(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/10 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
B25J15/10
(21)【出願番号】P 2020550208
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034201
(87)【国際公開番号】W WO2020075414
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2018190909
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小林 保幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/118646(WO,A1)
【文献】特開2006-198748(JP,A)
【文献】特開2008-264895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007730(US,A1)
【文献】特開2003-117873(JP,A)
【文献】特開2016-030316(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌部と、該掌部に支持された三以上の指部と、前記指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、
前記三以上の指部には、少なくとも、第一の指部と、この第一の指部に対し異なる方向を向く第二の指部とが含まれ、
前記第一の指部と前記第二の指部の各々は、角度90度以上の内外転運動と、前記内外転運動に交差する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有し、
前記駆動源は、前記運動毎に設けられ、
少なくとも一つの前記駆動源には、所定以上の負荷によって出力を切断するクラッチ機構が設けられて
おり、
前記掌部には、傾斜状の支持面を有する支持台が固定されており、
前記第一の指部は、指元側の部分を掌内側へ傾斜させて、前記支持面に対し略直交する軸を介して回転自在に支持されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記第一の指部は、一つの前記内外転運動と、二以上の関節における二つの前記屈伸運動とを含む三以上の自由度を有することを特徴とする請求項1記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記三以上の指部のうち、少なくとも一つの指部は、前記内外転運動用の駆動源と、少なくとも一つの前記屈伸運動用の駆動源とに、前記クラッチ機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記掌部は、前記指部の数に応じて異なる方向に突出する三以上の支持部を具備し、前記各支持部に前記各指部の付け根側を支持していることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記三以上の指部のうち、少なくとも一つの指部は、長手方向へ並べられた複数の節部を有し、これら節部を指元側から順次に屈曲させるなじみ把持機構を構成していることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記各指部の一部又は全部が、着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
掌部に支持された指部を屈曲させてワークを把持することが可能なロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、同一の製造ライン上で、人とロボットが共同して作用を行うシステムの開発と実用化が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。このようなシステムに用いられる協働ロボットには、省スペース性や、設置容易性等の観点より、小型化軽量化が求められる。
さらに、一つのロボットハンドにより、多種多様なタスクをこなせるように、器用な指部の動きが求められる。また、動作中のロボットハンドがワークを破損させたり人に接触したりしないように、安全性も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、小型、軽量、器用及び安全性等を具備したロボットハンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
