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特許7341439可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、可食性空中浮遊物およびシャボン玉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、可食性空中浮遊物およびシャボン玉
(51)【国際特許分類】
   A63H 33/28 20060101AFI20230904BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230904BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230904BHJP
   A23G 3/52 20060101ALI20230904BHJP
   A23G 3/36 20060101ALI20230904BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20230904BHJP
【FI】
A63H33/28 Z
A23L29/00
A23L5/00 N
A23G3/52
A23G3/36
A23L29/262
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022029885
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】522078772
【氏名又は名称】早川 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100182198
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 貴男
(72)【発明者】
【氏名】早川 和久
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090655(JP,A)
【文献】早川和久,ヒドロキシプロピルメチルセルロースと食品添加物の界面活性剤を含んだ石鹸を含まないノンソープのシャボン玉,第26回セルロース学会年次大会要旨集,日本,2019年07月01日,51
【文献】早川和久,ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した触れる安全なシャボン玉,第23回セルロース学会年次大会要旨集,日本,2016年07月01日,72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
請求項1に記載の可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられるシャボン玉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、その液体組成物を用いて形成した可食性空中浮遊物、および、シャボン玉に関する。また、本発明は、石鹸を用いない球状の気体含有の水溶性の薄膜からなり、空中を浮遊して割れずに触れられる可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、その液体組成物を用いて形成した可食性空中浮遊物、および、シャボン玉に関する。
【背景技術】
【0002】
ソープバブルと呼ばれる石鹸を利用した子供の遊び道具または演劇ステージなどのアトラクションとして利用される球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる空中浮遊物が知られている。この浮遊物は、日本国内ではシャボン玉とも呼ばれる。これは石鹸を意味するシャボンの水溶液にストローの端あるい吹き口となる数センチメール径の針金などのリングをつけて引き上げると、ストローの端の中あるいはリング内に水溶液の被膜が張り、この被膜部分に息を吹きかけたり、風をあてたりすると、その被膜の面積が広がる。このとき、被膜は、ある程度広がったところで被膜内に空気が入った状態で球状になる。そして、被膜(シャボン玉)は、ストローの端またはリングから離脱し、割れるまでしばらく浮遊する。この被膜の厚みは、ナノメートル台~数ミクロンメーター台と薄い。また、被膜(シャボン玉)の球状物は極めて軽いが、ある程度大きさがあるので、水溶液滴のように素早く落下せず空気中をしばらく浮遊した後に、被膜(シャボン玉)が重力や気流の影響でところどころ薄くなり、被膜(シャボン玉)が崩壊したところで、球体がなくなる。特許文献1乃至特許文献4および非特許文献1乃至非特許文献5では、シャボン玉の生成方法に関する技術を開示している。
【0003】
特許文献1には、割れてしまう現象を起こさない組成物として、水溶性の高分子であるセルロースエーテルを添加して、添加された水溶性高分子が球状の気体含有の水溶性薄膜からなる空中浮遊中に乾燥して、固体状の薄いフィルムとなり、触っても割れない技術が開示されている。特許文献1には、非特許文献1に記載されている水に溶解または分散して、水の界面張力を低下する石鹸を含む界面活性剤から選ばれるものが使用できることが開示されている。また、特許文献1には、これらの界面活性剤の水溶液または水分散体に水溶性の高分子としてのセルロースエーテル(特にヒドロキシプロピルメチルセルロース)を混合溶解することにより、指や手で触ることが可能な割れない被膜(シャボン玉)が作れる技術が開示されている。特許文献1に開示されている界面活性剤は、そのほとんどが食品添加物としては使用が認可されてない界面活性剤である。
【0004】
特許文献1に開示されている界面活性剤の中から食品添加物として添加が認可され、非特許文献2(704~708頁)に記載のショ糖脂肪酸エステルの中のショ糖ラウリン酸エステルを選定し、かつ、特許文献1に開示されている食品添加物として添加が認可された非特許文献2(847~849頁)に記載の水溶性高分子であるヒドロキシプロピルメチルセルロースについて、本発明者は鋭意検討した。その結果、本発明者らは、本発明者は、この水溶性高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、信越化学工業(株)が製造販売している食品添加物用のメトキシ基置換度28~30質量%、ヒドロキシプロポキシ基置換度7~12質量%の水溶液としたときの20℃における粘度が4.8~7.2mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースの17.5質量%の水溶液にショ糖ラウリン酸エステルの20質量%水溶液を加えて攪拌混合された水溶液を用いて、割れることなく指や手で触ることができるシャボン玉状の空中浮遊物ができることを非特許文献3で開示している。また、本発明者らは、非特許文献3において、その組成物の混合比率が極めて狭い範囲でないと触ることができるシャボン玉状の空中浮遊物ができないことを開示している。また、本発明者は、非特許文献5において、これらの組成物によって、口にいれても安全な割れないシャボン玉状物ができる技術を開示している。
【0005】
特許文献3には、食品添加物としての界面活性剤を利用することで、口にいれられる可食性のシャボン玉状物を得る技術が開示されている。また、特許文献3には、ショ糖脂肪酸エステルだけでなく、非特許文献2(p.547-548)に記載のグリセリン脂肪酸エステルも使用できることが開示されている。特許文献2には、水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外に、非特許文献2(p.886~887頁)に記載の水溶性のプルランと呼ばれる多糖類と水溶性の増粘、被膜強化剤としてカルシウム化合物等を添加使用し、さらに界面活性剤組成分としてショ糖脂肪酸エステルを使用することによって、長期に空中を浮遊し割れにくいシャボン玉に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、組成物において、空気中に長期に浮遊するシャボン玉状物はできるが、指や手で触れる程のものにするのは困難である課題が記載されている。
【0006】
一方、前述のショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルの他食品添加物として認可されている界面活性剤は、舌で感じる味としては極めて苦味が高い。このため、これらを用いたシャボン玉状物が口に入った時に舌に触れた場合には、嫌悪感がぬぐいきれない課題がある。
