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  • 特許-化粧キャップおよび剥離補修部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】化粧キャップおよび剥離補修部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
E04G23/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222776
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092062
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000142919
【氏名又は名称】株式会社呉英製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中籔 朋己
(72)【発明者】
【氏名】古内 浩志
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-140847(JP,A)
【文献】特開2007-009561(JP,A)
【文献】特開2018-155046(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219727(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0010985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E04B 1/38- 1/61
E01D 1/00-24/00
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に形成された穴に挿入される注入孔付アンカーピンの注入孔の基端部を塞ぐ化粧キャップにおいて、
前記穴の表面側端部を塞ぐキャップ部と、前記注入孔に挿入される軸部とを備え、
前記軸部は、当該軸部の基端側の外周面に沿って周方向全周に渡って延在する全周リブと、前記軸部の先端側の外周面に沿って周方向に間欠的に延在する不連続リブとを備えている
ことを特徴とする化粧キャップ。
【請求項2】
前記全周リブは、前記軸部の軸長方向に間隔をあけて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧キャップ。
【請求項3】
前記不連続リブは、前記軸部の軸長方向に間隔をあけて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧キャップ。
【請求項4】
前記キャップ部と前記軸部とは別部材にて構成されており、
前記キャップ部は、鍔部と前記鍔部と一体に形成された胴部とを備え、
前記軸部は、基端側に前記胴部が着脱可能に挿入される装着穴を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の化粧キャップ。
【請求項5】
前記胴部の前記鍔部側の基端部には、縮径部が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧キャップ。
【請求項6】
壁面の構造躯体から剥離した表面材を接着補修するための剥離補修部材において、
前記壁面に形成された穴に挿入される注入孔付アンカーピンと、前記注入孔付アンカーピンの注入孔の基端部を塞ぐ化粧キャップとを備え、
前記注入孔付アンカーピンは、前記構造躯体と前記表面材との隙間と、前記注入孔とを連通させるスリットを備えており、
前記化粧キャップは、前記穴の表面側端部を塞ぐキャップ部と、前記注入孔に挿入される軸部とを備え、
前記軸部は、当該軸部の基端側の外周面に沿って周方向全周に渡って延在する全周リブと、前記軸部の先端側の外周面に沿って周方向に間欠的に延在する不連続リブとを備えている
ことを特徴とする剥離補修部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧キャップおよび剥離補修部材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体の表面に敷設された外壁タイルや仕上げモルタル等の剥離を防止する工法として、たとえば、特許文献1,2に示すような工法が知られている。かかる工法は、壁表面からコンクリート躯体にかけて穴を形成し、その穴に注入孔付のアンカーピンを挿入し、アンカーピンと穴の内部に接着剤を注入した後に、アンカーピンの基端部に化粧キャップを装着する。化粧キャップは、図7に示すような構造のものが用いられていた。かかる化粧キャップ101は、キャップ部102と軸部103とを備えている。軸部103には、軸長方向に延在するリブ104が形成されており、軸部をアンカーピンの内部に挿入し易く構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155046号公報(図11等)
