成物を冷却させる工程と;冷却された当該一次焼成物を800℃以上で1時間以上焼成して二次焼成物を得る二次焼成工程と;を経て得られたことを特徴とする、二次焼成物の全質量を基準として酸化カルシウムの含有量が80質量%以上である焼成カキ殻粉末である。
本発明(2)は、殺菌剤である、前記発明(1)の焼成カキ殻粉末である。尚、本明細書及び特許請求の範囲における「菌」は、糸状菌・細菌・ウイルスを含む概念である。また、本明細書及び特許請求の範囲における「殺菌」とは、菌を死滅、破壊又は殺菌対象表面から除去することを意味し、例えば、抗菌、制菌、滅菌又は除菌することをも含むものである。
本発明(3)は、生カキ用殺菌剤である、前記発明(1)又は(2)の焼成カキ殻粉末である。
本発明(4)は、脱臭剤である、前記発明(1)の焼成カキ殻粉末である。
本発明(5)は、前記発明(1)~(4)のいずれか一つの焼成カキ殻粉末が封入されている封入品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る焼成カキ殻カルシウム粉末によれば、多くの用途にて有効な殺菌レベルを実現できる。更に、本発明に係る焼成カキ殻カルシウム粉末によれば、食品衛生法上で規定される基準を満たす殺菌力を担保しつつ、長時間生カキに適用し続けても生カキの死が抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例での分散維持性試験における、40時間後の分散状態を示した写真である。
【
図2】
図2は、実施例での長時間生存確認試験における、40時間後の分散状態を示した写真である。
【
図3】
図3は、実施例における、各種成分についての一般生菌及び大腸菌群に対する殺菌効果比較試験の結果を示した図である。
【
図4】
図4は、実施例における、各種成分についての一般生菌及び大腸菌群に対する脱臭効果比較試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪焼成カキ殻粉末≫
本発明に係る焼成カキ殻粉末は、カキ殻を300℃以上で1時間以上焼成して一次焼成物を得る一次焼成工程と;当該一次焼成物を冷却させる工程と;冷却された当該一次焼成物を800℃以上で1時間以上焼成して二次焼成物を得る二次焼成工程と;を経て得られたことを特徴とする、二次焼成物の全質量を基準として酸化カルシウムの含有量が80質量%以上である焼成カキ殻粉末である。ここで、当該焼成カキ殻粉末は、好適には、袋や容器等に封入されている。これにより、外部の水分や二酸化炭素を吸着することによる変質を抑制することができる。
【0011】
ここで、本発明に係る焼成カキ殻粉末は、二次焼成物の全質量を基準として酸化カルシウムの含有量が80質量%以上であり、好適には90質量%であり、より好適には95質量%であり、更に好適には97.5質量%である。尚、市販の焼成貝殻粉末は、酸化カルシウムであることを謳っていながら、実際に測定すると大部分が水酸化カルシウムである。尚、本発明における酸化カルシウム含有量は、示差熱熱量重量分析装置を用いて導出された値である。具体的には、示差熱熱量重量分析装置(TGA851e)を使用して、各粉末の酸化カルシウム含有量を測定する(解析温度は30℃~1000℃)。ここで、200~500℃までの重量減少(%)を水酸化カルシウム含有量(%)とし、30℃~1000℃で維持された重量(%)を酸化カルシウム含有量(%)とする。
【0012】
また、焼成カキ殻粉末の平均粒径は、特に限定されず、例えば、1mm未満の粉体である。用途によっては、粉体の平均粒径が100μm以下、50μm以下、30μm以下、10μm以下であることが好適である。下限値粉体の平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置を用いて測定すればよい。このような装置として、例えば、粒度分布測定装置(CILAS;株式会社アイシンナノテクノロジーズ)などが挙げられる。
【0013】
≪焼成カキ殻粉末の製造方法≫
(一次焼成工程)
焼成炉内の雰囲気は任意であるが酸素含有雰囲気が好ましい。酸素含有雰囲気とは、酸素を1体積%以上、3体積%以上、5体積%以上、10体積%以上、20体積%以上含む雰囲気であればよい。通常は空気(大気雰囲気)である。燃焼除去効率を高めるため、酸素を30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上含む雰囲気でもよいし、純粋な酸素ガス雰囲気(すなわち酸素含有率100%の雰囲気)を使用してもよい。
【0014】
一次焼成工程の焼成温度は300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上である。一次焼成工程の焼成温度は700℃以下であり、650℃以下、600℃以下が好ましい。
