(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】医用情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20230904BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20230904BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H20/00
A61B5/00 D
(21)【出願番号】P 2019093652
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三森 恵太
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-118014(JP,A)
【文献】特開2015-197733(JP,A)
【文献】特開2007-287027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関において実際に複数の患者に対して提供された診療行為の実績を示す複数の診療実績情報のうち、患者属性情報が共通する診療実績情報に基づいて、前記患者属性情報と、1以上の診療行為と、1以上の医療的なイベントと、1以上の検査結果とがそれぞれ対応付けられた複数の仮想患者情報を生成する生成部と、
複数の前記仮想患者情報のうちのいずれかを選択する操作を受け付ける受付部と、
選択された前記仮想患者情報に含まれる前記イベントおよび前記診療行為を時系列に画面に表示する表示制御部と、
を備え
、
前記受付部は、前記画面に表示された前記イベントまたは前記診療行為を変更する操作を受け付け、
前記表示制御部は、前記受付部が受け付けた操作と、前記診療行為と検査結果の相関関係を示す相関情報と、前記イベントの各々の発生条件とに基づいて、前記イベントまたは前記診療行為の表示を変更する、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記診療行為を変更する操作と、前記相関情報とに応じて、前記画面に表示された前記仮想患者情報の前記検査結果の変化を推定し、前記検査結果が前記発生条件を満たす時期を、前記イベントの発生時期と推定するシミュレーション部、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記シミュレーション部によって推定された前記発生時期に応じて、前記イベントの表示位置を変化させる、
請求項
1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記シミュレーション部は、操作によって変更された前記診療行為の内容が、所定の条件に抵触しているか否かを判断し、
前記表示制御部は、操作によって変更された前記診療行為の内容が、前記所定の条件に抵触していると判断された場合に、前記画面に警告を表示する、
請求項
2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記シミュレーション部は、前記診療行為を変更する操作に基づく前記検査結果の変化が、所定の変化量を超えているか否かを判断し、
前記表示制御部は、前記検査結果の変化が、前記所定の変化量を超えていると判断された場合に、前記画面に警告を表示する、
請求項
3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記受付部は、選択された前記仮想患者情報に新たな前記イベントを追加する操作を受け付け、
前記シミュレーション部は、選択された前記仮想患者情報に含まれる前記検査結果が前記発生条件を満たす時期を、追加された前記イベントの前記発生時期として推定し、
前記表示制御部は、追加された前記イベントを、推定された前記発生時期に基づく表示位置に表示する、
請求項
2から
4のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記受付部は、シミュレーションの目的を選択する操作を受け付け、
前記シミュレーション部は、選択された前記目的に関連する前記イベントの発生時期に影響を与える診療行為および検査結果を、前記相関情報と前記発生条件とに基づいて特定し、
前記表示制御部は、前記シミュレーション部によって特定された前記イベントの発生時期に影響を与える診療行為および検査結果を前記画面に表示する、
請求項
2から
5のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記受付部は、前記画面に表示された前記仮想患者情報に含まれる最後の前記イベントを変更することを、前記目的として選択する操作を受け付け、
前記表示制御部は、最後の前記イベントと差替え可能な1以上の他のイベントを、差替え可能なイベントの候補として、前記画面に表示する、
請求項
6に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記画面に表示された前記仮想患者情報に対応する財務指標を、前記画面に表示する、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記イベントは、入院、退院、転院、または死亡であり、
前記患者属性情報は、患者の年齢、性別、傷病名、および、医療機関において当該患者に関連して発生した最後の前記イベントが対応付けられた情報であり、
前記生成部は、医療機関において実際に複数の患者に対して提供された診療行為の実績を示す複数の診療実績情報のうち、前記患者属性情報が共通する診療実績情報に基づいて前記仮想患者情報を生成する、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過去の診療実績に関する情報を蓄積し、用途に合わせて医師等が検索することができる技術が知られている。また、過去の診療実績に基づいて、特定の患者に対して推奨する診療行為を提示する技術についても知られている。
【0003】
しかしながら、医療機関において、医師等が、過去の診療情報から、患者が最終的な医療イベントに到達するまでに経る過程の検証または改善をすることは、容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、医師等が、患者が最終的な医療イベントに到達するまでに経る過程の検証または改善をすることを支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、生成部と、受付部と、表示制御部とを備える。生成部は、患者属性情報と、1以上の診療行為と、1以上の医療的なイベントと、1以上の検査結果とがそれぞれ対応付けられた複数の仮想患者情報を生成する。受付部は、複数の仮想患者情報のうちのいずれかを選択する操作を受け付ける。表示制御部は、選択された仮想患者情報に含まれるイベントおよび診療行為を時系列に画面に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るモデル生成機能によって生成される情報について説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るモデル生成機能によって生成される情報の一例の詳細を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る初期表示画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る仮想患者モデルのシミュレーション画面51の初期表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るシミュレーション開始後のシミュレーション画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るシミュレーション機能の処理について説明する図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る仮想患者モデルのシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るシミュレーション画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係るイベント追加後のシミュレーション画面の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る仮想患者モデルのシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係るシミュレーション画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置の実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、医用情報処理システムSは、医用情報処理装置100と、電子カルテ保管装置300とを備える。医用情報処理装置100と、電子カルテ保管装置300とは、ネットワーク900によって接続する。ネットワーク900は、院内LANまたはインターネット等である。
