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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】建築図面作成支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230904BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20230904BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023110766
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323007537
【氏名又は名称】株式会社ガイア環境設計
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】河内 孝英
(72)【発明者】
【氏名】三上 維啓
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-110659(JP,A)
【文献】特開2019-215761(JP,A)
【文献】特開2004-139241(JP,A)
【文献】特開2015-162025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00-30/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上表に記載される仕上要素に関する仕上要素情報及び建築図面中の編集可能な編集要素に関する編集要素情報を取得する要素情報取得手段と、
仕上表に記載された仕上要素に関する情報及び当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素に関する適合要素情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した仕上要素情報及び編集要素情報から前記適合要素情報を推定する推定手段とを備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記推定手段で推定した適合要素情報に基づいて、前記要素情報取得手段で取得した編集要素情報に係る編集要素に関する情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項において、
前記学習済みモデルは、仕上表に記載された仕上要素に関する情報並びに当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素及びその内容に関する適合要素情報に基づいて学習を行ったものであり、
前記推定手段で推定した適合要素情報に基づいて、前記要素情報取得手段で取得した編集要素情報に係る編集要素を変更する変更手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項4】
建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、
建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及び当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素に関する関連要素情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記関連要素情報を推定する推定手段とを備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項6】
請求項4及び5のいずれか1項において、
前記学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、並びに当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報に基づいて学習を行ったものであり、
前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素を変更する変更手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項7】
建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、
建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及び当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記判断要否情報を推定する推定手段とを備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて、当該判断要否情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項9】
建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、
建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報、並びに当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記関連要素情報及び前記判断要否情報を推定する推定手段とを備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要すると判定した場合は、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【請求項11】
請求項9及び10のいずれか1項において、
前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要しないと判定した場合は、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素を変更する変更手段を備えることを特徴とする建築図面作成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築図面の作成を支援するシステムに係り、特に、建築図面中の編集可能な編集要素を仕上表の仕様に適合させるのに好適な建築図面作成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AI(Artificial Intelligence)を用いて建築図面の作成を支援する技術としては、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1記載の技術は、法令から数値に関連する法令判定要素を抽出し法令判定要素から構成される法令判定テーブルを、法令ごとに記憶するテーブル記憶部と、法令判定要素に代入可能な数値を含む代入要素を、初期間取データからAIを用いて抽出する代入要素抽出部と、代入要素抽出部が抽出した代入要素を、テーブル記憶部に記憶された法令判定テーブルに代入し、法令判定テーブルの条件を満足している場合に適正と判定し、満足していない場合に不適正と判定する適正判定部と、適正判定部による判定結果を記録し、判定結果を含む間取判定書を作成する判定結果作成部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-100026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建物の設計では、仕上表をもとに矩計図や平面詳細図を作成するが、矩計図に記載される寸法その他の仕様は、仕上表に記載のものと適合させなければならない。また、平面詳細図に記載されるタグは、仕上表に記載のものと適合させなければならない。これらの作業は設計者が仕上表を確認しながら行うため、ミスが生じやすい。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、建築図面中の編集可能な編集要素が建築関連の法令に適合している否かを判定することはできるが、編集要素を仕上表の仕様に適合させることはできない。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、建築図面中の編集可能な編集要素を仕上表の仕様に適合させるのに好適な建築図面作成支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の建築図面作成支援システムは、仕上表に記載される仕上要素に関する仕上要素情報及び建築図面中の編集可能な編集要素に関する編集要素情報を取得する要素情報取得手段と、仕上表に記載された仕上要素に関する情報及び当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素に関する適合要素情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した仕上要素情報及び編集要素情報から前記適合要素情報を推定する推定手段とを備える。