【0015】
一次焼成工程の昇温速度に特に制限はないが、1~20℃/分、3~18℃/分、5~16℃/分、7~14℃/分、9~12℃/分が好ましい。
【0016】
一次焼成工程の焼成時間は1時間以上、2時間以上、4時間以上、4.5時間以上、5時間以上、5.5時間以上、6時間以上である。他方、焼成時間の上限は特に制限はなく、10時間以下、9時間以下、8時間以下が好ましい。
【0017】
尚、焼成温度は上記の焼成温度範囲であれば一定でも変動してもよい。また焼成時間とは、焼成炉内の温度が上記の焼成温度範囲になっている合計時間を意味する(即ち、変動する場合には、焼成時間の内の少なくとも合計1時間は、300℃以上であればよい)。
【0018】
(一次冷却工程)
本発明に係る焼成カキ殻粉末の製造の際、上述した一次焼成工程によって得られる一次焼成物を冷却する一次冷却工程を含む。ここで、積極的に冷却させる必要はなく、加熱を停止させ放熱によって外気温まで自然冷却させればよい。当該工程に要する時間は外気温{装置(焼成炉)が置かれている周囲環境の気温の温度}や開始材料によって左右されると考えられるが、凡そ、10時間以上、15時間以上、20時間以上である。
【0019】
冷却目標温度は任意であるが、通常は後の操作のために焼成物を外気温まで冷却させる。 また、冷却速度は任意に設定することができる。任意の冷却手段を用いて急激に冷却してもよいし、放熱によって自然冷却させてもよい。
【0020】
一次冷却工程は任意の雰囲気下で行ってよい。焼成工程と同じ雰囲気下でも異なる雰囲気下でもよい。例えば、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、大気雰囲気下で行ってもよい。更に、一次冷却工程は焼成炉内で行ってもよいし、焼成炉外に取り出して行ってもよいし、一部を焼成炉内で行い残りを焼成炉外で行ってもよい。
【0021】
(予備粉砕工程)
本発明の方法は一次焼成物を粉砕する予備粉砕工程を含んでもよい。予備粉砕工程は、一次焼成物を微粉砕する前に一次焼成物を粉砕する任意の工程である。カキ殻に含まれていた有機物が消失していると理解されるため、一次焼成物は極めて脆弱である。このため、容易に粉砕することができる。予備粉砕工程には任意の装置及び手段が使用され得る。予備粉砕工程は必須工程ではないが、一次焼成物を予め粉砕しておくことで、後述する微粉砕工程の効率が向上し最終製品の品質の安定化及び微粉末化に繋がる。尚、予備粉砕工程は任意の雰囲気下で行ってよい。他の工程の雰囲気下と同じでも異なっていてもよい。
【0022】
(純化工程)
本発明の方法は一次焼成物を純化する純化工程を含んでもよい。
【0023】
純化工程は、一次焼成物の粉末ないし微粉末を、例えばエアフィルタ、マイクロミストフィルタ、活性炭フィルターなどから1以上のフィルターを通過させて行ってもよい。
【0024】
純化工程は任意の雰囲気下で行ってよい。他の工程の雰囲気下と同じでも異なっていてもよい。
【0025】
(微粉砕工程)
本発明の方法は一次焼成物を微粉砕する微粉砕工程を含んでもよい。
【0026】
微粉砕工程は、一次焼成物を微粉末の状態にまで微粉砕して一次焼成物の微粉砕を得る工程である。後述する二次焼成を行う前、即ち一次焼成と二次焼成の間に行う。二次焼成前に行うことで、二次焼成後に行うよりも最終産物である焼成物の平均粒径を小さくすることが可能であった。
【0027】
一次焼成物を微粉砕するための手段は任意の手段が使用できる。例えば特殊コンプレッサーで高圧ガス粒子を加速し、粒子衝突により対象を微粉砕する装置(ナノジェットマイザー;NJ-300-D、株式会社アイシンナノテクノロジーズ製)が挙げられる。ここで高圧ガスとしては、乾燥空気でもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが好ましい。
【0028】
微粉砕工程は任意の雰囲気下で行ってよい。他の工程の雰囲気下と同じでも異なっていてもよい。
【0029】
予備粉砕工程、微粉砕工程、及び/又は純化工程を行う場合、一次焼成工程の後、かつ、後述する二次焼成工程の前に行う。
【0030】
(二次焼成工程)
本発明の方法は一次焼成物を焼成炉にて焼成する二次焼成工程を含む。尚、特に言及していない限り、一次焼成工程の記載は本工程にも適用される。ここで、二回焼成すると性能(例えば殺菌効果等)が各段に向上する理由は定かではないが、所定条件での焼成⇒一旦冷却⇒特定条件での再焼成、により、粒子構造(表面や内部構造、結晶構造等)が当該効果に適したものに変化すると推定される。
【0031】
二次焼成工程の焼成温度は800℃以上、850℃以上、900℃以上、950℃以上である。これら温度以上で焼成することで充分に炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを酸化カルシウムへと変化させることができる。二次焼成工程の焼成温度は2600℃(酸化カルシウムの融点付近)以下であり、通常1500℃以下、1200℃以下、1000℃以下である。
