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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】患者監視装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20230904BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230904BHJP
   G16H 80/00 20180101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/00 102C
G16H80/00
A61B5/16 120
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019048253
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146345
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 公一
(72)【発明者】
【氏名】柳田 和鋭
(72)【発明者】
【氏名】長尾 貴正
(72)【発明者】
【氏名】平沢 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小池 成章
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176762(JP,A)
【文献】特開2019-004924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔の画像を顔画像として取得する顔画像取得部と、
前記顔画像を用いて、前記顔画像に対応する受診者を特定する特定部と、
前記顔画像を用いて、前記受診者の感情を推定する推定部と、
病院情報システムから、前記受診者が罹患している疾病名または想定病名を含む診療情報を取得する診療情報取得部と、
前記感情と前記診療情報とに基づいて、前記受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出するストレス値算出部と、
前記ストレス値が閾値を越えた場合に、前記受診者の情報を通知する通知部と
を具備
前記診療情報において、急な病状悪化を招く可能性がある疾病名、或いは想定病名が含まれる場合、
前記推定部は、前記受診者に対して感情の推定を行う頻度を前記受診者とは異なる他の受診者よりも多くする、患者監視装置。
【請求項2】
顔の画像を顔画像として取得する顔画像取得部と、
前記顔画像を用いて、前記顔画像に対応する受診者を特定する特定部と、
前記顔画像を用いて、前記受診者の感情を推定する推定部と、
前記受診者の診療情報を取得する診療情報取得部と、
前記感情と前記診療情報とに基づいて、前記受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出するストレス値算出部と、
前記ストレス値が閾値を越えた場合に、前記受診者の情報を通知する通知部と
を具備し、
前記診療情報において、急な病状悪化を招く可能性がある疾病名、或いは想定病名が含まれる場合、
前記推定部は、前記受診者に対して感情の推定を行う頻度を前記受診者とは異なる他の受診者よりも多くする、患者監視装置。
【請求項3】
前記受診者について、基準時間を起点とした滞在時間を算出する時間算出部、
を更に具備し、
前記ストレス値算出部は、前記感情と前記診療情報と前記滞在時間とに基づいて、前記ストレス値を算出する、請求項1または請求項2に記載の患者監視装置。
【請求項4】
前記診療情報は、少なくとも前記受診者が罹患している疾病名、或いは想定病名を含み、
前記ストレス値算出部は、前記ストレス値に対する比重を、前記感情よりも前記診療情報が大きくなるように前記ストレス値を算出する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の患者監視装置。
【請求項5】
前記受診者について、前記感情の推定が複数回行われた場合、感情の変化度を算出する感情変化度算出部
を更に具備し、
前記ストレス値算出部は、前記感情の変化度と前記診療情報とに基づいて、前記受診者に関するストレスの程度の変化を示す第2のストレス値を算出し、
前記通知部は、前記第2のストレス値が閾値を越えた場合に、前記受診者の情報を通知する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の患者監視装置。
【請求項6】
前記受診者の動きの変化を常にモニタリングしている場合、
前記推定部は、前記受診者が特定の動作を行った場合に、即時に感情の推定を行う、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の患者監視装置。
【請求項7】
前記受診者の移動量を計測した場合、
前記ストレス値算出部は、前記感情と前記診療情報と前記移動量とに基づいて、前記ストレス値を算出する、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の患者監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、患者監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設における待ち時間は、受診者にとってストレスとなることが知られている。待ち時間が長い場合、受診者は、体調不良を起こしたり、いらいらを募らせるなどのメンタルヘルスの悪化を引き起こしたりすることがある。このような待ち時間の対策としては、声かけなどの人為的な待ち時間対策や、順番を表示するディスプレイを設置する、診察時間を知らせる端末などの機械的な待ち時間対策などが行われている。
