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特許7341420アンカーボルトの施工治具および基礎型枠構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】アンカーボルトの施工治具および基礎型枠構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20230904BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20230904BHJP
   E04G 9/10 20060101ALI20230904BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/01 C
E04G9/10 104A
E04G21/18 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019063752
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165097
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兪 東延
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-066741(JP,U)
【文献】実開平03-023552(JP,U)
【文献】特開2000-054396(JP,A)
【文献】実開昭60-001849(JP,U)
【文献】特開2018-104948(JP,A)
【文献】特開2010-216196(JP,A)
【文献】特開平04-228724(JP,A)
【文献】実開昭62-154044(JP,U)
【文献】特開2008-255724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
E04G 9/10
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内にコンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎の上面から上方にアンカーボルトの上端部が突出するように、前記コンクリート基礎に前記アンカーボルトを埋設固定するためのアンカーボルトの施工治具であって、
前記型枠の対向する一対の側壁部の内壁面に取付けられる内壁取付部と、前記内壁取付部が前記内壁面に取付けられた状態で、前記型枠の内方に突出した受け部と、を備えた一対の受け具と、
前記アンカーボルトを吊下げた状態で保持し、前記受け具の各受け部に固定具で支持固定されるアンカープレートと、を備え、
前記内壁取付部と前記受け部とは連続しており、前記内壁取付部が前記内壁面に取付けられた状態で、前記内壁取付部は、前記受け部の下方に位置するものであり、
前記各受け具の受け部には、前記固定具が挿通される第1貫通孔が形成されており、
前記アンカープレートには、前記アンカープレートが前記受け具に支持された状態で、前記第1貫通孔とともに前記固定具が挿通される第2貫通孔が形成されており、前記アンカープレートと前記受け具とは、前記固定具を介して固定されるものであり、
前記第1および第2貫通孔のうち一方の貫通孔は、前記一対の側壁部が対向する方向である型枠幅方向に延在する、他方の貫通孔との位置合わせ用の長孔であることを特徴とするアンカーボルトの施工治具。
【請求項2】
前記内壁取付部は、前記受け部に対して、前記一対の側壁部が対向する方向と直交する方向である型枠長手方向に延在した延在部分を、前記内壁取付部の両側に有しており、
前記延在部分には、前記受け具を前記側壁部に取り付ける止め具が挿入される貫通孔またはスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルトの施工治具。
【請求項3】
前記第1および第2貫通孔のうち他方の貫通孔は、前記一対の側壁部が対向する方向と直交する方向である型枠長手方向に延在し、前記型枠長手方向に沿った前記アンカープレートの位置を調整する調整用の長孔であることを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルトの施工治具。
【請求項4】
前記アンカープレートの縁部のうち、少なくとも一方の前記側壁部の前記内壁面に対向する縁部には、前記内壁面に沿って上方に立ち上がる腰壁筋を逃がすための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアンカーボルトの施工治具。
【請求項5】
前記アンカープレートは、前記アンカープレートが所定の基準位置に配置されたことを確認するための基準線と、前記基準線上に貫通して設けられた基準孔と、を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のアンカーボルトの施工治具。
【請求項6】
前記アンカープレートには、前記アンカーボルトを前記アンカープレートに吊下げるべく、前記アンカーボルトを挿通する挿通孔が形成されており、
前記施工治具は、前記アンカープレートに着脱自在に取付けられるアタッチメントを備え、
前記アタッチメントには、前記挿通孔よりも小さい小径挿通孔が形成されており、
前記アンカープレートと前記アタッチメントは、前記アンカープレートの前記挿通孔が形成された位置に、前記小径挿通孔が配置されるように、相互に着脱自在となっていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアンカーボルトの施工治具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアンカーボルトの施工治具を備えた基礎型枠構造物であって、
前記一対の側壁部を備えた前記型枠と、
