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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】プリフォーム
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20230904BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020029790
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133550
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】田端 真一
(72)【発明者】
【氏名】塩川 満
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119476(JP,A)
【文献】実開昭58-036121(JP,U)
【文献】特開2018-016052(JP,A)
【文献】特開2005-047593(JP,A)
【文献】特開2019-081604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形用のプリフォームであって、
外口部と、前記外口部に連なる有底筒状の外側延伸部と、を備えた外プリフォームと、
前記外口部の内側に配置される内口部と、前記内口部に連なる有底筒状の内側延伸部と、を備えた内プリフォームと、
前記外口部と前記内口部とで構成される口部に設けられ、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に連通する外気導入口と、
前記外側延伸部上端部の外側面に、周方向に延びて設けられた環状凹部と、を有し、
前記外口部の外側面にネックリングが一体に設けられ、
前記外プリフォームの前記ネックリングと前記環状凹部との間に、外径一定の円筒状の部分が設けられていることを特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
前記内プリフォームの外側面に、前記内口部と前記内側延伸部とに跨って延びる複数の縦リブが一体に設けられ、
前記縦リブの下端が、前記環状凹部の径方向内側に配置されている、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記環状凹部が、下向きテーパー状の上側段差面と、前記上側段差面の下端に連なる円筒状の底面と、前記底面の下端に連なる上向きテーパー状の下側段差面と、を有する、請求項1又は2に記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記内プリフォームの外側面に、前記内口部と前記内側延伸部とに跨って延びる複数の縦リブが一体に設けられ、
前記縦リブが、前記内プリフォームの外側面からの突出高さが下端に向けて徐々に減少する傾斜部を備え、
前記傾斜部が、前記上側段差面の径方向内側に配置されている、請求項3に記載のプリフォーム。
【請求項5】
前記外気導入口が、前記外口部を径方向に貫通する貫通孔である、請求項1~の何れか1項に記載のプリフォーム。
【請求項6】
前記外プリフォーム及び前記内プリフォームが、それぞれポリエチレンテレフタレート製である、請求項1~の何れか1項に記載のプリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層体と内層体とを有する合成樹脂製の積層剥離容器を製造する際に用いられる、ブロー成形用のプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
醤油等の食品調味料、飲料、化粧水などの化粧料、シャンプーやリンス、液体石鹸等のトイレタリーなどを内容液として収納する容器として、外層体と、外層体の内側面に剥離可能に積層された減容変形自在の内層体と、外層体と内層体との間に連通する外気導入口とを有する、合成樹脂製の積層剥離容器が知られている。
【0003】
積層剥離容器では、内容液を外部に注出した後に、外気導入口から内層体と外層体との間に外気が導入されることで、内層体を減容変形させたまま外層体を元の形状に維持ないし復元させることができる。したがって、積層剥離容器によれば、内層体に収納されている内容液を外気と置換することなく外部に注出することができるようにして、内層体に収納されている内容液の外気との接触を減らし、当該内容液の劣化や変質等を抑制することができる。
【0004】
