(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ワーク貼合装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/16 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
B29C63/16
(21)【出願番号】P 2019135455
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】304060368
【氏名又は名称】新光エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【氏名又は名称】杉本 和之
(72)【発明者】
【氏名】今川 豊
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06199613(US,B1)
【文献】特開2008-307724(JP,A)
【文献】特開2000-101119(JP,A)
【文献】特表2009-504449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0034321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバと、
前記第1チャンバの下方に位置し、第1ワークを支持するワーク支持台と、
前記第1チャンバに装着され、前記第1チャンバの内部空間への加圧に伴い膨張するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムよりも前記ワーク支持台に近い位置に設けられ、第2ワークが装着されるワークステージと、
筒状をなし、一方の開口端が前記第1チャンバと対向し、他方の開口端が
前記ワーク支持台に支持された前記第1ワークの一部の領域を囲むように前記第1ワークと当接可能な第2チャンバと、を備え、
前記ワークステージは、前記内部空間への加圧に伴って膨張した前記ダイヤフラムに押されることによって、前記第2ワークを、前記第1ワークの前記一部の領域内において貼り合わせる、
ワーク貼合装置。
【請求項2】
前記第1チャンバに連結された駆動軸を駆動し、前記第1チャンバを移動させる駆動部と、
前記駆動部の動作を制御することで、前記ワーク支持台に対する前記第1チャンバの位置を制御する制御部と、をさらに備え、
前記ワーク支持台は、曲板状の前記第1ワークが設置される曲面状のワーク設置面を有し、
前記制御部は、前記ダイヤフラムが膨張する前に、前記駆動部を介して前記第1チャンバを移動させることにより、前記ワーク設置面に設置された前記第1ワークの前記一部の領域の中心と、前記ワークステージに装着された前記第2ワークの中心とが一致するように、前記第2ワークを前記第1ワークに対して位置合わせする、
請求項1に記載のワーク貼合装置。
【請求項3】
前記駆動軸は、上下方向に延びる軸線を中心に円筒状に形成され、その内部が前記第1チャンバの前記内部空間と連通し、
前記制御部は、前記駆動部の動作を制御することで、前記軸線の方向を含む互いに直交する三軸方向と、前記軸線を中心とする回転方向とに前記第1チャンバを移動させることが可能である、
請求項2に記載のワーク貼合装置。
【請求項4】
前記第1チャンバと前記第2チャンバとは、相対的に移動可能に構成され、一方が他方に対して開閉可能であり、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとが閉じた状態となると、前記第2チャンバ内には、前記ワークステージと前記第1ワークとに挟まれた閉空間が形成され、
前記内部空間と前記閉空間との各々の圧力を調整する圧力調整手段を備える、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のワーク貼合装置。
【請求項5】
前記ワークステージは、前記第2ワークが装着されるステージ部と、前記ステージ部を前記第1チャンバに対して弾性的に支持するステージ支持部と、を備え、
前記ステージ部は、前記ダイヤフラムよりも弾性率が大きい材質により形成される、
請求項
1乃至4のいずれか1項に記載のワーク貼合装置。
【請求項6】
前記ダイヤフラムの膨張に伴う前記第1ワークに向けた前記ステージ部の移動を案内するガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、
