(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】使い捨て拭き取り用シート及び使い捨て拭き取り用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/05 20060101AFI20230904BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20230904BHJP
D06M 13/148 20060101ALI20230904BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20230904BHJP
D21H 19/12 20060101ALI20230904BHJP
D21H 19/34 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
D06M15/05
A47K10/16 C
A47K10/16 D
D06M13/148
D21H19/10 A
D21H19/12
D21H19/34
(21)【出願番号】P 2019173674
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 里奈
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096014(JP,A)
【文献】特開2018-086203(JP,A)
【文献】特開2001-262489(JP,A)
【文献】特開2018-172801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D06M 13/00 - 15/715
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材と、
前記シート材の繊維に付着されているセルロースナノファイバーとグリセリンを有する
使い捨て拭き取り用シートであって、
当該使い捨て拭き取り用シートは、前記グリセリンが先に添加されている前記シート材に前記セルロースナノファイバーが添加されてなることを特徴とする使い捨て
拭き取り用シート。
【請求項2】
前記シート材の目付は、20g/m
2以上40g/m
2以下であることを特徴とする請求項1に記載の使い捨て
拭き取り用シート。
【請求項3】
シート材に対してグリセリン
の含有量が1~15質量%である第1の水性薬液を含浸する第一工程と、
前記第1の水性薬液が含浸された前記シート材を乾燥する第二工程と、
前記シート材に対してセルロースナノファイバー
の含有量が0.5~2.0質量%である第2の水性薬液を含浸する第三工程と、
前記第2の水性薬液が含浸された前記シート材を乾燥する第四工程と、
を有することを特徴とする使い捨て
拭き取り用シートの製造方法。
【請求項4】
前記シート材に対する前記第1の水性薬液と前記第2の水性薬液の含浸量はそれぞれ、0.5~10g/m
2であることを特徴とする請求項
3に記載の使い捨て
拭き取り用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れや水滴などを拭き取る使い捨て拭き取り用シート及び使い捨て拭き取り用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚れを拭取る性能を向上させるために、セルロースナノファイバー(CNF)を含む薬液を不織布に含浸させた湿潤拭取り用シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の湿潤拭取り用シートのように、不織布の繊維間にセルロースナノファイバーを分散させることで汚れの拭取り性能を向上させることができるが、ドライタイプの拭取り用シートの繊維間にセルロースナノファイバーを分散させた場合には、そのシートが固くなってしまい、使用感が損なわれることや、汚れや水滴などを拭き取り難くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、汚れや水滴などを好適に拭き取ることができる使い捨て拭き取り用シート及び使い捨て拭き取り用シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、使い捨て拭き取り用シートであって、
シート材と、
前記シート材の繊維に付着されているセルロースナノファイバーとグリセリンを有する使い捨て拭き取り用シートであって、
当該使い捨て拭き取り用シートは、前記グリセリンが先に添加されている前記シート材に前記セルロースナノファイバーが添加されてなることを特徴とする。
例えば、この使い捨て拭き取り用シートは、シート材に対して、セルロースナノファイバーとグリセリンを含んでいる水性薬液を含浸させた後に乾燥させることで得られる。
シート材の繊維間にセルロースナノファイバーとグリセリンが含まれている使い捨て拭き取り用シートであれば、柔らかな使用感を有するとともに、汚れや水滴などを好適に拭き取ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の使い捨て拭き取り用シートにおいて、
