(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】集塵機のメンテナンス構造、それを備える集塵機、及びそれを備える濾過機付き集塵機
(51)【国際特許分類】
B01D 47/02 20060101AFI20230904BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B01D47/02 Z
B01D23/02 A
(21)【出願番号】P 2019140482
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月14日及び同年同月15日に、株式会社AZUMAが、濾過機付き集塵機を展示会「PVS-2 Seriesプライベートショー」に出展することにより公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】513092682
【氏名又は名称】株式会社AZUMA
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】富田 實
(72)【発明者】
【氏名】宮田 正幸
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-006315(JP,Y1)
【文献】実開昭58-174223(JP,U)
【文献】特開2000-087410(JP,A)
【文献】特許第6341585(JP,B2)
【文献】特開2015-229179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D47/00-47/18
B01D24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に含まれる塵芥を捕集用の液体を利用して集塵する集塵機のメンテナンス構造であり、
メンテナンス構造は、捕集用の液体の貯留槽に配される開口部と、開口部に対して着脱可能である蓋体と、開口部を経て貯留槽に対して出し入れすることができる形状である塵芥の濾過体とを備えており、
蓋体は、開口部に対して、工具なしで操作することが可能な複数の留め具で着脱可能に構成されて
おり、
前記複数の留め具のうち、蓋体の上端部を締結する複数の留め具は、トグルクランプであり、
前記複数の留め具のうち、蓋体の下端部を締結する複数の留め具は、把持部付きの螺子であり、
締結解除時においては、トグルクランプの押圧部は蓋体から離隔した位置に退避し、締結時においては、トグルクランプの押圧部は蓋体に接する位置にある集塵機のメンテナンス構造。
【請求項2】
貯留槽、開口部、及び蓋体は、集塵機の下端部に設けられている請求項1に記載の集塵機のメンテナンス構造。
【請求項3】
トグルクランプが誤って解除されることを防止するロック機構をさらに備えており、ロック機構は、トグルクランプの把持部に係合する位置とトグル
クランプの把持部に係合しない位置との間で揺動可能に構成された棒体である請求項
1に記載のメンテナンス構造。
【請求項4】
開口部の下端部には、蓋体の下端部を受ける支持部が配されている請求項1ないし
3のいずれかに記載のメンテナンス構造。
【請求項5】
開口部の左端部又は右端部には、蓋体の左右方向における位置を決めるための突起が設けられる請求項1ないし4のいずれかに記載のメンテナンス構造。
【請求項6】
トグルクランプの基部は棒状の取付部に固定される請求項1ないし5の何れかに記載のメンテナンス構造。
【請求項7】
請求項1ないし
5のいずれかに記載したメンテナンス構造を備える集塵機。
【請求項8】
請求項1ないし
5のいずれかに記載したメンテナンス構造を備える濾過機付き集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵機のメンテナンス構造、それを備える集塵機、及びそれを備える濾過機付き集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵機としては、特許文献1ないし4に示すような湿式集塵機が知られている。
【0003】
特許文献1の集塵機は、ダクトと、ブロアと、一次貯水槽と、二次貯水槽とを備えている。ダクトから吸引された塵芥のうち比較的に粒径の大きいものは一次貯水槽で捕集され、比較的に粒径の小さいものは二次貯水槽で捕集される。