上下方向に延び、前記ステージ部の面方向において前記ステージ部を挟み込むように配置される複数の案内ピンと、
前記複数の案内ピンが通過する複数のピン通孔が形成され、前記ステージ部に固定されるステージ固定部と、を備える、
請求項5に記載のワーク貼合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク貼合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク貼合装置として、例えば、特許文献1には、基板等からなる第1ワークにフィルム等からなる第2ワークを貼り合わせる、二層真空チャンバ方式の装置が開示されている。特許文献1に記載のワーク貼合装置は、空圧凹部を覆うダイヤフラムを有する可動チャンバ体と、可動チャンバ体に対向して位置する固定チャンバ体と、を備える。このワーク貼合装置は、空圧凹部の内部空間を加圧することでダイヤフラムを膨張させ、ダイヤフラムに装着された第2ワークを、固定チャンバ内に収容された第1ワークに貼り合わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二層真空チャンバ方式によるワーク貼り合わせにおいては、第1ワークの全面に亘ってではなく、第1ワークの一部分にのみ第2ワークを貼り合わせる場合がある。この場合、特許文献1に開示されたように、一方のチャンバ内に基板等からなる第1ワークを収容する構造では、第2ワークを貼り合わせる箇所が第1ワークの一部分であるにも関わらず、当該チャンバが第1ワークを収容するのに十分な大きさを有している必要がある。チャンバが大きくなれば、装置全体が大型化する虞がある。
【0005】
本発明は、大型化を抑制することができるワーク貼合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るワーク貼合装置は、
第1チャンバと、
前記第1チャンバの下方に位置し、第1ワークを支持するワーク支持台と、
前記第1チャンバに装着され、前記第1チャンバの内部空間への加圧に伴い膨張するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムよりも前記ワーク支持台に近い位置に設けられ、第2ワークが装着されるワークステージと、
筒状をなし、一方の開口端が前記第1チャンバと対向し、他方の開口端が前記ワーク支持台に支持された前記第1ワークの一部の領域を囲むように前記第1ワークと当接可能な第2チャンバと、を備え、
前記ワークステージは、前記内部空間への加圧に伴って膨張した前記ダイヤフラムに押されることによって、前記第2ワークを、前記第1ワークの前記一部の領域内において貼り合わせる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワーク貼合装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る上チャンバが閉じた状態におけるワーク貼合装置の概略図である。
【
図2】
図1に示す上チャンバの開口端部を拡大した図である。
【
図3】(a)~(d)は、ワーク貼り合わせ処理におけるワーク貼合装置の動作を説明するための図である。
【
図4】膨張過程におけるダイヤフラムの状態の一例を示す図である。
【
図5】ワーク貼り合わせ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)及び(b)は、一変形例に係るワーク貼合装置が備えるガイド部を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係るワーク貼合装置10は、
図1に示すように、基板等からなる第1ワークW1の一部に、フィルム等からなる第2ワークW2を貼り付ける二層真空チャンバ方式の装置である。したがって、第2ワークW2は、第1ワークW1よりも小さい。第1ワークW1は、第2ワークW2が貼り付けられる領域(被貼付領域)を有する対象物である。第2ワークW2は、第1ワークW1に貼り付けられるシート状の部材(フィルム状や薄板状の部材も含む。)である。
【0011】
以下では、図中に規定する、互いに直交するX、Y、Z軸を用いて構成を適宜説明する。各軸方向において、矢印が向く方向を正(+)の方向とする。例えば、X及びY軸の各々は、撓んでいない状態における第2ワークW2の面内方向に沿う軸である。
【0012】
ワーク貼合装置10は、
