(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】果汁含有飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20230904BHJP
【FI】
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2017233489
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】藤村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 たまみ
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】三上 晶子
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-99354(JP,A)
【文献】特開2016-106555(JP,A)
【文献】特表2003-535207(JP,A)
【文献】特開2013-5787(JP,A)
【文献】Analysis of some Italian lemon liquors (limoncello),J Agric Food Chem,2003, vol.51,no.17,p.4978-4983
【文献】Cookpad,レモンチェッロで大人な蜂蜜レモン♪,[online],公開日:15/01/18,[検索日:2021.08.25],<URL: https://cookpad.com/recipe/2969954>
【文献】「サッポロ リモンチェッロ イタリアンレモンサワー」数量限定発売,[online],2016.07.06,[検索日:2021.08.25],<URL: https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000008615/>
【文献】~「メルシャン 本搾りチューハイ」がパッケージも中身も一新し、「糖類無添加。大人のための本格辛口チューハイ」として新登場!~「キリン 本搾りチューハイ」を新発売”,[online],2008,[検索日:2022年2月25日],<URL: https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2008/0110d_01.html>
【文献】ポッキーの酒的備忘録 タカラプレミアムチューハイダブルリッチレモン,[online],2017年8月17日,[検索日:2022年2月25日],<URL: http://mrpockylivedoor.blog/archives/19696553.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レモン果汁を含
み、レモン果汁の果汁含有率が10%以上25%以下であり、アルコールをさらに含有する飲料であって、
リモネンとノナナールを含有し、
リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足する飲料。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
【請求項2】
アルコールの含有量が1~10容積%である請求項1に記載
の飲料。
【請求項3】
炭酸ガスをさらに含有する請求項
1または2に記載
の飲料。
【請求項4】
レモン果汁を含
み、レモン果汁の果汁含有率が10%以上25%以下であり、アルコールをさらに含有する飲料において、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足するようにリモネンとノナナールを含有させることを含む、オフフレーバーのマスキング方法。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果汁を含有する飲料に関し、特にレモンの果汁を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
缶酎ハイやカクテル飲料等に代表される、開栓してそのまま直ぐに飲める容器入りアルコール飲料はRTD飲料とも呼ばれ、焼酎やスピリッツ、又はさとうきび等を原料とした醸造用アルコール等をベースに、必要により果汁やフレーバー、炭酸ガス、甘味料、酸味料等を添加したものである。なかでも果汁入りの容器入りアルコール飲料、特に果汁を高濃度に配合した容器入りアルコール飲料は、お酒のおいしさと、豊かで新鮮な果汁感を同時に楽しめるアルコール飲料として人気がある。
ところが果汁含有飲料は、特に果汁含量が多い場合には、加熱殺菌や長期保存することにより、果汁由来の成分が変化して加熱臭やイモ臭などと表現される異風味(オフフレーバー)が強く感じられ、従来果汁のもつ、果物を想起させる風味がマスキングされてしまう。また、該オフフレーバーは果汁の濃縮によっても生じるため、果汁含有飲料の製造において濃縮果汁を使用する場合には問題となる。特にレモン濃縮果汁は、濃縮時に他の果物の果汁よりも一般に高温で濃縮されるため、オフフレーバーが生じやすい。
【0003】
果汁由来のオフフレーバーが感じられるのを緩和する方法としては、果汁中の加熱臭原因物質(S-メチルメチオニン)をイオン交換樹脂により吸着除去する方法(特許文献1)や、一定量以上のリン酸を含有させる方法(特許文献2)、飲料中のエステル類物質とテルペン系炭化水素物質の比率が特定範囲となるように調整する方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-132163号公報
【文献】特開2011-167170号公報