前記型枠の前記一対の側壁部に水平状態に固定された一対の受け具と、
前記一対の受け具に水平状態に固定されたアンカープレートと、
前記アンカープレートに吊下げられた状態で支持されるアンカーボルトと、を備えることを特徴とする基礎型枠構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の基礎構造で躯体と基礎とを連結するアンカーボルトの施工治具と、このアンカーボルトの施工治具を備えた基礎型枠構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンカーボルトの施工治具として、たとえば、特許文献1には、以下に示す施工治具を備えている。この施工治具は、アンカーボルトを吊下げた状態で保持するアンカープレートと、アンカープレートに取付けられた高さ調整用の調整用ネジと、アンカーボルトを型枠の対向する一対の側壁部の上端面に固定するしゃこまん(固定具)と、を備えている。
【0003】
アンカープレートを取付ける際には、型枠の側壁部の上端面に、調整用ネジの先端を当接させた状態で、調整用ネジでアンカープレートの水平度等を調整し、調整後のアンカープレートを、固定後で側壁部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-255724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の施工治具では、型枠の側壁部の上端面を、アンカープレートの位置の基準にしている。このため、たとえ調整用ネジを設けたとしても、型枠を支持する地面の状態や型枠そのものの状態などが起因して変化する上端面に対して、アンカーボルトを短時間で精度良く取り付けることが難しいことがあった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであって、コンクリート基礎に埋設固定されるアンカーボルトの位置精度を高めることができ、施工時間を短縮できるアンカーボルトの施工治具と、この施工治具を備えた基礎型枠構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明に係るアンカーボルトの施工治具は、型枠内にコンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎の上面から上方にアンカーボルトの上端部が突出するように、前記コンクリート基礎に前記アンカーボルトを埋設固定するためのアンカーボルトの施工治具であって、前記型枠の対向する一対の側壁部の内壁面に取付けられる内壁取付部と、前記内壁取付部が前記内壁面に取付けられた状態で、前記型枠の内方に突出した受け部と、を備えた一対の受け具と、前記アンカーボルトを吊下げた状態で保持し、前記受け具の各受け部に固定具で支持固定されるアンカープレートと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のアンカーボルトの施工治具によれば、まず、型枠の対向する一対の側壁部の内壁面に、基準となる水平なレベル線を記す。このレベル線に沿って対向する一対の側壁部の内壁面に、受け具の内壁取付部を当てがい、ビス等で側壁部に受け具を容易に取付けることができる。この状態で、受け具の受け部は、型枠の内方に向かって突出する。
【0009】
この際、受け部でアンカープレートを受けた状態で、アンカープレートが水平となるように、各受け具の受け部の水平度を調整する。次に、一対の受け具の受け部にアンカープレートを載置し、アンカープレートを受け具の各受け部に支持固定する。
【0010】
このように、内壁面に記したレベル線に対して、受け具を側壁部の内壁面に精度良く取付ければ、一対の受け具を介してアンカープレートを型枠に短時間で精度良く取付けることができる。
【0011】
さらに、本発明では、アンカープレートを直接的に側壁部の内壁面に取付けるのではなく、高さおよび水平度を調整した一対の受け具にアンカープレートを取付ける。このため、アンカープレートの取付け時に、アンカープレートの高さおよび水平度を直接調整する必要がなく、型枠に対して、精度の高いアンカープレートを簡単に設けることができる。
【0012】
アンカープレートの固定後には、アンカープレートにアンカーボルトを吊下げて保持する。このあと、型枠内に生コンクリートを注入して、一対の側壁部の内壁面間に所定の高さまで打設する。アンカープレートに支持されたアンカーボルトは、打設されたコンクリート基礎の上面から上端部が突出した状態で埋設固定される。
【0013】
前記の態様においては、受け具の各受け部に支持固定できるのであれば、アンカープレートの形状は特に限定されるものではない。しかしながらより好ましい態様としては、前記各受け具の受け部には、前記固定具が挿通される第1貫通孔が形成されており、前記アンカープレートには、前記アンカープレートが前記受け具に支持された状態で、前記第1貫通孔とともに前記固定具が挿通される第2貫通孔が形成されており、前記アンカープレートと前記受け具とは、前記固定具を介して固定されるものであり、前記第1および第2貫通孔のうち一方の貫通孔は、前記一対の側壁部が対向する方向である型枠幅方向に延在する、他方の貫通孔との位置合わせ用の長孔である。
【0014】
この態様によれば、各受け具の受け部に形成された第1貫通孔に固定具を挿通し、アンカープレートに形成された第2貫通孔に固定具を挿通して各受け具にアンカープレートを固定する。この際、第1および第2貫通孔のうち一方の貫通孔は型枠幅方向に延在する位置合わせ用の長孔であるため、型枠の一対の側壁間の距離が変化しても、一対の受け具に対してアンカープレートを移動させて、固定具が挿通可能なように、一方の貫通孔を他方の貫通孔に位置合わせすることができる。
【0015】
