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特許7341583微小針アレイベースの持続的分析物監視デバイスのための障害検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】微小針アレイベースの持続的分析物監視デバイスのための障害検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20230904BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20230904BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20230904BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
G01N27/30 A
G01N27/26 371C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023504277
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022028196
(87)【国際公開番号】W WO2022240700
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】63/186,086
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521146056
【氏名又は名称】バイオリンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biolinq Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドミラー, ジョシュア レイ
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, アラン スティーブン
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/117918(WO,A1)
【文献】特開2020-170011(JP,A)
【文献】特表2022-501100(JP,A)
【文献】特開2019-205852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小針アレイベースの分析物監視デバイスであって、
作用電極であって、前記作用電極は、前記作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを備え、前記作用電極は、微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、作用電極と、
前記微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる基準電極と、
前記微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる対電極と、
アナログフロントエンドであって、前記アナログフロントエンドは、前記作用電極と前記基準電極との間に固定された電位関係を維持し、前記作用電極における前記酸化還元反応を持続させるために、前記対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成される、アナログフロントエンドと、
コントローラであって、前記コントローラは、前記アナログフロントエンドと通信し、
前記対電極において対電極電圧を監視することと、
閾値を満たすかまたは超過する前記対電極電圧の特性を識別することと、
前記閾値を超過する前記対電極電圧の特性の識別することに応答して、前記対電極電圧と前記感知電流との間の相関を決定することと、
前記対電極電圧の前記特性および前記相関に基づいて、動作モードを前記微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用することと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項2】
前記対電極電圧の前記特性は、前記対電極電圧の変化率または前記対電極電圧の順守下限のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、請求項1に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項3】
前記対電極電圧の変化および前記感知電流の変化は、前記対電極電圧と前記感知電流との間の前記相関を示す、請求項2に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項4】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記変化が、前記感知電流の前記変化と一致する場合、および前記対電極電圧の前記変化率が、閾値変化率を超過する場合、前記感知電流を無視することを含む、請求項3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項5】
前記コントローラは、前記対電極電圧の前記変化率が、前記閾値変化率を超過しないという後続の決定に応答して、前記感知電流を無視するという前記動作モードを中断するようにさらに構成される、請求項4に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項6】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、前記作用電極と前記基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、請求項3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項7】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記変化が、前記感知電流の前記変化から偏移される場合、および前記対電極電圧の前記変化率が、閾値変化率を超過する場合、前記作用電極と前記基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、請求項3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項8】
1つまたはそれを上回る付加的作用電極をさらに備え、前記1つまたはそれを上回る付加的作用電極はそれぞれ、個別の感知電流を発生させ、
前記コントローラは、
閾値を超過する前記対電極電圧の前記特性を識別することに応答して、前記対電極電圧と前記個別の感知電流との間の相関を決定するようにさらに構成される、
請求項1に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項9】
前記動作モードは、前記対電極電圧と前記個別の感知電流との間の前記相関にさらに基づく、請求項8に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項10】
前記作用電極における前記感知電流および前記1つまたはそれを上回る付加的作用電極における前記個別の感知電流は、複合相関を決定するために組み合わせられる、請求項9に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【請求項11】
方法であって、
微小針アレイベースの分析物監視デバイスの対電極における対電極電圧を監視することであって、前記対電極は、前記微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、ことと、
閾値を満たすかまたは超過する前記対電極電圧の特性を識別することと、
前記閾値を超過する前記対電極電圧の特性を識別することに応答して、前記対電極電圧と感知電流との間の相関を決定することであって、前記感知電流は、前記微小針アレイベースの分析物監視デバイスの作用電極の表面において発生される、ことと、
前記対電極電圧の前記特性および前記相関に基づいて、動作モードを前記微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用することと
を含み、
前記作用電極は、前記作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す前記感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを備え、前記作用電極は、微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられ、
前記微小針アレイベースの分析物監視デバイスは、前記微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる基準電極と、前記作用電極と前記基準電極との間に固定された電位関係を維持し、前記作用電極における前記酸化還元反応を持続させるために、前記対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成されるアナログフロントエンドとをさらに備える、方法。
【請求項12】
前記対電極電圧の前記特性は、前記対電極電圧の変化率または前記対電極電圧の順守下限のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対電極電圧の変化および前記感知電流の変化は、前記対電極電圧と前記感知電流との間の前記相関を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記変化が、前記感知電流の前記変化と一致する場合、および前記対電極電圧の前記変化率が、閾値変化率を超過する場合、前記感知電流を無視することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記感知電流を無視するという前記動作モードは、前記対電極電圧の前記変化率が、前記閾値変化率を超過しないという後続の決定に応答して中断される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、前記作用電極と前記基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記動作モードは、前記対電極電圧の前記変化が、前記感知電流の前記変化から偏移される場合、および前記対電極電圧の前記変化率が、閾値変化率を超過する場合、前記作用電極と前記基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記微小針アレイベースの分析物監視デバイスは、1つまたはそれを上回る付加的作用電極をさらに備え、前記1つまたはそれを上回る付加的作用電極はそれぞれ、個別の感知電流を発生させ、
前記方法は、前記閾値を超過する前記対電極電圧の前記特性を識別することに応答して、前記対電極電圧と前記個別の感知電流との間の相関を決定することをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記動作モードは、前記対電極電圧と前記個別の感知電流との間の前記相関にさらに基づく、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記作用電極における前記感知電流および前記1つまたはそれを上回る付加的作用電極における前記個別の感知電流は、複合相関を決定するために組み合わせられる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容が、本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2021年5月8日に出願された米国仮特許第63/186,086号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、持続的グルコース監視等の分析物監視の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、身体が血糖を調整するホルモンであるインスリンを生成しない、または適切に利用しない、慢性疾患である。インスリンは、血糖レベルを調整することに役立つために糖尿病患者に投与され得るが、血糖レベルは、それにもかかわらず、タイミングおよび投与量が適切であることを確実にすることに役立つために、慎重に監視されなければならない。その条件の適切な管理を伴わないと、糖尿病患者は、高血糖症(高血糖レベル)または低血糖症(低血糖レベル)からもたらされる種々の合併症に悩まされ得る。
【0004】
血糖モニタは、血液のサンプルから血糖レベルを測定することによって、糖尿病患者が自身の病状を管理することに役立つ。例えば、糖尿病患者は、指先穿刺サンプリング機構を通して血液サンプルを取得し、血液サンプルを、血液サンプルと反応する好適な試薬を伴う試験ストリップに移送し、血糖モニタを使用し、試験ストリップを分析し、その血液サンプルにおけるグルコースレベルを測定し得る。しかしながら、本プロセスを使用する患者は、典型的には、離散的な時点において自身のグルコースレベルを測定することしかできず、これは、タイムリーな様式で高血糖症または低血糖症条件を捕捉することができない場合がある。また、より最近の種々のグルコースモニタは、持続的グルコースモニタ(CGM)デバイスであり、これは、皮下間質液中のグルコースレベルの代理測定によって、血糖レベルを持続的に検出および定量化するために使用される、埋込可能経皮的電気化学センサを含む。しかしながら、従来のCGMデバイスもまた、挿入からの組織外傷および信号待ち時間(例えば、グルコース分析物が毛細血管源からセンサまで拡散するために要求される時間に起因する)を含む、弱点を有する。これらの弱点はまた、電気化学センサが挿入されるときに患者が被る痛み、および、特に、血糖レベルが急速に変化しているときのグルコース測定における限定された正確度等のいくつかの欠点につながる。故に、新しい改良された分析物監視システムの必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの変形例では、微小針アレイベースの分析物監視デバイスは、作用電極と、基準電極と、対電極と、アナログフロントエンドと、コントローラとを含む。作用電極は、作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを含み、作用電極は、微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる。基準電極は、微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる。対電極は、微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる。アナログフロントエンドは、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を維持し、作用電極における酸化還元反応を持続させるために、対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成される。コントローラは、アナログフロントエンドと通信し、対電極において対電極電圧を監視し、閾値を満たすかまたは超過する対電極電圧の特性を識別し、閾値を超過する対電極電圧の特性を識別することに応答して、対電極電圧と感知電流との間の相関を決定し、対電極電圧の特性および相関に基づいて、動作モードを微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用するように構成される。
【0006】