【0032】
二次焼成工程の焼成時間は1時間以上、1.5時間以上又は2時間以上である。他方、焼成時間の上限は特に制限はない。焼成炉への負荷やエネルギーコストの観点から7時間以下、6時間以下、5時間以下、4時間以下、3時間以下が好ましい。
【0033】
(二次冷却工程)
本発明の方法は上述した二次焼成工程によって得られる二次焼成物を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下にて冷却する二次冷却工程を含む。
【0034】
特に言及していない限り、一次冷却工程の記載は本工程にも適用される。
【0035】
真空雰囲気下とは、大気圧(約10万Pa)と比べて十分小さいことを意味する。具体的には1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下、1Pa以下、0.1Pa以下、0.01Pa以下、0.001Pa以下、0.0001Pa以下を意味する。
【0036】
不活性ガス雰囲気下とは、上述したような不活性ガスの雰囲気下を意味する。気圧に制限はないが、例えば1万Pa~20万Pa、5万Pa~15万Pa、8万Pa~12万Pa以上としてもよい。
【0037】
真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で冷却することで、焼成によって生じた酸化カルシウムを未反応のまま保存することができる。真空雰囲気下の場合、真空化手段によって二次焼成工程において生じた遊離ガスが除去され、焼成物中の酸化カルシウムが保存される。また特に焼成物の粒径が小さくなることがわかった。このため真空雰囲気下の方が好ましい。
【0038】
二次冷却工程と後述する密封工程の間で他の工程(例えば粉砕工程など)を含まないことが好ましい。他の工程を行っている間に、焼成物中の酸化カルシウムが変質する恐れがあるからである。
【0039】
(密封工程)
密封用容器への焼成物の密封は、二次冷却後、好適には24時間以内、より好適には12時間以内、更に好適には6時間以内、特に好適には1時間以内、最も好適には0.5時間以内に行う。尚、水分及び二酸化炭素が実質的に存在しないか低減させた状態では、焼成物の変質リスクが低いので、この限りではない。
【0040】
密封用容器はガスを遮断し対象物を密閉できれば任意のものが使用できる。二次焼成物は真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下にて密封用容器の中に密封される。この結果、密封用容器の内部に二次焼成物が封入されたパッケージが完成する。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を、実施例を参照しながら詳述する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0042】
使用機材
・水槽:アクアステップL コトブキ工芸(株)400×256×280
・ろ過装置:外掛け式フィルター(小)コトブキ工芸(株)
・空気フィルター:ウッドフィルター(株)タカミ
・比重測定器:観賞魚用塩分濃度計(神畑養魚株式会社)
・pH測定器:PH-6011-OM (株)モノタロウ
・水質検査試験紙:(海水用)Tetra ジャパン(株)
・エアーポンプ:ADD-X101 O3 PROOOF
・水温計:K53 コトブキ工芸(株)
使用材料
・水道水:水道水(八戸市白銀地区)
・カルキ抜き:コトブキ工芸(株)
・人工海水の元: Aquarium Syatemss 社(フランス)製品
・活性炭フィルター:人工海水を作る前の水調整
試材
・殻付き生カキ(活貝)
・一般的海水データ(目安):海水の比重とpH = 8.0 ~ 8.4、比重:太平洋の場合 = 1.024% (3.5%海水濃度)
【0043】
≪カキ殻BiSCaO粉末の製造≫
水で洗浄したカキ殻を500℃で4時間焼成し、一次焼成物を得た。当該一次焼成物を室温まで冷却後に粉砕機にて粉砕し、8μmのカキ殻粉末を得た。尚、紛体の粒径は粉砕機の調整で実施した。次に、当該カキ殻粉末を900℃で2時間再焼成して室温まで冷却し、実施例に係るカキ殻BiSCaO粉末を得た(冷却して10分後に密閉容器に保存)。
【0044】
≪評価≫
<1.分散維持性試験>
人工海水中にカキ殻BiSCaO粉を0.2%濃度となるよう添加し、40時間、エアーレーションした。尚、当該海水のpHは12.46であった。
