(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20230904BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61F5/01 N
A61F5/02 N
(21)【出願番号】P 2020532358
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028505
(87)【国際公開番号】W WO2020022220
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018141303
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 武雄
(72)【発明者】
【氏名】岩本 卓士
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 尚人
(72)【発明者】
【氏名】光部 貴士
(72)【発明者】
【氏名】木山 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 和洋
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 領治
(72)【発明者】
【氏名】林田 大造
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0113438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0330183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-5/02,13/10
A41D 13/08
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具のモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
を備え
、
前記手情報は、母指、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の中手骨及び基節骨から選ばれる少なくとも一種の骨の位置情報を含み、
前記取得部は、骨の種類と骨の形状と骨の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから骨の種類と骨の形状と骨の位置とに関する情報を含む前記手の骨データを取得する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記画像データは、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の指先と母指の指先とが接触した状態で撮像されたものである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記モデルデータは、前記手装具の外形データ及び硬さデータから選ばれる少なくとも一種のデータと、当該データと関連付けられた位置データとを含む、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記手情報は、MP(metacarpophalangeal)関節及びPIP(proximal interphalangeal)関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含む、
請求項1~
3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記手情報は、母指のMP関節及び母指のIP関節の位置情報を含む、
請求項1~
4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む前記手の関節データを取得する、
請求項
4又は
5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記手情報は、掌のしわの位置情報を含む、
請求項1~
6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む前記手のしわデータを取得する、
請求項
7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記生成部により生成された前記モデルデータを、造形装置へ出力する出力部、
を更に備える、
請求項1~
8のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記生成部により生成された前記モデルデータを、前記手情報とともに表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記モデルデータ及び前記手情報を参照するユーザから、前記モデルデータを修正する操作を受け付ける受付部と、
を更に備え、
前記生成部は、前記受付部が受け付けた前記操作に応じた修正を前記モデルデータに行う、
請求項1~
9のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記取得部は、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む前記手の特徴部位データを取得し、
前記生成部は、前記手の外形データ及び前記特徴部位データに基づいて、前記モデルデータに含まれる手装具の外形データ及び硬さデータを生成する、
請求項1~
10のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項12】
情報処理装置と造形装置とを少なくとも備えたシステムであって、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具を造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
前記モデルデータに基づいて前記手装具を造形する造形部と、
を備え
、
前記手情報は、母指、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の中手骨及び基節骨から選ばれる少なくとも一種の骨の位置情報を含み、
前記取得部は、骨の種類と骨の形状と骨の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから骨の種類と骨の形状と骨の位置とに関する情報を含む前記手の骨データを取得する、
システム。
【請求項13】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、
を含
み、
前記手情報は、母指、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の中手骨及び基節骨から選ばれる少なくとも一種の骨の位置情報を含み、
前記取得ステップは、骨の種類と骨の形状と骨の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから骨の種類と骨の形状と骨の位置とに関する情報を含む前記手の骨データを取得する、
情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得し、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する、
各処理を実行させるためのプログラム
であって、
前記手情報は、母指、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の中手骨及び基節骨から選ばれる少なくとも一種の骨の位置情報を含み、
前記取得する処理は、骨の種類と骨の形状と骨の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから骨の種類と骨の形状と骨の位置とに関する情報を含む前記手の骨データを取得する、
プログラム。
【請求項15】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具のモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
を備え、
前記手情報は、MP(metacarpophalangeal)関節及びPIP(proximal interphalangeal)関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含み、
前記取得部は、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む前記手の関節データを取得する、
情報処理装置。
【請求項16】
