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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】皮膚用ベース化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230904BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230904BHJP
   A61K 8/90 20060101ALI20230904BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230904BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230904BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/90
A61K8/86
A61K8/92
A61Q1/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021518778
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2019006745
(87)【国際公開番号】W WO2020071613
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0118110
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヒョン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・キム
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109946(JP,A)
【文献】特開2017-222594(JP,A)
【文献】特表2018-511623(JP,A)
【文献】特開2009-173653(JP,A)
【文献】特表2019-507162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0216784(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0146259(KR,A)
【文献】特開2018-109030(JP,A)
【文献】特開2017-197473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセルロースマイクロファイバーを含む皮膚用メイクアップベース化粧料組成物であって、色調化粧料の洗浄を増進させるために該色調化粧料の使用前に塗布される、組成物
【請求項2】
前記バイオセルロースのヒドロキシ基は、バイオセルロースのヒドロキシ基(hydroxyl group)がカルボキシル基(carboxyl group)で置換され、前記バイオセルロースマイクロファイバーは、水相で3次元網状構造のネットワークを形成しつつ分散するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記バイオセルロースマイクロファイバーの直径は、数平均30~60nmであり、最大60~100nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記バイオセルロースマイクロファイバーは、全体組成物の総重量に対して0.001~10重量部で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化粧料組成物は、皮膜形成高分子または微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分中の1つ以上を追加で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
皮膜形成高分子は、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリビニルアセテート系、ポリビニルピロリドン系高分子およびこれらの共重合体よりなる群から選ばれた1つ以上を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルロニック(pluronic)、ポリ (N-イソプロピルアクリルアミド) (プニパム(PNIPAAm))、ポロキサマー(poloxamer)、ポリエチレンオキシド(PEO)-ポリプロピレンオキシド(PPO)-ポリエチレンオキシド(PEO)共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)-ポリエチレングリコール(PEG)共重合体およびメトキシポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン(mPEG-PCL)ブロック共重合体よりなる群から選ばれた1つ以上の高分子;またはポリエチレンワックス、オゾケライトワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、セレシンワックス、ビーズワックスおよびパラフィンワックスよりなる群から選ばれた1つ以上のワックスを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、水中油型エマルジョン剤形を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化粧料組成物は、皮膚への塗布時に物理的膜を形成するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
色調化粧料の塗布前に請求項1に記載の化粧料組成物を皮膚に塗布する段階を含む色調化粧料の除去効率を増進させる方法。
【請求項11】