【文献】特開2011-167171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法ではいまだ十分な効果が得られておらず、本課題を解決できる、新規で、より効果的な方法が求められていた。
本発明は、レモン果汁含有飲料において、飲んだ時にオフフレーバーが感じられるのを抑制できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段を模索する過程で、本発明者は、レモン果汁含有飲料においてリモネンまたはノナナールを添加することでオフフレーバーが感じられるのを抑制(以下、単に、オフフレーバー抑制、ともいう)できることを見出した。
また、本発明者は鋭意研究の結果、レモン果汁含有飲料中のリモネンとノナナールについて所定の関係を満足するように飲料を構成することで、オフフレーバーを抑制でき、且つ所定の果汁含有率としたときには飲みやすさも改善できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] レモン果汁を含む飲料であって、
リモネンとノナナールを含有し、
リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足する飲料。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
[2] レモン果汁の果汁含有率が10%以上である[1]に記載の飲料。
[3] レモン果汁の果汁含有率が25%以下である[1]または[2]に記載の飲料。
[4] アルコールをさらに含有する[1]から[3]のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
[5] アルコールの含有量が1~10容積%である[4]に記載の果汁含有飲料。
[6] 炭酸ガスをさらに含有する[1]から[5]のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
[7] レモン果汁を含む飲料において、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足するようにリモネンとノナナールを含有させることを含む、オフフレーバーのマスキング方法。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レモン果汁含有飲料において、飲んだ時にオフフレーバーが感じられるのを抑制できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態はレモン果汁飲料に関し、リモネンに加えてノナナールを含有する。また、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について、以下の関係を満足する。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
【0010】
これにより、本実施形態の果汁含有飲料においては、オフフレーバーがマスキングされ、飲んだときに該オフフレーバーが感じられるのが抑制されている。
なお、本明細書において、オフフレーバーとは、上述のとおり、加熱臭やイモ臭などと表現され加熱や長期保存などにより果汁由来の成分が変化して生じる、果汁の果物を想起させる風味を妨げる異風味をいう。
【0011】
また、上記a)、b)、c)およびd)の関係を満足することで、レモンの果汁含有率を25%以下とするときには飲料の飲みやすさも改善することができ、好ましい。
この点、具体的に説明すると、リモネン、ノナナールの添加によりオフフレーバーが抑制されるが、これらの含有量を増加させるときには、リモネンの増加に由来して酸味様の刺激が強く感じられるようになったり、ノナナールの増加に由来して樹脂のような香りが感じられるようになることがある。その場合、リモネン、ノナナールの含有量無調整のレモン果汁含有飲料と比較して、飲料の飲みやすさが損なわれてしまう。
本実施形態の飲料においては、上記a)、b)、c)およびd)の関係を満足することにより、レモン果汁の含有量を25%以下とする場合には、飲料の飲みやすさについても、リモネン、ノナナールの含有量無調整のレモン果汁含有飲料と比較して、改善することができる。
【0012】
本明細書において果汁含有飲料とは、果汁を原料として配合した飲料を意味する。また、果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。また、本明細書に係る果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。
【0013】
本実施形態の果汁含有飲料に係る果汁の調製に用いることのできるレモンについて、その品種、産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
また、レモン果汁として市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用い、本実施形態の飲料を調製するようにしてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態の果汁含有飲料調製のために用いることができる。
【0014】
本実施形態の果汁含有飲料における果汁含有率は特に限定されず当業者が適宜設定できるが、果汁含有率が10%以上である飲料において本発明に係る構成とすることでオフフレーバーをより抑制できるため、好ましい。また、飲料の飲みやすさについても改善できることを考慮すると上述のとおり果汁含有率が25%以下(より好ましくは22%以下、さらにより好ましくは17%以下)が好ましく、したがって果汁含有率は10%以上25%以下(さらにより好ましくは10%以上22%以下、さらにより一層好ましくは10%以上17%以下)がより好ましい。