【0004】
特許文献2には、第一捕集槽と第二捕集槽とを備えた湿式集塵機に濾過機を組み合わせた装置が記載されている。上記の特許文献1の集塵機と同様に、ダクトから吸引された塵芥のうち比較的に粒径の大きいものは一次捕集槽で捕集され、比較的に粒径の小さいものは二次捕集槽で捕集される。二次捕集槽において捕集された塵芥は、濾過機によって濾過される。
【0005】
特許文献3には、乾式のフィルターと、集塵機の底に溜められた水とで、排気ガスに含まれる煤塵を除去する装置が記載されている。装置の内部は、2枚の反転板で仕切られており、煤塵を含む気体が反転板の下端で反転する際に、気体に含まれる煤塵が水中に落下するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3171096号公報
【文献】特許第6341585号公報
【文献】特開2003-222016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾式集塵機では、乾式フィルターを交換する際に、フィルターに付着している塵芥が環境中に飛散するおそれがある。一方、湿式集塵機では、乾式集塵機とは異なり、塵芥が液体によって捕集される。湿式集塵機では、そのような可能性が低い。
【0008】
しかし、特許文献1ないし3のような湿式集塵機では、例えば、特許文献3の
図1に記載されているように、塵芥を捕集した液体はドレンから排出される。塵芥を補足した液体をドレンから排出する際に、ドレンが塵芥で汚れたり、ドレンが閉塞したりすることがあった。また、集塵機の外に排出された塵芥を含む液体は体積が大きいため、廃棄処理が煩雑であった。
【0009】
上記の問題に鑑みて、本発明は、開口部を介して捕集用の液体の貯留槽内に濾過体を出し入れすることが可能であり、開口部を工具なしで蓋体を開口部に対して着脱することができる集塵機のメンテナンス構造を提供し、また、当該メンテナンス構造を備える集塵機、及び当該メンテンナンス構造を備える濾過機付き集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
空気に含まれる塵芥を捕集用の液体を利用して集塵する集塵機のメンテナンス構造であり、メンテナンス構造は、捕集用の液体の貯留槽に配される開口部と、開口部に対して着脱可能である蓋体と、開口部を経て貯留槽に出し入れすることができる形状である塵芥の濾過体とを備えており、蓋体は、開口部に対して、工具なしで操作することが可能な複数の留め具で着脱可能に構成されている集塵機のメンテナンス構造により、上記の課題を解決する。また、当該メンテナンス構造を備える集塵機、及び当該メンテナンス構造を備える濾過機付き集塵機により、上記の課題を解決する。
【0011】
上記のメンテナンス構造、集塵機、及び濾過機付き集塵機では、塵芥を含む補修用の液体は濾過体で漉された後、ドレン等から排出される。このため、ドレンが汚れたり、閉塞することを防止することができる。また、集塵機のドレンから排出された液体の処理も容易である。そして、蓋体は、開口部に対して工具なしで着脱することができるため、簡単に濾過体を集塵機の外に取り出して洗浄又は取り換えを行うことができる。
【0012】
上記のメンテナンス構造、集塵機、及び濾過機付き集塵機では、貯留槽、開口部、及び蓋体は、集塵機の下端部に設けられた構成とすることが好ましい。貯留槽には、塵芥を捕集するための液体が貯留され、塵芥は重力にしたがって下方に落下する。このため、貯留槽は集塵機の下端部に設けられることが好ましい。開口部、及び蓋体も集塵機の下端部に配置すれば、貯留槽の内部に配置した塵芥の濾過体を取り出しやすくなるので、好ましい。
【0013】
上記の複数の留め具は、例えば、トグルクランプ、スナップ錠、トグルラッチ、及び把持部付きの螺子からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の留め具とすることができる。
【0014】
上記の複数の留め具は、蓋体の上端部を締結する複数の留め具は、トグルクランプであり、蓋体の下端部を締結する複数の留め具は、把持部付きの螺子であることが好ましい。蓋体の上端部における留め具をトグルクランプとすることにより、迅速かつ強固に蓋体の着脱を行うことができる。蓋体の下端部における留め具を把持部付きの螺子とすることにより、留め具が集塵機を設置する床等に干渉せず、しかも強固に蓋体を開口部に対して固定することができる。