また、さらに好ましい態様としては、前記各受け具の受け部には、前記固定具が挿通される第1貫通孔が形成されており、前記アンカープレートには、前記アンカープレートが前記受け具に支持された状態で、前記第1貫通孔とともに前記固定具が挿通される第2貫通孔が形成されており、前記アンカープレートと前記受け具とは、前記固定具を介して固定されるものであり、前記第1および第2貫通孔のうち一方の貫通孔は、前記一対の側壁部が対向する方向と直交する方向である型枠長手方向に延在し、前記型枠長手方向に沿った前記アンカープレートの位置を調整する調整用の長孔である。
【0016】
この態様によれば、各受け具の受け部に形成された第1貫通孔に固定具を挿通し、アンカープレートに形成された第2貫通孔に固定具を挿通して各受け具にアンカープレートを固定する。第1および第2貫通孔のうち一方の貫通孔は型枠長手方向に延在するアンカープレートの位置を調整する調整用の長孔であるため、長い調整孔を用いてアンカープレートを受け具に対して型枠長手方向に移動させることができ、同様に精度よく基準位置に位置合わせできる。
【0017】
さらに好ましい態様としては、前記アンカープレートの縁部のうち、少なくとも一方の前記側壁部の前記内壁面に対向する縁部には、前記内壁面に沿って上方に立ち上がる腰壁筋を逃がすための凹部が形成されている。
【0018】
この態様によれば、アンカープレートを型枠に取付ける際に、アンカープレートの縁部に形成された凹部により、内壁面に沿って上方に立ち上がる腰壁筋を逃がすことができる。このため、腰壁筋によりアンカーボルトの設置位置の制限を受けることはない。
【0019】
さらに好ましい態様としては、前記アンカープレートは、前記アンカープレートが所定の基準位置に配置されたことを確認するための基準線と、前記基準線上に貫通して設けられた基準孔と、を備える。
【0020】
この態様によれば、型枠の外部に張られた水糸等の基準糸と、アンカープレートの基準線とを合わせることで、所定位置にアンカープレートを固定することができる、また、基準線上に貫通して設けた基準孔に、釘やピン等を挿し込み、基準糸の基準位置との合致を容易に確認することができる。
【0021】
さらに好ましい態様としては、前記アンカープレートには、前記アンカーボルトを前記アンカープレートに吊下げるべく、前記アンカーボルトを挿通する挿通孔が形成されており、前記施工治具は、前記アンカープレートに着脱自在に取付けられるアタッチメントを備え、前記アタッチメントには、前記挿通孔よりも小さい小径挿通孔が形成されており、前記アンカープレートと前記アタッチメントは、前記アンカープレートの前記挿通孔が形成された位置に、前記小径挿通孔が配置されるように、相互に着脱自在となっている。
【0022】
この態様によれば、1つのアンカープレートの挿通孔に対して、所定の外径のアンカーボルトを固定することができる。一方、これよりも小径のアンカーボルトを固定する際には、アンカープレートにアタッチメントを装着する。これにより、アンカープレートの挿通孔が形成された位置に、小径挿通孔が配置されるので、アンカープレートに対して、小径のアンカーボルトを精度良く取付けることができる。
【0023】
本発明に係る基礎型枠構造物は、前記したアンカーボルトの施工治具を備えた基礎型枠構造物であって、前記一対の側壁部を備えた前記型枠と、前記型枠の前記一対の側壁部に水平状態に固定された一対の受け具と、前記一対の受け具に水平状態に固定されたアンカープレートと、前記アンカープレートに吊下げられた状態で保持されるアンカーボルトと、を備える。
【0024】
このように構成された基礎型枠構造物によれば、型枠の一対の側壁部に基準となる水平なレベル線を記し、このレベル線に合わせて一対の受け具を一対の側壁部に水平状態に固定する。このあと、固定された一対の受け具にアンカープレートを固定し、アンカープレートにアンカーボルトを保持させる。このように、一対の受け具の固定が容易に行え、一対の受け具へのアンカープレートの固定も容易に行えるため、作業時間を大幅に短縮できるとともに、アンカーボルトの位置精度を向上できる。また、型枠内に生コンクリートを注入する際に、アンカーボルトの固定状態が安定しているため、アンカーボルトの移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コンクリート基礎に埋設固定されるアンカーボルトの位置精度を高めることができ、施工時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るアンカーボルトの施工治具を用いるコンクリート基礎の要部断面図である。
図2図1に示すコンクリート基礎を成形するためのアンカーボルトの施工治具の一実施形態を備えた基礎型枠構造物の要部断面図である。
図3図2に示す基礎型枠構造物の直線部(一般部)で用いるアンカーボルトの施工治具を示す要部平面図である。
図4図3のA-A線に沿う要部断面図である。
図5図3で示すアンカープレートの平面図である。
図6図3で示すアンカープレートの受け具を示し、(a)は平面図、(b)は立面図、(c)は底面図、(d)は(b)のB-B線断面図である。
図7図3で示すアンカーボルトの施工治具の施工方法を示す工程図である。
図8図3に示すアンカーボルトの施工治具の変形例を示した図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るアンカーボルトの施工治具であって、(a)はアンカープレートにアンカーボルトのアタッチメントを取付けた状態の平面図、(b)は(a)のC-C線断面図である。
図10】(a)は図9で示すアタッチメントの平面図、(b)は(a)のD-D線断面図、(c)はアタッチメントの変形例の断面図、(d)は(c)に示すアタッチメントの変形例をアンカープレートに取付けた状態の断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るアンカーボルトの施工治具の要部平面図である。
図12図11に示すアンカーボルトの施工治具の受け具を示し、(a)は平面図、(b)は立面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
