(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】電子回路基板、及び通信回路
(51)【国際特許分類】
H04B 5/00 20060101AFI20230904BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20230904BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H04B5/00 Z
H04B5/02
H01P5/02 C
(21)【出願番号】P 2020537073
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031683
(87)【国際公開番号】W WO2020036148
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018153638
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL)「近接場結合集積技術による革新的情報処理システムの実現と応用展開」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】黒田 忠広
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0380365(US,A1)
【文献】特許第5213087(JP,B2)
【文献】特開2014-033432(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012622(WO,A1)
【文献】特開2017-139314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00
H04B 5/02
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に形成され、第1の電子回路と第2の電子回路とを接続するための複数の第1の結合器と、を備えた電子回路基板であって、
前記第1の基板の平面視において、第1の円の円周上にK個(Kは4以上の整数)の前記第1の結合器が間隔を空けて配置され、
前記第1の円の同心円であり、前記第1の円よりも大きい第2の円の円周上に(m×K)個(mは1以上の整数)の第1の結合器が間隔を空けて配置され、
前記第1の円の円周上の前記第1の結合器の数が、前記第2の円の円周上の前記第1の結合器の数と異なっており、
前記第1の円の中心に対して、前記第1の結合器が点対称に配置されている電子回路基板。
【請求項2】
前記第1の基板が、前記第2の電子回路の複数の第2の結合器が設けられた第2の基板と重複した平面視において、
複数の前記第1の結合器が複数の前記第2の結合器と結合するように前記第1の基板を前記第2の基板に対して設置した状態から、前記第1の円の中心周りに前記第1の基板を90°回転した状態で、複数の前記第1の結合器が複数の前記第2の結合器に結合する請求項
1に記載の電子回路基板。
【請求項3】
前記第1の基板の一端には、前記第1の結合器に接続される入出力配線を取り出すために設けられたポートが設けられている請求項
1、又は2に記載の電子回路基板。
【請求項4】
前記K個の第1の結合器を結合器群として、複数の前記結合器群が、回転対称に配置されている請求項
1~3のいずれか1項に記載の電子回路基板。
【請求項5】
前記複数の第1の結合器が互いに重複しないように配置されている請求項
1~4のいずれか1項に記載の電子回路基板。
【請求項6】
第1電子回路基板と、前記第1電子回路基板と対向配置された第2電子回路基板とを備えた通信回路であって、
前記第1電子回路基板は、請求項1に記載の電子回路基板であり、
前記第2電子回路基板は、
第2の基板と、
前記第2の基板に形成された複数の第2の結合器と、を備え、
複数の第2の結合器のうちの、
L個の第2の結合器は、前記第1の円と同じ大きさの第3の円の円周上に配置されており、
(m×L)個の第2の結合器は、前記第2の円と同じ大きさの第4の円の円周上に配置されており、
平面視において、前記第3の円の円周上の前記L個の第2の結合器がL個の前記第1の結合器と重複することで、L個の通信パスが形成され、
平面視において、前記第4の円の円周上の前記(m×L)個の第2の結合器が(m×L)個の前記第1の結合器と重複することで、(m×L)個の通信パスが形成されている通信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の結合器を有する電子回路基板、通信回路、及びその接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願の発明者は、容量結合及び誘導結合(合わせて電磁界結合と称する)を用いて、基板間でデータ通信を行なう電子回路を提案している(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。このような電子回路では、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;FPC)、プリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)、モジュール、及び端末(以下、総称して基板と略称する)に、結合器が形成されている。
【0003】
特許文献1では、信号線路が結合器として用いられている。それぞれの基板には、平行に配置された2本の信号線路(信号線路と帰還信号線路)が形成されている(
図33)。信号線路と帰還信号線路とは、抵抗を用いて終端整合されている。一方の基板の信号線路、帰還信号線路が、他方の基板の信号線路、帰還信号線路と平行かつ同一方向になるように配置される。基板を積層することで、信号線路が近接配置される。信号線路同士が重複し、帰還信号線路同士が重複するため,電磁界結合により無線通信を行なうことができる。
【0004】
特許文献2には、信号線路を結合器として用いた通信装置が開示されている。特許文献2では、差動信号を用いるため、一本の信号線路の両端に引出伝送線路が接続されている。一方の引出伝送線路から正極性の信号が伝送線路に入力され、他方の引出し伝送線路から負極性の信号が伝送線路に入力される。さらに、円弧状の伝送線路を用いることで、回転自在に設置できることが開示されている(
図48)。
【0005】
特許文献3の回転情報伝達機器では、円弧状結合器とそれより短い円弧状結合器の電磁界結合とが結合している。第1の円弧状結合器の中心角を350°以上とすることが開示されている(段落0032)。特許文献3の回転情報伝達機器によれば、相対的に回転する基板間で、非接触でデータ伝送することができる。
【0006】
特許文献4には,送信用コイルと、受信用コイルを近接配置することで、電磁界通信を行なう半導体集積回路が開示されている。平面視において、送信用コイルと、受信用コイルとは、正方形状に形成されている。さらには、3行3列のコイルアレイ、又は6行6列のコイルアレイが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許5213087号公報
【文献】特開2014-33432号公報
【文献】国際公開2018/012622号
【文献】特開2017―139314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような結合器を用いたモジュール間通信において、接続部の取付角度を変えることが求められる場合がある。例えば、モジュール間通信を、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)ディスプレイとセットトップボックスをFPCで接続するための接続コネクタに適用することがある。コネクタに適用する場合、OLEDディスプレイの厚さが約3.5mmと薄くなっている。このため、従来の機械式コネクタは厚くて使えず、電子式で薄い非接触コネクタが求められる。さらに、データ線の数が8本又は16本となるので、FPCを用いた場合であっても、硬くて曲げることが困難となる。
【0009】
したがって、OLEDディスプレイとセットトップボックスの相対位置を変更できるようにするためには、コネクタの取付角度を、たとえば0度、90度、180度、270度の4つの角度に変えて接続できる非接触コネクタが求められる。
【0010】
特許文献1、2のように、直線状の伝送線路を用いた結合器の場合、伝送線路を平行に配置する必要があるため、取付角度を変えることが困難である。また、円弧状の結合器を用いた場合、中心を一致させることで、取付角度を変えることができる。したがって、複数の結合器を同心に配置すると、取付角度を変えることができる。しかしながら、外周に配置された結合器ほど結合器が長くなってしまう。
【0011】
例えば、結合器の全長(円周長)が10mmのとき、結合器の帯域は4.5GHあり、デジタル信号を6Gbpsで転送できる(特許文献3)。しかしながら、16チャネルを互いに干渉しないように離して同心に配置すると、最外周の結合器の全長が400mm程度に長くなる。結合器の帯域は1/40になり、デジタル信号の転送速度も1/40の0.15Gbpsとなる。したがって、4Kディスプレイに用いることができなくなる。
【0012】