上記構成を有する積層剥離容器をブロー成形により製造する際に用いられるプリフォームとして、従来、外口部と外口部に連なる有底筒状の外側延伸部とを備えた外プリフォームと、外口部の内側に配置される内口部と内口部に連なる有底筒状の内側延伸部とを備えた内プリフォームと、外口部と内口部とで構成される口部に設けられて外プリフォームと内プリフォームとの間に連通する外気導入口と、内プリフォームの外側面に一体に設けられて内口部と内側延伸部とに跨って延びる縦リブと、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような組立て式のプリフォームによれば、外プリフォームの外側延伸部と内プリフォームの内側延伸部とからなる延伸部がブロー成形により延伸されることで、所定形状の積層剥離容器を成形することができるとともに、成形後の積層剥離容器の外層体と内層体との間に、縦リブによって、外気導入口から胴部に向けて延びる外気の通気路を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-81604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のプリフォームでは、ブロー成形の際に、内口部と内側延伸部とに跨って延びて設けられた縦リブの下端側の部分が、外プリフォームの外側延伸部の内面に強く押し付けられながら変形することになるので、ブロー成形後の積層剥離容器において、延伸開始部分の近傍(例えば、縦リブの下端部分)が外層体の内面に張り付いた状態となり、当該部分において内層体の外層体からの剥離の進行が阻害されてしまう、という問題が生じる虞があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外層体からの内層体の剥離性を高めた積層剥離容器を製造可能なプリフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプリフォームは、ブロー成形用のプリフォームであって、外口部と、前記外口部に連なる有底筒状の外側延伸部と、を備えた外プリフォームと、前記外口部の内側に配置される内口部と、前記内口部に連なる有底筒状の内側延伸部と、を備えた内プリフォームと、前記外口部と前記内口部とで構成される口部に設けられ、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に連通する外気導入口と、前記外側延伸部の上端部の外側面に、周方向に延びて設けられた環状凹部と、を有し、前記外口部の外側面にネックリングが一体に設けられ、前記外プリフォームの前記ネックリングと前記環状凹部との間に、外径一定の円筒状の部分が設けられているすることを特徴とする。
【0010】
本発明のプリフォームは、上記構成において、前記内プリフォームの外側面に、前記内口部と前記内側延伸部とに跨って延びる複数の縦リブが一体に設けられ、前記縦リブの下端が、前記環状凹部の径方向内側に配置されているのが好ましい。
【0011】
本発明のプリフォームは、上記構成において、前記環状凹部が、下向きテーパー状の上側段差面と、前記上側段差面の下端に連なる円筒状の底面と、前記底面の下端に連なる上向きテーパー状の下側段差面と、を有するのが好ましい。
【0012】
本発明のプリフォームは、上記構成において、前記内プリフォームの外側面に、前記内口部と前記内側延伸部とに跨って延びる複数の縦リブが一体に設けられ、前記縦リブが、前記内プリフォームの外側面からの突出高さが下端に向けて徐々に減少する傾斜部を備え、前記傾斜部が、前記上側段差面の径方向内側に配置されているのが好ましい。
【0014】
本発明のプリフォームは、上記構成において、前記外気導入口が、前記外口部を径方向に貫通する貫通孔であるのが好ましい。
【0015】
本発明のプリフォームは、上記構成において、前記外プリフォーム及び前記内プリフォームが、それぞれポリエチレンテレフタレート製であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外層体からの内層体の剥離性を高めた積層剥離容器を製造可能なプリフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態であるプリフォームの半断面図である。
図2図1におけるA-A線に沿う断面図である。
図3図1に示すプリフォームの外口部及び内口部を拡大して示す拡大断面図である。
図4図1に示すプリフォームをブロー成形用の金型に配置した状態の断面図である。
図5図4に示すプリフォームをブロー成形により積層剥離容器に成形した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0019】
図1図3に示す本発明の一実施の形態であるブロー成形用のプリフォーム1は、ブロー成形により、外層体と、外層体の内側面に剥離可能に積層された減容変形自在の内層体と、外層体と内層体との間に連通する外気導入口とを有する、合成樹脂製の積層剥離容器に成形されるものである。
【0020】
本明細書、特許請求の範囲においては、上下方向は、プリフォーム1を図1に示す正立姿勢とした状態における上下方向を意味するものとし、径方向は、プリフォーム1の軸心Oを通り、軸心Oに垂直な直線に沿う方向を意味するものとする。
【0021】
プリフォーム1は、外プリフォーム10と、外プリフォーム10の内側に組み込まれた内プリフォーム20とを有する二重構造となっている。
【0022】
外プリフォーム10は合成樹脂製となっており、図1に示すように、外口部11と外側延伸部12とを備えている。
【0023】
外口部11は、ブロー成形によっては延伸されない部分であり、ブロー成形後に積層剥離容器の外口部を構成する。図2に示すように、外口部11は軸心Oを中心とした円筒状となっている。図1図3に示すように、外口部11の外側面には雄ねじ11aが一体に設けられている。雄ねじ11aは、ブロー成形後の積層剥離容器の外口部に、注出口を備えた注出キャップ(不図示)をねじ結合により装着するためのものである。
【0024】