図13図11のE-E線に沿う要部断面図である。
図14図11で示すアンカーボルトの施工治具のアンカープレートと一方の受け具を示す要部斜視図である。
図15図11のF-F線に沿う要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るアンカーボルトの施工治具および前記施工治具を備えた基礎型枠構造物のいくつかの実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
まず、本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を用いて形成されるコンクリート基礎1について、図1図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を用いるコンクリート基礎の要部断面図、図2は、図1に示すコンクリート基礎を形成するための本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を備えた基礎型枠構造物の要部断面図である。
【0029】
1.コンクリート基礎1について
図1図2に示すように、コンクリート基礎1は、幅広で高さの小さいベース部1aと、ベース部1aの上に形成される幅狭で高さの大きい立上げ部1bとを有している。コンクリート基礎1には、アンカーボルト2が埋設固定されている。アンカーボルト2の上端部は、立上げ部1bの上端面から上方に突出している。
【0030】
コンクリート基礎1のベース部1aは、下地層3の上に成形される。具体的には、図2に示すように、下地層3は、捨てコンクリートであり、型枠4の受け台となる。ベース部1aを成形する際には、まず、下地層3の上に型枠4を設置固定する。次に、型枠4内にベース部1a用の鉄筋(図示せず)を水平に配筋するとともに、立上げ部1b用の腰壁筋などの鉄筋を鉛直方向に配筋する。次に、型枠4内に生コンクリートを打設する。これにより、下地層3の上にベース部1aが成形される。
【0031】
ベース部1aの成形後に、後述する基礎型枠構造物30により立上げ部1bをさらに成形する。本実施形態では、基礎型枠構造物30は、ベース部1aの上にサポータ7、7で支持された型枠5を配置し、施工治具10を用いてアンカーボルト2を型枠5内に配することによって、構築される。構築された基礎型枠構造物30の型枠5内に生コンクリートを注入打設して、立上げ部1bが形成される。本実施形態では、基礎型枠構造物30と、これに用いられるアンカープレート15を含む施工治具10と、について以下に詳細に説明する。
【0032】
2.基礎型枠構造物30について
本実施形態では、基礎型枠構造物30は、コンクリートが打設される型枠5と、アンカーボルト2の施工治具10と、アンカーボルト2とを備えている。施工治具10は、型枠5の一対の側壁部に水平状態に固定された一対の受け具11、11と、一対の受け具11、11に水平状態に固定されたアンカープレート15とを少なくとも備えている。アンカーボルト2は、コンクリート基礎1の上部に建物の躯体を連結固定するためボルトであり、アンカープレート15に吊下げられた状態でアンカープレート15に保持される。
【0033】
型枠5は、上述したように、台座となるベース部1aの上に設置され、コンクリート基礎1の立上げ部1bを成形する型枠である。型枠5は、ベース部1aの上面に鉛直方向に立設された側壁部5A、5Bを備えている。
【0034】
側壁部5A、5Bは、ベース部1aから鉛直方向に沿って立ち上るように、対向して配置されている。側壁部5A、5Bの対向する内壁面同士は、所定の間隔(距離)Wをあけて形成されている。側壁部5A、5Bにより、型枠5には、立上げ部1b用の生コンクリートを注入する流路が形成される。型枠5は流路方向に延在する形状となっており、型枠5の型枠長手方向がX方向となっている。一対の側壁部5A、5Bが対向する方向である型枠幅方向がY方向になっている。したがって、型枠長手方向(X方向)は、型枠幅方向(Y方向)と鉛直方向(Z方向)に、直交している。
【0035】
型枠5の側壁部5A、5Bは、たとえば木製または鋼製などである。型枠5が木製である場合、図2に示すように、各側壁部5A、5Bは、9~15mm程度の厚さの合板5cと、合板5cを補強するべく合板5cに固定された角材5dとにより形成されている。型枠5には、一対の対向する側壁部5A、5Bの間隔(距離)を一定に保つために、図示していないセパレータ(スペーサ)等が一定間隔で、側壁部5A、5Bの内壁面間に配置されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、各側壁部5A、5Bの外壁面には、水平方向に沿って鋼製の端太角6が固定されている。端太角6を介して後述する各サポータ7が、各側壁部5A、5Bを支持している。端太角6は、型枠5内の生コンクリートが流れる流路に沿って、側壁部5A、5Bの外壁面に固定された型枠補強材であり、サポータ7を受ける受け材としての機能も担っている。
【0037】
サポータ7は、各側壁部5A、5Bを支持し、一対の側壁部5A、5Bの対向する方向の各側壁部5A、5Bの対向する内壁面の水平方向位置を調整するものである。サポータ7は、例えば掘削部の傾斜した壁部8と端太角6との間に突っ張るように設置されており、各側壁部5A、5Bの上端面の位置を一定に保つように、その長さを調整できるものである。
【0038】
本実施形態では、サポータ7は、地盤の壁部8に固定されたシャフト7aと、端太角6と接するシャフト7bとをターンバックル7cで螺着したものである。サポータ7は、ターンバックル7cを回転させることで全長を調整し、対向する各側壁部5A、5Bの上端面の位置が調整される。これにより、後述するアンカープレート15の位置が調整され、アンカープレート15に取付けられたアンカーボルト2を適切な位置に配置することができる。