【0015】
上記のメンテナンス構造、集塵機、及び濾過機付き集塵機は、トグルクランプが誤って解除されることを防止するロック機構をさらに備えており、ロック機構は、トグルクランプの把持部に係合する位置とトグルクランプの把持部に係合しない位置との間で揺動可能に構成された棒体とすることが好ましい。これによって、トグルクランプが誤って作動し、蓋体が外れてしまうことを防止することができる。
【0016】
上記のメンテナンス構造、集塵機、及び濾過機付き集塵機においては、開口部の下端部には、蓋体の下端部を受ける支持部が配された構成とすることが好ましい。支持部によって、蓋体の下端部を支えることによって、蓋体を着脱する際に蓋体の位置が定めやすくなり、蓋体と開口部との間に隙間ができてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開口部を介して捕集用の液体の貯留槽内に濾過体を出し入れすることが可能であり、開口部を工具なしで蓋体を開口部に対して着脱することができる集塵機のメンテナンス構造を提供し、また、当該メンテナンス構造を備える集塵機、及び当該メンテンナンス構造を備える濾過機付き集塵機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】集塵機の一実施形態を示す正面図である。内部に収納された濾過体の構成を破線で示した。
【
図2】
図1に示した集塵機の斜視図である。内部に収納された濾過体の構成を破線で示した。
【
図4】
図3の二点鎖線で囲んだ部分の拡大断面図である。
【
図5】
図1の集塵機から蓋体を取り外し、貯留槽に収納されていた濾過体と排水口のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の二点鎖線で囲んだ部分の拡大断面図である。
【
図9】
図8の濾過体を取り出す際に、濾過体の開口をまとめた状態を示す斜視図である。
【
図10】濾過機付き集塵機の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の集塵機のメンテナンス構造を備える集塵機及び濾過機付き集塵機の一実施形態について、図面を参照して、説明する。
図1ないし
図9に集塵機の一実施形態を示し、
図10に濾過機付き集塵機の一実施形態を示す。
【0020】
図1ないし
図3に示したように、本実施形態の集塵機1は、塵芥を集塵機内に吸引するダクト11と、ダクト11の下方に配置され、塵芥を捕集するための液体を貯留する第1貯留槽12と、第1貯留槽12に隣接して配置され、塵芥を捕集するための液体を貯留する第2貯留槽13と、第2貯留槽13の液体を巻き上げるように吸引された塵芥を含む液体を接触させてミストを発生させる円弧状部14と、円弧状部14の上方に配置される複数の邪魔板15と、邪魔板15の上部に配されるブロア16とを有する。
【0021】
第1貯留槽12と第2貯留槽13とは、第1隔壁17によって仕切られている。そして第1貯留槽12の上方のダクトが配される空間と、第2貯留槽13の上方の複数の邪魔板15が配される空間とは、第2隔壁18によって仕切られている。さらに、複数の邪魔板15の上部の空間と、ダクト11が配される空間とは、第3隔壁19によって仕切られている。
【0022】
第1隔壁17と第2隔壁18との間には、複数の断面がL字型のアングル20が配されている。同様に円弧状部14と、最も下の邪魔板15との間にも複数の断面がL字型のアングル20が配されている。
【0023】
ブロア16を作動させると、ダクト11から塵芥を含む空気が吸引される。塵芥のうち比較的に粒径の大きなものは、ダクト11の内壁に衝突するなどして、第1貯留槽12に貯留された液体の中に落下して捕集される。第1貯留槽12には、後述する濾過体21が収納されている。第1貯留槽12に貯留された液体により捕集された塵芥は、この濾過体21に一時的に貯留される。
【0024】
