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特許7341455柱脚金物、土台と柱の連結構造及び耐力壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】柱脚金物、土台と柱の連結構造及び耐力壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/38 20060101AFI20230904BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230904BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20230904BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20230904BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230904BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20230904BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20230904BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
E04B1/38 400C
E04B1/58 507L
E04B1/26 E
E04B2/56 651C
E04H9/02 321F
F16F15/067
F16F1/06 Z
F16F1/12 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019103329
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197046
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】595118892
【氏名又は名称】株式会社ポラス暮し科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】照井 清貴
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-136807(JP,U)
【文献】特開2002-081133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/61
E04B 2/56
E04H 9/02
F16F 15/067
F16F 1/06
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台と柱を連結する柱脚金物であって、
前記柱の柱脚に線状部材で固定される固定部と、該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材と、
鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材と、
前記高弾性率部材の一端を前記突出部に取り付ける第1取付部と、
前記高弾性率部材の他端を前記土台の上面に取り付ける第2取付部と
を備え、
前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、
前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにしたことを特徴とする柱脚金物。
【請求項2】
前記高弾性率部材は、バネ定数が1000~3000N/mmのコイルバネであることを特徴とする請求項1記載の柱脚金物。
【請求項3】
耐力壁を形成する土台と該土台に立設される柱を柱脚金物により連結する土台と柱の連結構造であって、
前記柱脚金物は、固定部と該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材、鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材、第1取付部及び第2取付部を備え、
前記固定部が前記柱の柱脚に線状部材で固定され、
前記第1取付部により、前記高弾性率部材の一端が前記突出部に取り付けられ、
前記第2取付部により、前記高弾性率部材の他端が前記土台の上面に取り付けられ、
前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、
前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにしたこと
を特徴とする土台と柱の連結構造。
【請求項4】
土台と、該土台に立設される柱と、前記土台と前記柱を連結する柱脚金物を備えた耐力壁であって、