【0009】
ここで、仕上要素情報は、例えば、仕上要素を識別するための情報(例えば、名称、番号、ID、コード、URL等のリンク情報)として構成することができる。また、仕上要素情報は、例えば、文字、数字、図形、符合、記号、画像、音声その他の情報として構成することができる。また、仕上要素情報は、仕上要素に関するキーワード(例えば、仕上要素の名称の一部を示す1又は複数のキーワード)として構成することができる。以下、その他の要素情報についても同じである。
【0010】
また、要素情報取得手段は、例えば、入力装置等から要素情報を入力してもよいし、外部の端末等から要素情報を獲得又は受信してもよいし、記憶装置や記憶媒体等から要素情報を読み出してもよいし、情報処理等により要素情報を生成し又は算出してもよい。したがって、取得には、少なくとも入力、獲得、受信、読出(検索を含む。)、生成及び算出が含まれる。以下、取得の概念については同じである。
【0011】
また、本システムは、単一の装置、端末その他の機器として実現するようにしてもよいし、複数の装置、端末その他の機器を通信可能に接続したネットワークシステムとして実現するようにしてもよい。後者の場合、各構成要素は、それぞれ通信可能に接続されていれば、複数の機器等のうちいずれに属していてもよい。以下、発明4、7及び9の建築図面作成支援システムにおいて同じである。
【0012】
〔発明2〕 さらに、発明2の建築図面作成支援システムは、発明1の建築図面作成支援システムにおいて、前記推定手段で推定した適合要素情報に基づいて、前記要素情報取得手段で取得した編集要素情報に係る編集要素に関する情報を出力する出力手段とを備える。
【0013】
〔発明3〕 さらに、発明3の建築図面作成支援システムは、発明1及び2のいずれか1の建築図面作成支援システムにおいて、前記学習済みモデルは、仕上表に記載された仕上要素に関する情報並びに当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素及びその内容に関する適合要素情報に基づいて学習を行ったものであり、前記推定手段で推定した適合要素情報に基づいて、前記要素情報取得手段で取得した編集要素情報に係る編集要素を変更する変更手段を備える。
【0014】
〔発明4〕 さらに、発明4の建築図面作成支援システムは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及び当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素に関する関連要素情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記関連要素情報を推定する推定手段とを備える。
【0015】
〔発明5〕 さらに、発明5の建築図面作成支援システムは、発明4の建築図面作成支援システムにおいて、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備える。
【0016】
〔発明6〕 さらに、発明6の建築図面作成支援システムは、発明4及び5のいずれか1の建築図面作成支援システムにおいて、前記学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、並びに当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報に基づいて学習を行ったものであり、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素を変更する変更手段を備える。
【0017】
〔発明7〕 さらに、発明7の建築図面作成支援システムは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及び当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記判断要否情報を推定する推定手段とを備える。
【0018】
〔発明8〕 さらに、発明8の建築図面作成支援システムは、発明7の建築図面作成支援システムにおいて、前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて、当該判断要否情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する情報を出力する出力手段を備える。
【0019】
〔発明9〕 さらに、発明9の建築図面作成支援システムは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を取得する要素情報取得手段と、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、当該編集要素の変更に伴い変更すべき又は変更された他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報、並びに当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、前記要素情報取得手段で取得した変更要素情報から前記関連要素情報及び前記判断要否情報を推定する推定手段とを備える。
【0020】
〔発明10〕 さらに、発明10の建築図面作成支援システムは、発明9の建築図面作成支援システムにおいて、前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要すると判定した場合は、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備える。
【0021】
〔発明11〕 さらに、発明11の建築図面作成支援システムは、発明9及び10のいずれか1の建築図面作成支援システムにおいて、前記推定手段で推定した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要しないと判定した場合は、前記推定手段で推定した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素を変更する変更手段を備える。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、発明1の建築図面作成支援システムによれば、仕上表に記載された仕上要素に対応する適合要素に関する適合要素情報が推定されるので、編集要素を仕上表の仕様に適合させることが期待できる。
【0023】
さらに、発明3の建築図面作成支援システムによれば、仕上表に記載された仕上要素に対応する適合要素及びその内容に関する適合要素情報が推定されるので、編集要素及びその内容を仕上表の仕様に適合させることが期待できる。
【0024】
