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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】測定用カバー部材
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230904BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M1/34 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019089763
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020184893
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 雅司
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516999(JP,A)
【文献】特開2017-181199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器内の対象物を測定するためのカバー部材であって、
培養容器は、収容部、基板およびセンサー部を含む、培養装置内に収容され、
センサー部は、基板上の培養容器内の対象物を測定することができ、
カバー部材は、センサー部と基板との間に延在する筒状の部材であ
カバー部材は、センサー部側から基板側に向けて拡径し、
基板は振盪でき、カバー部材の外形は、基板上の培養容器の振盪方向への移動距離を取り囲むように構成されている、
前記カバー部材。
【請求項2】
カバー部材の水平断面が、楕円形状に構成されている、請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
カバー部材のセンサー部側が、センサー部の周囲を囲うように構成されている、請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項4】
カバー部材の基板側が、基板上の培養容器の配置に適合する外形を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項5】
カバー部材が、その内側に照明を配置できるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項6】
カバー部材が、センサー部の検知範囲に適合する外形を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項7】
収容部に複数のセンサー部が配置されており、カバー部材の外形が、複数のセンサー部の検知範囲を繋げた外形に適合するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項8】
対象物が、シート状細胞培養物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
【0003】
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
このようなシート状細胞培養物を、目的とする患部(移植部位)に移植するには、例えば、シート状細胞培養物の端部をピンセット等で摘んだり、ヘラなどで掬い取るなどして、シート状細胞培養物を包装容器から取り出し、患部まで移送し、その患部に移植(貼付)するといった一連の操作が必要となるが、シート状細胞培養物は、絶対的な物理的強度が低く、皺、破れ、破損などが生じ易いことから、この一連の操作には高度な技術が要求され、かつ細心の注意を払う必要がある。
【0005】
特許文献1には、培養容器内のシート状細胞培養物を、コンタミネーション、皺、破れ、破損などを生じることなく、容易に剥離することが可能となるシステムが記載されており、かかるシステムを、培養インキュベーターと一体化することにより、培養によるシートの作成から剥離までの工程を自動化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-528755号公報
【文献】特開2010-81829号公報
【文献】特開2010-226991号公報
【文献】特開2011-115080号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012;1(2):136-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のシステムは、温度調節を行いながら細胞を培養し、培養容器に振動を与えてシート状細胞培養物を剥離させ、その状態をセンサーで測定するといった一連の作業を収納部内で行うとしている。しかしながら、収納部内で、温度調節や振動工程を行う場合、センサーによる測定に影響を与えることがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、培養装置における測定を最適化する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]培養容器内の対象物を測定するためのデバイスであって、トレー部とトレー部に設けられたホルダー部とを含み、ホルダー部は、トレー部において培養容器を位置決めして保持することができ、ホルダー部は、トレー部に設けられた開口部を有する、前記デバイス。