【0010】
電子カルテ保管装置300は、病院等で行われた各種の診療に関する診療データを保管する装置である。例えば、電子カルテ保管装置300は、病院等で導入されている電子カルテシステムの一部として設置され、電子カルテシステムによって生成された診療データを保管する。例えば、電子カルテ保管装置300は、DB(Database)サーバ等のコンピュータ機器によって実現され、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の記憶回路に診療データを記憶させる。
【0011】
電子カルテ保管装置300に保管された各種の診療に関する診療データは、過去の診療実績を示す情報であり、診療実績情報ともいう。診療実績情報の内容の詳細は後述する。
【0012】
医用情報処理装置100は、例えばPC(Personal Computer)等のコンピュータであるものとする。具体的には、医用情報処理装置100は、NW(network)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0013】
NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、医用情報処理装置100と電子カルテ保管装置300の間で行われる各種データの伝送および通信を制御する。NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
記憶回路120は、処理回路150に接続されており、処理回路150で使用される各種の情報を予め記憶する。本実施形態においては、記憶回路120は、ガイドラインと、診療実績情報と、仮想患者モデルと、イベント条件情報と、学習済みモデルとを記憶する。
【0015】
本実施形態におけるガイドラインは、医用情報処理装置100が使用される医療機関における診療に適用される医療的なガイドラインと、倫理的なガイドラインとを含む。一例として、ガイドラインは、薬剤の投与量の上限値、複数の手術の種類の各々が適用可能な患者の条件、等の規則である。また、ガイドラインは、医療に関して国が定める各種の規則を踏襲しているものとする。ガイドラインは、本実施形態における所定の条件の一例である。
【0016】
診療実績情報、仮想患者モデル、イベント条件情報、および学習済みモデルについては後述する。
【0017】
記憶回路120は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路120は、記憶部ともいう。
【0018】
入力インタフェース130は、例えば、マウスやキーボード等であり、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。また、医用情報処理装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路150へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。また、ディスプレイ140は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。ディスプレイ140は、本実施形態における画面の一例である。
【0019】
なお、本実施形態においては、医用情報処理装置100の操作者は、医師または医療機関の経営者等とする。
【0020】
処理回路150は、取得機能151と、モデル生成機能152と、表示制御機能153と、受付機能154と、シミュレーション機能155とを備える。取得機能151は、取得部の一例である。モデル生成機能152は、生成部の一例である。表示制御機能153は、表示制御部の一例である。受付機能154は、受付部の一例である。シミュレーション機能155は、シミュレーション部の一例である。
【0021】
取得機能151は、ネットワーク900およびNWインタフェース110を介して、電子カルテ保管装置300から、各種の情報を取得する。例えば、取得機能151は、電子カルテ保管装置300に保存された診療実績情報を取得し、記憶回路120に保存する。
【0022】
また、
図2は、本実施形態に係るモデル生成機能152によって生成される情報について説明する図である。
図2に示すように、モデル生成機能152は、電子カルテ保管装置300から取得された診療実績情報70に基づいて、複数の仮想患者モデル71a~71nと、イベント条件情報72と、学習済みモデル73とを生成する。以下、複数の仮想患者モデル71a~71nを特に区別しない場合には、単に仮想患者モデル71という。
【0023】
学習済みモデル73は、診療行為と検査結果の相関関係を学習した学習済みモデルである。学習済みモデル73は、本実施形態における相関情報の一例である。
【0024】
また、取得機能151は、シミュレーションの実行の際に、後述のモデル生成機能152によって生成された複数の仮想患者モデルと、イベント条件情報と、学習済みモデルとを、記憶回路120から取得する。取得機能151は、取得したこれらの情報を、表示制御機能153およびシミュレーション機能155に送出する。
【0025】
また、
図3は、本実施形態に係るモデル生成機能152によって生成される情報の一例の詳細を示す図である。
【0026】
モデル生成機能152は、電子カルテ保管装置300から取得された診療実績情報70を、患者属性情報に基づいて複数の分類に分け、複数の分類の各々に基づいて複数の仮想患者モデルを生成する。この際、モデル生成機能152は、診療実績情報70のうち、医用情報処理装置100が設置された医療機関における診療が終了した患者の情報を対象とするものとする。
【0027】
患者属性情報は、患者の年齢、性別、傷病名、および、医療機関において当該患者に関連して発生した最後のイベントを対応付けた情報である。また、患者属性情報は、さらに他の情報を含むものとしても良い。
【0028】
ここで、本実施形態における「イベント」とは、医療機関において複数の患者の各々に関連して発生する医療的な事象であり、例えば、入院、退院、転院、または死亡である。また、本実施形態においては、医療機関において複数の患者の各々に関連して発生した最後のイベントを、当該患者の「最終イベント」という。なお、最終イベントは、ゴールともいう。
【0029】
モデル生成機能152は、記憶回路120に記憶された複数の診療実績情報から、患者属性情報が共通する複数の患者の情報を抽出する。モデル生成機能152は、患者属性情報が共通する複数の患者の情報を統計処理することにより、当該患者属性情報に対応する仮想患者モデルを生成する。また、モデル生成機能152は、患者属性情報が完全に同一ではない場合でも、一定以上類似していれば、患者属性情報が共通すると判断しても良い。
【0030】
診療実績情報70は、医療機関において実際に患者に対して提供された診療の実績が記録された情報であり、
図3に示すように、診療行為が実施された時刻と、対象の患者を特定する患者IDと、検査値と、診療行為と、イベント、対象の患者の年齢、性別、傷病名が対応付けられた情報である。なお、診療実績情報70に含まれる情報はこれらに限定されるものではない。
【0031】
また、
図3では検査値の一例として「検査値A」と表示しているが、診療実績情報70には、医療機関で実施される種々の検査に対応する検査値が含まれるものとする。本実施形態においては、検査値は、例えば、脈拍、血圧、体温等のバイタルデータ、または、バイタルデータ以外の各種の検査値とする。また、診療実績情報70は、数値による検査結果だけではなく、CT(Computed Tomography)装置等によって撮像された画像、またはこれらの画像に対する所見を、検査結果として含むものでも良い。
【0032】
仮想患者モデル71は、患者属性情報と、1以上の診療行為と、1以上の医療的なイベントと、1以上の検査結果とが対応付けられた情報である。複数の仮想患者モデル71の各々は、仮想的な患者に関する複数の患者属性情報の各々に対応付けて、記憶回路120に記憶される。仮想患者モデル71は、本実施形態における仮想患者情報の一例である。
【0033】
なお、本実施形態においては、仮想患者モデル71は、データベース形式で診療行為、診療行為の実施時期、イベント、およびイベントの発生時期が対応付けられたものとしても良いし、他の形式で上記のデータが対応付けられたものであっても良い。
【0034】
また、本実施形態における「診療行為」は、医師等による診察および治療を含む行為である。より具体的には、診療行為は、検査、手術、投薬、放射線治療、リハビリ、および経過観察等であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
なお、本実施形態においては、「イベント」と「診療行為」とを異なるものとしているが、「イベント」が「診療行為」を含むものとしても良い。