いくつかの変形例では、ある方法は、微小針アレイベースの分析物監視デバイスの対電極において対電極電圧を監視することであって、対電極は、微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられることと、閾値を満たすかまたは超過する対電極電圧の特性を識別することと、閾値を超過する対電極電圧の特性の識別することに応答して、対電極電圧と感知電流との間の相関を決定することであって、感知電流は、微小針アレイベースの分析物監視デバイスの作用電極の表面において発生されることと、対電極電圧の特性および相関に基づいて、動作モードを微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用することとを含む。作用電極は、作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを含み、微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられてもよい。微小針アレイベースの分析物監視デバイスはさらに、微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる基準電極と、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を維持し、作用電極における酸化還元反応を持続させるために、対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成されるアナログフロントエンドとを含んでもよい。
【0007】
いくつかの変形例では、対電極電圧の特性は、対電極電圧の変化率または対電極電圧の順守下限のうちの1つまたはそれを上回るものを含む。
【0008】
いくつかの変形例では、対電極電圧の変化および感知電流の変化は、対電極電圧と感知電流との間の相関を示す。
【0009】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化と一致する場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、感知電流を無視することを含む。
【0010】
いくつかの変形例では、コントローラはさらに、対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過しないという後続の決定に応答して、感知電流を無視するという動作モードを中断するように構成される。
【0011】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む。
【0012】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化から偏移される場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む。
【0013】
いくつかの変形例では、微小針アレイベースの分析物監視デバイスはさらに、1つまたはそれを上回る付加的作用電極を含み、1つまたはそれを上回る付加的作用電極はそれぞれ、個別の感知電流を発生させる。コントローラはさらに、閾値を超過する対電極電圧の特性を識別することに応答して、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関を決定するように構成される。
【0014】
いくつかの変形例では、動作モードはさらに、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関に基づく。
【0015】
いくつかの変形例では、作用電極における感知電流および1つまたはそれを上回る付加的作用電極における個別の感知電流は、複合相関を決定するために組み合わせられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、微小針アレイを伴う分析物監視システムの例証的概略図を描写する。
【0017】
図2A図2Aは、分析物監視デバイスの例証的概略図を描写する。
【0018】
図2B図2Bは、分析物監視デバイスにおける微小針挿入深さの例証的概略図を描写する。
【0019】
図3A図3Aは、微小針アレイの例証的概略図を描写する。図3Bは、図3Aに描写される微小針アレイにおける微小針の例証的概略図を描写する。
図3B図3Aは、微小針アレイの例証的概略図を描写する。図3Bは、図3Aに描写される微小針アレイにおける微小針の例証的概略図を描写する。
【0020】
図4図4は、複数の分析物を感知するために使用される微小針アレイの例証的概略図を描写する。
【0021】
図5図5Aは、テーパ状遠位端を有する、柱状微小針の断面側面図を描写する。図5Bおよび5Cは、それぞれ、図5Aに示される微小針の実施形態の斜視図および詳細図を描写する、画像である。
【0022】
図6-1】図6A-6Cは、それぞれ、作用電極、対電極、および基準電極の層状構造の例証的概略図を描写する。
【0023】
図6-2】図6D-6Fは、それぞれ、作用電極、対電極、および基準電極の層状構造の例証的概略図を描写する。
【0024】
図6-3】図6G-6Iは、それぞれ、作用電極、対電極、および基準電極の層状構造の例証的概略図を描写する。
【0025】
図7図7は、微小針アレイ構成の例証的概略図を描写する。
【0026】
図8-1】図8A-8Dは、微小針アレイ構成の例証的概略図を描写する。
図8-2】図8A-8Dは、微小針アレイ構成の例証的概略図を描写する。
【0027】
図9-1】図9A-9Jは、微小針アレイ構成の異なる変形例の例証的概略図を描写する。
図9-2】図9A-9Jは、微小針アレイ構成の異なる変形例の例証的概略図を描写する。
図9-3】図9A-9Jは、微小針アレイ構成の異なる変形例の例証的概略図を描写する。
図9-4】図9A-9Jは、微小針アレイ構成の異なる変形例の例証的概略図を描写する。
【0028】
図10図10は、分析物監視デバイスのポテンショスタット回路の表現を描写する。
【0029】
図11図11は、分析物監視デバイスの電気化学セルを表す、Randles等価回路を描写する。
【0030】
図12図12は、分析物監視デバイスの測定回路を描写する。
【0031】
図13A図13Aは、ナイキスト線図およびボード線図形成の両方を使用した、電気化学セルの表現である。
【0032】
図13B図13Bは、ナイキスト線図形成を使用した、電気化学セルの表現である。
【0033】
図14図14-17は、対電極における電流および対応する電圧のプロットであり、障害検出側面を描写する。
図15図14-17は、対電極における電流および対応する電圧のプロットであり、障害検出側面を描写する。
図16図14-17は、対電極における電流および対応する電圧のプロットであり、障害検出側面を描写する。
図17図14-17は、対電極における電流および対応する電圧のプロットであり、障害検出側面を描写する。
【0034】
図18図18は、分析物監視デバイスの例証的概略図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本発明の種々の側面および変形例の非限定的実施例が、本明細書に説明され、付随の図面に図示される。
【0036】
概して、本明細書に説明されるように、分析物監視システムは、ユーザによって装着され、ユーザの少なくとも1つの分析物を監視するための1つまたはそれを上回るセンサを含む、分析物監視デバイスを含んでもよい。センサは、例えば、少なくとも1つの分析物の電気化学的検出を実施するように構成される、1つまたはそれを上回る電極を含んでもよい。分析物監視デバイスは、センサデータの記憶、表示、および/または分析のために、外部コンピューティングデバイスにセンサデータを通信してもよい。例えば、図1に示されるように、分析物監視システム100は、ユーザによって装着される、分析物監視デバイス110を含んでもよく、分析物監視デバイス110は、持続的分析物監視デバイス(例えば、持続的グルコース監視デバイス)であってもよい。分析物監視デバイス110は、例えば、ユーザの体液中の1つまたはそれを上回る分析物を検出および/または測定するための少なくとも1つの電気化学センサを備える、微小針アレイを含んでもよい。いくつかの変形例では、分析物監視デバイスは、好適な適用器160を使用してユーザに適用されてもよい、または手動で適用されてもよい。分析物監視デバイス110は、センサデータに対する分析を実施するための1つまたはそれを上回るプロセッサおよび/またはセンサデータをモバイルコンピューティングデバイス102(例えば、スマートフォン)または他の好適なコンピューティングデバイスに通信するように構成される、通信モジュール(例えば、無線通信モジュール)を含んでもよい。いくつかの変形例では、モバイルコンピューティングデバイス102は、センサデータを取り扱う(例えば、データを表示する、傾向に関してデータを分析する等)、および/またはセンサデータおよび/またはその分析に関連する好適なアラートまたは他の通知を提供するために、モバイルアプリケーションを実行する、1つまたはそれを上回るプロセッサを含んでもよい。いくつかの変形例では、モバイルコンピューティングデバイス102は、センサデータ分析をローカルで実施し得るが、他のコンピューティングデバイスが、代替として、または加えて、遠隔でセンサデータを分析する、および/またはユーザへの表示のためにモバイルコンピューティングデバイス102(または他の好適なユーザインターフェース)を用いてそのような分析に関連する情報を通信し得ることを理解されたい。さらに、いくつかの変形例では、モバイルコンピューティングデバイス102は、分析物監視デバイスのユーザに関連するデータおよび/または他の好適な情報をアーカイブ化するために、センサデータおよび/またはセンサデータの分析を、ネットワーク104を経由して、1つまたはそれを上回る記憶デバイス106(例えば、サーバ)に通信するように構成されてもよい。
【0037】
本明細書に説明される分析物監視デバイスは、持続的グルコース監視(CGM)デバイス等の持続的分析物監視デバイスに関して有利である、いくつかの性質を改良する特性を有する。例えば、本明細書に説明される分析物監視デバイスは、改良された感度(標的分析物の所与の濃度毎に生成されるセンサ信号の量)、改良された選択性(標的分析物の検出に干渉し得る内因性および外因性循環化合物の拒絶)、および分析物監視デバイスの保管および動作を通した経時的なセンサ応答の変化を最小限にすることに役立つ改良された安定性を有する。加えて、従来の持続的分析物監視デバイスと比較して、本明細書に説明される分析物監視デバイスは、埋込に続いてセンサが安定したセンサ信号を迅速に提供することを可能にする、より短いウォームアップ時間、およびユーザにおける分析物濃度の変化に続いてセンサが安定したセンサ信号を迅速に提供することを可能にする、短い応答時間を有する。さらに、下記にさらに詳細に説明されるように、本明細書に説明される分析物監視デバイスは、種々の装着部位に適用され、そこで機能し、ユーザにとって痛みのないセンサ挿入を提供し得る。生体適合性、滅菌性、および機械的完全性等の他の性質もまた、本明細書に説明される分析物監視デバイスにおいて最適化される。
【0038】
本明細書に説明される分析物監視システムは、(例えば、2型糖尿病、1型糖尿病を伴う患者における)グルコースの監視を参照して説明され得るが、そのようなシステムが、加えて、または代替として、他の好適な分析物を感知および監視するように構成され得ることを理解されたい。下記にさらに詳細に説明されるように、検出のために好適な標的分析物は、例えば、グルコース、ケトン、乳酸、およびコルチゾールを含んでもよい。1つの標的分析物が、監視されてもよい、または複数の標的分析物が、(例えば、同一の分析物監視デバイスにおいて)同時に監視されてもよい。例えば、他の標的分析物の監視は、ストレス(例えば、上昇するコルチゾールおよびグルコースの検出を通して)およびケトアシドーシス(例えば、上昇するケトンの検出を通して)等の他のインジケーションの監視を可能にし得る。
【0039】
図2Aに示されるように、いくつかの変形例では、分析物監視デバイス110は、概して、筐体112と、筐体から外向きに延在する、微小針アレイ140とを含んでもよい。筐体112は、例えば、微小針アレイ140が、少なくとも部分的に、ユーザの皮膚の中に延在するように、ユーザの皮膚上に装着されるように構成される、装着可能筐体であってもよい。例えば、筐体112は、分析物監視デバイス110が、ユーザへの適用に関して単純かつ簡単である皮膚接着パッチであるように、接着剤を含んでもよい。微小針アレイ140は、ユーザの皮膚を穿刺し、微小針アレイ140がユーザの皮膚を穿刺した後にアクセス可能である1つまたはそれを上回る標的分析物を測定するために構成される、1つまたはそれを上回る電気化学センサ(例えば、電極)を含むように構成されてもよい。いくつかの変形例では、分析物監視デバイス110は、単一のユニットとして統合または内蔵されてもよく、ユニットは、使い捨てであってもよい(例えば、ある期間にわたって使用され、分析物監視デバイス110の別の事例と交換される)。
【0040】
電子機器システム120は、少なくとも部分的に、筐体112内に配列され、信号処理(例えば、電気化学センサのバイアスおよび読出、電気化学センサからのアナログ信号をデジタル信号に変換すること等)を実施するように構成される、センサ回路網124等の種々の電子構成要素を含んでもよい。電子機器システム120はまた、分析物監視デバイス110を制御するための少なくとも1つのマイクロコントローラ122、少なくとも1つの通信モジュール126、少なくとも1つの電源130、および/または他の種々の好適な受動回路網127を含んでもよい。マイクロコントローラ122は、例えば、(例えば、ファームウェア内のプログラムされたルーチンを実行することによって)センサ回路網124から出力されたデジタル信号を解釈する、種々の好適なアルゴリズムまたは数学的変換(例えば、較正等)を実施する、および/または通信モジュール126に、および/またはそれから処理されたデータをルーティングするように構成されてもよい。いくつかの変形例では、通信モジュール126は、1つまたはそれを上回るアンテナ128を介して外部コンピューティングデバイス102とデータを通信するための好適な無線送受信機(例えば、Bluetooth(登録商標)送受信機または同等物)を含んでもよい。例えば、通信モジュール126は、分析物監視デバイス110とペアリングされる外部コンピューティングデバイス102とのデータの一方向および/または双方向通信を提供するように構成されてもよい。電源130は、電子機器システムのため等、分析物監視デバイス110のための電力を提供してもよい。電源130は、バッテリまたは他の好適な源を含んでもよく、いくつかの変形例では、再充電可能および/または交換可能であってもよい。受動回路網127は、他の電子構成要素等の間の相互接続を提供する、種々の無給電電気回路網(例えば、抵抗器、コンデンサ、インダクタ等)を含んでもよい。受動回路網127は、例えば、雑音低減、バイアス、および/または他の目的を実施するように構成されてもよい。いくつかの変形例では、電子機器システム120における電子構成要素は、例えば、剛性、半剛性、または可撓性であり得る、1つまたはそれを上回る印刷回路基板(PCB)上に配列されてもよい。電子機器システム120の付加的詳細が、下記にさらに説明される。
【0041】
いくつかの変形例では、分析物監視デバイス110はさらに、ユーザ監視に関連し得る付加的情報を提供するために、1つまたはそれを上回る付加的センサ150を含んでもよい。例えば、分析物監視デバイス110はさらに、皮膚温度を測定するように構成される、少なくとも1つの温度センサ(例えば、サーミスタ)を含み、それによって、微小針アレイ電気化学センサによって取得されるセンサ測定に関する温度補償を可能にし得る。
【0042】
いくつかの変形例では、分析物監視デバイス110における微小針アレイ140は、ユーザの皮膚を穿刺するように構成されてもよい。図2Bに示されるように、デバイス110が、ユーザによって装着されるとき、微小針アレイ140は、微小針の遠位領域上の電極が、真皮内に静止するように、ユーザの皮膚の中に延在してもよい。具体的には、いくつかの変形例では、微小針は、電極がこれらの層内の細胞を囲繞する間質液にアクセスすることを可能にするために、皮膚を貫通し、皮膚の上側真皮領域(例えば、真皮乳頭層および上側真皮網状層)にアクセスするように設計されてもよい。例えば、いくつかの変形例では、微小針は、概して、少なくとも350μm~約515μmに及ぶ高さを有してもよい。いくつかの変形例では、1つまたはそれを上回る微小針は、微小針上の電極の遠位端が、筐体の皮膚界面接触面から約5mm未満、筐体から約4mm未満、筐体から約3mm未満、筐体から約2mm未満、または筐体から約1mm未満に位置するように、筐体から延在してもよい。
【0043】
