(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】チャイルドシートアンカーカバー装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20230904BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230904BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2020022375
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂元 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 和久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 里枝
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0131915(KR,A)
【文献】特開2007-091002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0104190(US,A1)
【文献】特開2001-347890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装材の収容空間に収容されたチャイルドシート用のアンカーにアクセスするための開口部を有するベース部材と、
上記ベース部材の上記開口部を開閉するカバー部材と、
を備え、
上記カバー部材は、上記開口部から上記収容空間に入り込んだ位置にある回動軸線を中心に全閉位置から全開位置までの間で回動可能であり、
上記開口部から上記回動軸線までの上下方向の距離が、上記カバー部材が上記全閉位置から上記全開位置まで回動するときに上下方向について上記開口部から突出する突出高さを上回るように構成されて
おり、
上記ベース部材と上記カバー部材のいずれか一方には、上記回動軸線を中心とした円弧線に沿って延びるガイド溝が設けられ、上記ベース部材と上記カバー部材のいずれか他方には、上記ガイド溝にスライド可能に係合して上記カバー部材が上記全閉位置に配置される第1位置から上記カバー部材が上記全開位置に配置される第2位置までの間でガイドされる係合部が設けられており、
上記ガイド溝と上記係合部はいずれも、上記回動軸線と上記ベース部材の上記開口部との間に設けられている、チャイルドシートアンカーカバー装置。
【請求項2】
上記ガイド溝には、上記カバー部材が上記全閉位置と上記全開位置の少なくとも一方にあるときに上記係合部のスライド動作をロックするロック部が設けられている、請求項
1に記載のチャイルドシートアンカーカバー装置。
【請求項3】
上記ベース部材は、上記回動軸線を法線とする支持壁部を有し、上記カバー部材は、上記支持壁部と対向する対向壁部を有し、
上記支持壁部と上記対向壁部のいずれか一方を第1壁部とし、上記支持壁部と上記対向壁部のいずれか他方を第2壁部としたとき、上記第1壁部には、上記カバー部材の回動時に上記第2壁部に摺接する摺接突起が設けられている、請求項
1または2に記載のチャイルドシートアンカーカバー装置。
【請求項4】
上記第2壁部には、上記摺接突起との摺接を解除する逃がし穴が設けられており、上記第1壁部の上記摺接突起は、上記カバー部材が上記全閉位置と上記全開位置との間の中間位置にあるときに上記第2壁部に摺接し、上記全閉位置と上記全開位置のいずれかにあるときに上記逃がし穴に係合する、請求項
3に記載のチャイルドシートアンカーカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートアンカーカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、この種のチャイルドシートアンカーカバー装置として、チャイルドシート用のアンカーを覆うためのカバー部材を有するものが開示されている。カバー部材は、開口部を有するベース部材にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられている。
カバー部材において、ヒンジピンは開口部の後端側に設けられており、このカバー部材がヒンジピンを中心に後方へ回動することによって開口部が開放されるように構成されている。
【0003】