【0039】
3.第1実施形態に係る施工治具10について
本実施形態では、アンカーボルトの施工治具10は、型枠5内に生コンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎1にアンカーボルト2を埋設固定するための治具である。施工治具10は、コンクリート基礎1の上面から、上方に(より好ましくは鉛直方向に)アンカーボルト2の上端部を突出させた状態で固定するものである。なお、本実施形態では、コンクリート基礎1が打設された後に、施工治具10は、コンクリート基礎1には埋設されないため、コンクリート基礎1から取り除かれる。
【0040】
施工治具10は、型枠5の対向する一対の側壁部5A、5Bに取付けられる一対の受け具11、11と、一対の受け具11、11に水平状態に支持固定されるアンカープレート15とを少なくとも備えている。施工治具10は、前記のように一対の受け具11、11とアンカープレート15とで構成されるが、後述する一対の幅止め具50、50をさらに含んでいてもよい。
【0041】
まず、図3から図6を参照して、受け具11について説明する。受け具11は鋼板などの金属板材をプレス成形等の機械加工により成形された部材であり、例えば3~5mm程度の厚さのものが用いられる。受け具11は、基本的にはL字状のアングル材で形成されている(図6(d)参照)。具体的には、受け具11は、型枠の対向する一対の側壁部5A、5Bの内壁面53、53に取付けられる内壁取付部12と、内壁取付部12が内壁面53に取付けられた状態で、型枠5の内方に突出した一対の受け部13とを備えている。
【0042】
具体的には、型枠長手方向と直交する受け具11の断面において、内壁取付部12は鉛直方向に延在する板材で形成され、受け部13は内壁取付部12から水平方向に延在する板材で形成されている。本実施形態では、2つの受け部13は、後述するアンカープレート15の形状に合わせて形成されている。アンカープレート15を安定して受けることができるのであれば、1つの受け具11に形成される受け部13の個数は特に限定されるものではない。
【0043】
図3および図6(a)に示すように、受け部13には、アンカープレート15を固定するために、ボルトナット等の固定具20が挿通される第1貫通孔13aが形成されている。第1貫通孔13aは、一対の側壁部5A、5Bが対向する方向(X方向)と直交する方向(Y方向)である型枠長手方向に延在し、型枠長手方向に沿ったアンカープレート15の位置を調整する調整用の長孔となっている。
【0044】
受け部13の内壁取付部12の両端部近傍には、受け具11を型枠5の側壁部5A、5Bに固定するために、ビス、木ねじ等の止め具21を挿通する貫通孔14が形成されている。各端部近傍の貫通孔14は、中心に位置する1つの貫通孔と、そのまわりの上下左右に位置する4つの貫通孔とで構成されている。このように、各端部近傍に複数の貫通孔を設けることにより、受け具11を固定する型枠5を繰り返し使用しても、これまで側壁部5A、5Bに空けられた止め具21の孔や、セパレータ(図示せず)による内壁面53、53の凹みを避けて、新たな箇所に止め具21を側壁部5A、5Bに固定することができる。
【0045】
内壁取付部12の上端面には、V字状の切り込み12aが形成されている。この切り込み12aは、受け具11の長手方向(図4に示すX方向)の中心で、第1貫通孔13a、13aの中心位置に形成されている。切り込み12aは、受け具11が基準位置に固定されていることを確認するための目印である。切り込み12aを、側壁部5A、5Bの内壁面53、53に記された目印、または、基準位置となるように張られた基準糸(水糸)と合わせることにより、型枠長手方向に沿った正確な位置に、受け具11を固定することができる。
【0046】
つぎに、アンカープレート15について説明する。アンカープレート15は鋼板などの金属板材をプレス成形等の機械加工により成形された部材であり、例えば3~5mm程度の厚さのものが用いられ、平板状に形成されている。アンカープレート15は、型枠5に生コンクリートを打設する前に、アンカーボルト2を吊下げた状態で保持する部材である。
【0047】
本実施形態では、アンカープレート15は、コンクリート基礎1の直線部(平面視でストレートとなる一般部)を形成する型枠5に、一対の受け具11、11を介して取付固定される。図5に示すように、アンカープレート15には、4本のアンカーボルト2を型枠5内に吊下げた状態で保持するための4つの挿通孔2aが形成されている。各アンカーボルト2は、アンカープレート15を挟み込むように、ダブルナット2cで固定される。アンカープレート15の両端部は、対向する一対の側壁部5A、5Bに固定された一対の受け具11、11に支持され、4本の固定具20で固定される。
【0048】
アンカープレート15は、板状であり、型枠幅方向(Y方向)に延在する一対の第1プレート部15a、15bと、型枠長手方向(X方向)に延在し、第1プレート部15a、15bを連結する3つの第2プレート部15c、15d、15eと、を備えている。第1プレート部15a、15bには、アンカーボルト2が配置される挿通孔2aが形成されている。2つの第2プレート部15c、15dは、挿通孔2aが形成された第1プレート部15a、15bの部分に連結されている。
【0049】
第2プレート部15eは、第1プレート部15a、15bの一端部に連結されており、その他端部には、第2プレート部は存在しない。したがって、第1プレート部15a、15bの間においてアンカープレート15の他端部側の周縁には、凹部15fが形成されている。凹部15fは、アンカープレート15を配置する際に、型枠5の側壁部5A、5Bの内壁面53、53に沿って上方に立ち上がる腰壁筋22、22…をその内部に逃がすための部分である。
【0050】