【文献】特開2018-197477号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の化粧キャップ101では、充填された接着剤107がキャップ部102の内側まで満たされており、穴とキャップ部の隙間から、接着剤107が流出する懸念があった。また、充填された接着剤107の内圧が高い場合には、接着剤107の内圧により化粧キャップ101がアンカーピンから押し出されて突出してしまう懸念もあった。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題を創案されたものであって、接着剤の流出を積極的に防止するとともにアンカーピンからの突出を防止できる化粧キャップおよび剥離補修部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための第一の本発明は、壁面に形成された穴に挿入される注入孔付アンカーピンの注入孔の基端部を塞ぐ化粧キャップである。かかる化粧キャップは、前記穴の表面側端部を塞ぐキャップ部と、前記注入孔に挿入される軸部とを備え、前記軸部は、当該軸部の基端側の外周面に沿って周方向全周に渡って延在する全周リブと、前記軸部の先端側の外周面に沿って周方向に間欠的に延在する不連続リブとを備えていることを特徴とする。
【0007】
前記課題を解決するための第二の本発明は、壁面の構造躯体から剥離した表面材を接着補修するための剥離補修部材である。かかる剥離補修部材は、前記壁面に形成された穴に挿入される注入孔付アンカーピンと、前記注入孔付アンカーピンの注入孔の基端部を塞ぐ化粧キャップとを備えている。前記注入孔付アンカーピンは、前記構造躯体と前記表面材との隙間と、前記注入孔とを連通させるスリットを備えており、前記化粧キャップは、前記穴の表面側端部を塞ぐキャップ部と、前記注入孔に挿入される軸部とを備え、前記軸部は、当該軸部の基端側の外周面に沿って周方向全周に渡って延在する全周リブと、前記軸部の先端側の外周面に沿って周方向に間欠的に延在する不連続リブとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧キャップおよび剥離補修部材によれば、接着剤の流出を防止できるとともにアンカーピンからの突出を防止できるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態の剥離補修部材を示した状態の断面図。
図2】本発明に係る実施形態の化粧キャップの分解斜視図。
図3】本発明に係る実施形態の化粧キャップの斜視図。
図4】(a)は本発明に係る実施形態の化粧キャップの軸部の基端側側面図、(b)は一部断面を含む正面図、(c)は先端側側面図。
図5】(a)は本発明に係る実施形態の化粧キャップのキャップ部の一部断面を含む正面図、(b)は先端側側面図。
図6】(a)は剥離補修部材の設置手順の注入孔付アンカーピン挿入工程を示した断面図、(b)は接着剤充填工程を示した断面図、(c)は接着剤充填工程後を示した断面図、(d)は化粧キャップ挿入工程後を示した断面図。
図7】従来の化粧キャップの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る化粧キャップおよび剥離補修部材について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。化粧キャップおよび剥離補修部材は、外壁タイルや仕上げモルタル等の表面仕上材の剥離補修に用いられるものである。本実施形態では、壁のタイル(表面材)が構造躯体から剥離した際に行う補修を例に挙げて、化粧キャップおよび剥離補修部材を説明する。図1に示すように、剥離補修部材1は、外壁2の壁面の構造躯体4から剥離したタイル5(表面材)を接着補修するためのものであって、注入孔付アンカーピン10と化粧キャップ20とを備えている。
【0011】
<注入孔付アンカーピン>
注入孔付アンカーピン10は、建物の外壁2に形成された穴3に挿入されるものである。外壁2は、構造躯体4とタイル5とを備えてなる。タイル5は、モルタル5aによって、構造躯体4に付着されている。穴3は、タイル5が構造躯体4から剥離した場合に、剥離部分のタイル5、モルタル5aから構造躯体4にかけて穿設される。
【0012】