【0003】
例えば、人為的な待ち時間対策に用いられる方法として、病院の待合室にいる患者を識別し、面会すべき患者を医療関係者に示す方法がある。しかし、多くの受診者が待機している医療施設では、急を要しない受診者も多く識別されてしまい、人為的な待ち時間対策を行うことは困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-62119号公報
【文献】特開2017-73107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、声かけが必要な受診者を通知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る患者監視装置は、顔画像取得部と、特定部と、推定部と、診療情報取得部と、ストレス値算出部と、通知部とを備える。顔画像取得部は、顔の画像を顔画像として取得する。特定部は、顔画像を用いて、顔画像に対応する受診者を特定する。推定部は、顔画像を用いて、受診者の感情を推定する。診療情報取得部は、受診者の診療情報を取得する。ストレス値算出部は、感情と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出する。通知部は、ストレス値が閾値を越えた場合に、受診者の情報を通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る患者監視装置を含む病院情報システムの構成例を示す図。
図2図2は、図1の処理回路にて実行される処理を例示するフローチャート。
図3図3は、第1の実施形態における撮影装置によって取得されたカメラ画像を例示する図。
図4図4は、第1の実施形態におけるカメラ画像から顔画像を抽出する具体例を示す図。
図5図5は、第1の実施形態における顔画像から受診者を特定する具体例を示す図。
図6図6は、第1の実施形態における顔画像から感情を推定する具体例を示す図。
図7図7は、第1の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフ。
図8図8は、第2の実施形態に係る患者監視装置に相当する処理回路の構成例を示す図。
図9図9は、図8の処理回路にて実行される処理を例示するフローチャート。
図10図10は、第2の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフ。
図11図11は、第2の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、患者監視装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る患者監視装置を含む病院情報システムの構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、病院情報システム100は、撮影装置110、表示装置120およびサーバ130を備える。病院情報システム100は、例えば、電子カルテに関する情報(電子カルテ情報)を管理する電子カルテシステム(図示せず)を含む。撮影装置110、表示装置120およびサーバ130は、LAN(Local Area Network)へ接続される。LANへの接続は、有線および無線のどちらでもよい。尚、VPN(Virtual Private Network)などによりセキュリティが確保されている場合、撮影装置110、表示装置120およびサーバ130は、インターネットなどの公衆の通信回線に接続してもよい。
【0010】
撮影装置110は、例えば、医療施設における、出入り口、待合室および廊下などに設置されるカメラに相当する。撮影装置110は、例えば、待合室の様子を撮影することによって、動画、或いは静止画のカメラ画像を取得する。撮影装置110は、取得したカメラ画像をサーバ130などへと出力する。尚、撮影装置110は、受付カウンタに配置され、受診者が受付した際に当該受診者の顔画像を取得してもよい。また、撮影装置110として、予め医療施設内の各所に設置されている監視カメラなどが流用されてもよい。
【0011】
また、撮影装置110は、物体表面の温度を取得可能な赤外線カメラを搭載してもよい。赤外線カメラを搭載した撮影装置110は、撮影している範囲の温度分布が可視化可能な温度画像を取得することができる。尚、温度画像は、動画および静止画のどちらでもよい。
【0012】
表示装置120は、例えば、医療施設の受付カウンタ内などに設置されるディスプレイに相当する。表示装置120は、サーバ130からの制御に従って監視画像を表示する。監視画像には、例えば、カメラ画像と、当該カメラ画像から特定された受診者の情報とを含む。ここで、受診者とは、当該医療施設の電子カルテに患者情報が登録されており、受診に関する受付を行った者である。
【0013】
サーバ130は、病院情報システム100を構成するサーバの一つである。サーバ130は、通信インタフェース131、記憶回路132、制御回路133および処理回路134を備える。通信インタフェース131、記憶回路132、制御回路133および処理回路134は、例えば、バスを介して互いに通信可能に接続されている。尚、処理回路134は、患者監視装置と呼ばれてもよい。
【0014】
