(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】放射線検出器、及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
A61B6/03 350G
A61B6/03 320R
(21)【出願番号】P 2019095084
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中井 宏章
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-093418(JP,A)
【文献】特開2016-154847(JP,A)
【文献】特開2001-346790(JP,A)
【文献】特開平10-071141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01T 1/00 - 7/12
H04N 5/30 - 5/325
H04N 25/00 -25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極から構成され、放射線を検出するセンサと、
前記電極からで出力される信号に基づいて、デジタルデータを出力する電子回路と、
前記電極ごとに、前記電極と前記電子回路との間に設けられるスイッチと、
前記複数の電極と散乱線除去グリッドとの位置関係
と、前記スイッチの制御対象となる電極を含む前記センサからの信号の出力とに基づいて、前記スイッチを制御する制御部と、
を備える放射線検出器。
【請求項2】
前記制御部は、放射線の焦点位置に対する前記センサ及び前記散乱線除去グリッドの位置関係に基づいて、前記スイッチを制御する、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記センサは、前記複数の電極として、第1電極と、前記第1電極より小さい第2電極とを有し、
前記制御部は、前記位置関係に基づいて、前記第2電極に接続されるスイッチを制御する、
請求項1
又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記第2電極は、複数の前記第1電極の間に複数設けられる、
請求項
3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記第2電極は、前記スイッチへ接続される接合部を有し、
隣り合う2つの前記第2電極の前記接合部は、前記散乱線除去グリッドにおける複数の遮蔽板の配列方向とは異なる方向にずれて配置される、
請求項
3又は4に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記制御部は、それぞれの前記センサに含まれる前記第1電極及び前記第2電極から出力される信号を共通の前記電子回路へ出力させることで、前記第1電極及び前記第2電極からそれぞれ出力された信号を束ねる、
請求項
3~5のいずれか一つに記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記センサは、均一な大きさを有する前記複数の電極を有する、
請求項1
又は2に記載の放射線検出器。
【請求項8】
熱電子を放射するフィラメントと、
前記熱電子を受けてX線を発生するターゲットと、
前記フィラメントから放射される前記熱電子のターゲットに対する照射位置を制御することで、前記X線の焦点を変更する焦点制御部と、
複数の電極から構成され、放射線を検出するセンサと、
前記電極からで出力される信号に基づいて、デジタルデータを出力する電子回路と、
前記電極ごとに、前記電極と前記電子回路との間に設けられるスイッチと、
前記焦点制御部によって変更される前記X線の焦点位置に対する前記センサ及び散乱線除去グリッドの位置関係
と、前記スイッチの制御対象となる電極を含む前記センサからの信号の出力とに基づいて、前記スイッチを制御する制御部と、
を備えるX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器、及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出器において、検出器モジュールとコリメータとの間の位置ずれ(ミスアライメント)の影響を低減するために、各種の技術が提案されている。例えば、ミスアライメントの程度(ずれ量)を計測し、ずれ量に応じて検出信号を補正した上で画像を再構成する技術などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ミスアライメントの影響を低減することができる放射線検出器、及びX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る放射線検出器は、センサと、電子回路と、スイッチと、制御部とを備える。センサは、複数の電極から構成され、放射線を検出する。電子回路は、前記電極からで出力される信号に基づいて、デジタルデータを出力する。スイッチは、前記電極ごとに、前記電極と前記電子回路との間に設けられる。制御部は、前記複数の電極と散乱線除去グリッドとの位置関係に基づいて、前記スイッチを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係るミスアライメントについて説明するための図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係るミスアライメントについて説明するための図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図3C】
図3Cは、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る電極のスイッチ制御を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の変形例1に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の変形例2に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の変形例3に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る制御回路の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係る放射線検出器、及びX線CT装置を説明する。なお、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0008】
なお、以下の実施形態では一例として、X線検出器について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ガンマ線等を検出する放射線検出器においても、