さらに、発明4の建築図面作成支援システムによれば、変更を行った編集要素に係る他の編集要素に関する関連要素情報が推定されるので、変更すべき他の編集要素も併せて変更を行うことができる。
【0025】
さらに、発明6の建築図面作成支援システムによれば、変更を行った編集要素に係る他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報が推定されるので、変更すべき他の編集要素及びその内容も併せて変更を行うことができる。
【0026】
さらに、発明7の建築図面作成支援システムによれば、変更を行った編集要素に係る他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報が推定されるので、変更すべき他の編集要素について人が変更すべきか否かを把握することができる。
【0027】
さらに、発明9の建築図面作成支援システムによれば、変更を行った編集要素に係る他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報並びに他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報が推定されるので、変更すべき他の編集要素及び内容について人が変更すべきか否かを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】図面作成支援装置100のハードウェア構成を示す図である。
図2】仕上表データの構造を示す図である。
図3】矩計図のCADデータの構造を示す図である。
図4】平面詳細図のCADデータの構造を示す図である。
図5】壁種別図である。
図6】学習済みモデル生成処理を示すフローチャートである。
図7】学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
図8】適合要素推定処理を示すフローチャートである。
図9】編集要素を変更する前の矩計図である。
図10】編集要素を変更した後の矩計図である。
図11】編集要素を変更する前の平面詳細図である。
図12】編集要素を変更した後の平面詳細図である。
図13】学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
図14】関連要素推定処理を示すフローチャートである。
図15】学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
図16】関連要素推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1乃至図12は、本実施の形態を示す図である。
【0030】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、図面作成支援装置100のハードウェア構成を示す図である。
【0031】
図面作成支援装置100は、図1に示すように、制御プログラムに基づいて演算及びシステム全体を制御するCPU(Central Processing Unit)30と、所定領域に予めCPU30の制御プログラム等を格納しているROM(Read Only Memory)32と、ROM32等から読み出したデータやCPU30の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM(Random Access Memory)34と、外部装置に対してデータの入出力を媒介するI/F(InterFace)38とで構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバス39で相互に且つデータ授受可能に接続されている。
【0032】
I/F38には、外部装置として、ヒューマンインターフェースとしてデータの入力が可能なキーボードやマウス等からなる入力装置40と、データやテーブル等をファイルとして格納する記憶装置42と、画像信号に基づいて画面を表示する表示装置44とが接続されている。
【0033】
記憶装置42には、CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアやBIM(Building Information Modeling)ソフトウェア(以下これらを総称して「CADソフトウェア」という。)がインストールされている。CADソフトウェアは、ユーザの操作に応じて図面の作成を支援するソフトウェアである。CADソフトウェアの起動が要求されると、CPU30は、ROM32の所定領域に格納されているCADプログラムを起動させ、そのプログラムに従って処理を実行する。設計者は、CADソフトウェアを起動し、矩計図、平面詳細図その他の建築図面を作成することができる。
【0034】
次に、記憶装置42のデータ構造を説明する。
図2は、仕上表データの構造を示す図である。
【0035】
記憶装置42は、図2に示すように、仕上表に関する仕上表データを記憶している。
仕上表は、建物各所の仕上げをまとめた表であり、屋根・外壁等の仕上げを示す外部仕上表と、各室内の壁・床・天井等の仕上げを示す内部仕上表がある。仕上表データには、仕上要素ごとに1つの行が登録されている。図2中3行目には、仕上要素「内部廊下」について、床の仕上げとして「タイルカーペット(A)、ボーダー張り」が、壁の仕上げとして「ビニルクロス(A)」が、天井の仕上げとして「ビニルクロス(A)がそれぞれ登録されている。これは、内部廊下の床を「タイルカーペット(A)、ボーダー張り」で、内部廊下の壁及び天井を「ビニルクロス(A)」で仕上げることを示している。また、図2中9行目には、仕上要素「風除室」について、天井高として「2450」が登録されている。これは、風除室の天井高を2450[mm]に仕上げることを示している。
【0036】
図3は、矩計図のCADデータの構造を示す図である。
記憶装置42は、図3に示すように、矩計図のCADデータやBIMデータ(以下これらを総称して「CADデータ」という。)を記憶している。
【0037】
矩計図は、建物の断面を詳細に作図した図面である。矩計図のCADデータは、設計者がCADソフトウェアを利用して作成するものである。設計者は、CADソフトウェアにおいて、矩計図中の編集可能な編集要素を追加、編集又は削除することにより矩計図を作成する。図3の例では、「内部廊下」と表示された領域の床、壁及び天井の各編集要素が、「風除室」と表示された領域の床、壁及び天井の各編集要素がそれぞれ配置されている。これらは、図2の仕上表データにおいて3行目及び9行目の仕上要素に対応している。対応する仕上要素及び編集要素に対しては、仕上表データ及びCADデータの内部で同一のIDが設定されることにより対応づけが行われていてもよい。
【0038】
図4は、平面詳細図のCADデータの構造を示す図である。
図5は、壁種別図である。
【0039】
記憶装置42は、図4に示すように、平面詳細図のCADデータを記憶している。
平面詳細図は、建物の平面を詳細に作図した図面である。平面詳細図のCADデータは、設計者がCADソフトウェアを利用して作成するものである。設計者は、CADソフトウェアにおいて、平面詳細図中の編集可能な編集要素を追加、編集又は削除することにより平面詳細図を作成する。平面詳細図において壁の編集要素に対しては壁種類が分かるようタグを配置する。タグは、英数字3桁又は4桁で四角又は楕円で囲まれたものであり、設計者は、図5の壁種別図を参考にして値を設定する。図4の例では、「LD」と表示された領域にタグ「L4DA」が、「洗面脱衣室」と表示された領域にタグ「L4JA」がそれぞれ配置されている。これらは、図2の仕上表データにおいて13行目及び17行目の仕上要素に対応している。対応する仕上要素及び編集要素に対しては、仕上表データ及びCADデータの内部で同一のIDが設定されることにより対応づけが行われていてもよい。
【0040】