【0007】
特許文献2および特許文献3には、食品用甘味料として、例えばショ糖、ステビア、還元麦芽糖、アスパルテーム(L-フェニルアラニン)などを添加することで、食品添加物として認可されている界面活性剤の苦味の問題を改善することが開示されている。また、特許文献4には、このような甘味組成物を含む飲料を食品添加物の水溶性高分子と界面活性剤を含むベース溶液に添加して、苦味を隠蔽する方法に関する技術が開示されている。
【0008】
甘味料は界面活性を有するものが少ないことから、多量に添加してしまうと界面張力の低下で被膜形成できなくなってしまう。このため、本発明者らは、極めて少量の添加で、苦味が隠蔽できる甘味料としてネオテームを2質量%含む甘味料製剤であるDSP五協フード&ケミカル株式会社より製造販売されている製品名「ミラスイー200」を用いることで界面張力の低下を抑制することなく、食品添加物として認可される界面活性剤の苦味の問題が解決できることを見出した。また、本発明者らは、非特許文献4において、その組成を開示している。また、本発明者らは、水溶性の高分子であるヒドロキシプロピルメチセルロースは水溶液中で細菌が発生繁殖することがあり、防腐剤として食品添加物として非特許文献2(738頁)に記載のソルビン酸カリウムを微量添加する組成物の処方を開示している。
【0009】
特許文献2には、水溶性の高分子であるヒドロキシプロピルメチセルロースと同様に、水溶性の高分子であり細菌が発生繁殖する場合があるプルランを使用するシャボン玉状物を得るための水溶液に対して、防腐剤としてこのソルビン酸カリウムを使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-301200号公報
【文献】特開2003-275478号公報
【文献】特開平10-305178号公報
【文献】特開2003-38867号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】吉田時行,進藤信一,大垣忠義、山中樹好,新版 界面活性剤ハンドブック,工学図書,昭和62年10月1日初版、平成12年5月20日4版
【文献】厚生労働省、消費者庁編,第九版食品添加物公定書, 平成30年2月1日公表 p. 704~708, p.847~849, p.547-548,p.738https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/kouteisho9e.html
【文献】早川和久,”ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した触れる安全なシャボン玉”,第23回セルロース学会年次大会要旨集,P-026,2016年7月1日,p.72
【文献】早川和久”ヒドロキシプロピルメチルセルロースと食品添加物の界面活性剤を含んだ石鹸を含まないノンソープのシャボン玉”.第26回セルロース学会年次大会要旨集,P-001,2019年7月1日,p.51
【文献】セルロース学会編,「セルロースのおもしろ科学とびっくり活用」,2012年11月27日,講談社,p.112-113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非特許文献4には、口に入れても安全であり、苦味の隠蔽が図れて、指などで触ることができる球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性空中浮遊物用組成物を得る方法が開示されている。また、非特許文献4には、20℃において、2質量%の水溶液としたときの粘度が4.8~7.2mPa・sである水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースの17.5質量%の水溶液にショ糖ラウリン酸エステルの20質量%水溶液を加えて攪拌混合された水溶液に、合成甘味料のネオテームを含む甘味料0.1質量部を溶解し、さらに防腐剤としてソルビン酸カリウムを加えて溶解した調製溶液を開示している。また、非特許文献4には、この調製溶液にストローやリング状物を浸漬して、内部にできた被膜を口から風を送って吹き、シャボン玉状物を発生させ、10秒以上室温下にて空中に浮遊させれば、良いことが開示されている。
【0013】
しかしながら、非特許文献4に記載の調製溶液は、室温として考えられる20℃~30℃の温度帯において調製当日から白濁したり、調製直後から2か月以上放置したときにその温度帯で2相に分離してしまう課題があった。また、非特許文献4に記載の白濁や分離した調製溶液にストローやリング状物を浸漬して、内部にできた被膜に口から風を送って吹いても、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性空中浮遊物用組成物ができなくなる課題があった。
【0014】
本発明は、玩具や演劇等のアトラクションとして使われるソープバブルと呼ばれる球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)において、可食(食用可能)で触ることができる球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を提供することを目的とする。また、本発明は、可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を生成することができ、可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)が分離したり白濁したりしない、表面安定性・形状安定性に優れる可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を提供することを目的としてもよい。また、本発明は、20℃~30℃の温度帯においても白濁したり、2か月以上放置した場合でも2相に分離してしまうことがなく、20℃~30℃の温度帯において石鹸を用いない球状の気体含有の水溶性の薄膜からなり、空中を浮遊して割れずに触れられる可食性の空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を生成できる可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を提供することを目的としてもよい。また、本発明は、可食(食用可能)な食品添加物よりなる石鹸を用いない球状の気体含有の水溶性の薄膜からなり、空中を浮遊して割れずに触れられる可食性のシャボン玉状物を得るための可食性空中浮遊物生成用の液体組成物において、20℃~30℃の室温度帯において分離したり濁ったりせず、空中を浮遊して割れずに触れられる可食性のシャボン玉状物を得ることが困難になることがない安定な水溶液を調製するための可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の組成を提供することを目的としてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一つの実施形態は、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる触れられる可食性空中浮遊物生成用の液体組成物であって、20℃において、2質量%の水溶液の粘度が2.4から7.2mPa・sの範囲内である水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースであって17.5質量%の第1混合水溶液に、ショ糖ラウリン酸エステルであって20質量%の第2混合水溶液を加えて攪拌混合した第1の水溶液と、合成甘味料のネオテームを含む甘味料を溶解して生成した第2の水溶液と、防腐剤として、ソルビン酸カリウムを加えて溶解した溶液にトレハロースを添加して溶解した添加水溶液とを有し、前記第1の水溶液は、前記第1混合水溶液の質量20に対して、前記第2混合水溶液の質量8の割合で混合して生成し、前記第2の水溶液は、前記第1の水溶液の質量28に対して質量0.1の前記ネオテームを含む甘味料を溶解し、前記添加水溶液は、前記第2の水溶液の質量28.1に対して、前記ソルビン酸カリウムの質量が0.005か
ら0.03の範囲内の割合で溶解し、前記添加水溶液は、前記第2の水溶液の質量28.