前記柱脚金物は、固定部と該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材、鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材、第1取付部及び第2取付部を備え、
前記固定部が前記柱の柱脚に線状部材で固定され、
前記第1取付部により、前記高弾性率部材の一端が前記突出部に取り付けられ、
前記第2取付部により、前記高弾性率部材の他端が前記土台の上面に取り付けられ、
前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、
前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにしたこと
を特徴とする耐力壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の建築物における柱が土台等から抜けるのを防ぐための柱脚金物、柱脚金物により連結する土台と柱の連結構造、柱脚金物を収納した耐力壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造軸組構造等の建築物においては、水平方向に配置された土台、梁(横架材)に柱を鉛直方向に組み付けて骨組みが形成されるが、地震や強風により柱が土台等から抜けるのを防ぐため、柱脚(柱の下部)や柱頭(柱の上部)には、引き寄せ金物(ホールダウン金物)が取り付けられる。
この引き寄せ金具を取り付けた柱に、想定外の大きな引抜力が作用した場合、引き寄せ金具やその取付部等が破損し、土台等から柱が抜けるという問題が生ずる。
このため、特許文献1(特開2015-151668号公報)には、柱材3に固定される背板部11と、一端が横架材2を介したアンカーボルト5が挿入されて締結ナット7により固定される筒部12とを備え、背板部11の中間部分には一対の起立側面部と浮き上り背板部とを設ける一方、筒部12にはアンカーボルト軸挿入部と背板中間挿入部とを設け、背板部11を筒部12に挿入して、筒部12の後側面部と両側面部の内側面が背板部11の一対の起立側面部と浮き上り背板部の外側面に当接しており、少なくとも背板部11の各起立側面部と筒部12の背板中間挿入部とを溶接して筒部12を背板部11に接合したホールダウン金物が開示されている。
この特許文献1のホールダウン金物においては、柱材に大きな引抜力が作用してホールダウン金物が変形する際、筒部と背板部が一体化した状態で変形することから、背板部と筒部が分離し難くなり、ホールダウン金物やその取付部が破損して横架材から柱材が抜けるのが防止される。
しかしながら、特許文献1のホールダウン金物では、柱材に大きな引抜力が作用すると、ホールダウン金物やその取付部が塑性変形し、柱材から引抜力が解除されても元の状態に戻らず、また、柱材も元の位置に戻らず、再び柱材に引抜力が作用した場合、ホールダウン金物が元の耐力を発揮しないという問題がある。
【0003】
この点、特許文献2(特開2002-364071号公報)には、柱に複数本の釘やビス等によって固定される固定部が形成された支持筒と、この支持筒内に一端部がスライド移動可能に挿入され、他端部が土台あるいは土台のアンカーボルトに固定される作動杆と、前記支持筒内に設けられた設定値以上の引張り力が作用すると、前記作動杆が該支持筒より引き出され、設定値以下の場合には前記土台に柱を固定状態に支持させるスプリングとからなる柱取付け金具が開示されている。
この特許文献2には、地震等によって柱に大きな引張り力が生じた場合、支持筒より作動杆が突出して、柱や土台等を損傷することなく、その引張り力を吸収するとともに、引張り力がなくなると自動的に元の状態に戻すことができると記載されている。
しかしながら、特許文献2の柱取付け金具では、これを取り付けた柱に水平方向の大きな外力(荷重)が作用して柱が大きく傾いた場合、作動杆が湾曲して塑性変形したり、柱取付け金具やその取付部が塑性変形し、外力が解除されても作動杆あるいは柱取付け金具うあその取付部の変形が元に戻らず、引き寄せ金物(ホールダウン金物)として機能しなくなるという問題がある。
また、特許文献2の柱取付け金具を引き寄せ金物(ホールダウン金物)として機能させるためには、土台に柱を固定状態に支持させるスプリング(コイルスプリング)の線径と外形を大きくして、土台に柱を引き付ける力を大きくする必要があり、これによってスプリングが挿入される支持筒の外形が大きくなり、耐力壁の内部に支持筒を収納できないという問題が生ずる。
【0004】
次に、特許文献3(特開2007-278411号公報)には、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性エネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるエネルギー吸収ユニット構造を備え、このエネルギー吸収ユニット構造が、建築物の柱脚と土台との間又は横架材と柱頭との間に取り付けられるホールドダウン金物の一部を構成するダンパー装置が開示されている。