なお、外口部11は、雄ねじ11aに替えて、注出キャップを打栓によって装着するための円環状の突起を備えた構成とすることもできる。
【0025】
外口部11の雄ねじ11aよりも下方側における外側面には、ネックリング11bが一体に設けられている。ネックリング11bは、外口部11の全周に亘って延びるフランジ状となっており、外口部11の外周面から径方向外側に向けて突出している。
【0026】
外側延伸部12は、ブロー成形によって延伸される部分であり、図1に示すように、外口部11の下端に一体に連なる円筒状の外側本体部12aと、外側本体部12aの下端に一体に連なる半球状の外側底部12bとを備えた有底筒状となっている。
【0027】
外プリフォーム10は、例えば、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された射出成型品として構成することができる。本実施の形態では、外プリフォーム10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を射出成形することにより形成されたポリエチレンテレフタレート製の射出成型品である。
【0028】
なお、外プリフォーム10は、ポリエチレンテレフタレート製に限らず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC樹脂)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)などの、他の合成樹脂材料製とすることもできる。
【0029】
内プリフォーム20は合成樹脂製となっており、内口部21と内側延伸部22とを備えている。
【0030】
図2に示すように、内口部21は、外口部11よりも小径の円筒状となっており、外口部11の内側に外口部11と同軸に配置されている。内口部21は外口部11とともに、プリフォーム1の口部2を構成している。内口部21は、ブロー成形によっては延伸されない部分であり、ブロー成形後に積層剥離容器の内口部を構成する。
【0031】
外口部11と内口部21との間には隙間30が設けられている。図3に示すように、内口部21の上端には拡径部21aが一体に連ねて設けられており、拡径部21aの外側面が外口部11の内側面に全周に亘って当接することで外口部11と内口部21との間の隙間30の上端部分が外部に対して閉塞されている。また、拡径部21aの上端には径方向外側に向けて延びるフランジ部21bが一体に設けられており、フランジ部21bが外口部11の上端に当接することで、内口部21は外口部11に対して軸方向に位置決めされている。
【0032】
内側延伸部22は、ブロー成形によって延伸される部分であり、図1に示すように、内口部21の下端に一体に連なる円筒状の内側本体部22aと、内側本体部22aの下端に一体に連なる半球状の内側底部22bとを備えた有底筒状となっている。外側延伸部12の内側面と内側延伸部22の外側面との間には僅かに隙間が設けられており、内プリフォーム20を外プリフォーム10の内部に組み込む際に、外側延伸部12の内側面と内側延伸部22の外側面とに傷が付かないようになっている。内側延伸部22は外側延伸部12とともに、プリフォーム1の延伸部3を構成している。
【0033】
内プリフォーム20は、例えば、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された射出成型品として構成することができる。本実施の形態では、内プリフォーム20は、外プリフォーム10と同様に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を射出成形することにより形成されたポリエチレンテレフタレート製の射出成型品である。
【0034】
なお、内プリフォーム20は、ポリエチレンテレフタレート製に限らず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC樹脂)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH樹脂)などの、他の合成樹脂材料製としてもよい。内プリフォーム20をエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂製とする場合には、バリア性及び柔軟性を考慮して、適切なエチレン含有率のものを採用することができる。また、内プリフォーム20は、バリア性を確保するために、例えば、一対のポリエチレンテレフタレート層の間にMXナイロン樹脂層などのバリア層を設けた多層構造とすることもできる。
【0035】
外口部11と内口部21とで構成されるプリフォーム1の口部2には、外気導入口40が設けられている。外気導入口40は、外プリフォーム10と内プリフォーム20との間、すなわち隙間30に連通しており、外気導入口40を通して外プリフォーム10と内プリフォーム20との間に外気を導入することができる。
【0036】
本実施の形態では、外口部11に、一対の外気導入口40が設けられている。一対の外気導入口40は、それぞれ外口部11を径方向に貫通する貫通孔となっており、外口部11の軸心Oを挟んだ両側に互いに対称に配置されている。また、一対の外気導入口40は、それぞれ周方向に延びる長孔形状となっている。
【0037】