掌部と、該掌部に支持された三以上の指部と、前記指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、前記三以上の指部には、少なくとも、第一の指部と、この第一の指部に対し異なる方向を向く第二の指部とが含まれ、前記第一の指部と前記第二の指部の各々は、角度90度以上の内外転運動と、前記内外転運動に交差する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有し、前記駆動源は、前記運動毎に設けられ、少なくとも一つの前記駆動源には、所定以上の負荷によって出力を切断するクラッチ機構が設けられていることを特徴とするロボットハンド。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、小型、軽量、器用及び安全性を具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るロボットハンドの一例を示す斜視図である。
【
図2】同ロボットハンドについて、カバーを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】同ロボットハンドについて、カバーを外した状態を手の甲側から視た斜視図である。
【
図4】同ロボットハンドについて、カバーを外した状態の把持動作を(a)(b)に順次に示す側面図である。
【
図5】同ロボットハンドについて、カバーを外した状態の把持動作を(c)(d)に順次に示す側面図である。
【
図6】同ロボットハンドの動作状態の一例を示す斜視図である。
【
図7】同ロボットハンドの動作状態の他例を示す斜視図である。
【
図8】同ロボットハンドの動作状態の他例を示す斜視図である。
【
図9】同ロボットハンドの把持動作状態の一例を示す斜視図である。
【
図10】同ロボットハンドの把持動作状態の他例を示す斜視図である。
【
図11】同ロボットハンドの把持動作状態の他例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、掌部と、該掌部に支持された三以上の指部と、前記指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、前記三以上の指部には、少なくとも、第一の指部と、この第一の指部に対し異なる方向を向く第二の指部とが含まれ、前記第一の指部と前記第二の指部の各々は、角度90度以上の内外転運動と、前記内外転運動に交差する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有し、前記駆動源は、前記運動毎に設けられ、少なくとも一つの前記駆動源には、所定以上の負荷によって出力を切断するクラッチ機構が設けられている(
図1~
図11参照)。
この構成によれば、例えば協働用ロボットとして必要とされる多種多様なタスクを実現可能な器用さを得ることができる上、特に他の物体に衝突するなどして不意の外力を受けた際の安全性をクラッチ機構によって向上することができる。具体的には、指部の内外転運動用の駆動源にクラッチ機構を設けることにより、指部が内外転運動方向で受ける所定以上の負荷に対してクラッチ機構が機能する。指部の屈伸運動用の駆動源にクラッチ機構を設けることにより、指部が屈伸運動方向で受ける所定以上の負荷に対してクラッチ機構が機能する。クラッチ機構を設けた駆動源を一つでも配置することでロボットハンドの安全性が向上する。更に、クラッチ機構を設けた駆動源の数を増やして配置(最大で全ての前記駆動源に適用)するほど、意図しない外力を受けた際の安全性をより高めることができる。
【0009】
第二の特徴として、より器用な動作を実現するために、前記第一の指部は、一つの前記内外転運動と、二以上の関節における二つの前記屈伸運動とを含む三以上の自由度を有する(
図8参照)。
【0010】
第三の特徴として、安全性をより向上した前記指部の具体的な態様となるように、前記三以上の指部のうち、少なくとも一つの指部は、前記内外転運動用の駆動源と、少なくとも一つの前記屈伸運動用の駆動源とに、前記クラッチ機構を設けている。
【0011】
第四の特徴として、各指部の独立動作性を向上するために、前記掌部は、前記指部の数に応じて異なる方向に突出する三以上の支持部を具備し、前記各支持部に前記各指部の付け根側を支持している(
図1、
図2、及び
図6~
図8参照)。
【0012】
第五の特徴として、掌よりも大きな対象物を確実に把持するために、前記三以上の指部のうち、少なくとも一つの指部は、長手方向へ並べられた複数の節部を有し、これら節部を指元側から順次に屈曲させるなじみ把持機構を構成している(
図4及び
図5参照)。
【0013】
第六の特徴は、メンテナンス性を向上するとともに多種多様なタスクの対応を容易にするために、前記各指部の一部又は全部が、着脱可能に装着されている。
【0014】
第七の特徴として、より器用な動作を可能にするために、前記三以上の指部のうち、少なくとも一つの指部は、指元側の部分を掌内側へ傾斜させて前記掌部に支持されている(