しかしながら、特許文献3のダンパー装置(図16のホールドダウン金物101)では、柱脚Fに固定される厚板状ブラケット102(鉄板103)の一側面にある外筒部材12と、土台E内にねじ込まれたアンカーボルト104が挿入された内筒部材13との間には、高減衰ゴム又はウレタンの粘弾性体等からなる粘弾性エネルギー吸収体が介在することから、柱脚Fの土台Eに対する押し付け力を強くすることができず、引き寄せ金物(ホールダウン金物)として十分に機能しないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-151668号公報
【文献】特開2002-364071号公報
【文献】特開2007-278411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐力壁を備えた建築物において、柱と土台の間に柱脚金物を取り付けて、地震や強風より柱が土台等から抜けるのを防止するに際し、耐力壁の内部に収納でき、柱を土台に強く押し付けつけることができ、耐力壁に水平方向の大きな外力が作用し、柱が傾いて土台から持ち上げられても、柱脚金物やその取り付け部分が塑性変形しないようにし、耐力壁の強度を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、土台と柱を連結する柱脚金物であって、前記柱の柱脚に線状部材で固定される固定部と、該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材と、鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材と、前記高弾性率部材の一端を前記突出部に取り付ける第1取付部と、前記高弾性率部材の他端を前記土台の上面に取り付ける第2取付部とを備え、前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにした柱脚金物を提供して、上記課題を解決するものである。
【0008】
請求項2の発明は、前記高弾性率部材は、バネ定数が1000~3000N/mmのコイルバネである柱脚金物を提供して、上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項3の発明は、耐力壁を形成する土台と該土台に立設される柱を柱脚金物により連結する土台と柱の連結構造であって、前記柱脚金物は、固定部と該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材、鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材、第1取付部及び第2取付部を備え、前記固定部が前記柱の柱脚に線状部材で固定され、前記第1取付部により、前記高弾性率部材の一端が前記突出部に取り付けられ、前記第2取付部により、前記高弾性率部材の他端が前記土台の上面に取り付けられ、前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにした土台と柱の連結構造を提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項4の発明は、 土台と、該土台に立設される柱と、前記土台と前記柱を連結する柱脚金物を備えた耐力壁であって、
前記柱脚金物は、固定部と該固定部から前記柱に対して離れる方向に突出する突出部を備えた柱側固定部材、鉛直方向に伸縮する引張弾性率の大きい高弾性率部材、第1取付部及び第2取付部を備え、前記固定部が前記柱の柱脚に線状部材で固定され、前記第1取付部により、前記高弾性率部材の一端が前記突出部に取り付けられ、前記第2付部により、前記高弾性率部材の他端が前記土台の上面に取り付けられ、前記第1取付部は、前記突出部に挿通されるアイボルトと前記突出部の上端より突出する前記アイボルトのネジ部に螺合するナットを有し、前記突出部の下方に位置する前記アイボルトの頭部に前記高弾性率部材の一端が取り付けられ、前記ナットを締め付けることにより高弾性率部材が引っ張られて前記柱の下面を前記土台の上面に押し付けるようにした耐力壁を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明の柱脚金物においては、柱と土台の間に柱脚金物を取り付けて、地震や強風より柱が土台等から抜けるのを防止するに際し、耐力壁の内部に収納でき、柱を土台に強く押し付けつけることができ、耐力壁に水平方向の大きな外力が作用し、柱が傾いて土台から持ち上げられても、柱脚金物やその取り付け部分が塑性変形しないようにし、耐力壁の強度を維持することができるという効果を奏する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明と同様の効果を奏する。
【0013】