典型的には、皮膚の皮下または脂肪層において皮膚表面の約8mm~約10mm下に埋込されるセンサを含む、従来的な持続的分析物監視デバイス(例えば、CGMデバイス)と対照的に、分析物監視デバイス110は、多数の利益を提供する、(電極が皮膚の上側真皮領域内に埋込されるように)約0.25mmのより浅い微小針挿入深さを有する。これらの利益は、検出のための1つまたはそれを上回る標的分析物を含む、真皮間質液へのアクセスを含み、これは、少なくとも、真皮間質液の少なくともいくつかのタイプの分析物測定が、血液のものに密接に相関することが見出されているため、有利である。例えば、真皮間質液にアクセスする電気化学センサを使用して実施されるグルコース測定が、有利なこととして、血糖測定と非常に線形に相関することが発見されている。故に、真皮間質液に基づくグルコース測定は、的確に血糖測定値を表す。
【0044】
加えて、分析物監視デバイス110のより浅い微小針挿入深さのため、従来的な持続的分析物監視デバイスと比較して、分析物検出における低減された時間遅延が、取得される。そのようなより浅い挿入深さは、真皮網状層の高密度かつ十分に灌流される毛細血管床に近接近して(例えば、数百マイクロメートルまたはそれを下回るもの以内に)センサ表面を位置付け、毛細血管からセンサ表面までの無視できる拡散遅れをもたらす。拡散時間は、t=x/(2D)に従って、拡散距離に関連し、式中、tは、拡散時間であり、xは、拡散距離であり、Dは、着目分析物の物質拡散係数である。したがって、毛細血管内の分析物の源から2倍遠くに離れて分析物感知要素を位置付けることは、4倍の拡散遅延時間をもたらすであろう。故に、真皮の下の非常に不良に血管形成される脂肪組織内に存在する、従来の分析物センサは、真皮内の脈管からの有意により長い拡散距離をもたらし、したがって、実質的な拡散待ち時間(例えば、典型的には、5~20分)をもたらす。対照的に、分析物監視デバイス110のより浅い微小針挿入深さは、毛細血管からセンサまでのより少ない拡散待ち時間から利益を享受し、それによって、分析物検出における時間遅延を低減させ、リアルタイムまたはほぼリアルタイムでより正確な結果を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、拡散待ち時間は、10分未満、5分未満、または3分未満であり得る。
【0045】
さらに、微小針アレイが、上側真皮領域内に静止するとき、微小針アレイの下の下側真皮は、真皮代謝を支援するための非常に高いレベルの血管形成および灌流を含み、これは、(血管収縮および/または血管拡張を介して)体温調節を可能にし、微小針の周囲の感知環境を安定させることに役立つ障壁機能を提供する。より浅い挿入深さのまた別の利点は、上側真皮層に痛覚受容体が欠如し、したがって、微小針アレイがユーザの皮膚を穿刺するときに低減された痛覚をもたらし、より快適な最小侵襲性ユーザ体験を提供することである。
【0046】
したがって、本明細書に説明される分析物監視デバイスおよび方法は、ユーザの1つまたはそれを上回る標的分析物の改良された持続的監視を可能にする。例えば、上記に説明されるように、分析物監視デバイスは、適用が単純かつ簡単であり得、これは、使いやすさおよびユーザコンプライアンスを改良する。加えて、真皮間質液の分析物測定は、非常に正確な分析物検出を提供し得る。さらに、従来的な持続的分析物監視デバイスと比較して、微小針アレイおよびそのセンサの挿入は、より低侵襲性であり、患者に対するより少ない痛みを伴い得る。分析物監視デバイスおよび方法の他の側面の付加的利益が、下記にさらに説明される。
【0047】
図3Aの概略図に示されるように、いくつかの変形例では、1つまたはそれを上回る分析物を感知する際の使用のための微小針アレイ300は、基板面302から張出する、1つまたはそれを上回る微小針310を含んでもよい。基板面302は、例えば、略平面であってもよく、1つまたはそれを上回る微小針310は、平面表面から直交して張出してもよい。概して、図3Bに示されるように、微小針310は、本体部分312(例えば、シャフト)と、ユーザの皮膚を穿刺するように構成される、テーパ状遠位部分314とを含んでもよい。いくつかの変形例では、テーパ状遠位部分314は、絶縁された遠位頂点316において終端してもよい。微小針310はさらに、テーパ状遠位部分の表面上に電極320を含んでもよい。いくつかの変形例では、電極ベースの測定が、身体内に(例えば、微小針全体の外面上に)位置する電極および間質液の界面において実施されてもよい。いくつかの変形例では、微小針310は、中実コア(例えば、中実本体部分)を有してもよいが、いくつかの変形例では、微小針310は、1つまたはそれを上回る管腔を含んでもよく、これは、例えば、薬物送達または真皮間質液のサンプリングのために使用されてもよい。下記に説明されるもの等の他の微小針変形例も、同様に、中実コアまたは1つまたはそれを上回る管腔のいずれかを含んでもよい。
【0048】
微小針アレイ300は、下記にさらに説明されるように、少なくとも部分的に、半導体(例えば、シリコン)基板から形成され、種々の好適な微小電気機械システム(MEMS)製造技法(例えば、堆積およびエッチング技法)を使用して適用および成形される種々の材料層を含んでもよい。微小針アレイは、典型的な集積回路と同様に、回路基板にリフローはんだ付けされてもよい。さらに、いくつかの変形例では、微小針アレイ300は、標的分析物の検出を可能にする電気化学的感知コーティング(酵素等の生体認識要素を含む)を有する作用(感知)電極と、基準電極と、対電極とを含む、3電極設定を含んでもよい。言い換えると、微小針アレイ300は、作用電極を含む少なくとも1つの微小針310と、基準電極を含む少なくとも1つの微小針310と、対電極を含む少なくとも1つの微小針310とを含んでもよい。これらのタイプの電極の付加的詳細が、下記にさらに詳細に説明される。
【0049】
いくつかの変形例では、微小針アレイ300は、複数の微小針における各微小針上の電極が、個々にアドレス指定可能であり、微小針アレイ上の全ての他の電極から電気的に隔離されるように、絶縁される複数の微小針を含んでもよい。微小針アレイ300の結果として生じる個々のアドレス指定可能性は、各電極が、別個にプローブされ得るため、各電極の機能に対するさらなる制御を可能にし得る。例えば、微小針アレイ300は、所与の標的分析物の複数の独立した測定を提供するために使用されてもよく、これは、本デバイスの感知信頼性および正確度を改良する。さらに、いくつかの変形例では、複数の微小針の電極は、増強された信号レベルを生成するために、電気的に接続されてもよい。別の実施例として、同一の微小針アレイ500が、加えて、または代替として、複数の分析物を同時に測定し、生理学的ステータスのより包括的な査定を提供するために、インテロゲートされてもよい。例えば、図4の概略図に示されるように、微小針アレイは、第1の分析物Aを検出するための微小針の部分と、第2の分析物Bを検出するための微小針の第2の部分と、第3の分析物Cを検出するための微小針の第3の部分とを含んでもよい。微小針アレイが、任意の好適な数の分析物(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれを上回るもの等)を検出するように構成され得ることを理解されたい。検出のための好適な標的分析物は、例えば、グルコース、ケトン、乳酸、およびコルチゾールを含んでもよい。したがって、微小針アレイ300の個々の電気的アドレス指定可能性は、分析物監視デバイスの感知機能に対するさらなる制御および柔軟性を提供する。
【0050】
微小針(例えば、作用電極を伴う微小針)のいくつかの変形例では、電極320は、微小針の絶縁された遠位頂点316の近位に位置してもよい。言い換えると、いくつかの変形例では、電極320は、微小針の頂点を被覆しない。むしろ、電極320は、微小針の頂点または先端からオフセットされてもよい。微小針の絶縁された遠位頂点316の近位にある、またはそれからオフセットされる電極320は、有利なこととして、より正確なセンサ測定を提供する。例えば、本配列は、製造の間の微小針頂点316における電場の集中を防止し、それによって、誤った感知をもたらすであろう、電極320の表面上の感知化学の不均一な電着を回避する。
【0051】
別の実施例として、微小針頂点からオフセットされる電極320を設置することはさらに、微小針挿入に応じて、応力によって引き起こされる望ましくない信号アーチファクトおよび/または誤ったセンサ読取値を低減させることによって、感知正確度を改良する。微小針の遠位頂点は、皮膚の中に貫通する最初の領域であり、したがって、皮膚の引裂または切断に付随する機械的剪断現象によって引き起こされる殆どの応力を被る。電極320が、微小針の頂点または先端上に設置された場合、本機械的応力は、微小針が挿入されるときに電極表面上の電気化学的感知コーティングを剥離する、および/または少ないが干渉する量の組織を電極の活性感知部分上に輸送させ得る。したがって、微小針頂点から十分にオフセットされる電極320を設置することは、感知正確度を改良し得る。例えば、いくつかの変形例では、電極320の遠位縁は、微小針の縦方向軸に沿って測定されるように、微小針の遠位頂点または先端から少なくとも約10μm(例えば、約20μm~約30μm)に位置してもよい。
【0052】
微小針310の本体部分312はさらに、電極320と裏側電極または他の電気接点(例えば、微小針アレイの基板の裏側上に配列される)との間に延在する、導電性経路を含んでもよい。裏側電極は、回路基板にはんだ付けされ、伝導性経路を介した電極320との電気連通を可能にし得る。例えば、使用の間、作用電極において測定される(真皮の内側の)生体内感知電流は、裏側電気接点によってインテロゲートされ、裏側電気接点と作用電極との間の電気接続は、伝導性経路によって促進される。いくつかの変形例では、本伝導性経路は、微小針の近位および遠位端の間の微小針本体部分(例えば、シャフト)の内部を通して延設される金属ビアによって促進されてもよい。代替として、いくつかの変形例では、伝導性経路は、本体部分全体が伝導性材料(例えば、ドープシリコン)から形成されることによって提供されてもよい。これらの変形例のうちのいくつかでは、その上に微小針アレイ300が構築される完全な基板は、導電性であってもよく、微小針アレイ300における各微小針310は、下記に説明されるように、隣接する微小針310から電気的に隔離されてもよい。例えば、いくつかの変形例では、微小針アレイ300における各微小針310は、電極320と裏側電気接点との間に延在する伝導性経路を囲繞する電気絶縁材料(例えば、二酸化ケイ素等の誘電材料)を含む絶縁障壁を用いて、隣接する微小針310から電気的に隔離されてもよい。例えば、本体部分312は、伝導性経路の周囲にシースを形成する絶縁材料を含み、それによって、伝導性経路と基板との間の電気連通を防止してもよい。微小針間の電気的隔離を可能にする構造の他の例示的変形例が、下記にさらに詳細に説明される。
【0053】
微小針アレイにおける微小針間のそのような電気的隔離は、センサが個々にアドレス指定可能であることを可能にする。本個々のアドレス指定可能性は、有利なこととして、センサ間の独立した並列化された測定および(例えば、異なる分析物への)センサ割当の動的再構成を可能にする。いくつかの変形例では、微小針アレイにおける電極は、冗長な分析物測定を提供するように構成されることができ、これは、従来の分析物監視デバイスに優る利点である。例えば、冗長性は、正確度を改良する(例えば、同一の分析物に関する複数の分析物測定値を平均化し、分析物レベルの決定に対する極端に高いまたは低いセンサ信号の効果を低減させる)、および/または完全な失敗の尤度を低減させることによって本デバイスの信頼性を改良することによって、性能を改良することができる。
【0054】
いくつかの変形例では、微小針の個別の異なる変形例を用いて下記にさらに詳細に説明されるように、微小針アレイは、少なくとも部分的に、好適な半導体および/またはMEMS加工技法および/または機械的切断またはダイシングを用いて形成されてもよい。そのようなプロセスは、例えば、微小針アレイの大規模な費用効率的な製造を可能にするために有利であり得る。
【0055】
いくつかの変形例では、微小針は、略柱状本体部分と、電極を伴うテーパ状遠位部分とを有してもよい。例えば、図5A-5Cは、基板502から延在する、微小針500の例示的変形例を図示する。図5Aは、微小針500の概略図の側面断面である一方、図5Bは、微小針500の斜視図であり、図5Cは、微小針500の遠位部分の詳細な斜視図である。図5Bおよび5Cに示されるように、微小針500は、柱状本体部分512と、絶縁された遠位頂点516において終端する、テーパ状遠位部分514と、伝導性材料(例えば、Pt、Ir、Au、Ti、Cr、Ni等)を含み、テーパ状遠位部分514上に配列される、環状電極520とを含んでもよい。図5Aに示されるように、環状電極520は、遠位頂点516の近位にあってもよい(またはそれからオフセットまたは離間される)。例えば、電極520は、絶縁材料(例えば、SiO)を含む遠位絶縁面515aによって遠位頂点516から電気的に隔離されてもよい。いくつかの変形例では、電極520はまた、第2の遠位絶縁面515bによって柱状本体部分512から電気的に隔離されてもよい。電極520は、本体部分512に沿って裏側電気接点530(例えば、Ni/Au合金から作製される)または基板502内またはその上の他の電気パッドまで通過する、伝導性コア540(例えば、伝導性経路)と電気連通してもよい。例えば、本体部分512は、伝導性コア材料(例えば、高ドープシリコン)を含んでもよい。図5Aに示されるように、いくつかの変形例では、絶縁材料(例えば、SiO)を含む絶縁モート513が、本体部分512の周囲に(例えば、その外周の周囲に)配列され、少なくとも部分的に、基板502を通して延在してもよい。故に、絶縁モート513は、例えば、伝導性コア540と周辺基板502との間の電気接触を防止することに役立ち得る。絶縁モート513はさらに、本体部分512の表面にわたって延在してもよい。基板502の上側および/または下側面もまた、基板絶縁体504(例えば、SiO)の層を含んでもよい。故に、絶縁モート513および/または基板絶縁体504によって提供される絶縁は、少なくとも部分的に、微小針アレイ内の微小針500の個々のアドレス指定可能性を可能にする、微小針500の電気的隔離に寄与し得る。さらに、いくつかの変形例では、本体部分512の表面にわたって延在する絶縁モート513は、微小針500構造の機械的強度を増加させるように機能してもよい。
【0056】
微小針500は、少なくとも部分的に、乾式エッチングとも呼ばれる、プラズマエッチング等の好適なMEMS加工技法によって形成されてもよい。例えば、いくつかの変形例では、微小針の本体部分512の周囲の絶縁モート513は、最初に、基板の裏側から深反応性イオンエッチング(DRIE)によってシリコン基板内にトレンチを形成し、次いで、低圧化学蒸着(LPCVD)または他の好適なプロセスによってSiO/多結晶質シリコン(ポリSi)/SiOの挟装構造を用いてそのトレンチを充填することによって作製されてもよい。言い換えると、絶縁モート513は、微小針の本体部分512の表面を不動態化し、微小針の近位部分の近傍の基板502内の埋められた特徴として継続してもよい。主としてシリコンの化合物を含むことによって、絶縁モート513は、良好な充填および接着を隣り合う(例えば、伝導性コア540、基板502等の)シリコン壁に提供し得る。絶縁モート513の挟装構造はさらに、隣接するシリコンとの熱膨張係数(CTE)の優れた合致を提供することに役立ち、それによって、有利なこととして、絶縁モート513における欠陥、亀裂、および/または他の熱的に誘発される弱点を低減させ得る。
【0057】
テーパ状遠位部分は、基板の前側から等方性乾式エッチングによって形作られてもよく、微小針500の本体部分512は、DRIEから形成されてもよい。前側金属電極520は、遠位頂点516をコーティングすることなく、電極520に関する所望の環状領域における金属堆積を可能にする、特殊化されたリソグラフィ(例えば、電子ビーム蒸着)によって遠位部分上に堆積およびパターン化されてもよい。さらに、Ni/Auの裏側電気接点530は、好適なMEMS製造技法(例えば、スパッタリング)によって堆積されてもよい。
【0058】
微小針500は、任意の好適な寸法を有してもよい。例証として、微小針500は、いくつかの変形例では、約300μm~約500μmの高さを有してもよい。いくつかの変形例では、テーパ状遠位部514は、約60度~約80度の先端角度と、約1μm~約15μmの頂点直径とを有してもよい。いくつかの変形例では、環状電極520の表面積は、約9,000μm~約11,000μmまたは約10,000μmを含んでもよい。
【0059】
