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特許7341428切断装置およびコンクリートブロックの切り出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】切断装置およびコンクリートブロックの切り出し方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/08 20060101AFI20230904BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230904BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20230904BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B28D1/08
B24B27/06 Q
G21F9/30 T
G21F9/30 535F
G21F9/30 535C
E04G23/08 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019233940
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102283
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516121833
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】平 治
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和茂
(72)【発明者】
【氏名】平田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】日野 和徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 凌
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-114562(JP,A)
【文献】特開2006-299753(JP,A)
【文献】特開2010-240990(JP,A)
【文献】特開2012-152850(JP,A)
【文献】特開平06-148393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
B24B 27/06
G21F 9/30
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを切断する切断装置であって、
ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤと、前記ワイヤを案内する一対の第1ワイヤガイドユニットおよび一対の第2ワイヤガイドユニットと、前記ワイヤを回転させる駆動装置と、を備え、
前記一対の第1ワイヤガイドユニットは、それぞれ、所定方向に延びる支持ビームと、
前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部と、
前記支持ビームの先端に固定された固定部と、
前記固定部に設けられて前記支持ビームの中心軸上でかつ前記中心軸に交差する方向を回転軸として回転自在でワイヤが掛け回される第1ガイドプーリと、を備え、
前記一対の第2ワイヤガイドユニットは、それぞれ、所定方向に延びる支持ビームと、
前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部と、
前記支持ビームの先端に設けられて前記支持ビームの延出方向を回転軸として回転自在でかつ内部にワイヤが挿通される回転部と、
前記回転部に設けられて前記回転部の回転軸上でかつ前記回転部の回転軸に交差する方向を回転軸として回転自在でワイヤが掛け回される第1ガイドプーリと、
前記回転部に設けられて前記回転部の内部を通るワイヤを前記第1ガイドプーリに案内する第2ガイドプーリと、
前記回転部に設けられて前記第1ガイドプーリから延びるワイヤを案内する一対の第3ガイドプーリと、を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置を用いて、コンクリート構造物から略直方体形状のコンクリートブロックを切り出すコンクリートブロックの切り出し方法であって、
前記コンクリート構造物の表面の矩形状を成す4箇所に削孔して、4つのガイド穴を形成するガイド穴形成工程と、
前記4つのガイド穴のうち互いに隣り合うものを切断用ガイド穴とし、前記一対の切断用ガイド穴のそれぞれに、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置の第1ワイヤガイドユニットを挿入し、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤで前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断する作業を繰り返して、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち三面を切断する第1切断工程と、