請求項3に記載の発明の土台と柱の連結構造においては、柱と土台の間に柱脚金物を取り付けて、地震や強風より柱が土台等から抜けるのを防止するに際し、耐力壁の内部に収納でき、柱を土台に強く押し付けつけることができ、耐力壁に水平方向の大きな外力が作用し、柱が傾いて土台から持ち上げられても、柱脚金物やその取り付け部分が塑性変形しないようにし、耐力壁の強度を維持することができるという効果を奏する。
【0014】
請求項4に記載の発明の耐力壁においては、柱と土台の間に柱脚金物を取り付けて、地震や強風より柱が土台等から抜けるのを防止するに際し、耐力壁の内部に収納でき、柱を土台に強く押し付けつけることができ、耐力壁に水平方向の大きな外力が作用し、柱が傾いて土台から持ち上げられても、柱脚金物やその取り付け部分が塑性変形しないようにし、耐力壁の強度を維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の耐力壁の骨組みの構成を示す斜視図である。
図2図1に示す耐力壁(骨組み)の正面図である。
図3図1に示す耐力壁(骨組み)の背面図である。
図4】梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の拡大斜視図である。
図5図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の正面図である。
図6図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の左側面図である。
図7図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の平面図である。
図8図6のA-A断面図である。
図9図4に示す柱脚金物10の分解斜視図である。
図10】柱脚金物10のコイルバネ13、アイボルト14a、15aに代えて長ボルトを使用した柱脚金物により柱2と土台5を連結した状態の正面図である。
図11図10に示す柱2と土台5を柱脚金物で連結した状態で、耐力壁1に水平方向の外力が作用した場合の変形状態を説明する説明図である。
図12】柱2と土台5を柱脚金物10で連結した状態で、耐力壁1に水平方向の外力が作用した場合の変形状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[耐力壁の構成]
図1は、本発明の実施形態の耐力壁の骨組みの構成を示す斜視図、図2は、図1に示す耐力壁(骨組み)の正面図、図3は、図1に示す耐力壁(骨組み)の背面図であり、図中、1は耐力壁(骨組み)、2、3は柱、4は梁、5は土台、6は筋かい、7、8は筋かい固定板、10は柱脚金物である。
耐力壁1の骨組みは、左右の柱2、3、梁4、土台5、筋かい6から構成され、各部材は、木製の材料、例えば、ヒノキ(桧)、ヒバ(桧葉)、スギ(杉)等の木材が使用される。
この耐力壁1においては、水平方向(左右方向)に配置されて上下に位置する梁4と土台5の間に左右の柱2、3が組み付けられて矩形の枠(以下「壁枠」という。)が形成され、壁枠の対角線上に筋かい6が取り付けられる。
筋かい6は、上部と下部が長手方向の軸線に対して斜め切りされた形状となって直交する端面を有し、壁枠の左上の隅角部において、筋かい6の上端面が梁4の下面に当接し、筋かい6の左側端面が柱2の右側面に当接し、壁枠の右下の隅角部において、筋かい6の下端面が土台5の上面に当接し、筋かい6の右側端面が柱3の左側面に当接するようにして、筋かい6が壁枠に取り付けられる。
この場合、壁枠の左上の隅角部と右下の隅角部の背面において、筋かい固定板7、8が、柱2、3、梁4、土台5及び筋かい6に跨って当てがわれてビス等(図示せず)より固定され、これにより、柱2、3、梁4、土台5に筋かい6が接合固定される。
そして、柱2の柱脚2aと土台5は、柱脚金物10により連結される。
このようにして組み付けられた柱2、3、梁4、土台5、筋かい6と、柱2と土台5を連結する柱脚金物10が石膏ボード等で覆われて耐力壁1となる。
なお、筋かい固定板7、8を使用せず、ボルトを筋かい6と柱2、3に挿通してナットで締め付けて、筋かい6と柱2、3を固定してもよく、さらに、ボルトを筋かい6と梁4、土台5に挿通してナットで締め付けて、筋かい6と梁4、土台5を固定してもよく、また、筋かい6と柱2、3、梁4、土台5を固定しなくてもよく、その場合の筋かい耐力壁1は、筋かい6を圧縮する方向に外力が作用するときのみの耐力壁となる。
また、筋かい6に代えて壁枠内にパネルを取り付けてもよく、その場合は、柱2、3、梁4、土台5及びパネルにより耐力壁が構成される。
【0017】
[柱脚金物]
図4は、梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の拡大斜視図、図5は、図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の正面図、図6は、図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の左側面図、図7は、図4に示す梁4と土台5を連結した状態の柱脚金物10の平面図、図8は、図6のA-A断面図、図9は、図4に示す柱脚金物10の分解斜視図である。