上記に説明されるように、微小針アレイにおける各微小針は、電極を含んでもよい。いくつかの変形例では、複数の明確に異なるタイプの電極が、微小針アレイにおける微小針間に含まれてもよい。例えば、いくつかの変形例では、微小針アレイは、3つのタイプの電極を伴う電解様式で動作可能な電気化学セルとして機能してもよい。言い換えると、微小針アレイは、少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの対電極と、少なくとも1つの基準電極とを含んでもよい。したがって、微小針アレイは、3つの明確に異なる電極タイプを含んでもよいが、各電極タイプのうちの1つまたはそれを上回るものが、完全なシステムを形成してもよい(例えば、本システムは、複数の明確に異なる作用電極を含み得る)。さらに、複数の明確に異なる微小針が、効果的な電極タイプを形成するように電気的に継合されてもよい(例えば、単一の作用電極が、作用電極部位を伴う2つまたはそれを上回る接続された微小針から形成されてもよい)。これらの電極タイプはそれぞれ、金属化層を含んでもよく、その電極の機能を促進することに役立つ、金属化層にわたる1つまたはそれを上回るコーティングまたは層を含んでもよい。
【0060】
概して、作用電極は、着目酸化および/または還元反応が着目分析物の検出のために起こる電極である。対電極は、作用電極における電気化学反応を持続するために要求される電子を電流を介してソース(提供)またはシンク(蓄積)するように機能する。基準電極は、本システムに関する基準電位を提供するように機能し、すなわち、作用電極がバイアスされる電位は、基準電極を基準とする。固定された、時変の、または少なくとも制御された電位関係が、作用電極と基準電極との間に確立され、実践的な限界内で、いかなる電流も、基準電極からソースされない、またはそれにシンクされない。加えて、そのような3電極システムを実装するために、分析物監視デバイスは、対電極が着目酸化還元反応を持続するために要求される電位に動的にスイングすることを可能にしながら、(電子フィードバック機構を介して)電気化学システム内の作用電極および基準電極構成物の間に固定された電位関係を維持するために、好適なポテンショスタットまたは電気化学アナログフロントエンドを含んでもよい。
【0061】
作用電極
上記に説明されるように、作用電極は、着目酸化および/または還元反応が起こる電極である。いくつかの変形例では、感知が、身体内に(例えば、微小針全体の外面上に)位置する作用電極および間質液の界面において実施されてもよい。いくつかの変形例では、作用電極は、電極材料と、その中で生体認識要素(例えば、酵素)が選択的分析物定量化を促進するために作用電極上に不動化される、生体認識層とを含んでもよい。いくつかの変形例では、生体認識層はまた、干渉遮断層として機能してもよく、内因性および/または外因性種が電極において直接酸化(または還元)することを防止することに役立ち得る。
【0062】
作用電極において検出される酸化還元電流は、着目分析物の検出される濃度に相関し得る。これは、定常状態の拡散限定システムを仮定して、作用電極において検出される酸化還元電流が、下記のコットレル関係に従うためである。
【化1】
式中、nは、酸化還元反応を軽減する電子の化学量論的数であり、Fは、ファラデー定数であり、Aは、電極表面積であり、Dは、着目分析物の拡散係数であり、Cは、着目分析物の濃度であり、tは、本システムが電位を用いてバイアスされる持続時間である。したがって、作用電極において検出される電流は、分析物濃度と線形に比例する。
【0063】
さらに、検出される電流は、電極表面積Aの直接関数であるため、電極の表面積は、センサの感度(例えば、分析物の1モルあたりのアンペア)を強化するために、増加されてもよい。例えば、複数の単体の作用電極が、合計有効感知表面積を増加させるために、2つまたはそれを上回る構成物質のアレイに群化されてもよい。加えて、または代替として、冗長性を取得するために、複数の作用電極が、着目分析物の濃度の複数の独立した測定値を取得するために、並列化されたセンサとして動作されてもよい。作用電極は、アノードとして(分析物がその表面において酸化されるように)、またはカソードとして(分析物がその表面において還元されるように)のいずれかとして動作されることができる。
【0064】
図6Aは、作用電極610に関する層の例示的セットの概略図を描写する。例えば、上記に説明されるように、いくつかの変形例では、作用電極610は、電極材料612と、生体認識要素を含む生体認識層とを含んでもよい。電極材料612は、分析物または分析物および生体認識要素の反応の生成物の電気触媒検出を促すように機能する。電極材料612はまた、オーム接触を提供し、電気触媒反応からの電気信号を処理回路網にルーティングする。いくつかの変形例では、電極材料612は、図6Aに示されるように、白金を含んでもよい。しかしながら、電極材料612は、代替として、例えば、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金、ルテニウム、チタン、ニッケル、炭素、ドープダイヤモンド、または他の好適な触媒および不活性材料を含んでもよい。
【0065】
いくつかの変形例では、電極材料612は、白金黒層613等の高多孔性電気触媒層を用いてコーティングされてもよく、これは、強化された感度のために電極表面積を増大させ得る。加えて、または代替として、白金黒層613は、生体認識層614によって促進される生体認識反応の生成物の電気触媒酸化または還元を可能にし得る。しかしながら、いくつかの変形例では、白金黒層613は、(例えば、図6Dおよび6Gに示されるように)省略されてもよい。電極は、白金黒層613が存在しない場合、生体認識反応の生成物の電気触媒酸化または還元を可能にし得る。
【0066】
生体認識層614は、電極材料612(またはこれが存在する場合、白金黒層613)にわたって配列されてもよく、生体認識要素を不動化し、安定させるように機能し、これは、長い期間にわたって選択的分析物定量化を促進する。いくつかの変形例では、生体認識要素は、酸化酵素等の酵素を含んでもよい。グルコース監視システムにおける使用のための例示的変形例として、生体認識要素は、グルコース酸化酵素を含んでもよく、これは、酸素の存在下で、グルコースを、電極表面において検出され得る電気活性生成物(すなわち、過酸化水素)に変換する。具体的には、本例示的変形例と関連付けられる酸化還元方程式は、グルコース+酸素→過酸化水素+グルコノラクトン(グルコース酸化酵素によって媒介される)、過酸化水素→水+酸素(作用電極において酸化電位を印加することによって媒介される)である。
【0067】
しかしながら、他の変形例では、生体認識要素は、加えて、または代替として、乳酸酸化酵素、アルコール酸化酵素、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素、チロシナーゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸酸化酵素、コレステロール酸化酵素、コリン酸化酵素、ピルビン酸酸化酵素、尿酸酸化酵素、ウレアーゼ、および/またはキサンチン酸化酵素等の別の好適な酸化酵素または酸化還元酵素を含んでもよい。
【0068】
いくつかの変形例では、生体認識要素は、生体認識層614内の生体認識要素を安定させることに役立ち得る、アミン縮合カルボニル化学種と架橋されてもよい。下記にさらに説明されるように、いくつかの変形例では、生体認識要素の架橋は、微小針アレイがエチレンオキシド(EO)滅菌と適合することをもたらし得、これは、同一の滅菌サイクルへの分析物監視デバイス全体(感知要素および電子機器を含む)の暴露を可能にし、それによって、滅菌プロセスを簡略化し、製造費用を低下させる。例えば、生体認識要素は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、および/または他の好適な種と架橋されてもよい。いくつかの変形例では、生体認識要素は、架橋された生体認識要素集合体を形成するために、そのようなアミン縮合カルボニル化学種と架橋されてもよい。少なくとも閾値分子量を有する架橋された生体認識要素集合体は、次いで、伝導ポリマー中に埋設されてもよい。閾値分子量を有するそれらの集合体のみを埋設することによって、いずれの非架橋酵素も、スクリーニングされて除かれ、生体認識層の中に組み込まれ得ない。故に、所望の分子量を有する集合体のみが、伝導ポリマー中での使用のために選択され、十分に安定化された架橋された酵素体のみが、生体認識層内に含まれることを確実にすることに役立ち、それによって、感知性能の損失を伴わずに、EO滅菌に全体的により適した生体認識層に寄与し得る。いくつかの変形例では、グルコース酸化酵素のものの少なくとも2倍である分子量を有する架橋された集合体のみが、伝導ポリマー中に埋設されてもよい。
【0069】
いくつかの変形例では、伝導ポリマーは、その変動がセンサの感度に悪影響を及ぼし得る、循環するアンドロジナス電気活性種(例えば、アスコルビン酸、ビタミンC等)に対する生体認識層の堅牢性に寄与するために、選択透過性であってもよい。生体認識層におけるそのような選択透過性伝導ポリマーはさらに、センサ正確度に影響を及ぼし得る間質液中の薬理学的干渉(例えば、アセトアミノフェン)に対してより堅牢であり得る。伝導ポリマーは、例えば、酸化的電解重合プロセスによって過剰な電荷キャリアを除去することによって、または対イオンドーパントを用いてこれらの電荷キャリアを中和することによって、選択透過性にされ、それによって、伝導ポリマーを非伝導形態に変換し得る。これらの酸化的に重合された伝導ポリマーは、選択透過性を呈し、したがって、ドーパントイオンに類似する電荷極性(正味正または負)のイオンを拒絶する、または伝導ポリマーの高密度かつコンパクトな形態に起因するサイズ排除を介してイオンを拒絶することが可能である。
【0070】
さらに、いくつかの変形例では、伝導ポリマーは、自己シールおよび/または自己治癒性質を呈し得る。例えば、伝導ポリマーは、酸化的電解重合を受け得、その間、伝導ポリマーは、十分な伝導率の欠如が付加的な伝導ポリマーの堆積を減少させるまで、電極上の堆積された伝導ポリマーの厚さが増加するにつれて、その伝導率を喪失し得る。伝導ポリマーが(例えば、使用の間に)微小な物理的損傷に屈した場合では、ポリマー骨格は、再集合し、自由電荷を中和し、それによって、分子構造の全体的表面エネルギーを低下させ得、これは、自己シールおよび/または自己治癒性質として現れ得る。
【0071】
いくつかの変形例では、作用電極はさらに、生体認識層614にわたって配列される、拡散限定層1615を含んでもよい。拡散限定層615は、内因性酸素変動に対するセンサの感度を低減させるために、着目分析物の流束を限定するように機能してもよい。例えば、拡散限定層615は、これが好気性酵素に対する限界反応物質になるように、着目分析物の濃度を減衰させてもよい。しかしながら、いくつかの変形例では(例えば、生体認識要素が好気性ではない場合)、拡散限定層615は、省略されてもよい。
【0072】
作用電極はさらに、いくつかの変形例では、例えば、異物応答を低減させるために、生体適合性界面を提供する親水性層616を含んでもよい。しかしながら、いくつかの変形例では、親水性層616は、例えば、図6Dおよび6Gに示されるように、(例えば、拡散限定層が本目的を果たすための親水性部分を表す場合)省略されてもよい。
【0073】
対電極
上記に説明されるように、対電極は、作用電極における電気化学反応を持続するために要求される電子を(電流を介して)ソースまたはシンクする電極である。対電極構成要素の数は、対電極の通電容量が作用電極の酸化還元反応を限定しないように、表面積を増大させるために、対電極アレイの形態において増加されることができる。したがって、通電容量限定を回避するために、作用電極面積に対して過剰な対電極面積を有することが、望ましくあり得る。作用電極が、アノードとして動作される場合、対電極は、カソードとしての役割を果たし、逆もまた同様であろう。同様に、酸化反応が、作用電極において起こる場合、還元反応が、対電極において起こり、逆もまた同様である。作用電極または基準電極と異なり、対電極は、作用電極上で着目酸化還元反応を持続するために要求される電位に動的にスイングすることを可能にされる。
【0074】
図6Bに示されるように、対電極620は、電極材料612に類似する電極材料622を含んでもよい。例えば、電極材料612のように、対電極620における電極材料622は、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、炭素、ドープダイヤモンド、および/または他の好適な触媒および不活性材料を含んでもよい。
【0075】
いくつかの変形例では、対電極620は、電極材料632にわたって付加的層を殆どまたは全く有していない場合がある。しかしながら、いくつかの変形例では、対電極620は、これが支援し得る電流の量を増加させるために、表面積の増加から利益を享受し得る。例えば、対電極材料632は、強化された電流ソースまたはシンク能力のために、電極材料632の表面積を増大させるような方法でテクスチャ加工される、または別様に粗面化されてもよい。加えて、または代替として、対電極620は、白金黒の層624を含んでもよく、これは、作用電極のいくつかの変形例に関して上記に説明されるように、電極面積を増大させ得る。しかしながら、対電極のいくつかの変形例では、白金黒の層は、(例えば、図6Eに示されるように)省略されてもよい。いくつかの変形例では、対電極はさらに、例えば、異物応答を低減させるために、生体適合性界面を提供する親水性層を含んでもよい。
【0076】
加えて、または代替として、図6Hに示されるようないくつかの変形例では、対電極620は、拡散限定層625(電極にわたって配列される)を含んでもよい。拡散限定層625は、例えば、図6Aに関して上記に説明される拡散限定層615に類似し得る。
【0077】
基準電極
上記に説明されるように、基準電極は、本システムに関する基準電位を提供するように機能し、すなわち、作用電極がバイアスされる電位は、基準電極を基準とする。固定された、または少なくとも制御された電位関係が、作用電極と基準電極との間に確立されてもよく、実践的な限界内で、いかなる電流も、基準電極からソースされない、またはそれにシンクされない。
【0078】
図6Cに示されるように、基準電極630は、電極材料612に類似する電極材料632を含んでもよい。いくつかの変形例では、電極材料612のように、基準電極630における電極材料632は、金属塩または金属酸化物を含んでもよく、これは、周知の電極電位を伴う安定した酸化還元対としての役割を果たす。例えば、金属塩は、例えば、銀-塩化銀(Ag/AgCl)を含んでもよく、金属酸化物は、酸化イリジウム(IrOx/Ir/IrO)を含んでもよい。他の変形例では、貴金属および不活性金属表面は、準基準電極として機能し、金、白金、パラジウム、イリジウム、炭素、ドープダイヤモンド、および/または他の好適な触媒および不活性材料を含んでもよい。さらに、いくつかの変形例では、基準電極630は、任意の後続層との接着を強化するような方法でテクスチャ加工される、または別様に粗面化されてもよい。電極材料632上のそのような後続層は、白金黒層634を含んでもよい。しかしながら、いくつかの変形例では、白金黒層は、(例えば、図6Fおよび6Iに示されるように)省略されてもよい。
【0079】
基準電極630はさらに、いくつかの変形例では、酸化還元対層636を含んでもよく、これは、主に、安定した熱力学的電位を伴う表面不動化された固体状態酸化還元対を含有する。例えば、基準電極は、標準水素電極(SHE)に対して安定した標準熱力学的電位において動作してもよい。電極電位の高い安定性は、酸化還元反応の各関与物質の一定の(例えば、緩衝または飽和)濃度を伴う酸化還元系を採用することによって達成されてもよい。例えば、基準電極は、酸化還元対層636内に飽和Ag/AgCl(E=+0.197V対SHE)またはIrOx(E=+0.177対SHE、pH=7.00)を含んでもよい。酸化還元対層636の他の実施例は、米国特許公開第2019/0309433号(本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるもの等のドーパント分子を伴う好適な伝導ポリマーを含んでもよい。いくつかの変形例では、基準電極は、完全な電気化学セルを構築するために、ハーフセルとして使用されてもよい。
【0080】
加えて、または代替として、図6Iに示されるようないくつかの変形例では、基準電極630は、拡散限定層635(例えば、電極および/または酸化還元対層にわたって配列される)を含んでもよい。拡散限定層635は、例えば、図16Aに関して上記に説明される拡散限定層615に類似し得る。
【0081】
例示的電極層形成
