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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】長葱の切断処理機
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/04 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
A23N15/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023021928
(22)【出願日】2023-02-15
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2022073084
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188940
【氏名又は名称】株式会社マツモト
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 穣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 心悟
(72)【発明者】
【氏名】関根 竜一
(72)【発明者】
【氏名】小暮 匠
(72)【発明者】
【氏名】富田 明宏
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-230206(JP,A)
【文献】特開平11-075801(JP,A)
【文献】特開2000-217562(JP,A)
【文献】特開2004-081030(JP,A)
【文献】特開平07-107953(JP,A)
【文献】特開2009-125819(JP,A)
【文献】特開2001-218572(JP,A)
【文献】特開2000-037180(JP,A)
【文献】特開2005-341851(JP,A)
【文献】特開2002-355021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 15/04、15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の長葱を、前記長葱の長手方向に交差する方向に向けて搬送する搬送装置と、
前記長葱の根部を検出するセンサと、
前記センサよりも搬送方向の下流側で前記長葱の根部を切断する切断刃を有する切断装置と、
前記切断刃を前記長葱の軸方向に移動させて、前記長葱の切断位置を変更する切断位置変更装置と、
前記切断位置変更装置による前記切断刃の移動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記センサによる検出結果に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出する太さ検出手段と、
前記長葱の根部の太さに応じて、前記切断刃を移動させる移動指示手段と、
を備えており、
前記センサと前記切断装置との間には、ガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、上下方向の軸回りに外周面が形成されたローラであり、
前記長葱の根側の端面が前記ローラの外周面に当接して、前記長葱が葉側に押し出されることで、前記長葱の根部が基準位置に配置されるように構成されていることを特徴とする長葱の切断処理機。
【請求項2】
請求項1に記載の長葱の切断処理機であって、
前記センサは、前記長葱の根部を検出する光センサであり、
前記太さ検出手段は、前記センサが前記長葱の根部を検出していた時間に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出することを特徴とする長葱の切断処理機。
【請求項3】
請求項1に記載の長葱の切断処理機であって、
前記センサは、前記長葱の根部を撮影するカメラであり、
前記太さ検出手段は、前記センサが撮影した前記長葱の根部の画像に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出することを特徴とする長葱の切断処理機。
【請求項4】
請求項1に記載の長葱の切断処理機であって、
前記センサから搬送方向の上流側には、前記長葱に対して根側に向けて空気を吹き付ける噴出ノズルが設けられていることを特徴とする長葱の切断処理機。