図中、11は本発明における柱側固定部材となるU型ホルダー、11aは固定板、11bは本発明における突出部となる筒部、11hは貫通孔、12a~12dは本発明における線状部材となる木ネジ、13は本発明における高弾性率部材となるコイルバネ、13aはコイル部、13b、13cはフック部、14は第1取付部、15は第2取付部、14a、15aはアイボルト(リングボルト)、14b、15bはナット、14c、15cは座金、2hzはホゾ(ほぞ)、2nはネジ穴、5baはボルト穴、5haはホゾ(ほぞ)穴である。
柱脚金物10は、U型ホルダー11、コイルバネ13、第1取付部14及び第2取付部15から構成される。
U型ホルダー11は、鋼板からなる固定板11aと、固定板11aの下部に溶接等により接合されたU字型の鋼板からなる筒部11bから構成され、固定板11aには上部から中央部にかけて4個の貫通孔11hが設けられ、筒部11bは、固定板11aから柱2に対して離れる方向に突出している。
コイルバネ13は、ステンレス鋼線や炭素鋼線から形成され、コイル部13a、フック部13b、13cからなり、鉛直方向(上下方向)に伸縮する引張コイルばねである。
この場合、柱脚金物10は耐力壁1の内部に収納されるが、コイルバネ13は、特許文献2の柱取付け金具のコイルスプリングのように支持筒に収納する必要がなく、耐力壁1の内部空間の幅、すなわち、柱2、3と土台5の幅まで、コイルバネ13の外径を大きくでき、これによりコイルバネ13の線径も大きくでき、コイルバネ13のバネ定数を大きくすることができる。
具体的には、柱2、3と土台5の幅を90mmとした場合、コイルバネ13の外径を90mmまで大きくすることができ、コイルバネ13のバネ定数を1000~3000N/mmとすることができる。
第1取付部14は、頭部にリング部を備えたアイボルト(リングボルト)14a、アイボル14aのネジ部に螺合するナット14b及び座金14cからなる。
第2取付部15は、第1取付部14と同じ構成であり、アイボルト(リングボルト)15a、ナット15b及び座金15cからなる。
【0018】
[柱脚金物による土台と柱の連結]
図9等に示すように、柱脚金物10のU型ホルダー11において、固定板11aの貫通孔11hには、木ネジ12a~12dが挿通され、挿通された木ネジ12a~12dは、柱2の柱脚2aに設けられたネジ穴2nにねじ込まれ、これにより固定板11aが柱脚2aの左側面に固定され、U型ホルダー11が柱脚2aに固定される。
また、第1取付部14においては、アイボルト14aがそのリング部を下にしてU型ホルダー11の筒部11bに挿通され、筒部11bの下方に位置するアイボルト14aのリング部にコイルバネ13のフック部13bが引っ掛けられ、筒部11bの上端より上側に突出したアイボルト14aのネジ部に座金14cを挿入してその上からナット14bが螺合され、これによりコイルバネ13の一端が筒部11bに取り付けられる。
さらに、第2取付部15においては、アイボルト15aがそのリング部を上にして土台5に設けられたボルト穴5baに挿通され、ボルト穴5baの上方に位置するアイボルト15aのリング部にコイルバネ13のフック部13cが引っ掛けられ、ボルト穴5baから土台5の下方に突出したアイボルト15aのネジ部に座金15cを挿入してその下からナット15bが螺合され、これによりコイルバネ13の他端が土台5に取り付けられる。
一方、柱2の下面には、下方に突出する直方体形状のホゾ2hzが設けられ、土台5の上面にはホゾ2hzに嵌合するホゾ穴5haが設けられ、ホゾ2hzがホゾ穴5haに嵌め込まれ、柱2の下面が土台5の上面に組み付けられる。
このようにして、柱2の下面が土台5の上面に組み付けられた状態で、U型ホルダー11が柱脚2aに固定され、コイルバネ13の一端が筒部11bに取り付けられ、コイルバネ13の他端が土台5に取り付けられ、柱脚金物10により柱2と土台5が連結される。
【0019】
ここで、コイルバネ13による土台5への柱2の押し付けについて説明する。
柱2と土台5が柱脚金物10により連結された状態で、アイボルト14aに螺合されたナット14bとアイボルト15aに螺合されたナット15bのいずれか一方または両方を締め付けることにより、コイルバネ13が引っ張られて伸びる。
このときのコイルバネ13の自由長さ(自然長)からの伸びをdmmとし、コイルバネ13のバネ定数をkN(ニュートン)/mmとすると、コイルバネ13にはF(=kd)Nの引張力が生じ、この引張力Fにより、柱2が土台5に引き寄せられて柱2の下面が土台5の上面に押し付けられることとなる。
今、外径70mm、線径15mm、バネ定数1200N/mm、自由長さ300mmのコイルバネ13を使用し、コイルバネ13を50mm伸ばした状態で、柱脚金物10により柱2と土台5を連結した場合、柱2の下面が土台5の上面に押し付ける力は、1200N/mm×50mm=60000Nとなる。