情報処理装置と造形装置とを少なくとも備えたシステムであって、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具を造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
前記モデルデータに基づいて前記手装具を造形する造形部と、
を備え、
前記手情報は、MP(metacarpophalangeal)関節及びPIP(proximal interphalangeal)関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含み、
前記取得部は、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む前記手の関節データを取得する、
システム。
【請求項17】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、
を含み、
前記手情報は、MP(metacarpophalangeal)関節及びPIP(proximal interphalangeal)関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含み、
前記取得ステップは、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む前記手の関節データを取得する、
情報処理方法。
【請求項18】
コンピュータに、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得し、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する、
各処理を実行させるためのプログラムであって、
前記手情報は、MP(metacarpophalangeal)関節及びPIP(proximal interphalangeal)関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含み、
前記取得する処理は、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む前記手の関節データを取得する、
プログラム。
【請求項19】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具のモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
を備え、
前記手情報は、掌のしわの位置情報を含み、
前記取得部は、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む前記手のしわデータを取得する、
情報処理装置。
【請求項20】
情報処理装置と造形装置とを少なくとも備えたシステムであって、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具を造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
前記モデルデータに基づいて前記手装具を造形する造形部と、
を備え、
前記手情報は、掌のしわの位置情報を含み、
前記取得部は、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む前記手のしわデータを取得する、
システム。
【請求項21】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、
を含み、
前記手情報は、掌のしわの位置情報を含み、
前記取得ステップは、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む前記手のしわデータを取得する、
情報処理方法。
【請求項22】
コンピュータに、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得し、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する、
各処理を実行させるためのプログラムであって、
前記手情報は、掌のしわの位置情報を含み、
前記取得する処理は、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む前記手のしわデータを取得する、
プログラム。
【請求項23】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具のモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
を備え、
前記取得部は、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む前記手の特徴部位データを取得し、
前記生成部は、前記手の外形データ及び前記特徴部位データに基づいて、前記モデルデータに含まれる手装具の外形データ及び硬さデータを生成する、
情報処理装置。
【請求項24】
情報処理装置と造形装置とを少なくとも備えたシステムであって、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、
前記被検体が装着する手装具を造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、
前記モデルデータに基づいて前記手装具を造形する造形部と、
を備え、
前記取得部は、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む前記手の特徴部位データを取得し、
前記生成部は、前記手の外形データ及び前記特徴部位データに基づいて、前記モデルデータに含まれる手装具の外形データ及び硬さデータを生成する、
システム。
【請求項25】
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、
を含み、
前記取得ステップは、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む前記手の特徴部位データを取得し、
前記生成ステップは、前記手の外形データ及び前記特徴部位データに基づいて、前記モデルデータに含まれる手装具の外形データ及び硬さデータを生成する、
情報処理方法。
【請求項26】
コンピュータに、
示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得し、
前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する、
各処理を実行させるためのプログラムであって、
前記取得する処理は、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、前記画像データから、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む前記手の特徴部位データを取得し、
前記生成する処理は、前記手の外形データ及び前記特徴部位データに基づいて、前記モデルデータに含まれる手装具の外形データ及び硬さデータを生成する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CM(carpometacarpal)関節症等の手関節症において、保存治療を行うために手に装着する手装具(手用装具)が利用されている。手装具の設計は、義装具士により手の型取り、型作成、型修正等の工程により行われている。しかし、これらの工程には時間及びコストがかかり、また、経験の異なる設計者間(義装具士間)で品質のばらつきが生じていた。そこで、近年、手装具の設計に要する時間及びコストの軽減や、品質の安定化のため、様々な技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、患者の手にマーカを配置してカメラで撮影し、マーカの位置を用いて手装具を設計する技術が開示されている。また、特許文献2には、手の握る機能を妨げないために、母指と手のひらとの間の領域を覆わないように成形された手装具が開示されている。また、特許文献3には、母指の動きを妨げない手装具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/151382号
【文献】国際公開第2015/028734号
【文献】特開2018-7773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手装具の設計には依然として時間及びコストがかかり、また、品質のばらつきも生じていた。
【0006】