【請求項5】
請求項1に記載の長葱の切断処理機であって、
前記センサよりも搬送方向の上流側には、基準位置が示されているマーカー部材が設けられており、
前記基準位置に前記長葱の根部を載置可能であり、
前記移動指示手段は、前記基準位置と前記切断刃との位置関係に基づいて、前記切断刃の移動量を定めていることを特徴とする長葱の切断処理機。
【請求項6】
請求項1に記載の長葱の切断処理機であって、
前記センサよりも搬送方向の上流側には、前記長葱の根側の端面を当接させる当て板が設けられていることを特徴とする長葱の切断処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長葱の根部の切断処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
長葱の根部の切断処理機としては、
長葱を搬送するバケットを有する搬送装置と、切断刃を有する切断装置と、切断刃の位置に合わせて搬送方向にレーザー光線を発振する発振器と、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
前記した切断処理機では、長葱をバケットに載せるときに、長葱の根部の切断位置をレーザー光線に合わせることで、長葱の根部を所望の位置で切断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3477634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長葱の根部を切断するときには、根部の太さに応じて、根部の切断位置を調整する必要がある。前記した従来の切断処理機では、作業者が長葱の根部の太さを目視して、根部の切断位置を判断し、バケットに載せた長葱の根部の切断位置にレーザー光線が当たるように、長葱の位置を手作業で調整しているため、作業が煩雑になる。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、長葱の根部を自動的に適切な位置で切断できる切断処理機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、長葱の切断処理機であって、処理対象の長葱を、前記長葱の長手方向に交差する方向に向けて搬送する搬送装置と、前記長葱の根部を検出するセンサと、前記センサよりも搬送方向の下流側で前記長葱の根部を切断する切断刃を有する切断装置と、前記切断刃を前記長葱の軸方向に移動させて、前記長葱の切断位置を変更する切断位置変更装置と、前記切断位置変更装置による前記切断刃の移動を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記センサによる検出結果に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出する太さ検出手段と、前記長葱の根部の太さに応じて、前記切断刃を移動させる移動指示手段と、を備えている。前記センサと前記切断装置との間にガイド部材が設けられている。前記ガイド部材は、上下方向の軸回りに外周面が形成されたローラである。前記長葱の根側の端面が前記ローラの外周面に当接して、前記長葱が葉側に押し出されることで、前記長葱の根部が基準位置に配置されるように構成されている。
【0007】
本発明の切断処理機では、長葱の根部をセンサによって検出し、その検出結果に応じて、制御装置が切断刃を移動させて、長葱の根部を適切な位置で切断する。そのため、作業者が長葱の根部の太さを判断して、長葱の位置を調整しなくても、長葱の根部を自動的に適切な位置で切断できる。
なお、制御装置には、長葱の根部の太さごとに、長葱の根部の切断位置を予め記憶させておくことで、処理対象の長葱に適した切断位置に切断刃を移動させることができる。
また、切断装置よりも搬送方向の上流側で長葱の根部が基準位置に配置されるため、長葱の根部の太さごとに、基準位置に対する切断刃の移動量を設定しておくことで、制御装置が切断刃の移動を制御し易い。また、ガイド部材は、上下方向の軸回りに外周面が形成されたローラであり、長葱の根側の端面がローラの外周面に当接するため、長葱の根部をスムーズに基準位置に移動させることができる。
【0008】
前記した長葱の切断処理機であって、前記センサは、前記長葱の根部を検出する光センサであり、前記太さ検出手段は、前記センサが前記長葱の根部を検出していた時間に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出するように構成することができる。このようにすると、簡単な構成で長葱の根部の太さを検出できる。