図1~
図3及び
図11参照)。
【0015】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
このロボットハンド1は、掌部10と、掌部10に支持された三以上(図示例によれば三つ)の第一~第三の指部20,30,40と、各指部を屈伸運動及び内外転運動させる複数の駆動源51,52,53,54,55とを具備している。
【0016】
ここで、屈伸運動とは、各指部の関節部分を屈曲させたり伸展させたりする運動である。また、内外転運動とは、前記屈伸運動に対し略直交する方向の運動であって、各指部を、その指元側を支点にして、隣接する指部に近づけるように回動させたり、隣接する指部から遠ざけるように回動させたりする運動である。
【0017】
掌部10は、指部の数に応じて異なる方向へ放射状に突出する三以上(図示例によれば三つ)の第一~第三の支持部11,12,13を有する平面視T字又はY字の平板状に形成される。(
図1~
図2参照)
【0018】
第一の支持部11の裏面(手の甲側の面)には、後述する第一の指部20の指元側を支持する支持台11aが固定されている(
図2参照)。
この支持台11aは、支持部11の裏面から突出する突端側に、傾斜状の支持面11a1を有する。この支持面11a1は、第一の指部20の指元側の基節部21を掌内側へ傾斜させた状態で内外転するように支持している。
【0019】
第二の支持部12の裏面側には、第一の指部20に対し異なる方向を向く第二の指部30が設けられる。
同様に、第三の支持部13の裏面側には、第一の指部20に対し異なる方向を向く第三の指部40が設けられる。
【0020】
また、掌部10裏面の中央側には、ロボットアーム等の先端部に対し接続される被接続部14が固定され突出している。
【0021】
第一の指部20は、90度以上の内外転運動と、この内外転運動に略直交する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有する。特に、本実施の形態の好ましい一例によれば、この第一の指部20は、180度以上の一つの内外転運動と、三つの関節毎の屈伸運動を含む四つの自由度を有する。
ここで、自由度とは、各指における独立した単一運動の数を意味し、本実施態様において、この自由度(数)は、各指に対応する駆動源の数に一致する。
【0022】
この第一の指部20は、支持台11aに対し内外転可能に枢支された基節部21と、この基節部21に対し屈伸可能に枢支された第一の節部22と、第一の節部22に対し屈伸可能に枢支された第二の節部23と、第二の節部23に対し屈伸可能に枢支された第三の節部24とを、長手方向に並べ具備している。そして、第一の指部20は、これら複数の節部を、関節毎に対応するように内在する駆動源(図示せず)の動力によって屈伸させる。
【0023】
基節部21は、その指元側が、支持台11aの傾斜状の支持面11a1に対し、略直交する軸を介して回転自在に支持される。
したがって、この基節部21の先端側は、掌部10に対し傾斜している。
この基節部21は、支持台11aに支持された駆動源51の動力によって内外転する。
【0024】
駆動源51は、回転角や回転速度等が適宜に制御されるようにした電動のサーボモータであり、内蔵するモータの回転力を、歯車及びクラッチ機構等を介して出力軸に伝達するように構成される。前記出力軸は、基節部21の回転中心部に接続固定される。
クラッチ機構は、ワーク側(もしくは基節部21側)から受ける所定以上の負荷によって内蔵モータからの出力(回転力)を切断する機構である。
電動のサーボモータ及びクラッチ機構には、例えば、再公表特許WO2017/002464に開示されるクラッチ装置、モータユニットを好適なものとして用いることが可能である。
【0025】
第一の節部22は、基節部21の先端側を支点にして、前記内外転に対し略直交して回動(屈伸運動)するように支持される。
この第一の節部22を屈伸運動させる駆動源は、第一の節部22の指元側に内在する電動のサーボモータ(図示せず)である。
【0026】
第二の節部23は、第一の節部22の指先側を支点にして、第一の節部22と同方向へ回動(屈伸運動)するように支持される。
この第二の節部23を屈伸運動させる駆動源は、第一の節部22の指先側に内在する電動のサーボモータ(図示せず)である。
【0027】
第三の節部24は、第二の節部23の指先側を支点にして、第二の節部23と同方向へ回動(屈伸運動)するように支持され、第一の指部20全体の指先部分を構成している。
この第三の節部24を屈伸運動させる駆動源は、第二の節部23の指先側に内在する電動のサーボモータ(図示せず)である。
【0028】
なお、第一の節部22、第二の節部23及び第三の節部24を屈伸運動させる前記駆動源は、上述した内外転運動用の駆動源51と同構成のものを用いればよい。
【0029】