通信インタフェース131は、LANを介して接続された撮影装置110および表示装置120との間でデータ通信を行う。例えば、通信インタフェース131は、処理回路134などの指示により撮影装置110から出力されたカメラ画像などを取得する。
【0015】
記憶回路132は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)および集積回路などの記憶装置である。また、記憶回路132は、CD-ROMドライブ、DVDドライブおよびフラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置などであってもよい。記憶回路132は、オペレーティングシステムなどの制御プログラムおよび各種アプリケーションプログラムならびにこれらのプログラムに付随する各種操作画面の表示データを記憶している。
【0016】
記憶回路132は、電子カルテシステムに含まれる電子カルテサーバから取得された電子カルテ情報を記憶する。電子カルテ情報には、各診療日における主訴情報、所見情報、診断情報、及び治療計画情報、並びに、オーダ情報が含まれる。また、電子カルテ情報には、診断された病名、検査結果、検査結果レポート、及び既往歴等が含まれる。尚、本実施形態では、電子カルテ情報には、患者の顔を撮影した画像(患者顔画像)が付帯されるものとする。
【0017】
また、記憶回路132は、撮影装置110から取得されたカメラ画像などを記憶する。さらに、記憶回路132は、受診者の情報や、特定した受診者に関する、顔画像、数値化した感情の項目、滞在時間、診療情報およびストレス値などを記憶してもよい。
【0018】
制御回路133は、サーバ130の中枢として機能するプロセッサである。制御回路133は、記憶回路132に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該制御プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路133は、システム制御機能133a、監視画像生成機能133bおよび表示制御機能133cを有する。本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能133a、監視画像生成機能133bおよび表示制御機能133cが実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能133a、監視画像生成機能133bおよび表示制御機能133cを実現してもよい。
【0019】
システム制御機能133aは、撮影装置110および表示装置120との通信ならびにサーバ130自体の動作などの基本動作を制御する機能である。例えば、制御回路133は、システム制御機能133aにより、通信インタフェース131を介して各種要求を受け付ける。制御回路133は、受け付けた各種要求に応じて、各種機能を実行する。
【0020】
監視画像生成機能133bは、監視画像を生成する機能である。例えば、制御回路133は、監視画像生成機能133bにより、要求された処理に応じた情報を記憶回路132から読み出す。記憶回路132から読み出される情報は、例えば、カメラ画像および受診者の情報などが含まれる。制御回路133は、読み出した情報に基づいて監視画像を生成する。
【0021】
表示制御機能133cは、生成した監視画像データを表示するように表示装置120を制御する機能である。制御回路133は、表示制御機能133cにより、通信インタフェース131を介して監視画像を表示装置120に表示させる。
【0022】
処理回路134は、ハードウェア資源として、図示していないプロセッサと、ROM(Read-Only Memory)およびRAMなどのメモリとを有する。処理回路134は、顔画像取得機能134a、受診者特定機能134b、滞在時間算出機能134c、診療情報取得機能134d、感情推定機能134e、ストレス値算出機能134fおよび通知機能134gを有する。これらの各機能は、コンピュータによって実効可能なプログラムの形態でメモリへ記憶されている。処理回路134は、前述の各機能に対応するプログラムをメモリから読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサでもよい。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路134は、前述の各機能などを有する。
【0023】
なお、図1において、単一の処理回路134にて前述の各機能が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとして構わない。換言すると、前述の各種機能がプログラムとして構成され、一つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。また、処理回路134が制御回路133の各機能を備えてもよいし、制御回路133が処理回路134の各機能を備えてもよい。即ち、制御回路133および処理回路134は、一つの回路で構成されていてもよい。
【0024】
前述の「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。
【0025】
顔画像取得機能134aは、カメラ画像から人物の顔の画像(顔画像)を取得する機能である。処理回路134は、顔画像取得機能134aにより、カメラ画像を取得する。そして、処理回路134は、既存の顔検出アルゴリズムを用いて、カメラ画像から顔画像を取得する。処理回路134は、取得した顔画像を記憶回路132へと記憶する。
【0026】