さらに、図3および図5に示すように、第1プレート部15a、15bのY方向の両端部には、第2貫通孔16、16…が形成されている。第2貫通孔16、16…は、アンカーアープレート15が受け具11、11に支持された状態で第1貫通孔13a、13a…とともに固定具20が挿通される。これにより、アンカープレート15と受け具11とは、固定具20を介して固定される。ここで、本実施形態では、各第2貫通孔16は、一対の側壁部5A、5Bが対向する方向である型枠幅方向(Y方向)に延在し、第1貫通孔13aとの位置合わせ用の長孔である。この長孔により、側壁部5A、5Bの間の距離Wの微細な変化に拘わらず、第1貫通孔13aと第2貫通孔に、固定具20を挿通することができる。
【0051】
アンカープレート15には、Y方向に沿って配置された挿通孔2a、2aの中心に基準線18が刻設されている。X方向に沿って配置された挿通孔2a、2aの中心にも基準線18が刻設されている。これらの基準線18を、型枠5の外部から張られた基準糸(水糸)と合わせることで、所定の位置に4本のアンカーボルト2を精度良く配置することができる。
【0052】
また、アンカープレート15には、X方向に形成された基準線18上に、基準孔18aが形成されている。アンカープレート15を配置した状態で、基準孔18aに釘等を差し込むことで、基準となる基準糸(水糸)との位置合わせを容易に行なうことができる。
【0053】
さらに、Y方向に形成された基準線18に沿った第2プレート部15c、15eの外周端部には、V字状の切り込み18bが形成されている。切り込み18bと基準線18とにより、アンカープレート15の位置合わせが容易となる。
【0054】
4.アンカーボルト2の施工方法について
前記の如く構成された本実施形態のアンカーボルト2の施工治具10を用いた施工方法について、図2図7を参照して説明する。図7は、図1~6で示すアンカーボルトの施工治具10の施工方法を示す工程図である。
【0055】
図2に示すように、地中にコンクリート基礎1を構築するときは、地面を所定の深さに掘削し、掘削部に下地層3を成形する。次に、下地層3の上に基礎の幅広のベース部1aを作製するために型枠4を立設固定し、水平状にベース部1a用の配筋をするとともに、鉛直方向に立上げ部1b用の配筋(図示せず)をする。型枠4の内部に生コンクリートを注入し、コンクリート基礎1のベース部1aを形成する。
【0056】
ベース部1aに注入した生コンクリートが固化したあと、立上げ部1b用の配筋(図示せず)を囲むように型枠5をベース部1a上に立設固定する。具体的には、型枠5の内部に生コンクリートを注入できるように所定の距離Wをあけて対向する一対の側壁部5A、5Bを立設する。各側壁部5A、5Bは、サポータ7により支持される。
【0057】
そして、図7(a)に示すように、型枠5の対向する一対の側壁部5A、5Bの内壁面に、基準となる水平なレベル線Lを記す。このあと、図7(b)に示すように、このレベル線Lに沿って対向する一対の側壁部5A、5Bの内壁面に、受け具11の内壁取付部12を当てがい、ビス21等を貫通孔14の1つに挿通してねじ込み、側壁部5A、5Bに受け具11を取付ける。これにより、受け具11の受け部13は、型枠5の内方に向かって水平状態に突出する。
【0058】
受け具11、11を側壁部5A、5Bに固定する際に、受け部13、13でアンカープレート15の水平度を調整する。具体的には、たとえば受け具11の内壁取付部12を固定するビス21のねじ込み位置をずらすことで水平度を調整することができる。また、受け部13、13とアンカープレート15との接触部に座金等を介在させて、アンカープレート15の水平度を調整することができる。
【0059】
つぎに、図7(c)に示すように、一対の受け具11、11の受け部13、13の上にアンカープレート15を載置する。そして、受け具11、11に形成された第1貫通孔13aと、アンカープレート15に形成された第2貫通孔16に、図7(d)に示すように、ボルトナット等の固定具20を挿通し、固定具20を締め込んでアンカープレート15を各受け具11に支持固定する。
【0060】
前記のように、アンカープレート15を受け具11、11に固定する際に、型枠5の側壁部5A、5Bの内壁面53,53に記したレベル線Lに対して、受け具11、11を側壁部5A、5Bの内壁面に精度よく取付ければ、一対の受け具11、11を介してアンカープレート15を型枠5に短時間で精度良く取付けることができる。
【0061】
また、前記の施工方法で示すように、本実施形態ではアンカープレート15を直接的に型枠5の側壁部5A、5Bの内壁面に取付けるのではなく、受け具11、11を側壁部5A、5Bに取付けてから、受け具11、11にアンカープレート15を取付けている。このため、アンカープレート15の取付け時に、アンカープレート15の高さおよび水平度を直接調整する必要がなく、作業時間を短縮することができる。
【0062】
アンカープレート15の固定具20による固定後には、アンカープレート15にアンカーボルト2、2…を吊下げて保持する。このあと、型枠5内に生コンクリートを注入して、一対の側壁部5A、5Bの内壁面間に所定の高さまで打設する。アンカープレート15に支持されたアンカーボルト2、2…は、打設されたコンクリート基礎1の上面から上端部が突出した状態で埋設固定される。
【0063】
また、アンカープレート15は、型枠5の側壁部5A、5Bのそれぞれに水平状態で固定された受け具11、11で確実に固定されているため、アンカープレート15の面剛性を高めることができ、アンカーボルト2の固定状態は安定する。これにより、生コンクリートの打設時に、生コンクリートでアンカーボルト2の下端に圧力が加わるが、アンカーボルト2の変位等は抑制され、埋設されたアンカーボルト2の位置精度を高めることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、図3に示すように、アンカープレート15の型枠幅方向(Y方向)の長さを、一対の側壁部5A、5Bの距離Wと同じまたはやや短くした。これに合わせて、受け具11に受け部13を2つ設け、各受け部13に、アンカープレート15を固定するために、固定具20が挿通される第1貫通孔13aを1つ設けた。しかしながら、たとえば、図8に示す変形例の如く、各受け部13に2列の第1貫通孔13aを設けることにより、型枠幅方向(Y方向)に、アンカープレート15の固定箇所を変更できるようにしてもよい。