内プリフォーム20の外側面には、縦リブ23が一体に設けられている。図3に示すように、縦リブ23は、内プリフォーム20の外側面から径方向外側に突出しており、内口部21と内側延伸部22とに跨って軸心Oに沿って上下方向に真っすぐに延びている。内プリフォーム20の外側面に縦リブ23が一体に設けられることにより、内プリフォーム20は、外プリフォーム10との間に隙間30が形成されるように位置決めされている。
【0038】
本実施の形態では、図2に示すように、内プリフォーム20の外側面に、複数の縦リブ23が周方向に間隔を空けて並べて設けられている。より具体的には、内プリフォーム20の外側面には、一方の外気導入口40を中心とした周方向の所定の範囲に、5本の縦リブ23が周方向に等しい間隔を空けて並べて設けられるとともに、他方の外気導入口40を中心とした周方向の所定の範囲に、5本の縦リブ23が周方向に等しい間隔を空けて並べて設けられている。また、一方の外気導入口40を中心とした5本の縦リブ23からなる縦リブ群と、他方の外気導入口40を中心とした5本の縦リブ23からなる縦リブ群との間隔は、それぞれの縦リブ群における隣接する縦リブ23の間隔よりも大きくなっている。一方の外気導入口40を中心とした周方向の所定の範囲に設けられた5本の縦リブ23のうち、両端の2本を除いた3本の縦リブ23はそれぞれ一方の外気導入口40に対向しており、他方の外気導入口40を中心とした周方向の所定の範囲に設けられた5本の縦リブ23のうち、両端の2本を除いた3本の縦リブ23はそれぞれ他方の外気導入口40に対向している。なお、5本の縦リブ23のうち周方向の真ん中の縦リブ23は、それぞれ対応する外気導入口40の周方向中心位置において外気導入口40を上下に跨ぐように配置されている。
【0039】
図3に示すように、それぞれの縦リブ23は、径方向外側の端部において外プリフォーム10の内面に当接するリブ本体部23aと、リブ本体部23aの下側に一体に連なるとともに内プリフォーム20の外側面からの突出高さが下端に向けて徐々に減少する傾斜部23bとを備えている。それぞれの縦リブ23の傾斜部23bの下端は、外プリフォーム10の外側延伸部12の外側本体部12aに対向している。一方、それぞれの縦リブ23のリブ本体部23aの上端は、拡径部21aにまで達して拡径部21aに一体に連なっている。
【0040】
外プリフォーム10の外側延伸部12の上端部の外側面には、周方向に延びる環状凹部13が設けられている。
【0041】
図3に示すように、環状凹部13は、下方に向かうに連れて縮径する下向きテーパー状の上側段差面13aと、上側段差面13aの下端に連なる円筒状の底面13bと、底面13bの下端に連なるとともに下方に向かうに連れて拡径する上向きテーパー状の下側段差面13cとを有する溝状となっている。環状凹部13が設けられた部分において、外プリフォーム10の外側本体部12aの厚みは、他の部分よりも薄くなっている。
【0042】
外プリフォーム10の、ネックリング11bと環状凹部13との間の部分14は、外径が一定の円筒状となっている。当該部分14は、プリフォーム1がブロー成形される際に、実質的に延伸されない部分であるが、該部分14の下端側部分は若干延伸されてもよい。
【0043】
本実施の形態では、縦リブ23は、その下端が、環状凹部13の径方向内側に配置されている。すなわち、縦リブ23の下端の上下方向位置は、環状凹部13の上側段差面13aと下側段差面13cとの間に位置している。
【0044】
また、本実施の形態では、縦リブ23は、その傾斜部23bが、環状凹部13の上側段差面13aの径方向内側に配置されている。すなわち、縦リブ23の傾斜部23bと環状凹部13の上側段差面13aは、上下方向の位置が互いに重複するように径方向に対向して配置されている。
【0045】
上記構成を有する本実施の形態のプリフォーム1は、例えば、図4に示すようなブロー成形用の金型50を用いたブロー成形により、図5に示すような所定形状の積層剥離容器60に成形される。
【0046】
より具体的には、ブロー成形の際には、図4に示すように、プリフォーム1は、金型50に、口部2(外口部11及び内口部21)が金型50のキャビティ50aから上方に突出するとともに、ネックリング11bが金型50の上面に支持され、延伸部3(外側延伸部12及び内側延伸部22)がキャビティ50aの内部に位置するように配置される。このとき、外プリフォーム10のネックリング11bと環状凹部13との間の円筒状の部分14は、金型50の開口孔50bの内周面に支持され、環状凹部13はキャビティ50aの内部に位置するようになっている。
【0047】
図4に示すように、プリフォーム1が金型50に配置された状態で、図示しない加圧媒体供給装置から、プリフォーム1の内部に口部2を通して加圧空気や加圧液体等の加圧媒体が供給されることで、プリフォーム1の延伸部3がキャビティ50aの内面に沿った形状に延伸されて、図5に示すように、口部2と同様の形状の口部61と、口部61の下端に連なる拡径形状の肩部62と、肩部62の径方向外側端に連なる有底筒状の胴部63とを備えたボトル形状であるとともに、外プリフォーム10に対応する外層体64と内プリフォーム20に対応する内層体65とを有する二重構造の積層剥離容器60が成形される。このとき、図4に示すように、外プリフォーム10のネックリング11bと環状凹部13との間の円筒状の部分14が金型50の開口孔50bの内周面に支持され、環状凹部13がキャビティ50aの内部に位置するよう配置されているので、ブロー成形後の積層剥離容器60において、肩部62の口部61に連接する部分から胴部63の側に向けた所定範囲の部分は、外側延伸部12の環状凹部13が設けられた部分が延伸されることにより形成されることになる。