[2]トレー部に設けられた複数のホルダー部を含み、複数の培養容器を一体的に位置決めして保持することができる、[1]に記載のデバイス。
[3]ホルダー部より小さな寸法を有するサンプル用のホルダー部をさらに含む、[1]または[2]に記載のデバイス。
【0011】
[4]開口部の内側に配置されたストッパ部をさらに含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載のデバイス。
[5]ホルダー部を取り囲むトレー部のフレーム部分に沿って配置される、ハンドル部をさらに含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載のデバイス。
[6]トレー部の面に対して垂直な方向にトレー部とハンドル部とを貫通する、貫通孔をさらに含む、[5]に記載のデバイス。
[7]トレー部が嵌合する切り欠き部が設けられる、固定部材をさらに含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載のデバイス。
[8]対象物が、シート状細胞培養物である、[1]~[7]のいずれか一つに記載のデバイス。
【0012】
[9]培養容器内の対象物を測定するためのカバー部材であって、培養容器は、収容部、基板およびセンサー部を含む、培養装置内に収容され、センサー部は、基板上の培養容器内の対象物を測定することができ、カバー部材は、センサー部と基板との間に延在する筒状の部材である、前記カバー部材。
[10]カバー部材が、基端側から先端側に向けて拡径するように構成されている、[9]に記載のカバー部材。
[11]カバー部材の基端側が、センサー部の周囲を囲うように構成されている、[9]または[10]に記載のカバー部材。
[12]カバー部材の先端側が、基板上の培養容器の配置に適合する外形を有する、[9]~[11]のいずれか一つに記載のカバー部材。
【0013】
[13]カバー部材が、その内側に照明を配置できるように構成されている、[9]~[12]のいずれか一つに記載のカバー部材。
[14]カバー部材が、センサー部の検知範囲に適合する外形を有する、[9]~[13]のいずれか一つに記載のカバー部材。
[15]収容部に複数のセンサー部が配置されており、カバー部材の外形が、複数のセンサー部の検知範囲を繋げた外形に適合するように構成されている、[9]~[14]のいずれか一つに記載のカバー部材。
[16]対象物が、シート状細胞培養物である、[9]~[15]のいずれか一つに記載のカバー部材。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、培養装置における測定を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの使用例を示した概念図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るトレー部の斜視図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る固定部材の上面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係るカバー部材の概念図である。
図5図5は、本発明における培養装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面を参照しつつ、好適な実施形態に基づき、詳細に説明する。なお、図中の各部材の大きさは説明のために適宜強調されており、実際の比率、大きさを示すものではない。
【0017】
第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの使用例を示した概念図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るトレー部の斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る固定部材の上面図である。
【0018】
図1は、デバイス1を使用する培養装置3の概念図を示す。培養装置3は、収容部31、基板32、センサー部33、温度制御部(図示せず)、CO制御部(図示せず)、振盪制御部(図示せず)を含む。収容部31は、培養容器Dを収容し、温度制御部およびCO制御部によって、内部の温度およびCO濃度を培養に適した値に保つ、インキュベーターとして機能することができる。本実施形態において、測定する対象物はシート状細胞培養物Sであり、センサー部33は、培養容器D内で培養されるシート状細胞培養物Sの状態を測定するものとして説明する。
【0019】
培養容器Dとして、温度応答性培養皿(例えば、特開平2-211865参照)を使用する場合は、温度制御部で収容部31内の温度を低下させることで、シート状細胞培養物Sを培養容器Dから剥離させることができる。基板32は、収容部31内を上部/下部空間に分ける板状の部材であり、培養容器Dをその上に載置することができる。一態様において、基板32は振盪制御部によって振盪(例えば、水平振動、揺動、水平偏芯震動、水平横振盪など)させることができ、それにより培養容器Dからシート状細胞培養物を剥離することもできる。