記憶装置42は、その他の建築図面のCADデータ、及び、学習済みモデルのデータを記憶している。学習済みモデルは、仕上表に記載された仕上要素に関する情報及びその仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素に関する情報に基づいて学習が行われている。仕上表データ及び矩計図、平面詳細図その他の建築図面のCADデータは、AIの学習に用いるため、記憶装置42には、過去に作成された多数のデータが記憶されている。これらのCADデータは、建築図面中の各編集要素が仕上表データの仕様に適合したものであり、AIの学習における教師データとなる。
【0041】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図6は、学習済みモデル生成処理を示すフローチャートである。
【0042】
図7は、学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
学習済みモデル生成処理は、学習済みモデルを生成するために実行される処理であって、CPU30において実行されると、図6に示すように、ステップS100に移行して、仕上表データ解析処理を実行する。仕上表データ解析処理では、仕上表データを記憶装置42から読み出し、読み出した仕上表データから仕上要素に関する情報を抽出する。
【0043】
次いで、ステップS102に移行する。ステップS102では、CADデータ解析処理を実行する。CADデータ解析処理では、矩計図、平面詳細図その他の建築図面のCADデータを記憶装置42から読み出し、読み出したCADデータから編集要素に関する情報を抽出する。
【0044】
次いで、ステップS104に移行する。ステップS104では、図7に示すように、ステップS100、S102で抽出した情報に基づいて学習用データセットを生成し、ステップS106に移行して、生成した学習用データセットを学習用プログラムに入力し、学習用プログラムにより学習済みモデルを生成する。学習用プログラムは、学習前パラメータ及びハイパーパラメータを備え、入力した学習用データセット及びハイパーパラメータに基づいて学習を行い、学習前パラメータを更新する。そして、学習結果として学習済みモデルを出力する。
【0045】
学習済みモデルは、学習前パラメータが学習により更新された学習済みパラメータ及び推論プログラムを備える。推論プログラムは、仕上表データ及び編集要素を入力し、学習済みパラメータに基づいて、入力した仕上表データ及び編集要素から、その仕上表データの仕上要素及びその編集要素に対応する適合要素(仕上要素の仕様に適合する編集要素)を推定し、推定した適合要素を出力する。推論プログラムへの入力は、仕上表データそのものに限らず、ID等で対応関係が特定できれば、仕上表データの仕上要素のうち入力する編集要素に対応するものを抽出して行ってもよい。なお、入力した編集要素と適合要素の関係は、AIの学習により決まるものであるので、過去の仕上表データ及びCADデータの内容と同様の傾向を示すものの、必ずしも正確には一致しない曖昧さがある。ただし、この曖昧さは、学習データ量及び学習精度により小さくすることができる。
【0046】
図8は、適合要素推定処理を示すフローチャートである。
適合要素推定処理は、ユーザからの要求に応じて実行される処理であって、CPU30において実行されると、図8に示すように、まず、ステップS150に移行する。ステップS150では、CADソフトウェアにおいて、建築図面中の編集可能な編集要素のうちいずれかがユーザの操作により指示されたか否かを判定し、編集要素が指示されたと判定した場合(YES)は、ステップS152に移行する。
【0047】
ステップS152では、現在編集中のCADデータに対応する仕上表データを記憶装置42から読み出し、ステップS150で指示された編集要素を取得し、ステップS154に移行して、記憶装置42の学習済みモデルを用いて、読み出した仕上表データ及び取得した編集要素から適合要素を推定する。推定は、仕上表データ及び編集要素を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力される適合要素を取得することにより行う。
【0048】
そして、ステップS156に移行して、ステップS150で指示された編集要素とステップS154で推定された適合要素が識別や内容の点で不一致であるか否かを判定し、不一致であると判定した場合(YES)は、ステップS158に移行して、編集要素に不備がある旨を表示装置44に表示し、一連の処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS156で、編集要素と適合要素が不一致でないと判定した場合(NO)、及び、ステップS150で、編集要素が指示されないと判定した場合(NO)はいずれも、一連の処理を終了する。
【0050】
〔矩計図の作成例〕
次に、矩計図を作成する場合を例に編集要素を変更する動作を説明する。なお、現在編集中の矩計図のCADデータに対応する仕上表データが図2に示す内容であるとする。
【0051】
図9は、編集要素を変更する前の矩計図である。
図10は、編集要素を変更した後の矩計図である。
【0052】
設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400を指示する。このとき、編集要素400は、「ビニル床タイル(C)」と設定されているのに対し、図2の仕上表データにおいて対応する仕様要素(3行目)は、「タイルカーペット(A)、ボーダー張り」となっている。このため、図2の仕上表データ及び編集要素400が学習済みモデルに入力されると、適合要素「タイルカーペット(A)、ボーダー張り」が推定されるので、編集要素400に不備がある旨402が表示される。設計者は、表示402に従い、図10に示すように、編集要素400を「タイルカーペット(A)、ボーダー張り」に変更する。
【0053】
続いて、設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の壁の編集要素404を指示する。このとき、編集要素404は、「ビニルクロス(B)」と設定されているのに対し、図2の仕上表データにおいて対応する仕様要素(3行目)は、「ビニルクロス(A)」となっている。このため、図2の仕上表データ及び編集要素404が学習済みモデルに入力されると、適合要素「ビニルクロス(A)」が推定されるので、編集要素404に不備がある旨406が表示される。設計者は、表示406に従い、図10に示すように、編集要素404を「ビニルクロス(A)」に変更する。
【0054】
続いて、設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の天井の編集要素408を指示する。このとき、編集要素408は、「ビニルクロス(B)」と設定されているのに対し、図2の仕上表データにおいて対応する仕様要素(3行目)は、「ビニルクロス(A)」となっている。このため、図2の仕上表データ及び編集要素408が学習済みモデルに入力されると、適合要素「ビニルクロス(A)」が推定されるので、編集要素408に不備がある旨406が表示される。設計者は、表示406に従い、図10に示すように、編集要素408を「ビニルクロス(A)」に変更する。
【0055】
同様に、設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「風除室」と表示された領域の天井の天井高(編集要素)410を指示する。天井高410も図2の仕上表データの仕様に適合しないので、天井高410に不備がある旨412が表示される。設計者は、表示412に従い、図10に示すように、天井高410を2450[mm]に変更する。
【0056】
なお、設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「共用廊下」と表示された領域の有効寸法414を指示する。有効寸法414は、建築関連の法令に適合しないので、有効寸法414に不備がある旨416が表示される。建築関連の法令に適合するか否かの判定は、例えば、特許文献1の技術により行うことができる。有効寸法414を変更する方法としては、右側の壁位置を調整するか左側の壁位置を調整することにより行うことができるが、AIでは、どちらを優先すべきかを判定することが難しいので、このような編集要素414については、変更に人の判断を要する編集要素として、AIにより自動で変更せず、設計者の判断に委ね設計者が右側又は左側の壁位置を変更する。