注入孔付アンカーピン10は、金属にて形成されてる。注入孔付アンカーピン10は、有底円筒形状を呈しており、内部に注入孔11が形成されている。注入孔11には、例えばエポキシ系の接着剤7等の樹脂系材料の充填材が注入される。注入孔付アンカーピン10は、注入孔11を区画する筒部12と底部13とを備えている。筒部12は、穴3の内径と同等の外径を備えている。底部13は、注入孔付アンカーピン10の先端(穴3の奥側に挿入される側の端部)に形成されている。筒部12の先端側には、注入孔付アンカーピン10の先端部を二股状にするスリット14が形成されている。スリット14は、軸方向に沿って延在しており、底部13に渡って連続して形成されている。スリット14は、注入孔11に注入された接着剤7を注入孔付アンカーピン10の外側に流出させる。スリット14には、中玉(図示せず)が挿入されている。中玉がスリット14に入り込むことで、スリット14が開かれる。スリット14の長さは、注入孔付アンカーピン10の長さの半分程度になっている。スリット14が、構造躯体4とモルタル5aとの間に発生した隙間6に対向するように、注入孔付アンカーピン10の穴3への挿入深さが設定されている。
【0013】
筒部12の先端部の外周面には、円周方向に沿って延在する周溝16が形成されている。周溝16は、スリット14と交差して連続して形成されている。周溝16は、筒部12の軸方向に間隔をあけて複数(本実施形態では三列)設けられている。周溝16は、スリット14から流出した接着剤7を筒部12の外周面の円周方向に流して、穴3の内周面との間に充填させる。
【0014】
筒部12の基端部(穴3の表面開口部側の端部)には、外周面が拡径した鍔部17が形成されている。鍔部17は、穴3の開口端部に形成された拡径部3aに係止されることで、注入孔付アンカーピン10を穴3の所定深さに固定する。
【0015】
<化粧キャップ>
化粧キャップ20は、注入孔付アンカーピン10の注入孔11の基端部を塞ぐ部材である。図2乃至図5にも示すように、化粧キャップ20は、キャップ部21と軸部22とを備えている。キャップ部21と軸部22は別部材にて構成されており、キャップ部21は、軸部22に嵌合している。
【0016】
キャップ部21は、穴3の表面側端部を塞ぐ部材であって、金属にて形成されている。図1乃至図3および図5に示すように、キャップ部21は、鍔部23と胴部24とを備えている。鍔部23は、穴3の内径と同径に形成されており、穴3の開口部を覆う。鍔部23の表面は、平面状に形成されており、鍔部23の裏面(穴3の内部側)には、奥側に向かって縮径するテーパ部23aが形成されている。胴部24は、鍔部23と一体に形成されており、鍔部23の中心から、鍔部23に直交して立ち上がっている。胴部24は、円柱形状を呈しており、後記する軸部22の装着穴25に嵌合される。胴部24の立ち上がりの基端部は小径となっている。胴部24の外周面の先端部には、先端に向かうに連れて縮径するテーパ部24aが形成されている。胴部24の鍔部23側の基端部(軸部22の基端部)には、縮径部24bが形成されている。穴3が外壁2の表面に対して直交する方向から傾斜している場合に、胴部24を屈曲させて鍔部23を外壁2の表面に面一にするが、縮径部24bは他の部分より細いので、縮径部24bに応力が集中し屈曲する。つまり、縮径部24bは、胴部24を鍔部23に対して曲げる際に、屈曲位置を誘導する部分となる。
【0017】
図1に示すように、軸部22は、注入孔11に挿入される部材であって、樹脂にて形成されている。図2および図4にも示すように、軸部22は、円柱形状を呈している。軸部22の基端部には、キャップ部21の胴部24が挿入される装着穴25が形成されている。装着穴25は、胴部24の外径と同等の内径を有し、軸方向に延在している。装着穴25には、胴部24が嵌合される。軸部22の外周面の先端部には、先端に向かうに連れて縮径するテーパ部22aが形成されている。軸部22の先端部には、スリット26が形成されている。スリット26を設けることで、軸部22の先端部が二股状になり、内側に空間27が形成される。
【0018】
軸部22は、全周リブ28と不連続リブ29とを備えている。全周リブ28は、軸部22の基端側の外周面に沿って形成されており、外周面の円周方向の全周に渡って環状に延在している。全周リブ28は、注入孔11の内径よりも僅かに大きい外径(注入孔11の内径に対して最適な比率)を備えている。注入孔11の内径に対して最適な比率とは、全周リブ28が変形しながら、注入孔11内に圧入可能な外径の比率である。全周リブ28は、軸部22の軸長方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、2つ)設けられている。不連続リブ29は、軸部22の先端側の外周面に沿って形成されており、外周面の円周方向に沿って間欠的に延在している。不連続リブ29は、全周リブ28と同様に、注入孔11の内径よりも僅かに大きい外径(注入孔11の内径に対して最適な比率)を備えている。注入孔11の内径に対して最適な比率とは、不連続リブ29が変形しながら、注入孔11内に圧入可能な外径の比率である。不連続リブ29は、スリット26が形成された位置に設けられており、スリット26に対応する位置が切り欠かれている。よって、不連続リブ29は、円周方向のうち、スリット26と交差する二か所が切り欠かれている。つまり、不連続リブ29は、二つの円弧状のリブ29a,29a(図2および図4参照)にて構成されている。不連続リブ29は、軸部22の軸長方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、2つ)設けられている。二つの全周リブ28,28と二つの不連続リブ29,29は、軸長方向に任意の間隔をあけて配置されている。