前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち未切断の一面を最終切断面とし、前記4つのガイド穴のうち前記最終切断面に隣接する2つを切断用ガイド穴とし、前記一対の切断用ガイド穴のそれぞれに、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置の第2ワイヤガイドユニットを挿入するとともに、前記ワイヤを残る一対のガイド穴の奥に掛け回して、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤで前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断して、前記コンクリートブロックの背面を切断する第2切断工程と、
前記挿入した第2ワイヤガイドユニットを取り出すことで、前記一対のガイド穴の奥に前記切断装置のワイヤを掛け回して、次に、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記切断装置のワイヤで前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断して、前記コンクリートブロックの最終切断面を切断する第3切断工程と、を備えることを特徴とするコンクリートブロックの切り出し方法。
【請求項3】
前記コンクリートブロックの背面を切断する第2切断工程では、前記ワイヤを前記残る一対のガイド穴の奥に掛け回す際、前記残る一対のガイド穴のそれぞれの奥に補助具を取り付けて、前記補助具にワイヤを掛け回すことを特徴とする請求項2に記載のコンクリートブロックの切り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを切断する切断装置、および、この切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子炉を廃炉にする際、原子炉を囲む生体遮蔽壁を解体する必要がある。この遮蔽壁は、壁厚の大きな鉄筋コンクリート構造体であるため、この遮蔽壁から略直方体形状のコンクリートブロックを順に切り出して撤去することが提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1、2には、被切断構造物から略直方体形状のコンクリートブロックを切り出す方法が示されている。具体的には、まず、被切断構造物に4つのガイドホールを削孔し、このうち2つのガイドホールにワイヤガイドユニットを挿入して、エンドレスの切断用ワイヤを掛け回し、その後、ワイヤを回転させることで、ガイドホール同士の間の面を切断する。この作業を繰り返すことで、コンクリートブロックの下面、両側面、背面、上面の順に切断する。
【0003】
ここで、ワイヤガイドユニットは、棒状のワイヤガイド支持ビームと、このワイヤガイド支持ビームの先端にスイング可能に設けられたガイドプーリと、を備える。このガイドプーリの回転軸は、ワイヤガイド支持ビームの中心軸上には設けられていない。
特許文献1、2のワイヤガイドユニットでは、ガイドプーリの回転軸がワイヤガイド支持ビームの中心軸上に設けられていないため、ワイヤガイドユニットの外径が大きくなっていた。そのため、ガイドホールの内径を大きくする必要があり、コンクリートブロックの切り出し作業に時間がかかる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-148393号公報
【文献】特開平9-127295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガイド穴の内径を小さくして、コンクリートブロックを短工期で切り出し可能な切断装置、および、この切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、コンクリートブロックを切り出すための切断装置を、ワイヤ、ワイヤガイドユニット、および駆動装置で構成し、ワイヤガイドユニットの支持ビームの先端に、支持ビームの中心軸上でかつこの中心軸に交差する方向を回転軸とするプーリを設けることで、従来と比べて切断用ガイド穴の内径を小さくでき、作業効率を向上できる点に着目し、本発明に至った。
第1の発明の切断装置は、コンクリートを切断する切断装置(例えば、後述の切断装置1)であって、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤ(例えば、後述のワイヤ10)と、前記ワイヤを案内する一対の第1ワイヤガイドユニット(例えば、後述の第1ワイヤガイドユニット11A)および/または第2ワイヤガイドユニット(例えば、後述の第2ワイヤガイドユニット11B)と、前記ワイヤを回転させる駆動装置(例えば、後述の駆動装置12)と、を備え、前記一対の第1ワイヤガイドユニットは、それぞれ、所定方向に延びる支持ビーム(例えば、後述の支持ビーム20)と、前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部(例えば、後述の支持部21)と、前記支持ビームの先端に固定された固定部(例えば、後述の固定部22)と、前記固定部に設けられて前記支持ビームの中心軸(例えば、後述の中心軸C)上でかつ前記中心軸に交差する方向を回転軸として回転自在なプーリ(例えば、後述の第1ガイドプーリ23)