本発明は、装着者に適合した手装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能な情報処理装置、システム、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、前記被検体が装着する手装具のモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部とを備える、情報処理装置である。
【0008】
また、本発明は、情報処理装置と造形装置とを少なくとも備えたシステムであって、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得部と、前記被検体が装着する手装具を造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成部と、前記モデルデータに基づいて前記手装具を造形する造形部と、を備える、システムである。
【0009】
また、本発明は、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、を含む、情報処理方法である。
【0010】
また、本発明は、コンピュータに、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に接触した状態で撮像された画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する取得ステップと、前記被検体が装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成する生成ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装着者に適合した手装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態のシステムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置が有する機能の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、手の画像データが表示された画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、特徴部位のデータベースを説明するための図である。
【
図6】
図6は、特徴部位のデータベースを説明するための図である。
【
図7】
図7は、モデルデータの生成処理を説明するための図である。
【
図8】
図8は、モデルデータの生成処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、モデルデータの生成処理を説明するための図である。
【
図10】
図10は、モデルデータの生成処理を説明するための図である。
【
図11】
図11は、手装具のモデルデータの表示例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本実施形態の情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、他の加工処理について説明するための図である。
【
図15】
図15は、露出領域を有する手装具のモデルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る情報処理装置、システム、情報処理方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態のシステム1の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、実施形態のシステム1は、医用画像診断装置10と、情報処理装置20と、造形装置30とを含む。
図1に例示する各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークにより、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。
【0015】
医用画像診断装置10は、人体を傷つけることなく、通常は目視できない部分を画像化した画像データを生成する装置である。具体的には、
図1に示す医用画像診断装置10は、被検体の撮影部位における体表の輪郭と、撮影部位内に存在する骨とが少なくとも描出された3次元の画像データ(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。例えば、医用画像診断装置10は、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。以下、医用画像診断装置10の一例であるX線CT装置が行う撮影について、簡単に説明する。
【0016】
X線CT装置は、X線を照射するX線管球と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを対向する位置に支持して回転可能な回転フレームを有する架台装置により撮影を行う。X線CT装置は、X線管球からX線を照射させながら回転フレームを回転させることで、投影データを収集し、投影データからX線CT画像データを再構成する。X線CT画像データは、例えば、X線管球とX線検出器との回転面(アキシャル面)における断層像(2次元のX線CT画像データ)となる。
【0017】
X線検出器は、チャンネル方向に配列されたX線検出素子である検出素子列が、回転フレームの回転軸方向に沿って複数列配列されている。例えば、検出素子列が16列配列されたX線検出器を有するX線CT装置は、回転フレームが1回転することで収集された投影データから、被検体の体軸方向に沿った複数枚(例えば16枚)の断層像を再構成する。また、X線CT装置は、回転フレームを回転させるとともに、被検体又は架台装置を移動させるヘリカルスキャンにより、例えば、心臓全体を網羅した500枚の断層像を3次元のX線CT画像データとして再構成することができる。
【0018】
ここで、
図1に示す医用画像診断装置10としてのX線CT装置は、立位、座位又は臥位の状態の被検体を撮影可能な装置である。かかるX線CT装置は、例えば、X線透過性の高い材質で作成された椅子に座った状態の被検体を撮影して、3次元のX線CT画像データを生成する。
【0019】
なお、MRI装置は、位相エンコード用傾斜磁場、スライス選択用傾斜磁場及び周波数エンコード用傾斜磁場を変化させることで収集したMR信号から、任意の1断面のMRI画像や、任意の複数断面のMRI画像(ボリュームデータ)を再構成することができる。
【0020】
本実施形態では、医用画像診断装置10は、被検体の手を含む領域が撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして生成する。そして、医用画像診断装置10は、生成した画像データを、情報処理装置20に送信する。
【0021】
具体的には、医用画像診断装置10は、画像データを、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則った形式のDICOMデータにして、情報処理装置20へ送信する。なお、医用画像診断装置10は、画像データに付帯情報を付与したDICOMデータを作成する。付帯情報には、被検体を一意に識別可能な患者IDや、患者情報(氏名、性別、年齢等)、画像の撮影が行われた検査の種類、検査部位(撮影部位)、撮影時の患者の体位、画像サイズに関する情報等が含まれる。画像サイズに関する情報は、画像空間における長さを実空間における長さに変換する情報として用いられる。なお、本実施形態は、医用画像診断装置10が、立位、座位又は臥位の状態の被検体の手を含んで撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして情報処理装置20へ送信する場合であっても、適用可能である。
【0022】
情報処理装置20は、手装具(手用装具)を装着する被検体(装着者)の画像データを医用画像診断装置10から取得する。例えば、情報処理装置20の操作者(義装具士等)は、被検体の患者IDを用いた検索を行う。これにより、情報処理装置20は、医用画像診断装置10から被検体の手を含んで撮影された3次元のX線CT画像データを取得する。
【0023】
そして、情報処理装置20は、被検体の画像データから取得される各種情報を用いて、被検体が装着する手装具を造形装置30で造形する際の元となるモデルデータを生成する。この詳細な内容については後述する。そして、情報処理装置20は、生成したモデルデータを造形装置30へ送る。
【0024】
造形装置30は、情報処理装置20から受け取ったモデルデータに基づいて、被検体が装着する手装具を造形する造形部31を備える。本実施形態では、造形部31は、3次元プリンタ(3D-Printer)の機能を提供するハードウェア要素群で構成される。
【0025】