前記方法は、化粧料組成物の塗布時に形成される物理的膜の脱落を通じて色調化粧料の除去効率を増進させる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用ベース化粧料組成物に関し、より詳細には、バイオセルロースマイクロファイバーを含むことによって、組成物の塗布時に皮膚に物理的膜を形成するようにして、前記膜の脱落から化粧料の除去効率を増進させた化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ製品の大部分は、疎水性物質である油性成分と色素等の顔料を多量で含有していて、洗浄時にクレジングフォームの他にクレンジングオイル、クリーム等の油性成分を含有する洗浄製品を利用しなければならない。しかしながら、このような洗浄過程は、皮膚に刺激を与えることができて、消費者は、より速くて手軽な洗浄方法を望む傾向にある。
【0003】
従来、これを充足させるための方法としては、皮膜形成高分子または温度感応型高分子を利用することが使用されてきた。皮膜形成高分子は、皮膚の上に皮膜を形成しながら、水と接触することによって起こる構造的な変化を通じて洗浄力を増加させ、温度感応型高分子は、特定温度以下では疎水性皮膜を形成しながら、特定温度になると、構造が変わって、皮膚から脱落してメイクアップの洗浄が可能となる。しかしながら、上記のような高分子を利用してメイクアップを洗浄する場合、毛穴やシワの間に入り込んだメイクアップを完ぺきに洗浄することが難しく、高分子が小さい単位で脱離して行くので、洗浄効果が劣ることがある。
【0004】
これより、メイクアップの洗浄が容易な化粧料組成物の研究、開発が要求されている。
【0005】
なお、一般的に化粧品原料に使用されるセルロースは、天然セルロース、セルロース誘導体、バイオセルロース等がある。
【0006】
天然セルロースは、数十マイクロメーターサイズのパウダー形態であり、水に溶けずに、主にスクラブ剤、ピーリングジェル等に使用される。
【0007】
セルロース誘導体は、セルロースのヒドロキシアルコール基を置換させて得ることができ、セルロース自体が水に溶解しないので、水に溶解しうるように変形させたヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等がある。このような水溶性セルロースは、高分子形態であり、主に増粘剤として使用される。
【0008】
バイオセルロースは、バクテリアセルロースから合成されたセルロースマイクロファイバーであり、植物由来のセルロースに比べて薄い繊維厚さ、高い結晶化度、高い物理的強度を有しているが、ジェル(gel)やシート(sheet)の形態で合成されるので、主にマスクパックシートに使用される。特にバイオセルロースは、化粧品剤形に適用されにくい短所を有していて、化粧料に適用されるためには、バイオセルロースがマイクロファイバー形態を維持させながらも、水溶液相に分散させる過程が必須的に要求される。
【0009】
このような分散過程のために、以前の研究である特許文献1(KR公開特許第10-2017-0103698号(2017.09.13.))では、バイオセルロース繊維シートに由来する原料を次亜塩素酸ナトリウム、塩化臭素および2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(TEMPO)触媒を使用して化学的処理することによって、水分散が可能にした。具体的に、特許文献1には、バイオセルロースが水に分散したマイクロファイバー分散液の皮膚保持、水分保有能、水分維持力および弾力増加効果を確認した内容が開示されているが、メイクアップの洗浄に関連した内容については開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明者らは、メイクアップの洗浄が容易な化粧料を開発するために研究した結果、色調化粧料の塗布前にバイオセルロースマイクロファイバーを塗布することによって、前記マイクロファイバーが塗布されて形成される膜の脱落からメイクアップの洗浄力が向上することを確認し、本発明を完成することになった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、メイクアップの洗顔が容易な皮膚用ベース化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、バイオセルロースマイクロファイバーを含む皮膚用ベース化粧料組成物を提供する。
【0013】
本発明において、「皮膚用ベース」は、皮膚に色調化粧料を塗布する前に先に塗布されて物理的な膜を形成するベースを意味する。本発明は、バイオセルロースマイクロファイバーから形成される物理的な膜が脱落して前記膜の上に塗布される色調化粧料の洗顔が容易な化粧料組成物を提供することができる。
【0014】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0015】
本発明の皮膚用ベース化粧料組成物は、バイオセルロースマイクロファイバーを含む。
【0016】
本発明において、前記バイオセルロースマイクロファイバーは、バイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体の形態で適用され得、前記化粧料組成物には、前記分散体が水溶液に分散したバイオセルロースマイクロファイバー分散液として適用され得る。
【0017】
本発明で前記バイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、バイオセルロースのヒドロキシ基(hydroxyl group)がカルボキシル基(carboxyl group)で置換され、水相で3次元網状構造のネットワークを形成して分散することを特徴とする。例えば、バイオセルロースに含まれた全体ヒドロキシ基中0.8mmol/gのセルロース以上、好ましくは、1.0mmol/gのセルロース以上がカルボキシル基で置換されたものでありうる。バイオセルロースのヒドロキシ基をカルボキシル基で置換する方法は、当業界に公知となった多様な方法によることができ、例えばN-オキシル化合物を溶解した蒸留水に酸化剤およびバイオセルロースを共に添加し、撹拌する過程を通じて行われ得る。