と、を備え、前記一対の第2ワイヤガイドユニット(例えば、後述の第2ワイヤガイドユニット11B)は、それぞれ、所定方向に延びる支持ビーム(例えば、後述の支持ビーム20)と、前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部(例えば、後述の支持部21)と、前記支持ビームの先端に設けられて前記支持ビームの中心軸(例えば、後述の中心軸C)を回転軸として回転自在な回転部(例えば、後述の回転部24)と、前記回転部に設けられて前記支持ビームの中心軸上でかつ前記中心軸に交差する方向を回転軸として回転自在なプーリ(例えば、後述の第1ガイドプーリ23)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、切断装置を、環状のワイヤ、一対のワイヤガイドユニット、および駆動装置を含んで構成した。よって、コンクリート構造物に一対の切断用ガイド穴を形成し、この一対の切断用ガイド穴のそれぞれにワイヤガイドユニットを挿入し、この状態で、駆動装置によりワイヤを回転させることで、ワイヤが切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断できる。
このとき、ワイヤガイドユニットの支持ビームの周囲に支持部を設けたので、この支持部が切断用ガイド穴内で突っ張って、支持ビームが安定した姿勢で保持される。
また、プーリ(第1ガイドプーリ23)の回転軸を支持ビームの中心軸上に配置したので、切断用ガイド穴の内径はプーリ(第1ガイドプーリ23)の外径よりもわずかに大きければよいから、従来と比べて切断用ガイド穴の内径を小さくでき、作業効率を向上できる。
また、第2ワイヤガイドユニットについては、プーリ(第1ガイドプーリ23)を回転部に設け、この回転部を支持ビームに回転自在としたので、コンクリートの切断の進行に伴ってワイヤの角度が変化しても、回転部が回転することによって、このワイヤの角度の変化に円滑に追従できる。
【0008】
第2の発明のコンクリートブロックの切り出し方法は、上述の切断装置を用いて、コンクリート構造物(例えば、後述の鉄筋コンクリート壁2)から略直方体形状のコンクリートブロック(例えば、後述のコンクリートブロック3)を切り出すコンクリートブロックの切り出し方法であって、前記コンクリート構造物の表面の矩形状を成す4箇所に削孔して、4つのガイド穴(例えば、後述のガイド穴5A、5B、5C、5D)を形成するガイド穴形成工程(例えば、後述のステップS1)と、前記4つのガイド穴のうち互いに隣り合うものを切断用ガイド穴(例えば、後述の切断用ガイド穴30、31)とし、前記一対の切断用ガイド穴のそれぞれに、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置の第1ワイヤガイドユニット(例えば、後述の第1ワイヤガイドユニット11A)を挿入し、前記切断装置の駆動装置(例えば、後述の駆動装置12)を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤ(例えば、後述のワイヤ10)で前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断する作業を繰り返して、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち三面(例えば、後述の両側面3A、3B、上面3C)を切断する第1切断工程(例えば、後述のステップS2、S3)と、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち未切断の一面を最終切断面(例えば、後述の下面3E)とし、前記4つのガイド穴のうち前記最終切断面に隣接する2つを切断用ガイド穴とし、前記一対の切断用ガイド穴のそれぞれに、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置の第2ワイヤガイドユニット(例えば、後述の第2ワイヤガイドユニット11B)を挿入するとともに、前記ワイヤを残る一対のガイド穴の奥に掛け回して、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤで前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断して、前記コンクリートブロックの背面(例えば、後述の背面3D)を切断する第2切断工程(例えば、後述のステップS4)と、前記挿入した第2ワイヤガイドユニットを取り出すことで、前記一対のガイド穴の奥に前記切断装置のワイヤを掛け回して、次に、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記切断装置のワイヤで前記切断用ガイド穴同士の間のコンクリートを切断して、前記コンクリートブロックの最終切断面を切断する第3切断工程(例えば、後述のステップS5)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、コンクリート構造物にワイヤガイドユニットを挿入するためのガイド穴を4つ設けるだけで、これらガイド穴を切断用ガイド穴として利用して、切断装置により略直方体形状のコンクリートブロックの両側面、上面、背面、および下面を切断して、コンクリート構造物からコンクリートブロックを取り出すことができる。