1に対して、前記トレハロースの質量が2から9の範囲内の割合で添加溶解する、ことを特徴とする可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、上記の可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられる可食性空中浮遊物であってもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態は、上記の可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられるシャボン玉であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る可食性空中浮遊物およびシャボン玉によれば、球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)において、可食(食用可能)で触ることができる球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)とすることができる。また、本発明に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物によれば、球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)において、可食(食用可能)で触ることができる球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を提供することができる。また、本発明に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物によれば、分離したり、白濁したりしない、表面安定性・形状安定性に優れる可食性空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を生成することができる。また、本発明に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物によれば、20℃~30℃の温度帯においても白濁したり、2か月以上放置した場合でも2相に分離してしまうことがなく、20℃~30℃の温度帯において石鹸を用いない球状の気体含有の水溶性の薄膜からなり、空中を浮遊して割れずに触れる可食性の空中浮遊物およびシャボン玉(空中浮遊物)を生成することができる。また、本発明に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物によれば、可食可能な食品添加物よりなる石鹸を用いない球状の気体含有の水溶性の薄膜からなり、空中を浮遊して割れずに触れる可食性のシャボン玉状物を得るための可食性空中浮遊物生成用の液体組成物において、20℃~30℃の室温度帯において分離したり濁ったりせず、空中を浮遊して割れずに触れる可食性のシャボン玉状物を得ることが困難になることがない安定な水溶液を調製するための可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の組成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の一例を説明する説明図である。
図2】可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の他の例(他の例1)を説明する説明図である。
図3】可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の他の例(他の例2)を説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した可食性空中浮遊物・シャボン玉の使用時の例を説明する説明図である。
図5】可食性空中浮遊物・シャボン玉の使用時の他の例(他の例1を使用)を説明する説明図である。
図6】可食性空中浮遊物・シャボン玉の使用時の他の例(他の例2を使用)を説明する説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられる可食性空中浮遊物(シャボン玉)を説明する説明図である。
図8】実施例1~5及び比較例1~12の特性を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、可食性空中浮遊物およびシャボン玉の例を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、以後に説明する可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、可食性空中浮遊物およびシャボン玉以外でも、食用可能で空中に浮遊する物またはそれを生成する液体であれば、いずれのものにも用いることができる。
【0021】
図1乃至図8を用いて、本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物、可食性空中浮遊物およびシャボン玉の構成を説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物100の組成の一例を説明する説明図である。図2は、可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の他の例(他の例1)を説明する説明図である。図3は、可食性空中浮遊物生成用の液体組成物の他の例(他の例2)を説明する説明図である。図4は、本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した可食性空中浮遊物またはシャボン玉の使用時の例を説明する説明図である。図5は、可食性空中浮遊物またはシャボン玉の使用時の他の例(他の例1を使用)を説明する説明図である。図6は、可食性空中浮遊物またはシャボン玉の使用時の他の例(他の例2を使用)を説明する説明図である。図7は、本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられる可食性空中浮遊物(シャボン玉100S)で、実際に手の指でさわれられる様子の写真である。図8は、本発明に係る実施例1~5、及び、比較例1~12の特性を説明する説明図である。なお、図1等に示す可食性空中浮遊物生成用の液体組成物等の構成等は一例であり、本発明は図1等に示す可食性空中浮遊物生成用の液体組成物等に限定されるものではない。
【0022】
以後に、本発明を説明する。
【0023】