また、第二の指部30と第三の指部40の各々は、90度以上の内外転運動と、この内外転運動に略直交する方向の屈伸運動とを含む二以上(図示例によれば二つ)の自由度を有する。
【0030】
第二の指部30は、掌部10の第二の支持部12に対し内外転可能に枢支された基節部Sと、この基節部Sに対し屈伸可能に枢支された第一の節部S1と、第一の節部S1に対し屈伸可能に枢支された第二の節部S2と、第二の節部S2に対し屈伸可能に枢支された第三の節部S3とを、長手方向に並べるように具備している。そして、第二の指部30は、これら複数の節部を、単一の駆動源53の動力によって指元側から順次に屈曲させる。このような屈曲動作を行う機構を、本実施態様では、なじみ把持機構と呼称する。
【0031】
基節部Sは、その指元側が、支持部12の裏面に対し、略直交する軸を介して回転自在に支持される。そして、この基節部Sは、被接続部14の付け根側に支持された駆動源52の動力によって内外転する。この駆動源52は、前記駆動源51と同構成のサーボモータである。
【0032】
第一の節部S1は、基節部Sの先端側を支点にして、前記内外転に対し略直交して回動(屈伸運動)するように支持される。
この第一の節部S1を屈伸運動させる駆動源53は、基節部Sの指先側に内在する電動のサーボモータであり、例えば、駆動源51,52と同構成のものを用いればよい。
【0033】
また、第二の節部S2と第三の節部S3は、後述するリンク機構を介して駆動源53から伝達される動力によって屈伸運動する。
【0034】
前記リンク機構について詳細に説明すれば、駆動源53の出力軸には、第一の節部S1が回転自在に枢支されるとともに、第一の作動リンクR1の基端側が、駆動源53の出力軸に対して回転不能に接続されている(
図4(a)参照)。
第一の作動リンクR1は、第一の節部S1の延設方向に対する交差方向へ延設され、その延設方向の端部側(回動端側)には、第二の作動リンクR2の基端側が回転自在に枢支される。
第二の作動リンクR2は、第一の節部S1に沿う略平行リンク状に指先側へ延設される。
【0035】
また、第二の節部S2の指元側は、第一の節部S1の指先側に回転自在に枢支されるとともに、その枢支部分P1から径方向へ離れた位置P2にて、第二の作動リンクR2の指先側に回転自在に枢支されている。
【0036】
さらに、第一の節部S1の指先側には、第二の節部S2の枢支部分P1から径方向へ離れ且つ第二の作動リンクR2側に対し逆側となる位置P3に、第三の作動リンクR3の基端側が回転自在に枢支される。
第三の作動リンクR3は、第二の節部S2に対し側面視交差状に延設され、その指先側を第三の節部S3に対し回転自在に枢支することで、第二の節部S2における枢支部分P1を中心とした回動に伴って、第三の節部S3が同回転方向へ回動するようにしている。
【0037】
また、第一の節部S1と第二の節部S2の間には、これら二つの節部を吸引又は吸着して初期位置に保持する二つのマグネットM1,M2と、前記初期位置にて当接し合い、第二の節部S2の屈曲に伴って離間する当接面S1aと被当接面S2aが設けられる。
【0038】
当接面S1aは、第一の節部S1の指先側に設けられた段部の前端面であり、平坦状に形成される。
被当接面S2aは、第二の節部S2の指元側に位置する平坦状の面であり、前記初期位置(
図4(a)参照)にて、当接面S1aと重なり合う。
【0039】
また、第一の節部S1における当接面S1aよりも指先側の部分と、第二の節部S2の指元側の一部分は、側面同士で重なり合っており、二つのマグネットM1,M2は、この重なり合う側面同士を吸引するように設けられる(
図4参照)。
すなわち、一方のマグネットM1は、第一の節部S1における当接面S1aよりも指先側において、第二の節部S2の指元側の側面に対向するようにして、第一の節部S1に埋め込まれている。
また、他方のマグネットM2は、第二の節部S2の指元側において、マグネットM1と磁極(N極又はS極)を対向させるようにして、第二の節部S2に埋め込まれている。
【0040】
二つのマグネットM1,M2は、
図4(a)に示す初期位置にて、完全に重なり合わずに、マグネットM1に対し、マグネットM2が第二の節部S2の屈曲回転方向(
図4(a)によればP1を中心とした反時計方向)へ若干ずれている。この構成によって、第二の節部S2が、初期位置にて、伸展回転方向(
図4(a)によればP1を中心とした時計方向)へ吸引されるようにしている。
これらマグネットM1,M2同士の吸引力は、第一及び第二の作動リンクR1,R2により駆動源52から伝達される第二の節部S2の回転力よりも小さくなるように設定される。
【0041】
なお、前記した各節部及び各作動リンクは、図示例のように、幅方向において、単数、又は平行に複数用いられる。この数は、強度や動作性等を考慮して適宜に設定される。
また、図中符号cは、各節部の手の甲側や各駆動源等を覆うカバー部材である。符号qは、弾性合成樹脂材料からなる滑止部材である。これらカバー部材cと滑止部材qは、一体の部材としてもよいし、複数の部材から構成してもよい。