【0009】
前記した長葱の切断処理機において、前記センサは、前記長葱の根部を撮影するカメラであり、前記太さ検出手段は、前記センサが撮影した前記長葱の根部の画像に基づいて、前記長葱の根部の太さを検出するように構成することができる。このようにすると、長葱の根部の太さを検出するための部品点数を低減できる。
【0010】
前記した長葱の切断処理機において、前記センサから搬送方向の上流側には、前記長葱に対して根側に向けて空気を吹き付ける噴出ノズルが設けられていることが好ましい。
センサによって長葱の根部の太さを検出するときに、根部の表面に根毛や汚れが付着していると、根部の太さを正確に検出することができない。前記した構成では、センサによって根部の太さを検出する前に、根部の表面に付着した根や汚れを空気によって取り除くことができるため、センサによって根部の太さを正確に検出できる。
【0011】
前記した長葱の切断処理機において、前記センサよりも搬送方向の上流側には、基準位置が示されているマーカー部材を設け、前記基準位置に前記長葱の根部を載置可能であるように構成し、前記移動指示手段は、前記基準位置と前記根部切断刃との位置関係に基づいて、根部切断刃の移動量を定めるように構成することが好ましい。
この構成では、切断装置よりも搬送方向の上流側で長葱の根部が基準位置に配置されるため、長葱の根部の太さごとに、基準位置に対する切断刃の移動量を設定しておくことで、制御装置が切断刃の移動を制御し易い。
さらに、長葱の根部を基準位置に載置する際に、長葱の葉鞘部(白い部分)と根との境界を基準位置に合わせることで、長葱の根部を適切な位置で切断することができる。
【0012】
前記した長葱の切断処理機において、前記センサよりも搬送方向の上流側には、前記長葱の根側の端面を当接させる当て板を設けてもよい。この構成では、長葱の根側の端面を当て板に当接させた状態で長葱を搬送装置に載せたときに、長葱の根部がセンサを通過するように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の長葱の切断処理機では、長葱を搬送装置に載せるだけで、長葱の根部の太さに応じて、長葱の根部が自動的に適切な位置で切断されるため、長葱の根部の切断処理の精度および効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る切断処理機を示した平面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る切断処理機を示した側面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る切断処理機による根部の切断処理を示した平面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る切断処理機の噴出ノズルおよび光センサを示した側面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る切断処理機を示した構成図である。
図6】本発明の参考例に係る切断処理機による根部の切断処理を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0018】
[第一実施形態]
第一実施形態の切断処理機1Aは、図2に示すように、ベース架台10と、長葱Nを搬送する搬送装置20と、根部切断刃31を有する根部切断装置30と、葉部切断刃41を有する葉部切断装置40と、を備えている。ベース架台10は、複数の脚部11を有する枠体である。
【0019】
また、第一実施形態の切断処理機1Aは、長葱Nを検出するセンサ50と、長葱Nの根側に向けて空気を吹き付ける噴出ノズル60と、を備えている。
また、第一実施形態の切断処理機1Aは、センサ50よりも搬送方向Xの下流側に設けられた当て板70と、センサ50と根部切断装置30との間に配置されたガイド部材75と、を備えている。
さらに、第一実施形態の切断処理機1Aは、図5に示すように、根部切断刃31を移動させて、長葱Nの切断位置を変更する切断位置変更装置80と、切断位置変更装置80による根部切断刃31の移動を制御する制御装置100と、を備えている。
【0020】