図1および図4を用いて、本発明の実施形態に係る可食性空中浮遊物生成用の液体組成物(以下、液体組成物という)、可食性空中浮遊物およびシャボン玉の構成を説明する。図1に示すように、本発明に係る液体組成物100は、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる触れられる可食性空中浮遊物(例えば図7のシャボン玉100S)を生成するための液体である。液体組成物100は、本実施形態では、20℃において、2質量%の水溶液の粘度が2.4から7.2mPa・sの範囲内である水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースであって17.5質量%の第1混合水溶液に、ショ糖ラウリン酸エステルであって20質量%の第2混合水溶液を加えて攪拌混合した第1の水溶液と、合成甘味料のネオテームを含む甘味料を溶解して生成した第2の水溶液と、防腐剤としてソルビン酸カリウム(ソルビン酸カリウム粉)を加えて溶解した溶液にトレハロース(またはトレハロース粉)を添加して溶解した添加水溶液とを有する。
【0024】
ここで、第1の水溶液は、第1混合水溶液の質量20に対して、第2混合水溶液の質量8の割合で混合して生成する。第2の水溶液は、第1の水溶液の質量28に対して質量0.1のネオテームを含む甘味料を溶解する。添加水溶液は、第2の水溶液の質量28.1に対して、ソルビン酸カリウムの質量が0.005から0.03の範囲内の割合で溶解する。また、添加水溶液は、第2の水溶液の質量28.1に対して、トレハロースの質量が2から9の範囲内の割合で添加する。
【0025】
下記に、本発明に係る液体組成物について、生成方法の具体例を説明する。
【0026】
本発明者が鋭意検討した結果、(1)20℃において、(2)2質量%の水溶液としたときの粘度が2.4~7.2mPa・sである水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースの17.5質量%の水溶液にショ糖ラウリン酸エステルの20質量%水溶液を加えて攪拌混合された水溶液に、(3)合成甘味料のネオテームを含む甘味料を溶解し、(4)さらに、防腐剤としてソルビン酸カリウムを加えて溶解した溶液にトレハロースを添加して溶解した水溶液について、(5)20℃~30℃の室温下において、調製した当日から白濁してしまったりせず、2か月以上放置した場合でもその温度下で2相に分離したりしないことを本発明者が確信した。また、本発明者は、(6)20℃~30℃の室温下において、水溶液から球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の割れない、かつ、触れることができる空中浮遊物(またはシャボン玉)が得られることを確認した。
【0027】
本発明で使用される水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水不溶性のセルロースに対して、メトキシル基とヒドロキシプロピル基を水溶性となる程度エーテル置換して水溶性としたものである。水溶性となる置換度の範囲として、メトキシ基が19.0から30.0%であり、ヒドロキシプロポキシ基を3.0%から12.0%、好ましくは水溶解性に優れる置換度が高いメトキシ基28.0から30.0%、ヒドロキシプロポキシ基7から12%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることができる(たとえば非特許文献2のp.847~849に記載)。なお、これらのセルロースエーテルの置換度は、たとえば非特許文献2のp.847~849に記載されている方法の他、J.G.Gobler, E.P.Samsel, and G.H.Beaber,Talanta,9,474(1962)に記載されたZeisel-GCによる手法または第14改正日本薬局方D945~D966に記載の置換度測定方法に準じる手法でも測定できる。これらのセルロースエーテルは、分子内に水酸基と疎水性基を有し、界面活性の性質を示すことから、これら水溶液の表面張力は水より低く、シャボン玉の形成には好都合となる。
【0028】
セルロースエーテルの分子量は、濃厚な水溶液にして高い粘性が発現しない範囲で、かつ、水溶液が乾燥して皮膜となるに必要な分子量範囲がよく、重量平均分子量にして1.7万から3.4万が好ましく、さらに好ましくは1.9万から3.2万が最適である。また、セルロースエーテルは、重量平均分子量に相当する2質量%の20℃における粘度として2.4から7.2mPa・sのものが好ましい。なお、重量平均分子量は、高分子論文集vol.39,No.4,PP293から298(1982)に記載の方法に準じて測定することができる。また、粘度は、第14改正日本薬局方D945からD966に記載の粘度測定方法により測定することができる。
【0029】
非特許文献3および非特許文献4には、2質量%の20℃における粘度として6mPa・s程度のヒドロキシプロピルメチルセルロースグレード品を用いた食品添加物と水よりなる割れない触れられるシャボン玉の組成物が提示されている。しかしながら、20℃~30℃の室温下において、透明性を保持するにはより低分子量分を含む2質量%の20℃における粘度として3mPa・s程度のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた方が透明性を保持しされやすい。
【0030】
本発明者は、セルロースエーテルの分子量が少なすぎると、シャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉など)が浮遊した後に、乾燥した時点でできるフィルムの強度が弱くなり、厚みも薄くなりやすく、割れずに触れられる性能が低下することを見出し、本発明に至ったところである。なお、本発明で使用できるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、日本国内の製造メーカである信越化学工業株式会社により商品名「メトローズ(登録商標)」として製造販売されている(たとえば非特許文献2の847~849頁に記載)。なお、本発明で使用できるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本発明の目的とする性能が発揮できる上記特性のものであればいずれのものも使用することができる。
【0031】
本発明で使用できるヒドロキシプロピルメチルセルロースの(割れないで触れられるシャボン玉状物を得るための)水溶液中での組成物濃度について、たとえば濃度が高すぎると組成物全体の粘度が高くなりすぎて、リング内やストローの端に組成水溶液の被膜を作った後、口からの息による風を被膜に吹き付けても、空中を浮遊するシャボン玉状物がリングから離脱して形成されない。本発明で使用できるヒドロキシプロピルメチルセルロースの(割れないで触れられるシャボン玉状物を得るための)水溶液中での組成物濃度について、たとえば濃度が低すぎると、被膜が形成されてから浮遊中に乾燥した後に割れないで触れる程度とならない。したがって、被膜が形成されてから浮遊中に乾燥した後に割れないで触れられる程度の被膜となるのに適性な濃度であることが必要である。