前記シート材の目付は、20g/m2以上40g/m2以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、使い捨て拭き取り用シートの製造方法であって、
シート材に対してグリセリンの含有量が1~15質量%である第1の水性薬液を含浸する第一工程と、
前記第1の水性薬液が含浸された前記シート材を乾燥する第二工程と、
前記シート材に対してセルロースナノファイバーの含有量が0.5~2.0質量%である第2の水性薬液を含浸する第三工程と、
前記第2の水性薬液が含浸された前記シート材を乾燥する第四工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の使い捨て拭き取り用シートの製造方法において、
前記シート材に対する前記第1の水性薬液と前記第2の水性薬液の含浸量はそれぞれ、0.5~10g/m2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汚れや水滴などを好適に拭き取ることができる使い捨て拭き取り用シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る使い捨て拭き取り用シート及び使い捨て拭き取り用シートの製造方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
なお、使い捨て拭き取り用シートである使い捨てシートとして、汚れや水滴などを拭き取るドライタイプの手拭き用シートを一例に説明するが、他の使い捨てシートなども含まれる。
【0018】
[使い捨てシート、シート材の説明]
使い捨てシートは、シート材と、シート材の繊維に付着されているセルロースナノファイバーとグリセリンを有している。つまり、この使い捨てシートは、シート材の繊維間などにセルロースナノファイバーとグリセリンを含んでいるものである。
この使い捨てシートは、シート材に対して水性薬液を含浸させた後に乾燥させたものであり、水性薬液はセルロースナノファイバー(CNF)とグリセリンを含んでいる。
本実施形態では、シート材に対して水性薬液を塗布によって含浸させた後に乾燥させている。
シート材の材質は、水性薬液の含浸性を有する材質(例えば、織布、不織布、紙など)であればよく、特に限定されるものではない。例えば、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。
また、シート材の目付は、20g/m2以上40g/m2以下である。このような目付のシート材は薄く、厚み感に乏しいが、後述するように、シート材の繊維間にセルロースナノファイバーを分散させるように付着させることで、厚み感や強度を持たせることができ、比較的低い目付でもしっかりとしたシートになる。
【0019】
[水性薬液]
水性薬液は、セルロースナノファイバーとグリセリンを含有している水溶液である。
この水性薬液に含まれているセルロースナノファイバーは、シート材に厚み感や強度を持たせるためのものである。
また、グリセリンは、セルロースナノファイバーが付着したことで固くなりがちなシート材に柔軟性を付与するためのものである。
なお、水性薬液として、セルロースナノファイバーとグリセリンを両方とも含有している水溶液を用いてもよく、また、セルロースナノファイバーを含有している水溶液と、グリセリンを含有している水溶液を併用するようにしてもよい。
【0020】
水性薬液におけるセルロースナノファイバーの含有量は0.5~2.0質量%であり、好ましくは1.0~1.5質量%である。
セルロースナノファイバーの含有量が2.0質量%を超えると薬液の粘度が高くなり、シート材に均一に塗布し難くなる。また、セルロースナノファイバーの含有量が0.5質量%未満であるとシート材に厚み感をほとんど付与できない。
【0021】
また、水性薬液におけるグリセリンの含有量は1~15質量%である。
グリセリンの含有量が15質量%を超えると、シート表面にべたつきが生じるおそれがある。また、グリセリンの含有量が1質量%未満であると、セルロースナノファイバーが付着しているシート材に柔軟性を付与することができない。
【0022】
[セルロースナノファイバー]
セルロースナノファイバー(以下、CNFと称する)とは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に平均繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。
【0023】
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
CNFの製造方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3~4nmとなるiCNF(individualized CNF) (シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施してもよい。
【0025】