この問題は、特許文献3において、結合器対の一方を他方より短くすることで解決されている。しかしながら、外周の結合器ほど大きくなり実装面積が大きくなる問題が残されている。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、取付角度を変えた場合でも、並列に接続できる小型の電子回路基板、通信回路、及びその接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本実施の形態に係る電子回路基板は、第1の基板と、前記第1の基板に形成され、第1の電子回路と第2の電子回路とを接続するための複数の第1の結合器と、を備えた電子回路基板であって、前記第1の基板の平面視において、第1の円の円周上にK個(Kは4以上の整数)の前記第1の結合器が間隔を空けて配置され、前記第1の円の同心円であり、前記第1の円よりも大きい第2の円の円周上に(m×K)個(mは1以上の整数)の第1の結合器が間隔を空けて配置され、前記第1の円の中心に対して、前記第1の結合器が点対称に配置されている。
【0015】
本実施の形態に係る電子回路基板は、第1の基板と、前記第1の基板に形成され、第1の電子回路と第2の電子回路とを接続するための複数の第1の結合器と、を備えた電子回路基板であって、前記第1の基板の平面視において、第1の円の円周上にK個(Kは4以上の整数)の前記第1の結合器が間隔を空けて配置され、前記第1の円の中心に対して、前記第1の結合器が点対称に配置され、前記第1の結合器が、前記第1の円の径方向又は周方向に沿って配置された信号線路を有する信号線路結合器である。
【0016】
上記の電子回路基板において、前記第1の基板が、前記第2の電子回路の複数の第2の結合器が設けられた第2の基板と重複した平面視において、複数の前記第1の結合器が複数の前記第2の結合器と結合するように前記第1の基板を前記第2の基板に対して設置した状態から、前記第1の円の中心周りに前記第1の基板を90°回転した状態で、複数の前記第1の結合器が複数の前記第2の結合器に結合するようにしてもよい。
上記の電子回路基板において、前記第1の基板の一端には、前記第1の結合器に接続される入出力配線を取り出すために設けられたポートが設けられていてもよい。
【0017】
上記の電子回路基板において、前記第1の結合器から前記第1の円の内側に向かって引出伝送線路が引き出されていてもよい。
【0018】
上記の電子回路基板において、前記第1の結合器から前記第1の円の外側に向かって引出伝送線路が引き出されていてもよい。
【0019】
上記の電子回路基板において、前記K個の第1の結合器を結合器群として、複数の前記結合器群が、回転対称に配置されていてもよい。
上記の電子回路において、前記複数の第1の結合器が互いに重複しないように配置されていてもよい。
【0020】
本実施の形態にかかる通信回路は、第1電子回路基板と、前記第1電子回路基板と対向配置された第2電子回路基板とを備えた通信回路であって、前記第1電子回路基板は、請求項1に記載の電子回路基板であり、前記第2電子回路基板は、第2の基板と、前記第2の基板に形成された複数の第2の結合器と、を備え、複数の第2の結合器のうちの、L個の第2の結合器は、前記第1の円と同じ大きさの第3の円の円周上に配置されており、(m×L)個の第2の結合器は、前記第2の円と同じ大きさの第4の円の円周上に配置されており、平面視において、前記第3の円の円周上の前記L個の第2の結合器がL個の前記第1の結合器と重複することで、L個の通信パスが形成され、平面視において、前記第4の円の円周上の前記(m×L)個の第2の結合器が(m×L)個の前記第1の結合器と重複することで、(m×L)個の通信パスが形成されている。
【0021】
本実施の形態にかかる通信回路は、第1電子回路基板と、前記第1電子回路基板と対向配置された第2電子回路基板とを備えた通信回路であって、前記第1電子回路基板は、請求項2に記載の電子回路基板であり、前記第2電子回路基板は、第2の基板と、前記第2の基板に形成されたL個(Lは2以上K以下の整数)の第2の結合器と、を備え、前記L個の第2の結合器は、前記第1の円と同じ大きさの第3の円の円周上に配置されており、平面視において、前記L個の第2の結合器とL個の前記第1の結合器とが重複するように、前記第1の基板と前記第2の基板とが積層されることで、L個の通信パスが形成されている。
【0022】
本実施の形態にかかる電子回路基板は、第1の基板と、前記第1の基板に形成され、第1の電子回路と第2の電子回路とを接続するための複数の第1の結合器と、を備えた電子回路基板であって、正N角形(Nは3以上の整数)の辺に沿ってK個(KはN以上の整数)の前記第1の結合器が間隔を空けて配置され、前記K個の前記第1の結合器が、前記正N角形の中心に対して、N回の回転対称に配置されているものである。
【0023】
上記の電子回路基板において、前記第1の結合器が円弧状に形成されていてもよい。
【0024】
上記の電子回路基板において、前記第1の基板の一端には、前記第1の結合器に接続される入出力配線を取り出すために設けられたポートが配置されていてもよい。
上記の電子回路基板において、前記複数の第1の結合器が互いに重複しないように配置されていてもよい。
【0025】
第1電子回路基板と、第2電子回路基板とを備えた通信回路であって、前記第1電子回路基板は、上記の電子回路基板であり、前記第2電子回路基板は、第2の基板と、前記第2の基板に形成されたL個(Lは2以上K以下の整数)の第2の結合器と、を備え、前記L個の第2の結合器は、前記正N角形と同じ大きさの正N角形の辺上に配置されており、平面視において、前記L個の第2の結合器とL個の前記第1の結合器とが重複するように、前記第1の基板と前記第2の基板とが積層されることで、L個の通信パスが形成されている。
【0026】
第1電子回路基板と第2電子回路基板とを接続する接続方法であって、前記第1電子回路基板は、第1の基板と、前記第1の基板に設けられた複数の第1の結合器と、を備え、前記第2電子回路基板は、第2の基板と、前記第2の基板に設けられた複数の第2の結合器と、を備え、前記第1電子回路基板において、K個(Kは2以上の整数)の前記第1の結合器が、N回(Nは2以上の整数)の回転対称に配置されており、L個(Lは2以上、K以下の整数)の前記第1の結合器と前記第2の結合器とが重複して、L個の通信パスを形成するように、前記第1電子回路基板と前記第2電子回路基板との取付角度を360°×n/N(nは0以上N未満の任意の整数)として、前記第1電子回路基板と前記第2電子回路基板とを積層する。
【発明の効果】
【0027】
本実施形態によれば、取付角度を変えた場合でも、並列に接続できる小型の電子回路基板、通信回路、及びその接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】実施の形態1にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図3】2本の平行な信号線路を用いた結合器の構成を示す図である。
【
図4】変形例1にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図5】1本の信号線路を用いた結合器の構成を示す図である。
【
図6】変形例2にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図7】変形例3にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図8】変形例4にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図9】変形例5にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図10】実施の形態2にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図11】重複する2つの結合器を説明するための平面図である。
【
図12】基板を回転した場合の結合器の配置を示す平面図である。
【
図13】変形例6にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【
図14】変形例7にかかる電子回路において、結合器の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本実施の形態にかかる電子回路基板(単に電子回路ともいう)は、基板と、基板上に形成された複数の結合器とを備えている。結合器による電磁界結合を用いて、2つ以上の電子回路がデータ通信を行なう。具体的には、それぞれの結合器が対向するように、基板を積層配置する。対向した結合器が電界結合(容量結合)及び/又は磁界結合(誘導結合)により結合している。したがって、2つの電子回路が、データの送受信を行なう通信回路となる。また、電磁界結合を用いているため、非接触でデータを通信することができる。
【0030】
結合器は、例えば、電界および磁界で分布定数系として結合するように互い平行に配置された伝送線路とすることができる。あるいは、結合器は、集中定数系として磁界結合(誘導結合)するように、重複配置されたコイル(誘導結合器)とすることができる。あるいは、結合器は、集中定数系として電界結合(容量結合)するように、互い平行に配置された電極とすることができる。
【0031】