【0032】
また、組成中の乾燥によって固形物となる固形分濃度で考えると、その固形物分の割合である濃度値に反映されてしまうことになる。そこで、乾燥によって固形物となるヒドロキシプロピルメチルセルロースに対して、組成物中の水の全体重量の比率、すなわち組成物中の水の質量100に対する外割のヒドロキシプロピルメチルセルロースの質量(濃度)は、(本発明の組成の中で検討した結果、)質量14.7から15.3の極めて狭い濃度領域となる。本発明者は、たとえばリングにその組成水溶液の被膜を作った後に、口からの息による風を被膜に吹き付けても、空中を浮遊する可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)がリングから離脱して形成され、その可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)が浮遊中に乾燥した後に割れないで触れられる程度の被膜となるのに適性濃度となることを確認した。
【0033】
本発明で使用できる食品添加物の界面活性剤であるショ糖ラウリン酸エステルとしては、非特許文献2(704~708頁)に記載されている特性品を使用することができる。また、本発明で使用できるショ糖ラウリン酸エステルは、日本国内において三菱ケミカルフーズ株式会社及び第一工業製薬株式会社において製造販売が行われている製品を使用することができる。なお、本発明の目的とする性能が発揮できる上記特性のものであればいずれのものも使用することができる。
【0034】
ショ糖ラウリン酸エステルの組成濃度は、組成溶液にリングないしストローを浸した後引き上げた時にリング内あるいはストロー端に被膜が形成できる必要がある。また、ショ糖ラウリン酸エステルの組成濃度は、さらにその後に、リングやストロー端の被膜に口からの息による風を吹き付けることで、空中を浮遊する可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)がリングから離脱して形成される濃度でなければならない。また、可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)が空中に浮遊した後に乾燥によって形成される被膜中の高分子物質で被膜形成をするヒドロキシプロピルメチセルロースに対して被膜形成能が少ないショ糖ラウリン酸エステルが固体として含侵すると乾燥により得られるフィルム強度が弱くなり、割れなくても触ることが不可能になる。このため、本発明の目的とする可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)が浮遊できる組成濃度は、全組成物中の水の質量100に対するショ糖ラウリン酸エステルの固形分の外割比率として、質量3が最低必要である。さらに好ましくは質量7となる。
【0035】
なお、組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロース固形分に対するショ糖ラウリン酸固形分の比率は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの固形分質量100に対して57以下としないと、調製される可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)の薄膜の強度が不十分となり、触れる可食性空中浮遊物(またはシャボン玉)の被膜ができない場合がある。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの組成分も含めて、ショ糖ラウリン酸エステルの組成及び水の組成について上述の組成分を満たして、混合しやすい混合の組成としては、17.5質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液の質量20と20質量%のショ糖ラウリン酸エステル水溶液の質量8を混合して組成物とするのが最も好ましい。
【0036】
また、ショ糖ラウリン酸エステルの水溶液の調製にあっては、溶解を20℃から30℃の室温とする。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液の調製は、あらかじめ90℃以上の熱水にヒドロキシプロピルメチルセルロース粉を分散させたのちに、10℃以下、さらに好ましくは5℃以下に冷却してヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解するのが好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは冷水程よく溶ける性質があり、いきなりその粉体を冷水中にいれると大きな塊状物となって溶解に時間がかかる場合があるためである。また、冷却しないで溶解しようとすると、その溶解の程度が不十分な場合は、本発明の目的とするところの性能が得られない組成物となる場合がある。
【0037】
本発明では、必須組成物として添加される食品添加物であるショ糖ラウリン酸エステルが有する苦味の隠蔽のため、甘味料を添加する。甘味料は、多量に添加すると、20℃~30℃の室温下で組成物溶液が濁ったり分離したりする。また、前述のごとく、浮遊したシャボン玉状物が浮遊中に乾燥した後の被膜の強度が低下し、触れられる割れないシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)にならない。このため、本発明では、極めて少量の添加により、苦味が隠蔽できる甘味料として合成甘味料のネオテームを含む甘味料を使用する。甘味料の添加量は、17.5質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液の質量20と20質量%のショ糖ラウリン酸エステル水溶液を質量8を混合した組成物に対して、質量0.1の添加が必要となる。
【0038】
質量0.1の中に1.6~2.4質量%ないしは2.4質量%以上のネオテームが含まれる甘味料製剤の添加が好ましい。ネオテームとしては、非特許文献2(第9版食品添加物公定書815~817頁)に記載されている内容を利用することができる。ネオテームを1.6~2.4質量%含む甘味料としては、DSP五協フード&ケミカル株式会社より製造販売されている商品名「ミラスイー200」などがある。
【0039】