【0042】
また、第三の指部40は、第二の指部30と略同様にして、基節部S、第一の節部S1、第二の節部S2、第三の節部S3、基節部Sを内外転させる駆動源54、第一の節部S1を屈曲させる駆動源55、第一の作動リンクR1、第二の作動リンクR2、第三の作動リンクR3、マグネットM1,M2等を具備している(
図2及び
図3参照)。
【0043】
上記構成のロボットハンド1は、各指部の一部又は全部が着脱可能に装着されている。
すなわち、本実施の形態の好ましい一例によれば、第一の指部20、第二の指部30及び第三の指部40は、それぞれ、ねじ止めや嵌合等により、掌部10に対し着脱や交換が可能なように接続されている。
また、第三の節部24や、第三の節部S3、滑止部材q等、指部の一部分も、ねじ止めや嵌合等により、着脱や交換が可能なように装着されている。
【0044】
次に上記構成のロボットハンド1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図4~
図5は、ロボットハンド1における第二の指部30を、なじみ把持動作させた状態を示している。なお、第三の指部40のなじみ把持動作についても同様である。
【0045】
まず、駆動源53への電源供給により、駆動源53の出力軸を屈曲回転方向へ回転させると、前記出力軸に固定された第一の作動リンクR1が同回転方向へ一体的に回動する(
図4(a)(b)参照)。
この回動中、第一の節部S1と第二の節部S2の間(関節部分)は、マグネットM1,M2によって吸引されているため屈曲しない。
【0046】
駆動源53の動力による前記回動中、第一の節部S1(詳細には滑止部材q)がワークWに当接し、第一の節部S1の回動が拘束されると、第二の節部S2が、同駆動源53の動力により同回転方向へ屈曲する。
詳細に説明すれば、第一の節部S1がワークWとの当接により拘束されると(
図4(b)参照)、第二の節部S2には、第一及び第二の作動リンクR1,R2によって伝達される駆動源53の動力によって、同回転方向(
図4によれば反時計方向)への回転力が作用する。この回転力は、二つのマグネットM1,M2の吸引力に対抗するように作用し、これらマグネットM1,M2同士の吸引力よりも大きい。
したがって、第二の節部S2は、初期位置から屈曲するように回動して、二つのマグネットM1,M2を引き離し、これらマグネットM1,M2による吸引力から解放される(
図5(c)参照)。
【0047】
次に、駆動源53の出力軸の回転が継続して、第二の節部S2が回転を続けると、
図5(c)(d)に示すように、第三の作動リンクR3の作用により、第三の節部S3が同回転方向へ回転し、その先端部分(指先)をワークWに押し付ける。
【0048】
また、上記のようにして第二の指部30をワークWに接触させた状態から、この第二の指部30を伸展動作する際には、駆動源53を逆転させて、第一~第三の節部S1,S2,S3及び第一~第三の作動リンクR1,R2,R3を前記と逆方向へ動作させればよく、この動作により、二つのマグネットM1,M2が吸引し合い、初期位置(
図4(a)参照)に戻る。
【0049】
また、第一の指部20、第二の指部30及び第三の指部40を内外転させるには、対応する指元側の駆動源51,52又は54を、通電して所望とする方向へ回転させればよい。
【0050】
第一の指部20の屈伸運動は、第二の指部30及び第三の指部40とは異なる。第一の指部20は、関節毎の駆動源(図示せず)への通電によって、その通電された駆動源に対応する関節を屈伸運動させる。
【0051】
本実施の形態のロボットハンド1では、上述した複数の駆動源を適宜に制御することで、
図6~
図11に例示する様々な動きが可能である。
図6は、三本の指部20,30,40を正面視T字状に配置し、第二の指部30と第三の指部40を伸展し、第一の指部20を掌側へ傾斜させた状態を示す。
【0052】
図7は、三本の指部20,30,40を正面視Y字状に配置し、第二の指部30と第三の指部40を屈曲し、第一の指部20を掌側へ傾斜させた状態を示す。
【0053】
図8は、第二の指部30と第三の指部40を略平行に屈曲し、第一の指部20を内転(又は外転)させて、第一の指部20の各関節を屈曲させた状態を示す。
【0054】
図9は、コンピュータ用のマウスなどの把持を想定し、三本の指部20,30,40を適宜に内外転及び屈曲させて、平面と曲面で構成される把持対象物Cを把持した状態を示す。
【0055】
図10は、筆記具などの把持を想定し、三本の指部20,30,40を適宜に内外転及び屈曲させて、円筒棒状の把持対象物Bを把持した状態を示す。この把持状態では、第一の指部20の3つの関節をそれぞれ適切な角度に設定することで第三の節部24の姿勢および指先と掌との距離を制御し、把持対象物Bの円筒状外周面に対し、第三の節部24の接触面および相対する指先で確実に挟み込みむことで、三本の指部20,30,40の接触個所が滑らないようにしている。