【0018】
前記分散体は、セルロース原料としてバイオセルロースを使用する。前記「バイオセルロース」は、バクテリア培養を通じて直接セルロースマイクロファイバーを合成するバクテリアセルロースであり、前記バイオセルロースは、各種木材由来のクラフト(craft)紙または亜硫酸パルプ、これらを高圧均質機(homogenizer)や摩砕機(mill)等で粉砕した粉末セルロース、あるいはこれらを酸加水分解等の化学的処理を通じて精製した微結晶セルロース粉末、その他にもケナフ、麻、稲、バカス、竹等の植物由来のセルロースとは区分される。セルロースの合成に利用できるバクテリアとしては、例えば、Acetobacter属、Rhizibium属およびAgrobacterium属があり、生産効率性のために複数種のバクテリアを混合培養することができる。前記バクテリアの培養時に培養液の界面にバクテリアセルロースが形成される。前記セルロースの培養方法としては、静置培養法(Static cultivation)と振とう培養法(Agitated cultivation)がある。静置培養方法は、まずバクテリアを培地に移植した後、フラスコで略10日間棚などにそのまま静置して培養する方法である。振とう培養方法は、液体培地を通じてシェイキングインキュベーターで継続的に一定の速度で撹拌しつつ培養する方法である。バイオセルロースは、3次元ネットワークを有し、高い結晶化度(84~89%)と十分な空隙を有する。前記バイオセルロースの長さは、数~数十マイクロメーターであり、一定の、すなわち均一な長さ分布の直径を有する。
【0019】
一具体例において、前記バイオセルロースは、市販のセルロースでありうる。
【0020】
本発明で使用されるバイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体を構成するバイオセルロースマイクロファイバーは、数平均直径が0.1~200nm、例えば1~150nm、20~100nm、30~60nmでありうる。マイクロファイバーが前記範囲の数平均直径を有するとき、人体への適用に有利であり、化粧料組成物乃至医薬外品組成物への活用に有利であり、特に直径が30~60nmであるとき、ネットワーク構造を形成しながらも、塗布時にたまることなく固有な機能を発現することができる。
【0021】
また、前記バイオセルロースマイクロファイバーの最大直径は、0.1~200nm,例えば1~150nm、20~100nm、60~100nmでありうる。マイクロファイバーが前記範囲の最大直径を有するとき、化粧料組成物乃至医薬外品組成物のように人体への適用時に活用に有利であり、最大直径が200nmを超過すると、塗布時にたまる等の使用感低下問題が発生することがある。
【0022】
本発明において、バイオセルロースマイクロファイバーの長さは、原料に使用されたバイオセルロースの長さと類似していてもよい。すなわち、本発明で使用されるマイクロファイバーは、原料に使用されたバイオセルロースの長さが維持され、これは、原料に使用されたバイオセルロースの長さと実質的に差異がないことを意味する。実質的に差異がないというのは、長さ間の差異が±10%以下、±5%以下、±1%以下、±0.1%以下、±0.01%以下であることを意味する。したがって、本発明で使用されたバイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、製造過程でマイクロファイバーを切る工程が含まれないことがある。
【0023】
本発明によるバイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、当業界に公知となった多様な方法を通じて製造され得る。ただし、バイオセルロース原料の微細化のためのトップダウン(top-down)方式の前処理過程、例えばマイクロファイバーを切る工程が不要である。
【0024】
一具体例において、バイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、次のような方法で製造され得る:
i)水にN-オキシル化合物を溶解する段階;
ii)溶解物にバイオセルロースおよび酸化剤を添加し、撹拌する段階;および
iii)洗浄過程を通じて反応物を除去する段階。
【0025】
前記方法においてN-オキシル化合物は、酸化反応を促進するための触媒剤として使用される。N-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(TEMPO);4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(4-ヒドロキシTEMPO)の水酸基をアルコールでエーテル化したり、またはカルボン酸あるいはスルホン酸でエステル化させて、適当な疎水性を付与した4-ヒドロキシTEMPO誘導体;またはアザアダマンタン型ニトロキシラジカル;のうち1種以上を選択することができ、最も好ましくは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(TEMPO)を使用することができる。N-オキシル化合物の使用量は、バイオセルロースをマイクロファイバー化しうる触媒量であれば、制限されない。例えば、1gのセルロース系乾燥原料に対して0.01~100mmol、好ましくは、0.01~50mmol、より好ましくは、0.05~30mmol程度を利用することができる。
【0026】