本発明で使用することができるトレハロースは、(前述のヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖ラウリン酸エステル、ネオテームのように厚生労働大臣の指定を受けた食品添加物用の指定添加物ではないが、)日本国内では厚生労働省より指定添加物以外で食品添加物として使用できるものとして既存添加物に分類されており、その基源・製法・本質について公益財団法人日本食品化学研究振興財団のもの(最終改正平成26年1月30日において開示されている既存添加物名簿収載品目リストの中の内容に即したもの)を使用することができる。トレハロースは、たとえば林原株式会社により製造販売されているものがある。
【0040】
トレハロースの添加量は、触れても割れないシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)が得られる範囲であり、かつ、本発明の目的とする20℃~30℃の室温下で濁らず、2か月間にわたって2相に分離しない性能を付与できる範囲となる。トレハロースの添加量は、たとえば組成物水溶液としての17.5質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液の質量20と20質量%のショ糖ラウリン酸エステル水溶液を質量8、(DSP五協フード&ケミカル株式会社より製造販売されている製品名「ミラスイー200」のような)甘味料製剤を質量0.1を添加した組成物に対して、質量2から9のトレハロースを溶解せしめた水溶液となる。なお、質量2より添加量が少なかったり、質量9より多く添加されると、20℃~30℃の室温下で2か月間にわたって2相に分離したり濁ったりしない性能が発揮されない場合がある。また、添加量が多くなると、界面活性能の指標となる調製水溶液と水との界面張力が大きくなってしまい、空気中に浮遊するシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)が得られにくくなる。また、後述するように、防腐剤であるソルビン酸カリウムを質量0.03から0.005をさらに添加した組成物についても、同様な質量の添加が必要となる。
【0041】
本発明では、水溶性の高分子であるヒドロキシプロピルメチセルロースは水溶液中で細菌が発生繁殖することを防止するために、防腐剤を添加する。水溶性高分子(特許文献2に記載)であるプルランを用いるシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)を得る組成例には、防腐剤として食品添加物のソルビン酸カリウムをプルランの組成分質量の1/10程度の微量添加することが開示されている。
【0042】
また、ソルビン酸カリウムを添加すると、触れても割れず、口にいれても安全なシャボン玉状物調製溶液であることが知られている(たとえば非特許文献4に記載)。ソルビン酸カリウムは食品添加物として認可されているが、ショ糖やグリセリンの脂肪酸エステルと同様に、苦味、酸味が高く、その添加量は必要量以下にすることが望ましい。ソルビン酸カリウムの食品への添加量制限として、菓子類については0.1質量%以下の制限がある(たとえば非特許文献2に記載)。
【0043】
ソルビン酸カリウムの添加によって、本発明が目的とする触れても割れないシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)が、浮遊して得られなくなる添加量では好ましくない。そこで、本発明者らが検討した結果、(1)20℃において、2質量%の水溶液としたときの粘度が2.4から7.2mPa・sである水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースの17.5質量%の水溶液で質量20に対して、ショ糖ラウリン酸エステルの20質量%水溶液の質量8を加えて、攪拌混合された水溶液に、(2)合成甘味料のネオテームを含む甘味料で質量0.1を溶解し、(3)本発明で必須となるトレハロースを質量2から9を添加した溶液に、(4)さらに防腐剤としてソルビン酸カリウムの質量0.005から0.03を加えて溶解した溶液に、(5)管径0.4センチメートルのポリプロピレン管で作られた長内径2.4センチメートル短内径1.4センチメールの楕円形のリングを浸漬し、(6)リング内に形成された被膜に25℃室温下で口から風速5~10m/s程度にて風を吹き付けると、(7)一息で径1から2.0センチメートルの球状で浮遊する空気含有の被膜からなるシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)が10~20個程度でき、(8)これらは空中に浮遊した後に10秒以上経過すると指で触れる状態となる。(9)さらに、これらの調製溶液は20℃~30℃の室温において透明性を維持する。(10)また、この水溶液を室温25℃で密封して6か月放置した後に昭和32年6月15日法律第177号の水道法第4条(令和元年6月14日公布(令和元年法律第37号)改正)の規定に基づく水質基準に関する省令により規定されている水道水1ミリリットルについての一般生菌数カウントが100以下であるか検査しうる柴田科学株式会社製の一般細菌試験紙無菌パックの試験紙に前記の1ミリリッターのかかるソルビン酸カリウムの質量0.005から0.03を加えて溶解して調製したシャボン玉状物をえるための組成水溶液を垂らし、(11)柴田科学株式会社性製の細菌試験用恒温器(カルボックスCB-101型)にて水質基準に関する省令の規格内の生菌数カウントを求めるための条件となる24時間37℃培養後に発生する一般生まれる生菌コロニー数をカウント観察したところその数は0であった。
【0044】
ソルビン酸カリウムを加えていない20℃においては、2質量%の水溶液としたときの粘度が2.4~7.2mPa・sである水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースの17.5質量%の水溶液の質量20にショ糖ラウリン酸エステルの20質量%水溶液の質量8を加えて、攪拌混合された水溶液に、合成甘味料のネオテームを含む甘味料0.1質量部を溶解した溶液について、25℃にて6か月は経過した溶液について同様に観察を行ったところ、培養後の一般生菌数は70であった。これにより、ソルビン酸カリウムの質量0.005から0.03の添加による防腐効果を確認した。
【0045】