以下の実施形態を適用可能である。
【0009】
また、以下の実施形態では一例として、フォトンカウンティングCTを実行可能なX線CT装置について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、積分型(電流モード計測方式)の検出器を備えるX線CT装置や、ガンマ線等を検出する放射線検出器を備えた放射線診断装置においても、以下の実施形態を適用可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0011】
ここで、
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図1は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0012】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、X線絞り17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。
【0013】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0014】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、X線絞り17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0015】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0016】
X線絞り17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、X線絞り17は、前置コリメータと呼ばれる場合もある。また、
図2においては、X線管11とX線絞り17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にX線絞り17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、X線絞り17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0017】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0018】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0019】
X線検出器12は、X線光子が入射するごとに、当該X線光子のエネルギー値を計測可能な信号を出力する。X線光子は、例えば、X線管11から照射され被検体Pを透過したX線光子である。X線検出器12は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する複数の検出素子を有する。電気信号(パルス)の数を計数することで、各検出素子に入射したX線光子の数を計数することが可能である。また、この信号に対して、所定の演算処理を行なうことで、当該信号の出力を引き起こしたX線光子のエネルギー値を計測することができる。なお、X線検出器12のX線の入射面側には、散乱X線を低減させるためにコリメータが設置される。コリメータは、散乱線除去グリッド又は後置コリメータと呼ばれる場合もある。
【0020】
上記した検出素子は、複数の電極から構成され、放射線を検出するセンサである。例えば、検出素子は、CdTe(テルル化カドミウム:cadmium telluride)やCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛:cadmium Zinc telluride)などの半導体検出素子に電極が配置されたものである。すなわち、X線検出器12は、入射したX線光子を、直接、電気信号に変換する直接変換型の検出器である。なお、本実施形態は、直接変換型の検出器に限らず、シンチレータと光検出器を組み合わせた間接変換型の検出器にも適用可能である。
【0021】
X線検出器12は、上記した検出素子と、検出素子に接続されて、検出素子が検出したX線光子を計数するASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを複数有する。ASICは、検出素子が出力した個々の電荷量に比例した高さを有する電気パルスを波高弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASICは、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。さらに、ASICは、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。
【0022】
DAS18は、X線検出器12から入力された計数処理の結果に基づいて検出データを生成する。検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムは、X線管11の各位置において各検出素子に入射した計数処理の結果を並べたデータである。サイノグラムは、ビュー方向及びチャンネル方向を軸とする2次元直交座標系に、計数処理の結果を並べたデータである。DAS18は、例えば、X線検出器12におけるスライス方向の列単位で、サイノグラムを生成する。ここで、計数処理の結果は、エネルギービンごとのX線の光子数を割り当てたデータである。例えば、DAS18は、X線管11から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)を計数し、当該計数したX線光子のエネルギーを弁別して計数処理の結果とする。DAS18は、生成した検出データをコンソール装置40へ転送する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0023】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。
図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0024】