作用電極、対電極、および基準電極の種々の層が、下記に説明されるもの等の好適なプロセスを使用して、微小針アレイに適用される、および/または官能化等をされてもよい。
【0082】
微小針アレイに関する前処理ステップでは、微小針アレイは、電極材料(例えば、上記に説明されるような電極材料612、622、および632)を含む材料の表面をより親水性かつ化学反応性にするために、不活性ガス(例えば、アルゴン等のRF発生不活性ガス)プラズマ環境においてプラズマ洗浄されてもよい。本前処理は、有機物破片および汚染物質を物理的に除去するだけではなく、また、その表面上に続けて堆積されるフィルムの接着を強化するために電極表面を洗浄および準備するように機能する。
【0083】
複数の微小針(例えば、そのそれぞれが、上記に説明されるような作用電極、対電極、または基準電極を有し得る、本明細書に説明される微小針変形例のうちのいずれか)が、微小針アレイにおいて配列されてもよい。微小針を構成する方法の考慮事項は、微小針アレイを用いて皮膚を貫通するための所望の挿入力、電極信号レベルおよび他の性能側面の最適化、製造費用および複雑性等の因子を含む。
【0084】
例えば、微小針アレイは、所定のピッチ(1つの微小針の中心とその最近傍の近隣の微小針の中心との間の距離)において離間される、複数の微小針を含んでもよい。いくつかの変形例では、微小針は、微小針アレイに皮膚を貫通させるためにユーザの皮膚に印加される力を分配する(例えば、「針の筵」効果を回避する)ように、十分なピッチを伴って離間されてもよい。ピッチが増加するにつれて、微小針アレイを挿入するために要求される力は、減少する傾向があり、貫通の深さは、増加する傾向がある。しかしながら、ピッチが、低い値(例えば、約150μm未満)においてのみ挿入力に影響を及ぼし始めることが見出されている。故に、いくつかの変形例では、微小針アレイにおける微小針は、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm、少なくとも700μm、または少なくとも750μmのピッチを有してもよい。例えば、ピッチは、約200μm~約800μm、約300μm~約700μm、または約400μm~約600μmであってもよい。いくつかの変形例では、微小針は、周期的グリッドにおいて配列されてもよく、ピッチは、全ての方向において、かつ微小針アレイの全ての領域を横断して均一であってもよい。代替として、ピッチは、異なる軸(例えば、X、Y方向)に沿って測定されるように、異なってもよい、および/または微小針アレイのいくつかの領域は、より小さいピッチを含んでもよい一方、その他は、より大きいピッチを含んでもよい。
【0085】
さらに、より一貫した貫通のために、微小針は、相互から等距離(例えば、全ての方向において同一のピッチ)に離間されてもよい。そのために、いくつかの変形例では、微小針アレイにおける微小針は、図7に示されるような六角形構成において配列されてもよい。代替として、微小針アレイにおける微小針は、長方形アレイ(例えば、正方形アレイ)において、または別の好適な対称様式において配列されてもよい。
【0086】
微小針アレイの構成を決定するための別の考慮事項は、微小針によって提供される全体的信号レベルである。概して、各微小針における信号レベルは、アレイにおける微小針要素の合計数に対して不変である。しかしながら、信号レベルは、複数の微小針をアレイにおいてともに電気的に相互接続することによって強化されることができる。例えば、多数の電気的に接続された微小針を伴うアレイは、より少ない微小針を伴うものを上回る信号強度(したがって、増加された正確度)を生成することが予期される。しかしながら、ダイ上のより多数の微小針は、(一定のピッチを前提として)ダイ費用を増加させ、また、皮膚の中に挿入するためにさらなる力および/または速度を要求するであろう。対照的に、ダイ上のより少ない数の微小針は、ダイ費用を低減させ、低減された印加力および/または速度を伴う皮膚の中への挿入を可能にし得る。さらに、いくつかの変形例では、ダイ上のより少ない数の微小針は、ダイの全体的占有面積を低減させ得、これは、より少ない不要な限局性浮腫および/または紅斑につながり得る。故に、いくつかの変形例では、これらの因子間の平衡が、図7に示されるような37個の微小針を含む微小針アレイまたは図8A8Cに示されるような7つの微小針を含む微小針アレイを用いて達成されてもよい。しかしながら、他の変形例では、アレイにおけるより少ない微小針(例えば、約5~約35個、約5~約30個、約5~約25個、約5~約20個、約5~約15個、約5~約100個、約10~約30個、約15~約25個等)またはアレイにおけるより多い微小針(例えば、37個を上回る、40個を上回る、45個を上回る等)が、存在してもよい。
【0087】
加えて、下記にさらに詳細に説明されるように、いくつかの変形例では、微小針アレイにおける微小針のサブセットのみが、分析物監視デバイスの動作の間に活性であってもよい。例えば、微小針アレイにおける微小針の一部が、不活性であってもよい(例えば、いかなる信号も不活性微小針の電極から読み取られない)。いくつかの変形例では、微小針アレイにおける微小針の一部が、動作の間のある時点で活性化され、本デバイスの動作寿命の残りにわたって活性のままであってもよい。さらに、いくつかの変形例では、微小針アレイにおける微小針の一部が、加えて、または代替として、動作の間のある時点で不活性化され、本デバイスの動作寿命の残りにわたって不活性のままであってもよい。
【0088】
微小針アレイのためのダイの特性を考慮する際、ダイサイズは、微小針アレイにおける微小針の数および微小針のピッチの関数である。より小さいダイサイズは、所与の面積の単一のウエハから形成され得るダイの数が増加するであろうため、より低い費用に寄与するであろうため、製造費用もまた、考慮事項である。さらに、より小さいダイサイズはまた、基板の相対的脆弱性に起因する脆性破断を受けにくいであろう。
【0089】
さらに、いくつかの変形例では、微小針アレイの周辺(例えば、ダイの縁または境界の近傍、筐体の縁または境界の近傍、筐体上の接着剤層の縁または境界の近傍、微小針アレイの外縁に沿った等)における微小針は、微小針アレイまたはダイの中心における微小針と比較して、より良好な貫通に起因して、より良好な性能(例えば、感度)を有することが見出され得る。故に、いくつかの変形例では、作用電極は、より正確および/または精密な分析物測定を取得するために、大部分が、または全体的に、微小針アレイの周辺に位置する微小針上に配列されてもよい。
【0090】
図7は、微小針アレイの例示的変形例において配列される、37個の微小針の例証的概略図を描写する。37個の微小針は、例えば、各微小針の中心と任意の方向におけるそのすぐ近隣の中心との間の約750μm(または約700μm~約800μmまたは約725μm~約775μm)の針間の中心間ピッチを伴って六角形アレイにおいて配列されてもよい。
【0091】
図8Aおよび8Bは、微小針アレイ800の例示的変形例において配列される、7つの微小針810の例証的概略図の斜視図を描写する。7つの微小針810は、基板802上に六角形アレイにおいて配列される。図8Aに示されるように、電極820は、基板802の第1の表面から延在する微小針810の遠位部分上に配列される。図8Bに示されるように、微小針810の近位部分は、基板802の第1の表面に対向する基板802の第2の表面上の個別の裏側電気接点830に伝導的に接続される。図8Cおよび8Dは、微小針アレイ800に類似する微小針アレイの例証的概略図の平面図および側面図を描写する。図8Cおよび8Dに示されるように、7つの微小針は、各微小針の中心と任意の方向におけるそのすぐ近隣の中心との間の約750μmの針間の中心間ピッチを伴って六角形アレイにおいて配列される。他の変形例では、針間の中心間ピッチは、例えば、約700μm~約800μmまたは約725μm~約775μmであってもよい。微小針は、約170μm(または約150μm~約190μmまたは約125μm~約200μm)のおおよその外側シャフト直径と、約500μm(または約475μm~約525μmまたは約450μm~約550μm)の高さとを有してもよい。
【0092】
さらに、本明細書に説明される微小針アレイは、作用電極、対電極、および基準電極が微小針アレイ内に位置する場所に関する高度な構成可能性を有してもよい。本構成可能性は、電子機器システムによって促進されてもよい。
【0093】
いくつかの変形例では、微小針アレイは、微小針アレイにおいて対称または非対称様式で2つまたはそれを上回る群に分配される電極を含み、各群は、信号感度および/または冗長性に関する要件に応じて、同一または異なる数の電極構成要素を特徴としてもよい。例えば、同一のタイプの電極(例えば、作用電極)が、微小針アレイにおいて両側的に、または半径方向に対称な様式で分配されてもよい。例えば、図9Aは、7つの作用電極(WE)の2つの対称群を含む微小針アレイ900Aの変形例を描写し、2つの作用電極群は、「1」および「2」と標識化される。本変形例では、2つの作用電極群は、微小針アレイ内で両側的に対称な様式で分配される。作用電極は、概して、3つの基準電極(RE)の中心領域と20個の対電極(CE)の外側外周領域との間に配列される。いくつかの変形例では、2つの作用電極群はそれぞれ、(例えば、センサ信号を強化するために)それら自体の間で電気的に接続される7つの作用電極を含んでもよい。代替として、作用電極群のうちの一方または両方の一部のみが、それら自体の間で電気的に接続される複数の電極を含んでもよい。また別の代替として、作用電極群は、スタンドアロンであり、他の作用電極に電気的に接続されない作用電極を含んでもよい。さらに、いくつかの変形例では、作用電極群は、非対称またはランダム構成において微小針アレイにおいて分配されてもよい。
【0094】
別の実施例として、図9Bは、3つの作用電極(WE)の4つの対称群を含む微小針アレイ900Bの変形例を描写し、4つの作用電極群は、「1」、「2」、「3」、および「4」と標識化される。本変形例では、4つの作用電極群は、微小針アレイにおいて半径方向に対称な様式で分配される。各作用電極群は、微小針アレイにおける2つの基準電極(RE)構成物質のうちの1つに隣接し、対称様式で配列される。微小針アレイはまた、不活性である、または他の特徴または動作モードのために使用され得る六角形の頂点上の2つの電極を除いて、微小針アレイの外周の周囲に配列される対電極(CE)を含む。
【0095】
いくつかの変形例では、微小針アレイの一部のみが、活性電極を含んでもよい。例えば、図9Cは、37個の微小針と、両側的に対称な配列における4つの作用電極(「1」、「2」、「3」、および「4」と標識化される)、22個の対電極、および3つの基準電極を含む、低減された数の活性電極とを伴う微小針アレイ900Cの変形例を描写する。微小針アレイにおける残りの8つの電極は、不活性である。図9Cに示される微小針アレイでは、作用電極はそれぞれ、対電極の群によって囲繞される。作用電極および対電極のそのようなクラスタの2つの群は、3つの基準電極の列によって分離される。
【0096】
別の実施例として、図9Dは、37個の微小針と、両側的に対称な配列における4つの作用電極(「1」、「2」、「3」、および「4」と標識化される)、20個の対電極、および3つの基準電極を含む、低減された数の活性電極とを伴う微小針アレイ900Dの変形例を描写し、微小針アレイにおける残りの10個の電極は、不活性である。
【0097】
別の実施例として、図9Eは、37個の微小針と、4つの作用電極(「1」、「2」、「3」、および「4」と標識化される)、18個の対電極、および2つの基準電極を含む、低減された数の活性電極とを伴う微小針アレイ900Eの変形例を描写する。微小針アレイにおける残りの13個の電極は、不活性である。不活性電極は、微小針アレイ全体の部分的外周に沿っており、それによって、活性微小針配列の有効サイズおよび形状をより小さい六角形アレイに縮小する。活性微小針配列内で、4つの作用電極は、概して、半径方向に対称な配列であり、作用電極はそれぞれ、対電極の群によって囲繞される。
【0098】
図9Fは、37個の微小針と、4つの作用電極(「1」、「2」、「3」、および「4」と標識化される)、2つの対電極、および1つの基準電極を含む、低減された数の活性電極とを伴う微小針アレイ900Fの別の例示的変形例を描写する。微小針アレイにおける残りの30個の電極は、不活性である。不活性電極は、微小針アレイ全体の外周の周囲に2つの層において配列され、それによって、活性微小針配列の有効サイズおよび形状を、基準電極の周囲に心合されるより小さい六角形アレイに縮小する。活性微小針配列内で、4つの作用電極は、両側的に対称な配列であり、対電極は、中心基準電極から等距離である。
【0099】
図9Gは、37個の微小針および低減された数の活性電極を伴う微小針アレイ900Gの別の例示的変形例を描写する。微小針アレイ900Gにおける活性電極は、微小針アレイ900Gが、1つの対電極と、2つの基準電極とを含み、活性微小針のより小さい六角形アレイが、対電極の周囲に心合されることを除いて、図9Fに示される微小針アレイ900Fにおけるものと類似する様式で配列される。活性微小針配列内で、4つの作用電極は、両側的に対称な配列であり、基準電極は、中心対電極から等距離である。
【0100】
図9Hは、7つの微小針を伴う微小針アレイ900Hの別の例示的変形例を描写する。微小針配列は、独立した作用電極として割り当てられる2つの微小針(1および2)と、4つの微小針から成る対電極構成物と、単一の基準電極とを含有する。中心基準電極から等距離である、作用電極および対電極の配列における両側対称性が、存在する。加えて、作用電極は、微小針アレイの中心から可能な限り離れて(例えば、ダイまたはアレイの周辺に)配列され、作用電極がさらなる感度および全体的性能を有することが予期される場所を利用する。
【0101】
図9Iは、7つの微小針を伴う微小針アレイ900Iの別の例示的変形例を描写する。微小針配列は、それぞれ2つの作用電極の2つの独立した群化として割り当てられる4つの微小針(1および2)と、2つの微小針から成る対電極構成物と、単一の基準電極とを含有する。中心基準電極から等距離である、作用電極および対電極の配列における両側対称性が、存在する。加えて、作用電極は、微小針アレイの中心から可能な限り離れて(例えば、ダイまたはアレイの周辺に)配列され、作用電極がさらなる感度および全体的性能を有することが予期される場所を利用する。
【0102】
図9Jは、7つの微小針を伴う微小針アレイ900Jの別の例示的変形例を描写する。微小針配列は、独立した作用電極として割り当てられる4つの微小針(1、2、3、および4)と、2つの微小針から成る対電極構成物と、単一の基準電極とを含有する。中心基準電極から等距離である、作用電極および対電極の配列における両側対称性が、存在する。加えて、作用電極は、微小針アレイの中心から可能な限り離れて(例えば、ダイまたはアレイの周辺に)配列され、作用電極がさらなる感度および全体的性能を有することが予期される場所を利用する。
【0103】
図9A-9Jは、微小針アレイ構成の例示的変形例を図示するが、これらの図が、限定ではなく、他の微小針構成(異なる数および/または分布の作用電極、対電極、および基準電極、および異なる数および/または分布の活性電極および不活性電極等を含む)も、微小針アレイの他の変形例において好適であり得ることを理解されたい。
【0104】
アナログフロントエンド
いくつかの変形例では、分析物監視デバイスの電子機器システムは、アナログフロントエンドを含んでもよい。アナログフロントエンドは、アナログ電流測定値をマイクロコントローラによって処理され得るデジタル値に変換する、センサ回路網(例えば、図2Aに示されるようなセンサ回路網124)を含んでもよい。アナログフロントエンドは、例えば、電気化学センサとの併用のために好適である、プログラマブルアナログフロントエンドを含んでもよい。例えば、アナログフロントエンドは、電気化学センサとの併用のための超低電力プログラマブルアナログフロントエンドである、Maxim Integrated(San Jose, CA)から入手可能なMAX30131、MAX30132、またはMAX30134構成要素(それぞれ、1つ、2つ、および4つのチャネルを有する)を含んでもよい。アナログフロントエンドはまた、高精度、インピーダンス、および電気化学フロントエンドである、Analog Devices(Norwood, MA)から入手可能なAD5940またはAD5941構成要素を含んでもよい。同様に、アナログフロントエンドはまた、低電力化学感知用途のための構成可能なアナログフロントエンドポテンショスタットである、Texas Instruments(Dallas, TX)から入手可能なLMP91000を含んでもよい。アナログフロントエンドは、バイアスおよびアナログ/デジタルコンバータ(ADC)を含む完全な測定経路を提供してもよい。超低電力は、測定が身体装着バッテリ動作デバイスを使用して長い持続時間(例えば、7日)にわたって要求されるとき、正確度および高速応答を維持するためにセンサの連続的バイアスを可能にし得る。