【0010】
第3の発明のコンクリートブロックの切り出し方法は、前記コンクリートブロックの背面を切断する第2切断工程では、前記ワイヤを前記残る一対のガイド穴の奥に掛け回す際、前記残る一対のガイド穴のそれぞれの奥に補助具(例えば、後述のガイドブロック32、回転補助具33)を取り付けて、前記補助具にワイヤを掛け回すことを特徴とする。
【0011】
コンクリートブロックの背面を切断する際、一対の切断用ガイド穴のそれぞれにワイヤガイドユニットを挿入するとともに、ワイヤガイドユニットを挿入しない残る一対のガイド穴の奥にもワイヤを掛け回し、この状態でワイヤを回転させて、コンクリートブロックの背面を切断する。このとき、残る一対のガイド穴内部の出隅部にワイヤが引っ掛かって、切断作業を円滑に実施できないおそれがあった。
そこで、本発明によれば、ワイヤガイドユニットを挿入しない残る一対のガイド穴の奥に補助具を取り付けて、これら補助具にもワイヤを掛け回すことで、ワイヤがガイド穴内部の出隅部に引っ掛かるのを防いで、コンクリートの切断作業を円滑に実施できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガイド穴の内径を小さくして、コンクリートブロックを短工期で切り出しが可能な切断装置、および、この切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る切断装置の構成を示す図である。
図2】前記切断装置の第1ワイヤガイドユニットの先端部分の側面図である。
図3】前記切断装置の第2ワイヤガイドユニットの先端部分の側面図である。
図4図3に示すワイヤガイドユニットのA-A断面図およびB-B断面図である。
図5】前記切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法のフローチャートである。
図6】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その1)である。
図7】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その2)である。
図8】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その3)である。
図9】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その4)である。
図10】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その5)である。
図11】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その6)である。
図12】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その7)である。
図13】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その8)である。
図14】前記コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その9)である。
図15】本発明の変形例に係るコンクリートブロックの切り出し方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明は、コンクリートブロック3の切り出しに用いられる切断装置1と、この切断装置1を用いて、コンクリート構造物としての鉄筋コンクリート壁2から略直方体形状のコンクリートブロック3を切り出す方法である(図5(a)参照)。
図1は、切断装置1の構成を示す図である。
切断装置1は、鉄筋コンクリート壁2を切断するものである。この切断装置1は、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤ10と、ワイヤ10を案内する一対の第1ワイヤガイドユニット11Aまたは第2ワイヤガイドユニット11Bと、ワイヤ10を一方向に回転させる駆動装置12と、を備えており、ワイヤ10の冷却に水を使用しない無水ワイヤソーである。
【0015】
図2は、第1ワイヤガイドユニット11Aの先端部分の側面図である。
この第1ワイヤガイドユニット11Aは、後述の切断用ガイド穴30、31に挿入される。
ワイヤガイドユニット11Aは、所定方向に延びる角筒形状の支持ビーム20と、支持ビーム20の切断用ガイド穴31に対する姿勢を保持する支持部21と、支持ビーム20の先端に固定された固定部22と、固定部22に回転自在に設けられてワイヤ10が掛け回された第1ガイドプーリ23と、を備える。
支持部21は、支持ビーム20の外周面から外側に向かって放射状に延びており、切断用ガイド穴30、31の内面に突っ張ることで、支持ビーム20の切断用ガイド穴30、31に対する姿勢を保持する。
第1ガイドプーリ23は、ワイヤ10の進行方向を略90°変えるものである。この第1ガイドプーリ23の回転軸Pは、支持ビーム20の中心軸C上でかつ中心軸Cに交差している。
【0016】
図3は、第2ワイヤガイドユニット11Bの先端部分の側面図である。図4(a)は、図3の第2ワイヤガイドユニット11BのA-A断面図であり、図4(b)は、図3の第2ワイヤガイドユニット11BのB-B断面図である。