結合器が形成される基板は、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。例えば、基板は、プリント回路基板(PCB)や、フレキシブルプリント回路基板(FPC基板)等の絶縁基板であってもよく、シリコン基板などの半導体基板であってもよい。結合器は、基板上の配線により構成される。例えば、シリコン基板などの半導体基板に結合器を形成した場合、電子回路を1つの半導体チップとして構成することも可能である。
【0032】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1を用いて、本実施の形態にかかる電子回路基板に搭載される結合器の構成を説明する。
図1は、2つの結合器要素41、51の構成を模式的に示す平面図である。なお、以下の説明において、結合器43、結合器53が形成された基板の主面(基板面47、57とする)に平行な面をXY平面とする。つまり、XY平面は、基板が積層される方向(Z方向)と直交する平面となっている。
【0033】
結合器要素41は第1の基板の基板面47に形成され、結合器要素51は、第2の基板の基板面57に形成されている。
図1に示す結合器要素41、51は、特許文献2の
図48に示す結合器と同様の構成となっている。具体的には、基板面47には、第1の結合器である結合器43が形成されている。結合器43は、円弧状に形成された信号線路である。円弧状の結合器43の一端には、引出伝送線路44が接続され、他端には、引出伝送線路45が接続されている。例えば、引出伝送線路44には、差動信号の正極性の信号が入力又は出力され、引出伝送線路45には、差動信号の負極性の信号が入力又は出力される。つまり、結合器43には、引出伝送線路44、45を介して信号が入力又は出力される。
【0034】
同様に、第2の基板の基板面57には、第2の結合器である結合器53が形成されている。第2の結合器53は、円弧状に形成された信号線路である。円弧状の結合器53の一端には、引出伝送線路54が接続され、他端には、引出伝送線路55が接続されている。
【0035】
2つの基板が積層して配置された状態で、結合器43と結合器53とが結合する。つまり、結合器43と結合器53とが重複するように基板が積層される。結合器43と結合器53の曲率半径は同じとなっている。さらに、結合器43と結合器53の大きさは同じとなっている。つまり、結合器43と結合器53の円弧の角度は、同じとなっている。さらに、円のほぼ全周に渡って結合器43、53が形成されている。例えば、円弧状の結合器43,53の中心角は350°以上とすることが望ましい。
【0036】
このようにすることで、XY平面内において、基板を任意の角度に回転した場合であっても、結合器43と結合器53が結合可能となる。すなわち、結合器43,53の中心のXY位置が一致していれば、360°全ての回転角度において、結合器43の大部分が、結合器53の大部分と重複する。これにより、結合器43と結合器53とが電界結合する。結合器43、53の全長(円周長)が10mmのとき、結合器43、53の帯域は4.5GHあり、デジタル信号を6Gbpsで転送できる。
【0037】
実施の形態1では、基板上に、
図1に示す結合器43、又は結合器53が複数形成されている。
図2を用いて、結合器の配置について説明する。
図2は、複数の結合器を有する電子回路100、110の構成を示すXY平面図である。電子回路100と電子回路110は、結合器による電磁界結合により、データを通信する通信回路となる。
【0038】
電子回路100は、基板101と、ポート102と、16個の結合器43-1~43-16とを備えている。結合器43-1~43-16は、それぞれ
図1に示した結合器43に対応しており、特に識別しない場合は、結合器43と総称する。同様に、電子回路110は、基板111と、ポート112と、16個の結合器53-1~53-16とを備えている。結合器53-1~53-16は、それぞれ
図1の結合器53に対応しており、特に識別しない場合は、結合器53と総称する。
【0039】
なお、電子回路100と、電子回路110において、16個の結合器の配置は同じとなっており、基板の角度のみが異なっている。つまり、電子回路100の結合器43と電子回路110の結合器53は同じレイアウトで配置されているが、基板101と基板111の角度が異なっている。基板101と比して、基板111は、時計回りに45°回転している。基板101の角度を0°とし、基板111の角度を45°とする。
【0040】
電子回路110と電子回路100は、同様の構成であるため、以下の説明では、主として、電子回路100の構成について説明する。基板101は正八角形になっている。基板101の上には、結合器43-1~結合器43-16が互いに干渉しないように、間隔を隔てて配列されている。例えば、結合器43-1が他の結合器43-2~43-16からのクロストークが十分に小さくなるような間隔を空けて配置されている。結合器43-1~43-16は互いに重複していない。
【0041】
基板101の一端には、ポート102が設けられている。ここでは、-Y側の端、つまり、X方向と平行な正八角形の1辺に、ポート102が設けられている。ポート102は、結合器43-1~結合器43-16と接続される入出力配線103が引き出される配線ポートである。つまり、ポート102からは、結合器43-1~結合器43-16と接続される複数の入出力配線103がまとめて引き出されている。入出力配線103は、基板101上に形成された配線(不図示)を介して、結合器43-1~43-16に接続されている。
【0042】
結合器43-1~結合器43-8は、所定の間隔を空けて、円C1の円周上に配置されている。8個の結合器43-1~結合器43-8は、円C1の中心O1に対して、点対称に配置されている。例えば、結合器43-1と結合器43-5は、中心O1に対して点対称に配置されている。円C1の円周方向において、8個の結合器43-1~結合器43-8が等間隔に配置されている。つまり、8個の結合器43-1~結合器43-8は、円C1の円周上に、45°(=360°/8)間隔で配置されている。結合器43-1~43-8は、中心O1から等距離に配置されている。結合器43-1~43-8は全て同じ大きさの円弧となっている。よって、結合器43-1~43-8のレイアウトは、中心O1に対して8回の回転対称となっている。
【0043】
結合器43-9~結合器43-16は、所定の間隔を空けて、円C2の円周上に配置されている。円C2と円C1とは同心円となっている。円C2の直径は、円C1の直径よりも大きくなっている。8個の結合器43-9~結合器43-16は、円C2の中心O1に対して、点対称に配置されている。例えば、結合器43-9と結合器43-13は、中心O1に対して点対称に配置されている。円C2の円周方向において、8個の結合器43-9~結合器43-16が等間隔に配置されている。つまり、8個の結合器43-9~結合器43-16は、円C2の円周上に、45°(=360/8)間隔で配置されている。結合器43-9~43-16は、中心O1から等距離に配置されている。結合器43-9~43-16は全て同じ大きさの円弧となっている。よって、結合器43-9~43-16のレイアウトは、中心O1に対して8回の回転対称となっている。結合器43-1~43-16は、中心O1に対して8回の回転対称で配置されている。
【0044】
上記の通り、電子回路110は、電子回路100と同様の構成となっている。基板111、及びポート112が、電子回路100の基板101とポート112に対応する。ポート112には、入出力配線113が接続されている。
【0045】
結合器53-1~53-16は、結合器43-1~43-16と同様のレイアウトとなっている。ただし、
図2では、基板111の角度が45°回転している。つまり、ポート102の位置と、ポート112の位置が異なっている。つまり、正八角形の基板111の-Y側の辺の隣の辺にポート112が配置されている。よって、入出力配線103と入出力配線113の取り出し方向が45°異なっている。
【0046】
円C3の円周上に、8個の結合器53-1~53-8が間隔を空けて配置されている。結合器53-1~53-8は中心O2に対して点対称に配置されている。円C3の円周方向において、8個の結合器53-1~結合器53-8が45°毎に等間隔で配置されている。よって、結合器53-1~53-8のレイアウトは、中心O2に対して8回の回転対称となっている。
【0047】
円C4の円周上に、8個の結合器53-9~53-16が配置されている。結合器53-9~53-16は点対称に配置されている。円C4の円周方向において、8個の結合器53-9~結合器53-16が45°毎に、等間隔で配置されている。よって、結合器53-9~53-16のレイアウトは、中心O2に対して8回の回転対称となっている。円C3と円C4とは同心円である。結合器53-1~53-16は、中心O2に対して8回の回転対称で配置されている。円C4の直径は、円C3の直径よりも大きくなっている。円C3と円C1の直径は同じであり、円C4と円C2の直径は同じである。
【0048】
また、基板101、及び基板111は、同じ大きさの正八角形となっている。基板101の中心は、円C1の中心O1と一致している。基板111の中心は、円C3の中心O2と一致している。なお、基板101、及び基板111の中心は、円C1、円C3の中心O1、O2と一致していなくてもよい。結合器43-1~43-16、及び結合器53-1~53-16は全て同じ大きさの円弧となっている。
【0049】