上記アンカーカバー装置によれば、ユーザは全閉位置にあるカバー部材を全開位置まで後方に回動させて開口部を開放することができる。これにより、ユーザは開口部を通じてアンカーにアクセスすることが可能になり、アンカーにチャイルドシートのテザーを連結してチャイルドシートを固定するための作業を行うことができる。一方で、ユーザはアンカーを使用しないときには、全開位置にあるカバー部材を全閉位置まで前方に回動させて開口部を閉鎖してアンカーを覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アンカーカバー装置を、例えば後部シートの後方に配置されたリアパーセルのような車両内装材に設けることがある。このとき、カバー部材を全閉位置から全開位置に向けて後方へ回動させる開動作時に、その後方にあるサンシェード等の周辺部品との干渉によってカバー部材の動きが制限されると、ユーザがアンカーにアクセスするのが難しい。このため、作業性を考慮した場合にはアンカーカバー装置の設置の自由度が低くなるという問題が生じ得る。そこで、この種のアンカーカバー装置の設計では、設置の自由度を高めるべく、カバー部材の開閉の要するスペースを極力小さく抑えることができる構造が求められている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、チャイルドシート用のアンカーを覆うカバー部材を省スペースで開閉することができるチャイルドシートアンカーカバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両内装材の収容空間に収容されたチャイルドシート用のアンカーにアクセスするための開口部を有するベース部材と、
上記ベース部材の上記開口部を開閉するカバー部材と、
を備え、
上記カバー部材は、上記開口部から上記収容空間に入り込んだ位置にある回動軸線を中心に全閉位置から全開位置までの間で回動可能であり、
上記開口部から上記回動軸線までの上下方向の距離が、上記カバー部材が上記全閉位置から上記全開位置まで回動するときに上下方向について上記開口部から突出する突出高さを上回るように構成されており、
上記ベース部材と上記カバー部材のいずれか一方には、上記回動軸線を中心とした円弧線に沿って延びるガイド溝が設けられ、上記ベース部材と上記カバー部材のいずれか他方には、上記ガイド溝にスライド可能に係合して上記カバー部材が上記全閉位置に配置される第1位置から上記カバー部材が上記全開位置に配置される第2位置までの間でガイドされる係合部が設けられており、
上記ガイド溝と上記係合部はいずれも、上記回動軸線と上記ベース部材の上記開口部との間に設けられている、チャイルドシートアンカーカバー装置、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上記の一態様によれば、チャイルドシートアンカーカバー装置において、ベース部材の開口部が開放状態にあるとき、ユーザは、車両内装材の収容空間に収容されたチャイルドシート用のアンカーにベース部材の開口部を通じてアクセスできる。
【0010】
カバー部材は、開口部から収容空間に入り込んだ位置にある回動軸線を中心に全閉位置から全開位置までの間で回動可能である。このとき、開口部から回動軸線までの上下方向の距離が、カバー部材が全閉位置から全開位置まで回動するときに上下方向について開口部から突出する突出高さを上回るように構成されている。このため、カバー部材が回動時にベース部材から外部空間に突出する突出量を小さく抑えることができ、カバー部材を省スペースで開閉できる。その結果、アンカーカバー装置の設置の自由度を高めることができる。
【0011】
上記の別態様によれば、チャイルドシートアンカーカバー装置において、ベース部材の開口部を開閉するカバー部材は、回動軸線を中心に全閉位置から全開位置までの間で回動可能である。そして、カバー部材の全閉位置及び全開位置は、ベース部材とカバー部材のいずれか一方に回動軸線を中心とした円弧線に沿って延びるように設けられたガイド溝と、ベース部材とカバー部材のいずれか他方にガイド溝にスライド可能に係合するように設けられた係合部と、によって定まる。即ち、係合部が第1位置にあるときにカバー部材が全閉位置に配置され、係合部が第2位置にあるときにカバー部材が全開位置に配置されるようになっている。これにより、カバー部材は、全閉位置から全開位置までの間で円滑にガイドされる。
【0012】
ここで、カバー部材のための回動軸線は、ベース部材の開口部から収容空間に入り込んだ位置にある。即ち、この回動軸線は、開口部の開口面よりも収容空間側に外れた位置に設定されている。このため、回動軸線が開口部の開口面付近に設定される場合に比べると、カバー部材がベース部材から外部空間に突出して回動する可動領域を小さく抑えることができ、カバー部材を省スペースで開閉できる。その結果、アンカーカバー装置の設置の自由度を高めることができる。
