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  • 特許-ソイルセメント地中連続壁施工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ソイルセメント地中連続壁施工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
E02D5/20 102
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020019057
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123969
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597057254
【氏名又は名称】有限会社マグマ
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】赤木 寛一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義正
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-063888(JP,A)
【文献】特開2010-236349(JP,A)
【文献】特開2019-015022(JP,A)
【文献】特開2007-077649(JP,A)
【文献】特開平08-177042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
E02F 5/00-7/10
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単軸又は多軸の柱列式施工機の先端部から、非硬化性注入材を吐出しつつ掘削を行い、掘削土と前記非硬化性注入材の混合土による壁体を造成する仮掘削工程と、
前記仮掘削工程の後に、トレンチカッター式施工機の先端部から固化材スラリーを吐出・混練しつつ本掘削を行い、固化させてソイルセメント地中連続壁を構築する本掘削・固化工程を有するソイルセメント地中連続壁工法であって、
前記トレンチカッター式施工機による掘削幅が、前記柱列式施工機による掘削幅以上であり、前記トレンチカッター式施工機のトレンチカッター本体が隔壁となり、前記仮掘削工程による混合土領域と前記本掘削・固化工程による固化領域を隔てることを特徴とするソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項2】
前記柱列式施工機による仮掘削に追随して、前記トレンチカッター式施工機による本掘削・固化を行うことを特徴とする請求項1に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項3】
前記本掘削・固化工程の後に、芯材を挿入する芯材挿入工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項4】
前記非硬化性注入材として気泡又は気泡と水を使用することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項5】
前記気泡の添加量を、TF値が150~200mmの範囲となるように調整することを特徴とする請求項4に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項6】
前記非硬化性注入材として水を吸収し膨張した膨潤吸水ポリマー又は水を吸収して膨潤した膨潤ポリマーに水を添加した膨潤吸水ポリマー分散液を使用することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【請求項7】
前記固化材スラリーに消泡剤を配合したことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント地中連続壁施工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土留壁や汚染物質拡散防止用止水壁の施工法としてソイルセメント地中連続壁施工法が知られている。
【0003】
このソイルセメント地中連続壁施工法は、オーガー撹拌施工機等のソイルセメント施工機を用いて施工する工法であり、その施工方法は、まず、掘削工程として、ソイルセメント施工機の移動、設置決めを行い、ソイルセメント施工機の先端部より掘削用注入材としてのセメントミルクを添加しながら、掘削土とセメントミルクの混合土を造成し、この混合土により溝壁の安定性を保たせるとともに、適切な流動性を持たせつつ掘削底まで掘削を行う。
【0004】