中心O1と中心O2が一致するように、基板101と基板111とが積層される。基板101と基板111とを積層した場合、XY平面視において、16個の結合器43-1~43-16と、16個の結合器53-1~53-16が互いに重複する。具体的には、結合器43-1と結合器53-8とが重複し、結合器43-2と結合器53-1とが重複する。同様に、結合器43-3~43-8は、結合器53-2~53-7とそれぞれ重複する。また、結合器43-9と、結合器53-16とが重複し、結合器43-10と結合器53-9とが重複する。結合器43-11~43-16は、結合器53-10~53-15とそれぞれ重複する。基板101と基板111の角度が45°異なっていても、結合器43-1~43-16の1つが、結合器53-1~53-16の1つとペアとなって重複する。16ペアの結合器を電磁界結合させることができ、16個の通信パスが形成される。
【0050】
上記したように、円周に沿って8個の結合器43、53がそれぞれ点対称に配置されている。このため、基板111の角度を(360°/8)×n(nは0以上8未満の整数)とした場合であっても、結合器43-1~43-16は、それぞれ結合器53-1~53-16のいずれかと重複する。つまり、基板111の回転角度を、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、又は315°としても、16ペアの結合器を電磁界結合させることができる。換言すると、45°の倍数であれば、基板101と基板111の取付角度を任意の角度とすることができる。なお、基板101と基板111の取付角度は相対的な角度である。
【0051】
基板101に対する基板111の取付角度を45°毎に変更することができる。電子回路100の全ての結合器43を通信相手の電子回路110の結合器53と電界結合させることができる。よって、16個の通信パスでデータを並列に送受信することができ、高速なデータ通信が可能となる。さらに、XY平面視において、ポート102とポート112とが重複しない状態で、配線を取り出すことができる。結合器43が設けられた基板101と結合器53が設けられた基板111とが同じ構成であっても、取付角度を変更することができる。本実施の形態の構成により、取付角度を変えて並列接続できる高速で小型の電子回路を実現することが可能となる。さらに、ポートの位置をずらすことができるため、通信回路の薄型化に寄与することができる。
【0052】
このようにすることで、ポート102、112の位置が限定されなくなるため、非接触式のコネクタの設計の自由度を高めることができる。例えば、電子回路100をディスプレイのコネクタに実装し、電子回路110をセットアップボックスのコネクタに実装する。ディスプレイ側のコネクタと、セットアップボックス側のコネクタの入出力配線の取り出し方向を変えることができるようになる。例えば、入出力配線103、113の引出方向を180°変えた場合、ディスプレイ側のコネクタでは、入出力配線がディスプレイの内部側に引き出され、セットアップボックス側のコネクタがディスプレイの外側に引き出されるようになる。さらに、非接触式のコネクタであるため圧着部分が不要となり、薄型化に寄与することができる。
【0053】
さらに、電子回路100と電子回路110は、同じレイアウトとすることができる。よって、同じ設計の電子回路を用いることができる。例えば、ディスプレイ用のコネクタと、セットアップボックス用のコネクタとで設計を変える必要がなくなる。よって、部品を共通化できるため、製造コストを抑制することができる。また、円周上に等間隔で結合器を配置することで、結合器間の間隔を広くすることができる。よって、結合器間の干渉を低減するために円の大きくする必要がなくなるため、実装面積を小さくすることができる。
【0054】
次に、円C1上の結合器43と、円C2上の結合器43とが配置される方位角について説明する。なお、方位角は、中心O1を基準とする角度である。例えば、中心O1から+Y方向に延びる方位の方位角を0°とし、中心O1から+X方向に延びる方位の方位角を90°とする。結合器43-1~結合器43-8の方位角は、それぞれ0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°となっている。結合器43-9~結合器43-16の方位角は、それぞれ22.5°、67.5°、112,5°、157.5°、202.5°、247.5°、292.5°、337.5°となっている。
【0055】
円周方向において、円C1上の隣接する2つの結合器43の間に、円C2上の結合器53が配置されている。さらに、円周方向において、円C2上の隣接する2つの結合器43の間に、円C1上の結合器53が配置されている。つまり、円周方向においいて、円C1上の結合器43と円C2上の結合器53が交互に配置されている。円C1上の結合器43の方位角と円C2上の結合器43の方位角が異なっている。このようにすることで、円C1上の結合器43と、円C2上の結合器43の間隔を広くすることができる。なお、電子回路110の結合器53の方位角についても同様になっている。
【0056】
これに対して、例えば、円C1上の結合器43と円C2上の結合器43を同じ方位角で配置すると、結合器43の間隔を広くとるためには、円C1と円C2の直径の差を大きくする必要がある。従って、
図2に示す構成とすることで、円C2の直径を大きくせずに、結合器43の間隔を広くすることができる。よって、電子回路100のサイズを小型化することができる。
【0057】
次に、結合器43の引出伝送線路44、引出伝送線路45の引出方向について説明する。結合器43-1~43-16に設けられた引出伝送線路44、45が外側に引き出されている。引出伝送線路44、45が基板の外周側から結合器43に接続されている。よって、結合器43-1~43-16の引出伝送線路44、45が放射状に配置されている。引出伝送線路44、引出伝送線路45が結合器43から外周側に引き出さされている。
【0058】
点対称の位置に配置された2つの結合器43の引出伝送線路44、45は、互いに平行かつ反対方向に引き出されている。例えば、中心O1に対して点対称な位置に配置された結合器43-1、43-5では、引出伝送線路44-1、45-1と引出伝送線路44-5、45-5が平行かつ反対方向に引き出されている。具体的には、引出伝送線路44-1、45-1は、結合器43-1から+Y方向に引き出されている。結合器43-5の引出伝送線路44-1、45-1は、結合器43-5から-Y方向に引き出されている。なお、電子回路110の結合器53についても同様の方向に引出伝送線路54、55が設けられている。
【0059】
よって、引出伝送線路44、45が円の外側を迂回できる。このようにすることで、円の内部を引出伝送線路が貫通する場合に比べて、結合器に対する影響を低減することができる。
【0060】
なお、上記の構成では、2つの円C1、C2に沿って結合器43が配置されているが、3個以上の同心円に沿って結合器43が配置されていてもよい。あるいは、1つの円C1のみに沿って、結合器43が配置されていてもよい。
【0061】
また、上記の構成では、1つの円(円C1又は円C2)の円周上に8個の結合器43が配置されているが、1つ円の円周上に配置される結合器43の数は8個に限られるものではない。つまり、K個(Kは2以上の整数)の結合器43を円C1上に、回転対称に配置すればよい。例えば、K=2の場合、取付角度を180°毎に変更することができ、K=4の場合、90°毎に変更することができる。つまり、(360°/K)毎に変更することができるようになる。なお、Kを4の倍数とすることで、90°毎に取付角度を変えることができるようになる。
【0062】
2つの円C1、C2上に結合器43を配置する場合、円C1上の結合器43の数と、円C2上の結合器の数は同じとなっていなくてもよい。例えば、円C1上の結合器43の数を4個とし、円C2上の結合器43の数を8個とすることができる。最小の円C1上の結合器43の数をK個とした場合、円C1よりも大きい円C2上では、結合器の数をKの整数倍とすることが好ましい。つまり、円C2上には、(m×K)個(mは1以上の整数)の結合器43を配置することが好ましい。
【0063】
なお、
図2では基板101、111が正八角形としたが、基板101、111の形状は特に限定されるものではない。例えば、基板101、111を円形、正方形、又は長方形等としてもよい.さらには、基板101と基板111の形状や大きさは異なっていてもよい。
【0064】
このように、基板101と基板111の取付角度によって、ペアとなる結合器43と結合器53の組み合わせが変わる。取付角度が不明な場合は、結合器43-1~43-16から順番にデータを送信して、電子回路110側の受信器がデータを復元すればよい。このような事前の通信テストを行なうことで、結合器43と結合器53との組み合わせを確認することができる。また、回転角度によって、データが反転する場合、つまり、0が1になり、1が0になる場合があっても、事前の通信テストにより、反転の有無を確認することができる。
【0065】
変形例1
変形例1では、結合器の形状が異なっている。変形例1に用いられる結合器の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、モジュール間通信装置における結合器の構成を示す概念的斜視図である。
図3では、2つのモジュール10a、10bの結合器の構成を示している。モジュール10a、10bは同様の構成を有するものであり、例えば、特許文献1の
図33に示すものを用いることができる。従って、詳細な説明については省略する。