この第2ワイヤガイドユニット11Bは、後述の切断用ガイド穴30、31に挿入される。
第2ワイヤガイドユニット11Bは、所定方向に延びて内部にワイヤ10が挿通された円筒形状の支持ビーム20と、支持ビーム20の切断用ガイド穴31に対する姿勢を保持する支持部21と、支持ビーム20の先端に設けられて回転自在な回転部24と、回転部24に回転自在に設けられてワイヤ10が掛け回された第1ガイドプーリ23と、回転部24に設けられて支持ビーム20の内側を通るワイヤ10を第1ガイドプーリ23に案内する第2ガイドプーリ25と、回転部24に設けられて第1ガイドプーリ23から延びるワイヤ10を案内する一対の第3ガイドプーリ26と、を備える。
【0017】
ワイヤ10は、支持ビーム20の中心軸C上に配置されている。
支持部21は、支持ビーム20の外周面から外側に向かって放射状に延びており、切断用ガイド穴30、31の内面に突っ張ることで、支持ビーム20の切断用ガイド穴30、31に対する姿勢を保持する。
回転部24の回転軸Qは、支持ビーム20の中心軸C上にある。
第1ガイドプーリ23は、ワイヤ10の進行方向を略90°変えるものである。この第1ガイドプーリ23の回転軸Pは、支持ビーム20の中心軸C上でかつ中心軸Cに交差している。
第2ガイドプーリ25は、支持ビーム20の中心軸C上を通るワイヤ10を第1ガイドプーリ23に案内するものである。この第2ガイドプーリ25の回転軸Rは、支持ビーム20の中心軸Cに交差している。また、この第2ガイドプーリ25は、ワイヤ10が掛けられる溝が支持ビーム20の中心軸C上に位置するように配置されている。
第3ガイドプーリ26は、第1ガイドプーリ23を通るワイヤ10が第1ガイドプーリ23の溝から外れるのを防止するものである。この第3ガイドプーリ26の回転軸Sは、支持ビーム20の中心軸Cに略平行である。また、第3ガイドプーリ26は、第1ガイドプーリ23を通ったワイヤ10を両側から挟み込む位置に配置されている。
【0018】
以下、切断装置1を用いて、鉄筋コンクリート壁2からコンクリートブロック3を切り出す方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
具体的には、図6(a)に示すように、コンクリートブロック3は、側面3A、3B、上面3C、背面3D、下面3Eを備えている。
ステップS1では、図6(b)に示すように、鉄筋コンクリート壁2の表面4の矩形状を成す4箇所にマーキングして削孔し、4つのガイド穴5A、5B、5C、5Dを形成する。
【0019】
ステップS2では、コンクリートブロック3の側面3A、3Bを切断する。具体的には、図7(a)に示すように、上下に隣り合うガイド穴5A、5Dを切断用ガイド穴30、31とし、これら切断用ガイド穴30、31のそれぞれに、ワイヤ10を掛け回した第1ワイヤガイドユニット11Aを挿入する。なお、図7図14では、理解を容易にするため、ワイヤガイドユニット11A、11Bについて、全体を表示せず、第1ガイドプーリ23のみを表示する。
この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、図7(b)に示すように、ワイヤ10で切断用ガイド穴30、31同士の間のコンクリートを切断して、図8(a)に示すように、コンクリートブロック3の側面3Aを切断する。
【0020】
同様に、図8(b)に示すように、上下に隣り合うガイド穴5B、5Cを切断用ガイド穴30、31とし、これら切断用ガイド穴30、31のそれぞれに、ワイヤ10を掛け回した第1ワイヤガイドユニット11Aを挿入する。この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、図9(a)に示すように、ワイヤ10で切断用ガイド穴30、31同士の間のコンクリートを切断して、図9(b)に示すように、コンクリートブロック3の側面3Bを切断する。
【0021】
ステップS3では、コンクリートブロック3の上面3Cを切断する。具体的には、図10(a)に示すように、上側の隣り合う2つのガイド穴5C、5Dを切断用ガイド穴30、31とし、これら切断用ガイド穴30、31のそれぞれに、ワイヤ10を掛け回した第1ワイヤガイドユニット11Aを挿入する。この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、図10(b)に示すように、ワイヤ10で切断用ガイド穴30、31同士の間のコンクリートを切断して、図11(a)に示すように、コンクリートブロック3の上面3Cを切断する。
【0022】
ステップS4では、コンクリートブロックの側面3A、3Bおよび上面3Cの切断が完了したので、コンクリートブロック3の背面3Dを切断する。具体的には、図11(b)に示すように、下側の隣り合う2つのガイド穴5A、5Bを切断用ガイド穴30、31とし、これら切断用ガイド穴30、31のそれぞれに、ワイヤ10を掛け回した第2ワイヤガイドユニット11Bを挿入する。さらに、ワイヤ10を上側の隣り合う2つのガイド穴5C、5Dの奥に補助具としてのガイドブロック32を取り付けて、これらガイドブロック32にもワイヤ10を掛け回す。このガイドブロック32は、図12(a)にも示すように、切断用ガイド穴30、31の内面に嵌合する嵌合面32Aと、ワイヤ10を案内するガイド面32Bと、を備えている。