本発明で利用できる酸化剤としては、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはその塩、ハロゲン酸化物またはハロゲン過酸化物があるが、ハロゲンのうちでも塩素を利用することが好ましい。前記塩素としては、例えば、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸またはこの塩、塩素酸化物または塩素過酸化物であり得、次亜塩素酸ナトリウムでありうる。次亜塩素酸ナトリウムは、マイクロファイバーの生産費用の面から経済的であり、環境負荷が少ないので、特に好ましい。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲内で選択することができる。例えば、1gのセルロース系乾燥原料に対して0.5~500mmol、好ましくは、0.5~50mmol、より好ましくは、2.5~25mmol程度を利用することができる。
【0027】
前記製造方法によれば、バイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体の製造方法は、15~30℃の室温でも酸化反応を円滑に進行させることができる。酸化反応の進行によってバイオセルロース構造中にカルボキシル基が生成されるので、反応液のpHが低下する。したがって、効率的な酸化反応のためには、アルカリ性溶液を持続的に添加することによって、反応液のpHを8~12、例えば10~11程度に維持しなければならない。酸化反応の反応時間は、適当に設定することができ、例えば0.5~60時間、1~50時間、24~48時間に設定することができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、前記バイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、水溶液に添加されたとき、マイクロファイバーとしての構造的、物理化学的特徴および/または水分散性を維持し、特にバイオセルロース本来のネットワークを維持して安定的に分散することができる。これにより、本発明で前記バイオセルロースマイクロファイバーは、水分散型組成物で剤形化され得る。前記「水分散型組成物」は、溶媒として水を含む組成物であり、水分散バイオセルロースマイクロファイバーが水相に分散する組成物を意味する。
【0029】
前記のようなバイオセルロースマイクロファイバーネットワーク分散体は、化粧料組成物に適用されると、皮膚塗布時に均一な物理的な膜を形成することになり、その上に色調化粧料を塗布すると、前記物理的膜の脱落力によって色調化粧料の洗浄が容易となる。具体的に、バイオセルロースマイクロファイバーの膜が塗布された皮膚の上に色調化粧料を塗布した後、洗浄することになると、前記マイクロファイバーが水と接触して網状構造体単位で互いにからまって脱離していくことによって、色調化粧料の洗浄を助けることができる。特に、バイオセルロースの場合、毛穴やシワ等の皮膚屈曲の上にも、堅固な物理的膜を形成することができるので、強力な洗浄剤なしに完ぺきな洗浄が可能である。
【0030】
本発明の組成物において、前記バイオセルロースマイクロファイバーは、全体組成物の重量に対して0.001~10重量部、例えば0.01~5重量部、0.1~3重量部で含まれ得、この際、含まれるマイクロファイバーは、乾燥した状態のものでありうる。組成物内前記バイオセルロースマイクロファイバーを0.001重量部未満で含有することになると、皮膚への塗布時に密度の高いマイクロファイバー膜を形成せず、10重量部を超過して含有することになると、マイクロファイバー間にかたまる現象が発生して剤形化しにくい問題点がある。
【0031】
本発明において、化粧料組成物は、バイオセルロースマイクロファイバーだけでなく、皮膜形成高分子および/または微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分を追加で含むことができる。前記皮膜形成高分子と微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分は、バイオセルロースマイクロファイバーが物理的膜を形成することに補助効果を付与することができ、通常、ウォッシャブル(washable)化粧料組成物に適用されて皮膜を形成できる高分子および成分であれば、特に制限されるものではない。
【0032】
前記皮膜形成高分子としては、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリビニルアセテート系、ポリビニルピロリドン系高分子およびこれらの共重合体を含むことができるが、これに制限されるものではない。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系またはポリアクリル系皮膜形成高分子を使用することができる。
【0033】
微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分は、温度変化によって相が転移される成分であり、室温(20~25℃)では、ゲル(gel)~流動性のない状態に維持されるが、微温水の温度(30~40℃)あるいはそれ以上の温度ではゾル(sol)~流動性のある状態に変化する性質を有することを意味する。前記成分としては、メチルセルロース(methyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyl propyl methyl cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxyl propyl cellulose)、プルロニック(pluronic)、プニパム(PNIPAAm)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリエチレンオキシド(PEO)-ポリプロピレンオキシド(PPO)-ポリエチレンオキシド(PEO共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)-ポリエチレングリコール(PEG)共重合体およびこれらの混合物よりなる群から選ばれた温度感応性高分子;またはメトキシポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン(mPEG-PCL)ブロック共重合体であるか、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、オゾケライトワックス(ozokerite