【0013】
以上のごとく、上記態様によれば、チャイルドシート用のアンカーを覆うカバー部材を省スペースで開閉することができるチャイルドシートアンカーカバー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1にかかる車室内構造を示す斜視図。
【
図2】実施形態1のチャイルドシートアンカーカバー装置を閉状態にて示す斜視図。
【
図3】実施形態1のチャイルドシートアンカーカバー装置を開状態にて示す斜視図。
【
図11】実施形態1のチャイルドシートアンカーカバー装置を半開状態にて示す側面図。
【
図14】実施形態2のチャイルドシートアンカーカバー装置について
図4に対応した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0016】
上記のチャイルドシートアンカーカバー装置において、上記ガイド溝には、上記カバー部材が上記全閉位置と上記全開位置の少なくとも一方にあるときに上記係合部のスライド動作をロックするロック部が設けられているのが好ましい。
【0017】
このアンカーカバー装置によれば、カバー部材が全閉位置或いは全開位置にあるときに、ベース部材のガイド溝に設けられたロック部を利用して係合部のスライド動作をロックして、このカバー部材の動きを規制することができる。
【0018】
上記のチャイルドシートアンカーカバー装置において、上記ベース部材は、上記回動軸線を法線とする支持壁部を有し、上記カバー部材は、上記支持壁部と対向する対向壁部を有し、上記支持壁部と上記対向壁部のいずれか一方を第1壁部とし、上記支持壁部と上記対向壁部のいずれか他方を第2壁部としたとき、上記第1壁部には、上記カバー部材の回動時に上記第2壁部に摺接する摺接突起が設けられているのが好ましい。
【0019】
このアンカーカバー装置によれば、カバー部材の回動時に摺接突起に作用する摺動抵抗を利用して、カバー部材をユーザが手を放した位置に維持できる。これにより、カバー部材が自重で動くのを防ぐことができる。
【0020】
上記のチャイルドシートアンカーカバー装置において、上記第2壁部には、上記摺接突起との摺接を解除する逃がし穴が設けられており、上記第1壁部の上記摺接突起は、上記カバー部材が上記全閉位置と上記全開位置との間の中間位置にあるときに上記第2壁部に摺接し、上記全閉位置と上記全開位置のいずれかにあるときに上記逃がし穴に係合して上記第2壁部との摺接を解除するのが好ましい。
【0021】
このアンカーカバー装置によれば、カバー部材が全閉位置或いは全開位置にあるときに、第1壁部の摺接突起が第2壁部の逃がし穴に係合することによって、このカバー部を全閉位置或いは全開位置で確実に保持できる。また、カバー部材が全閉位置或いは全開位置に達したときに、ユーザは、摺接突起が逃がし穴に係合して第2壁部との摺接が解除されることでクリック感を得ることができる。このため、ユーザは、カバー部材を全閉位置或いは全開位置に設定できたことを自らの手の感触で容易に判断できる。
【0022】
以下、車両に設けられるチャイルドシートアンカーカバー装置(以下、単に「アンカーカバー装置」ともいう。)の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
このアンカーカバー装置の説明のための図面において、特に断りのない限り、前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示し、右方を矢印RHで示し、左方を矢印LHで示している。
【0024】
(実施形態1)
図1に示されるように、アンカーカバー装置10は、前後方向Xが車長方向となり、左右方向Yが車幅方向となり、上下方向Zが車高方向となるようにリアパーセル4に取付けられている。リアパーセル4は、後部シート1の後方に配置された車両内装材であり、前後方向X及び左右方向Yによって定まる平面に沿って延びている。
【0025】
本実施形態では、後部シート1上のチャイルドシート2の設置位置を変更できるように、3つのアンカーカバー装置10が左右方向Yに並置される場合について例示している。なお、必要に応じて、アンカーカバー装置10の数、配置、向きなどを変更することもできる。アンカーカバー装置10の配置や向きの変更に伴い、前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zも変化する。
【0026】