【0036】
図3では、一例として、診療行為の実施時期およびイベントの発生時期を、イベント「入院」からの経過時間として定義しているが、時間の基準はこれに限定されるものではない。また、
図3に示す仮想患者IDは、個々の仮想患者モデル71を識別する識別情報とする。
【0037】
また、仮想患者モデル71は、さらに、仮想的な患者の状態の変化を表す時系列の情報を含む。
図3に示す例では、仮想患者モデル71は、仮想的な患者の状態の変化を表す検査値と、イベント「入院」からの経過時間とを対応付けた情報を含む。なお、仮想患者モデル71は、さらに、他の検査結果を含むものとしても良い。
【0038】
本実施形態においては、モデル生成機能152は、診療実績情報70のうち、医用情報処理装置100が設置された医療機関における診療が終了した患者の情報を対象とするため、最終イベントは、退院、転院、または死亡のいずれかになるものとする。また、「転院」については、転院先によってさらに細かく分類されても良い。
【0039】
また、モデル生成機能152は、診療実績情報70に基づいて、イベント条件情報72を生成する。
【0040】
イベント条件情報72は、イベントと傷病名の組み合わせ毎に、複数のイベントの各々の発生条件を定義した情報である。例えば、傷病名が「胆管炎症」の場合のイベント「退院」の発生条件、つまり、「胆管炎症」に罹患した患者が退院できる条件は、「検査値A」の検査結果が「89未満」になることである。同じイベントであっても、傷病名によって発生条件は異なる場合があるものとする。また、モデル生成機能152は、傷病名以外の情報によって、さらに複数のイベントの各々の発生条件を詳細に分類しても良い。
【0041】
また、モデル生成機能152は、診療実績情報70に基づいて、複数の仮想患者モデル71の各々における診療行為と複数の仮想的な患者の各々の検査結果との相関関係を学習し、学習済みモデル73を生成する。例えば、モデル生成機能152は、診療行為に対応付けられた時刻と、検査結果に対応付けられた時刻とが所定の時間内である場合に、当該診療行為と当該検査結果とが関連すると判断する。
【0042】
例えば、
図3に示す例では、枠700で囲った「診療行為」“投薬 薬品xx 125ml”の実施時刻と、「検査値A」の検査結果“64”の計測時刻とが、所定の時間内に含まれるものとする。この場合
、モデル生成機能152は、薬品xxを125ml投与した診療行為と、検査値Aが“64”になった検査結果とが関連すると判断するものとする。なお、仮想患者モデル71、イベント条件情報72、および学習済みモデル73の生成の手法はこれに限定されるものではなく、モデル生成機能152は、公知の機械学習または深層学習の手法を採用することができる。
【0043】
モデル生成機能152は、生成した複数の仮想患者モデル71と、イベント条件情報72と、学習済みモデル73とを記憶回路120に保存する。
【0044】
図1に戻り、表示制御機能153は、記憶回路120に保存された複数の仮想患者モデル71の一覧をディスプレイ140に表示する。
【0045】
図4は、本実施形態に係る初期表示画面50の一例を示す図である
。図4に示すように、初期表示画面50は、複数の仮想患者モデル71の一覧を表示する画面である。
【0046】
初期表示画面50の複数の仮想患者モデル71の一覧では、例えば、仮想患者モデル71を特定可能な識別情報と、仮想患者モデル71の概要を表す情報とが表示される。
図4に示す例では、表示制御機能153は、複数の仮想患者モデル71の各々の仮想患者ID、傷病名、入院時の状態、性別、年齢、最終イベント、先進医療の適用の有無等を初期表示画面50に表示する。仮想患者モデル71の概要を表す情報は、医師または病院経営者等が仮想患者モデル71を選択する際の参考となる情報であれば良く、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、表示制御機能153は、後述の受付機能154が操作者によって複数の仮想患者モデル71のうちのいずれかが選択される操作を受け付けた場合に、選択された仮想患者モデル71のシミュレーション画面51を、ディスプレイ140に表示する。本実施形態においては、選択された仮想患者モデル71の内容を表示する画面を、シミュレーション画面51とする。より詳細には、表示制御機能153は、選択された仮想患者モデルに含まれるイベントおよび診療行為を、時系列にディスプレイ140に表示する。
【0048】
図5は、本実施形態に係る仮想患者モデル71のシミュレーション画面51の初期表示の一例を示す図である。初期表示状態においては、操作者による変更の実施前であるため、シミュレーション画面51には、記憶回路120に保存された状態の仮想患者モデル71の内容が表示される。
【0049】
図5に示す例では、表示制御機能153は、仮想患者ID“V00001”に関して発生するイベントと、仮想患者ID“V00001”に対して提供される診療行為と、予測される検査結果とを、イベントの発生時刻、診療行為の実施時期、検査結果の計測時期に基づいて時系列にタイムライン欄91に表示する。
【0050】
図5に示すアイコン901aは、イベント「入院」の発生を表すアイコンであり、アイコン901bは、イベント「退院」の発生を表すアイコンである。仮想患者ID“V00001”の最終イベントは、「退院」であるものとする。以下、いずれかのイベントを表すアイコンを、アイコン901という。
【0051】
また、アイコン902aは、診療行為「投薬」を表すアイコンであり、アイコン902bは、診療行為「経過検査」を表すアイコンである。以下、いずれかの診療行為を表すアイコンを、アイコン902という。
【0052】
また、複数のアイコン903は、各種の検査結果を表すデータへのリンクを示す。後述の受付機能154が操作者によって複数のアイコン903のいずれかが選択される操作を受け付けた場合に、表示制御機能153は、選択されたアイコン903に対応付けられた検査結果をディスプレイ140に表示する。検査結果を表すデータは、例えば、バイタルデータ、電子カルテ、検査結果レポート、撮像画像等である。
【0053】
また、表示制御機能153は、シミュレーションの目的を選択を受け付け可能なリストボックス904を、シミュレーション画面51に表示する。操作者は、リストボックス904を操作してシミュレーションの目的を選択することにより、仮想患者モデル71に対して様々なシミュレーションを実行することができる。
【0054】
シミュレーションの目的としては、例えば、「入院から退院までの期間を短くしたい」等とするが、これに限定されるものではない。なお、表示制御機能153は、リストボックス904を設けずに、「入院から退院までの期間を短くしたい」という目的に特化したシミュレーションを提供する画面を表示しても良い。
【0055】
また、表示制御機能153は、受付機能154が受け付けた操作と、学習済みモデル73と、イベント条件情報72とに基づいて、イベントまたは診療情報の表示を変更する。
【0056】
図6は、本実施形態に係るシミュレーション開始後のシミュレーション画面51の一例を示す図である。
図6に示すシミュレーション画面51は、操作者によって、「入院から退院までの期間を短くしたい」という目的が選択された後の状態とする。
【0057】
本実施形態においては、「入院から退院までの期間を短くしたい」という目的が選択された場合は、後述のシミュレーション機能155によって、イベント「退院」の発生時期が変更対象として特定される。また、シミュレーション機能155によって、イベント「退院」の発生時期に影響を与える診療行為と検査結果とが特定される。
【0058】
表示制御機能153は、変更対象のイベントの発生時期に影響を与える診療行為および検査結果を、シミュレーション画面51に表示する。
図6に示す例では、イベント「退院」の発生時期に影響を与える診療行為は「投薬」であるものとする。この場合、表示制御機能153は、投薬内容表示欄92に、仮想患者ID“V00001”に対する投薬内容の詳細を表示する。
【0059】
投薬内容表示欄92は、操作者が入力操作をすることが可能なエリアであるものとする。例えば、操作者は、投薬期間、投薬量、薬の種別等を変更することができる。また、表示制御機能153は、操作者が診療行為を変更する操作が、シミュレーション機能155によってガイドラインに抵触していると判断された場合に、ディスプレイ140に警告を表示する。
図6に示す例では、表示制御機能153は、警告を表すアイコン905aを、投薬内容表示欄92に表示している。
【0060】
また、
図6に示す例では、イベント「退院」の発生時期に影響を与える検査結果は、バイタルデータの計測結果であるものとする。表示制御機能153は、バイタルデータの計測結果を示すグラフを、検査結果表示欄93に表示する。バイタルデータの計測結果の値は、仮想患者モデル71に検査値として登録された値であるものとする。
【0061】