wax)、キャンデリラワックス(candelilla wax)、カルナウバワックス(carnauba wax)、セレシンワックス(ceresine wax)、ビーズワックス(bees wax)およびパラフィンワックス(paraffin wax)よりなる群から選ばれた皮膜形成ワックスでありうるが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明において、前記皮膜形成高分子および微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分は、全体組成物の重量に対して0.0001~20重量部、例えば0.001~10重量部、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~1重量部で含まれ得る。組成物内前記皮膜形成高分子または微温水温度以上の(ガラス)転移温度を有する成分が0.01重量部未満で含有される場合、皮膚への塗布時に十分に均一な膜を形成せず、20重量部を超過して含有される場合、皮膜形成高分子あるいはバイオセルロースとかたまり現象が起きて剤形化しにくいか、バイオセルロースの堅固な物理的膜形成を阻害することができる。
【0035】
本発明において、前記微温水温度は、皮膚洗顔時に血管を拡張させ、血液循環を助けて洗浄効果と角質除去が容易な温度であり、25~45℃の範囲であり得、例えば30~40℃の範囲でありうるが、これに制限されるものではない。
【0036】
下記実施例では、ベース化粧料組成物にバイオセルロースマイクロファイバーとともに皮膜形成高分子としてポリビニルアルコールを含むことによって、皮膜がさらに強力に形成され、水と反応して脱落がさらに容易に起きて洗浄効果がさらに優れていることを確認した。
【0037】
本発明による化粧料組成物は、柔軟化粧水または栄養化粧水等のような化粧水、スプレータイプの化粧水、フェイシャルローション、ボディローション等のような乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリーム等のようなクリーム、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ジェル、パック、サンスクリーン、メイクアップベース、液体タイプまたはスプレータイプ等のファンデーション、パウダー、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメイクアップ除去剤、クレンジングフォーム、ソープ、ボディウォッシュ等のような洗浄剤等の剤形を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明の化粧料組成物は、上述した有効成分の他に公知の保湿成分を追加で含むことができ、組成物の効果を低下させない範囲内で当業界で通常的に使用される添加剤を追加で含むことができる。前記添加剤としては、パール剤、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤およびゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤およびキレート化剤、防腐剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞または化粧品に通常的に使用される任意の他の成分のような化粧品学分野で通常的に使用される補助剤と担体を含むことができる。
【0039】
本発明の化粧料組成物の剤形が、ペースト、クリームまたはジェルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられる。
【0040】
また、本発明の化粧料組成物の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪酸エステル、PEG-8、ポリエチレングリコールまたはソルビタン等が用いられる。
【0041】
また、本発明の化粧料組成物の剤形がスプレーである場合、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン、ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0042】
本発明の化粧料組成物は、通常の使用方法によって使用され得、使用者の皮膚状態または好みによってその使用回数を別にすることができる。
【0043】
また、本発明は、色調化粧料の塗布前に前記皮膚用ベース化粧料組成物を皮膚に塗布する段階を含む色調化粧料の除去効率を増進させる方法を提供する。
【0044】
化粧料組成物内バイオセルロースマイクロファイバーが塗布されることによって、皮膚に均一な膜を形成することになり、前記膜は、水と反応して脱落するので、色調化粧料の塗布前に前記化粧料組成物を先に塗布することによって、色調化粧料を容易に洗浄することができる。
【0045】
前記方法において化粧料組成物、バイオセルロースマイクロファイバー、洗顔容易性増進等の効果は、前述したすべての内容をそのまま適用することができる。
【0046】
また、本発明は、色調化粧料の塗布前に前記皮膚用ベース化粧料組成物を皮膚に塗布する段階を含む皮膚メイクアップ方法を提供する。
【0047】
また、本発明は、色調化粧料の除去効率を増進させるための前記皮膚用ベース化粧料組成物の用途を提供する。