次に、固化工程として、掘削底まで掘削を行ったソイルセメント施工機により、掘削工程で造成した混合土に対して、固化材としてのセメントミルクを適量添加しつつ混合・撹拌しながら引き上げて、次工程の芯材の挿入に適した軟らかさのソイルセメントを造成する。そして芯材挿入工程として、クローラークレーン等を用いてそのソイルセメント中にH鋼等の芯材を挿入する。
【0005】
このように、従来のソイルセメント地中連続壁施工法は、掘削工程、固化工程及び芯材挿入工程の3工程を1組とし、この順序で各工程の間隔を置かずに繰り返し施工することにより連続した固化壁体を構築している。
【0006】
一方、上記ソイルセメント地中連続壁の構築を行うために用いる施工機械には種々の種類があるが、何れの施工機械も原地盤を掘削する機能、各種注入材を吐出する機能、掘削土と注入材等を混合・混練する機能を備えており、この施工機械を単独で使用して上記掘削工程、固化工程を行っている。
【0007】
上記の掘削工程、固化工程及び芯材挿入工程の3工程を1組として各工程の間隔を置かずに施工する主な理由は以下の制約による。まず、掘削工程において、掘削注入材としてセメントミルクを使用するため、掘削開始からセメントの水和反応が始まる。そのため、ソイルセメントが硬化するまでに芯材の挿入を終了させる必要があり、セメントの水和反応という時間的な制約がある。
【0008】
また、深いソイルセメント地中連続壁を施工する場合には、掘削工程にかかる時間が長くなるため、芯材の挿入時にはセメントミルクの水和反応が進み、芯材の挿入が困難になることがある。また、掘削時に障害物等が存在した場合には、予定の掘削工程終了時間を超過し、芯材の挿入ができなくなるといった問題がある。
【0009】
さらに、掘削工程と固化工程をソイルセメント施工機により行った後、芯材挿入工程を芯材挿入用クレーンを用いて行うが、ソイルセメント施工機及び芯材挿入用クレーンの2種類の施工機械を1組の編成とし使用することも、上記3工程を1組としなければならない理由として挙げられる。
【0010】
このように、従来のソイルセメント地中連続壁施工法では、上記の施工機械の制約により、掘削工程の作業中に、固化工程、芯材挿入工程の施工ができない状態であり、固化工程中には芯材挿入工程、掘削工程の施工ができず、芯材挿入工程中には掘削工程、固化工程の施工ができない。即ち、3工程中の1工程の施工中には他の2工程の施工はできないため、施工機械の稼働率が悪くなり、その結果、著しく施工効率が悪くなるという問題があった。
【0011】
このような問題に対し、本出願人はこれまでに、2台の施工機械を同時並行で使用することにより、施工効率の向上、施工費の低減を目的とした施工方法を提案している。例えば、特許文献1及び特許文献2の提案では、2台の施工機械を同時並行的に使用し、先行する施工機1は原地盤を掘削しつつ非硬化性の気泡を注入して気泡混合土を造成し、後行の施工機2で気泡混合土に固化材スラリーを添加しつつ混合、混練して固化土を造成するようにしている。また、これらの提案では、気泡混合土と固化材スラリーを混合する隣接部において、混合の品質を向上させるために隔壁の使用や芯材を隔壁として使用するようにしている。
【0012】
また、特許文献3の提案では、先行する施工機1により掘削時に気泡と少量の固化材スラリーを添加混合し、気泡混合土を軽度に固化させている。そして、後行の施工機械により軽度に固化した気泡混合土を掘削しつつ、固化材スラリーをさらに添加して混合するときに、気泡混合土が自立することを利用して、境界部の品質を良好に保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5513182号公報
【文献】特許第6466101号公報
【文献】特開2019-15022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の提案によれば、掘削工程と固化工程を各々の施工に適した施工機を用いて行うことにより、従来の単一の施工機により掘削工程、固化工程を行うソイルセメント地中連続壁施工法に比べて、固化壁の品質を向上させるとともに、工期の短縮が実現できる点で優れた工法であるが、近年、さらなる高品質なソイルセメント地中連続壁の施工と工期短縮が望まれている。
【0015】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、良質なソイルセメント地中連続壁の固化体を、従来に比べてさらに短い工期で施工することができるソイルセメント地中連続壁施工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、単軸又は多軸の柱列式施工機の先端部から、非硬化性注入材を吐出しつつ掘削を行い、掘削土と前記非硬化性注入材の混合土による壁体を造成する仮掘削工程と、前記仮掘削工程の後に、トレンチカッター式施工機の先端部から、前記混合土に固化材スラリーを吐出・混練しつつ本掘削を行い、固化させてソイルセメント地中連続壁を構築する本掘削・固化工程を有するソイルセメント地中連続壁施工法であって、前記トレンチカッター式施工機による掘削幅が、前記柱列式施工機による掘削幅以上であり、前記トレンチカッター式施工機のトレンチカッター本体が隔壁となり、前記仮掘削工程による混合土領域と前記本掘削・固化工程による固化領域を隔てることを特徴とする。