ここで、果汁含有率とは、果実等の食用部分を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの、相対濃度である。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。レモンの場合は酸度に基づいて算出する。
例えば、レモンについてはストレート果汁の酸度が4.5%であるから、酸度が30%の濃縮レモンジュースを飲料中1.6重量%配合した場合、10%の果汁含有率の飲料を得ることができる。
【0015】
上述のとおり本実施形態の果汁含有飲料は、リモネン(その含有量をxとする)とノナナール(その含有量をyとする)を含有し、これらの含有量(ppm)について、以下の関係を満足する。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
【0016】
ここで、飲料の飲みやすさをより改善することができるため、リモネンについては8≦x≦95、ノナナールについては0.05≦y≦0.55であることが好ましく、より好ましくは8≦x≦65、0.05≦y≦0.35である。
【0017】
リモネン、ノナナールの含有量や割合を調整する方法は特に限定されず、例えば市販品を用いて飲料製造過程において添加を行うなどすればよい。
また、リモネン、ノナナールの飲料における含有量の測定は例えばガスクロマトグラフィー質量分析法によって行うことができる。測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
【0018】
本実施形態の果汁含有飲料においては、本発明の効果が奏される限り、上記2成分やレモン果汁以外の他の成分を含むようにしてもよく、特に限定されない。具体的には、食塩、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、酸味料、果汁、香料、ビタミン、着色料、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの、飲料に通常配合される成分を含有することができる。
飲料のpHや酸度は適宜設定でき、特に限定されない。例えば、pHは2.0~4.5とすることができる。また、酸度は0.25~1.05w/v%とすることができる。なお、酸度は国税庁所定分析法にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出される。
また、本実施形態の果汁含有飲料は炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、炭酸ガスの含有量(ガスボリューム)は特に限定されないが、例えば1.5~4.5とすることができる。本明細書中においてガスボリューム(G.V.)とは、炭酸飲料中の炭酸ガス量を表す単位を示し、標準状態(1気圧、20℃)における、炭酸飲料の体積に対する炭酸飲料中に溶解した炭酸ガスの体積の比を指す。このガスボリュームは、たとえば、京都電子工業社製ガスボリューム測定装置GVA-500Bを用いて測定することができる。より具体的には、試料温度を20℃とし、ガスボリューム測定装置にて、容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とうした後、このガスボリュームの測定を行うことができる。
【0019】
また、本実施形態の果汁含有飲料はエタノールなどのアルコールを含有するアルコール飲料として調製されてもよい。アルコールが含まれる場合の含有量は特に限定されないが、本発明に係る構成とすることでオフフレーバーをより抑制することができるため、1~10容積%(より好ましくは3~10容積%)が好ましい。アルコール源として用いられるベース酒は特に限定されないが、蒸留酒を挙げることができる。蒸留酒としては、ウィスキー、ブランデー、焼酎、及びスピリッツ、及び原料用アルコール等が例示できる。
【0020】
本実施形態の果汁含有飲料は例えば常法にしたがって製造することができ、各成分の配合量、割合や製造条件などについては特に限定されない。
例えば、濃縮果汁を原料として用い、これを水で希釈する。炭酸飲料とする場合には、希釈に炭酸水を用いるようにしてもよい。次いで当該希釈液に上記a)、b)、c)およびd)の関係を満足するようにリモネン、ノナナールを添加し、さらにその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして果汁含有飲料を調製する。
添加する順序などは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、炭酸飲料とする場合、上記希釈において炭酸水を用いる方法のほか、容器に充填する前に所定のガスボリュームになるようにカーボネーションを行うことにより、炭酸飲料とすることもできる。
【0021】
製造された本実施形態の果汁含有飲料は、特に限定されないが、例えば容器に封入された容器詰飲料とすることができる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、紙容器、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
また、容器詰飲料とするにあたり、必要に応じて殺菌等の工程を経て製造することができる。殺菌する方法は特に限定されず当業者が適宜設定でき、例えば、飲料を容器に充填した後に熱水シャワー殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌してから容器に充填する方法などを挙げることができる。