受診者特定機能134bは、顔画像を用いて、当該顔画像に対応する受診者を特定する機能である。処理回路134は、受診者特定機能134bにより、取得された顔画像と電子カルテ情報に付帯された患者顔画像とに基づいて、取得された顔画像に対応する受診者を特定する。より具体的には、処理回路134は、顔画像の特徴点と患者顔画像の特徴点とを比較することによって、受診者を特定する。尚、受付時に受診者の顔画像を取得できる場合、処理回路134は、受付時に取得した顔画像に更に基づいて、受診者を特定してもよい。
【0027】
処理回路134は、例えば、顔画像と特定した受診者の情報とを対応付けて記憶回路132へと記憶する。また、処理回路134は、特定した受診者の顔画像を、当該受診者の患者顔画像に対応付けて記憶してもよい。特定した受診者の情報には、例えば、当日の受付順に割り振られる受診者IDおよび受診者名などが含まれる。
【0028】
滞在時間算出機能134cは、受診者の滞在時間などを算出する機能である。処理回路134は、滞在時間算出機能134cにより、基準時間と、受診者を特定した時刻とに基づいて、受診者の滞在時間を算出する。基準時間は、例えば、受診者が医療施設内で受付をした時刻である。処理回路134は、例えば、顔画像と受診者の滞在時間とを対応付けて記憶回路132へと記憶する。
【0029】
規模の大きな病院の場合には、受付と待合室とが離れた場所に位置していることがある。このとき、処理回路134は、滞在時間算出機能134cにより、待合室内における受診者の待機時間をさらに算出してもよい。待合室内における待機時間を算出する場合には、処理回路134は、待合室において最初に受診者を特定した時刻を基準時間として待機時間を算出する。尚、処理回路134は、滞在時間に代えて待機時間を算出してもよい。
【0030】
また、受診者が受付をした後に外出をした場合には、算出された時間に外出時間が含まれる。そのため、処理回路134は、滞在時間算出機能134cにより、受診者の外出時間をさらに算出してもよい。例えば、処理回路134は、出入り口に設置されたカメラにて受診者が特定された時刻から外出時間を算出してもよいし、医療施設内のカメラで一定時間以上受診者が特定されなかった時間を外出時間として算出してもよい。このとき、処理回路134は、医療施設内での滞在時間を求めるために、受付した時刻を基準として算出された時間から外出時間を除いた時間を滞在時間として算出する。
【0031】
診療情報取得機能134dは、受診者の診療情報を取得する機能である。処理回路134は、診療情報取得機能134dにより、受診者の電子カルテ情報から、罹患している疾病名、或いは想定病名などの診療情報を取得する。疾病名および想定病名には、例えば、大動脈瘤、狭心症、心不全および慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)などがある。処理回路134は、例えば、受診者の情報と診療情報とを対応付けて記憶回路132へと記憶する。
【0032】
また、診療情報は、受診者の日常的な健康情報を含んでもよい。健康情報は、例えば、血圧、体温、心拍数および心電図などが含まれる。健康情報は、例えば、スマートフォンやスマートウォッチなどの携帯端末から取得される。
【0033】
感情推定機能134eは、受診者の顔画像を用いて、当該受診者の感情を推定する機能である。処理回路134は、感情推定機能134eにより、既存の感情推定アルゴリズムを用いて、顔画像が示す様々な感情を感情スコアとして数値化する。感情には、例えば、「怒り」、「軽蔑」、「嫌悪感」、「恐怖」、「喜び」、「中立」、「悲しみ」および「驚き」の項目がある。処理回路134は、例えば、複数の項目の感情スコアの合計値が「1」となるように各項目の感情スコアを推定する。処理回路134は、例えば、顔画像と各項目の感情スコアとを対応付けて記憶回路132へと記憶する。
【0034】
また、処理回路134は、感情推定機能134eにより、ある受診者について感情の推定が複数回行われた場合、滞在時間と感情スコアとの関係を示すグラフを生成してもよい。監視者は、例えば、グラフを参照することによって、受診者の感情スコアの推移、即ち経時的な感情の変化を観察することができる。
【0035】
ストレス値算出機能134fは、少なくとも推定された感情と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出する機能である。処理回路134は、ストレス値算出機能134fにより、推定された感情と滞在時間と診療情報とのそれぞれに割り当てられた数値を全て掛け合わせた値をストレス値として算出する。尚、受診者の移動量を計測した場合、処理回路134は、推定された感情と診療情報と移動量とに基づいて、ストレス値を算出してもよい。
【0036】
処理回路134は、例えば、特定した受診者の情報とストレス値とを対応付けて記憶回路132へと記憶する。尚、以降では、感情を数値化した値(感情スコア)を「感情の変数」とよび、滞在時間を数値化した値を「滞在時間の変数」とよび、診療情報を数値化した値を「診療情報の変数」とよぶ。また、待機時間を数値化した値を「待機時間の変数」とよぶ。
【0037】
通知機能134gは、ストレス値が閾値を越えた受診者の情報を通知する機能である。処理回路134は、通知機能134gにより、表示装置120に対してストレス値が閾値を越えた受診者を特定し易いように通知する。処理回路134は、例えば、監視画像が表示されている表示装置120において、通知すべき受診者の情報をメッセージなどに表示して通知する。または、処理回路134は、医療会計端末などの受付カウンタに設置された別の端末装置において、通知すべき受診者の情報をメッセージなどに表示して通知する。
【0038】