第1貯留槽12の上を通過した塵芥を含む空気は、第1隔壁17と第2隔壁18との間を抜けて、円弧状部14に侵入する。円弧状部14の下端部は、捕集用の液体で浸水している。円弧状部14では、第2貯留槽13に貯留された液体と塵芥を含む空気とが接触し撹拌される。このときに第1貯留槽12で捕集されなかった比較的に粒径の小さい塵芥が捕集される。円弧状部14では、塵芥を含む気体が第2貯留槽13の表層の液体と接触して、液体を巻き上げるようにして、ミストを発生させる。このミストと塵芥を含む気体とが接触して、第1貯留槽12で捕集されなかった比較的に粒径の小さい塵芥がミストによっても捕集される。ミストは、複数の邪魔板15や複数のアングル20に接触して、液滴化して落下し、第2貯留槽13へと戻る。
【0025】
第2貯留槽13にて塵芥が除かれた気体は、ブロア16で吸引されて、排気口から集塵機1の外へと排気される。
【0026】
上記の集塵機1では、第1貯留槽12で比較的に粒径の大きい塵芥が捕集される。集塵機1の稼働を続けると第1貯留槽12に比較的に粒径の大きい塵芥が溜まり、清掃が必要となる。清掃の際には、排水口22の弁を開いて、第1貯留槽12の液体を排出することになる。このとき、第1貯留槽12の液体により捕集された塵芥が第1貯留槽12の内壁や排水口22に付着するため、その清掃が煩雑になる。また、塵芥によって排水口22が閉塞する可能性がある。
【0027】
本実施形態の集塵機1では、第1貯留槽12に溜まった塵芥を簡単に除去したり、集塵機1の内部が故障したときに修理したりできるように、メンテナンス構造を設けている。そのメンテナンス構造は、
図1ないし
図7に示したように、捕集用の液体を貯留する第1貯留槽12に配される開口部23と、開口部23に対して着脱可能である蓋体24と、開口部23を経て第1貯留槽12に出し入れすることができる形状である塵芥の濾過体21とを備えており、蓋体24は、開口部23に対して、工具なしで操作することが可能な複数の留め具で着脱可能に構成されてたものである。
【0028】
本実施形態の集塵機1では、開口部23は、
図1ないし
図7に示したように、第1貯留槽12の位置にあわせて、集塵機1の下端部に設けられている。集塵機1のダクト11が開口する面を正面とすると、開口部23も正面の中ほどに設けられている。開口部を設ける位置は、特に限定されないが、捕集用の液体の貯留槽に隣接して設けると、開口部23は第1貯留槽12と連通しているため、貯留槽内部のメンテナンスが容易になるので好ましい。
【0029】
本実施形態の集塵機1では、開口部23は、
図5に示したように、正面視において矩形状としている。開口部の形状は、これに限定されず、貯留槽内部のメンテナンスを行うのに適した形状とすればよい。蓋体24も同様に、
図5に示したように、正面視において矩形状とされている。蓋体の形状は、これに限定されず、液密かつ気密な状態で開口部を塞ぐことができればよい。
【0030】
本実施形態の集塵機1の蓋体24は、
図7に示したように、ステンレス鋼板を曲げ加工し、ステンレス鋼板を後述する凹条などの部品を溶接することによって構成されており、矩形状の板の4辺の縁を折り曲げて、縁に隣接して凹条25、26を設けて、凹条25、26の凹部に弾性体で構成されたパッキン27を固定し、前記4辺に沿ってパッキン27を配置した形状を有する。蓋体24の下端部の辺においては、凹条26は、折り曲げられたステンレス鋼板の縁の外側に溶接されている。そして、凹条26においてパッキン27が設けられた面の反対側の面には、長手方向の両端が封止された断面方形の中空管28が溶接により固定されている。蓋体24の下端部以外の3辺においては、縁の内側に凹条25が溶接によって固定されている。上記の凹条25は、L字型に曲げられたアングル材251に対して、突条252を溶接した形状である。凹条25においては、突条252及び蓋体24の縁によって、パッキン27を収納する凹部が形成される。上記の凹条26は、平板26の両端部から突条261が突出する形状である。凹条26においては、突起261、261によって、パッキン27を収納する凹部が形成される。
【0031】
上記の蓋体24には、第1貯留槽12の上下方向にそって延在する窓29が設けられている。窓29は、アクリル板又は耐圧ガラス板などの透明な材料で構成されているため、窓29から第1貯留槽12の内部の様子を覗くことができるようになっている。窓29を構成するアクリル板等は、蓋体24を構成するステンレス鋼板に対して複数のボルト及びナットで固定されている。アクリル板等の固定は、接着剤等を利用して固定してもよい。なお、蓋体の構成は、上記の例に限定されず、貯留槽に貯留された水が漏出しないように液密に構成されていればよい。
【0032】