3次元プリンタの機能を提供するための造形部31の構成は、公知の様々な構成で実現可能である。例えば、造形部31は、加熱溶融されて所望の温度・圧力となった材料を吐き出すためのノズル、ノズルを3次元方向に移動するための移動機構、ノズルから吐き出された材料により所望の形状のパターン層が形成される造形ステージ、各部を制御する制御部等を含んで構成される。造形部31は、モデルデータに基づいてパターン層を繰り返し積層することにより、モデルデータに対応する3次元構造体を造形する。なお、1つのパターン層は、モデルデータを構成する複数の断層画像のうち、該1つのパターン層と同じ位置に対応する1つの断層画像に基づいて形成される。
【0026】
次に、本実施形態の情報処理装置20について説明する。
図2は、情報処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、情報処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、補助記憶装置24と、入力装置25と、表示装置26と、外部I/F27と、を備える。
【0027】
CPU21は、プログラムを実行することにより、情報処理装置20の動作を統括的に制御し、情報処理装置20が有する各種の機能を実現する。情報処理装置20が有する各種の機能については後述する。
【0028】
ROM22は、不揮発性のメモリであり、情報処理装置20を起動させるためのプログラムを含む各種データ(情報処理装置20の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。RAM23は、CPU21の作業領域を有する揮発性のメモリである。補助記憶装置24は、CPU21が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置24は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
【0029】
入力装置25は、情報処理装置20を使用する操作者(義装具士等)が各種の操作を行うためのデバイスである。入力装置25は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル又はハードウェアキーで構成される。
【0030】
表示装置26は、各種情報を表示する。例えば、表示装置26は、画像データやモデルデータ、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像等を表示する。表示装置26は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はブラウン管ディスプレイで構成される。なお、例えばタッチパネルのような形態で、入力装置25と表示装置26とが一体に構成されても良い。
【0031】
外部I/F27は、医用画像診断装置10や造形装置30等の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。
【0032】
図3は、情報処理装置20が有する機能の一例を示す図である。なお、
図3の例では、本実施形態に関する機能のみを例示しているが、情報処理装置20が有する機能はこれらに限られるものではない。
図3に示すように、情報処理装置20は、記憶部201、ユーザインタフェース部202、取得部203、生成部204及び出力部205を有する。
【0033】
記憶部201は、例えば
図2に示す補助記憶装置24(例えばHDD)により実現される。記憶部201は、医用画像診断装置10から取得した画像データ(DICOMデータ)や、モデルデータの生成の際に参照されるデータベース等を記憶する。
【0034】
ユーザインタフェース部202は、操作者の入力を受け付ける機能、及び、各種情報を表示する機能を有する。例えば、ユーザインタフェース部202は、操作者から手装具を作成する被検体の画像データを呼び出すための操作を受け付けると、該操作により指定された画像データを記憶部201から読み出して表示装置26に表示する制御を行う。
【0035】
図4は、手の画像データが表示された画面の一例を示す図である。
図4は、表示装置26の画面に表示された3次元のX線CT画像データを示している。
図4に示す3次元のX線CT画像データは、被検体の手の体表面(外形)をサーフェスレンダリング処理により描出したものである。なお、
図4では図示しないが、X線CT画像データは被検体の骨の情報も含むので、骨を描出した画像を、手の体表面を描出した画像と並列表示(又は重畳表示)させることができる。
【0036】
なお、3次元の画像データを2次元の画面にて表示する際、3次元の画像データには、各種レンダリング処理が施される。レンダリング処理としては、ボリュームレンダリング処理やサーフェスレンダリング処理、断面再構成法(MPR:Multi Planar Reconstruction)等が挙げられる。ボリュームレンダリング処理では、ボリュームデータの3次元情報を反映した2次元画像データを生成することができる。また、サーフェスレンダリング処理では、ボリュームデータから任意の部位(体表面、骨など)の表面情報を抽出して、2次元画像データを生成することができる。また、MPRでは、ボリュームデータから任意の断面のMPR画像データを再構成することができる。本実施形態では、後述する生成部204が、3次元の画像データに対して、各種レンダリング処理を行う。
図4に示す画像は、3次元のX線CT画像データに対してボリュームレンダリング処理を行った画像を示している。
【0037】
ここで、本実施形態では、画像データは、示指の指先と母指の指先とが接触した状態で撮像されたものである。この状態であれば、被検体は、母指に力を加えることができる。これにより、本実施形態では、母指に力が加わった状態の手の形状に合った形状の手装具を作成することが可能となる。なお、
図4では、示指の指先と母指の指先とが接触した状態を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、母指に力を加えることが可能な状態(姿勢)であれば、必ずしも指先同士が接触していなくても良く、例えば、示指の第一関節又は第二関節と母指の指先とが接触した状態であっても良い。また、母指と接触するのは示指に限らず、中指、環指、又は小指であっても良い。また、直接的に接触した状態に限らず、例えば、示指と母指とで例えば板状の物体を持つ(摘む)ことで、示指と母指とが間接的に繋がれた状態であってもよい。つまり、画像データは、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指と母指とが直接又は間接的に繋がれた状態で撮像されたものである。なお、本実施形態において、指先は、指の末節骨に対応する部位の腹側又は背側に対応する。
【0038】
図3に戻って、取得部203は、手装具の設計に要する種々のデータを取得する。例えば、ユーザインタフェース部202が患者IDを含む画像データの取得要求を受け付けると、取得部203は、患者IDに対応する画像データの送信要求を外部I/F27を介して医用画像診断装置10に送信する。外部I/F27は、医用画像診断装置10から受信した画像データを記憶部201に格納する。そして、取得部203は、記憶部201から画像データを取得する。
【0039】
そして、取得部203は、画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得する。例えば、取得部203は、3次元のX線CT画像データに対して、エッジ検出処理等の公知の画像処理を行って、手の輪郭(体表面)を抽出する。これにより、取得部203は、画像データから被検体の手の表面形状を3次元で表す外形データを取得する。
【0040】
また、取得部203は、画像データから、手の特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置とに関する情報を含む特徴部位データを取得する。ここで、手の特徴部位とは、例えば、骨、関節、及びしわ等である。取得部203は、特徴部位の種類と、特徴部位の形状と、特徴部位の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、特徴部位データを取得する。
【0041】
例えば、取得部203は、骨の種類と骨の形状と骨の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、画像データから骨の種類と骨の形状と骨の位置とに関する情報を含む手の骨データを取得する。まず、取得部203は、3次元のX線CT画像データに対して公知のセグメンテーション処理を行って、骨に対応する3次元領域(3次元の骨領域)を抽出する。例えば、取得部203は、骨のCT値に対応するボクセルを抽出することで、3次元の骨領域を抽出する。そして、取得部203は、データベースを参照して、抽出した3次元の骨領域に含まれる複数の骨それぞれの形状、種類、位置を特定する。