【0057】
〔平面詳細図の作成例〕
次に、平面詳細図を作成する場合を例に編集要素を変更する動作を説明する。なお、現在編集中の平面詳細図のCADデータに対応する仕上表データが図2に示す内容であるとする。
【0058】
図11は、編集要素を変更する前の平面詳細図である。
図12は、編集要素を変更した後の平面詳細図である。
【0059】
設計者は、CADソフトウェアにおいて、図11の平面詳細図中「洗面脱衣室」と表示された領域のタグ(編集要素)420を指示する。このとき、タグ420は、「L4JB」と設定されているのに対し、図2の仕上表データにおいて対応する仕様要素(17行目)は、「L4」「GBt12.5」「ビニルクロス(C)」(=図5の壁種別図より「L4JA」のこと)となっている。このため、図2の仕上表データ及びタグ420が学習済みモデルに入力されると、適合要素「L4JA」が推定されるので、タグ420に不備がある旨422が表示される。設計者は、表示422に従い、図12に示すように、タグ420を「L4JA」に変更する。
【0060】
続いて、設計者は、CADソフトウェアにおいて、図11の平面詳細図中「LD」と表示された領域の壁のタグ424を指示する。このとき、タグ424は、「L4LA」と設定されているのに対し、図2の仕上表データにおいて対応する仕様要素(13行目)は、「L4」「GBt12.5※表面下地は防水GB」「ビニルクロス(C)」(=図5の壁種別図より「L4DA」のこと)となっている。このため、図2の仕上表データ及びタグ424が学習済みモデルに入力されると、適合要素「L4DA」が推定されるので、タグ424に不備がある旨426が表示される。設計者は、表示426に従い、図12に示すように、タグ424を「L4DA」に変更する。
【0061】
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、仕上表データ及び編集要素を取得し、仕上表に記載された仕上要素に関する情報及びその仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、取得した仕上表データ及び編集要素から適合要素を推定し、取得した編集要素と推定された適合要素が不一致である場合は、編集要素に不備がある旨を表示する。
【0062】
これにより、編集要素を仕上表の仕様に適合させることが期待できる。
本実施の形態において、ステップS152は、発明1又は2の要素情報取得手段に対応し、ステップS154は、発明1又は2の推定手段に対応し、ステップS158は、発明2の出力手段に対応している。
【0063】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図13及び図14は、本実施の形態を示す図である。
【0064】
本実施の形態では、上記第1の実施の形態に対し、編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素を表示する点が異なる。ある編集要素を変更した場合に、その変更に伴って他の編集要素が仕上表の仕様に適合しなくなることがある。例えば、図9の天井高410を変更した場合、天井裏スペースの高さ等を変更する必要が生じる。本実施の形態では、編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素を表示することにより、変更すべき他の編集要素も併せて設計者が変更を行えるように支援することを目的とする。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0065】
まず、記憶装置42のデータ構造を説明する。
記憶装置42は、矩計図、平面詳細図その他の建築図面のCADデータであって、編集要素を変更する前のCADデータ(以下「変更前CADデータ」という。)及び編集要素を変更した後のCADデータ(以下「変更後CADデータ」という。)を記憶している。
【0066】
記憶装置42は、学習済みモデルのデータを記憶している。学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及びその編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素に関する情報に基づいて学習が行われている。変更前CADデータ及び変更後CADデータは、AIの学習に用いるため、記憶装置42には、過去に作成された多数のデータが記憶されている。
【0067】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図13は、学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
【0068】
学習済みモデル生成処理は、学習済みモデルを生成するために実行される処理であって、CPU30において実行されると、変更前CADデータ及び変更後CADデータを記憶装置42から読み出し、読み出したCADデータから編集要素に関する情報を抽出する。
【0069】
そして、図13に示すように、抽出した情報に基づいて学習用データセットを生成し、生成した学習用データセットを学習用プログラムに入力し、学習用プログラムにより学習済みモデルを生成する。学習済みモデルの推論プログラムは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素を入力し、学習済みパラメータに基づいて、入力した編集要素から、その編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素を推定し、推定した編集要素を関連要素として出力する。
【0070】
図14は、関連要素推定処理を示すフローチャートである。
関連要素推定処理は、ユーザからの要求に応じて実行される処理であって、CPU30において実行されると、図14に示すように、まず、ステップS200に移行する。ステップS200では、CADソフトウェアにおいて、建築図面中の編集可能な編集要素のうちいずれかが変更されたか否かを判定し、編集要素が変更されたと判定した場合(YES)は、ステップS202に移行する。
【0071】
ステップS202では、変更された編集要素を取得し、ステップS204に移行して、記憶装置42の学習済みモデルを用いて、取得した編集要素から関連要素を推定する。推定は、編集要素を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力される関連要素を取得することにより行う。
【0072】
そして、ステップS206に移行して、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を特定の態様(例えばハイライト)で表示し、一連の処理を終了する。
【0073】
一方、ステップS200で、編集要素が変更されないと判定した場合(NO)は、一連の処理を終了する。
【0074】
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、変更を行った編集要素を取得し、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及びその編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、取得した編集要素から関連要素を推定し、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を特定の態様で表示する。
【0075】
これにより、変更すべき他の編集要素も併せて変更を行うことができる。
本実施の形態において、ステップS202は、発明4の要素情報取得手段に対応し、ステップS204は、発明4又は5の推定手段に対応し、ステップS206は、発明5の出力手段に対応している。