【0066】
モジュール10aは、基板11aと、信号線路12aと、抵抗17aと、半導体集積回路装置15a、帰還信号線路24aと、引出伝送線路25aと、引出伝送線路26aとを備えている。基板11aの上には、信号線路12a、抵抗17a、半導体集積回路装置15a、帰還信号線路24a、及び引出伝送線路25aが形成されている。
【0067】
信号線路12aと帰還信号線路24aは平行に配置されている。ここでは、Y方向を信号線路12aと帰還信号線路24aの長手方向と平行な方向、X方向を短手方向(幅方向)と平行な方向として示している。信号線路12aと帰還信号線路24aは、Y方向に沿って直線状に形成されている。そして、信号線路12aと帰還信号線路24aは、一定の間隔を隔てて形成されている。
【0068】
信号線路12aと帰還信号線路24aは、抵抗17aを用いて、整合終端されている。信号線路12aは、引出伝送線路25aを介して、半導体集積回路装置15aと接続されている。帰還信号線路14aは、引出伝送線路26aを介して、半導体集積回路装置15aと接続されている。引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aはY方向に沿って互いに平行に配置されている。半導体集積回路装置15aはデジタル信号を信号処理して送受信する送受信器を備えている。
【0069】
モジュール10bの構成は、モジュール10aと同様になっている。つまり、基板11b、信号線路12b、抵抗17b、半導体集積回路装置15b、帰還信号経路24b、引出伝送線路25b、及び、引出伝送線路26bが、それぞれ、基板11a、信号線路12a、抵抗17a、半導体集積回路装置15a、帰還信号経路24a、引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aに対応する。よって、詳細な説明を省略する。
【0070】
XY平面において、信号線路12aと信号線路12bとが重複し、帰還信号線路14aと帰還信号線路14bとが重複する。よって、信号線路12aと信号線路12bとの重複部分、並びに、帰還信号線路14aと帰還信号線路14bとの重複部分で電磁界結合が生じる。信号線路12bと帰還信号線路14bとがモジュール10aの結合器63となり、信号線路12bと帰還信号線路14bとがモジュール10bの結合器64となる。結合器63は、一対の直線状の信号線路(信号線路12aと帰還信号線路24a)によって構成されている。結合器64は、一対の直線状の信号線路(信号線路12bと帰還信号線路24b)によって構成されている。
【0071】
引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aは、それぞれ、引出伝送線路25b、及び引出伝送線路26bと結合しないことが好ましい。よって、引出伝送線路25a、引出伝送線路26a、引出伝送線路25b、及び引出伝送線路26bの線幅を信号線路12a、信号線路12b、帰還信号経路24a、及び帰還信号経路24bの線幅より細くすることが好ましい。あるいは、XY平面において、引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aが引出伝送線路25b、及び引出伝送線路26bと重複しないように、異なるレイアウトとしてもよい。
【0072】
次に、複数の結合器を有する電子回路200、210の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、電子回路200、210の構成を示すXY平面図である。なお、電子回路200において、基板201、ポート202、入出力配線203、及び結合器63の配置は、
図2に示す基板101、ポート102、入出力配線103、結合器43の配置と同様になっている。電子回路210において、結合器63、64の配置は、
図2の結合器43、53の配置と同様になっている。つまり、結合器の形状以外の基本的な構成は、
図2と同様になっている。よって、実施の形態1の内容と重複する内容については説明を適宜、省略する。
【0073】
変形例1においても、円C1の円周上に8個の結合器63-1~63-8が間隔を空けて配置されている。8個の結合器63-1~63-8が円C1の中心O1に対して、点対称に配置されている。円C2の円周上に8個の結合器63-9~63-16が間隔を空けて配置されている。8個の結合器63-9~63-16が円C2の中心O1に対して、点対称に配置されている。
【0074】
円C3の円周上に8個の結合器64-1~64-8が間隔を空けて配置されている。8個の結合器64-1~64-8が円C3の中心O2に対して、点対称に配置されている。円C4の円周上に8個の結合器64-9~64-16が間隔を空けて配置されている。8個の結合器64-9~64-16が円C4の中心O2に対して、点対称に配置されている。
【0075】
さらに、結合器63は、平行な2本の信号線路(
図3の信号線路12aと帰還信号線路14a)で構成されている。本実施の形態では、結合器63―1~63-8の信号線路の方向を円C1の径方向としている。同様に、結合器63―9~63-16の信号線路の方向を円C2の径方向としている。結合器63―1~63-8、結合器63-9~63-16の長手方向が、円C1、円C2の径方向と平行になる。つまり、結合器63―1~63-16の信号線路が放射状に形成されている。例えば、結合器63-1の信号線路は、結合器63-1から中心O1に向かう方向(-Y方向)と平行に形成されている。従って、結合器63-1~63-16は、中心O1に対して、8回の回転対称に配置されている。
【0076】
また、結合器64―1~64-8の2本の平行な信号線路(
図3の信号線路12bと帰還信号線路14b)の方向を円C3の径方向とし、結合器64―9~64-16の信号線路の方向を円C4の径方向としている。結合器64―1~64-8、結合器64-9~64-16の長手方向が、円C3、円C4の径方向と平行になる。つまり、結合器64―1~64-16の信号線路も放射状に形成されている。例えば、結合器64-2から中心O2に向かう方向(-X方向)と平行に結合器64-2が形成されている。従って、結合器64-1~64-16は、中心O2に対して、8回の回転対称に配置されている。
【0077】
中心O1と中心O2が一致するように、基板201と基板202とを積層することで、実施の形態1と同様に、結合器63―1~63-16と結合器64―1~64-16とが重複する。これにより、16ペアの結合器が電磁界結合する。結合器63-1~63-16が8回の回転対称となっている。また、結合器64-1~64-16が8回の回転対称となっている。実施の形態1と同様に、基板211の回転角度を45°毎に変えることができる。なお、結合器63、64の長手方向は、径方向に限らず、径方向から一定角度だけ傾いていてもよい。
【0078】
さらに,本実施の形態1では、基板201に位置決め部65が形成され、基板211に位置決め部66が形成されている。位置決め部65、66は正八角形の基板201、211の各辺近傍に配置されている。つまり、基板201、211では、8個の位置決め部65、66が45°毎の方位に設けられている。位置決め部65は、結合器63-1~63-16よりも外周側に配置され、位置決め部66は、結合器64-1~64―16よりも外周側に配置されている。
【0079】
位置決め部65、66によって、基板501、511が着脱自在に固定される。位置決め部65、66としては、例えば、永久磁石を用いることができる。そして、基板201、211を積層した場合に、位置決め部65と位置決め部66とが対向して配置される。対向して配置された位置決め部65と位置決め部66が磁力で吸引される。このようにすることで、取付角度のずれを防止することができる。例えば、取付角度が45°からずれた場合、結合器63と結合器64の重複面積が小さくなってしまう。よって、取付角度のずれにより、結合器63、64で形成される容量が減少してしまう。
【0080】
そこで、本実施の形態に示すように、位置決め部65,66を用いることで、結合器間の位置ずれを防止することができる。つまり、取付角度が45°×nとなるように、位置決め部65,66の磁石の吸引力が作用する。これにより、位置精度を高くすることができるため、結合器63、64の結合性能の劣化を防ぐことができる。また、位置決め部65、66は磁石に限られるものではない。例えば、機械的な嵌合構造を用いて、位置決め部65、66を形成してもよい。もちろん、位置決め部65、66の数は8個に限られるものではない。
【0081】
このように、基板201、211に、位置決め部65,66を設けることが好ましい。位置決め部65、66は、積層される基板を所望の取付角度にする。つまり、位置決め部65、66は、基板間の取付角度が45°の倍数に一致するように、位置ずれを制限する。
【0082】
本実施の形態では、円周上に複数の結合器が回転対称に配置されている。このようにすることで、直線状の結合器63、64を用いた場合でも、基板間の取付角度を90°毎に変化することができる。例えば,特許文献4のように3行3列のアレイに直線状の結合器63,64を配置した場合、結合器の長手方向が90°回転してしまうため、結合させることが困難になる。これに対して、本実施の形態では、90°、あるいは45°回転させた場合でも、結合器63、64を重複させることができる。
【0083】