【0042】
また、取得部203は、骨データと同様の処理により、関節データ及びしわデータを取得可能である。つまり、取得部203は、関節の種類と関節の形状と関節の位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、画像データから関節の種類と関節の形状と関節の位置とに関する情報を含む手の関節データを取得する。また、取得部203は、しわの種類としわの形状としわの位置情報とが関連付けて記憶されたデータベースを参照して、画像データからしわの種類としわの形状としわの位置とに関する情報を含む手のしわデータを取得する。なお、骨データ、関節データ、及びしわデータは、特徴部位データの一例である。
【0043】
図5及び
図6は、特徴部位のデータベースを説明するための図である。
図5は、手の骨及び関節をパターンマッチングにより検出するためのテンプレートである。
図6は、手のしわをパターンマッチングにより検出するためのテンプレートである。本実施形態では、骨、関節、及びしわ等の特徴部位のテンプレートは、記憶部201に格納されている。
【0044】
図5及び
図6には、標準的な左手のテンプレートを例示する。ここで、各図の上方が指先側に対応し、各図の下方が前腕側に対応する。また、各図の左方が母指側に対応し、各図の右方が小指側に対応する。つまり、
図5及び
図6には、各図の左から順に、母指、示指、中指、環指、及び小指と並ぶように、左手の骨、関節、及びしわを表すテンプレートを例示する。なお、記憶部201は、左手のテンプレートと同様に右手のテンプレートも記憶する。
【0045】
図5に示すように、骨及び関節のテンプレートは、手を構成する各種の骨及び関節を表す。ここで、骨のテンプレートは、各骨の種類、各骨の形状、及び各骨の位置がそれぞれ対応づけられた情報である。
【0046】
各骨の種類は、例えば、識別情報(例えば、解剖学的名称)で表される。具体的には、母指を構成する各骨の名称は、中手骨、基節骨、及び末節骨である。また、示指、中指、環指、及び小指を構成する各骨の名称は、中手骨、基節骨、中節骨、及び末節骨である。なお、中手骨、基節骨、中節骨、及び末節骨は、厳密には、いずれの指の骨であるかを区別可能な名称として記憶される。例えば、中手骨は、母指中手骨、示指中手骨、中指中手骨、環指中手骨、及び小指中手骨として区別してテンプレートに記憶される。また、母指、示指、中指、環指、及び小指の付け根に位置する複数の骨は、手根骨である。手根骨についても、手根骨に含まれる複数の骨をそれぞれ区別して記憶される。また、手根骨に繋がる前腕の骨は、橈骨及び尺骨である。橈骨及び尺骨は、前腕を構成する骨であるので必ずしもテンプレートに含まれなくても良いが、パターンマッチングを行うには橈骨及び尺骨の情報があるのが好適である。
【0047】
また、各骨の形状は、例えば、特徴点の集合として表される。特徴点は、各骨の3次元的な輪郭形状から公知の画像処理により検出されるエッジやコーナー等に対応する。また、各骨の形状は、各骨の長手方向の長さや太さ等の情報を含んでいても良い。
【0048】
また、各骨の位置は、例えば、他の骨との位置関係により表される。一例として、母指中手骨の位置は、手根骨及び母指基節骨の間であるという位置関係により表される。また、各骨の位置は、体表面上の特徴部位(爪、各指の付け根、手首、しわ等)との位置関係により表されても良い。
【0049】
また、関節のテンプレートは、各関節の種類、各関節の形状、及び各関節の位置がそれぞれ対応づけられた情報である。
【0050】
各関節の種類は、例えば、識別情報(解剖学的名称)で表される。一例として、各関節の種類は、CM(carpometacarpal)関節、MP(metacarpophalangeal)関節、IP(interphalangeal)関節、PIP(proximal interphalangeal)関節、及びDIP(distal interphalangeal)関節を含む。なお、各関節の名称は、いずれの指の関節であるかを区別可能な名称として記憶可能である。
【0051】
また、各関節の形状は、例えば、特徴点の集合として表される。特徴点は、各関節の3次元的な輪郭形状から公知の画像処理により検出されるエッジやコーナー等に対応する。また、各関節の形状は、関節間隙の距離や体積等の情報を含んでいても良い。
【0052】
また、各関節の位置は、例えば、各関節を形成する骨との位置関係により表される。一例として、CM関節は、手根骨と中手骨との間に位置する。また、MP関節は、中手骨と基節骨との間に位置する。また、IP関節は、母指基節骨と母指末節骨との間に位置する。また、PIP関節は、示指基節骨と示指中節骨との間に位置する。また、DIP関節は、示指中節骨と示指末節骨との間に位置する。また、各関節の位置は、体表面上の特徴部位(爪、各指の付け根、手首、しわ等)との位置関係により表されても良い。
【0053】
図6に示すように、しわのテンプレートは、手の体表面にある各種のしわを表す。ここで、しわのテンプレートは、各しわの種類、各しわの形状、及び各しわの位置がそれぞれ対応づけられた情報である。
【0054】
各しわの種類は、例えば、識別情報(解剖学的名称)で表される。一例として、各しわの種類は、指節間関節線、遠位指節間関節線、近位指節間関節線、中手指節関節線、遠位横手掌皮線、中位手掌皮線、母指線、遠位手根線、及び近位手根線を含む。なお、各指のしわの名称は、いずれの指のしわであるかを区別可能な名称として記憶可能である。
【0055】
また、各しわの形状は、例えば、特徴点の集合として表される。特徴点は、各しわの3次元的な輪郭形状から公知の画像処理により検出されるエッジやコーナー等に対応する。また、各しわの形状は、長さや幅等の情報を含んでいても良い。
【0056】
また、各しわの位置は、例えば、各関節との位置関係により表される。一例として、指節間関節線は、IP関節の体表面上に位置する。また、各しわの位置は、他の特徴部位(骨、爪、各指の付け根、手首等)との位置関係により表されても良い。
【0057】
なお、説明の都合上、
図5及び
図6には、標準的な左手の骨、関節、及びしわを表すテンプレートをイラストにより例示したが、データベースには必ずしもイラストとして格納されているとは限らない。つまり、特徴部位のテンプレートは、特徴部位の種類を示す識別情報、特徴部位の形状を示す特徴点、及び特徴部位の位置を示す位置関係がそれぞれ対応づけられた情報であれば良い。
【0058】
すなわち、取得部203は、
図5及び
図6に示す特徴部位のテンプレートと、3次元のX線CT画像データからセグメンテーション処理により抽出した3次元の骨領域とのパターンマッチングを行って、骨データ、関節データ、及びしわデータを取得する。なお、取得部203は、必ずしも、図示した全ての骨、関節、しわのデータを取得しなくてもよい。例えば、取得部203が取得する手情報は、示指、中指、環指、小指から選ばれる少なくとも一つの指の中手骨及び基節骨から選ばれる少なくとも一種の骨の位置情報を含む。また、取得部203が取得する手情報は、母指の中手骨及び母指の基節骨の位置情報を含む。また、取得部203が取得する手情報は、MP関節及びPIP関節から選ばれる少なくとも一種の位置情報を含む。また、取得部203が取得する手情報は、母指のMP関節及び母指のIP関節の位置情報を含む。また、取得部203が取得する手情報は、掌のしわの位置情報を含む。
【0059】
なお、特徴部位のデータベースは、「男性、8才~10才」のテンプレートや、「女性、20才~30才」のテンプレートのように、標準的な形状の手を表すテンプレートを性別及び年齢ごとに記憶していても良い。この場合、取得部203は、DICOMデータの付帯情報から被検体の性別及び年齢を取得し、取得した性別及び年齢に該当するテンプレートをデータベースから読み出し、手の骨データを取得する。
【0060】
図3の説明に戻る。生成部204は、被検体が装着する手装具のモデルデータを、手情報に基づいて生成する。モデルデータは、手装具の外形データ及び硬さデータから選ばれる少なくとも一種のデータと、当該データと関連付けられた位置データとを含む。例えば、生成部204は、取得部203により取得された手情報に基づいて、手装具の外形を表す外形データを生成する。そして、生成部204は、手情報に基づいて、手装具の硬さを表す硬さデータを生成する。
【0061】
例えば、生成部204は、特徴部位データに基づいて、複数のカット面の位置を決定する。そして、生成部204は、手の表面形状のうち複数のカット面で囲まれた部分を覆うように、手装具の外形データを生成する。そして、生成部204は、特徴部位データに基づいて、手装具の外形データ上に境界線を設定する。そして、生成部204は、境界線で区切られた各領域の硬さデータを生成する。そして、生成部204は、特徴部位データに基づいて、モデルデータに対して各種の加工処理を実行する。