操作者が診療内容を変更した場合、シミュレーション機能155が検査結果の変化を推定する。表示制御機能153は、シミュレーション機能155の推定結果に基づいて、検査結果の表示を変更する。例えば、
図6に示す例では、表示制御機能153は、変更後のバイタルデータの計測結果を破線で表示している。
【0062】
表示制御機能153は、検査結果の変化が、シミュレーション機能155によって所定の変化量を超えていると判断された場合に、ディスプレイ140に警告を表示する。
図6に示す例では、表示制御機能153は、警告を表すアイコン905bを、検査結果表示欄93に表示している。
【0063】
また、表示制御機能153は、シミュレーション機能155によって推定されたイベントの発生時期に応じて、イベントの表示位置を変化させる。
図6に示す例では、表示制御機能153は、イベント「退院」の表示位置を、発生時期の変化に応じて変更する。また、表示制御機能153は、イベント「退院」の発生時期が早まったことにより、不要となる診療行為や検査結果については、グレーアウトまたは削除するものとする。
【0064】
なお、
図6に示す例では、変更対象のイベントを「退院」としたが、他のイベントが変更対象であっても良い。また、イベントの発生時期のシミュレーションは、発生時期を早めるシミュレーションだけではなく、発生時期を遅くするシミュレーションを含むものとする。
【0065】
ここで、
図1に戻り、受付機能154は、操作者による各種の操作を、入力インタフェース130を介して受け付ける。受付機能154は、受け付けた操作の内容を、表示制御機能153またはシミュレーション機能155に送出する。
【0066】
より詳細には、受付機能154は、初期表示画面50において、操作者が複数の仮想患者モデル71のうちのいずれかを選択する操作を受け付ける。また、受付機能154は、シミュレーション画面51に表示されたイベントまたは診療行為を操作者が変更する操作を受け付ける。また、受付機能154は、操作者がリストボックス904を操作してシミュレーションの目的を選択する操作を受け付ける。また、受付機能154は操作者によるシミュレーション結果の保存の操作を受け付ける。これらの操作は一例であり、受付機能154は、さらに他の操作を受け付けるものとしても良い。
【0067】
シミュレーション機能155は、受付機能154が受け付けた操作者の操作と、仮想患者モデル71と、学習済みモデル73と、イベント条件情報72とに基づいて、診療計画のシミュレーションを実行する。より詳細には、シミュレーション機能155は、診療行為を変更する操作と、学習済みモデル73とに応じて、ディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71の検査結果の変化を推定する。また、シミュレーション機能155は、検査結果がイベントの発生条件を満たす時期を、当該イベントの発生時期と推定する。
【0068】
図7は、本実施形態に係るシミュレーション機能155の処理について説明する図である。シミュレーション機能155は、操作者による仮想患者モデル71の選択に基づいて、記憶回路120に記憶された複数の仮想患者モデル71のうち、シミュレーション対象の仮想患者モデル71を特定する。
【0069】
また、シミュレーション機能155は、操作者によって選択されたシミュレーションの目的に基づいて、発生時期を変化させる対象であるイベントを特定する。目的と、発生時期を変化させる対象であるイベントとの対応関係は、予め定義されているものとする。また、モデル生成機能152が、診療実績情報70に基づいて、目的と、発生時期を変化させる対象であるイベントとの対応関係とを特定するものとしても良い。
【0070】
シミュレーション機能155は、選択された目的に関連するイベントの発生時期に影響を与える診療行為および検査結果を、学習済みモデル73とイベント条件情報72とに基づいて特定する。より詳細には、シミュレーション機能155は、選択された目的に対応付けられたイベントの発生時期に影響を与える診療行為を、イベント条件情報72に基づいて特定する。また、シミュレーション機能155は、学習済みモデル73に基づいて、特定した発生条件に影響する診療行為を特定する。
【0071】
例えば、
図3で説明した例では、仮想患者の傷病名が「胆管炎症」である場合、イベント「退院」が発生可能になるには、「検査値A」の検査結果が「89未満」になることが条件である。この場合、シミュレーション機能155は、学習済みモデル73に基づいて、「検査値A」の検査結果に影響を与える診療行為を特定する。
【0072】
また、シミュレーション機能155は、操作者の操作と、学習済みモデル73とに基づいて、検査結果の変化をシミュレーションする。例えば、シミュレーション機能155は、操作者によって、投薬内容が変更された場合に、変更された投薬内容を学習済みモデル73に入力し、変更後の投薬内容に基づく検査結果を推定する。例えば、シミュレーション機能155は、ある薬剤の投与量が操作者によって変更された場合に、変更後の投与量と学習済みモデル73とに基づいて、仮想患者のバイタルデータの変化を推定する。
【0073】
シミュレーション機能155は、推定した検査結果に基づいて、発生時期を変化させる対象であるイベントのイベント発生条件が満たされる時期を推定する。例えば、発生時期を変化させる対象であるイベントが「退院」である場合、シミュレーション機能155は、検査結果が「退院」のイベント発生条件を満たす時期を、イベント「退院」の発生時期と推定する。
【0074】
シミュレーション機能155は、特定した各種の情報を、表示制御機能153に送出する。より詳細には、シミュレーション機能155は、特定した発生時期を変化させる対象であるイベント、およびイベントの発生時期に影響を与える診療行為と検査結果とを、表示制御機能153に送出する。
【0075】
また、シミュレーション機能155は、検査結果のシミュレーション結果、および、推定したイベント発生時期を、表示制御機能153に送出する。
【0076】
また、シミュレーション機能155は、受付機能154が操作者によるシミュレーション結果の保存の操作を受け付けた場合に、変更後の仮想患者モデル71を、記憶回路120に保存する。医師等の目的に応じて変更された仮想患者モデル71は、例えば、当該医師等が所属する医療機関における基準診療計画として活用可能である。
【0077】
また、シミュレーション機能155は、操作によって変更された診療行為の内容が、ガイドラインに抵触しているか否かを判断する。例えば、シミュレーション機能155は、操作者が入力した投薬の投与量が、記憶回路120に記憶されたガイドラインに定義された上限量を超えている場合、ガイドラインに抵触していると判断する。シミュレーション機能155は、操作者が診療行為を変更する操作がガイドラインに抵触していると判断した場合、表示制御機能153に通知する。
【0078】
また、シミュレーション機能155は、操作者による診療行為を変更する操作に基づく検査結果の変化、例えばバイタルデータの変化が、所定の変化量を超えているか否かを判断する。例えば、シミュレーション機能155は、所定の変化量は、例えば、患者に生理学上の悪影響を及ぼす可能性がある変化量とする。判断の基準となる所定の変化量は、患者属性情報によって異なるものとする。シミュレーション機能155は、検査結果の変化が、所定の変化量を超えていると判断した場合、表示制御機能153に通知する。
【0079】
また、判断基準は変化量に限定されるものではない。例えば、シミュレーション機能155は、変化後の検査結果が正常範囲に含まれるか否かに基づいて、操作者による診療行為を変更する操作による検査結果の変化が、患者に生理学上の悪影響を及ぼす可能性があるか否かを判断しても良い。
【0080】
ここで、例えば、処理回路150の構成要素である取得機能151と、モデル生成機能152と、表示制御機能153と、受付機能154と、シミュレーション機能155は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶されている。処理回路150は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。なお、
図1においては、単一の処理回路150にて、取得機能151、モデル生成機能152、表示制御機能153、受付機能154、およびシミュレーション機能155の各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても良い。
【0081】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0082】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、CD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されても良い。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供または配布されても良い。