寝台装置30は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0025】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0026】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0027】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0028】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。また、例えば、入力インターフェース43は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0029】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0030】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、スキャン制御機能445及び表示制御機能446を実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路44の構成要素であるシステム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、スキャン制御機能445、及び表示制御機能446が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41内に記録されている。処理回路44は、例えば、プロセッサであり、メモリ41から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各機能を有することとなる。
【0031】
なお、
図1においては、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、スキャン制御機能445及び表示制御機能446の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0032】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。
【0033】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施して投影データを生成する。
【0034】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。再構成処理機能443は、再構成したCT画像データをメモリ41に格納する。
【0035】
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能443は、例えば、特定のエネルギー成分のCT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのCT画像データを再構成することができる。
【0036】
また、再構成処理機能443は、例えば、各エネルギー成分のCT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のCT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。再構成処理機能443が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
【0037】
CT画像データを再構成するには被検体の周囲一周、360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ファン角度分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。以下、説明を簡単にするため、被検体周囲一周、360°分の投影データを用いて再構成する再構成(フルスキャン再構成)方式を用いるものとする。
【0038】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像やレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換する。画像処理機能444は、変換した画像データをメモリ41に格納する。
【0039】
スキャン制御機能445は、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、スキャン制御機能445は、X線高電圧装置14、X線検出器12、制御装置15、DAS18及び寝台駆動装置32の動作を制御することで、架台装置10における計数結果の収集処理を制御する。一例を挙げると、スキャン制御機能445は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
【0040】
表示制御機能446は、メモリ41が記憶する各種画像データを、ディスプレイ42に表示するように制御する。
【0041】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明した。かかる構成のもと、X線CT装置1は、ミスアライメントの影響を低減するために、以下に説明する構成を備える。
【0042】
図2A及び
図2Bを用いて、ミスアライメントについて説明する。
図2A及び
図2Bは、第1の実施形態に係るミスアライメントについて説明するための図である。
図2A及び
図2Bの上図には、X線検出器22をX線の入射面側から見た場合の図を例示する。また、
図2A及び
図2Bの下図には、各上図における検出素子の拡大図を例示する。なお、
図2Aは、ミスアライメントが生じていない場合の例であり、
図2Bは、ミスアライメントが生じている場合の例である。また、
図2A及び
図2Bにおいて、「c」はチャネル方向に対応し、「s」はスライス方向に対応する。
【0043】
X線検出器22は、本実施形態に係るX線検出器12と同様に、直接変換型の検出器である。例えば、X線検出器22は、
図2A及び
図2Bの上図に示すように、チャネル方向に並ぶ複数の検出器モジュール220を有する。各検出器モジュール220のX線の入射面側には、散乱X線を低減させるためにコリメータ29が設置される。コリメータ29は、複数の遮蔽板29aがチャネル方向に並べられた構造を有する。各遮蔽板29aは、散乱X線を吸収する機能を有し、X線の入射方向及びスライス方向を通る面に対して平行に配置される。
【0044】
図2Aの下図に示すように、ミスアライメントが生じていない場合には、例えば、各遮蔽板29aの間に一つの検出素子221が配置される。この検出素子221は、例えば、一辺が約500μmの正方形に構成され、チャネル方向及びスライス方向にそれぞれ4個ずつ、合計16個の電極221a(陽極)を有する。なお、
図2A及び
図2Bでは、2つの検出素子221を図示したが、実際には複数の検出素子221がチャネル方向及びスライス方向に配置される。
【0045】
ここで、ミスアライメントが生じた場合には、遮蔽板29aが一部の電極221aのX線パスを遮ることとなる。
図2Bの下図に示す例では、スライス方向に並ぶ一列分の電極221aのX線パスが遮られている。また、領域R1,R2にはX線が入射するものの、電極221aが存在しないためデッドスペースとなってしまう。このように、ミスアライメントが生じると、X線を十分に検出できなくなる結果、画質に影響を及ぼしてしまう。