実施の形態1と同様に、引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aが結合器63から円C1、C2の外周側に引き出されている。引出伝送線路25a、引出伝送線路26aが放射状に形成されている。よって、引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aが円C1、C2の外側を迂回させることできる。このようにすることで、円C1の内部を引出伝送線路25a、及び引出伝送線路26aが貫通する場合に比べて、結合器43に対する影響を低減することができる。
【0084】
変形例2
変形例2では、結合器の形状が実施の形態1,及び変形例1と異なっている。
図5は変形例2にかかる結合器の構成を示す図である。
図5では、2つのモジュール10a、10bの結合器の平面構成を示している。モジュール10a、10bは同様の構成を有するものであり、例えば、特許文献2の
図2に示すものを用いることができる。
【0085】
モジュール10aは、第1の基板11aと信号線路12aと引出伝送線路13a、14aとを備えている。第1の基板11aの上には、信号線路12aと、引出伝送線路13a、14aとが形成されている。信号線路12aはX方向を長手方向とし、Y方向を短手方向とする矩形状のパターンである。つまり、信号線路12aはX方向に沿った信号線路により形成されている。X方向における信号線路12aの一端には、引出伝送線路13aが接続され、他端には引出伝送線路14aが接続されている。引出伝送線路13aには、正極性の差動信号が入力され、引出伝送線路14aには、負極性の差動信号が入力される。信号線路12aの線幅は引出伝送線路13a、14aの線幅よりも線幅が広くなっている。
【0086】
モジュール10bは、第2の基板11bと信号線路12bと引出伝送線路13b、14bとを備えている。モジュール10bはモジュール10aと同様の構成となっている。そして、信号線路12bと信号線路12bとがほぼ同じ大きさとなっている。XY平面視において、信号線路12aと信号線路12bとが重複するように、第1の基板11aと第2の基板11bとが積層される。よって、信号線路12aと信号線路12bとが電磁界結合する。
【0087】
図6は、
図5に示す結合器の配置を示す平面図である。
図6では、信号線路12aを結合器73とし、信号線路12bを結合器74として簡略化して示している。
図6には、16個の結合器73を備えた電子回路300と、16個の結合器74を備えた電子回路310とが示されている。また、
図6では、基板やポートなどが省略されている。
【0088】
変形例1、2と同様に、結合器73-1~73-8が円C1の円周上に配置されている。結合器73-1~73-8は、円C1の中心O1に対して、点対称に配置されている。また、結合器73-9~73-16が円C2の円周上に配置され、円C2の中心O1に対して点対称に配置されている。結合器74-1~74-8が円C3の円周上に配置されている。結合器74-1~74-8は、円C3の中心O2に対して、点対称に配置されている。また、結合器74-9~74-16が円C4の円周上に配置され、円C4の中心O2に対して点対称に配置されている。
【0089】
さらに、結合器73―1~73-8、結合器73-9~73-16の長手方向が、円C1、円C2の接線方向と平行になっている。よって、結合器73-1~73-16が中心O2に対して、8回の回転対称となっている。結合器74―1~74-8、結合器74-9~74-16の長手方向が、円C3、円C4の接線方向と平行になっている。よって、結合器74-1~74-16が中心O2に対して、8回の回転対称となっている。
【0090】
中心O1と中心O2が一致するように、電子回路300と電子回路310とを積層することで、実施の形態1,及び変形例1と同様に、結合器73―1~73-16と結合器74―1~74-16とが重複する。これにより、16ペアの結合器が電磁界結合する。実施の形態1と同様に、基板の回転角度を45°毎に変えることができる。
【0091】
また、実施の形態1の引出伝送線路44、及び引出伝送線路45と同様に、引出伝送線路13a、及び引出伝送線路14aが結合器73から外側に引き出されている。16個の結合器43の引出伝送線路13a、及び引出伝送線路14aが放射状に形成されている。よって、引出伝送線路13a、及び引出伝送線路14aが円C1、C2の外側を迂回させることできる。このようにすることで、円の内部を引出伝送線路13a、及び引出伝送線路14aが貫通する場合に比べて、結合器に対する影響を低減することができる。
【0092】
変形例3
変形例3にかかる電子回路について、
図7を用いて説明する。
図7は、変形例3にかかる電子回路400、410の結合器の配置を示す平面図である。なお、
図3に示す結合器63、64が用いられているが、
図1、又は
図5に示す結合器を用いてもよい。なお、電子回路400、410の基本的な構成は、実施の形態1、及び変形例1、2と同様であるため、適宜説明を省略する。なお、
図7では、入出力配線が省略されている。
【0093】
電子回路400の基板401には、16個の結合器63-1~63-16が配置されて、電子回路410の基板411には、16個の結合器64―1~64-16が配置されている。しかしながら、変形例3では、16個の結合器63、64の配置が変形例1の配置と異なっている。具体的には、円C1の円周上に、16個の結合器63-1~63-16が配置されている。円C3の円周上に、16個の結合器64-1~64-16が配置されている。
【0094】
結合器63-1~63-16は円C1の中心O1に対して点対称に配置されている。円C1の円周方向に沿って、16個の結合器63-1~63-16が22.5°毎の等間隔に配置されている。結合器63-1~63-16は、中心O1に対して、16回の回転対称に配置される。
【0095】
結合器64-1~64-16は円C3の中心O2に対して点対称に配置されている。円C3の円周方向に沿って、16個の結合器64-1~64-16が22.5°毎の等間隔に配置されている。結合器64-1~64-16は、中心O2に対して、16回の回転対称に配置される。
【0096】
中心O1と中心O2が一致するように、電子回路400と電子回路410とを積層することで、上記の構成と同様に、結合器63―1~63-16と結合器64―1~64-16とが重複する。例えば、結合器63-1と結合器64-16とが重複する。これにより、16ペアの結合器が電磁界結合する。
【0097】
変形例3では、基板401と基板411の取付角度を22.5°(=360°/16)毎に変えることができる。したがって、
図7では、ポート402と、ポート412の角度が22.5°異なっている。なお、
図7では、基板401、411が正16角形となっているが円形などの他の形状であってもよい。また、変形例3においても、円C2、C4の円周上に結合器を配置してもよい。つまり、2重以上の同心円の円周上に結合器を配置してもよい。
【0098】
変形例4
変形例4にかかる電子回路について、
図8を用いて説明する。変形例4にかかる電子回路400、420を示す平面図である。電子回路400では、
図7と同様に円C1に円周上に16個の結合器63が等間隔で配置されている。
【0099】
一方、電子回路420には、4つの結合器64しか設けられていない。電子回路400の結合器63の数と、電子回路420の結合器64の数が異なっている。具体的には、4つの結合器64-1~64-4が、円C3の円周上に配置されている。中心O2に対して、結合器64-1~64-4は点対称に配置されている。ここでは、結合器64-1~64-4は90°毎に等間隔で配置されている。
【0100】
この場合であっても、基板401に対する基板421の取付角度を22.5°毎に変えることができる。例えば、4つの結合器64-1~64-4は、結合器63-1~63-16のうちのいずれかと重複するようになる。この場合、基板401では、16個の結合器63のうち4個の結合器63が結合器64と結合する。結合器64-1~64-4が電磁界結合するため、4つの並列な通信パスが形成される。例えば、結合器63-1~63-4のうちの1つが結合器64と結合する。
【0101】
例えば、結合器64-1と結合器63-1が重複するように配置すると、結合器64-2~64-4は、それぞれ結合器63-5、63-9、63-13と重複する。基板421を22.5°回転して、結合器64-1と結合器63-2が重複するように配置すると、結合器64-2~64-4は、結合器63-6、63-10、63-14と重複する。このようにすることで、4つの並列な通信パスが形成される。
【0102】
なお、電子回路400においては、4個の結合器63のみが、結合器64と結合する。つまり、残りの12個の結合器63については、結合器64と結合しない。このため、4つの結合器63毎に、受信回路や送信回路を共通化することができる。例えば、1つの送受信回路に対して、4つの結合器63-1~63-4を並列に接続し、かつ、結合器63-1~63-4と送受信回路の間にスイッチを配置する、そして、電子回路400、410の取付角度に応じて、スイッチをオンオフする。4つの結合器63-1~63-4のうち、結合器64-1と重複する1つの結合器63-1のみが送受信回路に接続される。よって、送受信回路の数を少なくすることができ、電子回路420を小型化することができる。また、事前の通信テストにより、結合器64と結合した4つの結合器を特定すればよい。
【0103】