搬送装置20は、図2に示すように、ベース架台10の上面で複数のバケット21を搬送方向Xに移動させるものである。なお、以下の説明において、上流および下流とは、搬送方向Xにおける上流および下流を意味している。
バケット21は、軸断面がV字形状で上方が開口された容器である。図1に示すように、バケット21の長手方向は搬送方向Xに直交している。一体のバケット21に一本の長葱Nを載せるように構成されている。バケット21に載置された長葱Nは、長手方向が搬送方向Xに直交する方向に向けられ、バケット21の根側(図1の下側)から根部N1が突出し、バケット21の葉側(図1の上側)から葉部N2が突出した状態となる。
【0021】
搬送装置20では、軸方向が搬送方向Xに直交して配置された二本の回転軸22,22が、ベース架台10の上流側および下流側にそれぞれ取り付けられている。各回転軸22,22の両端部は軸回りに回転自在な状態でベース架台10に取り付けられている。
図2に示すように、上流側の回転軸22に取り付けられたスプロケットと、下流側の回転軸22に取り付けられたスプロケットには、無端チェーン23が掛け渡されており、ベース架台10に設けられた搬送用モータ(図示せず)によって、回転軸22を回転させることで、無端チェーン23が図2の左回りに回転するように構成されている。
【0022】
無端チェーン23の外周側には、複数のバケット21の下面が所定間隔ごとに取り付けられている。
無端チェーン23を図2の左回りに回転させたときには、各バケット21は、ベース架台10の上面で上流側から下流側に向けて移動し、下流側の回転軸22周りに折り返して、ベース架台10の下部で下流側から上流側に向けて移動する。その後、各バケット21は、上流側の回転軸22周りに折り返して、再度ベース架台10の上面で上流側から下流側に向けて移動する。
【0023】
根部切断装置30は、ベース架台10の下流側で長葱Nの根側となる位置に取り付けられている。根部切断装置30は、図1に示すように、ベース架台10の上面に取り付けられた駆動モータ32と、駆動モータ32の回転軸の先端部に固定された円板状の根部切断刃31と、を備えている。
駆動モータ32の回転軸の軸方向は、搬送方向Xに直交した方向に配置されている。根部切断刃31は駆動モータ32の回転軸に連動して回転する。搬送方向Xに移動する長葱Nが根部切断装置30を通過することで、根部切断刃31によって長葱Nの根部N1が切断される。
【0024】
切断位置変更装置80は、図示しないモータによって駆動モータ32を搬送方向Xに直交する方向(長葱Nの長手方向)に進退させるものであり、図4に示すように、駆動モータ32とベース架台10の上面との間に介設されている。切断位置変更装置80による根部切断刃31の移動は、後記する制御装置100(図5参照)によって制御されている。
切断位置変更装置80によって、駆動モータ32を長葱Nの長手方向に進退させることで、根部切断刃31も長葱Nの長手方向に進退するため、長葱Nの切断位置を変更することができる。
【0025】
ベース架台10において、図2に示すように、根部切断装置30に対応する位置には、長葱Nの根部N1をバケット21に押さえ付けるための根部押さえ部材35が設けられている。根部押さえ部材35は、上下方向に傾動自在なアーム36の先端部に、スポンジ状のローラ37が取り付けられている。そして、ローラ37の外周面によって長葱Nの根部N1をバケット21に押し付けるように構成されている。
【0026】
葉部切断装置40は、ベース架台10の下流側で長葱Nの葉側となる位置に取り付けられている。図1に示すように、葉部切断装置40は、ベース架台10の上面に取り付けられた駆動モータ42と、駆動モータ42の回転軸の先端部に固定された円板状の葉部切断刃41と、を備えている。
駆動モータ42の回転軸の軸方向は、搬送方向Xに直交した方向に配置されている。葉部切断刃41は駆動モータ42の回転軸に連動して回転する。搬送方向Xに移動する長葱Nが葉部切断装置40を通過することで、葉部切断刃41によって長葱Nの葉部N2が切断される。
【0027】
ベース架台10において、葉部切断装置40に対応する位置には、長葱Nの葉部N2をバケット21に押さえ付けるための葉部押さえ部材45が設けられている。葉部押さえ部材45は、スポンジ状のローラ47を有しており、ローラ47の外周面によって長葱Nの葉部N2をバケット21に押し付けるように構成されている。
【0028】
ベース架台10において、根部切断装置30よりも搬送方向Xの上流側には、図3に示すように、バケット21に載置された長葱Nの根部N1を検出するセンサ50が設けられている。