図2は、図1の処理回路にて実行される処理を例示するフローチャートである。図2の処理は、例えば、受付業務が開始されたことを契機として、処理回路134が患者を監視するための処理に関するプログラムを実行することにより開始される。また、以下では、図3から図7を参照し、フローチャートの説明が行われる。
【0039】
(ステップST201)
処理回路134は、顔画像取得機能134aにより、カメラ画像を取得する。
【0040】
図3は、第1の実施形態における撮影装置によって取得されたカメラ画像を例示する図である。カメラ画像300は、病院の待合室内を撮影した画像である。カメラ画像300には、人物301、人物302、人物303および人物304が写っている。人物301および人物302は、長椅子に座っている状態である。人物303は、受付カウンタ内に座っている状態である。人物304は、立っている状態である。尚、受診者は、人物301および人物302である。
【0041】
(ステップST202)
処理回路134は、顔画像取得機能134aにより、カメラ画像から人物の顔を検出することによって顔画像を取得する。
【0042】
図4は、第1の実施形態におけるカメラ画像から顔画像を取得する具体例を示す図である。図4に示すように、カメラ画像300に写っている各人物の顔が顔画像として抽出されている。具体的には、顔画像401は、人物301の顔部分を切り出している。同様に、顔画像402は人物302の顔部分、顔画像403は人物303の顔部分および顔画像404は人物304の顔部分をそれぞれ切り出している。
【0043】
(ステップST203)
処理回路134は、受診者特定機能134bにより、顔画像から受診者を特定する。
【0044】
図5は、第1の実施形態における顔画像から受診者を特定する具体例を示す図である。図5に示すように、人物情報が、抽出された顔画像に対応付けられている。前述の監視画像は、例えば、図5に示されるような、カメラ画像と受診者の情報(人物情報)とが対応付けられた画像に相当する。具体的には、顔画像401は、人物情報501が対応付けられている。顔画像402は、人物情報502が対応付けられている。顔画像403は、人物情報503が対応付けられている。顔画像404は、人物情報504が対応付けられている。尚、人物情報には、前述した「受診者の情報」が含まれる。また、人物情報は、「受診者ではない人物の情報」を含んでもよい。例えば、「受診者ではない人物」は、医師、看護師、医療スタッフおよび出入りの業者などの病院関係者や、受診者の付き添い人などである。
【0045】
人物情報には、例えば、受診者IDおよび受診者名が含まれる。例えば、人物情報501には、「受診者ID:0001」および「受診者名:観音花子」が含まれる。人物情報502には、「受診者ID:0002」および「受診者名:山田太郎」が含まれる。
【0046】
人物情報503および人物情報504には、「受診者ID:unknown」および「受診者名:unknown」が含まれる。人物情報に「受診者ID:unknown」および「受診者名:unknown」が含まれる場合、その人物情報が対応付けられた顔画像の人物は、受診者では無い人物を示している。
【0047】
なお、処理回路134は、受診者を特定した際、既に受診を終えていることが判っていれば、当該受診者についてステップST204以降の処理を省略してもよい。例えば、処理回路134は、受診者のカルテ内容が確定したことを契機として、受診を終えていると判定してもよい。また、処理回路134は、受診者ではない人物に対しては、ステップST204以降の処理を省略してもよい。
【0048】
また、処理回路134は、受診者を特定した際、条件に当てはまる受診者についてのみステップ204以降の処理を実行してもよい。上記条件とは、例えば、高齢者、妊婦、および問診票の記入内容(主訴)から重篤な状態が起こり得そうな場合などである。
【0049】
(ステップST204)
処理回路134は、滞在時間算出機能134cにより、受診者の滞在時間を算出する。具体的には、処理回路134は、ある受診者が医療施設内で受付をした時刻(受付時刻)と、当該受診者を特定した時刻(特定時刻)との差から、当該受診者の滞在時間を算出する。尚、インターネットでの受付など、医療施設の受付では受付をしていない場合、処理回路134は、最初の特定時刻を受付時刻として滞在時間を算出してもよい。また、待合室内での待機時間を算出させたい場合、処理回路134は、待合室において最初に特定した時刻を受付時刻として待機時間を算出してもよい。
【0050】
(ステップST205)
処理回路134は、診療情報取得機能134dにより、受診者の診療情報を取得する。具体的には、処理回路134は、受診者の電子カルテ情報から、少なくとも現在罹患している疾病名、或いは想定病名などの診療情報を取得する。尚、診療情報は、受診者が特定された際、例えばステップST203において取得されてもよい。
【0051】
(ステップST206)
処理回路134は、感情推定機能134eにより、受診者の顔画像から感情を推定する。
【0052】
図6は、第1の実施形態における顔画像から感情を推定する具体例を示す図である。図6に示すように、顔画像600には、人物301の顔部分が切り出されている。処理回路134は、顔画像600のうちの検出範囲601において、感情を推定する。検出範囲601で推定された感情は、感情スコア一覧602として出力される。
【0053】
感情スコア一覧602は、感情の項目別に感情スコアが付帯されている。具体的には、感情スコア一覧602は、例えば「怒り 0.09557」「軽蔑 0.00392」「嫌悪感 0.68476」「恐怖 0.00000」「喜び 0.00000」「中立 0.00215」「悲しみ 0.21359」「驚き 0.00001」が含まれる。