チャイルドシート2は、そのシート本体の背面上部から延びる繋留体であるトップテザー3を備えている。このチャイルドシート2は、トップテザー3の先端に設けられたフック部材3aを、リアパーセル4の収容空間4aに収容されているアンカーA(
図3を参照)に引っ掛けて連結することによって固定される。
【0027】
なお、アンカーAに対するフック部材3aの連結作業のやり易さを考慮した場合、後部シート1のヘッドレストからアンカーAまでの距離を所定値以上に設定するのが好ましい。一方で、この距離を大きくし過ぎると開閉要素が周辺部品と干渉し易くなり連結作業のやりにくくなることが懸念される。そこで、本実施形態では、アンカーAまでの距離が大きい場合でも作業性が低下するのを防ぐために、以下の種々の特徴を有するアンカーカバー装置10を採用している。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、アンカーカバー装置10は、ベース部材20及びカバー部材30を備えている。ベース部材20とカバー部材30の材料は問わないが、アンカーカバー装置10の軽量化のために樹脂材料からなるのが好ましい。
【0029】
ベース部材20は、リアパーセル4に固定される固定部21と、いずれも固定部21の裏面から下方へ延出した第2壁部としての2つの支持壁部22と、を備えている。
【0030】
固定部21は、リアパーセル4に沿うように構成されている。この固定部21には、アンカーA(
図3を参照)にアクセスするための開口部21aが設けられている。開口部21aは、上下方向Zの平面視が略矩形となるように構成されている。
【0031】
2つの支持壁部22は、ベース部材20のうちカバー部材30を支持するための部位である。2つの支持壁部22は、左右方向Yを板厚方向として左右方向Yに離間して設けられており、いずれも仮想の回動軸線L1が法線となるように構成されている。各支持壁部22には、回動軸線L1を通る回動支持穴23と、回動軸線L1を中心とした仮想の円弧線L2に沿って延びるガイド溝24と、回動軸線L1を中心とした仮想の円弧線L3上に位置する同一形状の2つの逃がし穴25と、が設けられている。
【0032】
回動支持穴23は、各支持壁部22を貫通するように設けられている。ガイド溝24は、各支持壁部22を貫通して一端部24aから他端部24bまで延びる長穴として設けられている。2つの逃がし穴25はいずれも、各支持壁部22を貫通しており、回動支持穴23とガイド溝24との間に配置されている。このため、回動軸線L1から円弧線L3までの半径が回動軸線L1から円弧線L2までの半径を下回るようになっている。各逃がし穴25は、後述の摺接突起35と係合可能に構成されている。
【0033】
カバー部材30は、ベース部材20の開口部21aを開閉するためのものである。このカバー部材30は、回動軸線L1を中心に全閉位置P1(
図2参照)から全開位置P2(
図3参照)までの間で回動可能となるようにベース部材20に取り付けられている。
【0034】
ここで、回動軸線L1は、ベース部材20の開口部21aから上下方向Zについてリアパーセル4の収容空間4aに入り込んだ位置Bにある。この位置Bは、開口部21aから下方に離れた位置(ベース部材20の固定部21から外れた位置)であって、且つ前後方向Xについて開口部21aの前端と後端との間の概ね中間地点に相当する位置である。
【0035】
アンカーカバー装置10を側方から見たとき、カバー部材30は、全閉位置P1から全開位置P2まで後方に回動し、全開位置P2から全閉位置P1まで前方に回動する。このような回動構造を採用すれば、カバー部材30に相当する部材を前後方向Xに直線的にスライドさせて開閉する構造に比べて、前後方向Xの動作に必要なスペースが少なくてすむ。
【0036】
カバー部材30は、ベース部材20の開口部21aと同様の平面形状を有する天板部31と、いずれも天板部31の裏面から下方へ延出した第1壁部としての2つの対向壁部32と、を備えている。これにより、カバー部材30を前後方向Xから見たとき、カバー部材30は、一方の対向壁部32から天板部31を経て他方の対向壁部32に至るまでアンカーAを跨ぐように構成されている。本構成によれば、カバー部材30は、天板部31が2つの対向壁部32によって左右方向Yの両側から支持される両持ち支持構造をなしている。
【0037】
天板部31の上面のうち前方寄りの位置には凸状の摘み部31aが設けられている。このため、ユーザは天板部31の摘み部31aを指で摘んでカバー部材30を操作することができる。
【0038】