この押し付け力は、地震や強風より柱2が土台5から抜けるのを防ぐために十分なものとなる。
【0020】
[柱脚金物の作用]
次に、柱脚金物10の作用について、柱脚金物10のコイルバネ13、アイボルト14a、15aに代えて長ボルトを使用した柱脚金物及び特許文献2の柱取付け金具と比較して説明する。
図10は、図1図9に示す柱脚金物10のコイルバネ13、アイボルト14a、15aに代えて長ボルトを使用した柱脚金物により柱2と土台5を連結した状態の正面図、図11は、図10に示す柱2と土台5を柱脚金物で連結した状態で、耐力壁1に水平方向の外力が作用した場合の変形状態を説明する説明図であり、図11(a)は、変形後の状態を示す正面図、図11(b)は、耐力壁1に作用した外力を解除した後の復元状態を示す正面図である。
図中、20は柱脚金物、21はU型ホルダー、21aは固定板、21bは筒部、22a~22dは木ネジ、23は長ボルト、24b、25bはナット、24c、25cは座金である。
柱脚金物20は、U型ホルダー21と長ボルト23等から構成される。
U型ホルダー21は、柱脚金物10のU型ホルダー11と同じ構成であり、固定板11aと同じ固定板21aと、筒部11bと同じ筒部21bから構成され、筒部21bは固定板21aの下部に溶接等により接合され、固定板21aには、固定板11aの貫通孔11hと同じ貫通孔が設けられている。
柱脚金物20のU型ホルダー21は、柱脚金物10のU型ホルダー11と同じようにして柱脚2aに固定される。
すなわち、固定板21aの貫通孔には、木ネジ22a~22dが挿通され、挿通された木ネジ22a~22dは、柱2の柱脚2aに設けられたネジ穴(2n)にねじ込まれ、これにより、図10に示すように固定板21aが柱脚2aの左側面に固定され、U型ホルダー12が柱脚2aに固定される。
図10では、柱2の柱脚2aにねじ込まれた木ネジ22a~22dの外形を実線で表している。
そして、長ボルト23が、U型ホルダー21の筒部21bと土台5に設けられたボルト穴5baに挿通され、筒部21bの上端より上側に突出した長ボルト23のネジ部に座金24cを挿入してその上からナット24bが螺合され、ボルト穴5baから土台5の下方に突出した長ボルト23のネジ部に座金25cを挿入してその下からナット25bが螺合され、これにより柱2と土台5が柱脚金物20で連結される。
【0021】
今、耐力壁1に水平方向の外力Wが作用した場合、土台5は動かず、梁4が矢印Arの方向に距離sだけ移動し、柱2が傾いて耐力壁1が変形する。
このとき、U型ホルダー21と長ボルト23が固定されているため、長ボルト23が右方向にたわみ、柱2が右側に傾いた状態で柱2のホゾ2hzが土台5のホゾ穴5haから引き抜かれ、図11(a)に示すように、柱2(柱脚2a)の左下端が土台5の上面から距離Δだけ上方に離れた状態となって、耐力壁1(柱2、3、梁4及び土台5で形成される壁枠)と柱脚金物20が変形する。図11(a)では、変形前の柱2と柱脚金物20を二点鎖線で示す。
このとき、木ネジ22a~22dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分に上向きの分布荷重等が作用し、木ネジ22a~22dの固定板21a側の部分がネジ穴2nの下側に食い込み、木ネジ22a~22dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分が、木ネジ22a~22dの先端部分が少し上がったような状態に変形する。
そして、外力Wが大きくなると、柱脚金物20を含む柱2と土台5の連結部分の変形が弾性範囲を超えて塑性変形となり、外力Wが解除されて柱2の傾きがなくなり、柱2のホゾ2hzが土台5のホゾ穴5haに納まって耐力壁1(柱2、3、梁4及び土台5で形成される壁枠)の変形がなくなっても、柱2と土台5の連結部分が元の状態に復元せず、柱2と土台5の連結部分の変形の一部が残ることとなる。
図11(b)では、木ネジ22a~22dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分の変形が塑性変形となってその変形の一部が残った場合を示している。
また、塑性変形は、木ネジ22a~22dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分以外の部分にも生じ、例えば、長ボルト23と土台5のボルト穴5baの接触部分、あるいは、木ネジ22a~22dや長ボルト23が塑性変形する場合もある。
このように柱2と土台5の連結部分の変形が残ると、再び耐力壁1に水平方向の外力Wが作用した場合、耐力壁1が初期の状態の復元力を示さず、耐力壁1の強度が低下することとなる。
【0022】