図1に示すように、筐体11と、基台12と、上チャンバ21と、下チャンバ31と、貼合シート23と、チャンバ駆動部27と、制御部40と、真空ポンプ41と、切替弁43a,43bと、位置合わせカメラ60と、を備える。
貼合シート23は、上チャンバ21に装着される。チャンバ駆動部27は、上チャンバ21と連結した駆動軸29を駆動することで、上チャンバ21を移動させる。
【0013】
筐体11は、基台12上に設けられ、上チャンバ21及び下チャンバ31を主に収容する。筐体11の上板11uには、チャンバ駆動部27が設置されている。上板11uには、駆動軸29が通過する軸通孔11hが形成されている。軸通孔11hは、駆動軸29がX方向とY方向に移動可能に、駆動軸29よりも大きい径で形成されている。
【0014】
下チャンバ31は、筒状をなし、一方(上方)の開口端が上チャンバ21と対向し、他方(下方)の開口端がワーク支持台32と対向する。ワーク支持台32は、基台12の上面に固定されている。ワーク支持台32は、その上面において、+Z方向に向かって凸となる曲面状のワーク設置面32aを有する。ワーク設置面32aには、ワーク設置面32aに沿った曲率を有する曲板状の第1ワークW1が装着される。第1ワークW1は、例えば、X軸に対して湾曲するが、Y軸に対しては湾曲せずに直線状に延びる形状をなしている。なお、第1ワークW1は、X軸とY軸との少なくともいずれかに対して湾曲する形状であってもよい。
【0015】
下チャンバ31の下方の開口端には、ワーク支持台32に設置された第1ワークW1と当接し、第1ワークW1との間を気密する弾性材33が設けられている。弾性材33は、例えば、樹脂ゴム等のエラストマーからなり、下チャンバ31の下方の開口端の全周に亘って設けられている。この弾性材33が設けられた当該開口端は、第1ワークW1の一部の領域Rを囲むように、第1ワークW1と当接する。この一部の領域R内において、第2ワークW2が第1ワークW1に貼り付けられる。つまり、第1ワークW1は、第2ワークW2が貼り付けられる被貼付領域が、この一部の領域R内に収まるようにワーク支持台32に設置される。弾性材33を含む下チャンバ31の下方の開口端は、ワーク支持台32に設置された第1ワークW1を必要以上に押圧しないように、且つ、第1ワークW1の曲面に沿った形状で形成されている。
【0016】
なお、ワーク支持台32への第1ワークW1の設置や、第1ワークW1が設置されたワーク支持台32への下チャンバ31のセットは、手動によってもよいし、図示しないロボットにより自動で行われてもよい。下チャンバ31をロボットによって駆動する場合は、後述する上チャンバ21を駆動するチャンバ駆動部27と同様又は類似した構成を採用することができる。
【0017】
上チャンバ21は、下チャンバ31に向かって開口する箱状をなす。上チャンバ21は、チャンバ駆動部27により下チャンバ31に対して開閉する。
図1に示すように、上チャンバ21が下チャンバ31に対して閉じられると、下チャンバ31内には、後述するワークステージ25と第1ワークW1とに挟まれ、密閉された閉空間31aが形成される。なお、上チャンバ21及び下チャンバ31の少なくとも一方に、上チャンバ21が下チャンバ31に対して閉じた場合における両者の接触部分をシールする、図示しない弾性材を設けてもよい。
【0018】
貼合シート23は、ダイヤフラム22と、ワークステージ25と、を有する。
ダイヤフラム22は、膜状をなし、
図2に示すように、その外周端部が上チャンバ21の開口側の端面に固定されている。ダイヤフラム22により上チャンバ21の内部空間21aが密閉される。ダイヤフラム22は、上チャンバ21の内部空間21aが加圧されることにより弾性変形する弾性体、例えばゴム等の超弾性体からなる。
【0019】
ワークステージ25は、ダイヤフラム22よりもワーク支持台32に近い位置においてダイヤフラム22に重ねられる。ワークステージ25の外周縁部は上チャンバ21の開口側の端面に固定されている。ワークステージ25は、上チャンバ21に着脱可能である。ワークステージ25は、ダイヤフラム22の膨張によってワーク支持台32に近づく方向に押されることにより、第2ワークW2を第1ワークW1に貼り付ける。
【0020】
ワークステージ25は、
図2に示すように、第2ワークW2が装着されるステージ部25aと、ステージ部25aを上チャンバに対して弾性的に支持するステージ支持部25bと、を備える。
【0021】