【0083】
次に、本実施形態に係る医用情報処理装置100で実行される処理の流れについて説明する。
【0084】
図8は、本実施形態に係る仮想患者モデル71のシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理の開始前に、モデル生成機能152は、電子カルテ保管装置300から取得された診療実績情報70に基づいて、複数の仮想患者モデル71と、イベント条件情報72と、学習済みモデル73とを生成し、記憶回路120に保存しているものとする。
【0085】
当該処理が開始された場合に、取得機能151は、記憶回路120から複数の仮想患者モデル71を取得し、表示制御機能153に送出する。表示制御機能153は、複数の仮想患者モデル71の一覧を、初期表示画面50としてディスプレイ140に表示する(S1)。
【0086】
そして、受付機能154は、初期表示画面50において、いずれかの仮想患者モデル71の選択を受け付けたか否かを判断する(S2)。受付機能154は、仮想患者モデル71の選択を受け付けていないと判断した場合(S2“No”)、S2の処理を繰り返す。
【0087】
また、受付機能154は、仮想患者モデル71の選択を受け付けたと判断した場合(S2“Yes”)、選択された仮想患者モデル71を特定する情報を、表示制御機能153に送出する。この場合、表示制御機能153は、選択された仮想患者モデル71のシミュレーション画面51を、初期表示状態でディスプレイ140に表示する(S3)。また、取得機能151は、選択された仮想患者モデル71と、イベント条件情報72と、学習済みモデル73とを記憶回路120から取得し、シミュレーション機能155に送出する。
【0088】
そして、受付機能154は、シミュレーションの目的の選択を受け付けたか否かを判断する(S4)。受付機能154は、シミュレーションの目的の選択を受け付けていないと判断した場合(S4“No”)、S4の処理を繰り返す。
【0089】
また、受付機能154は、シミュレーションの目的の選択を受け付けたと判断した場合(S4“Yes”)、選択された目的を特定する情報を、シミュレーション機能155に送出する。この場合、シミュレーション機能155は、選択された目的に応じて、移動対象のイベントを特定する(S5)。
【0090】
次に、シミュレーション機能155は、移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える診療行為と検査結果を特定する(S6)。具体的には、シミュレーション機能155は、記憶回路120に記憶されたイベント条件情報72に基づいて、発生時期を変化させる対象であるイベントの発生条件を特定する。また、シミュレーション機能155は、学習済みモデル73に基づいて、特定した発生条件に影響する診療行為を特定する。そして、シミュレーション機能155は、移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える診療行為と検査結果とを、表示制御機能153に送出する。
【0091】
そして、表示制御機能153は、移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える診療行為と検査結果を、シミュレーション画面51に表示する(S7)。
【0092】
図6に示した例では、イベント「退院」の発生時期に影響を与える診療行為は「投薬」であるため、表示制御機能153は、投薬について表示する投薬内容表示欄92を、シミュレーション画面51に表示する。また、表示制御機能153は、イベント「退院」の発生時期に影響を与えるバイタルデータの検査結果を表す検査結果表示欄93を、シミュレーション画面51に表示する。なお、移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える診療行為または検査結果が複数存在する場合は、表示制御機能153は、複数の表示欄をシミュレーション画面51上に設けるものとしても良い。また、仮想患者に投薬される薬剤のうち、特に移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える薬剤がシミュレーション機能155によって特定されている場合は、表示制御機能153は、当該薬剤を強調して、投薬内容表示欄92に表示しても良い。
【0093】
次に、受付機能154は、診療行為の変更を受け付けたか否かを判断する(S8)。受付機能154は、診療行為の変更を受け付けていないと判断した場合(S8“No”)、S8の処理を繰り返す。
【0094】
また、受付機能154は、診療行為の変更を受け付けたと判断した場合(S8“Yes”)、診療行為の変更内容を、シミュレーション機能155に送出する。この場合、シミュレーション機能155は、診療行為の変更内容が、ガイドラインに抵触するか否かを判断する(S9)。
【0095】
シミュレーション機能155は、診療行為の変更内容が、ガイドラインに抵触すると判断した場合(S9“Yes”)、表示制御機能153に通知する。この場合、表示制御機能153は、シミュレーション画面51に、警告を表示する(S10)。
図6に示した例では、表示制御機能153は、シミュレーション画面51の投薬内容表示欄92に、警告を表すアイコン905aを表示している。
【0096】
また、シミュレーション機能155は、診療行為の変更内容が、ガイドラインに抵触しないと判断した場合(S9“No”)、S11の処理に進む。そして、シミュレーション機能155は、変更後の診療行為の内容と、学習済みモデル73とに応じて、検査結果の変化を推定する(S11)。
【0097】
また、このフローチャートでは、一例として、シミュレーション機能155は、診療行為の変更内容が、ガイドラインに抵触すると判断した場合にも、S11の処理を実行するものとする。なお、シミュレーション機能155は、診療行為の変更内容が、ガイドラインに抵触すると判断した場合には、当該変更を受け付けないものとしても良い。
【0098】
そして、シミュレーション機能155は、推定した検査結果の変化に基づいて、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が、患者に悪影響を与える可能性があるか否かを判断する(S12)。例えば、シミュレーション機能155は、検査結果の変化量が、所定の変化量を超えている場合に、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が患者に悪影響を与える可能性があると判断する。
【0099】
シミュレーション機能155は、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が患者に悪影響を与える可能性があると判断した場合(S12“Yes”)、表示制御機能153に通知する。この場合、表示制御機能153は、シミュレーション画面51に、警告を表示する(S13)。
図6に示した例では、表示制御機能153は、シミュレーション画面51の検査結果表示欄93に、警告を表すアイコン905bを表示している。
【0100】
また、シミュレーション機能155は、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が患者に悪影響を与える可能性がないと判断した場合(S12“No”)、S14の処理に進む。そして、シミュレーション機能155は、変更後の検査結果が、移動対象のイベントのイベント発生条件を満たす時期を特定する(S14)。
図6に示した例では、投薬内容の変更に伴うバイタルデータの変化によって、入院から15週間目の時点で、バイタルデータの検査結果が、イベント「退院」の発生条件を満たすようになっている。この場合、シミュレーション機能155は、入院から15週間目を、変更後のイベント発生時期として推定する。シミュレーション機能155は、推定したイベント発生時期を、表示制御機能153に送出する。
【0101】
また、このフローチャートでは、一例として、シミュレーション機能155は、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が患者に悪影響を与える可能性があると判断した場合にも、S11の処理を実行するものとする。なお、シミュレーション機能155は、診療行為の変更に伴う検査結果の変化が患者に悪影響を与える可能性があると判断した場合には、当該変更を受け付けないものとしても良い。
【0102】
また、シミュレーション機能155は、移動対象のイベントの表示位置を移動する(S15)。
図6に示した例では、初期表示状態では入院から17週間目に対応する表示位置に位置していた「退院」を表すアイコン901bが、入院から15週間目に対応する表示位置に移動している。
【0103】