【0056】
図11は、三本の指部20,30,40を適宜に内外転及び屈曲させてシリンジ(注射器)Sを操作している状態を示す。シリンジSは、筒部Scと、先端が筒部Sc内に伸びる押し子Spとで構成されている。詳細に説明すれば、ロボットハンド1は、第二の指部30及び第三の指部40と掌部10とにより筒部Scを把持しながら、第一の指部20の第三の節部24から力Fにより、押し子Spの後端を押動している。特に、第一の指部20の基節部21を掌側へ傾斜させた構成が、このような動作を容易にしている。
【0057】
よって、ロボットハンド1によれば、第一の節部S1に対し第二の節部S2が屈曲方向へ回動した際、その回動がある程度進行すると、二つのマグネットM1,M2間の吸引力が作用しなくなる。このため、各指部の屈曲運動時の負荷を軽減することができ、駆動源の省電力化や、駆動源及び各部の小型軽量化等が可能になる。
【0058】
しかも、ロボットハンド1によれば、各指部をなじみ把持動作させたり、複数の指部をそれぞれ独立して複雑な動作をさせるなどして、把持対象物(ワーク)を確実に把持することができる上、様々な器用な動作が可能であり、例えば協働用ロボットとして必要とされる多種多様なタスクをこなすことができる。
【0059】
また、ロボットハンド1は、上記動作中に、各指部と物体との意図しない接触等により、各指部の駆動源が過剰な負荷を受けた場合でも、各駆動源に具備されるクラッチ機構により出力側を切断することができ、この結果、ワークWに対する把持力が強すぎてワークを破損や変形等したり、各指部や駆動源が過剰な負荷により破損したり等するのを防ぎ、屈伸運動及び内外転運動の際の安全性を確保することができる。この結果、ワークに対して意図しない力が加わってワークを破損や変形等したり、各指部や駆動源内蔵のモータが過剰な負荷により破損したり等するのを防ぐ。また、万が一、ロボットハンド1の指部が、作業中に意図しないかたちで人と接触した場合にも、クラッチ機構が働くことで、人にケガをさせないなど安全面にも優れている。
【0060】
また、ロボットハンド1によれば、各指部20,30,40を掌部10に対し着脱したり、各指部20,30,40の一部を着脱したりすることが可能である。このため、メンテナンス性が良好な上、タスクに応じて指部又は指部の一部を、形状や大きさ、弾性等の異なるものに交換することが可能である。
【0061】
なお、上記実施態様によれば、掌部10をT字平板状に形成したが、この掌部10の他例としては、Y字平板状や、円形平板状、矩形平板状、ブロック状等、図示例以外の態様とすることが可能である。
【0062】
また、上記実施態様によれば、指部の数を三本としたが、他例としては、指部の数を二本や、四本以上とすることも可能である。また、各指部の節部の数も、図示例以外の複数の数とすることが可能である。
【0063】
また、上記実施態様によれば、二つのマグネットM1,M2を設けるようにしたが、他例としては、一方のマグネットに置換して磁性体を設けた態様としてもよい。すなわち、この他例では、第一の節部S1と第二の節部S2のうち、その一方にマグネットを固定し、他方には初期位置にて前記マグネットに吸引されるように磁性材を固定する。
【0064】
また、上記実施態様では、特に好ましい一例として、第一の節部S1と第二の節部S2の側面に対向するようにマグネットM1,M2を固定したが、他例としては、第一の節部S1の当接面S1aと、第二の節部S2の被当接面S2aに、それぞれ、対向するようにマグネットM1,M2を固定することも可能である。
【0065】
また、上記実施態様では、掌部10に対し基節部21を介することで間接的に第一の節部22を屈伸可能に枢支したが、他例としては、掌部10に対し直接的に第一の節部22を屈伸可能に枢支することも可能である。
同様に、上記実施態様では、掌部10に対し基節部Sを介することで間接的に第一の節部S1を屈伸可能に枢支したが、他例としては、掌部10に対し直接的に第一の節部S1を屈伸可能に枢支することも可能である。
【0066】
また、上記実施態様は、隣接する節部間の引張りバネ(コイルスプリング等)を不要にしているが、バックラッシュ軽減等のために、適宜箇所に引張りバネを設けることも可能である。
【0067】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:ロボットハンド
10:掌部
20:第一の指部
21:基節部
22:第一の節部
23:第二の節部
24:第三の節部
30:第二の指部
40:第三の指部
51,52,53,54,55:駆動源
S:基節部
S1:第一の節部
S1a:当接面
S2:第二の節部
S2a:被当接面
S3:第三の節部
R1:第一の作動リンク
R2:第二の作動リンク
R3:第三の作動リンク
M1,M2:マグネット
W:ワーク