【0019】
次に、図6および図1を参照しながら、前記構成の化粧キャップ20および剥離補修部材1の代表的な設置手順を説明しつつ作用効果を説明する。かかる剥離補修部材1を設置する施工は、穴開工程と、注入孔付アンカーピン挿入工程と、充填材注入工程と、化粧キャップ挿入工程とを備えている。
【0020】
穴開工程は、建物の外壁2に穴3を形成する工程である。図6の(a)に示すように、穴開工程では、タイル5を付着させるモルタル5aが構造躯体4から剥離して隙間6が形成された位置で、タイル5、モルタル5aから構造躯体4にかけて穴3を穿設する。穴3の深さは、挿入される注入孔付アンカーピン10のスリット14が隙間6に対向する深さに設定する。穴3の開口端部には、拡径部3aを形成する。
【0021】
注入孔付アンカーピン挿入工程は、注入孔付アンカーピン10を穴3に挿入する工程である。注入孔付アンカーピン挿入工程では、注入孔付アンカーピン10のスリット14に中玉を挿入した状態で、注入孔付アンカーピン10を穴3内に挿入する。木槌等の治具で注入孔付アンカーピン10の基端をたたいて、注入孔付アンカーピン10を穴3の奥に圧入させる。注入孔付アンカーピン10の基端が外壁2の壁面まで達したら、打ち込み棒を注入孔付アンカーピン10の基端に当接させてさらに打ち込み、鍔部17を穴3の拡径部3aに嵌合して、注入孔付アンカーピン10を固定する。このとき、中玉がスリット14に押し込まれて、スリット14が開く。これによって、注入孔11から隙間6への流通路が広くなるので、接着剤7が隙間6に流れやすくなる。
【0022】
充填材注入工程は、注入孔付アンカーピン10の注入孔11に充填材(接着剤7)を注入する工程である。図6の(b)に示すように、充填材注入工程では、注入ノズル8を注入孔11に挿入して、注入ノズル8から接着剤7を注入する。接着剤7は、注入孔11の体積よりも多く注入する。つまり、接着剤7を注入孔11の内部に充填させるとともに、スリット14から注入孔付アンカーピン10の外部に流出させる。接着剤7は、構造躯体4とモルタル5aとの隙間6に流れて、隙間6を埋める(図6の(c)参照)。さらに、接着剤7は、周溝16にも流れ込み、穴3の内周面と筒部12とを接着する。
【0023】
化粧キャップ挿入工程は、化粧キャップ20の軸部22を注入孔付アンカーピン10の注入孔11に挿入する工程である。なお、化粧キャップ20は、予め、キャップ部21の胴部24を装着穴25に圧入して、キャップ部21と軸部22が連結されている。このとき、胴部24の先端部にテーパ部24aが形成されているので、装着穴25への挿入を円滑に行うことができる。図6の(d)に示すように、化粧キャップ挿入工程では、接着剤7が硬化する前に、軸部22を注入孔11に圧入する。このとき、全周リブ28と不連続リブ29は、注入孔11の内径よりも僅かに大きい外径を備えているので、注入孔11の内周面に圧接して基端側に撓んで変形した状態で挿入される(図1参照)。そして、注入孔11内の接着剤7は、軸部22の先端に押され、スリット26内に入り込むとともに、軸部22と注入孔11の内周面との隙間に充填される。接着剤7は、不連続リブ29の部分では、リブが切り欠かれた部分から軸部22の基端側に流れることができる。軸部22には、スリット26が形成されているので、接着剤7が基端側に流れ易い。基端側に流れた接着剤7は、二つの全周リブ28,28のうち、先端側に位置する全周リブ28にて堰き止められて、この全周リブ28よりも基端側には流れない。先端側の全周リブ28よりも軸部22の先端側では、不連続リブ29を囲うように接着剤7が充填される。
【0024】
このように接着剤7は、先端側の全周リブ28にて堰き止められるので、全周リブ28よりも基端側に流出しない。仮に、接着剤7が先端側の全周リブ28を超えて基端側に流出したとしても、基端側にもう一つの全周リブ28が設けられているので、それ以上基端側には流出しない。つまり、基端側の全周リブ28は、接着剤7の流出防止の安全装置として機能している。よって、接着剤7が外壁2の表面まで漏出することを確実に防止できる。
【0025】