【0062】
図7~
図10は、モデルデータの生成処理を説明するための図である。なお、
図7~
図10の例では、被検体の右手の手情報に基づいて、右手用の手装具のモデルデータを生成する場合を説明するが、左手用の手装具のモデルデータも同様に生成可能である。
【0063】
図7を用いて、生成部204が複数のカット面の位置を決定する処理を説明する。
図7には、右手の表面形状を3次元で表す外形データの上面図及び側面図を例示する。また、
図7には、手の外形データ上に設定されたカット面A、カット面B、及びカット面Cの位置を示すマーカを例示する。なお、カット面とは、手装具の端部(開口部)に対応する位置を規定する情報である。また、
図7において、上面図は、母指、示指、及び橈骨が手前側に見え、小指及び尺骨が奥側に見える方向から見た図である。また、側面図は、掌側から見た図である。
【0064】
生成部204は、骨データ、関節データ、及びしわデータのうち任意の特徴部位データを用いて、カット面A、カット面B、及びカット面Cの位置を決定する。例えば、骨データを用いる場合、生成部204は、母指基節骨の長手方向における略中間点を通る面(平面又は曲面)を、カット面Aとして決定する。また、例えば、関節データを用いる場合、生成部204は、IP関節とMP関節との略中間点を通る面を、カット面Aとして決定する。また、例えば、しわデータを用いる場合、生成部204は、母指の指節間関節線から5mm~10mm下側(掌に近い側)の位置を通る面を、カット面Aとして決定する。
【0065】
また、生成部204は、カット面B及びカット面Cの位置についてもカット面Aの位置と同様に、特徴部位データに基づいて決定する。例えば、生成部204は、示指、中指、環指、及び小指の各MP関節を通る曲面を、カット面Bとして決定する。また、生成部204は、遠位手根線に略平行な面を、カット面Cとして決定する。
【0066】
なお、生成部204がカット面の位置を決定する処理は、上記の内容に限らず、操作者により予め設定されたアルゴリズムに基づいて任意に変更可能である。例えば、生成部204は、骨データ、関節データ、及びしわデータのうち複数の特徴部位データを組み合わせて、カット面の位置を決定することもできる。例えば、生成部204は、骨データを用いて決定された面と、しわデータを用いて決定された面との中間に位置する面を、カット面として決定する。
【0067】
図8を用いて、手装具の外形データを生成する処理を説明する。
図8の左図には、
図7にて設定されたカット面A、カット面B、及びカット面Cの位置を例示する。
図8の右図には、
図8の左図に示した情報に基づいて生成される手装具の外形データを例示する。
【0068】
生成部204は、手の表面形状のうち、カット面A、カット面B、及びカット面Cにより囲まれた部分を覆うように、手装具の外形データを生成する。例えば、生成部204は、手の外形データから、カット面A、カット面B、及びカット面Cにより囲まれた部分を抜き出す。そして、生成部204は、抜き出された部分の手の表面形状を覆うように、手装具の外形データを生成する。この結果、
図8の右図に示すように、生成部204は、開口部A、開口部B、及び開口部Cを有する手装具の外形データを生成する。開口部A、開口部B、及び開口部Cの位置は、カット面A、カット面B、及びカット面Cの位置にそれぞれ対応する。また、手装具の内面形状は、手の表面形状と略一致、又は、手の表面形状よりオフセット分(数mm程度)間隔が生じるように決定される。
【0069】
図9を用いて、手装具の硬さデータを生成する処理を説明する。
図9の左図には、
図8にて生成された手装具の外形データを例示する。
図9の右図には、
図9の左図に示した手装具の外形データに基づいて生成される硬さデータを例示する。
【0070】
生成部204は、骨データ、関節データ、及びしわデータのうち任意の特徴部位データを用いて、手装具の外形データ上に少なくとも1つの境界線を設定する。例えば、生成部204は、母指MP関節と示指MP関節との略中間点と、母指CM関節から10mm下側(胴体に近い側)の位置とを通る曲線を、境界線Aとして設定する。そして、生成部204は、境界線の左側の領域(母指を含む領域)の硬さと、境界線の右側の領域(手の甲側の領域)の硬さとを、それぞれ決定する。ここで、境界線の左側の領域には、例えば、母指の動きを制限できる程度の硬さが設定される。また、境界線の右側の領域には、例えば、手の動きを制限しない程度の硬さが設定される。なお、硬さが異なる各領域は、硬さに応じたRGBの輝度値で示されるのが好適である。
【0071】
なお、硬さデータにより規定された手装具の硬さは、手装具の厚みにより実現されてもよいし、手装具の材料(造形装置30により利用される材料)の組成により実現されても良い。厚みにより実現される場合、硬さに応じた厚みをモデルデータに反映させてもよい。例えば、生成部204は、手装具のモデルデータの内面形状を変えずに、外面を隆起させることで、硬さに応じた厚みを与えることができる。
【0072】
また、
図9では、生成部204が関節データを用いて硬さデータを生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成部204は、任意の骨の位置やしわの位置に基づいて、硬さデータを生成可能である。また、この場合、複数の特徴部位の位置を組み合わせて利用することもできる。
【0073】
図10を用いて、モデルデータに対する加工処理の一例を説明する。
図10には、加工処理の例として、手装具の内面形状のスムージング処理と、オーバーラップ領域を設定する処理とを例示する。なお、加工処理はこれらに限定されるものではなく、任意の加工処理が適用可能である。加工処理の他の例については後述する。
【0074】
手装具の内面形状のスムージング処理は、手装具の内面形状を滑らかにするための加工処理である。例えば、手の表面形状において、しわの位置に窪みがある。このため、手の表面形状に一致するように手装具の内面形状を形成した場合、手装具の内面にはしわの位置に対応する位置に隆起ができる。そこで、この隆起を平滑にするために、生成部204は、しわデータに基づいて、モデルデータにクリアランスを設定する。例えば、生成部204は、しわの位置に、しわの無い位置のオフセットより大きいオフセットを設定する。これにより、生成部204は、手装具の内面における隆起を平滑にすることができる。
【0075】
また、オーバーラップ領域は、手装具の着脱時に開閉可能な形状であり、装着時に重なり合う部分に対応する。このオーバーラップ領域は、手の甲側に設けられるのが好適である。そこで、生成部204は、しわデータに基づいて、モデルデータにオーバーラップ領域を設定する。例えば、生成部204は、母指線、中位手掌皮線、遠位手掌皮線等のしわが存在する面を掌として認識する。そして、生成部204は、掌の面とは反対側の面を手の甲として認識する。そして、生成部204は、モデルデータのうち、手の甲側の面にオーバーラップ領域を設定する。
【0076】
このように、生成部204は、手装具の外形データと、手装具の各領域の硬さデータとを含む情報を、モデルデータとして生成する。なお、
図10では、しわデータを用いて加工処理を実行する場合を説明したが、生成部204は、骨データや関節データを用いて加工処理を実行することも可能である。
【0077】
生成部204がモデルデータを生成すると、ユーザインタフェース部202は、モデルデータを表示するように表示装置26を制御する。本実施形態では、ユーザインタフェース部202は、モデルデータを手情報とともに表示装置26に表示させる。例えば、ユーザインタフェース部202の指示により、生成部204は、モデルデータに含まれる位置データに基づいて、手装具のモデルデータ、手の外形データを3次元空間に配置した状態でボリュームレンダリング処理を行って、表示用の画像データを生成する。
【0078】
図11は、手装具のモデルデータの表示例を示す図である。これにより、表示装置26は、
図11に示すように、生成部204が生成したモデルデータと、手の外形データとが重畳された画像データを表示する。なお、重畳表示される場合には、手装具のモデルデータを半透明に加工して、手の外形データが閲覧可能となるように表示するのが好適である。また、手装具のモデルデータ及び手の外形データは、重畳表示に限らず、並列表示されても良い。また、手情報としては、手の外形データに限らず、骨データ、関節データ、及びしわデータ等の特徴部位データを表示することも可能である。また、手情報の表示及び非表示は、操作者により切り替え可能に設定される。
【0079】