【0105】
いくつかの変形例では、アナログフロントエンドデバイスは、DC電流測定、AC電流測定の両方、および電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定能力を可能にするため等、2および3端子電気化学センサの両方と互換性があってもよい。さらに、アナログフロントエンドは、内部温度センサおよびプログラマブル電圧基準を含み、外部温度監視および外部基準ソースを支援し、安全性およびコンプライアンスのためにバイアスおよび供給電圧の電圧監視を統合してもよい。
【0106】
いくつかの変形例では、アナログフロントエンドは、センサ入力を多重化し、複数の信号チャネルを取り扱うために、マルチチャネルポテンショスタットを含んでもよい。例えば、アナログフロントエンドは、米国特許第9,933,387号(本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるもの等のマルチチャネルポテンショスタットを含んでもよい。
【0107】
いくつかの変形例では、アナログフロントエンドおよび周辺電子機器は、特定用途向け集積回路(ASIC)に統合されてもよく、これは、例えば、費用を低減させることに役立ち得る。本統合された解決策は、いくつかの変形例では、下記に説明されるマイクロコントローラを含んでもよい。
【0108】
マイクロコントローラ
いくつかの変形例では、分析物監視デバイスの電子機器システムは、少なくとも1つのマイクロコントローラ(例えば、図2Aに示されるようなコントローラ122)を含んでもよい。マイクロコントローラは、例えば、統合されたフラッシュメモリを伴うプロセッサを含んでもよい。いくつかの変形例では、分析物監視デバイスにおけるマイクロコントローラは、分析を実施し、センサ信号を分析物測定値(例えば、グルコース測定値)に相関させるように構成されてもよい。例えば、マイクロコントローラは、ファームウェア内のプログラムされたルーチンを実行し、(例えば、アナログフロントエンドからの)デジタル信号を解釈し、任意の関連するアルゴリズムおよび/または他の分析を実施し、通信モジュールに、および/またはそれから処理されたデータをルーティングしてもよい。分析を分析物監視デバイスにオンボードに保つことは、例えば、各接続されたデバイスが同一の情報を有することを確実にしながら、分析物監視デバイスが分析物測定値を複数のデバイス(例えば、スマートフォンまたはスマートウォッチ等のモバイルコンピューティングデバイス、インスリンペンまたはポンプ等の療法送達システム等)に並行してブロードキャストすることを可能にし得る。
【0109】
いくつかの変形例では、マイクロコントローラは、1つまたはそれを上回る検出された条件に応じて分析物監視デバイスをアクティブ化および/または非アクティブ化するように構成されてもよい。例えば、本デバイスは、皮膚の中への微小針アレイの挿入に応じて、分析物監視デバイスを電源オンにするように構成されてもよい。これは、例えば、微小針アレイが皮膚内に設置されるまでバッテリが接続解除されており、その時点で本デバイスがセンサデータをブロードキャストし始め得る、電力節約特徴を可能にし得る。そのような特徴は、例えば、分析物監視デバイスの貯蔵寿命を改良する、および/またはユーザのために分析物監視デバイス-外部デバイスペアリングプロセスを簡略化することに役立ち得る。
【0110】
現在の主題の側面は、分析物監視デバイス110等の微小針アレイベースの分析物監視デバイスにおける、障害検出、および障害検出に関係する診断を対象とする。1つまたはそれを上回る標的分析物を測定するために構成される電気化学的センサ(例えば、分析物監視デバイス110の電極)は、分析物監視デバイス110の使用の間、種々の障害を被り得る。障害は、その障害が、分析物監視デバイス110の動作に影響を及ぼす分析物監視デバイス110の1つまたはそれを上回る側面の障害であり得る。障害の実施例は、電極膜の劣化(例えば、感知に影響を及ぼす膜構造および/または表面に対する亀裂、剥離、および/または他の損傷)、生体認識要素の劣化(例えば、不活性化および/または変性)、微小針アレイの埋込に対する生理的応答(例えば、その上に電極が形成される微小針の挿入に応答して起こる異物応答、不溶化、タンパク質付着、またはコラーゲン形成)、微小針アレイの不適切な設置または挿入(例えば、その上に電極が形成される微小針が、分析物感知のために十分な深さで設置されない)、圧力減衰(例えば、分析物監視デバイス110に印加される圧力)、および外部環境的影響(例えば、分析物監視デバイス110の電子機器に対する外部影響)を含む。障害は、分析物監視デバイス110の電気的および/または電気化学的挙動に影響を及ぼし得、標的分析物または複数の分析物の測定における誤差および/または低信頼性をもたらす。いくつかの事例では、障害は、圧力減衰の場合等、一時的であり得る。他の事例では、障害は、分析物監視デバイス110の動作に恒久的に影響を及ぼし得る。
【0111】
いくつかの障害は、電流引込を監視することによって検出可能であり得る。例えば、分析物監視デバイス110の作用電極における感知電流の値は、いくつかの障害を示す、および/またはそれに相関し得る。これらの事例では、感知電流が、極端かつ不規則、および/または予想外の挙動またはパターンを呈する場合、障害は、呈される感知電流の挙動またはパターンの特性に基づいて決定可能であり得る。感知電流の極端かつ不規則、および/または予想外の挙動またはパターンは、非生理的に可能である、または可能性として考えられる急速変化率によって特徴付けられ得る。高ノイズもまた、感知電流の挙動またはパターンに寄与し得る。
【0112】
しかしながら、他の障害は、感知電流には影響を与えない一方、依然として、分析物監視デバイス110の電気的および/または電気化学的挙動に影響を与え得る。したがって、代替または付加的変数が、分析物監視デバイス110の電気的および/または電気化学的挙動に対する変化への洞察およびその検証のために必要とされる。対電極における電圧は、そのような洞察および検証を提供する変数の実施例である。したがって、対電極における電圧を監視することによって、障害が、検出され得る。
【0113】
上記に説明されるもの等の種々のタイプの障害が起こり得るが、障害は、概して、分析物監視デバイス110が、障害(例えば、その障害は、一時的である)から回復することができるかどうか、または分析物監視デバイス110が、損傷され(例えば、その障害は、永続的である)、動作が停止されるべきであるかどうかによって特徴付けられ得る。対電極電圧を監視することによって、およびいくつかの変形例では、いかにして対電極電圧が感知電流と一致する、またはそれと相関するかを監視することによって、そのような特性評価が行われ得、障害に対する応答が、決定され得る。障害に対する応答は、分析物監視デバイスを動作させるための動作モードの形態であり得る。例えば、障害が一時的である場合、動作モードは、障害の間、任意の感知データをブランキングおよび/または無視することを含んでもよい。本状況では、感知データは、不正確であり、したがって、ユーザに報告されない、または動作目的のために使用されない。障害が永続的である場合、動作モードは、分析物監視デバイスの動作を休止することになり得る。いくつかの変形例では、これは、作用電極と基準電極との間のバイアス電位の印加を停止することを含んでもよい。
【0114】
いくつかの変形例では、対電極電圧は、障害のインジケーションとしての役割を果たし得る1つまたはそれを上回る特性を識別するために監視される。障害を示す特性は、対電極電圧の変化率および/または対電極電圧の順守下限を含み得る。本特性は、対電極電位と作用電極における電流との間の関係を考慮することによって解説され得る。すなわち、本明細書にさらに説明されるように、対電極電圧は、動的にスイングする、または作用電極における酸化還元反応を持続するために要求される電位に調節される。対電極電圧は、したがって、作用電極における電流(例えば、感知電流)のレベルを支援するために要求される電圧と見なされ得る。感知電流が、変動または変化するにつれて、対電極電圧は、対応するまたは互恵的様式で変動または変化する。感知電流が急速変化率を被る場合、対電極電圧は、急速変化率で応答する。感知電流と対電極電圧との間の対応または相関は、等しいが、変化率においては正反対である(またはほぼ等しいが、正反対である(例えば、変化率間で最大約5%の差))と定義され得る。感知電流が、規定の率で変化する場合、対電極電圧は、逆方向に既定の率で変化する。対電極電圧の変化率は、その時、感知電流の変化率のインジケータとしての役割を果たす。急速変化率を呈する感知電流は、非生理的に可能である、または可能性として考えられる。したがって、対電極電圧を監視することによって、感知電流の生理学的実現可能性に関する決定が、行われ得る。急速変化率が、生理的に可能性として考えられないと、そのような変化は、デバイスに何か異常があるというインジケーションとしての役割を果たす。いくつかの変形例では、対電極電圧の急速変化率は、約0.10ボルト/分として定義されてもよい。いくつかの変形例では、対電極電圧の急速変化率は、約0.05ボルト/分~約0.15ボルト/分として定義されてもよい。例えば、いくつかの変形例では、対電極電圧の急速変化率は、約0.05ボルト/分、約0.06ボルト/分、約0.07ボルト/分、約0.08ボルト/分、約0.09ボルト/分、約0.10ボルト/分、約0.11ボルト/分、約0.12ボルト/分、約0.13ボルト/分、約0.14ボルト/分、または約0.15ボルト/分として定義されてもよい。感知電流の急速変化率は、測定されている分析物の変化率と関連付けられ得る。グルコースの実施例では、急速変化率は、約4mg/dL/分であり得る。いくつかの変形例では、グルコースの急速変化率は、約3.5mg/dL/分~約6mg/dL/分であってもよい。
【0115】
対電極電圧の順守下限は、対電極電圧がスイングし得る最低レベルとして定義され得る。対電極電圧はまた、順守上限、すなわち、対電極がスイングし得る最高レベルを有してもよい。対電極電圧が順守下限までスイングする場合、これは、感知電流が、生理的に可能ではない高い大きさの電流に到達したというインジケーションとしての役割を果たし、障害の発生を示し得る。
【0116】
したがって、閾値変化率を満たすかまたは超過する、および/または閾値順守限界を満たす変化率を被る対電極電圧は、分析物監視デバイス110内に障害があるというインジケーションとしての役割を果たす。いくつかの変形例では、対電極電圧の変化率が、閾値変化率を満たすかまたは超過する、および/または対電極電圧が、閾値順守限界を満たすことを識別することに応じて、対電極電圧の特性またはパラメータは、障害が一時的または永続的であるかどうかを決定するために、感知電流の特性またはパラメータと比較されてもよい。本比較は、対電極電圧と感知電流との間の対応または相関の決定を含み得る。
【0117】
いくつかの変形例では、感知電流と一致する対電極電圧は、それによって、対電極電圧が、感知電流と等しい変化率で変化していることになり、圧力誘起信号減衰を表す。そのような、圧力誘起信号減衰は、分析物監視デバイス110に印加されている外部圧力によって引き起こされ得、一時的障害として特徴付けられ得る。外部圧力が除去されるとき、分析物監視デバイス110は、意図されるように動作する。
【0118】
いくつかの変形例では、感知電流の変化と一致する対電極電圧の変化は、それによって、順守下限を満たす対電極電圧と相まって、その対応が維持されることになり、センサを囲繞する生理的環境の変化および/またはセンサ表面の変化を表す。他の変形例では、順守下限を満たす対電極電圧は、感知電流にかかわらず、生理的環境の変化および/またはセンサ表面の変化を表す。本シナリオでは、対電極電圧は、感知電流と相関する必要はない。センサを囲繞する生理的環境の変化およびセンサ表面の変化は、永続的障害の実施例であり得る。
【0119】
いくつかの変形例では、感知電流の変化から偏移する対電極電圧の変化は、それによって、対電極電圧および感知電流が、対電極電圧の急速変化率と相まって、異なる方法で変化していることになり、分析物監視デバイスの電子機器に対する外部影響を表し得る。外部影響は、永続的障害の実施例であり得る。
【0120】
対電極電圧と感知電流との間の相関が決定されるとき、分析物監視デバイス110(例えば、コントローラ)は、障害と一致する動作モードを適用することによって応答する。例えば、対電極電圧の識別された特性および対電極電圧および感知電流の対応に基づいて、ある動作モードが、微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用される。
【0121】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化と一致する場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、感知電流を無視することを含む。本明細書に説明されるように、これは、圧力誘起信号減衰を表し得る。圧力誘起信号減衰が対電極電圧および感知電流から除去される(例えば、対電極電圧の変化率が閾値変化率を超過しない)とき、障害が改善されたため、感知電流は、もはや無視されない。
【0122】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化と一致する場合、および対電極電圧の順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む。到達されている閾値順守限界は、永続的障害のインジケーションであり、動作を休止させるために、バイアス電位が除去される。
【0123】
いくつかの変形例では、動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化から偏移される場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む。これは、永続的障害のインジケーションであり、動作を休止させるために、バイアス電位が除去される。
【0124】
本明細書にさらに説明されるように、基準電極は、分析物監視デバイス110によって実装される3電極電気化学的システムのための基準電位を提供するように機能する。作用電極がバイアスされる電位は、基準電極を基準とする。固定された、時変の、または少なくとも制御された電位関係が、作用電極と基準電極との間に確立され、実践的な限界内で、いかなる電流も、基準電極からソースされない、またはそれにシンクされない。そのような3電極電気化学的システムを実装するために、分析物監視デバイス110は、対電極が着目酸化還元反応を持続するために要求される電位に動的にスイングすることを可能にしながら、3電極電気化学システム内の作用電極および基準電極の間に固定された電位関係を維持するために、ポテンショスタットまたは電気化学アナログフロントエンド(例えば、アナログフロントエンド)を含む。作用電極と基準電極との間の電位関係を確立するために、電気化学的システムをポテンショスタットまたはアナログフロントエンドとバイアスすることは、作用電極における酸化還元反応を駆動し、対電極に酸化プロセスにおける電流をシンクさせる、または作用電極における酸化還元反応を持続させるために、還元プロセスにおける電流をソースさせる。電流の大きさは、作用電極において起こる酸化還元反応の大きさ、および作用電極と対電極との間のインピーダンスまたは抵抗に比例する。電気化学的システムをバイアスすることは、対電極における電圧の形成をもたらし、その値もまた、作用電極における酸化還元反応の大きさ、および作用電極と対電極との間のインピーダンスまたは抵抗に比例する。
【0125】