【0020】
センサー部33によって測定されるシート状細胞培養物Sの状態には、例えば、センサー部33とシート状細胞培養物Sとの距離、シート状細胞培養物Sの屈折率、透過率、反射率などが挙げられる。データの汎用性や処理の多様性などの観点から、シート状細胞培養物Sの接着状態が画像データとして取得されることが好ましく、本実施形態においては、センサー部33は、下部空間に配置された撮像部であり、基板32の下方から培養容器D内を撮影(測定)するものとして説明する。
【0021】
図1Bは、図1Aの基板32を培養装置3の上方から見た図である。基板32は、光透過性の材料で構成されており、センサー部33は、基板32の下方から、基板32上に載置された培養容器D内のシート状細胞培養物Sの状態を測定することができる。デバイス1は、複数の培養容器Dを一体的に基板32上に配置することができる。デバイス1は、図示されるように、センサー部33の検知範囲(本実施形態の場合、図1Aの点線で示された画角)に合わせて、3つの培養容器Dを略三角形状に配置することができる。
【0022】
図2に示されるように、デバイス1は、トレー部11およびホルダー部12を含む。トレー部11は、複数の培養容器Dを載置して運搬することができるトレーとして機能する。トレー部11には、複数のホルダー部12が設けられている。ホルダー部12は、トレー部11において培養容器Dを位置決めして保持する機能を有する。ホルダー部12は、段差、突起、拘束、接着、磁力などの好適な手段で、培養容器Dをトレー部11において位置決めする。
【0023】
ホルダー部12は、トレー部11に設けられた開口部を含むことができる。開口部は、培養容器Dの寸法(例えば、直径)と同等かそれ以上の寸法を有するように設計することで、培養容器Dをその内側に収容することができる。そして、開口部の内側に配置されたストッパ部13により培養容器Dの底縁部を支持することで、トレー部11において培養容器Dを位置決めして保持することもできる。
【0024】
図示されるように、ストッパ部13と開口部との間に段差を設けることで、培養容器Dを位置決めして保持するホルダー部12として構成することもできる。ストッパ部13は、少なくとも培養容器Dの底縁部を支持出来ればよく、ホルダー部12の周方向に間隔を空けて複数配置することもできる。また、ストッパ部13は、培養容器D内のシート状細胞培養物Sを遮蔽しない程度の長さ分だけ突出するように設計することで、シート状細胞培養物Sを好適に測定することができる。ストッパ部13は、光透過性の材料で構成することもできる。
【0025】
別の態様において、ストッパ部13は、光透過性の材料で構成された板状の部材として構成することもできる。そして、かかるストッパ部13を、例えばトレー部11の下面に張り付けるなどして、開口部の内側に配置することで、培養容器Dの底面を安定的に支持することもできる。開口部は、培養容器D内のシート状細胞培養物Sを遮蔽しない程度の寸法、すなわち、少なくともシート状細胞培養物Sの寸法より大きく設計すればよい。このように、トレー部11は、培養容器D内の観察を容易にする開口部を有するため、培養容器D内の対象物を上下から正確に測定することができる。これは、半透明で視認性が低いシート状細胞培養物を撮影する場合に、特に有利である。
【0026】
図示されるように、トレー部11は、例えば、3つの培養容器Dを保持する3つのホルダー部12が設けられた略三角形状に構成することができる。また、トレー部11には、ホルダー部12より小さな寸法(例えば、直径)を有するサンプル用のホルダー部12’をさらに設けることができる。サンプル用のホルダー部12’は、例えば、培養容器Dより小さな寸法を有するサンプル用の培養容器D’を保持することができる。そして、培養容器D’内で培養されたシート状細胞培養物を品質管理用の試験サンプルとして使用することもできる。これにより、試験サンプルとして使用する細胞の量を最小限に抑えることができる。
【0027】
デバイス1は、トレー部11を移動する際に持ち手として機能する、ハンドル部14をさらに含むことができる。ハンドル部14は、トレー部11のホルダー部12,12’を取り囲むフレーム部分に接続することができる。図示されるように、ハンドル部14は、トレー部11の複数の位置に接続し、複数の接続部の間をフレーム部分に沿って橋渡しするように設けることで、培養容器Dの観察が遮蔽されないように構成することができる。図示されるように、複数の接続部間に橋渡しされたハンドル部の重心をトレー部11の重心と対応させることで、複数の培養容器Dを安定的に持ち上げることができる。
【0028】
デバイス1は、図示されるように、トレー部11の面に対して垂直な方向にトレー部11とハンドル部14とを貫通する貫通孔15をさらに含むこともできる。そして、例えば、2つの貫通孔15を観察することで、図中、矢印で示されるセンサー部33の中心軸(本実施形態の場合、光軸)と、2つの貫通孔15の中心を通る中心軸とのずれを検出することができる。これにより、撮影した画像のゆがみ補正(台形補正など)を行うことができ、シート状細胞培養物の状態を正確に把握することができる。また、これによりトレー部11の傾きや位置も正確に検出することもできる。貫通孔15を嵌合させる突起部を基板32上に設けることで、位置決めを行うこともできる。