操作者は、視点位置や視線方向を調整して、モデルデータを様々な方向から確認する。また、操作者の要求に応じて、生成部204は、示指、中指、環指、及び小指のうち少なくとも一つの指が折り曲げられた状態の疑似画像を生成し、表示装置26に表示させる。例えば、生成部204は、骨データを参照し、示指、中指、環指、及び小指それぞれのMP関節の位置を特定する。そして、生成部204は、各MP関節の位置を起点として各指が折れ曲がった状態の表面形状を表す画像データを擬似的に生成する。これにより、操作者は、モデルデータにより造形される手装具が、指の動きに干渉するか否かを予めデータ上で確認することができる。
【0080】
また、操作者は、表示装置26に表示されたモデルデータ及び手情報を参照して、モデルデータを修正する操作を、入力装置25を用いて行う。ユーザインタフェース部202は、操作者からモデルデータを修正する操作を受け付けると、受け付けた操作を生成部204に通知する。生成部204は、ユーザインタフェース部202が受け付けた操作に応じた修正をモデルデータに行う。例えば、操作者は、手装具が示指の動きに干渉すると判断すると、カット面Bの位置を修正する操作を行う。生成部204は、操作者の操作に応じてカット面Bの位置を修正する。
【0081】
なお、操作者は、カット面Bに限らず、モデルデータに含まれる外形データや硬さデータを任意に修正することができる。例えば、操作者は、他のカット面や境界線の位置を修正しても良い。また、操作者は、境界線で区切られた各領域の硬さデータを修正しても良い。また、操作者は、スムージング処理の状況やオーバーラップ領域の形状を修正しても良い。
【0082】
図3の説明に戻る。出力部205は、生成部204により生成されたモデルデータを造形装置30へ出力する。或いは、出力部205は、生成部204が操作者の指示操作に応じて修正したモデルデータを造形装置30へ出力する。なお、出力部205は、生成部204が生成したモデルデータや生成部204が修正したモデルデータの出力要求を操作者から受け付けた後に、造形装置30への出力処理を行う。造形装置30の造形部31は、情報処理装置20から受け取ったモデルデータを用いて、手装具を造形する。なお、造形装置30が造形した手装具は、必要に応じて、操作者により形状が修正される。
【0083】
図12及び
図13は、本実施形態の情報処理装置20の動作例を示すフローチャートである。なお、各ステップの具体的な内容は上述した通りであるので、詳細な説明は適宜に省略する。
【0084】
図12に示すように、ユーザインタフェース部202は、画像データの取得要求を受け付ける(ステップS101)。ユーザインタフェース部202が画像データの取得要求を受け付けると、取得部203は、画像データを取得する(ステップS102)。
【0085】
そして、取得部203は、データベースを参照して、画像データから手情報を取得する(ステップS103)。そして、生成部204は、取得部203により取得された手情報に基づいて、モデルデータ生成処理を実行する(ステップS104)。
【0086】
図13を用いて、ステップS104のモデルデータ生成処理を説明する。
図13に示すように、生成部204は、特徴部位データに基づいて、複数のカット面の位置を決定する(ステップ201)。そして、生成部204は、手の表面形状のうち複数のカット面で囲まれた部分を覆うように、手装具の外形データを生成する(ステップ202)。そして、生成部204は、特徴部位データに基づいて、手装具の外形データ上に境界線を設定する(ステップ203)。そして、生成部204は、境界線で区切られた各領域の硬さデータを生成する(ステップ204)。そして、生成部204は、特徴部位データに基づいて、モデルデータに対して各種の加工処理を実行する(ステップ205)。例えば、生成部204は、加工処理として、手装具の内面形状のスムージング処理、及び、オーバーラップ領域を設定する処理を実行する。
【0087】
図12の説明に戻る。ユーザインタフェース部202の制御により、表示装置26は、モデルデータを表示する(ステップS105)。ステップS105において、表示装置26は、モデルデータとともに、手情報を表示する。
【0088】
次に、ユーザインタフェース部202は、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。モデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS106、Yes)、出力部205は、造形装置30にモデルデータを出力し(ステップS107)、処理を終了する。
【0089】
一方、モデルデータの出力要求を受け付けない場合(ステップS106、No)、ユーザインタフェース部202は、モデルデータの修正要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS108)。モデルデータの修正要求を受け付けた場合(ステップS108、Yes)、生成部204は、モデルデータの修正要求に応じてモデルデータを修正する(ステップS109)。
【0090】
一方、モデルデータの修正要求を受け付けない場合(ステップS108、No)、或いは、ステップS109の後、ユーザインタフェース部202は、ステップS106に戻って、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する。ステップS109の後に、ステップS106においてモデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS106、Yes)、出力部205は、造形装置30に修正後のモデルデータを出力し(ステップS107)、処理を終了する。
【0091】
なお、
図12及び
図13に示した処理手順はあくまで一例であり、処理内容に矛盾が生じない範囲で適宜順番を入れ替えて実行可能である。また、各処理手順は、必ずしも実行されなくても良い。例えば、ステップS205の加工処理は、必ずしも実行されなくても良い。
【0092】
以上、説明したように、本実施形態の情報処理装置20は、画像データに基づく被検体の手の外形データを含む手情報を取得し、手情報に基づいて、手装具のモデルデータを生成する。すなわち、本実施形態では、被検体のX線CT画像データに基づいて、正確な手の外形寸法を取得することができる。この結果、本実施形態では、装着者に適合した手装具を容易に設計することができる。
【0093】
また、本実施形態では、装着者の手情報に基づいて、自動的に手装具のモデルデータを生成する。このため、本実施形態では、義装具士間での品質のばらつきが抑えられ、品質を安定化させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、手情報に基づいて、位置ごとに硬度が設定された硬さデータを含めたモデルデータを生成する。この結果、本実施形態では、装着者の手の位置に応じて適切な硬さが設定されたモデルデータを容易に設計することができる。
【0095】
また、本実施形態では、操作者は、モデルデータと手情報とが重畳された画面を参照して、操作者がモデルデータの修正を行うことができる。例えば、操作者は、手の外形データや、手の特徴部位データを参照して、装着者の症状を把握しながら、モデルデータを修正することができる。この結果、本実施形態では、装着者の手の症状をケアするためのモデルデータを容易に設計することができる。
【0096】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0097】
(変形例)
以下に変形例を記載する。
【0098】
(1)変形例1
上述した実施形態では、加工処理として、手装具の内面形状のスムージング処理と、オーバーラップ領域を設定する処理とを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、実施形態では、加工処理として、留め具領域、孔領域、及び切りかけ症域を設定する処理を適宜実行可能である。
【0099】
図14は、他の加工処理について説明するための図である。例えば、生成部204は、特徴部位データに基づいて、留め具領域、孔領域、及び切りかけ領域を設定する処理を適宜実行する。ここで、留め具領域は、手装具の着脱を行うための留め具を形成する領域である。留め具は、例えば、突起と、突起が勘合する溝により形成される。例えば、生成部204は、オーバーラップ領域のうち中指の中手骨に対応する位置に、留め具領域を設定する。また、孔領域は、手装具の装着時の蒸れを防ぐための孔の位置を示す領域である。孔は、発汗が多い掌に設けられるのが好適である。例えば、生成部204は、母指線、中位手掌皮線、及び遠位横手掌皮線の位置に基づいて、所定数の孔を所定間隔で配置する。また、切りかけ領域は、例えば、母指IP関節の可動性を挙げるために設けられる領域である。例えば、生成部204は、母指IP関節の位置に基づいて、所定の大きさの切りかけを設定する。
【0100】
なお、