【0076】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図15及び図16は、本実施の形態を示す図である。
【0077】
本実施の形態では、上記第2の実施の形態に対し、変更に人の判断を要する編集要素を推定する点が異なる。ある編集要素を変更した場合に、その変更に伴って他の編集要素を自動で変更することが望ましいが、変更に人の判断を要する編集要素については自動変更の対象から除外することが必要である。例えば、図9の有効寸法414を変更する場合、右側又は左側の壁位置のどちらを変更するかは設計者が行う。本実施の形態では、編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素を自動で変更するとともに、変更に人の判断を要する編集要素については自動変更の対象から除外することにより、変更すべき他の編集要素及び内容について人が変更すべきか否かを把握できるように支援することを目的とする。以下、上記第1及び第2の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0078】
まず、記憶装置42のデータ構造を説明する。
記憶装置42は、変更に人の判断を要するか否かの情報と対応づけて編集要素を登録した判断要否データを記憶している。変更に人の判断を要する編集要素は、人の判断により設定してもよい。また、変更前CADデータ及び変更後CADデータに基づいて、変更前後で変更パターンが2以上ある編集要素を抽出し、抽出した編集要素を、変更に人の判断を要する編集要素として設定してもよい。
【0079】
記憶装置42は、学習済みモデルのデータを記憶している。学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、その編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素及びその内容に関する情報、並びに当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習が行われている。変更前CADデータ、変更後CADデータ及び判断要否データは、AIの学習に用いるため、記憶装置42には、過去に作成された多数のデータが記憶されている。
【0080】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図15は、学習済みモデルの生成及び利用の工程を示すブロック図である。
【0081】
学習済みモデル生成処理は、学習済みモデルを生成するために実行される処理であって、CPU30において実行されると、変更前CADデータ、変更後CADデータ及び判断要否データを記憶装置42から読み出し、読み出したCADデータ及び判断要否データから編集要素に関する情報及び判断要否情報を抽出する。
【0082】
そして、図15に示すように、抽出した情報に基づいて学習用データセットを生成し、生成した学習用データセットを学習用プログラムに入力し、学習用プログラムにより学習済みモデルを生成する。学習済みモデルの推論プログラムは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素を入力し、学習済みパラメータに基づいて、入力した編集要素から、その編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素及び判断要否情報を推定し、推定した編集要素を関連要素として出力する。
【0083】
図16は、関連要素推定処理を示すフローチャートである。
関連要素推定処理は、ユーザからの要求に応じて実行される処理であって、CPU30において実行されると、図16に示すように、まず、ステップS250に移行する。ステップS250では、CADソフトウェアにおいて、建築図面中の編集可能な編集要素のうちいずれかが変更されたか否かを判定し、編集要素が変更されたと判定した場合(YES)は、ステップS252に移行する。
【0084】
ステップS252では、変更された編集要素を取得し、ステップS254に移行して、記憶装置42の学習済みモデルを用いて、取得した編集要素から関連要素及び判断要否情報を推定する。推定は、編集要素を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力される関連要素及び判断要否情報を取得することにより行う。
【0085】
そして、ステップS256に移行して、推定した判断要否情報に基づいて、推定した関連要素の変更に人の判断を要するか否かを判定し、関連要素の変更に人の判断を要しないと判定した場合(NO)は、ステップS258に移行して、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素の内容が関連要素の内容となるように当該他の編集要素を変更し、一連の処理を終了する。
【0086】
一方、ステップS256で、関連要素の変更に人の判断を要すると判定した場合(YES)は、ステップS260に移行して、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を特定の態様(例えばハイライト)で表示し、一連の処理を終了する。
【0087】
一方、ステップS250で、編集要素が変更されないと判定した場合(NO)は、一連の処理を終了する。
【0088】
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素を取得し、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、その編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素及びその内容に関する情報、並びに当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、取得した編集要素から関連要素及び判断要否情報を推定し、推定した判断要否情報に基づいて関連要素の変更に人の判断を要すると判定した場合は、推定した関連要素に基づいて他の編集要素を特定の態様で表示し、関連要素の変更に人の判断を要しないと判定した場合は、推定した関連要素に基づいて他の編集要素を変更する。
【0089】
これにより、変更すべき他の編集要素及び内容について人が変更すべきか否かを把握することができる。
【0090】
本実施の形態において、ステップS252は、発明7又は9の要素情報取得手段に対応し、ステップS254は、発明7乃至11の推定手段に対応し、ステップS258は、発明11の変更手段に対応し、ステップS260は、発明8又は10の出力手段に対応している。
【0091】
〔変形例〕
なお、上記第1の実施の形態においては、ユーザの操作により指示された編集要素について不備を表示したが、これに限らず、図面中のすべての編集要素をスキャンし、不備のある編集要素については一括で不備を表示する構成を採用することもできる。
【0092】
また、上記第1の実施の形態及びその変形例においては、編集要素に不備がある旨を表示したが、これに限らず、推定した適合要素に基づいて、指示された編集要素を変更する構成を採用することもできる。この場合、学習済みモデルは、仕上表に記載された仕上要素に関する情報並びにその仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素及びその内容に関する情報に基づいて学習を行ったものを用いる。
【0093】
また、上記第2の実施の形態及びその変形例においては、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を特定の態様で表示したが、これに限らず、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を変更する構成を採用することもできる。この場合、学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報並びにその編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素及びその内容に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて学習を行ったものを用いる。