本実施形態の集塵機1では、
図3、
図5、及び
図8に示したように、開口部23を経て第1貯留槽12に対して出したり入れたりすることができる塵芥の濾過体21を備えている。本実施形態の集塵機1では、濾過体21は、第1貯留槽12に捕集された塵芥の粒径よりも目開きが小さい網211で構成されている。
図5に示したように、網211を展開した状態では、網211の寸法は開口部23よりも大きい。しかし、
図9に示したように、網211の入口212を閉じると開口部23を経て第1貯留槽12に対して出し入れすることができる形状にすることができる。網211は、ナイロンなどのプラスチック等で構成されており、
図9に示したように、変形させることができる程度の可撓性を有する。網211は、環状の吊り下げ部213を複数個備えている。例えば、吊り下げ部213に棒を刺し通すことによって、濾過部に直接触れずに、濾過体21を集塵機1の外に取り出すことが可能になる。また、複数の吊り下げ部213を第1貯留槽の内壁等に設けた吊り具に掛けて、濾過体21を固定することができる。
【0033】
濾過体は、網211に限定されず、例えば、
図9のように変形させることはできないものの、開口部23よりも寸法の小さい網を使用してもよい。また、織布や不織布などの布を使用してもよいし、複数の微小な貫通孔を備えるパンチングメタルで構成した籠を使用することもできる。
【0034】
本実施形態の集塵機1では、排水口22を解放した際に、濾過体21が排水口22に巻き込まれないようにする目的で、カバー30を排水口22と濾過体21との間に備えている。カバー30は、複数の微小な貫通孔が配された円弧状の板で構成されており、通水性を有する。カバーは、通水性を備え、濾過体の巻き込みを防止することができるものであればよく、例えば、複数の貫通孔を備えた板、又は金属、プラスチックなどで構成された剛性を有するメッシュなどが挙げられる。
【0035】
本実施形態の集塵機1では、
図4に示したように、蓋体24の上端部は、複数のトグルクランプ31によって固定され、蓋体24の下端部は、複数の把持部付きの螺子32で固定される。トグル
クランプ31、及び把持部付きの螺子32は、共に手で操作することができる留め具であり、操作に工具を必要としない。このため、例えば、第1貯留槽12から濾過体21を取り出すために蓋体24を開口部23から取り外す際に、工具を必要とせず、簡単にメンテナンスを行うことができる。
【0036】
工具なしで操作することができる留め具は、手で操作することができるものであればよく、トグルクランプ又は把持部付きの螺子に限定されない。そのような留め具としては、例えば、スナップ錠、又はトグルラッチが挙げられる。
【0037】
本実施形態の集塵機は、
図4、
図5、及び
図7に示したように、開口部23の上部にトグル
クランプ31のロック機構として揺動可能に構成された棒体33を備える。棒体33は、トグル
クランプ31のレバーに係止する係止部331と、係止部331の左右の端部から延びており、支持体333によって回転可能な状態で支持される腕部332とを有する。支持体333は、棒体33の延在方向に沿って延びており、開口部23の上端部に固定されている。
【0038】
棒体33は、
図4及び
図7に示したように、トグル
クランプ31の把持部(レバー)に係合する位置と、トグル
クランプ31の把持部に係合しない位置との間で揺動可能に構成されている。
図4に示したように、棒体33がトグル
クランプ31の把持部311に係合した状態では、棒体33に把持部311が干渉しているため、トグル
クランプ31の把持部311が誤って動作して締結状態が解除されないようになっている。
図7に示したように、棒体33がトグル
クランプ31の把持部311に係合していない状態では、棒体33に把持部311が干渉していないため、トグル
クランプ31の把持部311を操作して、トグルクランプ31の押圧部31
9が蓋体24から離れる方向に変位させて、締結状態を解除することができる。
【0039】
本実施形態の集塵機1には、
図5及び
図7に示したように、開口部23の下端部に、蓋体24の下端部を受ける支持部34が配されている。支持部34は、板材から構成されており、集塵機1から突出する方向に延びる受部341と、受部341の端部から集塵機1の上側に延びる脱落防止部342と、集塵機1の下側に延びる固定部343とを有する。固定部343は、開口部23の下縁部に固定されている。固定部は、溶接又は螺子などの固定具により、集塵機1に対して固定することができる。