(1)防腐剤としてのソルビン酸カリウムについては、17.5質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液で質量20と20質量%のショ糖ラウリン酸エステル水溶液で質量8を混合した組成物に対して、(2)質量0.1のDSP五協フード&ケミカル株式会社より製造販売されている(製品名「ミラスイー200」のような)甘味料製剤を添加し、(3)さらにトレハロースを質量2から9を溶解した溶液に対して、(4)質量0.005から0.03のソルビン酸カリウムを添加した溶液を使用する処方において、(5)20℃~30℃の室温において透明性を維持する本発明の目的において、その問題を解決できる手段となる。(6)本発明で使用するソルビン酸カリウムは食品添加物である必要があり、食品添加物としてのソルビン酸カリウムに適合するものが使用できる(たとえば非特許文献2の738頁)。
【0046】
本発明に使用することができる水は、調製された水溶液が昭和32年6月15日法律第177号の水道法第4条(令和元年6月14日公布((令和元年法律第37号)改正)の規定に基づく水質基準に関する省令により規定されている水道水の基準を満たすものである。なお、本発明に使用することができる水は、調製水溶液により空中を浮遊するシャボン玉状物が得られ、浮遊中に乾燥によってシャボン玉状物が触れて、割れないようになるものであればいずれも使用できる。そのため、調製された水溶液に含有される菌類等等の不純物含有量が少なく、金属イオンなどの不純物により、本発明による組成物のすべての含有によって調製された水溶液とシャボン玉状物が含有する気体との間の界面張力が水とその気体との間の表面張力より必要な低下がなされるような水を使用する必要がある。たとえば昭和32年6月15日法律第177号の水道法第4条(令和元年6月14日公布(令和元年法律第37号)改正)の規定に基づく水質基準に関する省令により規定されている水道水を蒸留したものや、イオン交換樹脂によりイオン交換したものや、イオン交換された水をさらに蒸留した蒸留水を使用することが、さらに好ましい。また、調製の直前に使用する水を一度煮沸殺菌された水を使用するのが、さらに好ましい。
【0047】
本発明に係るシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)を大量に形成するには、(1)たとえば上述の組成水溶液をプラスチック等のリングやストローを浸し、(2)リング内やストロー端面にできた水溶液の薄膜を口で空気を吹きつけてシャボン玉状物を得るのではなく、(3)空気中に含まれる成分の窒素、二酸化炭素、酸素、その他(水素、ヘリウムなど)の各々ないしは2種以上の混合気体ガスを圧力ボンベ等から風速2mから3m/s又はさらにそれ以上の必要な風速にて薄膜に吹き付けて、(4)シャボン玉状物を形成し、可食可能な触れられる割れないシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)とすることもできる。また、本発明に係るシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)を大量に浮遊させて、(5)浮遊させている風向きの方向に含有した気体ガスを移動させる事が可能でもある。これにより、本発明に係るシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)を大量に形成することによって、風向きの制御により、その方向を所望の方向や目的地方向とすることもできる。また、本発明に係るシャボン玉状物(可食性空中浮遊物、シャボン玉)を大量に形成することによって、例えば窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスを含ませれば、森林火災や船舶火災にむけて、消火に利用することもできる。
【0048】
本発明で解決すべき課題である20℃から30℃での調製水溶液が、濁ったり、2相に分離するのは、従来公知技術であるヒドロキシプロピルセルロースとショ糖脂肪酸エステルの凝集体が発生して、濁ったり、放置によって各々の分子溶解相に分離しやすくなるためと考えられる。これは、異種分子同士は混ざりにくいという一般的な現象である。このような現象は、相溶性の問題として、学術的にも研究対象となる内容である。そのメカニズムは、その組成物によって異なっていることが多く、本発明にかかることで完全に解明するにはいたってない。しかしながら、トレハロースの分子の構造からある一定量液中に存在すると溶解しているヒドロキシプロピルメチルセルロースとショ糖脂肪酸エステルに吸着し、あたかもどちらも表面上はトレハロース分子になっているような挙動を示すため凝集や分離がおきにくくなるものと考えられる。
【0049】
ある一定量以上のトレハロースを添加しないと機能しないのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの表面とショ糖脂肪酸エステルの表面のすべてに吸着して被覆するに足りる量に達しないからと考えられる。一方、多量にトレハロースを添加すると濁りが増えることになるのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが水溶液の温度が高くなると疎水性のメチル置換基の多い部分同士が疎水和して熱可逆のゲル構造を示すことが知られている(たとえば早川和久,”加熱するとゲル、冷却するとゾル溶液になるメトローズ(食品添加物)”,応用糖質化学会誌、第6巻,1号,2016年,p.64等に記載)。30℃度の高い温度では、低い温度で溶解してるヒドロキシプロピルメチルセルロースの表面が有する親水性と疎水性とのバランスが異なる方向にあり、トレハロースはうまく吸着被覆できない部分が発生しやすくなると考えられる。しかしながら、このような事象がトレハロースによって起こるということは公知の知見から容易に見出せるものでもなく、類推することも可能なものではない。
【0050】
下記にて、他の例を示し、本発明も具体的に説明するが、本発明は下記の例または比較結果に制限されるものではない。
【0051】