【0029】
さらに別の態様として、貫通孔15を多角形状とし、貫通孔15の中心点と各頂点との延長線と、各ホルダー部12の中心点が交わるように設計することで、貫通孔15の画像から、各ホルダー部12の位置を検出できるように構成することもできる。これにより、例えば、センサー部33によって撮影された画像をコンピュータ処理などで解析する場合に、画像上の解析すべき範囲(すなわち、シート状細胞培養物Sの位置)をスピーディーに特定することができ、解析処理を効率化することができる。
【0030】
図3に示されるように、デバイス1は、トレー部11の外形に合わせて切り抜かれた切り欠き部17を有する固定部材16をさらに含んでもよい。固定部材16は、図1Bの基板32の寸法に適合された板状の部材であり、これを基板32に固定した上で切り欠き部17にトレー部11を嵌合させることで、培養容器Dを基板32に固定することができる。これにより、解析処理を効率化でき、さらに、基板32を振盪させた際に、培養容器Dに適切に力が加わるように構成することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態1に係るデバイス1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。トレー部11の外形は、収容部31の寸法、センサー部33の数、センサー部33の検知範囲、培養容器Dの寸法、培養容器D,D’の数、基板32の形状などに合わせて、自由に変更することができる。例えば、トレー部11は、図1Bに示される6つの培養容器Dすべてを一体的に配置できる菱形形状に構成することもできる。
【0032】
従来、ランダムに配置された、特に複数の培養容器内の画像解析を行う場合、先ずは各培養容器の位置検出を行う必要があるが、本発明のデバイス1は、培養容器D、特に、複数の培養容器Dを一体的に位置決めすることができるため、解析処理を効率化することができる。また、従来であれば、複数の培養容器を振盪させた場合は、その位置関係がバラバラになってしまうところ、本発明のデバイス1はこれらの位置関係を固定することができるため、解析処理を効率化することができる。
【0033】
本実施形態において、センサー部33は、収容部31の下部空間に2つ配置され、トレー部11の下方から培養容器D内を測定するものとしたが、センサー部33を基板32の上方に配置して、培養容器Dを上方から測定できるように構成することもできる。センサー部33の検出範囲は、センサー部33と基板32との距離、検出角度などにより決まるため、測定する培養容器の面積に合わせて、センサー部33の数(1つでも、3つ以上でもよい)、距離、検出角度などを変更することもできる。
以上、本発明のデバイス1によれば、培養装置における測定を最適化することができる。
【0034】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るカバー部材2の使用例を示した概念図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
また、図中、第1実施形態に係るデバイス1の構成と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0035】
図4に示されるように、カバー部材2は、センサー部33の周囲を囲い、センサー部33と基板32との間に延在する筒状の部材である。カバー部材2は、センサー部33の検知範囲(画角など)を遮蔽することがないように、基端21側(センサー部33側)から先端22側(基板32側)に向けて拡径するように構成されている。すなわち、センサー部33が撮像部である場合、カバー部材2はレンズフードのような形状を有し、外光や埃からレンズを保護する。従来のレンズフードは、レンズの周囲から延在するものであるが、本発明のカバー部材2は、基端21側でセンサー部33の周囲を囲うことで、センサー部33自体を保護する機能も果たす。
【0036】
上記のように、培養装置3は、培養容器Dを収容し、温度制御部およびCO制御部によって、内部の温度およびCO濃度を培養に適した値に保つ、インキュベーターとして機能することができる。図中、簡略化のために、収容部31は上面部のみ表示されているが、例えば、かかる上面部を開閉式にして培養容器Dの出し入れを行えるように構成することもできる。また、上記のようにシート状細胞培養物の剥離のために基板32を振盪できるように、カバー部材2の上端部と基板32とは接続せず、若干の距離を設けることが好ましい。
【0037】
収容部31において細胞を培養する場合、通常、収容部31内の温度を37℃に維持する。この際、培養容器D内の液体が気化して湿気が発生する場合がある。また、収容部31内には、センサー部33、温度制御部、CO制御部、振盪制御部などの機器や配線を収容する必要があり、かかる配線がセンサー部33の検知範囲を遮蔽する場合がある。これに対して、本発明のカバー部材2は、センサー部33の検知範囲を湿気や遮蔽物から隔離できるため、培養装置3における測定を最適化することができる。また、カバー部材2は、先端22から基端21に向かうにつれて縮径しているため、収容部31内に機器や配線を配置する空間を確保することができる。
【0038】