本実施形態のセンサ50は、二つの光センサ51,51によって構成されている。両光センサ51,51は、図4に示すように、ベース架台10の上面に立設されたブラケット52の上部に取り付けられている。光センサ51は、バケット21に載置された長葱Nの根部N1の直上に配置されるように、ブラケット52によって支持されている。
【0029】
光センサ51は、下方に向けて光を照射しており、その照射領域に長葱Nの根部N1が配置されたときに、根部N1からの反射光を検出するように構成されている。つまり、光センサ51は、長葱Nの根部N1を検出するように構成されている。センサ50による検出結果は、後記する制御装置100(図5参照)に入力される。
本実施形態では、二つの光センサ51,51を長葱Nの長手方向にずらして配置することで、センサ50による長葱Nの根部N1の検出範囲を広くしている。
【0030】
ブラケット52において、センサ50よりも長葱Nの葉側には、噴出ノズル60が取り付けられている。
噴出ノズル60は、センサ50の照射領域に配置された長葱Nの上方に配置されるように、ブラケット52によって支持されている。噴出ノズル60には、図示しないコンプレッサから延びているホース62が接続されており、コンプレッサから供給された圧縮空気を噴出口61から噴出するように構成されている。
噴出ノズル60は、センサ50の照射領域に長葱Nが近づいたことを、図示しないセンサが検出すると、長葱Nの根側に向けて圧縮空気を吹き付ける。
なお、本実施形態では噴出ノズル60が、センサ50に対応する位置に配置されているが、噴出ノズル60をセンサ50よりも上流側に配置してもよい。
【0031】
当て板70は、図2に示すように、ベース架台10において、センサ50および噴出ノズル60の上流側で、長葱Nの根側となる位置に取り付けられている。当て板70は、ベース架台10の上面に対して垂直に立ち上げられている平板からなる。図1に示すように、当て板70の平面71はバケット21側に向けられている。
【0032】
長葱Nをバケット21に載せるときに、長葱Nの根側の端面を当て板70の平面71に当接させると、バケット21を搬送方向Xに移動させたときに、長葱Nの根部N1がセンサ50による照射領域を通過するようになる。
【0033】
ガイド部材75は、ベース架台10において、センサ50と根部切断装置30との間で、長葱Nの根側となる位置に取り付けられている。
本実施形態のガイド部材75は、二つの第一ローラ76および第二ローラ77によって構成されている。第一ローラ76および第二ローラ77は、上下方向の軸回りに外周面が形成された樹脂製のローラである。第一ローラ76および第二ローラ77は同じ外径に形成されている。第一ローラ76および第二ローラ77は、ベース架台10の上面に垂直に立設された軸部材の軸回りに回転自在である。
本実施形態では、第一ローラ76と第二ローラ77とが搬送方向Xに並設されており、第一ローラ76の下流側に第二ローラ77が配置されている。図3に示すように、第二ローラ77の回転中心は、第一ローラ76の回転中心よりもバケット21側(長葱Nの葉側)に配置されている。
【0034】
ガイド部材75に対して上流側から移動してきた長葱Nの根側の端面が、第一ローラ76の外周面および第二ローラ77の外周面に順次に当接する。これにより、長葱Nが葉側に押し出され、長葱Nの根側の端面が基準位置L1に配置される。
【0035】
制御装置100は、図5に示すように、切断位置変更装置80による根部切断刃31の移動を制御するものである。制御装置100は、CPU、RAM、ROM、ディスプレイなどを備えているコンピュータであり、制御装置100の各手段は、ROMなどに記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
【0036】
制御装置100は、センサ50からの検出結果に基づいて、長葱Nの根部N1の太さを検出する太さ検出手段110と、長葱Nの根部N1の太さに応じて、根部切断刃31を移動させる移動指示手段120と、記憶部130と、を備えている。
記憶部130には、長葱Nの根部N1の太さごとに、長葱Nの根部N1の切断に適した切断位置が記憶されている。切断位置は、基準位置L1に対する相対的な間隔によって定められている。
【0037】
太さ検出手段110では、センサ50が長葱Nの根部N1を検出していた時間に基づいて、長葱Nの根部N1の太さを検出している。つまり、センサ50が長葱Nの根部N1を検出している時間が長いほど、長葱Nの根部N1が太いことになる。