対電極における電圧は、基準電極に対する電位で維持されているとき、作用電極において起こる酸化還元反応を平衡するために、電位に対して調節される。分析物監視デバイス110の1つまたはそれを上回る側面が、分析物監視デバイス110の動作に影響を及ぼす障害の発生に応じて、対電極における電圧は、変調され、作用電極と対電極との間に蓄積されるインピーダンスを反映する。対電極における電圧を監視することによって、作用電極と対電極との間のインピーダンスのインジケーションが、決定され得る。分析物監視デバイス110の3電極電気化学的システムは、対電極における電圧を作用電極と対電極との間のインピーダンスまたは抵抗と相関させるための電気部品を含む、電気ネットワークまたはシステムとしてモデル化され得、これは、障害のタイプを含む、1つまたはそれを上回る条件と相関し得る。3電極電気化学的システムの障害を含む、ある条件とのインピーダンスを関連付ける、または特性付けることによって、電圧値は、1つまたはそれを上回る障害と相関し得る。
【0126】
図10は、分析物監視デバイス110のポテンショスタット回路の表現を描写する。ポテンショスタット回路1000は、センサ回路網124の一部であり、図2Aに描写され、それを参照して説明され得る。ポテンショスタット回路1000は、3電極電気化学的システムの作用電極および対電極を接続する電気化学セル1010を含む。
【0127】
図11は、図10Aに示される電気化学セル1010を表す、Randles等価回路1100を描写する。Randles等価回路1100は、液抵抗R(非補償型抵抗RまたはRΩとも称される)と、電荷移動抵抗Rctと、対電極1120と作用電極1110との間の二重層静電容量Cdlとを含む。液抵抗Rは、電荷移動抵抗Rctと二重層静電容量Cdlの並列の組み合わせと直列に存在する。Randles等価回路1100は、対電極1120と作用電極1110との間の端子を接続する。液抵抗Rは、対電極1120と作用電極1110との間のオーム接触のレベルを示し、その中で分析物監視デバイス110が動作している媒質(例えば、その中で微小針アレイの電極が、位置付けられる流体、例えば、間質液等)の電解含有物/イオン強度を示し得る。電荷移動抵抗Rctは、作用電極1110において起こる電気化学反応の大きさを示す。二重層静電容量Cdlは、作用電極1110における表面の形態構造および構成物質(例えば、作用電極1110の表面の組成物および成分構成)を示す。
【0128】
分析物監視デバイス110の電気化学セル1010のRandles等価回路1100は、電気化学セル1010内で起こる酸化還元反応の簡略化である。Randles等価回路1100を用いて電気化学セル1010をモデル化することによって、液抵抗Rからの寄与、電荷移動抵抗Rct、および二重層静電容量Cdlが、識別され得る。振幅および位相成分を含む、周波数応答分析が、DC(ω→0)およびAC(ω→∞)周波数摂動における電気化学セル1010のインピーダンス挙動を理解するために使用されてもよい。対電極1120における電圧は、DCの場合では、Cdlが、ω→0として無限のインピーダンスを有することが仮定されるため、システムの抵抗成分全体(例えば、R+Rct)の評価を提供する。ω→∞としての他の極値では、Cdlは、無視できるほどのインピーダンスに近似し、Rctは、バイパスされる。これは、R単独の定量化を可能にし、これは、インパルス、または対電極1120に印加される単位階段関数を用いて実現され得る。
【0129】
DCの場合(ω→0)では、対電極1120における電圧は、付加的な電流が、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を維持するためにソースまたはシンクされなければならないとき、ポテンショスタットのコンプライアンス電圧に対して、より大きな極値にスイングすることが予期される。これは、作用電極1110において確立される電圧から離れるように移動する対電極電圧を介して顕現される。極端な場合、対電極1120における電圧は、コンプライアンス電圧、または対電極1120を駆動する回路によって与えられる最大電圧に近似する。Randles等価回路内の本動作モードの顕現は、液抵抗Rの値に向かう傾向がある電荷移動抵抗Rctである。DCの場合では、これは、以下の障害、すなわち、作用電極と対電極との間に発生される短絡、安定的な熱力学的電位を維持するための基準電極の能力の障害、拡散限界膜に対する侵害、および分析物選択的センサ内に含有される感知層の多孔率の着実な増加のうちの1つまたはそれを上回るものが起こっているというインジケーションである。
【0130】
対電極電圧は、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を持続させるための電流要件が、無視できるほどの値(例えば、本システムを通した電流の流動の取るに足らない値、i→0)に向かう傾向があるシナリオにおいて、作用電極1110が維持される電圧値に近似する。Randles等価回路内の本動作モード内の顕現は、無限数に向かう傾向がある、電荷移動抵抗Rctである。DCの場合では、これは、以下の障害、すなわち、不適切なセンサ挿入、生存可能な解剖学的区画に対する不適切なアクセス、分析物拡散が減衰されるような(例えば、生物付着/タンパク質吸収/コラーゲン形成/不溶化に起因する)センサの部分的または完全な閉塞、および安定した熱力学的電位を維持させるための基準電極の能力の障害のうちの1つまたはそれを上回るものが起こっているというインジケーションである。
【0131】
対電極における電圧の測定は、ポテンショスタット、電気化学的アナログフロントエンド、または電圧高感度または電流高感度アナログ/デジタル変換器(ADC)等の変換器によって達成され得る。
【0132】
いくつかの事例では、図12の測定回路1200に示されるように、バッファ1210およびフィルタ1220(例えば、低通過フィルタ)は、構成要素を電気化学的センサ1240内に含まれる対電極から隔離するために、変換器1230からの隔離を提供し得る。いくつかの実装では、差動増幅器、トランスインピーダンス増幅器、または有限利得増幅器が、組み込まれてもよい。フィルタ1220は、高周波数、低周波数、高周波数および低周波数の両方、および/または帯域制限信号が、対電極電圧の測定に干渉することを低減させるために、変換器1230の前に位置付けられてもよい。
【0133】
いくつかの事例では、1つまたはそれを上回る作用電極において生じる電圧が、測定され、障害の識別を補足および/または補完するために使用される。作用電極電圧は、障害にアクセスする、および/またはそれを決定するために対電極電圧と比較され得る。アナログ/デジタル変換器は、作用電極と電気連通していてもよい。いくつかの実装では、ガルバノスタットが、作用電極と対電極との間の所望の電流関係を確立するために組み込まれる。
【0134】
対電極における電圧が、作用電極における電圧の値と近似するシナリオは、分析物センサのインピーダンスまたは抵抗値が、オームの法則(v=Ziであって、Zは、分析物センサの蓄積されたインピーダンスである)の利点によって低レベルに減衰していることを示す。これは、以下の障害、すなわち、作用電極と対電極との間に発生される短絡、安定的な熱力学的電位を維持するための基準電極の能力の障害、拡散限界膜に対する侵害、または分析物選択的センサ内に含有される感知層の多孔率の着実な増加のうちの任意の1つまたはそれを上回るものが起こっているというインジケーションである。対電極電圧は、対電極電圧が、作用電極における電流(例えば、感知電流)のレベルを支援するために正の方向にスイングしている状況において、作用電極電圧に近似する。
【0135】
対電極における電圧と作用電極における電圧との間の差異が増加する場合、これは、分析物センサのインピーダンスまたは抵抗値が、非常に大きい値にまで増加していることを示す。これは、以下の障害、すなわち、不適切なセンサ挿入、分析物拡散が減衰されるような(例えば、生物付着/タンパク質吸収/コラーゲン形成/不溶化に起因する)センサの部分的または完全な閉塞、または安定した熱力学的電位を維持させるための基準電極の能力の障害のうちの任意の1つまたはそれを上回るものが起こっているというインジケーションである。対電極電圧と作用電極電圧との間の差異の増加は、対電極電圧が、感知電流を支援するために負の方向にスイングするときに起こる。
【0136】
したがって、いくつかの事例では、電圧は、障害を識別するために、作用電極および対電極において測定される。対電極の電圧値は、図13Aに示されるように、分析物センサの規定された電流要件を支援するために動的に調節される。図13Aは、ナイキスト線図およびボード線図形成の両方を使用した、電気化学セルの表現である。ボード線図は、電気化学セルの振幅および位相応答を図示する。
【0137】
図13Bは、電気化学セルのナイキスト線図であり、角振動数ωが変動するにつれて、電気化学的インピーダンスの実数(Re{Z})および虚数(Im{Z})成分を図示する。インピーダンスのゼロ虚数成分は、Randles等価回路モデルによる2つの場合、すなわち、(1)角振動数が∞に近似し、液抵抗(R/RΩ)の推論を可能にするとき、および(2)角振動数が0に近似し、液抵抗Rと組み合わせられる電荷移動抵抗(Rct)の推論を可能にするときにおいて達成される。両方の周波数極値において電気化学セルを摂動させることは、電気化学セルの実数(抵抗)成分の完全な特性評価を可能にする。電気化学セルが、純粋に容量性であると仮定すると、両方のIm{Z}→0交点の間における半円の内挿が、二重層静電容量Cdlの計算を可能にする。
【0138】
図14-17は、異なる障害状況における、電流と対応する対電極電圧との間の関係を図示する例示的プロットであり、感知電流と対電極電圧との間の動作関係を示す。例示的プロットは、対電極と作用電極との間のセンサインピーダンスの変化のインジケーションを提供するために使用されてもよい。
【0139】
図14は、時間に対する、感知電流プロット1410と、対応する対電極電圧プロット1420とを含む。正常な動作の間(例えば、点1411、1421の前、および点1413、1423と点1414、1424との間)、センサ電流が変化するにつれて、対電極電圧は、等しく、またはほぼ等しく変化するが、変化率は逆であり、これは、鏡像応答としてプロット1410および1420内に視覚的に描写される。障害が全く呈されない正常な動作の間、対電極電圧の変化率および感知電流の変化率は、ほぼ等しい、または実質的に等しくあり得る。例えば、最大約5%の差が、変化率の間に存在し得る。いくつかの変形例では、最大10%の差が、変化率の間に存在し得る。対電極電圧の変化率と感知電流の変化率との間の差は、正常な動作の間、最大5%、またはいくつかの事例では、最大10%にほぼ等しい、または実質的に等しい範囲内で変動し得る。
【0140】
障害が、対電極電圧内の点1421、1422、1423、1424、および1425において示され、それぞれ、感知電流内の点1411、1412、1413、1414、および1415に対応する。点1421、1422、1423、1424、および1425における障害は、圧力誘起信号減衰を表し、対電極電圧と感知電流との間の対応における偏差によって識別される。プロット1410および1420に示されるように、障害において、対電極電圧は、等しい、またはほぼ等しい変化率を伴って感知電流に対応する。例えば、変化率は、最大5%、またはいくつかの事例では最大10%、互いの間で異なり得る。
【0141】
図14に類似する)図15は、時間に対する、電流プロット1510と、対応する対電極電圧プロット1520とを含む。正常な動作の間(例えば、点1511、1521の前、および点1511、1521と点1512、1522との間)、センサ電流が変化するにつれて、対電極電圧は、等しく変化するが、変化率は逆であり、これは、鏡像応答としてプロット1510および1520内に視覚的に描写される。障害が全く呈されない正常な動作の間、対電極電圧の変化率および感知電流の変化率は、ほぼ等しい、または実質的に等しくあり得る。例えば、最大約5%の差が、変化率の間に存在し得る。いくつかの変形例では、最大10%の差が、変化率の間に存在し得る。対電極電圧の変化率と感知電流の変化率との間の差は、正常な動作の間、最大5%、またはいくつかの事例では、最大10%にほぼ等しい、または実質的に等しい範囲内で変動し得る。
【0142】
障害が、対電極電圧内の点1521、1522、1523、および1524において示され、それぞれ、感知電流内の点1511、1512、1513、および1514に対応する。点1521、1522、1523、および1524における障害は、圧力誘起信号減衰を表し、対電極電圧と感知電流との間の対応における偏差によって識別される。プロット1510および1520に示されるように、障害において、対電極電圧は、等しい、またはほぼ等しい変化率を伴って感知電流に対応する。例えば、変化率は、最大5%、またはいくつかの事例では最大10%、互いの間で異なり得る。
【0143】
図16は、時間に対する、電流プロット1610と、対応する対電極電圧プロット1620とを含む。正常な動作の間(例えば、点1621、1611の前)、センサ電流が変化するにつれて、対電極電圧は、等しく、またはほぼ等しく変化するが、変化率は逆であり、これは、鏡像応答としてプロット1610および1620内に視覚的に描写される。障害が全く呈されない正常な動作の間、対電極電圧の変化率および感知電流の変化率は、ほぼ等しい、または実質的に等しくあり得る。例えば、最大約5%の差が、変化率の間に存在し得る。いくつかの変形例では、最大10%の差が、変化率の間に存在し得る。対電極電圧の変化率と感知電流の変化率との間の差は、正常な動作の間、最大5%、またはいくつかの事例では、最大10%にほぼ等しい、または実質的に等しい範囲内で変動し得る。
【0144】
点1621において順守下限に到達している対電極電圧は、障害のインジケーションである。点1621は、センサ電流内の点1611において先行する電流スパイクに対応し得るが、いくつかの事例では、これは、対電極電圧と感知電流との間の明確な相関ではない場合がある。1621における障害は、順守下限が到達されていることに基づいて、センサを囲繞する生理的環境の変化またはセンサ表面の変化を表す。
【0145】
図17は、時間に対する、電流プロット1710と、対応する対電極電圧プロット1720とを含む。呈される急速変化率に起因する障害を表す点1721および1722は、対電極電圧内に示され、示されるように、分析物監視デバイスの電流とは無関係である。電流が、実質的な変動または予想外の変動を被っていないため、点1721および1722は、電流分析物監視デバイスの電流に無関係である障害のインジケーションであり、代わりに、分析物監視デバイスの電子機器への外部影響等の外部環境的影響に相関される。
【0146】
図18は、説明される実装による、対電極電圧および作用電極電圧を監視するための障害検出および診断システム1800の例証的概略図である。障害検出および診断システム1800の側面は、分析物監視デバイス110内に組み込まれてもよい。電気化学的システム内で作用電極1810と基準電極1830との間に固定された電位関係を維持しながら、対電極1820が、作用電極において着目酸化還元反応を持続させるために要求される電位まで動的にスイングすることを可能にする、本明細書に説明されるようなアナログフロントエンド1840が、含まれる。作用電極1810に結合される変換器1815は、作用電極電圧を変換するために随意に提供される。対電極1820に結合される変換器1825は、対電極電圧を変換するために提供される。いくつかの事例では、1つの変換器が提供され、電圧を変換するための作用電極1810および対電極1820にそれぞれ結合されてもよい。変換器1815、変換器1825、および/または単一の変換器は、アナログ/デジタル変換器であってもよい。
【0147】
デジタル化された電圧信号は、各変換器に結合されるコントローラ1822に伝送される。いくつかの事例では、図2Aに示され、それを参照して説明されるコントローラ122は、コントローラ1822の動作側面を組み込んでもよい。コントローラ1822は、別個の構成要素であってもよい。いくつかの事例では、コントローラ122は、コントローラ1822の代わりに組み込まれる。コントローラ1822(および/またはコントローラ122)は、本明細書に説明される側面による、障害および関連付けられる動作モードを識別するために、対電極電圧、感知電流、および随意に作用電極電圧を処理する。コントローラ1822は、命令または修正信号を3電極電気化学的システムに提供し得、障害および随意に動作モードをユーザに警告するために出力1824を提供し得る。出力1824は、分析物監視デバイスのユーザインターフェース上に提供され得る、および/または(例えば、近接場通信、Bluetooth(登録商標)、または他の無線プロトコルを通して無線で)遠隔デバイスおよび/または遠隔サーバに通信され得る。
【0148】