2つの対向壁部32は、左右方向Yを板厚方向として左右方向Yに離間して設けられている。これら2つの対向壁部32の間隔は、ベース部材20の2つの支持壁部22の間隔を若干下回るように設定されており、2つの対向壁部32が2つの支持壁部22の間に挿入される。これにより、一方の対向壁部32が一方の支持壁部22に対向し、他方の対向壁部32が他方の支持壁部22に対向する。
【0039】
図4に示されるように、ベース部材20は、ガイド溝24を挟んで開口部21aと反対側に回動支持穴23が位置するように構成されている。このため、カバー部材30のための回動軸線L1は、開口部21aからガイド溝24よりも低所まで収容空間4aに入り込んだ位置に設定されている。
【0040】
図4に示されるように、カバー部材30において、各対向壁部32の外表面には、回動軸部33と、係合部34と、回動軸部33と係合部34との間に位置する摺接突起35と、が設けられている。
【0041】
回動軸部33は、ベース部材20のうち対応する支持壁部22に設けられている回動支持穴23に回動可能に挿入され、回動軸線L1上に位置するように構成されている。
【0042】
係合部34は、ベース部材20のうち対応する支持壁部22に設けられているガイド溝24にスライド可能に係合してカバー部材30が全閉位置P1に配置される第1位置Q1からカバー部材30が全開位置P2に配置される第2位置Q2までの間でガイドされる。このとき、係合部34は、ガイド溝24を第1方向D1及び第2方向D2にスライドすることができる。
【0043】
ここで、係合部34がスライドする第1方向D1は、カバー部材30が全閉位置P1に向けて回動する閉方向でもあり、係合部34がスライドする第2方向D2は、カバー部材30が全開位置P2に向けて回動する開方向でもある。
【0044】
摺接突起35は、カバー部材30の回動時にベース部材20のうち対応する支持壁部22に摺接するとともに、この支持壁部22に設けられている2つの逃がし穴25のそれぞれに係合可能に構成されている。
【0045】
カバー部材30における回動軸部33から天板部31までの距離は、ベース部材20における回動支持穴23から開口部21aまでの距離と概ね位置している。このため、天板部31は、カバー部材30が全閉位置P1にあるときにベース部材20の開口部21aの開口面に沿って配置されて開口部21aを閉鎖するように構成されている。一方で、天板部31は、カバー部材30が全開位置P2にあるときにその一部が開口部21aを通じてベース部材20に格納されるように起立して開口部21aを開放するように構成されている。
【0046】
次に、
図4~
図13を参照しながら、上記のアンカーカバー装置10の全閉状態、全開状態、半開状態について説明する。
【0047】
(アンカーカバー装置10の全閉状態)
図4及び
図5に示されるように、カバー部材30が全閉位置P1に設定され、その天板部31がベース部材20の開口部21aを塞ぐことによって、アンカーカバー装置10が全閉状態となる。典型的には、アンカーAの不使用時にカバー部材30が全閉位置P1に設定される。アンカーカバー装置10の全閉状態では、外部からベース部材20の開口部21aを通じてアンカーAにアクセスすることが、カバー部材30の天板部31によって阻止される。
【0048】
図6に示されるように、ガイド溝24の一端部24a及び他端部24bのそれぞれにはロック部としての2つのロック片26が設けられている。ロック片26は、カバー部材30が全閉位置P1或いは全開位置P2にあるときに、ガイド溝24における係合部34のスライド動作をロックする機能を有する。
【0049】
この機能を達成するために、2つのロック片26は、ガイド溝24の上縁及び下縁から互いに近づくように突出した凸部として構成されており、ガイド溝24の上下方向Zの溝幅が他の部位よりも絞られている。また、ガイド溝24の他端部24bの開口端には、凸状のストッパ27が設けられている。
【0050】
ベース部材20の各支持壁部22において、ガイド溝24の一端部24aと回動支持穴23と一方の逃がし穴25が同一の仮想直線L4上に配置され、ガイド溝24の他端部24bと回動支持穴23と他方の逃がし穴25が同一の仮想直線L5上に配置されている。カバー部材30が全閉位置P1にあるとき、各対向壁部32において、回動軸部33と係合部34と摺接突起35は同一の仮想直線L4上に配置される。
【0051】
カバー部材30が全閉位置P1に設定されると、係合部34がガイド溝24の一端部24aに配置される第1位置Q1に設定される。このとき、カバー部材30の係合部34は、第1方向D1の動きがガイド溝24の一端部24aの開口端によって阻止され、且つ第2方向D2の動きが2つのロック片26によって規制される。このため、カバー部材30は、全閉位置P1でロックされる。