そして、受付機能154は、シミュレーション結果の保存操作を受け付けたか否かを判断する(S16)。受付機能154は、シミュレーション結果の保存操作を受け付けていないと判断した場合(S16“No”)、S16の処理を繰り返す。また、受付機能154は、シミュレーション結果の保存操作を受け付けたと判断した場合(S16“Yes”)、シミュレーション機能155に当該操作を受け付けたことを通知する。
【0104】
そして、シミュレーション機能155は、受付機能154が操作者によるシミュレーション結果の保存の操作を受け付けた場合に、シミュレーション結果を、変更後の仮想患者モデル71として、記憶回路120に保存する(S17)。シミュレーション機能155がシミュレーション結果を保存することにより、医療機関における新たな診療モデルが定義される。
【0105】
このように、本実施形態の医用情報処理装置100は、複数の仮想患者モデル71のうち、選択された仮想患者モデル71に対応付けられたイベントおよび診療行為を、イベントの実施時期または診療行為の発生時期に基づいて時系列にディスプレイ140に表示する。本実施形態の医用情報処理装置100は、仮想患者モデル71に対応付けられたイベントおよび診療行為を時系列に表示することにより、表示された仮想患者モデル71の患者属性情報に当てはまる患者が、最終イベントに到達するまでに受ける診療の過程を容易に把握することができる。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、患者が最終イベントに到達するまでに経る過程の検証または改善をすることを支援することができる。
【0106】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、イベントまたは診療行為を変更する操作と、学習済みモデル73と、イベント条件情報72とに基づいて、イベントまたは診療情報の表示を変更する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、診療行為を変更することにより、イベントの発生時期を容易にシミュレーションすることができる。
【0107】
例えば、医療機関の経営者が、病床の回転率を向上させるために最終イベント「退院」の発生時期をシミュレーションする際に、本実施形態の医用情報処理装置100を使用することができる。本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医療機関の経営者が、診療行為を変更して最終イベント「退院」の発生時期をシミュレーションすることで、最終イベント「退院」の発生時期を早めるために有効な診療行為を、容易に検証することができる。また、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、診療行為の変更によって推定される結果を可視化できるため、複数の医師が、診療方針について検討をするカンファレンス等の場面においても、効率的な検討を支援することができる。
【0108】
また、例えば、目標とするイベントの発生時期が医師等によって指定される場合、当該発生時期に合わせてコンピュータ等が推定する診療行為は、必ずしも、当該シミュレーションを実行した医師等が実施可能な診療行為とは限らない。これに対して、本実施形態の医用情報処理装置100は、医師等による操作を受け付けた結果に応じてイベントの発生時期をシミュレーションするため、医師等が実際に実施可能な診療行為に基づくイベントの発生時期をシミュレーションすることができる。
【0109】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、診療行為を変更する操作と、学習済みモデル73とに応じて、ディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71の検査結果の変化を推定する。また、本実施形態の医用情報処理装置100は、検査結果がイベントの発生条件を満たす時期を、当該イベントの発生時期と推定する。例えば、本実施形態の医用情報処理装置100は、仮想患者の検査結果が仮想患者の退院が可能な状態になる時期を、イベント「退院」の発生時期として推定する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、退院不可能な状態の患者を退院させる等の、医療機関において実施不可能な診療計画を提案することを低減することができる。
【0110】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、操作によって変更された診療行為の内容が、ガイドラインに抵触していると判断した場合に、ディスプレイ140に警告を表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、診療行為を変更する操作が、医療的または倫理的な条件を満たしていない場合ことを、操作者に通知することができる。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、医療的または倫理的な条件を満たしていない診療計画を作成することを、低減することができる。
【0111】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、診療行為を変更する操作による検査結果の変化が、所定の変化量を超えていると判断した場合に、ディスプレイ140に警告を表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、患者の状態に悪影響を与える可能性のある診療計画を作成することを、低減することができる。
【0112】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、選択されたシミュレーションの目的に関連するイベントの発生時期に影響を与える診療行為および検査結果を、学習済みモデル73およびイベント条件情報72に基づいて特定し、特定した診療行為および検査結果をディスプレイ140に表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、目的に応じて変更すべき診療行為を容易に把握することができるため、効率的にシミュレーションを実施することができる。
【0113】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、医療機関において実際に複数の患者に対して提供された診療行為の実績を示す複数の診療実績情報のうち、患者の年齢、性別、傷病名、および最終イベントが共通する診療実績情報に基づいて仮想患者モデル71を生成する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医療機関における複数の患者属性情報の各々の過去の典型的な診療過程を、仮想患者モデル71として可視化することができる。
【0114】
なお、本実施形態においては、医用情報処理装置100がイベント条件情報72、および学習済みモデル73を生成するものとしたが、イベント条件情報72、および学習済みモデル73は、外部装置で生成されるものとしても良い。また、この場合、医用情報処理装置100は、モデル生成機能152を有さないものとしても良い。また、取得機能151は、外部装置から、イベント条件情報72、および学習済みモデル73を取得するものとしても良い。
【0115】
また、シミュレーション機能155が診療行為の変更によるイベントの発生時期の変化を推定する手法は、本実施形態に記載した例に限定されるものではなく、種々のAI(Artificial Intelligence)技術を適用可能である。AIで使用される各種のモデルは、医用情報処理装置100が生成するものとしても良いし、外部装置から取得されるものとしても良い。また、本実施形態では、シミュレーション機能155が診療行為の変更によるイベントの発生時期の変化を推定するものとしたが、当該機能は、表示制御機能153によって実現されても良い。例えば、表示制御機能153は、学習済みモデル73または種々のAIによって、診療行為の変更によるイベントの発生時期の変化を推定し、推定したイベントの発生時期に応じて、イベントの表示位置を変化させても良い。
【0116】
また、本実施形態における学習済みモデル73は、ユーザのフィードバックを取得することにより、学習済みモデルの内部アルゴリズムを更に更新する「自己学習するモデル」であっても良い。また、本実施形態に記憶回路120に記憶された学習済みモデル73が、取得機能151またはシミュレーション機能155によって読み込まれるものとしたが、学習済みモデル73が処理回路150中に組み込まれている構成を採用しても良い。
【0117】
また、本実施形態において取得機能151が実行するとした処理は、モデル生成機能152、表示制御機能153、またはシミュレーション機能155のいずれかが実行するものとしても良い。
【0118】
なお、本実施形態においては、仮想患者モデル71は、シミュレーションが実行される医療機関における過去の診療実績情報に基づくものとしたが、他の医療機関における診療実績情報、または治験等の結果等に基づくものであっても良い。