図1および図4に示すとおり、(1)メトキシ基29.0%、ヒドロキシプロポキシ基9.5%、2%水溶液の20℃での粘度が7.2mPa・sで例えば高分子論文集vol.39,No.4,PP293-298(1982)に記載の方法に準じて測定した重量平均分子量34500の例えば信越化学工業(株)製の食品添加物グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(製品名SE-06)、または、メトキシ基28.2%、ヒドロキシプロポキシ基8.5%、2%水溶液の20℃での粘度が2.4mPa・sで例えば高分子論文集vol.39,No.4,PP293-298(1982)に記載の方法に準じて測定した重量平均分子量14500の例えば信越化学工業(株)製の食品添加物グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(製品名SE-03)の17.5質量%水溶液を調製し、(2)この水溶液の質量20(質量部)に対して20質量%の水溶液として調製した例えば三菱ケミカルフーズ株式会社製の製品名L-1695であるショ糖ラウリン酸エステルで質量8(質量部)を添加混合し、(3)ネオテームを2質量%含む甘味料製剤である例えばDSP五協フード&ケミカル株式会社より製造販売されている製品名ミラスイー200で質量0.1(質量部)を添加して溶解混合した後に、(4)例えば林原株式会社製のトレハロースを図示のとおり各添加重量部にて質量2から9(質量部)を添加し混合溶解して、その後、例えば株式会社マルゴコーポレーション製造の食品添加物用のソルビン酸カリウムを図示のとおり添加重量部組成にて質量0.005から0.03(質量部)を加えて、(5)ラボ用の径40mmの4枚プロペラ型実験用攪拌羽250r.p.mにて1時間溶解し、(6)20℃、25℃、30℃になるように6時間各温度で放置して所定温度としてから、(7)その調製液に管径0.4センチメートルのポリプロピレン管で作られた長内径2.4センチメートル、短内径1.4センチメールの楕円形の例えばHONG DU PLASTYC PRODUCT製のシャボン玉を得るためのプラスチックリングを浸漬し、(8)リング内に形成された被膜に各所定温度の室温下で口から風速5~10m/s程度にて風を吹き付けると、(9)一息で径1~2センチメートルの球状で浮遊する空気含有の被膜からなるシャボン玉状物が10~20個程度でき、(10)これらは空中に浮遊した後10秒以上経過すると指で触れる状態となる。(11)さらに、この各温度での調製液を下記の透明性評価方法にて評価した。(12)2相分離については、各調製溶液を図示のとおりの温度で2か月内径18mmの試験官に13gを入れて密栓してから2か月静置放置し、(13)2相分離の有り無しを評価した。
【0052】
透明性評価方法は、(1)本体/透明PS(ポリスチレン)、キャップ/本体、PE(ポリエチレン)・センター部がPSポリスチレン製の内径×胴径×高さ(mm)=50.4×57.0×89.3のアズワン社の100ccプラスチック容器PS-100であり、(2)25℃で調製した各配合溶液50ccを入れ、各設定温度になるように1時間放置後、(3)60W蛍光灯の100cm下に置き、(4)幅1.5mmで径1cmで描いたリングを容器を通して、(5)手前の反対位置に容器に貼り付けて目視にて、完全に曇りなくリングが見える場合を「評価〇」とし、完全にみえない場合は「評価X」とした。曇りがあるがうっすらでもリングが見える場合を「評価△」として評価した。各実施例において調製溶液を25℃にて2か月密栓して放置後に同様に各設定温度でも上記透明性評価を行い、溶液の調製当日の評価と比較して、同様であることも確認した。
【0053】
(実施例1~5)
図8は、実施例1~5で調製した溶液を径1.8mmの試験官に13gを入れて、25℃で6か月密栓状態で放置した後、昭和32年6月15日法律第177号の水道法第4条(令和元年法律第37号)改正)に基づく水質基準に関する省令において規定されている水道水1ミリリットルあたり一般生菌数100カウント以下のカウント評価ができる柴田科学株式会社製の一般細菌試験紙無菌パックの試験紙に1ccを垂らし、柴田科学株式会社性製の細菌試験用恒温器カルボックスCB-101型にて水質基準に関する規格内の生菌数カウントを求めるための条件となる24時間培養後に発生する一般生菌コロニー数をカウント観察した結果である。
【0054】
(比較例1~12)
図8に、上記の本発明に係る制限範囲外の組成にて調製した水溶液の調製組成の比較例1~12を示す。比較例1、2に示すごとくトレハロースを組成物として添加しても本発明の請求項外の添加重量部であると本発明が目的とする20℃~30℃の室温のいずれにおいても、触れる割れないシャボン玉状物が作れるようにならなかった。また、各温度での透明性や2相分離の抑制が図られなかった。さらに比較例3~12に示すごとく2糖類であるトレハロース以外の2糖類や単糖類に物質においても、トレハロースが示す室温20℃~30℃における優れた透明性の維持や2相分離効果を示さないことがわかる。上記の実施例1~5及び比較例1~12の組成溶液を調製する際に使用した水は、飲料水をイオン交換し、さらに蒸留した共栄製薬株式会社製の蒸留水を調製直前に加熱により、煮沸殺菌した水を用いた。また、17.5質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液については、ポリエチレン容器にヒドロキシプロピル粉を投入した後、上記の煮沸殺菌した80~95℃の水を必要量添加し、ラボ用の径40mmの4枚のプロペラ型実験用攪拌羽により、500r.p.mにて1時間攪拌して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉体を分散させた後、氷と水により10℃以下にした氷水浴中に分散液の入ったポリエチレン容器に入れて、上記の攪拌羽により250r.p.mにて2時間攪拌して、調製水溶液を10℃以下にしてから室温下で放置した水溶液を使用した。また、20質量%のショ糖ラウリン酸エステルの水への溶解では、上記の煮沸した水を25℃の室温まで冷却した後にショ糖ラウリン酸エステル粉体と混合し、上記の攪拌羽により室温25℃にて250r.p.mにて2時間攪拌して調製した。
【0055】
以上のとおり、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載の内容に基づいて、様々に変形、変更又はその他任意に改変され得る。
【符号の説明】
【0056】
100 : 可食性空中浮遊物生成用の液体組成物
100S: 可食性空中浮遊物生成用の液体組成物を用いて形成した、球状の気体含有の水溶性薄膜からなる可食性の触れられる可食性空中浮遊物(シャボン玉、など)
【要約】
【課題】球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなるにおいて、触ることができる球状の気体含有の水を含んだ薄膜からなる可食性空中浮遊物を提供する。
【解決手段】20℃において、2質量%の水溶液の粘度が2.4から7.2mPa・sの範囲内である水溶性ヒドロキシプピルメチルセルロースであって17.5質量%の第1混合水溶液に、ショ糖ラウリン酸エステルであって20質量%の第2混合水溶液を加えて攪拌混合した第1の水溶液と、合成甘味料のネオテームを含む甘味料を溶解して生成した第2の水溶液と、防腐剤として、ソルビン酸カリウムを加えて溶解した溶液にトレハロースを添加して溶解した添加水溶液とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8