ステージ部25aは、第2ワークW2よりも広い面積を有し、板状に形成される。ステージ部25aは、ダイヤフラム22よりも外力に対して弾性変形しづらく、且つ、第1ワークW1の曲面に沿って弾性変形可能な材質又は形状で形成されている。例えば、ステージ部25aは、ダイヤフラム22よりも弾性率が大きい塩化ビニル等の樹脂、又は金属により形成される。ステージ部25aの下面に、第2ワークW2が装着される。
なお、ステージ部25aと第2ワークW2は、剥離可能な微粘着層(図示せず)を介して接着されていてもよい。また、ステージ部25aの内部に真空室(図示せず)を形成し、この真空室を真空源(図示せず)により真空とすることによって第2ワークW2をステージ部25aに吸着する構成を採用してもよい。
【0022】
ステージ支持部25bは、上チャンバ21の開口側の端面とステージ部25aの間に位置する。ステージ支持部25bの外周縁部は、図示しない金具によって上チャンバ21の開口側の端面に固定される。ステージ支持部25bは、弾性体であって、ステージ部25aよりも外力に対して変形しやすい材質又は形状で形成されている。例えば、ステージ支持部25bは、ゴム等の超弾性体や、塩化ビニル等の樹脂からなる。ステージ支持部25bはダイヤフラム22により押されることでステージ部25aよりも大きく弾性変形する。ステージ部25aは、ボルトや接着剤等によってステージ支持部25bに固定されてもよいし、ステージ支持部25bにインサート成形されてもよい。なお、ステージ支持部25bは、ステージ部25aと同一の材質で、且つ、ステージ部25aよりも薄い厚さで形成されていてもよい。
【0023】
駆動軸29は、
図1に示すように、前述の軸通孔11hを通過し、上チャンバ21とチャンバ駆動部27とを接続する。駆動軸29は、Z方向に延びる円筒状に形成され、その下端部が上チャンバ21の上板に形成された接続孔21h内に固定されている。これにより、駆動軸29の内部空間29aは、上チャンバ21の内部空間21aと連通する。
【0024】
チャンバ駆動部27は、駆動軸29を駆動することで、駆動軸29と連結された上チャンバ21を駆動する。チャンバ駆動部27は、制御部40の制御の下で、上チャンバ21をX、Y及びZ方向の各方向に平行移動させると共に、上チャンバ21をθ方向に回転移動させる。θ方向は、Z軸と平行な軸線AXを中心とする回転方向である。これにより、チャンバ駆動部27は、上チャンバ21の第1ワークW1に対する位置及び向きを調整する。具体的に、チャンバ駆動部27は、上チャンバ21をX方向に移動させるX方向移動部27xと、上チャンバ21をY方向に移動させるY方向移動部27yと、上チャンバ21をZ方向に移動させるZ方向移動部27zと、上チャンバ21をθ方向に回転させる回転駆動部27rと、を備える。例えば、X方向移動部27x、Y方向移動部27y及びZ方向移動部27zは、それぞれ、何れも図示しない、モータと、モータにより軸回転するボールねじと、ボールねじの軸回転により移動するスライダと、を備える。回転駆動部27rは、例えば、駆動軸29を軸線AXを中心に回転させるモータを備える。
【0025】
特に、上チャンバ21をZ方向に移動させるZ方向移動部27zは、上チャンバ21を下チャンバ31に対して接近又は離間するように移動させる。これにより、下チャンバ31に対する上チャンバ21の開閉動作が可能となっている。なお、当該開閉動作を制御するZ方向移動部27zは、例えば、油圧又は空気圧で動作するシリンダを含んでいてもよい。
【0026】
真空ポンプ41は、制御部40による制御の下で動作し、内部空間21aと閉空間31aとの少なくとも何れかを真空状態とする。
【0027】
切替弁43a、43bは、例えば、電動弁や電磁弁から構成されている。
切替弁43aは、真空ポンプ41と内部空間21aとを接続する流路45aに設けられる。切替弁43aは、制御部40による制御の下で、流路45aを流体的に導通させた導通状態と、流路45aを遮断した遮断状態と、内部空間21aを大気に開放した開放状態との間で切り替える。流路45aは、例えば、上チャンバ21の移動に追従可能な蛇腹状のチューブを含んで構成される。なお、切替弁43aとは別に、内部空間21aを開放する開放弁を上チャンバ21に設けてもよい。
切替弁43bは、真空ポンプ41と閉空間31aとを接続する流路45bに設けられる。切替弁43bは、制御部40による制御の下で、流路45bを流体的に導通させた導通状態と、流路45bを遮断した遮断状態と、閉空間31aを大気に開放した開放状態との間で切り替える。流路45bは、例えば、下チャンバ31の移動に追従可能な蛇腹状のチューブを含んで構成される。なお、切替弁43bとは別に、閉空間31aを開放する開放弁を下チャンバ31に設けてもよい。
【0028】