一方、接着剤7は、不連続リブ29を囲うように軸部22の外周面と注入孔11の内周面との間に充填されて、不連続リブ29と絡まっているので、化粧キャップ20を引き抜こうとする応力が作用したとしても、不連続リブ29が硬化した接着剤7に引っかかって軸部22は移動しない。したがって、軸部22の引抜きを防止することができる。
【0026】
また、接着剤7は、構造躯体4とモルタル5aとの隙間6に充填されて硬化することで、剥離していたモルタル5aを構造躯体4に接着する。したがって、外壁2の表面材(タイル5)の剥離を補修することができる。
【0027】
軸部22が注入孔11の所定の深さに挿入されると、キャップ部21の鍔部23の表面が外壁2の表面と面一になる。なお、穴3が外壁2の壁面に対して直交する方向から傾斜している場合には、鍔部23の表面と外壁2の表面と面一にならないため以下の工程を行う。キャップ部21を、軸部22の装着穴25に挿入しておき、化粧キャップ20を注入孔付アンカーピン10の注入孔11に浅めに挿入し、鍔部23の表面をハンマー等の工具にて打ち込む。すると、軸部22の鍔部23側の基端部(胴部24の基端部)には、縮径部24aが形成されているので、縮径部24aで胴部24が屈曲し、鍔部23の表面と外壁2の表面とが面一になる。このとき、胴部24の基端部が屈曲することで、穴3の開口端部と屈曲部の距離が近い。これによって、鍔部23の中心と穴3の中心がズレないので、鍔部23の外周部と穴3の内周部との間に隙間が発生しない。
【0028】
また、本実施形態では、全周リブ28および不連続リブ29の外径が、装着穴25の内径よりも大きいため、全周リブ28および不連続リブ29の外径の範囲において内径の異なるアンカーピンに装着可能である。さらに、全周リブ28および不連続リブ29の外径が変更されたキャップ部21を形成して、キャップ部21を交換することで、さらに内径の異なる注入孔11のアンカーピンにおいても幅広く対応することができる。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態に係る化粧キャップ20および剥離補修部材1によれば、全周リブ28を設けたことによって、接着剤7がキャップ部21まで流れ出ないので、接着剤7の外壁2表面への流出を防止できる。さらに、不連続リブ29を設けて、その周囲に接着剤7を充填しているので、軸部22の注入孔付アンカーピン10からの引抜きを防止できる。
【0030】
特に本実施形態では、全周リブ28は、軸部22の軸長方向に間隔をあけて複数設けられているので、軸部22の基端側への接着剤7の流出を確実に防止できる。さらに、全周リブ28は、注入孔11の内周面に押圧されて密着しているので、接着剤7を堰き止める圧力が大きい。なお、全周リブ28の個数は2つに限定されるものではなく、単数或いは3つ以上であってもよい。但し、接着剤7の流出防止の安全装置として機能するため、全周リブ28は、複数個であるのが好ましい。
【0031】
また、不連続リブ29は、軸部22の軸長方向に間隔をあけて複数設けられているので、接着剤7に絡んで接着剤7と係合する部分が多くなる。これによって、軸部22の引抜きに対する反力を多く確保することができる。なお、不連続リブ29の個数は2つに限定されるものではなく、単数或いは3つ以上であってもよい。
【0032】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、充填材をエポキシ系の接着剤7としたが、これに限定されるものではない。シリコーン系等の他の接着剤を用いてもよいし、一定の硬さに硬化する樹脂系の材料を用いてもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、化粧キャップ20が、別体で設けられたキャップ部21と軸部22とを備えて構成されているが、これに限定されるものではない。キャップ部と軸部を一体形成してもよい。また、キャップ部21の構成は、前記実施形態の構成に限定されるものではない。胴部24の基端部を鍔部23に対して自在継手等を介して接続し変形可能な構成としてもよい。このような構成によれば、壁面に対して直交する方向から傾斜した穴に挿入された軸部に対しても、ハンマーで打ち込みすることなく、キャップ部の鍔部の表面と壁面を面一に保ちながら装着することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 剥離補修部材
3 穴
4 構造躯体
5 タイル(表面材)
6 隙間
7 接着剤
10 注入孔付アンカーピン
11 注入孔
14 スリット
20 化粧キャップ
21 キャップ部
22 軸部
23 鍔部
24 胴部
24b 縮径部
25 装着穴
28 全周リブ
29 不連続リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7