この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、図12(b)に示すように、ワイヤ10でコンクリートを切断する。このとき、コンクリートの切断の進行に伴ってワイヤ10の角度が変化するが、回転部24が回転することで、第1ガイドプーリ23がワイヤ10の角度の変化に追従する。これにより、図13(a)に示すように、コンクリートブロック3の背面3Dを切断する。
【0023】
ステップS5では、コンクリートブロックの側面3A、3B、上面3Cおよび背面3Dの切断が完了したので、残る下面3Eを切断する。具体的には、まず、切断用ガイド穴30、31に挿入した第2ワイヤガイドユニット11Bを取り出す。これにより、図13(b)に示すように、下側の隣り合う2つのガイド穴5A、5Bの奥にワイヤ10を掛け回す。この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、図14(a)に示すように、ワイヤ10で切断用ガイド穴30、31同士の間のコンクリートを切断して、図14(b)に示すように、コンクリートブロック3の下面3Eを切断する。
ステップS6では、鉄筋コンクリート壁2からコンクリートブロック3を取り出す。
【0024】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)切断装置1を、環状のワイヤ10、一対のワイヤガイドユニット11A、11B、および駆動装置12を含んで構成した。よって、鉄筋コンクリート壁2に一対の切断用ガイド穴30、31を形成し、この一対の切断用ガイド穴30、31のそれぞれにワイヤガイドユニット11A、11Bを挿入し、この状態で、駆動装置12によりワイヤ10を回転させることで、ワイヤ10が切断用ガイド穴30、31同士の間のコンクリートを切断できる。
このとき、ワイヤガイドユニット11A、11Bの支持ビーム20の周囲に支持部21を設けたので、この支持部21が切断用ガイド穴30、31内で突っ張って、支持ビーム20が安定した姿勢で保持される。
また、第1ガイドプーリ23の回転軸Pを支持ビーム20の中心軸C上に配置したので、切断用ガイド穴30、31の内径は第1ガイドプーリ23の外径よりもわずかに大きければよいから、従来と比べて切断用ガイド穴30、31の内径を小さくでき、作業効率を向上できる。
また、第2ワイヤガイドユニット11Bについては、第1ガイドプーリ23を回転部24に設け、この回転部24を支持ビーム20に回転自在としたので、コンクリートの切断の進行に伴ってワイヤ10の角度が変化しても、回転部24が回転することによって、このワイヤ10の角度の変化に円滑に追従できる。
【0025】
(2)鉄筋コンクリート壁2にワイヤガイドユニット11A、11Bを挿入するためのガイド穴5A~5Dを4つ設けるだけで、略直方体形状のコンクリートブロック3の両側面3A、3B、上面3C、背面3D、下面3Eを切断して、鉄筋コンクリート壁2からコンクリートブロック3を取り出すことができる。
(3)コンクリートブロック3の背面3Dを切断する際、上側のガイド穴5C、5Dの奥にガイドブロック32を取り付けて、これらガイドブロック32にワイヤ10を掛け回すことで、ワイヤ10がガイド穴5C、5D内部の出隅部に引っ掛かるのを防いで、コンクリートの切断作業を円滑に実施できる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、ステップS4において、補助具としてガイドブロック32を用いたが、これに限らず、図15に示すような回転補助具33を用いてもよい。この回転補助具33は、切断用ガイド穴30、31の内面に嵌合する支持部331と、この支持部331に回転可能に支持されてワイヤ10が掛け回されたガイドローラ332と、を備える。
また、本実施形態では、ステップS2~S3において、コンクリートブロック3の側面3A、側面3B、上面3C、背面3D、下面3Eの順に切断したが、これに限らない。つまり、背面3Dを切断するためには、側面3A、側面3B、上面3C、および下面3Eのうちいずれか三面を切断すればよく、さらに、その三面の切断順序も任意に決定されてよい。したがって、例えば、コンクリートブロック3の側面3A、側面3B、および下面3Eを任意の順序で切断し、その後、背面3Dを切断し、最後に上面3Cを切断してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…切断装置 2…鉄筋コンクリート壁(コンクリート構造物)
3…コンクリートブロック 3A、3B…側面 3C…上面 3D…背面 3E…下面
4…鉄筋コンクリート壁の表面 5A、5B、5C、5D…ガイド穴
10…ワイヤ 11A…第1ワイヤガイドユニット
11B…第2ワイヤガイドユニット 12…駆動装置
20…支持ビーム C…支持ビームの中心軸 21…支持部 22…固定部
23…第1ガイドプーリ P…第1ガイドプーリの回転軸
24…回転部 Q…回転部の回転軸
25…第2ガイドプーリ R…第2ガイドプーリの回転軸
26…第3ガイドプーリ S…第3ガイドプーリの回転軸
30、31…切断用ガイド穴 32…ガイドブロック(補助具) 32A…嵌合面
32B…ガイド面 33…回転補助具 331…支持部 332…ガイドローラ
図1
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