位置合わせカメラ60は、第1ワークW1と第2ワークW2を撮影し、その撮影データを制御部40に出力する。位置合わせカメラ60は、例えば、第1ワークW1と第2ワークW2のそれぞれの対角線上に位置する角部を撮影するために4つのカメラを備える。制御部40は、位置合わせカメラ60からの撮影データを解析することにより、第1ワークW1と第2ワークW2のX方向とY方向の位置ずれ量、及びθ方向のずれ角度を測定する。また、位置合わせカメラ60は、制御部40の制御によって、図示しない駆動部を介して移動可能に構成されている。
【0029】
制御部40は、ワーク貼合装置10の全体動作を制御するものであり、チャンバ駆動部27、真空ポンプ41、切替弁43a,43b、及び位置合わせカメラ60の各々の動作を制御する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、ユーザによる適当な数値入力等を受けて実行されるプログラム及び必要な情報を一時的に記憶しておくRAM(Random Access Memory)等を備える。制御部40のROM内には、後述のワーク貼り合わせ処理を実行するためのプログラムが予め記憶されており、CPUは、プログラムを読み出し、実行する。なお、制御部40は、CPUと他の専用回路とが協働してワーク貼合装置10の動作を制御するものであってもよい。例えば、制御部40は、数値制御(NC(Numerical Control))によって、チャンバ駆動部27を介して上チャンバ21を駆動し、上チャンバ21の下チャンバ31に対する位置を調整する。
【0030】
(ワーク貼り合わせ処理)
次に、主に
図5に示すフローチャートを参照しつつ、制御部40により実行されるワーク貼り合わせ処理について説明する。ワーク貼り合わせ処理の開始時には、
図3(a)に示すように、上チャンバ21が下チャンバ31に対して開いた状態で、第1ワークW1がワーク支持台32に設置され、ワークステージ25の下面に第2ワークW2が装着される。第1ワークW1の第2ワークW2と対向する面と、第2ワークW2の第1ワークW1と対向する面のいずれかには、接着剤として、例えば、シート状のOCA(Optical Clear Adhesive)や液体状のOCR(Optical Clear Resin)等が設けられる。
【0031】
制御部40は、
図3(a)に示すように、位置合わせカメラ60を第1ワークW1と第2ワークW2の間に進入させ、第1ワークW1と第2ワークW2を撮影する(ステップS1)。続いて、制御部40は、位置合わせカメラ60からの撮影データに基づき第1ワークW1と第2ワークW2の位置ずれを測定する(ステップS2)。この位置ずれは、例えば、第1ワークW1に対する第2ワークW2のX方向とY方向の位置ずれ量、及びθ方向のずれ角度である。
【0032】
そして、制御部40は、測定された位置ずれを解消するようにチャンバ駆動部27を介して、必要に応じて、上チャンバ21のX及びYの各方向の移動制御や、θ方向の回転移動制御を行う。このようにして、制御部40は、第1ワークW1に対する第2ワークW2の位置調整(第1ワークW1と第2ワークW2の位置合わせ)を行う(ステップS3)。例えば、制御部40は、この位置合わせの際、
図3(a)に示すように、第1ワークW1に第2ワークW2が貼り付けられる領域(被貼付領域)の中心Oに、第2ワークW2の中心(つまり、軸線AX)が一致するように、上チャンバ21をX方向とY方向に移動させる。また、制御部40は、Z方向から見た場合の第1ワークW1に対する第2ワークW2のずれ角度を調整すべく上チャンバ21をθ方向に回転させる。
このように位置合わせを行うことにより、第2ワークW2を、その中心から外周側へと順に第1ワークW1に貼り合わせることができる。
【0033】
続いて、制御部40は、ステップS1,S2と同様に、位置合わせカメラ60で撮影し、第1ワークW1と第2ワークW2の位置ずれを測定したうえで、位置ずれが解消しているか否かを判別する(ステップS4)。位置ずれが解消していない場合(ステップS4:No)、制御部40は、処理をステップS1に戻す。よって、位置ずれが解消するまで、上記ステップS1~S4の処理が繰り返される。
【0034】
一方、位置ずれが解消している場合(ステップS4:Yes)、制御部40は、
図3(b)に示すように、チャンバ駆動部27を介して上チャンバ21を下チャンバ31に対して閉じる(ステップS5)。これにより、下チャンバ31内には閉空間31aが形成される。なお、位置ずれが解消した場合、位置合わせカメラ60は、上チャンバ21の開閉動作を妨げない位置に、制御部40の制御により移動する。