【0052】
また、カバー部材30の摺接突起35は、第1位置R1において一方の逃がし穴25に係合する。このとき、摺接突起35は、カバー部材30の支持壁部22に対する摺接が解除されて、逃がし穴25によって保持される。
【0053】
図7に示されるように、係合部34は傾斜面34aを有し、先端に向かうにつれて外径が漸減するテーパー形状をなしている。そして、この係合部34は、その傾斜面34aにおいてガイド溝24の上下の開口縁に接触するように構成されている。このため、係合部34が円柱形状をなす場合に比べてガイド溝24に沿ってスライドするときに受ける抵抗を小さく抑えることができる。
【0054】
(アンカーカバー装置10の全開状態)
図8及び
図9に示されるように、カバー部材30が全開位置P2に設定され、その天板部31がベース部材20の開口部21aを開放することによって、アンカーカバー装置10が全開状態となる。この全開状態は、カバー部材30をそれ以上開放できない状態である。典型的には、アンカーAの使用時にカバー部材30が全開位置P2に設定される。アンカーカバー装置10の全開状態では、外部からベース部材20の開口部21aを通じてアンカーAにアクセスすることが可能になる。
【0055】
図8に示されるように、カバー部材30の回動軸線L1が開口部21aよりも低所に設定される、その一部が全開位置P2でベース部材20の内部に格納されるように構成されている。このため、ベース部材20よりも上方におけるカバー部材30の可動領域Sの上下方向Zの高さ小さく抑えることができる。
【0056】
また、アンカーカバー装置10は、ベース部材20の開口部21aから回動軸線L1までの上下方向Zの距離H1が、カバー部材30が全閉位置P1から全開位置P2まで回動するときに上下方向Zについて開口部21aから突出する突出高さH2を上回るように構成されている。突出高さH2は、開口部21aからカバー部材30の上下方向Zの上端までの距離として定義される。特に、本実施形態では、回動軸線L1の上下方向Zの真上(垂直線上)にカバー部材30の前端が位置するときに突出高さH2が最大となり、全開位置P2ではカバー部材30の前端が若干下がった位置に設定されるように構成されている。これにより、カバー部材30が回動時にベース部材20から外部空間に突出する突出量を小さく抑えることができ、カバー部材30を省スペースで開閉できるようになっている。
【0057】
図10に示されるように、カバー部材30が全開位置P2に設定されると、係合部34がガイド溝24の他端部24bに配置される第2位置Q2に設定される。このとき、カバー部材30の各対向壁部32において、回動軸部33と係合部34と摺接突起35は同一の仮想直線L5上に配置される。
【0058】
カバー部材30の係合部34は、第2方向D2の動きがガイド溝24の他端部24bのストッパ27によって阻止され、且つ第1方向D1の動きが2つのロック片26によって規制される。係合部34は、2つのロック片26と1つのストッパ27とによる3点で係止される。このため、カバー部材30は、全開位置P2でロックされる。ストッパ27を設けることによって、係合部34の第2位置Q2におけるガタツキを抑える効果が得られる。なお、このストッパ27を、ガイド溝24の一端部24aの開口端に設けることによって、係合部34の第1位置Q1におけるガタツキを抑えるようにしてもよい。
【0059】
また、カバー部材30の摺接突起35は、第2位置R2において他方の逃がし穴25に係合する。このとき、摺接突起35は、カバー部材30の支持壁部22に対する摺接が解除されて、逃がし穴25によって保持される。
【0060】
(アンカーカバー装置10の半開状態)
図11及び
図12に示されるように、カバー部材30が中間位置P3にあるときにアンカーカバー装置10が半開状態となる。中間位置P3は、カバー部材30を全閉位置P1と全開位置P2との間の任意の位置である。この中間位置P3において、係合部34が第3位置Q3に配置され、且つ摺接突起35が第3位置R3に配置される。
【0061】
図13に示されるように、第1位置Q1にある係合部34(二点鎖線を参照)は、第2方向D2の荷重によってガイド溝24の一端部24a側の2つのロック片26を乗り越えると、第3位置Q3に向けて第2方向D2にスライド可能になる。或いは、第2位置Q2にある係合部34(二点鎖線を参照)は、第1方向D1の荷重によってガイド溝24の他端部24b側の2つのロック片26を乗り越えると、第3位置Q3に向けて第1方向D1にスライド可能になる。