【0048】
ここで、本実施の形態のプリフォーム1では、図3に示すように、外プリフォーム10の外側延伸部12の上端部の外側面に周方向に延びる環状凹部13を設け、外側延伸部12の環状凹部13が設けられた部分の厚みを他の部分の厚みよりも薄くしているので、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、環状凹部13が設けられた部分が延伸されることにより形成された肩部62の所定範囲の部分又は肩部62から胴部63に跨る所定範囲の部分において、外層体64は肩部62の他の部分よりも薄く形成されることになる。これにより、肩部62の上記所定範囲の部分において、外層体64がより柔軟に変形することができるようにして、内層体65を外層体64から剥離し易くすることができる。
【0049】
したがって、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、内容液の注出の際、口部61に設けられた外気導入口40から、縦リブ23によって形成された外層体64と内層体65との間の隙間30に導入された外気を、胴部63の側に向けて流すための通気路が、肩部62の口部61に連接する部分から胴部63の側に向けた所定範囲の部分において確保され易くすることができる。このように、本実施の形態のプリフォーム1によれば、内層体65の外層体64に対する剥離性が高められた積層剥離容器60をブロー成形により成形することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、上記の通り、プリフォーム1を、縦リブ23の下端が環状凹部13の径方向内側に配置された構成としている。これにより、ブロー成形後の積層剥離容器60において、口部61と肩部62との湾曲した連接部分に跨って縦リブ23が配置されるようにして、口部61と肩部62との間の湾曲した連接部分に、縦リブ23によって、外気導入口40から隙間30に導入された外気を、胴部63の側に向けて流すための通気路が確保され易くすることができる。したがって、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、内容液の注出の際、口部61に設けられた外気導入口40から隙間30に導入された外気を、胴部63の側に流すための通気路がより確実に確保されるようにすることができる。
【0051】
上記のように、プリフォーム1を、縦リブ23の下端が環状凹部13の径方向内側に配置された構成とした場合においては、ブロー成形の際に、縦リブ23の下端側部分は外側延伸部12の環状凹部13が設けられることで厚みが薄くされた部分とともに延伸されるので、ブロー成形後の積層剥離容器60において、縦リブ23の下端側部分は外層体64の肩部62の、他の部分よりも薄く形成された所定範囲の部分に位置することになる。これにより、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、縦リブ23の下端側部分が外層体64の肩部62の内側面に張り付くことを抑制して、内層体65の外層体64に対する剥離性をさらに高めることができる。
【0052】
特に、本実施の形態のプリフォーム1のように、縦リブ23の傾斜部23bを、環状凹部13の上側段差面13aの径方向内側に配置する構成とした場合には、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、縦リブ23の下端側部分が外層体64の肩部62の内側面に張り付くことをさらに効果的に抑制して、内層体65の外層体64に対する剥離性をさらに高めることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、環状凹部13を、下向きテーパー状の上側段差面13aと、上側段差面13aの下端に連なる円筒状の底面13bと、底面13bの下端に連なる上向きテーパー状の下側段差面13cと、を有する形状とした場合には、ブロー成形により、外側延伸部12の環状凹部13が設けられた部分が、環状凹部13が設けられない部分との段差が目立たない滑らかな形状に成形されるようにすることができる。これにより、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、肩部62を環状凹部13による段差が目立たない形状として、積層剥離容器60の美観を高めることができる。