【0035】
続いて、制御部40は、切替弁43a,43bを導通状態とし、真空ポンプ41を動作させることにより、内部空間21aと閉空間31aを真空状態とする(ステップS6)。
【0036】
続いて、制御部40は、切替弁43aを開放状態に切り替えることにより内部空間21aを大気圧まで加圧する(ステップS7)。これにより、
図3(c)に示すように、ダイヤフラム22は、第1ワークW1に向かって膨張し、ワークステージ25を介して第2ワークW2を第1ワークW1に向けて押し付ける。これにより、第2ワークW2が第1ワークW1に貼り合わされる。
【0037】
第2ワークW2が第1ワークW1に貼り合わされる際、上記ステップS1~S4の処理により、第1ワークW1と第2ワークW2の位置ずれが解消されているため、第1ワークW1と第2ワークW2の貼り合わせの精度が高まる。内部空間21aの加圧に伴って膨張するダイヤフラム22は、その中心位置Cから外側に向かって順に第2ワークW2に接触する。よって、第2ワークW2の中央部が第2ワークW2の外周側よりも先に第1ワークW1に密着する。このため、第1ワークW1と第2ワークW2の間に空気が入り込むことが抑制される。ダイヤフラム22が十分に膨張すると、ワークステージ25のステージ部25aは第1ワークW1の上面に沿って湾曲した状態となる。これにより、第2ワークW2の全域が第1ワークW1に押し付けられる。
また、
図4に示すように、ダイヤフラム22が膨張する過程で、仮に、ダイヤフラム22が波打った状態となったとしても、ワークステージ25のステージ部25aは波打った状態とならず、平板状を保つ。これによっても、第1ワークW1と第2ワークW2との間に空気が入り込むことが抑制される。
【0038】
続いて、制御部40は、切替弁43bを開放状態に切り替えることにより閉空間31aを大気圧としてから、
図3(d)に示すように、チャンバ駆動部27を介して、上チャンバ21を下チャンバ31に対して開き、上チャンバ21が第2ワークW2から遠ざかるようにZ方向に移動させる(ステップS8)。これにより、貼り合わされた第1ワークW1と第2ワークW2は下チャンバ31から取り出し可能となる。以上で、ワーク貼り合わせ処理が終了となる。
【0039】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、種々の変形例を説明する。
【0040】
(一変形例)
図6(a),(b)に示すように、ワーク貼合装置10は、ダイヤフラム22の膨張に伴って、第1ワークW1に向かうステージ部25aの移動(-Z方向への移動)を案内するガイド部20を備えていてもよい。
ガイド部20は、複数の案内ピン27aと、案内ピン27aが通過するピン通孔23cを有する複数のステージ固定部23bと、を備える。
図7に示すように、ステージ固定部23bは、板状の金具であり、長方形板状のステージ部25aの側面部に固定される。本例では、一対のステージ固定部23bは、ステージ部25aの短手方向(X方向)からステージ部25aを挟み込むように配置される。各ステージ固定部23bは、ステージ部25aの長手方向(Y方向)における中央部に位置する。各ステージ固定部23bには、長手方向に並ぶ2つのピン通孔23cが形成される。ピン通孔23cは、ステージ固定部23bをその厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔である。ピン通孔23cの孔径は、案内ピン27aの直径よりも大きく設定される。
【0041】
図6(a),(b)に示すように、複数の案内ピン27aは、それぞれ、ステージ固定部23bのピン通孔23cを通過するようにZ方向に延びる。案内ピン27aは、ダイヤフラム22の膨張に伴ってステージ部25aが移動する距離よりも長い、円柱状に形成される。案内ピン27aの基端は、例えば、上チャンバ21の開口側の端面に固定された固定部材28に連結されている。
図7に示すように、ステージ部25aの長手方向(Y方向)に沿って並ぶ2つの案内ピン27aは、ステージ部25aの長手方向に延びる2つの側面それぞれの中央部に配置される。
【0042】
図6(b)に示すように、ダイヤフラム22が膨張すると、ダイヤフラム22に押されて、ステージ部25aが下方向(-Z方向)へ移動する。この際、ステージ部25aは、ピン通孔23cを介して案内ピン27aにより移動が案内される。このため、ステージ部25aが移動する際、ステージ部25aがその面方向に沿ってずれることが抑制され、これにより、第2ワークW2が第1ワークW1に対して所望の位置からずれて貼り合わされることが抑制される。一例として、位置ずれを50μm以下とすることができる。