【0038】
移動指示手段120では、記憶部130のデータに基づいて、処理対象の長葱Nの根部N1の太さに応じて、根部切断刃31を処理対象の長葱Nの根部N1の切断に適した切断位置に移動させている。このとき、移動指示手段120では、基準位置L1と根部切断刃31との位置関係に基づいて、根部切断刃31の移動量を定めている。
【0039】
次に、第一実施形態の切断処理機1Aを用いた長葱Nの切断処理について説明する。
まず、図1および図2に示す切断処理機1の搬送装置20を起動させ、ベース架台10の上面に配置された各バケット21を下流側に移動させる。そして、順次に上流のバケット21に長葱Nを載せる。なお、長葱Nをバケット21に載せるときには、図3に示すように、長葱Nの根側の端面を当て板70に当接させる。
【0040】
バケット21に載置されて搬送方向Xに移動した長葱Nがセンサ50の照射領域に近づくと、図4に示すように、噴出ノズル60から長葱Nの根側に向けて圧縮空気が吹き付けられる。これにより、長葱Nの根部N1の表面に付着した根毛や汚れが圧縮空気によって取り除かれる。
【0041】
長葱Nがセンサ50の照射領域に達すると、センサ50によって長葱Nの根部N1が検出される。そして、図5に示す制御装置100の太さ検出手段110では、センサ50が長葱Nの根部N1を検出していた時間に基づいて、長葱Nの根部N1の太さを検出する。
このとき、長葱Nの根部N1の表面に付着した根や汚れは、図4に示す噴出ノズル60からの圧縮空気によって取り除かれているため、センサ50によって根部N1の太さを正確に検出できる。
【0042】
さらに、図5に示す制御装置100の移動指示手段120では、記憶部130のデータに基づいて、処理対象の長葱Nの根部N1の太さに応じて、根部切断刃31を処理対象の長葱Nの根部N1の切断に適した切断位置に移動させる。
【0043】
図3に示すように、センサ50の照射領域を通過した長葱Nは、長葱Nの根側の端面がガイド部材75の第一ローラ76および第二ローラ77に順次に当接して、長葱Nが葉側に押し出される。このようにして、長葱Nの根部N1がスムーズに基準位置L1に移動する。
【0044】
そして、長葱Nが根部切断装置30に達すると、根部切断刃31によって、長葱Nの根部N1が切断される。このとき、長葱Nの根部N1は、根部押さえ部材35のローラ37によってバケット21に押し付けられているため、根部切断刃31によって、根部N1を所定の位置で綺麗に切断できる。
【0045】
さらに、図1に示すように、長葱Nが葉部切断装置40に達すると、葉部切断刃41によって、長葱Nの葉部N2が切断される。このとき、長葱Nの葉部N2は、葉部押さえ部材45のローラ47によってバケット21に押し付けられているため、葉部切断刃41によって、葉部N2を所定の位置で綺麗に切断できる。
【0046】
以上のような第一実施形態の切断処理機1Aでは、図4に示すように、長葱Nの根部N1の太さをセンサ50によって検出し、その検出結果に応じて、根部切断刃31を移動させて、根部N1を適切な位置で切断する。このように、本実施形態の切断処理機1では、長葱Nを搬送装置20のバケット21に載せるだけで、長葱Nの根部N1の太さに応じて、根部N1が自動的に適切な位置で切断されるため、長葱Nの切断処理の精度および効率を高めることができる。
【0047】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、長葱Nの搬送方向において、図1に示す葉部切断装置40よりも下流側に、長葱Nの表面に圧縮空気を吹き付けて、長葱Nの表皮を剥ぎ取る皮剥ぎ処理機を設けることもできる。この構成では、長葱Nの根部N1および葉部N2を切断した後に、連続して長葱Nから古い皮や汚れを取り除くことができるため、長葱Nの加工処理の効率を高めることができる。
【0048】
第一実施形態の切断処理機1Aでは、図3に示すように、二つの第一ローラ76および第二ローラ77を有するガイド部材75によって、長葱Nを葉側に押し出しているが、本発明の参考例としては、例えば、平板状のガイド部材を用いてもよい。または、シリンダ機構を用いて、長葱Nを葉側に押し出してもよい。
【0049】
また、図4に示す噴出ノズル60の数や配置は限定されるものではなく、長葱Nの検出精度を考慮して適宜に設定されるものである。
【0050】