第2に、前記第1の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記柱列式施工機による仮掘削に追随して、前記トレンチカッター式施工機による本掘削・固化を行うことが好ましい。
第3に、前記第1又は第2の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記本掘削・固化工程の後に、芯材を挿入する芯材挿入工程を有することが好ましい。
第4に、前記第1から第3の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記非硬化性注入材として気泡又は気泡と水を使用することが好ましい。
第5に、前記第4の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記気泡の添加量を、TF値が150~200mmの範囲となるように調整することが好ましい。
第6に、前記第1から第5の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記非硬化性注入材として水を吸収し膨張した膨潤吸水ポリマー又は水を吸収して膨潤した膨潤ポリマーに水を添加した膨潤吸水ポリマー分散液を使用することが好ましい。
第7に、前記第1から第6の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記固化材スラリーに消泡剤を配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法によれば、柱列式施工機による仮掘削工程の後に、トレンチカッター式施工機による本掘削・固化工程を行うことにより、従来より効率よく良質なソイルセメント地中連続壁を造成することができる。また、本掘削でトレンチカッター本体が隔壁として機能するため、施工途中で本掘削・固化工程を中断することができ、容易に施工スケジュールの調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の施工作業の施工順序の説明概略図であり、(A)は仮掘削工程を示し、(B)は仮掘削工程及び本掘削・固化工程を示し、(C)は仮掘削工程、本掘削・固化工程及び芯材挿入工程を示している。
図2】本発明の実施形態の施工作業の地盤を上から見た施工領域の説明概略図であり、(A)は仮掘削工程による混合土領域を示し、(B)は仮掘削工程による混合土領域及び本掘削・固化工程による固化領域を示し、(C)は仮掘削工程による混合土領域、本掘削・固化工程による固化領域及び芯材挿入工程による芯材挿入領域を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態の施工作業の施工順序の説明概略図であり、図1(A)は仮掘削工程を示し、図1(B)は仮掘削工程及び本掘削・固化工程を示し、図1(C)は仮掘削工程、本掘削・固化工程及び芯材挿入工程を示している。
【0020】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、単軸又は多軸の柱列式施工機1の先端部から非硬化性注入材を吐出しつつ掘削を行い、掘削土と非硬化性注入材の混合土11による壁体を造成する仮掘削工程と、該仮掘削工程の後に、トレンチカッター式施工機2の先端部から、固化材スラリーを吐出・混練しつつ本掘削を行い、固化させる本掘削・固化工程を有している。
【0021】
<仮掘削工程>
本実施形態のソイルセメント地中連続壁施工法の手順は、まず、施工対象の原地盤4に対して、単軸又は多軸の柱列式施工機1を用いて仮掘削工程を行う。仮掘削工程で用いる単軸又は多軸の柱列式施工機1としては、単軸又は多軸のオーガー削孔混練軸施工機械を用いることができる。
【0022】
ここで、仮固化工程を施工する単軸又は多軸の柱列式施工機1は、後述する次工程の本掘削・固化工程を施工するトレンチカッター式施工機2よりも施工効率がよい施工機を選定することが好ましい。これにより、仮掘削工程の直後に本掘削・固化工程を追随させて進行させた場合であっても、本掘削・固化工程が仮掘削工程が追いついて本掘削・固化工程を滞らせることがなくなる。なお、この場合の施工効率とは、単位時間当たりの施工進行速度を意味し、施工効率がよいとは、具体的には、後述する本掘削・固化工程よりも仮掘削工程の進行時間が短いことを意味している。