図1は、40時間後の分散状態を示した写真である。当該写真から分かるように、40時間経過した後も、添加直後とほぼ変わらない分散状態であった。尚、市販の貝殻焼成カルシウムを対照として同様の試験を実施したが、早々に沈殿したことから、上記分散状態の維持はエアーレーションによるものでないと理解できる。
【0045】
<2.長時間生存確認試験>
人工海水中にカキ殻BiSCaO粉末を0.1%濃度となるよう投入した。この際、海水は、比重=3.5%、水温=10℃、pH=10.95、NO
2(亜硝酸塩)=0mg/l、KH(炭酸塩硬度)=15°d以上、NO
3(硝酸塩)=0mg/l 、Ca(カルシウム)=500mg/l以上、であった。この海水に、宮城県産養殖カキと八戸産天然岩ガキを投入した。投入後、21時間経過後も両カキの生存が確認できた。尚、21時間経過後の海水は、比重=3.5%、水温=10℃、pH=10.02、NO
2 (亜硝酸塩)=0.5mg/l以下、KH(炭酸塩硬度)=6°d以上、NO
3(硝酸塩)=10mg/l以下、Ca(カルシウム)=500mg/l以上、であった。このように、pH:11~pH:10で20時間以上生存することが確認できた(カキの身を触るとヒダの部分が縮み生きていることから確認)。また、
図2に示すように、試験開始後と同様、カキ殻BiSCaO粉の分散液状態を維持していた。
なお、次亜塩素酸カルシウムを0.1%(1000ppm)となるよう投入した海水は、比重=3.5%、水温=10℃、pH=10.1、NO
2(亜硝酸塩)=0mg/l、KH(炭酸塩硬度)=15°d以上、NO
3(硝酸塩)=0mg/l 、Ca(カルシウム)=500mg/l以上、であった。この海水に、宮城県産養殖カキと八戸産天然岩ガキを投入した。投入後、5時間以内にすベての生カキはカキの身を触ってもヒダの部分の縮みが全くなく、死亡していた。
【0046】
<3.味評価試験>
カキ養殖業者複数人が、被検体である、長時間生存試験後の宮城県産養殖カキと八戸産天然岩ガキを生で食し、味評価試験を実施した。その結果、全員が、次亜塩素ナトリウム・オゾン・紫外線除菌等の殺菌手法を使用した場合と比較し、味も落ちず、身の縮みも防止できたと評価した。
【0047】
<4.基準適合確認試験>
まず、宮城県産養殖カキと八戸産天然岩ガキの両方に対し、厚生労働省が指定する「食品、添加物等の規格基準」(生食用かき)の基準を超える一般生菌や大腸菌群を含む細菌を、身中に注入させた。その後、「2.長時間生存試験」と同様の手順を実施した。当該試験後、厚生労働省の基準に適合しているか否かを検査した。その結果、一般生菌や大腸菌群を検出限界以下(ほぼ0)に完全除菌できていること、即ち、厚生労働省の基準に適合していることが確認された。
【0048】
<5.殺菌効果比較試験>
風呂残り湯に0.1wt%のブレインハートインヒュージョンブイヨン(日水製薬)を入れ、37℃で20時間培養した。この培養で一般生菌は10
6/mL及び大腸菌群は5X10
5/mLとなった。この汚染水に各成分の分散液{
図3中、「Oyster BiSCaO」=カキ殻2回焼成品、「BiSCaO-2000」=ホタテ貝殻2回焼成品、「Baked oyster shell powder」=カキ殻1回焼成品}を加え、各成分の最終濃度が40、200、1000、5000 ppmとなるよう水懸濁液を調製した。尚、ホタテ貝殻2回焼成品は、原料が異なるのみで、その製造方法はカキ殻2回焼成品と略同一である。そして、これらの水懸濁液を15分間静置して得た上清液について一般生菌群及び大腸菌群の殺菌活性を調べた。
それぞれのサンプルについて、一般生菌群及び大腸群数測定用培地キット(それぞれコンパクトドライ「ニッスイ」TC及びCF、日水製薬株式会社製)を用いて、一般生菌数及び大腸菌群数を測定した。
図3は、当該殺菌効果比較試験の結果である。殺菌効果比較試験結果は、カキ殻2回焼成>ホタテ貝殻2回焼成>>カキ殻1回焼成、であった。特にカキ殻2回焼成は、0.1wt%以上の濃度で完全に一般生菌及び大腸菌群を殺菌除去し、本測定キットでは検出限界以下となった。
【0049】
<6.脱臭効果比較試験>
風呂残り湯に1wt%のブレインハートインヒュージョンブイヨン(日水製薬)を入れ、37℃で40時間培養した。この時一般生菌は10
9/mL及び大腸菌群は10
8/mLとなり、強い腐乱臭を発生する汚染水を消臭対象として準備した。消臭効果についての実験のため、キャップ付チューブ内の5mLの汚染水に、<5.殺菌効果比較試験>で用いた3種のパウダーに加えて次亜塩素酸ナトリウムについて、最終濃度が0.04wt%、0.20wt%、1.0wt%になるように添加した。また消臭対象に対する消臭効果は、臭度計(Handheld Odor Meter、OMX-SR、神栄テクノロジー株式会社製)を用い、臭度を測定・評価した。
図4は、当該脱臭効果比較試験の結果を示した図である。この消臭対象に対する消臭効果は、カキ殻2回焼成>ホタテ貝殻2回焼成>次亜塩素酸ナトリウム>カキ殻1回焼成、であった。