【0040】
図2に示したように、支持部34の幅は、蓋体24の幅の大きさに比して、小さい。
図2の例では、支持部の幅は、30~80mm程度である。支持部の幅は、より大きく構成することが可能であり、例えば、蓋体と同程度の寸法にすることができる。
【0041】
蓋体24を開口部23に取り付ける際には、受部341と脱落防止部342と集塵機1の表面によって形成される凹部に、蓋体24の下端部を挿し込み、蓋体24の上端部を開口部23に対して押さえつけることにより、蓋体24の位置が適切な位置となる。この状態で、開口部23の下端部に配される留め具と、開口部23の上端部に配される留め具とを操作することで、蓋体24は適切な位置で開口部23を覆うように固定される。蓋体24は、パッキン27を備えているので、留め具によって蓋体24を開口部23に対して押さえつけることにより、液密かつ気密な状態となる。
【0042】
開口部23の左端部及び右端部には、
図5に示したように、蓋体24の左右の位置を決める位置決部として突起35が設けられている。上記の支持部34に対して蓋体24の下端部を挿し込む際に、左の突起35と右の突起35との間に、蓋体24が収まるようにすれば、左右方向においても開口部23に対して蓋体24がずれにくくなる。位置決部は、蓋体24の左右方向における位置を定めることができるものであればよく、突条、板状の突部、ブロック状の突部などで構成してもよい。
【0043】
本実施形態の集塵機1では、蓋体24の上端部を固定する留め具として、トグル
クランプ31を採用している。このトグル
クランプ31は、
図7に示したように、把持部311を先端部に有する第1リンクアーム312と、基部313を備える第2リンクアーム314と、第1リンクアーム312と第2リンクアーム314とを結ぶ第3リンクアーム315と、作動アーム316と作動アーム316の先端部に配される押圧部31
9を備える第4リンクアーム317とを有する。押圧部31
9は、ゴムなどの弾性体から構成されている。
【0044】
図4に示したように、把持部311が作動アーム316から離れる方向に倒された状態では、把持部311と作動アーム316とが略直線状の状態となる。この状態では、てこの原理によって、強い締結力で蓋体24が開口部23に対して押さえつけられる。
図7に示したように、把持部311を押圧部31
9に接近するように倒すと、第1リンクアーム312から第4リンクアーム317が作動して、作動アームが80~100°程度回動して把持部311と接近する。このとき、第1リンクアーム312と第3リンクアーム315の連結軸は上方に変位し、第1リンクアーム312と第2リンクアーム314の連結軸は、斜め上方に変位して第2リンクアームの凹部に収納される。これによって、蓋体24の上端部における締結が解除される。蓋体24を開口部23から外す際には、作動アーム316が大きく回動し、押圧部31
9が蓋体24の取り外しの邪魔にならない位置に退避している。このため、円滑に蓋体24を取り外すことができる。トグル
クランプ31は、把持部311を手で操作することによって容易に作動させることができるので、メンテナンスに際して特殊な工具が不要である。
【0045】
本実施形態の集塵機1では、
図7に示したように、トグルクランプの基部33は、ロック機構を支持する支持体333の下方に設けられた棒状の取付部318に固定されている。棒状の取付部318によって、トグルプランプ31の押圧部31
9が蓋体24の表面に圧接することができるように位置を調節している。蓋体の厚みや、開口部の形状によっては、取付部318は省略してもよい。
【0046】