【0023】
仮掘削工程において、上記条件を満足させるための良好な施工効率を考慮した場合、柱列式施工機1は、単軸よりも多軸の柱列式施工機を用いることが好ましく、さらに良好な施工性の観点から、3軸又は5軸の柱列式施工機を用いることが特に好ましい。なお、図1(A)に示す実施形態では、3軸の柱列式施工機1を用いて施工する仮掘削工程を表している。
【0024】
また、仮掘削工程では、上記柱列式施工機1の先端部から非硬化性注入材を吐出しつつ掘削を行い、掘削土と非硬化性注入材の混合土11による壁体を造成する。本発明で用いる非硬化性注入材としては、気泡又は、気泡と水を使用することができる。掘削土と、気泡又は気泡と水の混合比率は、掘削土の物性値と混合土11の流動性の要求値により異なるが、一般的には混合土11の流動性をテーブルフロー値(以下、TF値と略称する)で表した場合、後に芯材31を挿入する場合に、混合土11の流動性と壁体の安定性を両立させるTF値として150~200mmの範囲が考慮され、経験値としては170~200mmが考慮される。なお、混合土11のTF値を上記条件とする場合、施工性や経済性の観点から、掘削土が粘性土の場合には、掘削土1m当たり気泡が0.3m、水が0.3mの条件が好ましく、砂質土の場合には気泡が0.2m、水が0.1m程度の条件が好ましい。
【0025】
また、気泡の注入量を多くすると流動性は向上するが、混合土11の比重は小さくなるので、壁体の安定を保つためには比重を1.05以上にする必要があり、そのための気泡注入量は約0.8m/m以下に保つことが必要である。
【0026】
さらに、所望の気泡を発生させるために起泡剤を用いることができる。起泡剤としては、通常公知の界面活性剤を用いることができるが、なかでも気泡そのもの、さらに、掘削土と混合したときにも消泡し難く、酸やアルカリ等の化学的安定性に優れ、かつ起泡能力に優れる起泡剤が望まれ、具体的には、アルキルサルフェート系界面活性剤を好適に用いることができる。
【0027】
なお、アルキルサルフェート系界面活性剤のWTM起泡剤(フローリック社のWTM起泡剤原液を清浄な水で20倍に希釈したもの)を25倍に起泡し、比重0.04、最頻値が200μm程度の気泡を使用した場合の実績によると、1週間は気泡混合土11の流動性等の変化がなく好適に使用できることが確認されている。このことより、後述する本掘削・固化工程は仮掘削工程が終了して1週間以内に施工することが望ましい。
【0028】
また、本実施形態の非硬化性注入材としては、水を吸収して膨潤した膨潤ポリマー又は、水を吸収して膨潤した膨潤ポリマーにさらに水を添加した膨潤ポリマー分散液を用いることもできる。膨潤ポリマー分散液を非硬化性注入材とする場合には、TF値を170mm以上とすると、掘削土1m当たり粘性土では膨潤ポリマー分散液を0.3m、砂質土では0.2mを用いるのが好ましい。
【0029】
膨潤ポリマーの種類は、デンプン系、セルロース系及びポリマー系統があるが合成ポリマー系の膨潤ポリマー(三洋化成社のGEOSAP)では、清浄な水1m当たりGEOSAPを0.5~1.5kg、好ましくは水1m当たり1kgを添加し、十分吸水した分散液を非硬化性注入材として使用することが好ましい。
【0030】
柱列式施工機1により上記の非硬化性注入材を添加しつつ施工深度まで掘削を行い、引き上げることにより、掘削土と非硬化性注入材の混合土11による壁体を造成することができる。この混合土11による壁体は、所定の期間は溝壁の安定を保ち施工に必要な流動性を保つことができるため、時間を置いても次工程の本掘削・固化工程を行うことが可能となる。
【0031】
<本掘削・固化工程>
次に、本掘削・固化工程を行う。図1(B)は、本実施形態の本掘削・固化工程を示している。本掘削・固化工程で使用するトレンチカッター式施工機2は、地盤に挿入するチェーンソー型のカッターチェーンを備えたトレンチカッター本体21がベースマシンに接続されており、水平方向に移動させて、溝の掘削を行いつつ固化剤スラリーの注入、混合土11との混合、攪拌を行い、地中に連続したソイルセメント地中連続壁22(以下、固化体ともいう)を造成することができる。具体的なトレンチカッター式施工機2としてはTRD施工機を例示することができる。
【0032】
通常、施工対象の原地盤4に対して、トレンチカッター式施工機2による掘削を行う場合、トレンチカッター式施工機2は比較的施工進行速度が遅いため、掘削には時間がかかっていた。これに対して、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、まず、柱列式施工機1による仮掘削を行っており、本掘削・固化工程では、その仮掘削溝をなぞるように本掘削を行うため掘削ストレスが軽く、非常に短い施工時間で本掘削を行うことができる。
【0033】