【0062】
また、第1位置R1にある摺接突起35(二点鎖線を参照)は、第2方向D2の荷重によって逃がし穴25から抜け出して係合が解除されると、ベース部材20の支持壁部22に摺接した状態で第3位置R3に向けて第2方向D2に摺動可能になる。或いは、第2位置R2にある摺接突起35(二点鎖線を参照)は、第1方向D1の荷重によって逃がし穴25から抜け出して係合が解除されると、ベース部材20の支持壁部22に摺接した状態で第3位置R3に向けて第1方向D1に摺動可能になる。
【0063】
摺接突起35が第3位置R3にあるとき、カバー部材30の対向壁部32は、摺接突起35が設けられている箇所が対向する支持壁部22によって押圧されて左右方向Yに弾性変形する。このとき、2つの対向壁部32は、
図12中の白抜き矢印で示されるように左右方向Yについて互いに近づくように撓む。
【0064】
対向壁部32が弾性変形すると、この対向壁部32が原形に復帰しようとする荷重が支持壁部22との間に常時に生じる。このため、摺接突起35が支持壁部22に摺接した状態では、対向壁部32は支持壁部22との間で摺動抵抗を受ける。従って、ユーザが中間位置P3にあるカバー部材30から手を離しても、カバー部材30をその位置で保持することができる。これに対して、摺接突起35が逃がし穴25に係合すると、対向壁部32が支持壁部22から受ける荷重は弱まる。
【0065】
以下に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0066】
上記のアンカーカバー装置10によれば、ベース部材20の開口部21aが開放状態にあるとき、ユーザは、リアパーセル4の収容空間4aに収容されたチャイルドシート2用のアンカーAにベース部材20の開口部21aを通じてアクセスできる。
【0067】
ベース部材20の開口部21aを開閉するカバー部材30は、回動軸線L1を中心に全閉位置P1から全開位置P2までの間で回動可能である。そして、カバー部材30の全閉位置P1及び全開位置P2は、ベース部材20に回動軸線l1を中心とした円弧線L2に沿って延びるように設けられたガイド溝24と、カバー部材30にガイド溝24にスライド可能に係合するように設けられた係合部34と、によって定まる。即ち、係合部34が第1位置Q1にあるときにカバー部材30が全閉位置P1に配置され、係合部34が第2位置Q2にあるときにカバー部材30が全開位置P2に配置されるようになっている。これにより、カバー部材30は、全閉位置P1から全開位置P2までの間で円滑にガイドされる。
【0068】
ここで、カバー部材30のための回動軸線L1は、ベース部材20の開口部21aから収容空間4aに入り込んだ位置にある。即ち、この回動軸線L1は、開口部21aの開口面よりも収容空間4a側に外れた位置に設定されている。このため、回動軸線L1が開口部21aの開口面付近に設定される場合に比べると、カバー部材30がベース部材20から外部空間に突出して回動する可動領域Sを小さく抑えることができ、カバー部材30を省スペースで開閉できる。その結果、アンカーカバー装置10の設置の自由度を高めることができる。
【0069】
以上のごとく、上述の実施形態1によれば、チャイルドシート2用のアンカーAを覆うカバー部材30を省スペースで開閉することができるアンカーカバー装置10を提供できる。
【0070】
上記のアンカーカバー装置10によれば、カバー部材30が全閉位置P1或いは全開位置P2にあるときに、ベース部材20のガイド溝24に設けられたロック片26を利用して係合部34のスライド動作をロックして、このカバー部材30の動きを規制することができる。このため、カバー部材30の天板部31にベース部材20に対するロック機構を設ける必要がない。
【0071】
上記のアンカーカバー装置10によれば、カバー部材30の回動時に摺接突起35に作用する摺動抵抗を利用して、カバー部材30をユーザが手を放した位置に維持できる。これにより、カバー部材30が自重で動くのを防ぐことができる。
【0072】
上記のアンカーカバー装置10によれば、カバー部材30が全閉位置P1或いは全開位置P2にあるときに、対向壁部32の摺接突起35が支持壁部22の逃がし穴25に係合することによって、このカバー部材30を全閉位置P1或いは全開位置P2で確実に保持できる。また、カバー部材30が全閉位置P1或いは全開位置P2に達したときに、ユーザは、摺接突起35が逃がし穴25に係合して支持壁部22との摺接が解除されることでクリック感を得ることができる。このため、ユーザは、カバー部材30を全閉位置P1或いは全開位置P2に設定できたことを自らの手の感触で容易に判断できる。