【0119】
また、本実施形態においては、仮想患者モデル71と、学習済みモデル73とは別々のものとして説明したが、仮想患者モデル71が、学習済みモデル73を含むものとしても良い。また、本実施形態においては、医用情報処理装置100は、ディスプレイ140に、シミュレーション画面51等を表示するものとしたが、医用情報処理装置100は、医用情報処理装置100とネットワーク等で接続する他の情報処理装置のディスプレイに、シミュレーション画面51等を表示するものとしても良い。他の情報処理装置は、例えば、PC(Personal Computer)またはモバイル端末等であるものとする。この場合、他の情報処理装置のディスプレイが、画面の一例となる。
【0120】
なお、本実施形態においては、表示制御機能153は、シミュレーション画面51の初期表示においては、投薬内容表示欄92と検査結果表示欄93とは表示しないものとしたが、初期表示状態から、これらを表示するものとしても良い。
【0121】
また、上述のシミュレーション画面51の表示は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、表示制御機能153は、保険適用外の高額な診療行為、例えば先進医療については、タイムライン欄91または投薬内容表示欄92等に、保険適用外であることを表示しても良い。保険適用外の高額な診療行為の有無によって、「退院」等のイベントの発生時期が変化する場合がある。しかしながら、患者によってこのような高額な診療行為を希望する場合と、しない場合がある。表示制御機能153は、タイムライン欄91または投薬内容表示欄92等に、診療行為が保険適用外か否かを表示することにより、予算異なる患者を対象とする複数の診療計画の作成を容易にすることができる。
【0122】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、医用情報処理装置100は、イベントの発生時期を変化させるシミュレーションを実行したが、この第2の実施形態においては、医用情報処理装置100は、さらに、仮想患者モデル71に新たなイベントを追加するシミュレーション、または、既存のイベントを他のイベントに差し替えるシミュレーションを実行する。
【0123】
本実施形態に係る医用情報処理システムSおよび医用情報処理装置100の構成は、第1の実施形態と同様であるものとする。
【0124】
本実施形態の医用情報処理装置100の処理回路150は、第1の実施形態と同様に、取得機能151と、モデル生成機能152と、表示制御機能153と、受付機能154と、シミュレーション機能155とを備える。本実施形態の取得機能151およびモデル生成機能152は、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0125】
本実施形態の受付機能154は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、操作者によって選択されてディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71のタイムライン欄91に、新たなイベントを追加する操作を受け付ける。受付機能154は、操作者によって追加されたイベントを、表示制御機能153およびシミュレーション機能155に通知する。
【0126】
また、本実施形態においては、受付機能154は、仮想患者モデル71に含まれる最終イベントを変更することを目的として選択する操作を受け付ける。受付機能154は、当該目的を受け付けた場合に、シミュレーション機能155に通知する。
【0127】
本実施形態の表示制御機能153は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、選択された目的に応じて、追加可能な1以上のイベントの候補をディスプレイ140上に表示する。追加可能な1以上のイベントは、既に表示されているいずれかのイベントと差し替えられるイベントでも良いし、新たに追加されるイベントでも良い。例えば、表示制御機能153は、受付機能154が、最終イベントを変更することを目的として選択する操作を受け付けた場合に、最終イベントと差替え可能な1以上の他のイベントを、差替え可能なイベントの候補としてディスプレイ140上に表示する。例えば、表示制御機能153は、操作者が右クリックした場合に、追加または差し替え可能な1以上のイベントの名称を表示しても良い。
【0128】
追加または差し替え可能な1以上のイベントの候補の表示は、操作者に対する示唆であり、自動的にイベントを追加する機能ではないものとする。また、表示制御機能153が候補として表示したイベント以外のイベントを、操作者が手動で入力可能であるものとしても良い。
【0129】
また、表示制御機能153は、操作者の操作によってイベントが追加された場合、追加されたイベントを、ディスプレイ140に表示する。この場合、表示制御機能153は、
シミュレーション機能155によって推定された発生時期に基づいて、タイムライン欄91におけるイベントを表すアイコン901の表示位置を決定する。
【0130】
本実施形態のシミュレーション機能155は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、選択された目的に応じて、仮想患者モデル71に対して新たに追加可能な1以上のイベントを特定する。また、シミュレーション機能155は、選択された目的に応じて、タイムライン欄91に表示されているイベントと差替え可能な1以上のイベントを特定する。
【0131】
また、シミュレーション機能155は、選択された目的に応じて、仮想患者モデル71から削除可能な1以上のイベントを特定しても良い。目的と、追加、差し替え、または削除可能なイベントとの対応関係は、予め定義されているものとする。例えば、モデル生成機能152が、診療実績情報70に基づいて、目的と、追加または削除可能なイベントとの対応関係とを特定し、特定結果を記憶回路120に保存しても良い。
【0132】
また、シミュレーション機能155は、操作者によって選択された仮想患者モデル71に含まれる検査結果が、追加または差し替えされたイベントの発生条件を満たす時期を、追加または差し替えされたイベントの発生時期として推定する。
【0133】
シミュレーション機能155は、追加または差替え可能なイベントを、表示制御機能153に送出する。また、追加または差し替えされたイベントの発生時期の推定結果を、表示制御機能153に送出する。
【0134】
図9は、本実施形態に係るシミュレーション画面51の一例を示す図である。
図9に示す例では、シミュレーションの目的として「死亡イベントを回避したい」という目的が選択されている。また、
図9に示す例では、シミュレーション画面51に表示されている仮想患者モデル71の最終イベントは「死亡」である。この場合、操作者が「死亡イベントを回避したい」という目的を選択する操作は、仮想患者モデル71に対応付けられた最終イベントを変更することを目的として選択する操作である。
【0135】
図9に示す例では、シミュレーション機能155は、イベント「死亡」と差替え可能なイベントを推定する。例えば、シミュレーション機能155は、「ホスピスに転院」というイベントが、「死亡」と差替え可能であるものと推定する。差替え可能なイベントは、仮想患者モデル71によって異なり、患者が回復する可能性がある場合は、イベント「退院」がイベント「死亡」と差替え可能である。
【0136】
また、シミュレーション機能155は、追加または差替え可能なイベントの前提となる他のイベントがあるか否かを特定する。各イベントの前提となるイベントは、例えば、イベント条件情報72に登録されているものとする。あるいは、各イベントの前提となるイベントは、ガイドラインで規定されていても良い。一例として、「ホスピスに転院」の前提となるイベントは、「患者説明」であるものとする。これは、ホスピスへの転院には、患者または患者の家族の同意が必要となるためである。
【0137】
図10は、本実施形態に係るイベント追加後のシミュレーション画面51の一例を示す図である。
図10においては、表示制御機能153は、イベント「死亡」を表示しているが、イベント「死亡」を削除した上で、「患者説明」および「ホスピスに転院」を追加しても良い。また、「患者説明」以降に予定されていた診療行為は不要となるため、表示制御機能153は、「患者説明」後の診療行為を表すアイコン902cと、検査結果を表す複数のアイコン903とを、グレーアウトまたは削除する。
【0138】
また、
図10に示す例では、入院から所定の期間tが経過していること、および、アイコン902aに表される「投薬」と、アイコン902bに表される「検査」とが実施済みであることが、イベント「患者説明」のイベント発生条件であるものとする。この場合、表示制御機能153は、タイムライン欄91の、所定の期間tが経過した後の表示位置にイベント「患者説明」を表すアイコン901dを表示する。そして、表示制御機能153は、イベント「患者説明」よりも後の時期に、イベント「ホスピスに転院」を表すアイコン901eを表示する。