【0043】
以上に説明した、一変形例に係るワーク貼合装置10は、ダイヤフラム22の膨張に伴う第1ワークW1に向けたステージ部25aの移動を案内するガイド部20を備える。ステージ部25aは、ステージ支持部25bにより弾性的に支持される。このため、第2ワークW2を保持するステージ部25aは、第1ワークW1に対してステージ部25aの面方向に位置ずれしやすい。この点、上記構成によれば、ガイド部20によりステージ部25aの移動が案内され、ステージ部25aの面方向の位置ずれが抑制される。よって、第2ワークW2の第1ワークW1に対する貼り合わせ位置の精度を高めることができる。このようにガイド部20を設ければ、ワーク貼合装置10から位置合わせカメラ60を省略することもできる。位置合わせカメラ60を用いなければ、制御負担を軽減するとともに、ワーク貼合装置10を簡易に構成することができる。
【0044】
また、一変形例に係るワーク貼合装置10において、ガイド部20は、ステージ部25aから第1ワークW1に向かう方向に延び、ステージ部25aの面方向のうち短手方向においてステージ部25aを挟み込むように配置される複数の案内ピン27aと、案内ピン27aが通過し、ステージ部25aの厚さ方向に延びる複数のピン通孔23cを有し、ステージ部25aに固定されるステージ固定部23bと、を備える。
この構成によれば、ステージ部25aの短手方向の両端部は案内ピン27aにより変形が拘束されるものの、ステージ部25aの長手方向の両端部は案内ピン27aにより変形が拘束されない。よって、ダイヤフラム22の膨張に伴いステージ部25aは長手方向に沿って撓むことが可能となり、第2ワークW2を中心位置C(
図4)から外側へと順に第1ワークW1に貼り合わせることができる。このため、第1ワークW1と第2ワークW2の間に空気が入り込むことが抑制される。
【0045】
(他の変形例)
以上では、第1ワークW1が+Z方向に向かって凸となる曲面形状である例を示したが、これに限られない。例えば、第1ワークW1は、-Z方向に向かって凸となる曲面形状(つまり、+Z側の面が凹曲面となる第1ワークW1)であってもよいし、XY平面と平行な面を有する平板形状であってもよい。また、第1ワークW1は、その一部分が湾曲した形状や、突出した形状を有していてもよい。上記に説明したワーク貼り合わせ手法により、第1ワークW1と第2ワークW2とを貼り合わせることができる限りにおいては、第1ワークW1及び第2ワークW2の材質、形状、及び大きさは任意である。
【0046】
以上では、下チャンバ31に対して上チャンバ21を移動する例を示したが、上チャンバ21と下チャンバ31とは相対的にX、Y及びZ軸の各方向に移動可能であればよい。つまり、上チャンバ21に対して下チャンバ31を移動させる構成を採用してもよいし、上チャンバ21及び下チャンバ31の各々が移動可能な構成を採用してもよい。また、上チャンバ21と下チャンバ31とを天地逆さまに構成してもよい。また、チャンバ駆動部27における回転駆動部27rを省略してもよい。
【0047】
以上に説明したワークステージ25を省略し、ダイヤフラム22が第2ワークW2に接触する構成を採用してもよい。
【0048】
以上では、駆動軸29の内部空間29aを、内部空間21aと真空ポンプ41とを繋ぐ流路の一部とした例を示したが、内部空間21aの圧力を調整することができれば流路をどのように構成するかは任意である。例えば、上チャンバ21の所定箇所に流路を設けてもよい。
【0049】
以上に説明した一変形例においては、一対のステージ固定部23bは、ステージ部25aの短手方向(X方向)からステージ部25aを挟み込むように配置されていたが、ステージ部25aの長手方向(Y方向)からステージ部25aを挟み込むように配置されていてもよい。また、ガイド部20の構成や形状は、第1ワークW1の大きさや形状に合わせて変更可能である。ワークステージ25をガイド部20に沿って膨張させることができ、第2ワークW2の中央部を安定して第1ワークW1に接触させることができる限りにおいては、ガイド部20の構成や形状は任意である。
【0050】
また、ダイヤフラム22、ワークステージ25、第2ワークW2等の平面形状は、矩形状(正方形も含む)に限られず、真円状、楕円状、多角形状などであってもよい。
【0051】