図12は、柱2と土台5を柱脚金物10で連結した状態で、耐力壁1に水平方向の外力が作用した場合の変形状態を説明する説明図であり、同図(a)は、変形後の状態を示す正面図、同図(b)は、耐力壁1に作用した外力を解除した後の復元状態を示す正面図である。
柱2と土台5を柱脚金物10で連結した状態で、耐力壁1に水平方向の外力Wが作用した場合、土台5は動かず、梁4が矢印Arの方向に距離Sだけ移動し、柱2が傾いて耐力壁1が変形する。
このとき、図10のように柱2と土台5を柱脚金物20で連結した場合と異なり、柱2の傾きに追随して、U型ホルダー11とコイルバネ13が、アイボルト15aの穴部を中心として回転して傾き、柱2の左下端が土台から引き抜かれて上方に持ち上げられると共に、U型ホルダー11と第1取付部14(アイボルト14a他)が上方に移動し、コイルバネ13がさらに引き伸ばされる。
また、木ネジ12a~12dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分にもコイルバネ13の引張力による上向きの分布荷重等が作用し、木ネジ12a12dの固定板11a側の部分がネジ穴2nの下側に食い込み、木ネジ12a~12dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分が、木ネジ12a~12dの先端部分が少し上がったような状態に変形するが、その変形は、図11(a)に示す柱脚金物20の木ネジ22a~22dと柱2の接触部分の変形に比べて小さいものとなる。
すなわち、耐力壁1に水平方向の外力Wが作用すると、柱2と共にU型ホルダー11とコイルバネ13が傾き、図12(a)に示すように、コイルバネ13が長さdだけ上方に引き伸ばされ、柱2(柱脚2a)のホゾhhzを除く左下端面が土台5の上面から距離Dだけ上方に離れた位置まで持ち上げられ、また、木ネジ12a~12dと柱2の接触部分において、木ネジ12a~12dの先端部分が少し上がったような状態に変形し、耐力壁1(柱2、3、梁4及び土台5で形成される壁枠)と柱脚金物10が変形する。図12(a)では、変形前の柱2と柱脚金物10を二点鎖線で示す。
ここで、耐力壁1に作用している外力Wが解除されると、図12(b)に示すように、引き伸ばされていたコイルバネ13が縮み、柱2の傾きがなくなり、柱2のホゾ2hzが土台5のホゾ穴5haに納まって柱脚金物10の変形が消失し、耐力壁1(柱2、3、梁4及び土台5で形成される壁枠)の変形も消失して、耐力壁1が元の状態に復元し、コイルバネ13の引張力により、柱2が土台5に引き寄せられて柱2の下面が土台5の上面に押し付けられることとなる。
この場合、木ネジ12a~12dと柱2(ネジ穴2n)の接触部分に作用した上向きの分布荷重等により、その接触部分が変形するが、その変形は弾性範囲内であり、分布荷重等が解除されるとその変形も消失し、柱脚金物10の変形が残ることはなく、耐力壁1の強度が低下することはない。
【0023】
以上より、柱2と土台5を柱脚金物10で連結した場合、コイルバネ13の引張力により、柱2が土台5に引き寄せられて柱2の下面が土台5の上面に押し付けられ、耐力壁1に水平方向の外力Wが作用し、柱2が傾いて耐力壁1が変形しても、柱2の傾きに追随して、柱脚金物10のU型ホルダー11とコイルバネ13が回転して傾き、コイルバネ13が引き伸ばされ、外力Wが解除された後は、コイルバネ13が縮んで柱2が元の位置に戻り、柱脚金物10の変形が消失し、耐力壁1の変形も消失し、再びコイルバネ13の引張力により、柱2が土台5に引き寄せられて柱2の下面が土台5の上面に押し付けられ、耐力壁1は、元の強度を維持することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の柱脚金物は、柱と土台の間に取り付けて、地震や強風より柱が土台等から抜けるのを防止するに際し、耐力壁の内部に収納でき、柱を土台に強く押し付けつけることができ、柱に大きな引抜力が作用して柱が土台等から持ち上げられても、引抜力が解除された後は柱を元の状態に戻すことができ、柱に水平方向の大きな外力が作用しても柱脚金物やその取り付け部分が塑性変形せず、耐力壁の強度を維持でき、木造の建築物に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 耐力壁(骨組み)
2、3 柱
2hz ホゾ
2n ネジ穴、
4 梁
5 土台
5ba ボルト穴
5ha ホゾ穴
6 筋かい
7、8 筋かい固定板
10 柱脚金物で
11 U型ホルダー
11a 固定板
11b 筒部
11h 貫通孔
12a~12d、22a~22d 木ネジ
13 コイルバネ
13a コイル部
13b、13c フック部
14 第1取付部
15 第2取付部
14a、15a アイボルト
14b、15b ナット
14c、15c 座金
20 柱脚金物で
21 U型ホルダー
21a 固定板
21b 筒部
23 長ボルト
24b、25b ナット
24c、25c 座金

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12