いくつかの変形例では、1つを上回る作用電極が組み込まれ、分析物を検出するために使用される。例えば、図9H、9I、および9Jに示される、微小針アレイ構成900H、900I、および/または900Jにおいては、1つを上回る作用電極および1つを上回る対電極が、組み込まれる。1つを上回る対電極が組み込まれる変形例では、対電極はともに短絡され、それによって、ともに短絡された対電極が1つの対電極としてともに作用すると、1つの累積対電極電圧が、監視される。
【0149】
1つを上回る作用電極を用いて、各付加的作用電極は、個別の感知電流を発生させる。いくつかの変形例では、対電極電圧と各作用電極の感知電流との間の相関が、決定されてもよい。各作用電極が、微小針アレイにおいて、別個かつ別々の微小針上に位置付けられると、生じる障害は、作用電極間で一致しない場合がある。例えば、電極膜の劣化および生体認識要素の劣化は、複数の作用電極を横断して変動し得る。加えて、不適切な設置または挿入に対して、いくつかの事例では、作用電極は、異なる挿入深度を被り得、それによって、1つまたはそれを上回る作用電極は、十分に挿入されるが、他のものは、そうではない場合がある。圧力減衰もまた、いくつかの事例では、異なるように作用電極に影響を及ぼし得る。したがって、微小針アレイを横断して起こり得る差異に基づいて、各作用電極の感知電流に対する対電極電圧を別個に監視および分析することは、有用であり得る。別個の監視および分析は、1つまたはそれを上回る作用電極における障害のインジケーションを提供する役割を果たし得る。いくつかの変形例では、1つの障害が識別されるとき、対応する動作モードが適用される。
【0150】
1つを上回る障害が識別され、その障害が異なる場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止するための動作モードは、感知データをブランキングおよび/または無視するための動作モードよりも優先される。いくつかの変形例では、障害が、1つの作用電極において検出されているが、1つまたはそれを上回る付加的作用電極が、正常な動作に従って動作している(例えば、障害が全く検出されない)場合、障害を呈する作用電極において印加される電位は中止される一方、動作が、残りの作用電極を用いて継続されることを可能にし得る。いくつかの変形例では、動作可能作用電極の最小数が、定義されてもよく、それによって、動作可能作用電極の数が、その最小数を満たすかまたは超過する場合、分析物監視デバイスの動作は、継続する。
【0151】
いくつかの変形例では、複合感知電流は、組み合わせられている作用電極の感知電流に基づく。例えば、それぞれの作用電極からの感知電流は、複合感知電流を形成するように平均化され得る。複合感知電流は、本明細書に説明されるように、分析物監視デバイスの障害および動作モードを決定するために対電極電圧と併用され得る。
【0152】
Randles等価モデルに関係する付加的詳細が、提供される。Randles等価モデルのインピーダンスZは、以下の関係によって与えられる。
【化2】
【0153】
角振動数ωの関数としてインピーダンスを表すために、本関係を展開すると、以下の通りである。
【化3】
【0154】
DC(ゼロ周波数)の場合において、インピーダンスは、以下によって与えられる。
【化4】
【0155】
AC(高周波数極値)の場合において、インピーダンスは、以下によって与えられる。
【化5】
【0156】
方程式2を再計算すると、以下の通りである。
【化6】
【0157】
方程式5内で与えられるインピーダンスの実数および虚数成分は、容易に以下のように識別され得る。
【化7】
【0158】
代入すると、以下の通りである。
【化8】
【0159】
本システムの振幅応答は、以下によって与えられる。
【化9】
【0160】
位相応答が、それに応じて算出される。
【化10】
【0161】
電気化学反応iCELLによって支援される電流は、キルヒホッフの電圧則をRandlesセルに適用することによって、算出され得る。
【化11】
【0162】
対電極電圧VCE、は、上記の関係を再公式化することによって算出され得る。
【化12】
【0163】
電流は、ポテンショスタットの構成、および電気化学反応が酸化または還元を受けているかどうかに応じて、正または負の数量であり得る。提供されるモデルおよび電流が働く方程式では、電流は、電気化学セルを通して、かつより低い電位(例えば、接地基準)で保持される作用電極の中へ(最高電位で保持される)対電極から流動することが仮定され、本モデルは、還元反応を仮定する(例えば、電流は、作用電極の中に流動し、したがって、電子源として作用する)。対電極が、(酸化中の)作用電極より低い電位で保持されることもまた可能であり、電流を作用電極から対電極の中に流動させる。本場合では、作用電極は、電子シンクとして作用する。
【0164】
DCの場合に関しては、以下の通りである。
【化13】
【0165】
所与のRおよびRctに関しては、VCEは、iCELLを追跡するであろう。有限電荷移動抵抗Rctに関しては、以下の通りである。
【化14】
【0166】
これは、ポテンショスタットのコンプライアンス電圧限界である。本シナリオでは、対電極と作用電極との間にオーム接続は存在しない。同様に、以下の通りとなる。
【化15】
【0167】
これは、電気化学的システムのための理想的な動作条件を表す。これは、十分な電解/イオン強度の媒質(例えば、バッファ溶液または着用者の生理液)中で動作させることによって達成される。同様に、有限液抵抗Rに関しては、以下の通りである。
【化16】
【0168】
換言すると、電気化学セルを通した電流iCELL、が、無限の電荷移動抵抗に起因してゼロに近似するにつれて、対電極電圧は、作用電極電圧に近似するであろう。本実践的顕現は、作用電極表面の完全な不動態化であり、それによって、電流は全く流れ得ず、したがって、理想的な二重層コンデンサが、形成される。該電荷移動抵抗がゼロに近似するときの場合に関しては、以下の通りである。
【化17】
【0169】
電気化学セルを通した電流は、電荷移動プロセス(例えば、電気分解反応等の場合)に対して不変となる。代わりに、対電極は、(液抵抗/電解含有物が、電気分解全体を通して一定のままであると仮定すると)電気化学セルを通して流動する電流を追跡するであろう。
【0170】
ACの場合では、周波数が、極値に向かう傾向があると、以下の通りとなる。
【化18】
【0171】
電気化学セルを通した電流は、電荷移動プロセス(例えば、電気分解反応等の場合)に対して不変となる。同様に、DCの場合では、周波数が、ゼロに向かう傾向があると、以下の通りとなる。
【化19】
【0172】
これは、方程式13と同一である。
【0173】
例示的実施形態
実施形態I-1.微小針アレイベースの分析物監視デバイスであって、
作用電極であって、作用電極は、作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを備え、作用電極は、微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、作用電極と、
微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、基準電極と、
微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、対電極と、
アナログフロントエンドであって、アナログフロントエンドは、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を維持し、作用電極における酸化還元反応を持続させるために、対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成される、アナログフロントエンドと、
コントローラであって、コントローラは、アナログフロントエンドと通信し、
対電極において対電極電圧を監視することと、
閾値を満たすかまたは超過する対電極電圧の特性を識別することと、
閾値を超過する対電極電圧の特性の識別することに応答して、対電極電圧と感知電流との間の相関を決定することと、
対電極電圧の特性および相関に基づいて、動作モードを微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用することと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0174】
実施形態I-2.対電極電圧の特性は、対電極電圧の変化率または対電極電圧の順守下限のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、実施形態I-1に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0175】
実施形態I-3.対電極電圧の変化および感知電流の変化は、対電極電圧と感知電流との間の相関を示す、実施形態I-2に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0176】
実施形態I-4.動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化と一致する場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、感知電流を無視することを含む、実施形態I-3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0177】
実施形態I-5.コントローラは、対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過しないという後続の決定に応答して、感知電流を無視するという動作モードを中断するようにさらに構成される、実施形態I-4に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0178】
実施形態I-6.動作モードは、対電極電圧の順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、実施形態I-3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0179】
実施形態I-7.動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化から偏移される場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、実施形態I-3に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0180】
実施形態I-8.1つまたはそれを上回る付加的作用電極をさらに備え、1つまたはそれを上回る付加的作用電極はそれぞれ、個別の感知電流を発生させ、
コントローラは、
閾値を超過する対電極電圧の特性を識別することに応答して、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関を決定するようにさらに構成される、
実施形態I-1に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0181】
実施形態I-9.動作モードは、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関にさらに基づく、実施形態I-8に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0182】
実施形態I-10.作用電極における感知電流および1つまたはそれを上回る付加的作用電極における個別の感知電流は、複合相関を決定するために組み合わせられる、実施形態I-9に記載の微小針アレイベースの分析物監視デバイス。
【0183】
実施形態I-11.方法であって、
微小針アレイベースの分析物監視デバイスの対電極における対電極電圧を監視することであって、対電極は、微小針アレイにおける第1の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる、ことと、
閾値を満たすかまたは超過する対電極電圧の特性を識別することと、
閾値を超過する対電極電圧の特性を識別することに応答して、対電極電圧と感知電流との間の相関を決定することであって、感知電流は、微小針アレイベースの分析物監視デバイスの作用電極の表面において発生される、ことと、
対電極電圧の特性および相関に基づいて、動作モードを微小針アレイベースの分析物監視デバイスに適用することと
を含み、
作用電極は、作用電極の表面において分析物の酸化還元反応を示す感知電流を発生させるように構成される電気化学的感知コーティングを備え、作用電極は、微小針アレイにおける第2の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられ、
微小針アレイベースの分析物監視デバイスは、微小針アレイにおける第3の微小針の遠位部分の表面上に位置付けられる基準電極と、作用電極と基準電極との間に固定された電位関係を維持し、作用電極における酸化還元反応を持続させるために、対電極の電位がスイングすることを可能にするように構成されるアナログフロントエンドとをさらに備える、方法。
【0184】
実施形態I-12.対電極電圧の特性は、対電極電圧の変化率または対電極電圧の順守下限のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、実施形態I-11に記載の方法。
【0185】
実施形態I-13.対電極電圧の変化および感知電流の変化は、対電極電圧と感知電流との間の相関を示す、実施形態I-12に記載の方法。
【0186】
実施形態I-14.動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化と一致する場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、感知電流を無視することを含む、実施形態I-13に記載の方法。
【0187】
実施形態I-15.感知電流を無視するという動作モードは、対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過しないという後続の決定に応答して中断される、実施形態I-14に記載の方法。
【0188】
実施形態I-16.動作モードは、対電極電圧の順守下限が、閾値順守限界を満たす場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、実施形態I-13に記載の方法。
【0189】
実施形態I-17.動作モードは、対電極電圧の変化が、感知電流の変化から偏移される場合、および対電極電圧の変化率が、閾値変化率を超過する場合、作用電極と基準電極との間の電位の印加を中止することを含む、実施形態I-13に記載の方法。
【0190】
実施形態I-18.微小針アレイベースの分析物監視デバイスは、1つまたはそれを上回る付加的作用電極をさらに備え、1つまたはそれを上回る付加的作用電極はそれぞれ、個別の感知電流を発生させ、
方法は、閾値を超過する対電極電圧の特性を識別することに応答して、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関を決定することをさらに含む、
実施形態I-11に記載の方法。
【0191】
実施形態I-19.動作モードは、対電極電圧と個別の感知電流との間の相関にさらに基づく、実施形態I-18に記載の方法。
【0192】
実施形態I-20.作用電極における感知電流および1つまたはそれを上回る付加的作用電極における個別の感知電流は、複合相関を決定するために組み合わせられる、実施形態I-19に記載の方法。
【0193】
前述の説明は、解説の目的のために、本発明の徹底的な理解を提供するために具体定名称を使用した。しかしながら、具体的詳細が、本発明を実践するために要求されないことが当業者に明白となるであろう。したがって、本発明の具体的実施形態の前述の説明は、例証および説明の目的のために提示される。それらは、網羅的である、または本発明を開示される精密な形態に限定することを意図しておらず、明白なこととして、多くの修正および変形例が、上記の教示の観点から可能性として考えられる。実施形態は、本発明の原理およびその実践的用途を解説するために選定および説明され、それらは、それによって、当業者が、想定される識別の使用に適するように種々の修正を伴う本発明および種々の実施形態を利用することを可能にする。以下の請求項およびそれらの均等物が、本発明の範囲を定義することを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18