また、第1ワークW1は、第2ワークW2が貼り付け可能な対象物であれば、任意である。例えは、第1ワークW1が板状である場合、第1ワークW1として、液晶基板、プラズマディスプレイ基板、太陽電池モジュール基板等を採用することができる。また、第2ワークW2は、第1ワークW1に貼り付けられるシート状の部材であれば任意である。例えば、第2ワークW2として、静電防止用、反射防止用等の各種機能性フィルム等を採用することができる。
【0052】
(まとめ)
(1)以上に説明したワーク貼合装置10は、上チャンバ21(第1チャンバの一例)と、ダイヤフラム22と、下チャンバ31(第2チャンバの一例)と、を備える。ダイヤフラム22は、上チャンバ21に装着され、内部空間21aへの加圧に伴い膨張する。下チャンバ31は、筒状をなし、一方の開口端(+Z方向に向く開口端)が上チャンバ21と対向し、他方の開口端(-Z方向に向く開口端)が第1ワークW1の一部の領域Rを囲むように第1ワークW1と当接可能である。第2ワークW2は、ダイヤフラム22よりも第1ワークW1に近い位置に装着され、内部空間21aへの加圧に伴ってダイヤフラム22が膨張したことに応じて、第1ワークW1の一部の領域R内において貼り合わされる。
上記(1)の構成によれば、第1ワークW1の全てを下チャンバ31内に収容する必要がないため、下チャンバ31を必要最小限のサイズとすることができ、結果として、ワーク貼合装置10の大型化を抑制することができる。なお、下チャンバ31のサイズは、第1ワークW1における第2ワークW2を貼り合わせる領域に応じて、適宜定めればよい。
【0053】
(2)また、ワーク貼合装置10は、ワークステージ25を備える。ワークステージ25は、ダイヤフラム22よりも第1ワークW1に近い位置に設けられ、第2ワークW2が装着される。ワークステージ25は、内部空間21aへの加圧に伴って膨張したダイヤフラム22に押されることによって、第2ワークW2を、第1ワークW1の一部の領域R内において貼り合わせる。
上記(2)の構成によれば、ダイヤフラム22が膨張する際に、
図4に示すように、ダイヤフラム22が波打った状態となったとしても、第2ワークW2が装着されるワークステージ25が波打つことが抑制される。よって、第1ワークW1と第2ワークW2の間に空気が入り込むことを抑制することができる。
【0054】
(3)具体的に、上チャンバ21と下チャンバ31とは、相対的に移動可能に構成され、一方が他方に対して開閉可能であり、上チャンバ21と下チャンバ31とが閉じた状態となると、下チャンバ31内には、ワークステージ25と第1ワークW1とに挟まれた閉空間31aが形成される。そして、ワーク貼合装置10は、内部空間21aと閉空間31aとの各々の圧力を調整する圧力調整手段を備える。この圧力調整手段は、例えば、上記に説明した、制御部40、真空ポンプ41、及び切替弁43a,43bから構成される。
【0055】
(4)また、ワークステージ25は、第2ワークW2が装着されるステージ部25aと、ステージ部25aを上チャンバ21に対して弾性的に支持するステージ支持部25bと、を備える。ステージ部25aは、ダイヤフラム22よりも弾性率が大きい材質により形成される。
上記(4)の構成によれば、ダイヤフラム22の膨張に伴い、ステージ支持部25bが弾性変形することにより、ステージ部25aが第1ワークW1に向かってスムーズに移動する。よって、ステージ部25aにより、第2ワークW2が第1ワークW1に確実に貼り合わされる。また、ステージ部25aは、ダイヤフラム22よりも弾性率が大きいため、膨張したダイヤフラム22に押された際に波打ってしまうことが抑制される。
【0056】
(5)また、上チャンバ21における前記他方の開口端(-Z方向に向く開口端)には、第1ワークW1と当接し、第1ワークW1との間を気密する弾性材33が設けられている。
上記(5)の構成によれば、上チャンバ21が閉じた際に、閉空間31aを良好な気密状態に保つことができる。
【0057】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0058】
10…ワーク貼合装置
W1…第1ワーク、W2…第2ワーク
21…上チャンバ(第1チャンバの一例)、21a…内部空間
22…ダイヤフラム
25…ワークステージ(25a…ステージ部、25b…ステージ支持部)
27…チャンバ駆動部
31…下チャンバ(第2チャンバの一例)、31a…閉空間
33…弾性材、R…一部の領域
41…真空ポンプ、43a,43b…切替弁
40…制御部
60…位置合わせカメラ