また、柱列式施工機1による仮掘削溝は、オーガー等による掘削であるため、図2(A)に示すように円柱が繋がった形状の掘削溝が形成されるが、本掘削を行うトレンチカッター式施工機2では、所定の幅で連続して掘削できる。そのため、トレンチカッター式施工機2により仮掘削溝をなぞって本掘削を行うことにより、図2(B)に示すように、掘削溝が上面視で矩形形状の整った掘削溝とすることができ、高品質の掘削溝とすることができる。
【0034】
ここで、使用するトレンチカッター式施工機2は、上記の本掘削の条件において、仮切削工程で用いる柱列式施工機1と、単位時間当たりの施工進行速度が同等程度の施工機を選択することが望ましい。また、柱列式施工機1による仮掘削に追随させて、仮掘削と同時にトレンチカッター式施工機2による本掘削・固化を行うことが好ましい。これにより、仮掘削工程の直後に連続して本掘削・固化工程を行うことが可能となり、施工期間を大幅に短縮することが可能となる。
【0035】
また、本掘削・固化工程では、トレンチカッター式施工機2の先端部から固化剤スラリーを吐出、混練して固化体22を造成する。トレンチカッター式施工機2の先端部から吐出された固化剤スラリーは、回転するチェーンソー型のカッターにより混合土11に一様に混合され、良質な固化体22が造成される。なお、本発明で用いる固化剤スラリーとしてはセメントミルク等を好適に用いることができる。
【0036】
さらに、固化材スラリーに対して消泡剤を添加することができる。本掘削・固化工程において、消泡剤により仮掘削工程で造成した混合土11中の気泡を消泡させることにより、固化体22の強度を増加させることができる。消泡剤としては、混合土11の発泡状態に応じて適宜選択することができる。
【0037】
また、本発明において、トレンチカッター式施工機2の掘削幅は、柱列式施工機1の掘削幅以上とする。これにより、上記本掘削による掘削溝の形状を確実に上面視で矩形形状とすることができるとともに、トレンチカッター本体21が、仮掘削工程で造成した混合土11と、本掘削・固化工程で造成した固化体22との隔壁として作用させることができる。これにより、例えば、本掘削・固化工程の途中でトレンチカッター式施工機2を停止させた場合であっても、固化剤スラリーと混合土11とが混ざり合って固化反応が開始するのを防止することができ、柔軟な施工計画をたてることができる。
【0038】
<芯材挿入工程>
また、本実施形態のソイルセメント地中連続壁施工法においては、必要に応じて本掘削・固化工程の後に芯材31を挿入することができる。図1(C)は本実施形態の芯材挿入工程を示している。本実施形態の芯材挿入工程では、クローラークレーン等の芯材挿入用クレーン3を用いて芯材31の挿入を行っている。挿入する芯材31としては、一般に造成される固化体22の補強に用いる芯材を用いることができ、具体的には、例えば、H形鋼等の鋼材、プレキャスト製のコンクリート壁体あるいは鋼製の壁体等を用いることができる。
【0039】
なお、本実発明のソイルセメント地中連続壁施工法においては、本掘削・固化工程での混合土11と固化剤スラリーの混練により固化反応が開始する。そのため、芯材挿入工程を行う場合には、できる限り固化剤スラリーの固化反応が進行していない段階、即ち、本掘削・固化工程の直後に行うことが好ましい。
【0040】
以上、実施形態に基づき本発明のソイルセメント地中連続壁施工法を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、本掘削・固化工程におけるトレンチカッター式施工機2の先端部からの固化剤スラリーの吐出方向は特に限定していないが、トレンチカッター本体21を混合土11の領域と固化体22の領域との隔壁として用いることを考慮した場合、トレンチカッター式施工機2の施工進行方向に対して、逆側方向(後方)のみに固化剤スラリーを吐出させることもできる。これにより、トレンチカッター本体21を隔壁として、確実に混合土11の領域と固化体22の領域とを隔てることができる。
【0042】
以上の説明のとおり、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法によれば、柱列式施工機1による仮掘削工程の後に、トレンチカッター式施工機2による本掘削・固化工程を行うことにより、従来より効率よく良質なソイルセメント地中連続壁を造成することができる。また、本掘削でトレンチカッター本体21が隔壁として機能するため、容易に施工スケジュールの調整を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 柱列式施工機
11 混合土
2 トレンチカッター式施工機
21 トレンチカッター本体
22 ソイルセメント地中連続壁(固化体)
3 芯材挿入用クレーン
31 芯材
4 原地盤
図1
図2