本実施形態において用いられるCNFは、後述の方法によって算出した平均繊維幅が、1nmから100nmであることが好ましい。
【0026】
なお、具体的に用いることができるCNFとしては、例えば、NBKP100%のCNFであり、CNFの平均繊維幅(メジアン径)が49nmのものが挙げられる。このCNFは、NBKPをリファイナー処理して粗解繊した後、高圧ホモジナイザーを用いて、4回処理して解繊することにより得られたものである。
【0027】
ここで、CNFの繊維幅(平均繊維幅)の測定方法について説明する。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。
次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(段落0021に記載のCNFについては、30000倍の倍率を用いた。)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維幅とする。なお、計測値の中位径に限らず、例えば、数平均径や、モード径(最頻径)を平均繊維幅としてもよい。
【0028】
[製造方法の説明]
次に、本実施形態に係る使い捨てシートの製造方法について説明する。
・第1の製造方法
(1)シート材に対してCNFとグリセリンを含んでいる水性薬液を塗布する。シート材に対する水性薬液の塗布量(含浸量)は、0.5~10g/m2である。
(2)水性薬液が塗布されたシート材を乾燥する。
【0029】
・第2の製造方法
(1)シート材に対してグリセリンを含んでいる第1の水性薬液を塗布する。シート材に対する水性薬液の塗布量(含浸量)は、0.5~10g/m2である。
(2)第1の水性薬液が塗布されたシート材を乾燥する。
(3)さらに、そのシート材に対してCNFを含んでいる第2の水性薬液を塗布する。シート材に対する水性薬液の塗布量(含浸量)は、0.5~10g/m2である。
(4)第2の水性薬液が塗布されたシート材を乾燥する。
なお、第2の製造方法は、シート材に対してグリセリンを含んでいる水性薬液を塗布(含浸)して乾燥する工程と、シート材に対してCNFを含んでいる水性薬液を塗布(含浸)して乾燥する工程を有していればよく、その工程順を適宜調整してもよい。
【0030】
[効果の説明]
本実施形態の使い捨てシートは、比較的低い目付のシート材に、CNFとグリセリンを含んでいる水性薬液を塗布して乾燥させたものである。
このようにシート材にCNFとグリセリンを塗着させたことで、そのシート材に厚み感や強度を持たせるとともに、柔軟性を付与することができる。
こうして、汚れや水滴などを好適に拭き取ることができる使い捨てシートが得られる。
【実施例】
【0031】
次に、本実施形態の使い捨てシートの実施例及び比較例に関し、その物性について評価した結果について説明する。
【0032】
本実施形態では、組成がレーヨン:PET(ポリエチレンテレフタレート):PP(ポリプロピレン)・PE(ポリエチレン)=40:40:20、目付が34g/m2の不織布のシート材を用いた。
そのシート材に、CNFの含有量が1.0質量%でグリセリンの含有量が5.0質量%、精製水の含有量が94.0質量%である水性薬液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後、自然乾燥したもの(使い捨てシート)を実施例1とした。
また、シート材に、CNFの含有量が1.0質量%、精製水の含有量が99.0質量%である水性薬液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後に自然乾燥し、さらにそのシート材に、グリセリンの含有量が5.0質量%、精製水の含有量が95.0質量%である水性薬液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後、自然乾燥したもの(使い捨てシート)を実施例2とした。
また、シート材に、グリセリンの含有量が5.0質量%、精製水の含有量が95.0質量%である水性薬液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後に自然乾燥し、さらにそのシート材に、CNFの含有量が1.0質量%、精製水の含有量が99.0質量%である水性薬液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後、自然乾燥したもの(使い捨てシート)を実施例3とした。
【0033】
また、シート材に、CNFの含有量が1.0質量%、精製水の含有量が99.0質量%である水溶液を、1.4g/m2の塗布量となるようにスプレー塗布した後、自然乾燥したものを比較例1とした。
また、シート材そのもの(未処理のシート材)を比較例2とした。
【0034】
<シートの厚さ測定>
以下の方法にて、実施例1~3、比較例1、比較例2の各サンプルに対し、その厚さを測定した。
ここでは、厚み測定器(ミツトヨ社製のID-C1012CX)を用い、340gの荷重を乗せた25cm2の円盤と台座の間にサンプルのシートを挟み、その厚み[mm]を測定した。
各サンプル、5つの試料の厚さを測定し、平均値を算出した。