【0054】
図7は、第1の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフである。ある受診者について感情の推定が複数回行われた場合、処理回路134は、図7に示すグラフ群700を生成してもよい。グラフ群700は、第1のグラフ701、第2のグラフ702、第3のグラフ703および第4のグラフ704を含む。
【0055】
第1のグラフ701には、「中立」の項目の感情スコアが経時的に示される。第2のグラフ702には、「悲しみ」の項目の感情スコアが経時的に示される。第3のグラフ703には、「恐怖」の項目の感情スコアが経時的に示される。第4のグラフ704には、「嫌悪感」の項目の感情スコアが経時的に示される。
【0056】
なお、グラフ群700には、独立したグラフとして表示されていない項目(非表示項目)が複数存在する。これらの非表示項目は、例えば、感情スコアの値がゼロの項目、或いは感情スコアの値がほぼゼロに近い項目を示している。
【0057】
(ステップST207)
処理回路134は、ストレス値算出機能134fにより、感情と滞在時間と診療情報とに基づいてストレス値を算出する。具体的には、処理回路134は、感情の変数と滞在時間の変数と診療情報の変数とを乗算することによってストレス値を算出する。または、処理回路134は、上記複数の変数を加算することによってストレス値を算出してもよい。即ち、処理回路134は、上記複数の変数を用いれば、どのような方法でストレス値を算出してもよい。尚、ストレス値の算出は、少なくとも感情および診療情報が含まれていればよい。また、ストレス値の算出において、滞在時間の変数に代えて待機時間の変数が用いられてもよい。
【0058】
ストレス値を算出するための感情には、例えば、負の感情が用いられる。負の感情は、例えば、「怒り」「嫌悪感」および「恐怖」である。感情の変数は、例えば負の感情の感情スコアの合計が用いられる。または、感情の変数は、1から負の感情の感情スコアの合計を引いた数、或いは正の感情の感情スコアの合計が用いられてもよい。即ち、感情の変数は、感情スコアを用いたものであればよい。
【0059】
滞在時間の変数は、時間長に応じた値が設定されてよい。または、滞在時間の変数は、ある時間長(例えば30分)を越えた場合、さらに所定の係数を乗算してもよい。尚、待機時間の変数についても、上記内容と同様である。
【0060】
診療情報の変数は、疾病に応じて医療機関が任意に設定してよい。例えば、診療情報の変数は、疾病に応じて1から5(または10)までが設定される。また例えば、診療情報の変数は、他の変数(例えば感情の変数)に比べて、算出されるストレス値に対する比重を大きくしてもよい。具体的には、診療情報の変数は、例えば、(1)慢性的な痛みを伴う疾患に罹患している場合と、(2)急な病状悪化を招く可能性がある疾患に罹患している場合となどによって、以下のように設定されてもよい。
【0061】
(1)慢性的な痛みを伴う疾患に罹患している場合
慢性的な痛みを伴う疾患では、顔の表情が優れていなくても、或いは滞在時間が長くなっていてもストレス値が小さく算出されてよい。慢性的な痛みを伴う疾患の場合、診療情報の変数は、設定可能な値の範囲のうちの相対的に小さい値、平均値よりも小さい値、或いは1よりも小さい値に設定されてもよい。慢性的な痛みを伴う疾患では、顔の表情が優れていなくても、滞在時間が長いことによるいらいらや、急な体調悪化ではない可能性がある。
【0062】
(2)急な病状悪化を招く可能性がある疾患に罹患している場合
大動脈瘤、狭心症、心不全およびCOPDなどの疾患は、突然に、かつ重大な病状の悪化を招く可能性がある。これらの疾患の場合、診療情報の変数は、設定可能な値の範囲のうちの相対的に大きい値、或いは平均値よりも高い値に設定されてもよい。これらの疾患に罹患している受診者のストレス値が閾値を越えた場合、当該受診者は、医療施設での滞在期間中に、重大な病状の悪化が発生した可能性がある。
【0063】
(ステップST208)
ストレス値が閾値を越えた場合(ステップST208:YES)、処理はステップST209へと進む。ストレス値が閾値を越えていない場合(ステップST208:NO)、処理はステップST210へと進む。尚、閾値は、医療機関が任意に設定してよい。
【0064】
(ステップST209)
処理回路134は、通知機能134gにより、受診者の情報を通知する。具体的には、処理回路134は、監視画像が表示されている表示装置120において、受診者の情報を通知する。
【0065】
(ステップST210)
処理が終了していない場合、所定の時間が経過した後、処理はステップST201へと戻る。処理の終了は、例えば、受付業務が終了し、最後の受診者のカルテ内容が確定した時点である。
【0066】
図2のフローチャートでは、顔画像から受診者を特定した後に感情を推定したが、これに限らず、顔画像から感情を推定した後に受診者を特定してもよい。具体的には、ステップST202の処理の直後に、ステップST206の処理が行われてもよい。また、ステップST204の処理の直前に、ステップST205の処理が行われてもよい。
【0067】
以上の一連の処理は、リアルタイムで行われることが望ましい。即ち、処理回路134は、カメラ画像に対してリアルタイムで処理を行い、ストレス値が閾値を越えた受診者を、声かけが必要な受診者としてリアルタイムに通知する。尚、処理回路134は、ステップST203以降の処理について、複数の受診者毎にそれぞれ並列に処理を行ってもよい。
【0068】