なお、電子回路420において、4つの結合器64-1~64-4が対称に配置されていたが、結合器の数が少ない電子回路420では、結合器64-1~64-4は対称に配置されていなくてもよい。例えば、結合器64-1~64-4を22.5°の間隔で配置することができる。この場合、取付角度を0°とすると、結合器64-1~64-4が結合器63-1~63-4と重複する位置に配置される。取付角度を22.5°に変更すると、結合器64-1~64-4は、結合器63-2~63-5と重複する。電子回路420では、円周に沿って、結合器64が等間隔に配置されていなくてもよい。つまり、結合器64-1~64-4は、22.5°×n(nは0以上16未満の任意の整数)の方位角に配置されていれば、ランダムな配置であってもよい。例えば、結合器64-1~64―4が、結合器63-1、63-2、63-4、63-13と重複するようにランダムに配置されていてもよい。
【0104】
上記の構成を一般化すると以下のよう表すことができる。電子回路400では、基板401にK(Kは2以上の整数)個の結合器63が設けられ、電子回路420では、基板421にL(Lは2以上K以下の整数)個の結合器64が設けられている。例えば、K個の結合器63が円C1の円周に沿って等間隔に配置される。そして、電子回路420では、L個の結合器64が円C1と同じ大きさの円C3上に配置されている。L個の結合器63とL個の結合器64とが重複するように、基板401と基板421とを積層することで、L個の並列な通信パスが形成される。
【0105】
図2、
図4、
図6は、K=L=8の構成を示す。
図7は、K=L=16の構成を示す。
図8は、K=16、L=4の構成を示す。さらに、Kを4の倍数とすることで取付角度を90°毎に変更することができる。Lは2以上K以下の整数であればよい。例えば、
図7に示す構成において、電子回路410において、結合器64-1~64-16の1以上の結合器を間引いても、22.5°毎に基板の取付角度を変えることができる。もちろん、
図2、
図4、
図6の構成においても、結合器53、結合器64、結合器74を間引いてもよい。
【0106】
基板401上の結合器63がN回の回転対称に配置されていれば、基板421上の結合器64は、回転対称に配置されていなくてもよい。KがLよりも大きい場合、L個の結合器64は、360°×n/N(nは0以上、N未満の任意の整数)の方位角に配置されていれば、360°/N毎に取付角度を変えることができる。本実施形態に係る電子回路の接続方法では、L個(Lは2以上、K以下の整数)の結合器64と結合器63とが重複して、L個の通信パスを形成するように、電子回路400と電子回路420との取付角度を360°×n/N(nは0以上N未満の任意の整数)として、前記第1の基板と前記第2の基板とを積層する。
【0107】
変形例5
変形例5にかかる電子回路について、
図9を用いて説明する。
図9は、電子回路440における結合器64の配置を示す平面図である。電子回路440では、電子回路420と同様に、円C1の円周上に4つの結合器64が設けられている。なお、
図9では、基板441が正方形となっており、その一辺にポート442が設けられている。
【0108】
変形例5では、引出伝送線路25b,26bの引出方向が異なっている。引出伝送線路25b,26bが結合器64から円C3の内側に向けて引き出されている。ここでは、引出伝送線路25b,26bが、円C3の中心O2側に引き出された後、ポート442の方向に屈曲している。円C3の内側に引き出した場合、円C3の外側を迂回するよりも等長配線しやすい。変形例5の構成は、特に、円周上に配置される結合器64の数が少ない場合に有効である。
【0109】
実施の形態2.
本実施の形態では、正N角形の辺に沿ってK個(Kは2以上の整数)の結合器が配置されている。さらに、K個の結合器が正N角形の中心に対して、回転対称に配置されている。実施の形態2にかかる電子回路における結合器の配置について、
図10を用いて説明する。
図10は、電子回路500、510における結合器43、53の配置を示す平面図である。結合器43、53は、
図1で示したように円弧状となっている。
【0110】
電子回路500は、基板501と、ポート502と、入出力配線503と、16個の結合器43と、を備えている。16個の結合器43は、4列4行のアレイ状に等間隔で配置されている。結合器43-1~43-16は、互いに干渉しないような間隔を空けて配置されている。
【0111】
2つの正四角形S1、S2の辺に沿って、結合器43が配置されている。正四角形S2は、正四角形S1よりも大きく、正四角形S2の中心は、正四角形S1の中心O1と一致している。正四角形S1の4辺上に4個の結合器43が配置されている。具体的には、正四角形S1の4辺の端、つまり、各頂点に結合器43-6、43-7、43-10、43-11が配置されている。結合器43-6、43-7、43-10、43-11は、正四角形S1の中心O1に対して、4回の回転対称に配置される。
【0112】
さらに、正四角形S2の4辺上に12個の結合器43-1~43-5、43-8、43-9、43-12~43-16が配置されている。正四角形S2の一辺に4つの結合器43が配置されている。具体的には、正四角形S2の各頂点にそれぞれ結合器43-1、43-4、43-13、43-16が配置されている。+Y側のX方向と平行な辺において、結合器43-1と結合器43-4との間には、2つの結合器43-2、43-3が配置されている。同様に、-Y側のX方向と平行な辺において、結合器43-13と結合器43-16との間には、2つの結合器43-14、43-15が配置されている。また、-X側のY方向と平行な辺において、結合器43-1と結合器43-13との間には、2つの結合器43-5、43-9が配置されている。+X側のY方向と平行な辺において、結合器43-4と結合器43-16との間には、に2つの結合器43-8、43-12が配置されている。したがって、結合器43-1~43-5、43-8、43-9、43-12~43-16は、正四角形S2の中心O1に対して、4回の回転対称に配置される。
【0113】
正四角形S1の中心と正四角形S2の中心とは中心O1で一致している。よって、結合器43-1~43―16が4回の回転対称に配置されている。なお、基板501は、正四角形(正方形)となっているが、正四角形以外の形状であってもよい。ここでは、正四角形の基板501の中心は中心O1と一致しているが、一致していなくてもよい。そして、基板501の-Y側のX方向と平行な辺にポート502が設けられている。ポート502には、結合器43に接続される入出力配線503が束ねられている。
【0114】
電子回路510は、基板511と、ポート512と、入出力配線513と、16個の結合器53とを備えている。したがって、正四角形S3の辺上には、4つの結合器53-6、53-7、53-10、53-11が配置されている。また、正四角形S4の辺上には、8つの結合器53-1~53-5、53-8、53-9、53-12~53-16が配置されている。正四角形S3の中心と正四角形S4の中心は中心O2で一致している。
【0115】
電子回路510の構成は、電子回路500の構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。従って、結合器53-1~53-16は中心O2に対して、4回の回転対称に配置される。なお、
図10では、基板511が90°回転しているため、ポート512が基板511の-X側のY方向と平行な辺に設けられている。
【0116】
このような構成とすることで、電子回路500、510の取付角度を90°毎に変えることができるようになる。中心O1と中心O2とが一致するように基板501と基板511とを積層した場合、基板501に対する基板511の角度が0°、90°、180°、270°であれば、16個の結合器43と16個の結合器53とが重複する。これにより、16個の通信パスを形成することができる。
【0117】
例えば、基板510を90°回転した場合、
図11に示す結合器43-1の中心O31と、結合器53-13の中心O32が一致する。これにより、結合器43-1と結合器43-13とが大部分で重複するため、結合器43-1と結合器53-13とが電磁界結合する。他の結合器43についても、同様に結合器53と結合する。基板501に対する基板511の相対的な回転角度を90°とした場合でも16個の並列な通信パスが形成される。
【0118】
時計回りに基板511の回転角度を0°、90°、180°、270°とした場合の結合器53の配置を
図12に示す。なお、
図12では、説明の簡略化のため、正四角形S4の角にある4つの結合器53-1、53-4、53-13、53-16のみ符号が付されている。結合器53は円弧状であるため、角度を変えた場合でも、同じ位置に配置される。引出伝送線路の方向のみが90°ずつ変わる。
【0119】
基板511を0°、90°、180°、270°に回転した場合であっても、16個の結合器53が全て結合器43と重複するため、取付角度を90°毎に変えることができる。16個の通信パスを用いて、並列にデータ通信を行うことができる。これにより、高速なデータ通信が可能となる。
【0120】
基板501と基板511の取付角度によって、ペアとなる結合器43と結合器53の組み合わせが変わる。取付角度が不明な場合は、結合器43-1~43-15から順番にデータを送信して、電子回路510側の受信器がデータを復元すればよい。このような事前の通信テストを行なうことで、結合器43と結合器53との組み合わせを確認することができる。また、回転角度によって、データが反転する場合、つまり、0が1になり、1が0になる場合があっても、事前の通信テストにより、反転の有無を確認することができる。