本実施形態の集塵機1では、蓋体24の下端部は、複数の把持部付きの螺子32で固定している。螺子32は、蓋体24の下端部を支える支持部34に、螺子孔を設けて、この螺子孔に把持部付きの螺子32を螺合する。支持部34に螺子32を螺合させた状態で螺子32の先端部分が支持部34の内壁から突出し、蓋体24の中空管28に圧接する。蓋体24の下端部には、第1貯留槽12に貯留された液体の圧力が作用するため、締結力が不足すると、液体が漏れる原因となる。本実施形態の集塵機では、蓋体24の下端部は、螺子により締結しているため、強い締結力が得られる。また、把持部付きの螺子32は、レバーが傾倒するような動作を伴わないため、集塵機1を設置した床面にレバーが接触して、留め具の操作ができなくなるといった問題が生じない。螺子32には、把持部321がついているため、把持部321を操作することによって、工具なしでも蓋体を着脱して、メンテナンスを行うことができる。そして、螺子32の先端は、蓋体24に設けられた中空管28に圧接する構成とされている。中空管28の面強度は、蓋体28の表面に比して大きいため、螺子28の圧力によって、蓋体24が破損しにくいように対策されている。さらに、螺子28が支持部34から突出する大きさを、調節することによって、中空管28に対して過度に大きな圧力が作用しないようにしている。
【0047】
集塵機で集塵する塵芥としては、例えば、金属のレーザー加工や溶接で発生するヒューム、金属の切削加工で生じる金属粉、プラスチックの切削加工、バフ研磨で発生する塵芥などの塵芥が挙げられる。
【0048】
本実施形態の集塵機1のメンテナンスを行う際には、例えば、次のようにする。まず、濾過体21を収納した状態で集塵機1を運転し、蓋体24の窓29越しに第1貯留槽12の状態を目視確認する。塵芥が濾過体21に溜まっているようであれば、集塵機1の運転を中断して、排水口22から第1貯留槽12の液体を排出する。そして、トグルクランプ31と把持部付きの螺子32を操作して、蓋体24を取り外す。その後、開口部23及びから濾過体21を取り出して、新しい濾過体21を第1貯留槽12に収納し、蓋体24を開口部23に被せて、トグルクランプ31と把持部付きの螺子32とで固定する。この状態で、集塵機の運転を再開する。
【0049】
上記の実施形態では、集塵機として、第1貯留槽12と第2貯留槽13とを有する集塵機1に対してメンテナンス構造を適用した例を示した。メンテナンス構造は、塵芥を捕集するための液体を貯留する槽を一つとした単層の集塵機にも適用することができる。上記の実施形態のように第1貯留槽12で比較的大きめの塵芥を捕集し、第2貯留槽13で比較的小さめの塵芥を捕集するように構成した集塵機であれば、濾過体21の目開きを比較的に大きいものとしても、排水に塵芥が混入しにくくなるし、濾過体の目詰まりの問題も防止できるし、濾過体の液抜けもよくなるので好ましい。
【0050】
メンテナンス構造を適用する集塵機の構成は、貯留槽を備えるものであればよい。塵芥を含有する空気を吸引するための構造や、貯留槽の数の多寡、又は、邪魔板の枚数などは特に限定されない。
【0051】
上記のメンテナンス構造は、
図10に示した濾過機4付きの集塵機1にも好適に使用することができる。
図10に示した集塵機1の構成は、
図1ないし7に示した集塵機の構成と同様である。なお、
図10においては、蓋体24、開口部23、濾過体21、トグルクランプ、把持部付き螺子32などの構成は省略して示した。
【0052】
図10の濾過機付き集塵機1では、上記の集塵機2に加えて、濾過機4を有する。この濾過機付き集塵機1では、第1送液管41により濾過機4の給液部42へと塵芥を含む第2貯留槽13の液体を供給する。給液部42からは濾過布43に対して塵芥を含む液体が供給される。濾過布43は、複数のローラーの間に展延されている。給液部42から供給された液体は濾過布43で濾過され、ろ過された液は、ポンプ44で吸引されて、貯留槽45、及び第2送液管46を経て第2貯留槽13へと戻される。濾過布43が目詰まりすると、濾過室の液位が上昇して液位センサー47により検知される。液位センサー47で検知された信号に基づいて、新しい濾過布を巻き付けたロール48から、新しい濾布が濾過室へと自動的に供給される。濾過により汚れた濾過布は、貯留槽45に隣接する収納室49へ排出される。
【0053】
図10の濾過機付き集塵機では、濾過機4によって、第2貯留槽13に貯留された液体を循環させながら塵芥を濾過により浄化する。これによって、第2貯留槽13の液体は、清浄な状態に維持される。第1貯留槽12の液体は、上記のメンテナンス構造を利用して、容易に清浄に保つことができる。このようにして、少ない労力で、第1貯留槽12及び第2貯留槽13の液体を清浄な状態に維持しながら、集塵を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 集塵機
23 開口部
24 蓋体
21 濾過体
31 トグルクランプ
32 螺子
33 棒体
34 支持部
4 濾過機