【0073】
上述の実施形態1に特に関連する変更例では、ベース部材20の2つの支持壁部22のうちの一方に設けられているガイド溝24が省略され、且つカバー部材30の2つの対向壁部32のいずれ一方に設けられている係合部34が省略された構造を採用することもできる。
【0074】
また、上述の実施形態1に特に関連する変更例では、カバー部材30において天板部31が1つ対向壁部32のみによって支持される片持ち支持構造を採用することもできる。
【0075】
また、上述の実施形態1に特に関連する変更例では、カバー部材30の全体が全開位置Q2でベース部材20の内部に格納される構造を採用することもできる。
【0076】
また、上述の実施形態1に特に関連する変更例では、カバー部材30が全閉位置P1から全開位置P2まで前方に回動し、全開位置P2から全閉位置P1まで後方に回動する構造を採用することもできる。
【0077】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0078】
(実施形態2)
図14に示されるように、実施形態2のアンカーカバー装置110は、ベース部材20の支持壁部22に逃がし穴25が設けられておらず、且つカバー部材30の対向壁部32に摺接突起35が設けられていない点で、実施形態1のアンカーカバー装置10と相違している。
【0079】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0080】
実施形態2のアンカーカバー装置110によれば、実施形態1のアンカーカバー装置10に比べて、ベース部材20及びカバー部材30の構造を簡素化することができる。
【0081】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0082】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0083】
上述の実施形態では、ガイド溝24がベース部材20の支持壁部22を貫通する長穴である場合について例示したが、ガイド溝24に代わるガイド溝として、支持壁部22を貫通する長穴の一部が切り欠かれたような形状の溝や、支持壁部22を貫通することなく厚み方向に凹んでなる溝などを採用することもできる。
【0084】
上述の実施形態では、ベース部材20の支持壁部22にガイド溝24及び逃がし穴25を設け、且つカバー部材30の対向壁部32に係合部34及び摺接突起35を設ける場合について例示したが、これに代えて、支持壁部22に係合部34及び摺接突起35に相当する要素を設け、且つ対向壁部32にガイド溝24及び逃がし穴25に相当する要素を設けることもできる。
【0085】
上述の実施形態では、ベース部材20のガイド溝24の一端部24a及び他端部24bのそれぞれのロック片26を設ける場合について例示したが、これに代えて、ガイド溝24の一端部24a及び他端部24bの少なくとも一方に設けられているロック片26が省略された構造を採用することもできる。
【0086】
上述の実施形態では、ベース部材20の支持壁部22に逃がし穴25を設ける場合について例示したが、これに代えて、支持壁部22の逃がし穴25が省略されたベース部材20を採用することもできる。
【0087】
上述の実施形態では、カバー部材30が前後に回動するようにアンカーカバー装置10,110が車両内装材に取付けられる場合について例示したが、これに代えて、例えば、カバー部材30が左右に回動する構造や上下に回動する構造を採用することもできる。
【0088】
上述の実施形態では、アンカーカバー装置10,110がリアパーセル4に取付けられる場合について例示したが、これに代えて、リアパーセル4以外の車両内装材にアンカーカバー装置10,110が取付けられる構造を採用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
2 チャイルドシート
4 リアパーセル(車両内装材)
4a 収容空間
10,110 チャイルドシートアンカーカバー装置(アンカーカバー装置)
20 ベース部材
21a 開口部
22 支持壁部(第2壁部)
24 ガイド溝
24a 一端部
24b 他端部
25 逃がし穴
26 ロック片(ロック部)
30 カバー部材
31 天板部
32 対向壁部(第1壁部)
34 係合部
35 摺接突起
A アンカー
B 位置
H1 距離
H2 突出高さ
L1 回動軸線
L2 円弧線
P1 全閉位置
P2 全開位置
Q1 第1位置
Q2 第2位置