【0139】
次に、本実施形態に係る医用情報処理装置100で実行される処理の流れについて説明する。
【0140】
図11は、本実施形態に係る仮想患者モデル71のシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。S21の仮想患者モデル71の一覧の表示から、S24のシミュレーションの目的の選択を受け付けの有無の判断の処理までは、第1の実施形態のS1~S24と同様である。
【0141】
本実施形態のシミュレーション機能155は、選択された目的に応じて、移動対象のイベントを特定、または、追加または差し替え可能なイベントを特定する(S25)。
【0142】
そして、表示制御機能153は、追加または差し替え可能なイベントの候補を、シミュレーション画面51に表示する(S26)。例えば、表示制御機能153は、操作者がタイムライン欄91上で右クリックしたことを受付機能154が受け付けた場合に、追加または差し替え可能なイベントの候補を表示しても良い。
【0143】
そして、受付機能154は、イベントの追加または差し替えの操作を受け付けたか否かを判断する(S27)。受付機能154は、イベントの追加または差し替えの操作を受け付けていないと判断した場合(S27“No”)、S27の処理を繰り返す。
【0144】
受付機能154がイベントの追加または差し替えの操作を受け付けたと判断した場合(S27“Yes”)、シミュレーション機能155は、追加または差し替えられたイベントが発生条件を満たす時期を、発生時期として特定する(S28)。
【0145】
そして、表示制御機能153は、追加または差し替えられたイベントを、特定された発生時期に基づく表示位置で、タイムライン欄91に表示する(S29)。S30の移動対象のイベントの発生時期の変化に影響を与える診療行為と検査項目を特定する処理から、S41のシミュレーション結果の保存の処理までは、第1の実施形態のS6~S17と同様である。なお、シミュレーションの目的がイベントの発生時期の移動ではない場合は、イベントの発生時期の移動に関する処理は、実行されないものとしても良い。
【0146】
このように、本実施形態の医用情報処理装置100は、新たなイベントが追加された場合に、操作者によって選択された仮想患者モデル71に含まれる検査結果が、追加されたイベントの発生条件を満たす時期を発生時期として推定し、追加されたイベントを、推定された発生時期に基づく表示位置に表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、第1の実施形態の効果に加えて、医師等が追加を希望するイベントを、適切な時期に実施する診療計画を作成することができる。
【0147】
また、本実施形態の医用情報処理装置100は、ディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71に対応付けられた最終イベントを変更することを、シミュレーションの目的として選択する操作を受け付けた場合に、最終イベントと差替え可能な1以上の他のイベントを特定し、差替え可能なイベントの候補として表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、医師等が、過去の診療実績に基づく仮想患者モデル71の最終イベントを変更するための診療計画を検討することを支援することができる。
【0148】
例えば、医療機関の経営者等が、当該医療機関における死亡率を低下させることを希望する場合がある。このような場合に、医用情報処理装置100によれば、最終イベント「死亡」と差替え可能な他のイベントを提示することにより、医療機関における死亡率の引き下げに寄与することができる。
【0149】
(第3の実施形態)
上述の第1、第2の実施形態では、医用情報処理装置100は、シミュレーション画面51に、イベントと、診療行為、および検査結果を表示していたが、この第3の実施形態では、さらに、診療期間における財務指標を表示する。
【0150】
本実施形態に係る医用情報処理システムSおよび医用情報処理装置100の構成は、第1の実施形態と同様であるものとする。
【0151】
本実施形態の医用情報処理装置100の処理回路150は、第1の実施形態と同様に、取得機能151と、モデル生成機能152と、表示制御機能153と、受付機能154と、シミュレーション機能155とを備える。本実施形態の取得機能151およびモデル生成機能152は、第1の実施形態と同様の機能を備える。また、本実施形態の受付機能154は、第2の実施形態と同様の機能を備える。
【0152】
本実施形態の表示制御機能153は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、ディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71に対応する財務指標を、ディスプレイ140に表示する。財務指標は、例えば、利益率、費用、売上等とするが、これらに限定されるものではない。
【0153】
また、本実施形態のシミュレーション機能155は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、仮想患者モデル71に対応する財務指標を算出する。例えば、記憶回路120に、診療行為ごとの診療点数や、人件費等の会計情報が保存されているものとする。シミュレーション機能155は、これらの会計情報に基づいて、仮想患者が入院してから、最終イベントに到達するまでの期間における財務指標の値を算出する。
【0154】
図12は、本実施形態に係るシミュレーション画面51の一例を示す図である。例えば、
図12に示すように、シミュレーションの目的として、「利益率を改善したい」という目的が設定されている場合、表示制御機能153は、シミュレーション機能155によって算出された利益率の時系列の推移を示すグラフを、タイムライン欄91上に表示する。
【0155】
図12に示すように、リハビリが続く期間においては、利益率が低迷する場合がある。このような場合に、タイムライン欄91上で、操作者が、新たなイベント「リハビリ施設に転院」等を追加する操作をした場合、受付機能154は、当該操作を受け付け、追加されたイベントを、表示制御機能153およびシミュレーション機能155に送出する。
【0156】
シミュレーション機能155は、仮想患者モデル71の検査結果が、追加されたイベントのイベント発生条件を満たす時期を推定し、推定した時期を、追加されたイベントの発生時期とする。また、シミュレーション機能155は、イベントの追加による財務指標の変化を算出する。
【0157】
表示制御機能153は、追加されたイベントを、タイムライン欄91の当該イベントの発生時期に基づく表示位置に表示する。また、表示制御機能153は、新たなイベント「リハビリ施設に転院」の追加によって不要になったイベント、診療行為および検査結果を、グレーアウトまたは削除する。また、表示制御機能153は、イベントの追加による財務指標の変化に応じて、タイムライン欄91上の財務指標の時系列の推移を示すグラフを変更する。
【0158】
また、シミュレーション機能155は、会計情報に基づいて、財務指標の改善に寄与するイベントを特定するものとしても良い。また、シミュレーション機能155は、財務指標の改善に寄与する診療行為を特定しても良い。この場合は、表示制御機能153は、財務指標の改善に寄与するイベントを、追加可能なイベントの候補として表示する。また、表示制御機能153は、財務指標の改善に寄与する診療行為を投薬内容表示欄92等に表示しても良い。
【0159】
このように、本実施形態の医用情報処理装置100は、ディスプレイ140に表示された仮想患者モデル71に対応する財務指標を、ディスプレイ140に表示する。このため、本実施形態の医用情報処理装置100によれば、第1の実施形態の効果に加えて、医療機関の経営者等が、財務指標を改善するためのシミュレーションを容易に実行することができる。
【0160】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医師等が、患者が最終的な医療イベントに到達するまでに経る過程の検証または改善をすることを支援することができる。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0162】
51 シミュレーション画面
70 診療実績情報
71,71a~71n 仮想患者モデル
72 イベント条件情報
73 学習済みモデル
91 タイムライン欄
92 投薬内容表示欄
93 検査結果表示欄
100 医用情報処理装置
120 記憶回路
140 ディスプレイ
150 処理回路
151 取得機能
152 モデル生成機能
153 表示制御機能
154 受付機能
155 シミュレーション機能
300 電子カルテ保管装置