図14にて説明した加工処理以外にも、任意の処理を実行可能である。例えば、手装具の外面を厚くする肉盛り領域を設定する処理、手装具の外面に所定のパターン(模様)を付与する領域を設定する処理、所定のパターンの切り抜きを行う領域を設定する処理等が挙げられる。これらの処理についても、生成部204は、特徴部位データに基づいて各領域の位置を決定することができる。
【0101】
(2)変形例2
上述した実施形態では、被検体の掌を覆い隠すような形状の手装具を設計する場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、部分的に掌が露出する露出領域を有する手装具の設計も行うことができる。
【0102】
図15は、露出領域を有する手装具のモデルデータの一例を示す図である。
図15に示すように、本実施形態では、生成部204は、露出領域を有する手装具のモデルデータを生成可能である。また、生成部204は、露出領域の位置を、特徴部位データに基づいて設定することができる。例えば、生成部204は、小指の中手骨から所定距離以内に含まれる領域を、露出領域として設定する。
【0103】
(3)変形例3
上述した実施形態では、CM関節症用の手装具のモデルデータを生成する場合を説明したが、これに限らず、CM関節症以外の他の手関節症に用いられる手装具のモデルデータ生成にも適用可能である。
【0104】
(4)変形例4
上述した実施形態では、画像データが医用画像診断装置10により撮影される場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、画像データは、3Dスキャナにより撮影されたものであっても適用可能である。例えば、3Dスキャナは、画像データとして3Dスキャンデータを撮影する。3Dスキャンデータは、手情報として、手の外形データを含む。また、3Dスキャンデータは、取得部203の処理により、しわデータを取得可能である。つまり、画像データとして3Dスキャンデータが適用される場合にも、本実施形態は、上述した処理のうち手の外形データ及びしわデータを用いた処理を実行可能である。
【0105】
(5)変形例5
上述した実施形態では、手情報(手の外形データ及び手の特徴部位データ)が、取得部203による画像解析処理により行われる場合について説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態は、画像データを参照した操作者(医師等)が、手の外形や、骨を構成する骨の外形、種類及び位置を入力することで手情報が取得される場合であっても良い。また、上述した実施形態では、情報処理装置20が画像データを解析して手情報を取得する場合について説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態は、別の装置の解析により画像データから取得された手情報を、情報処理装置20が取得する場合であっても良い。
【0106】
(6)変形例6
上述した実施形態では、装置間のデータの受け渡しがネットワークを介した送受信で行われる場合について説明したが、本実施形態は、データの受け渡しが、DVD(Digital Versatile Disk)等の記憶媒体を介して行われる場合でも良い。また、上述した実施形態では、医用画像診断装置10から画像データを取得する場合について説明したが、本実施形態は、様々な医用画像診断装置が撮影した画像データを保管する医用画像保管装置から、画像データを取得する場合であっても良い。
【0107】
(7)変形例7
上述した実施形態では、手の特徴部位データを取得するためのデータベースが記憶部201に格納されている場合について説明したが、本実施形態は、かかるデータベースが情報処理装置20と通信可能な外部装置に格納されている場合であっても良い。
【0108】
(8)変形例8
上述した実施形態におけるシステム1は、医用画像診断装置10と、情報処理装置20と、造形装置30とを含んで構成されているが、本実施形態のシステム1は、上述した情報処理装置20と、手装具を造形する造形装置30とを少なくとも備える形態であれば良い。また、例えば、上述した情報処理装置20が有する機能のうちの少なくとも一部が造形装置30に搭載される形態であっても良い。すなわち、本実施形態が適用されるシステムは、上述の取得部203と、上述の生成部204と、上述の造形部31とを少なくとも備え、これらの構成要素は、情報処理装置20又は造形装置30に任意に設けられ得る。例えば、上述の生成部204が造形装置30に設けられる形態であっても良い。
【0109】
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせても良い。
【0110】
また、上述した実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良いし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、各種プログラムを、例えばROM等の不揮発性の記憶媒体に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0111】
[実施例]
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
8人のCM関節症患者モニターに対して
図4に示すように示指と母指とが直接的に接触した状態で画像データを撮像した。そして、撮像された画像データに基づいて患者モニターの手の外形データを含む手情報を取得した。
【0113】
続いて、前記モニターが装着する手装具を造形装置で造形する際の元となるモデルデータを、前記手情報に基づいて生成した。具体的には、
図7に示すように特徴部位データである関節データに基づいて、カット面A、カット面B、及びカット面Cの位置を決定した。なお、母指MP関節から5mm下側(胴体に近い側)の位置を通る面をカット面Aとして設定した。そして、手装具の内面形状は、手の表面形状1mm程度間隔が生じるように決定した。
【0114】
さらに、モデルデータとしては、
図14に示すように留め具領域、孔領域を備えるよう加工した。
【0115】
そして、得られたモデルデータに基づき、造形装置としてFFF(Fused filament fabrication)型3Dプリンター(株式会社フュージョンテクノロジー社製、型番L-DEVO M3145TP)、造形材料として熱可塑性エラストマーであるFabrial(登録商標)-Rを用いて造形し、手装具を得た。
【0116】
(実施例2)
母指IP関節から10mm下側(胴体に近い側)の位置を通る面をカット面Aとして設定し、モデルデータとしては
図14に示すように切りかけ領域、留め具領域、孔領域を備えるよう加工した。カット面Aの位置及びモデルデータの加工以外については、実施例1と同様に手装具を得た。
【0117】
(比較例)
8人のCM関節症患者モニターに対して示指と母指とが接触しない状態で、水硬化ギプスにて採型した母型に石膏を流し、転写型(患者モニターの手の型)を作成した。そして、当該型に基づいてポリプロピレンシートを成型して手装具を作成した。
【0118】
これらの実施例1、2、及び比較例の手装具をそれぞれ用いて、8人のCM関節症患者モニターに適用し、以下の項目について評価した。
【0119】
【0120】
[動作時の疼痛の評価]
動作時の疼痛の評価については、実施例1、2、又は比較例の手装具を装着しており、手を使うときの痛みの程度をCM関節症患者モニターが評価した結果を用いた。評価の基準は0(全く痛くない)から100(耐えがた最悪の痛みがある)までの数値とした。表1には8人のCM関節症患者モニターの平均値を示す。
【0121】
[装着頻度]
CM関節症患者モニターが起きている間に何%の時間において実施例1、2、又は比較例の手装具を装着していたかをアンケートして、得られた回答結果を用いた。表1には8人のCM関節症患者モニターの平均値を示す。
【0122】
[満足度]
実施例1、2、及び比較例の手装具に対するCM関節症患者モニターの満足度をCM関節症患者モニターが評価した結果を用いた。評価の基準は0(大変不満)から10(大変満足)までの数値とした。表1には8人のCM関節症患者モニターの平均値を示す。
【0123】
表1に示す結果からも比較例の手装具と比較して実施例1、2の手装具は同等以上の除痛効果が得られることが確認された。また、実施例1、2の手装具についてはCM関節症患者モニターの装着時間が向上しており、比較例の手装具よりも各CM関節症患者モニターの手により適合した手装具であると推察される。また、これらの結果、実施例1、2の手装具は比較例の手装具と比べて、患者の満足度も非常に高いことも確認された。
【符号の説明】
【0124】
1 システム
10 医用画像診断装置
20 情報処理装置
30 造形装置
31 造形部
201 記憶部
202 ユーザインタフェース部
203 取得部
204 生成部
205 出力部