【0121】
さらに、本実施の形態では、
図10に示すように、基板501、511の各辺の中央近傍に、位置決め部65、66がそれぞれ設けられている。位置決め部65は、マグネットや嵌合構造である。よって、位置決め部65、66によって、基板501、511が着脱自在に固定される。位置決め部65を設けることで位置ずれを防ぐことができ、結合性能の低下を防ぐことができる。
【0122】
なお、
図10では、16個の結合器43において、引出伝送線路44、引出伝送線路45が結合器43から全て同じ方向に引き出されているが、異なる方向に引き出されていてもよい。
【0123】
また、正四角形の辺に沿って、複数の結合器を等間隔に配置することが好ましい。このようにすることで、隣同士の結合器が干渉しない間隔で配置した場合であっても、基板を小型化することができる。なお、本実施の形態では、2重の正四角形の辺上に結合器を配置しているが、3重以上の正四角形の辺上に結合器を配置してもよい。あるいは、1つの正四角形のみの辺上に結合器を配置してもよい。
【0124】
変形例6
変形例6にかかる電子回路600について、
図13を用いて説明する。
図13は、電子回路600における結合器43の配置を示す平面図である。なお、
図13では、基板やポートなどが省略されている。
【0125】
電子回路600は、4つの結合器群431~434を備えている。結合器群431、432、433、434は、それぞれ16個の結合器43を備えている。つまり、電子回路600は、64個の結合器43を有している。結合器43は、
図1に示したように、円弧状になっている。
【0126】
結合器群431に含まれる16個の結合器16は、
図10に示した結合器43-1~43-16と同様の配置となっている。従って、結合器群431に含まれる16個の結合器43は、中心O11に対して4回の回転対称となっている。同様に、結合器群432~434のそれぞれに含まれる16個の結合器16は、
図10に示した結合器43-1~43-16と同様の配置となっている。結合器群432に含まれる16個の結合器43は、中心O12に対して4回の回転対称となっている。結合器群433に含まれる16個の結合器43は、中心O13に対して4回の回転対称となっている。結合器群434に含まれる16個の結合器43は、中心O14に対して4回の回転対称となっている。
【0127】
さらに、結合器群431~434を中心O21に対して、4回の回転対称に配置する。例えば、中心O21は、中心O11、O12、O13、O14を結ぶ正四角形S5の中心である。つまり、中心O11、O12、O13、O14は、正四角形S5の各頂点に配置される。このような配置にすることで、64個の結合器43が中心O21に対して、4回の回転対称に配置される。よって、取付角度を90°毎に変えることが可能となる。結合器43が
図12に示す配置となっている電子回路を積層することで、64個の並列な通信パスが形成される。よって、基板を積層した通信回路において、より高速なデータ通信が可能となる。
【0128】
なお、変形例6は、実施の形態1の構成についても適用することできる。この場合、実施の形態1、又はその変形例1~5に示す複数の結合器を結合器群とする。そして、複数の結合器群の中心を、正多角形の頂点に配置する。例えば、正四角形の頂点にそれぞれ結合器群を配置することで、取付角度を90°毎に変更することができる。
【0129】
変形例7
変形例7にかかる電子回路700について、
図14を用いて説明する。
図14は、電子回路700、710における結合器43、53の配置を示す平面図である。なお、
図14では、基板やポートなどが省略されている。
【0130】
電子回路700は、15個の結合器43-1~43―15を備えている。結合器43-1~43―15は、互いに干渉しないように、間隔を空けて配置されている。電子回路710は、15個の結合器53-1~53―15を備えている。結合器53-1~53―15は、互いに干渉しないように、間隔を空けて配置されている。結合器43-1~43-15、及び結合器53-1~53―15は、それぞれ
図1に示したように、円弧状になっている。
【0131】
結合器43-1~43-6が正三角形T1の辺上に配置されている。正三角形T1の頂点にそれぞれ結合器43-1、43-3、43-5が配置されている。さらに、正三角形T1の一辺において、結合器43-1と結合器43-3との間には、結合器43-2が配置されている。さらに、正三角形T1の一辺において、結合器43-3と結合器43-5との間には、結合器43-4が配置されている。正三角形T1の一辺において、結合器43-5と結合器43-1との間には、結合器43-5が配置されている。よって、正三角形T2の中心O1に対して、結合器43-1~43-6は、3回の回転対称に配置される。
【0132】
結合器43-7~43-15が正三角形T2の辺上に配置されている。正三角形T2の頂点にそれぞれ結合器43-7、43-10、43-13が配置されている。さらに、正三角形T2の一辺において、結合器43-7と結合器43-10との間には、結合器43-8、43-9が配置されている。さらに、正三角形T2の一辺において、結合器43-10と結合器43-13との間には、結合器43-11、43-12が配置されている。正三角形T2の一辺において、結合器43-13と結合器43-7との間には、結合器43-14、43-15が配置されている。よって、正三角形T2の中心O1に対して、結合器43-7~43-15は、3回の回転対称に配置される。
【0133】
さらに、正三角形T1の中心と正三角形T2の中心とは、中心O1で一致している。よって、15個の結合器43-1~43-15が3回の回転対称に配置されている。
【0134】
電子回路710の構成は、電子回路700の構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。従って、結合器53-1~53-15は中心O2に対して、3回の回転対称に配置される。なお、
図14では、基板511が120°回転している。したがって、結合器43-1と結合器53-1とが重複する。
【0135】
このような構成とすることで、電子回路700、710の取付角度を120°毎に変えることができるようになる。中心O1と中心O2とが一致するように電子回路700と電子回路710とを積層した場合、回転角度が0°、120°、240°であれば、15個の結合器43と15個の結合器53とが重複する。これにより、15個の通信パスを形成することができる。
【0136】
なお、実施の形態2とその変形例6、7では、結合器が3回、又は4回の回転対称に配置されていたが、5回以上の回転対称に配置することも可能である。例えば、正五角形の辺に沿って、結合器43,53を配置することで、5回の回転対称とすることができる。あるいは、正六角形の辺上に結合器43、53を配置することで、6回の回転対称とすることができる。
正多角形に一般化すると、以下のように表すことができる。正N角形(Nは3以上の整数)の辺に沿って、K個(KはN以上の整数)の結合器が配置され、かつ正N角形の中心に対して、K個の結合器がN回の回転対称に配置されていればよい。このようにすることで、取付角度を(360°/N)毎に変えることができるようになる。
【0137】
さらに、正N角形を二重以上としてもよい。つまり、中心が同じで、大きさが異なる正N角形の辺に沿って複数の結合器を配置する。そして、複数の結合器がN回の回転対称に配置すればよい。このようにすることで、より多くの通信パスを形成することができる。
【0138】
なお、実施の形態1、実施の形態2、及び変形例1~7をそれぞれ適宜組み合わせて用いることができる。また、結合器43を第1の正四角形S1上に配置し、他の結合器を第1の正四角形よりも大きい円の円周上に配置してもよい。あるいは、結合器43を第1の円C1上に配置し、他の結合器を第1の円C1よりも大きい正四角形の辺上に配置してもよい。
【0139】
実施の形態2、及びその変形例6、7においても、変形例4のように、2つの基板の結合器の数が異なっていてもよい。例えば、
図10に示す電子回路510において、結合器53-1~53-16の1つ以上がなくてもよい。さらに、位置決め部65、66が図示されていない構成の電子回路においても、適宜基板にマグネットを設けることで、位置決め部65、66とすることが可能である。
【0140】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0141】
この出願は、2018年8月17日に出願された日本出願特願2018-153638を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0142】
41 結合器要素
43 結合器
44 引出伝送線路
45 引出伝送線路
47 基板面
51 結合器要素
53 結合器
54 引出伝送線路
55 引出伝送線路
57 基板面
63 結合器
64 結合器
65 位置決め部
66 位置決め部
73 結合器
74 結合器
100、110、200、210、300、310、400、410 電子回路
101、111、201、211、401、411 基板
102、112、202、212、402、412 ポート
103、113、203、213 入出力配線