【0048】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実験例および製造例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下で開示される実験例および製造例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現されるものであり、ただ本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【発明の効果】
【0049】
本発明による皮膚用ベース化粧料組成物は、バイオセルロースマイクロファイバーを含むことによって、前記マイクロファイバーが形成する3次元網状構造の密なネットワークを通じて皮膚の上に塗布された色調化粧料を容易に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】一実施例によるセルロース分散液の塗布有無による化粧表現力効果を確認した結果である。
図2】一実施例によるセルロース分散液の塗布有無による洗浄力効果を確認した結果である。
図3】一実施例によるベース化粧料組成物のメイクアップの洗浄力を確認した結果である。
図4】一実施例による皮膜形成高分子を含むベース化粧料組成物のメイクアップ洗浄力を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を下記実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0052】
製造例.セルロース分散液の製造
以前の研究であるKR公開特許第10-2017-0103698号と同じ方法でセルロースマイクロファイバー分散体を製造した。上記のように製造された分散体は、精製水に分散して分散液を製造した。この際、前記分散体は、精製水100重量部に対して1.5(乾燥)重量部を使用した。
【0053】
実験例1.セルロース分散液の塗布による化粧表現力効果
セルロース分散液の塗布有無による化粧表現力を確認するために、皮膚上の同じ面積に前記製造例の分散液を2mg/cmの濃度で塗布して乾燥させた後、その上に同一濃度(2mg/cm)の油中水型ファンデーションを塗布した。
【0054】
その結果、図1から分かるように、分散液を塗布した後、その上にファンデーションを塗布しても、皮膚にすぐに塗布するときのように、色調化粧料が崩れてしまったり、浮いたり、かたまる等の異質感なしに表現されることを確認することができる。
【0055】
実験例2.セルロース分散液の塗布による洗浄力確認
セルロース分散液の塗布による洗浄力効果を確認するために、皮膚上の同じ面積に前記製造例の分散液を2mg/cmの濃度で塗布して乾燥させた後、その上に同一濃度(2mg/cm)の油分散リップ化粧料を塗布した。化粧料の塗布後、十分に乾燥させ、30℃の水で同じ圧力を与えて洗浄した。洗浄結果を図2に示した。
【0056】
その結果、セルロース分散液を塗布した場合、セルロースマイクロファイバー膜が形成されて洗浄力が顕著に増加したことを確認することができる。
【0057】
実施例1~3.水中油型乳化ベース化粧料組成物の製造
セルロース分散体の濃度による洗浄力を確認するために、セルロース分散体を含有する水中油型(Oil in Water;O/W)乳化剤形のベース化粧料組成物を下記表1の組成および含量によって製造した。この際、実施例1~3は、バイオセルロースマイクロファイバーが、精製水100重量部に対して1.5乾燥重量部で含まれた原料をそれぞれ10重量部、20重量部および30重量部で含む組成物を意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
実験例3.ベース組成物の洗浄力確認
前記実施例1~3の組成物の塗布によるメイクアップの洗浄力を確認するために、次のような方法で実験を行った。
【0060】
まず、スライドガラスの上に前記実施例1~3の組成物をそれぞれ一定の厚さで塗布した。その後、完ぺきな乾燥のために常温で1日間乾燥させた後、その上に油中水型ファンデーションを一定の厚さで塗布した。塗布後、4時間の間常温で乾燥させ、撹拌中の30℃の蒸留水に浸漬して洗浄効果を確認した。比較例1の組成物も、前記と同じ方法で実験を行った。洗浄結果を図3に示した。
【0061】
図3から分かるように、バイオセルロースマイクロファイバーが含有されていない比較例1の組成物を塗布した場合には、ファンデーションがほとんど洗われずに残っている反面、実施例1~3組成物を塗布した場合には、ファンデーションが洗い出されたことが観察された。特に剤形内バイオセルロースマイクロファイバーの含量が増加するほど、さらに多くの量のファンデーションが洗い出された結果を通じて、セルロースマイクロファイバーの含量が増加するほどこれに伴う洗浄力も共に増加することを確認することができた。
【0062】
実施例4.皮膜形成高分子を含む水中油型乳化ベース化粧料組成物の製造
一般的に洗浄力を助けると知られた皮膜形成剤の存在下でバイオセルロースマイクロファイバーによる洗浄力を確認するために、皮膜形成高分子とセルロースマイクロファイバーを含有する水中油型乳化剤形のベース組成物を下記表2の組成および含量で製造した。この際、皮膜形成高分子としては、ポリビニルアルコールを使用した。
【0063】
【表2】
【0064】
実験例4.皮膜形成高分子を含有するベース組成物の洗浄力確認
本発明による組成物が洗浄を助ける成分としてよく知られた皮膜形成高分子とともに使用されて、洗浄効果を増大させることができるかを確認するために、次のような方法で実験を行った。
【0065】
スライドガラスの上に前記実施例2の組成物を一定の厚さで塗布した。以後、完ぺきな乾燥のために常温で1日間乾燥させた後、その上に油中水型ファンデーションを一定の厚さで塗布した。塗布後、4時間の間常温で乾燥させ、撹拌中の30℃の蒸留水に浸漬して、洗浄効果を確認した。比較例2の組成物も、前記と同じ方法で実験を行った。洗浄結果を図4に示した。
【0066】
図4の実施例4の結果を通じて、セルロースマイクロファイバーが、従来洗浄のために使用された皮膜形成高分子の洗浄容易性を向上させることができることを確認した。
図1
図2
図3
図4