【0054】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、外プリフォーム10のネックリング11bと環状凹部13との間の部分14を、外径一定の円筒状とした場合には、ブロー成形の際に、プリフォーム1が金型50により確実に支持されるようにしつつ、外側延伸部12の環状凹部13が設けられた部分の全体がブロー成形によって延伸されるようにすることができる。これにより、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、内層体65の外層体64に対する剥離性をより効果的に高めることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、外気導入口40を、外口部11を径方向に貫通する貫通孔とした場合には、プリフォーム1をより簡素な構成として、そのコストを低減することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、複数の縦リブ23を、内プリフォーム20の外側面に周方向に間隔を空けて並べて設けた構成とした場合には、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、隣り合う縦リブ23のそれぞれの間に通気路が形成されるようすることができる。これにより、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、外層体64と内層体65との間に、外気導入口40から隙間30に導入された外気を、胴部63の側に向けて流すための通気路をより確保され易くして、内層体65の外層体64に対する剥離性をより高めることができる。
【0057】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、少なくとも1本の縦リブ23を、外気導入口40に対向させるようにした場合には、外気導入口40が、縦リブ23により形成される隙間30を介して確実に通気路に連通されるようにして、内層体65の外層体64に対する剥離性をさらに高めることができる。
【0058】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、外口部11の軸心Oを挟んだ両側にそれぞれ外気導入口40を設けるとともに、それぞれの外気導入口40に対応して複数の縦リブ23を設けるようにした場合には、プリフォーム1をブロー成形して形成された積層剥離容器60において、内層体65の外層体64からの剥離が軸心Oを挟んだ両側から進行するようにして、内層体65の外層体64に対する剥離性をさらに高めることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態のプリフォーム1のように、外プリフォーム10及び内プリフォーム20を、それぞれポリエチレンテレフタレート(PET)製とした場合には、積層剥離容器60を、軽量で透明性の高い容器とすることができる。
【0060】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0061】
例えば、前記実施の形態では、内プリフォーム20に複数の縦リブ23を設けるようにしているが、これに限らず、内プリフォーム20に、少なくとも1本の縦リブ23を設ければよく、縦リブ23を設けない構成としてもよい。
【0062】
また、前記実施の形態では、環状凹部13は、下向きテーパー状の上側段差面13aと、上側段差面13aの下端に連なる円筒状の底面13bと、底面13bの下端に連なる上向きテーパー状の下側段差面13cと、を有する形状とされているが、これに限らず、外側延伸部12に設けられて当該部分の厚みを薄くするように環状に凹んだものであれば、その形状は種々変更可能である。
【0063】
さらに、前記実施の形態では、縦リブ23の下端を、環状凹部13の径方向内側に配置するようにしているが、これに限らず、縦リブ23の下端を、環状凹部13に対して上方または下方にずらして配置してもよい。
【0064】
さらに、前記実施の形態では、縦リブ23の傾斜部23bを、環状凹部13の上側段差面13aの径方向内側に配置するようにしているが、これに限らず、縦リブ23の傾斜部23bを、環状凹部13の上側段差面13aに対して上方または下方にずらして配置してもよい。
【0065】
さらに、前記実施の形態では、外プリフォーム10のネックリング11bと環状凹部13との間の部分14を、外径一定の円筒状としているが、これに限らず、当該部分14の形状は種々変更可能である。
【0066】
さらに、外口部11がネックリング11bを備えない構成としてもよい。
【0067】
さらに、前記実施の形態では、外気導入口40を、外口部11に設けられて外口部11を貫通する貫通孔としているが、これに限らず、例えば、外口部11の上端と内口部21の上端との間に設けられて隙間30を外部に開放する構成とするなど、その構成ないし形状は種々変更可能である。
【0068】
さらに、前記実施の形態では、外口部11に一対の外気導入口40を設けるようにしているが、外気導入口40は少なくとも1つ設けられていればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 プリフォーム
2 口部
3 延伸部
10 外プリフォーム
11 外口部
11a 雄ねじ
11b ネックリング
12 外側延伸部
12a 外側本体部
12b 外側底部
13 環状凹部
13a 上側段差面
13b 底面
13c 下側段差面
14 部分
20 内プリフォーム
21 内口部
21a 拡径部
21b フランジ部
22 内側延伸部
22a 内側本体部
22b 内側底部
23 縦リブ
23a リブ本体部
23b 傾斜部
30 隙間
40 外気導入口
50 金型
50a キャビティ
50b 開口孔
60 積層剥離容器
61 口部
62 肩部
63 胴部
64 外層体
65 内層体
66 外気導入口
67 隙間
O 軸心
図1
図2
図3
図4
図5