細胞の培養は、通常、清浄度が維持された、細胞培養センター(CPC)と呼ばれる大掛かりな施設で専門の知識を有する作業者による手作業で製造されており、このような施設の製造費用や労力は膨大なものとなっている。したがって、一態様において、例えば、HEPAフィルターなどのフィルターとファンなどを組み合わせた、エアフィルターユニット(図示せず)を培養装置3に組み込んで、収容部31内の清浄度が維持され、一連の作業がすべて自動化されるように、密閉(クローズド)システムとして構成することもできる。
【0039】
別の態様として、培養装置3を、例えば、清浄度が維持されたクリーンベンチなどの比較的安価で、小規模な設備において使用できるように設計することもできる。培養装置3の筐体である収容部31を小型化した場合、例えば、基板32上に設置できる培養容器Dの数が限定される、センサー部33と基板32との距離が短くなる、機器や配線を収容するスペースが確保し難くなるなど、様々な問題点も考慮する必要がある。
【0040】
センサー部33と基板32との距離が短い場合、例えば、図1に示すように、センサー部33の検知範囲で測定することができる培養容器Dの数は3つとなる。しかし、シート状細胞培養物は、一回の施術で4または5枚以上使用する場合がある。したがって、図1および図4に示されるように、収容部31内には、センサー部33を2つ並べて配置し、合計で6つ(1つは予備)のシート状細胞培養物Sを培養できるように構成することもできる。
【0041】
センサー部33を2つ並べた場合は、図1Bに示されるように、基板32上に2つ並べられたトレー部11を別々に測定することができる。この場合、カバー部材2の先端22の外形は、図1Bにおいて符号22(白線)で示されるように、基板32上の培養容器Dの配置に適合するように(本実施形態の場合、略楕円形状に)構成することが好ましい。同様に、図4に示されるように、カバー部材2の基端21は、2つ並べられたセンサー部33に合わせて、略楕円形状に構成することが好ましい。
【0042】
このように、カバー部材2の外形は、複数のセンサー部33の検知範囲(画角など)を繋げた外形に適合するように構成することが好ましい。また、基板32が、図1B中で左右方向に振盪する場合、振盪を停止させた際に、トレー部11が左右どちらかに移動した状態で停止する場合がある。したがって、カバー部材2の先端22は、基板32の振盪方向と移動距離(振幅)とに合わせた形状に(本実施形態の場合、上記の楕円形状をさらに横長に)構成することが好ましい。
【0043】
上記のように、シート状細胞培養物は、半透明で視認性が低いため、撮影用の照明を収容部31内に配置することもできる。基板32を光透過性の材料で構成した場合、培養容器D内は、基板32の上方、下方、どちらからでも撮影することができる。当業者は、照明の配置に関して、基板32、センサー部33、トレー部11、培養容器Dなどの配置に合わせて、シート状細胞培養物の撮影に最適な位置を選択することができる。
【0044】
対象物を撮影する場合は、照明と撮像部とを対象物を挟むように配置するのが一般的である。したがって、照明とセンサー部33部とで基板32を挟むように配置することができる。また、収容部31の上面部を光透過性の材料で構成して、照明の代わりに外光を利用して撮影することもできる。培養容器Dを上部空間で培養する場合、結露が発生する場合があるため、照明を下部空間に配置することが好ましい。この場合、照明からの光がカバー部材2によって遮蔽されないように、カバー部材2は、その内側に照明を配置できるように構成することもできる。
以上、本発明のカバー部材2によれば、培養装置における測定を最適化することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態2に係るカバー部材2について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。カバー部材2の外形は、センサー部33の検知範囲、センサー部33の数、センサー部33と基板32との距離、基板32の振盪方向や移動距離、測定目標となる培養容器の面積、配置、測定対象物、照明の強度などに合わせて、適宜変更することができる。例えば、上記のように、トレー部11を菱形形状に構成し、6つの培養容器Dを1つのセンサー部33で測定できるように、カバー部材2の外形を構成することもできる。
【0046】
培養装置3の収容部31は、図5に示されるような略直方体の形状を有するように構成することができる。そして、収容部31の前方側面に、モニタや操作部のような入出力部(タッチパネルでもよい)を組み込んで、各機器の操作、各機器の状態のモニタリング、センサー部33による測定(例えば、画像)の表示などができるように構成することもできる。温度、CO、振盪などの制御は、センサー部33による測定(例えば、画像)をモニタで確認しながら、手動で行うこともできる。
【0047】
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 デバイス
11 トレー部
12 ホルダー部
13 ストッパ部
14 ハンドル部
15 貫通孔
16 固定部材
17 切り欠き部
2 カバー部材
21 基端
22 先端
3 培養装置
31 収容部
32 基板
33 センサー部
D 培養容器
S シート状細胞培養物
図1
図2
図3
図4
図5