【0094】
また、上記第3の実施の形態及びその変形例においては、推定した関連要素に基づいて、変更すべき他の編集要素を変更し又は特定の態様で表示したが、これに限らず、変更を行わない構成であれば、学習済みモデルは、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報、その編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素に関する情報、及び当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行ったものを用いることもできる。また、特定の態様での表示も行わない構成(例えば、人の判断の要否だけを推定する構成)であれば、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及びその編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報に基づいて学習を行ったものを用いることもできる。
【0095】
また、上記第2及び第3の実施の形態並びにその変形例においては、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及びその編集要素の変更に伴い変更された他の編集要素に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いたが、これに限らず、建築図面中の編集可能な編集要素に関する情報及びその編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いることもできる。すなわち、変更前CADデータ及び変更後CADデータに代えて、編集要素Aが変更された場合に編集要素Bも変更するといった対応情報をAIの学習に用いることができる。
【0096】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例においては、学習済みモデルを生成し、生成した学習済みモデルを用いたが、これに限らず、大規模言語モデル(Large Language Model)を利用する構成を採用することもできる。具体的には、例えば、次の構成を採用することができる。
【0097】
図面作成支援装置100は、大規模言語モデルを有する大規模言語モデルサーバにネットワークを介して接続している。大規模言語モデルサーバは、図面作成支援装置100と同様のハードウェア構成を有して構成されている。大規模言語モデルとは、人間の話す言葉をその出現確率でモデル化した言語モデルと呼ばれるものを、膨大なデータから事前学習する深層学習モデルである。大規模言語モデルサーバは、リクエストを受信すると、大規模言語モデルを用いて、受信されたリクエストに含まれる文章から次の単語の生成確率を統計的に推定し、推定結果をリクエスト元に送信する。大規模言語モデルとしては、例えば、インターネットサイト「https://chatgpt-lab.com/n/n418d3aa56f0b」「https://agirobots.com/chatgpt-mechanism-and-problem/」に記載されている公知の技術を採用することができる。
【0098】
そして、図面作成支援装置100に対しては、次の発明A1~A3又はB1~B8を適用することができる。
【0099】
〔発明A1〕 仕上表に記載される仕上要素に関する仕上要素情報及び建築図面中の編集可能な編集要素に関する編集要素情報を含み、且つ、当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載される適合要素に関する適合要素情報を生成する要求を含むリクエストを大規模言語モデルに入力するリクエスト入力手段と、
前記リクエストに対して前記大規模言語モデルから出力される適合要素情報を取得する要素情報取得手段とを備える。
【0100】
〔発明A2〕 発明A1において、
前記要素情報取得手段で取得した適合要素情報に基づいて、前記編集要素情報に係る編集要素に関する情報を出力する出力手段とを備える。
【0101】
図9を例に発明A1、A2の実施の形態を説明する。上記第1の実施の形態の変形例であって、ステップS154の処理が、大規模言語モデルサーバから適合要素情報を取得する処理に置き換わる。
【0102】
設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400を指示すると、図面作成支援装置100では、大規模言語モデルサーバにリクエストが送信される。リクエストは、図2の仕上表データ及び編集要素400を含み、且つ、編集要素400の適合要素を生成する要求を含む。このリクエストに対し、大規模言語モデルサーバからは適合要素情報が出力される。図面作成支援装置100では、適合要素情報を受信すると、受信した適合要素情報に基づいて編集要素400に不備がある旨402が表示される。
【0103】
〔発明A3〕 発明A1又はA2において、
前記リクエストは、仕上表に記載される仕上要素に関する仕上要素情報及び建築図面中の編集可能な編集要素に関する編集要素情報を含み、且つ、当該仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載される適合要素及びその内容に関する適合要素情報を生成する要求を含むものであり、
前記要素情報取得手段で取得した適合要素情報に基づいて、前記編集要素情報に係る編集要素を変更する変更手段を備える。
【0104】
図9を例に発明A1、A3の実施の形態を説明する。上記第1の実施の形態の変形例である。
【0105】
設計者は、CADソフトウェアにおいて、図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400を指示すると、図面作成支援装置100では、大規模言語モデルサーバにリクエストが送信される。リクエストは、図2の仕上表データ及び編集要素400を含み、且つ、編集要素400の適合要素を生成する要求を含む。このリクエストに対し、大規模言語モデルサーバからは適合要素情報が出力される。図面作成支援装置100では、適合要素情報を受信すると、受信した適合要素情報に基づいて編集要素400が変更される。
【0106】
〔発明B1〕 建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を含み、且つ、当該編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素に関する関連要素情報を生成する要求を含むリクエストを大規模言語モデルに入力するリクエスト入力手段と、
前記リクエストに対して前記大規模言語モデルから出力される関連要素情報を取得する要素情報取得手段とを備える。
【0107】
〔発明B2〕 発明B1において、
前記要素情報取得手段で取得した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備える。
【0108】
図9を例に発明B1、B2の実施の形態を説明する。上記第2の実施の形態の変形例であって、ステップS202の処理が、大規模言語モデルサーバから関連要素情報を取得する処理に置き換わる。
【0109】
図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400が設計者により変更されると、図面作成支援装置100では、大規模言語モデルサーバにリクエストが送信される。リクエストは、編集要素400を含み、且つ、編集要素400の関連要素を生成する要求を含む。このリクエストに対し、大規模言語モデルサーバからは関連要素情報が出力される。図面作成支援装置100では、関連要素情報を受信すると、受信した関連要素情報に基づいて、編集要素400の変更に伴い変更すべき他の編集要素が特定の態様で表示される。