【0065】
5.第2実施形態に係る施工治具10Aについて
つぎに、第2実施形態に係る施工治具10Aを、図9図10に基づき詳細に説明する。なお、この実施形態は、第1実施形態に対し、施工治具がアンカープレート15に着脱自在に取付けられるアタッチメント25を備える点が、先の実施形態とは異なる。したがって、他の実質的に同等の機能を有する構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図9(a)では、アタッチメント25の有無を説明するために、第1プレート部15aのみにアタッチメント25を取り付けているが、第1プレート部15bにもアタッチメント25が取り付けられていてもよい。
【0066】
第1実施形態では、アンカープレート15の挿通孔2aにアンカーボルト2を挿通して保持するが、この挿通孔2aに小径のアンカーボルト2Aを挿通すると、挿通孔2aと小径のアンカーボルト2Aとクリアランスが大きくなるため、アンカーボルト2Aの取付け精度が低下してしまう。
【0067】
そこで、第2実施形態に係る施工治具10Aは、アンカープレート15に着脱自在に取付けられるアタッチメント25をさらに備えている。アンカープレート15の第1プレート部15a、15bには、挿通孔2a、2aの外側に、矩形状の係合孔17、17…が形成されている。係合孔17、17…は、後述するアタッチメント25、25をアンカープレート15に着脱自在に取付けるための係合部である。
【0068】
図9(a)および図10(a)に示すように、アタッチメント25は金属板材で長方形状に形成されている。アタッチメント25の幅は、アンカープレート15の第1プレート部15aより小さい。アタッチメント25には、挿通孔2a、2aと対応する位置に、挿通孔2aよりも小さい小径挿通孔2b、2bが形成されている。
【0069】
図9(a)、(b)に示すように、アタッチメント25には、アンカープレート15の挿通孔2a、2aが形成された位置に、小径挿通孔2b、2bが配置されるように、係合孔17、17に係合する係合突起26、26が形成されている。係合孔17と係合突起26とを設けることにより、アンカープレート15とアタッチメント25とは、相互に着脱自在となる。アンカープレート15にアタッチメント25を装着した状態(係合孔17と係合突起26とを係合した状態)で、アンカープレート15の挿通孔2a、2aが形成された位置に、小径挿通孔2b、2bが配置される。
【0070】
このようなアタッチメント25を使用すれば、小径のアンカーボルト2Aの直径に合わせた小径挿通孔2bに、アンカーボルト2Aを挿通することができるので、アンカーボルト2Aの取付け精度を高めることができる。
【0071】
図10(c)に示す、アタッチメント25の変形例を示している。アタッチメント25Aは、一方の係合突起27の先端が、他方の係合突起27に向くように、アタッチメント本体に対して、たとえば45°に傾斜して突出している。この変形例のアタッチメント25Aを取付ける際には、一方の係合突起27を係合孔17に引っ掛けるように係合孔17に挿入した後、他方の係合突起26を、係合孔17に挿入する。これにより、アタッチメント25Aがアンカープレート15に引っ掛かり、アタッチメント25Aがアンカープレート15から脱落し難くなる。
【0072】
この実施形態においても、アタッチメント25を取付けたアンカープレート15を用いることで、第1実施形態と同様に、コンクリート基礎1に埋設固定されるアンカーボルト2の施工時間を短縮することができるとともに、アンカーボルト2の位置精度を高めることができる。なお、アンカープレート15とアタッチメント25との係合する係合部として、係合突起と係合孔の例を示した。しかしながら、これに限られるものでなく、アンカープレート15に係合突起を設け、アタッチメント25に係合孔を設けてもよく、たとえば、アンカープレート15とアタッチメント25とに共通のネジ穴を設け、これらのネジ穴にボルトを螺着して、アンカープレート15をアタッチメント25に取付けてもよく、アンカープレート15にアタッチメント25を着脱自在に取り付けることができるのであれば、その構造は特に限定されるものではない。
【0073】
6.第3実施形態に係る施工治具10Bについて
つぎに、本発明に係るアンカーボルトの施工治具のさらに他の実施形態について、図11図15を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態のアンカーボルト2の施工治具10に対して、受け具11とアンカープレート15の形状が異なる。さらに、本実施形態では、施工治具10Bは、一対の幅止め具をさらに備えている。したがって、他の実質的に同等の機能を有する構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図11図15において、アンカーボルト2の施工治具10Bは、先の実施形態と同様に、型枠5の対向する一対の側壁部5A、5Bに固定された一対の受け具11、11と、一対の受け具11、11に水平状態に支持固定されたアンカープレート15とを少なくとも備えている。一対の受け具11、11は、基本的にはL字状のアングル材で形成されている(図12(c)参照)。型枠5の対向する一対の側壁部5A、5Bの内壁面に取付けられる内壁取付部12と、内壁取付部12が内壁面に取付けられた状態で、型枠5の内方に突出した受け部13とを備えている。本実施形態では、受け部13は、型枠長手方向(X方向)に延在している。
【0075】