リアルタイムで処理を行うことが困難な場合、処理回路134は、処理を行う間隔を制限してもよい。例えば、処理回路134は、カメラ画像に対する処理を、1分間隔で行う。このとき、ステップST210において、所定の時間は1分となる。
【0069】
また、処理回路134は、特定の受診者に対して処理を行う頻度を変えてもよい。具体的には、処理回路134は、ある受診者の診療情報において、急な病状悪化を招く可能性がある疾病名、或いは想定病名が含まれる場合、当該受診者を追跡し、感情の推定を行う頻度を他の受診者よりも多くしてもよい。または、処理回路134は、カメラ画像中の動きの変化を常にモニタリングし、特定の動作を行った受診者に対して即時に処理を行ってもよい。特定の動作とは、例えば、手で胸を押さえる動作や手で頭をおさえる動作など、様態の悪化を示すような動作である。
【0070】
以上説明したように第1の実施形態によれば、患者監視装置は、顔の画像を顔画像として取得し、顔画像を用いて、顔画像に対応する受診者を特定し、顔画像を用いて、受診者の感情を推定し、受診者の診療情報を取得する。そして、患者監視装置は、感情と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出し、ストレス値が閾値を越えた場合に、受診者の情報を通知する。
【0071】
従って、患者監視装置は、受診者の診療情報を考慮することによって、人為的な待ち時間対策が必要の無い受診者を多く検出してしまうことを防ぐことができる。よって、患者監視装置は、声かけが必要な受診者を通知することができる。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、患者監視装置は、受診者について、基準時間を起点とした滞在時間を算出し、感情と診療情報と滞在時間とに基づいて、ストレス値を算出する。よって、患者監視装置は、さらに滞在時間に基づいて受診者のストレス値を算出することができる。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、患者監視装置は、診療情報が、少なくとも受診者が罹患している疾病名、或いは想定病名を含み、ストレス値に対する比重を、感情よりも診療情報が大きくなるようにストレス値を算出する。よって、患者監視装置は、診療情報の比重を大きくして受診者のストレス値を算出することができる。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、患者監視装置は、診療情報において、急な病状悪化を招く可能性がある疾病名、或いは想定病名が含まれる場合、受診者に対して感情の推定を行う頻度を他の受診者よりも多くする。よって、患者監視装置は、特定の受診者に対して常に動向を監視することができる。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、患者監視装置は、受診者の動きの変化を常にモニタリングしている場合、受診者が特定の動作を行った場合に、即時に感情の推定を行う。よって、患者監視装置は、病状の悪化に関連する可能性のある特定の動作に対して、監視を強化することができる。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、患者監視装置は、受診者の移動量を計測した場合、感情と診療情報と移動量とに基づいて、ストレス値を算出する。よって、患者監視装置は、受診者が必要以上に動き回っている場合に、当該受診者に対して、他の患者よりもストレス値を大きくすることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る患者監視装置に相当する処理回路の構成例を示す図である。第2の実施形態に係る患者監視装置は、更に感情変化度を算出する点において、第1の実施形態に係る患者監視装置とは異なる。
【0078】
図8に示す処理回路800は、図1の処理回路134を置き換えたものである。処理回路800は、顔画像取得機能800a、受診者特定機能800b、滞在時間算出機能800c、診療情報取得機能800d、感情推定機能800e、感情変化度算出機能800f、ストレス値算出機能800gおよび通知機能800hを有する。尚、顔画像取得機能800a、受診者特定機能800b、滞在時間算出機能800c、診療情報取得機能800d、感情推定機能800eおよび通知機能800hは、顔画像取得機能134a、受診者特定機能134b、滞在時間算出機能134c、診療情報取得機能134d、感情推定機能134eおよび通知機能134gと同様であるため説明を省略する。
【0079】
感情変化度算出機能800fは、ある受診者について、感情の推定が複数回行われた場合、感情の変化度(感情変化度)を算出する機能である。感情変化度は、例えば、負の感情の感情スコアに注目している場合、感情スコアが増加しているグラフの傾きの値が用いられる。尚、感情変化度は、グラフの傾きが閾値を越えた場合に、所定の係数を設定するようにしてもよい。
【0080】
処理回路800は、感情変化度算出機能800fにより、異なる二つの滞在時間における感情スコアの変化から感情変化度を算出する。異なる二つの滞在時間は、一方が最新の特定した時刻に基づく滞在時間であれば、他方は他の何れの時刻に基づく滞在時間であればよい。具体的には、図7に示すように、一方の滞在時間がt4であれば、他方の滞在時間は、t1からt3までの何れを用いてもよい。
【0081】