【0110】
〔発明B3〕 発明B1又はB2において、
前記リクエストは、建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を含み、且つ、当該編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報を生成する要求を含むものであり、
前記要素情報取得手段で取得した関連要素情報に基づいて、当該関連要素情報に係る他の編集要素を変更する変更手段を備える。
【0111】
図9を例に発明B1、B3の実施の形態を説明する。上記第2の実施の形態の変形例である。
【0112】
図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400が設計者により変更されると、図面作成支援装置100では、大規模言語モデルサーバにリクエストが送信される。リクエストは、編集要素400を含み、且つ、編集要素400の関連要素を生成する要求を含む。このリクエストに対し、大規模言語モデルサーバからは関連要素情報が出力される。図面作成支援装置100では、関連要素情報を受信すると、受信した関連要素情報に基づいて、編集要素400の変更に伴い変更すべき他の編集要素が変更される。
【0113】
〔発明B4〕 建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を含み、且つ、当該編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報を生成する要求を含むリクエストを大規模言語モデルに入力するリクエスト入力手段と、
前記リクエストに対して前記大規模言語モデルから出力される判断要否情報を取得する判断要否情報取得手段とを備える。
【0114】
〔発明B5〕 発明B4において、
前記判断要否情報取得手段で取得した判断要否情報に基づいて、当該判断要否情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する情報を出力する出力手段を備える。
【0115】
〔発明B6〕 建築図面中の編集可能な編集要素のうち変更を行った編集要素に関する変更要素情報を含み、且つ、当該編集要素の変更に伴い変更すべき他の編集要素及びその内容に関する関連要素情報並びに当該他の編集要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報を生成する要求を含むリクエストを大規模言語モデルに入力するリクエスト入力手段と、
前記リクエストに対して前記大規模言語モデルから出力される関連要素情報及び判断要否情報を取得する要素情報取得手段とを備える。
【0116】
〔発明B7〕 発明B6において、
前記要素情報取得手段で取得した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要すると判定した場合は、前記要素情報取得手段で取得した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素に関する情報を出力する出力手段を備える。
【0117】
〔発明B8〕 発明B6又はB7において、
前記要素情報取得手段で取得した判断要否情報に基づいて当該関連要素情報に係る他の編集要素の変更に人の判断を要しないと判定した場合は、前記要素情報取得手段で取得した関連要素情報に基づいて、当該他の編集要素を変更する変更手段を備える。
【0118】
図9を例に発明B4~B8の実施の形態を説明する。上記第3の実施の形態の変形例であって、ステップS254の処理が、大規模言語モデルサーバから関連要素情報及び判断要否情報を取得する処理に置き換わる。
【0119】
図9の矩計図中「内部廊下」と表示された領域の床の編集要素400が設計者により変更されると、図面作成支援装置100では、大規模言語モデルサーバにリクエストが送信される。リクエストは、編集要素400を含み、且つ、編集要素400の関連要素及びその関連要素の変更に人の判断を要するか否かに関する判断要否情報を生成する要求を含む。このリクエストに対し、大規模言語モデルサーバからは関連要素情報及び判断要否情報が出力される。図面作成支援装置100では、関連要素情報及び判断要否情報を受信すると、受信した関連要素情報に基づいて関連要素の変更に人の判断を要するか否かが判定される。その結果、人の判断を要すると判定されると、受信した関連要素情報に基づいて関連要素が特定の態様で表示される。これに対し、人の判断を要しないと判定されると、受信した関連要素情報に基づいて関連要素が変更される。
【0120】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例においては、単一の装置として実現したが、これに限らず、ネットワークシステムとして実現することもできる。ネットワークシステムの例として、図面作成支援装置100の機能の一部又は全部を、クラウドコンピューティングサービスを提供するサーバ上の仮想サーバとして構成することができる。
【0121】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例において、図面作成支援装置100は、記憶装置42を利用するように構成したが、これに限らず、データベースサーバ等の外部の記憶装置を利用するように構成することもできる。
【0122】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例において、図6図8図14及び図16のフローチャートに示す処理を実行するにあたってはいずれも、ROM32に予め格納されているプログラムを実行する場合について説明したが、これに限らず、これらの手順を示したプログラムが記憶された記憶媒体から、そのプログラムをRAM34に読み込んで実行するようにしてもよい。
【0123】
ここで、記憶媒体とは、RAM、ROM等の半導体記憶媒体、FD、HD等の磁気記憶型記憶媒体、CD、CDV、LD、DVD等の光学的読取方式記憶媒体、MO等の磁気記憶型/光学的読取方式記憶媒体であって、電子的、磁気的、光学的等の読み取り方法のいかんにかかわらず、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であれば、あらゆる記憶媒体を含むものである。
【0124】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例は相互に適用することができる。
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例に限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
100…図面作成支援装置、 30…CPU、 32…ROM、 34…RAM、 38…I/F、 39…バス、 40…入力装置、 42…記憶装置、 44…表示装置、 400,404,408,410…編集要素、 402,406,412,416,422,426…不備表示、 414…有効寸法、 420,424…タグ
【要約】
【課題】 建築図面中の編集可能な編集要素を仕上表の仕様に適合させるのに好適な建築図面作成支援システムを提供する。
【解決手段】 図面作成支援装置100は、仕上表データ及び編集要素を取得し、仕上表に記載された仕上要素に関する情報及びその仕上要素の仕様に適合し建築図面に記載された適合要素に関する情報に基づいて学習を行った学習済みモデルを用いて、取得した仕上表データ及び編集要素から適合要素を推定し、取得した編集要素と推定された適合要素が不一致である場合は、編集要素に不備がある旨を表示する。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16