受け部13には、アンカープレート15を固定するために、ボルトナット等の固定具20が挿通される2つの第1貫通孔13a、13aが形成されている。第1貫通孔13a、13aの中間位置には、矩形状の開口窓13bが形成されている、開口窓13bにはV字状の切り欠き13cが形成されている。第1貫通孔13aは、前記した実施形態と同様に、型枠長手方向(X方向)に長い長孔に形成され、固定具20が長孔に挿通されたとき、アンカープレート15の位置を調整できる調整用の長孔となっている。
【0076】
図12(b)に示すように、内壁取付部12には、水平方向(X方向)沿って、3つのスリット14が形成されている。中心に位置するスリット14は細長矩形に形成され、両側のスリットは外周端が開口する細長矩形に形成されている。複数のスリット14にビスや木ねじ等の止め具21を挿通させて型枠5にねじ込むことで、受け具11を型枠5に固定できるように構成されている。
【0077】
本実施形態では、アンカープレート15は、板状であり、型枠幅方向(Y方向)に延在する一対の第1プレート部15a、15bと、型枠長手方向(X方向)に延在し、第1プレート部15a、15bを連結する3つの第2プレート部15c、15dと、を備えている。第1プレート部15a、15bには、アンカーボルト2が配置される挿通孔2aが形成されており、第1プレート部15a、15bの両端には、受け具11の受け部13に支持される支持部15gが形成されている。支持部15gには、第1実施形態と同様に受け具11の第1貫通孔13aと連通して、固定具20が挿通される第2貫通孔16が形成されている。なお、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1プレート部15a、15bの端部には、第2プレート部15eが設けられていない。したがって、本実施形態では、アンカープレート15の両端部の周縁に、凹部15f、15fが形成されている。
【0078】
本実施形態のアンカーボルトの施工治具10Bは、一対の側壁部5A、5Bの内壁面間の距離Wを保持する幅止め具50を備えている。幅止め具50は、アンカープレート15に並設して、型枠5の一対の側壁部5A、5Bをわたすように、一対の側壁部5A、5Bの上端面に架設され、一対の側壁部5A、5Bの内壁面間の距離W2を固定するものである。
【0079】
幅止め具50は、板厚が3~5mm程度の金属板材で形成され、一対の側壁部5A、5Bの上端面の間にわたされる水平面を有した第1板状部51と、一対の側壁部5A、5Bの内壁面の間にわたされる内側板状部52aを有する鉛直面を有した第2板状部52とを備えている。これにより、幅止め具50の長手方向に直角な断面がL字状に形成され、剛性が大きくなる。
【0080】
図11および図15に示すように、第2板状部52には、第1板状部51が各側壁部5A、5Bの上端面に当接した状態で、各側壁部5A、5Bに嵌合するように切欠き部52b、52bが形成されている。すなわち、切欠き部52b、52bで挟まれる内側板状部52aの水平方向の長さが、型枠5の一対の側壁部5A、5B間の距離Wとなり、一対の幅止め具50により、型枠5の生コンクリートが流れる流路幅を固定する。
【0081】
幅止め具50の第1板状部51の外周辺には、長手方向の中心にV型の切欠き部50aが形成されている。切欠き部50aを、型枠5の上方に張られた基準糸(水糸)に位置合わせされていることを確認することで、幅止め具50が、各側壁部5A、5Bに適切に嵌合していることを確認することができる。
【0082】
この実施形態においても、まず、型枠5の側壁部5A、5Bにレベル線を引き、レベル線に合わせて受け具11、11を側壁部に固定する。次に幅止め具50を設置した後、固定された受け具11、11にアンカープレート15を載置し、受け具11とアンカープレート15を固定具20で固定する。このような作業により、前記した実施形態と同様に、コンクリート基礎1に埋設固定されるアンカーボルト2の施工時間を短縮することができるとともに、アンカーボルト2の位置精度を高めることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0084】
たとえば、第3実施形態のアンカーボルトの施工治具10Bで用いた幅止め具50を、第1および第2実施形態のアンカーボルトの施工治具10に用いてもよいことは勿論である。さらに本実施形態では、直線部(平面視でストレートとなる一般部)に、施工治具を適用したが、たとえば、出隅部また入隅部等にこの施工治具を適用してもよいことは勿論である。さらに、施工後のアンカーボルトの位置に応じて検査孔が形成された検査プレートで検査を行ってもよい。
【0085】
本実施形態では、第2貫通孔16を、型枠幅方向(Y方向)に延在し、第1貫通孔13aとの位置合わせ用の長孔とし、第1貫通孔13aを、型枠長手方向に延在し、型枠長手方向に沿ったアンカープレート15の位置を調整する調整用の長孔とした。しかしながら、たとえば、第1貫通孔13aを、型枠幅方向(Y方向)に延在し、第2貫通孔16との位置合わせ用の長孔とし、第2貫通孔16を、型枠長手方向に延在し、型枠長手方向に沿ったアンカープレート15の位置を調整する調整用の長孔としてもよい。また、第1または第2貫通孔13aのいずれか一方が丸穴であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:コンクリート基礎、2:アンカーボルト、2a:挿通孔、2b:小径挿通孔、5:型枠、5A,5B:一対の側壁部、6:端太角、7:サポータ、10,10A,10B:アンカーボルトの施工治具、11:受け具、1:内壁取付部、13:受け部、13a:第1貫通孔(調整用長孔)、1:アンカープレート、15f:凹部、1:第2貫通孔(位置合わせ用の長孔)、17:連結部(係合孔)、18:基準線、18a:基準孔、20:固定具、21:止め具、25,25A:アタッチメント、26,27:連結部(係合突起)、50:幅止め具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15