その測定結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
表1に示すように、シート材にCNFが付着されたことで(実施例1~3、比較例1)、そのシートの厚みが増すことがわかった。
特に、グリセリンを含んだ水性薬液を塗布した後に乾燥し、さらにCNFを含んだ水性薬液を塗布した後に乾燥する方法でシートを作製すると(実施例3)、より厚みが増すことがわかった。これは、グリセリンが先に添加されたことで、シート材の繊維間に入り込むCNFよりもシート表面に付着するCNFが多く、シート表面にCNF層が形成されたために、シートの厚みがより増したと考えられる。
【0037】
<シートの強度測定>
以下の方法にて、実施例1、比較例1、比較例2の各サンプルに対し、その強度を測定した。
ここでは、引張試験機(A&D社製のTENSIRON RTG1210)を用い、25mm幅にカットしたシートを、チャック間50mm、速度500mm/minの条件で、その引張強度[N]を測定した。
各サンプル、3つの試料の強度を測定し、平均値を算出した。
その測定結果を表2に示す。
なお、強度測定では、シートのMD方向、CD方向で各3回実施し、それぞれ各3回の測定値の平均を算出する。MD方向とは抄紙機上の進行方向に対応する方向であり、CD方向とは抄紙機上の進行方向と直角する方向に対応する方向である。
【0038】
【0039】
表2に示すように、シート材にCNFが付着されたことで(実施例1、比較例1)、そのシートの強度が増すことがわかった。
なお、実施例2,3のサンプルは、実施例1のサンプルと、ほぼ同じ引張強度を有していたので、説明は割愛する。
【0040】
<シートの柔らかさ・官能評価>
実施例1、比較例1のサンプルに対し、各サンプルの柔らかさを比較する官能評価を8人に実施した。
ここでは、柔らかい~固いという評価に点数を付与する採点法(柔らかい;5点、やや柔らかい;4点、普通・どちらでもない;3点、やや固い;2点、固い;1点)により行い、各人の採点の平均を算出した。
その結果、実施例1は3.6点、比較例1は1.4点と評価された。
【0041】
このように、シート材にCNFとグリセリンが付着されたシート(実施例1;使い捨てシート)は、シート材にCNFのみが付着されたシート(比較例1)よりも柔らかく、使い心地がよいことがわかった。
なお、実施例2,3のサンプルは、実施例1のサンプルと、ほぼ同じ柔らかさを有していたので、説明は割愛する。
【0042】
<シートの保水性>
以下の方法にて、実施例1、比較例1、比較例2の各サンプルに対し、その保水量を測定した。
各サンプルを100mm×100mmの大きさにカットし、そのシートの重量を測定した(ドライ重量)。
各シートを5秒間水にどぶ漬けし、手で30秒間つるして水切りを行った後、プラスチック板上に5分間静置し、シートの重量を測定した(含浸後重量)。
そして、ドライ重量と含浸後重量の差から、シートの保水量を算出した。
その測定結果を表3に示す。
【0043】
【0044】
表3に示すように、シート材にCNFのみが付着されたシート(比較例1)は、未処理のシート材(比較例2)よりも保水性が向上することがわかった。
また、シート材にCNFとグリセリンが付着されたシート(実施例1;使い捨てシート)は、シート材にCNFのみが付着されたシート(比較例1)よりも保水性が向上することがわかった。
なお、実施例2,3のサンプルは、実施例1のサンプルと、ほぼ同じ保水量を有していたので、説明は割愛する。
【0045】
このように、少なくともCNFを含む水性薬液をシート材にスプレー塗布した後に自然乾燥させて、シート材にCNFを付着させたシートは、未処理のシート材に比べて、厚みや強度が増すことがわかった。
さらに、少なくともグリセリンを含む水性薬液をシート材にスプレー塗布した後に自然乾燥させるなどして、CNFに加えてシート材にグリセリンを付着させたシートは、グリセリンが付着されていないシート(CNFのみが付着されたシート)に比べて、柔らかさと保水性が向上することがわかった。
【0046】
つまり、ドライタイプの使い捨てシートとして、シート材にCNFを含ませる場合、CNFとともにグリセリンを含ませるようにすれば、シート材に厚み感や強度を持たせるとともに、柔軟性や保水性を付与することができる。
特に、シート材にグリセリンを含む水性薬液を塗布した後に乾燥させ、さらにそのシート材にCNFを含む水性薬液を塗布した後に乾燥させるようにすれば、より一層厚みを増した使い捨てシートを得ることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の使い捨てシートは、汚れや水滴などを拭き取る用途に好適に使用することができる。
【0048】
なお、以上の実施の形態においては、シート材に水性薬液をスプレー塗布して含浸させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の塗布処理や浸漬処理などによってシート材に水性薬液を含浸させるようにしてもよい。
【0049】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。