ストレス値算出機能800gは、ストレス値算出機能134fの機能に加えて、少なくとも感情変化度と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度の変化を示すストレス値(第2のストレス値)を算出する機能である。処理回路800は、ストレス値算出機能800gにより、算出された感情変化度と滞在時間と診療情報とのそれぞれに割り当てられた変数を全て掛け合わせた値をストレス値として算出する。
【0082】
図9は、図8の処理回路にて実行される処理を例示するフローチャートである。図9の処理は、例えば、受付業務が開始されたことを契機として、処理回路800が患者を監視するための処理に関するプログラムを実行することにより開始される。尚、ステップST901からステップST906までと、ステップST909からステップST911までとは、それぞれステップST201からステップST206までと、ステップST208からステップST210までと同様のため説明を省略する。
【0083】
(ステップST907)
処理回路800は、感情変化度算出機能800fにより、感情の変化度を算出する。具体的には、処理回路800は、ある受診者について、負の感情の感情スコアが増加しているグラフの傾きの値を算出する。
【0084】
図10は、第2の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフである。ある受診者についての感情の推定が複数回行われた場合、処理回路800は、図10に示すグラフ群1000を生成してもよい。グラフ群1000は、第1のグラフ1001、第2のグラフ1002および第3のグラフ1003を含む。
【0085】
第1のグラフ1001には、「嫌悪感」の項目の感情スコアが経時的に示される。第2のグラフ1002には、「中立」の項目の感情スコアが経時的に示される。第3のグラフ1003には、「恐怖」の項目の感情スコアが経時的に示される。
【0086】
グラフ群1000は、異なる滞在時間における負の感情の感情スコアの変化が少ない。よって、グラフの傾きの値は小さく算出される。
【0087】
図11は、第2の実施形態における滞在時間と感情スコアとの関係を例示するグラフである。ある受診者についての感情の推定が複数回行われた場合、処理回路800は、図10に示すグラフ群1100を生成してもよい。グラフ群1100は、第1のグラフ1101、第2のグラフ1102、第3のグラフ1103および第4のグラフ1104を含む。
【0088】
第1のグラフ1101には、「中立」の項目の感情スコアが経時的に示される。第2のグラフ1102には、「悲しみ」の項目の感情スコアが経時的に示される。第3のグラフ1103には、「嫌悪感」の項目の感情スコアが経時的に示される。第4のグラフ1104には、「恐怖」の項目の感情スコアが経時的に示される。
【0089】
グラフ群1100は、異なる滞在時間における負の感情の感情スコアの変化が大きい。具体的には、第4のグラフ1104において、滞在時間t2における感情スコアと、滞在時間t4における感情スコアとから算出されるグラフの傾きの値は、図10のどのグラフの傾きの値よりも大きくなっている。第4のグラフ1104のような感情スコアの推移をしている場合、受診者は、医療施設での滞在中に、病状が急激に悪化した可能性がある。
【0090】
(ステップST908)
処理回路800は、ストレス値算出機能800gにより、感情変化度と滞在時間と診療情報とに基づいてストレス値を算出する。具体的には、処理回路800は、感情変化度と滞在時間の変数と診療情報の変数とを乗算することによってストレス値(第2のストレス値)を算出する。または、処理回路800は、上記複数の変数などを加算することによってストレス値を算出してもよい。即ち、処理回路800は、上記複数の変数などを用いれば、どのような方法でストレス値を算出してもよい。尚、ストレス値の算出は、少なくとも感情変化度および診療情報が含まれていればよい。
【0091】
以上説明したように第2の実施形態によれば、患者監視装置は、顔の画像を顔画像として取得し、顔画像を用いて、顔画像に対応する受診者を特定し、顔画像を用いて、受診者の感情を推定し、受診者の診療情報を取得する。そして、患者監視装置は、感情と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度を示すストレス値を算出し、ストレス値が閾値を越えた場合に、受診者の情報を通知する。
【0092】
さらに、第2の実施形態によれば、患者監視装置は、受診者について感情の推定が複数回行われた場合、感情の変化度を算出し、感情の変化度と診療情報とに基づいて、受診者に関するストレスの程度の変化を示す第2のストレス値を算出し、第2のストレス値が閾値を越えた場合に、受診者の情報を通知する。よって、患者監視装置は、ある時点の情報だけでなく、ある期間の情報にも基づいて、受診者の第2のストレス値を算出することができる。
【0093】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、声かけが必要な受診者を通知することができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100 病院情報システム
300 カメラ画像
301,302,303,304 人物
401,402,403,404,600 顔画像
501,502,503,504 人物情報
601 検出範囲
602 感情スコア一覧
700,1000,1100 グラフ群
701,1001,1101・・・第1のグラフ
702,1002,1102・・・第2のグラフ
703,1003,1103・・・第3のグラフ
704,1104・・・第4のグラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11