第一実施形態の切断処理機1Aでは、光センサ51を用いたセンサ50によって長葱Nの根部N1を検出し、その検出結果に基づいて、長葱Nの根部N1の太さを検出しているが、センサの構成は光センサに限定されるものではない。例えば、レーザー変位計や画像処理によって長葱Nの太さを検出することもできる。
【0051】
長葱Nの根部N1を撮影するカメラをセンサとした場合には、カメラからの画像を制御装置が解析することで、長葱Nの根部N1の太さを検出するとともに、切断位置を設置するときの基準となる長葱の葉鞘部(白い部分)と根との境界を検出する。そして、これらの情報に基づいて、制御装置が根部切断刃31を移動させることで、根部N1を適切な位置で切断することができる。
なお、制御装置に、カメラで撮影された根部N1の画像を入力すると根部N1の切断位置に対応する値を出力するように機械学習された学習器(学習済みモデル)を搭載してもよい。また、制御装置に、カメラで撮影された根部N1の画像と根部N1の切断位置とを学習データとして取得する機能と、根部N1の画像を入力すると根部N1の切断位置に対応する値を出力するように学習器の機械学習を行う機能とを搭載してもよい。
これらの構成では、作業者が長葱Nを所定の位置に合わせてバケット21に載置する必要がなくなるため、作業効率を高めることができる。
【0052】
参考例
次に、参考例の切断処理機1Bについて説明する。参考例の切断処理機1Bは、図6に示すように、長葱Nの根部N1を基準位置L1に配置する構成が第一実施形態の切断処理機1A(図3参照)と異なる。
なお、参考例の切断処理機1Bには、図3に示す第一実施形態の切断処理機1Aにおける当て板70およびガイド部材75が設けられていない。
【0053】
参考例の切断処理機1Bでは、図6に示すように、長葱Nの根部N1を基準位置L1に配置するためのマーカー部材90が、センサ50よりも搬送方向Xの上流側に設けられている。
マーカー部材90は、ベース架台10において、センサ50および噴出ノズル60の上流側で、長葱Nの根側となる位置に取り付けられている。マーカー部材90は、ベース架台10の上面に対して垂直に立ち上げられている平板からなる。マーカー部材90の上縁部は、バケット21の搬送方向Xに平行して配置されている。マーカー部材90の上縁部
は、基準位置L1を示している。
【0054】
参考例の切断処理機1Bの切断処理において、長葱Nをバケット21に載せるときには、長葱Nの根部N1をマーカー部材90の基準位置L1(上縁部)に載置する。このとき、長葱Nの葉鞘部N3(白い部分)と根N4との境界を基準位置L1に合わせる。この構成では、長葱Nの葉鞘部N3の端部が正確に基準位置L1に配置されるため、長葱Nの根部N1を適切な位置で切断することができる。
【0055】
以上、本発明の参考例について説明したが、本発明は前記参考例に限定されることなく、前記第一実施形態と同様に、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A 切断処理機(第一実施形態)
1B 切断処理機(参考例
10 ベース架台
20 搬送装置
21 バケット
23 無端チェーン
30 根部切断装置
31 根部切断刃
32 駆動モータ
35 根部押さえ部材
37 ローラ
40 葉部切断装置
41 葉部切断刃
42 駆動モータ
45 葉部押さえ部材
47 ローラ
50 センサ
51 光センサ
52 ブラケット
60 噴出ノズル
61 噴出口
62 ホース
70 当て板
71 平面
75 ガイド部材
76 第一ローラ
77 第二ローラ
80 切断位置変更装置
90 マーカー部材
100 制御装置
110 太さ検出手段
120 移動指示手段
130 記憶部
N 長葱
N1 根部
N2 葉部
N3 葉鞘部
N4 根
【要約】
【課題】長葱の根部を自動的に適切な位置で切断できる切断処理機を提供する。
【解決手段】長葱Nを搬送する搬送装置20と、長葱Nの根部N1を検出するセンサ50と、センサ50の上流側で根部N1を切断する根部切断刃31を有する根部切断装置30と、根部切断刃31を移動させて、長葱Nの切断位置を変更する切断位置変更装置と、切断位置変更装置を制御する制御装置と、を備えている。制御装置は、センサ50による検出結果に基づいて、根部N1の太さを検出する太さ検出手段と、根部N1の太さに応じて、根部切断刃31を移動させる移動指示手段と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6