【0022】
以上、本実施形態によれば、オフフレーバーをマスキングして該オフフレーバーが感じられるのを抑えることができる。その結果、嗜好性を高めて飲料の商品価値の向上に寄与することが期待できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[ベース液1の調製]
レモン混濁濃縮果汁(雄山株式会社より購入、酸度:32.5):18g、原料用アルコール44ml、果糖ぶどう糖液糖30g、クエン酸ナトリウム1.5gと1000mlとする量の水とを混合し、得られた混合液に炭酸ガスを加えて、ベース液1を調製した(アルコール4%、果汁12%、pH3.2、酸度:0.55w/v%、ガスボリューム:2.2~2.4)。
【0024】
得られたベース液1に表中に示すような濃度になるように各化合物(シトラール(Cas.5392-40-5)、D-リモネン(Cas.5989-27-5)、1-オクタナール(Cas.124-13-0)、ノナナール(Cas.124-19-6))を添加し、加熱臭が抑制されているかを官能検査を用いて検討した(なお、同様の分析は官能試験1、2においても行った)。各飲料における含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による分析を行った。測定条件を以下に示す。
なお、各種化合物無添加である対照(ベース液1)において、リモネンの含有量は1ppmであり、他の3種の化合物は検出されなかった。
【0025】
<分析条件>
0.5gの試料に対して0.5mlのエタノールと100μLの内部標準(20ppm リナロール-d5)を添加した後に、超純水で50倍希釈した。希釈した試料の香気成分をTwisterに吸着(40℃、2時間)させ、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)分析を行い、内部標準添加法により定量を行った。
<GC条件>
装置:昇温気化型注入口(CIS4,Gerstel社製)、加熱脱着ユニット(TDU,Gerstel社製)、GC System(7890B、Agilent Technologies社製)、Mass Selective Detector(5977、Agilent Technologies社製)
LTMカラム(1st:DB-WAX,20m×0.18mm;0.3μm、2nd:DB-5,10m×0.18mm;0.4μm,Agilent Technologies社製)
TDU:20℃(1min)-(720℃/min)-250℃(3min)
CIS4:-50℃(1.5min)-(12℃/sec)-240℃(45min)
スプリット比:10:1
注入口圧:508.28kPa
1stカラム温度:40℃(3min)-(5℃/min)-180℃(0min)
2ndカラム温度:40℃(31min)-(5℃/min)-180℃(0min)
MSD:SCAN mode,m/z 29-230,20Hz,EI
【0026】
[参考試験]
官能試験は、訓練されたパネリスト5名で行い、対照と比べてオフフレーバーが抑制されていれば○、同等もしくは増強であれば×と評価し、過半数のパネリストが選択したほうを評価として採用した。
【0027】
【0028】
表1から、リモネン(8ppm、40ppm)、ノナナール(0.05ppm、0.25ppm)を添加した場合にオフフレーバーが抑制されていることが理解できる。一方で、当該官能試験において、リモネン、ノナナールの添加量が増加するにつれて、酸味様の刺激が増強されているとのコメント(リモネン添加の場合)や樹脂のような香りが感じられるようになるとのコメント(ノナナール添加の場合)が、パネリストからあった。
【0029】
[実施例の飲料の官能試験1]
ベース液1にリモネンとノナナールを添加し、表2に示す含有量の実施例、参考例および比較例の飲料を得た。
オフフレーバーについて、参考試験と同様の官能試験を行い、対照より良ければ効果ありとした。
また、併せて、飲みやすさについても対照と同等もしくは飲みづらくなっているものを×、飲みやすくなっているものを〇として評価を行った。なお、表中では、併せて、対照と比較して酸味様の刺激や樹脂的な香りが感じられるケースについて、×を付して示している。
オフフレーバー、飲みやすさとも、過半数のパネリストが選択したほうを評価として採用した。
【0030】
【0031】
表2から、リモネンとノナナールが適度なバランスで配合されていると、酸味様の刺激感、樹脂的な香りを感じずに、オフフレーバーが抑制され飲みやすい飲料として完成することが判明した。
なお、オフフレーバーに関しては、すべての実施例、参考例とも抑制されていた。
具体的には、リモネンの含有量(ppm)をx、ノナナールの含有量(ppm)をyとする場合に、y≧0.0025x-0.0025かつy≦0.02x-0.02を満たす範囲で、なおかつx≧8、y≧0.05の範囲であると、オフフレーバーが抑制されており、飲みやすさも改善された飲料が得られたことが理解できる。
【0032】
[実施例の飲料の官能試験2]
ベース液1について果汁含有率を表3に示す値に変更した。果汁含有率10%のものについては、糖は果糖ぶどう糖液糖、酸はクエン酸を用いて、糖酸比がベース液1と同じとなるように調整した。得られたベース液にリモネン、ノナナールを添加した。これらの含有量を表3に示す。
実施例1と同様の官能試験を行い、同じ果汁含有率のリモネン、ノナナール無添加である対照(比較例)と比較した。
【0033】
【0034】
表3から理解できるとおり、いずれの含有率においても対照と比較してオフフレーバー抑制が確認できた。また、実施例8、9から、果汁含有率を25%以下とする場合には飲みやすさについても改善されていることが理解できる。