【0046】
また、近年、放射線検出器の空間分解能の向上によって、検出素子サイズに対するずれ量の割合が高くなるため、アライメント公差に対する要求精度が高くなっている。例えば、フォトンカウンティングCT(Computed Tomography)用のX線検出器12では、一辺が500μm未満の高精細化も可能であるため、アライメント公差に対する要求精度が高くなっている。しかしながら、高精度のアライメントを複数の検出器モジュールそれぞれについて行うことは困難である。
【0047】
そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、ミスアライメントの影響を低減するために、以下に説明する構成を備える。
【0048】
図3A、
図3B、及び
図3Cを用いて、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成について説明する。
図3A、
図3B、及び
図3Cは、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
図3A、
図3B、及び
図3Cには、X線検出器12において検出素子を構成する電極(陽極)の配置を例示する。
図3Aは、ミスアライメントが生じていない場合の例である。また、
図3Bは、コリメータがチャネル方向の正方向にミスアライメントした場合の例である。また、
図3Cは、コリメータがチャネル方向の負方向にミスアライメントした場合の例である。また、
図3A、
図3B、及び
図3Cにおいて、「c」はチャネル方向に対応し、「s」はスライス方向に対応する。
【0049】
X線検出器12は、
図2A及び
図2Bの上図に示したX線検出器22と同様に、チャネル方向に並ぶ複数の検出器モジュール120を有し、各検出器モジュール120のX線の入射面側には、散乱X線を低減させるためにコリメータ19が設置される。コリメータ19は、コリメータ29と同様に、複数の遮蔽板19a,19bがチャネル方向に並べられた構造を有する。各遮蔽板19a,19bは、散乱X線を吸収する機能を有し、X線の入射方向及びスライス方向を通る面に対して平行に配置される。なお、検出器モジュール120及びコリメータ19の位置関係は、
図2A及び
図2Bの上図に示した検出器モジュール220及びコリメータ29の位置関係と同様であるので、図示を省略する。
【0050】
図3A、
図3B、及び
図3Cに示すように、X線検出器12は、複数の主電極122a,122b,122cと、複数のサブ電極123a,123b,123c,123d,123e,123fとを有する。なお、複数の主電極122a,122b,122cを区別無く総称する場合に、「主電極122」と表記する。また、複数のサブ電極123a,123b,123c,123d,123e,123fを区別無く総称する場合に、「サブ電極123」と表記する。また、主電極122は、第1電極の一例である。また、サブ電極123は、第2電極の一例である。
【0051】
主電極122及びサブ電極123は、半導体検出素子の陽極側に配置される電極である。主電極122は、各検出素子を構成する主要な電極であり、チャネル方向及びスライス方向に2次元的に配列される。また、サブ電極123は、主電極122より小さい電極であり、複数の主電極122の間に複数設けられる。例えば、図示の例では、サブ電極123は、チャネル方向において隣り合う主電極122の間に、3つずつ配置される。
【0052】
ここで、
図3Aに示すように、ミスアライメントが生じていない場合には、遮蔽板19aは、サブ電極123bのX線パス上に位置し、遮蔽板19bは、サブ電極123eのX線パス上に位置する。この場合、1つの主電極122b及び2つのサブ電極123c,123dが、1つの検出素子121aを構成する。
【0053】
また、
図3Bに示すように、コリメータ19がチャネル方向の正方向にミスアライメントした場合には、遮蔽板19aは、サブ電極123cのX線パス上に位置し、遮蔽板19bは、サブ電極123fのX線パス上に位置する。この場合、1つの主電極122b及び2つのサブ電極123d,123eが、1つの検出素子121bを構成する。
【0054】
また、
図3Cに示すように、コリメータ19がチャネル方向の負方向にミスアライメントした場合には、遮蔽板19aは、サブ電極123aのX線パス上に位置し、遮蔽板19bは、サブ電極123dのX線パス上に位置する。この場合、1つの主電極122b及び2つのサブ電極123b,123cが、1つの検出素子121cを構成する。
【0055】
すなわち、X線検出器12は、複数の電極とコリメータ19との位置関係に基づいて、検出素子を構成する電極を切り換える制御(スイッチ制御)を行う。これにより、X線検出器12は、ミスアライメントの影響を低減することができる。なお、
図3A、
図3B、及び
図3Cでは、1つの検出素子を図示したが、実際には複数の検出素子がチャネル方向及びスライス方向に配置される。
【0056】
次に、
図4を用いて、第1の実施形態に係る電極のスイッチ制御について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る電極のスイッチ制御を説明するための図である。
図4に示すように、X線検出器12は、複数の電極の後段に、スイッチ124a,124b,124c,124d,124e、ASIC125、及び制御回路126を有する。
【0057】
スイッチ124a,124b,124c,124d,124eは、電極毎に、各電極と、ASIC125との間に設けられる。
図4に示す例では、スイッチ124aは、サブ電極123bとASIC125との間に設けられる。また、スイッチ124bは、サブ電極123cとASIC125との間に設けられる。また、スイッチ124cは、主電極122bとASIC125との間に設けられる。また、スイッチ124dは、サブ電極123dとASIC125との間に設けられる。また、スイッチ124eは、サブ電極123eとASIC125との間に設けられる。また、各スイッチ124a,124b,124c,124d,124eからの信号線は束ねられ、1つのASIC125に接続される。なお、複数のスイッチ124a,124b,124c,124d,124eを区別無く総称する場合に、「スイッチ124」と表記する。
【0058】
ASIC125は、各電極から出力される信号に基づいて、デジタルデータを出力する電子回路である。例えば、ASIC125は、複数の電極(主電極122及びサブ電極123)から出力される信号を束ねて、1つの検出素子の出力として計測する。そして、ASIC125は、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。
【0059】
制御回路126は、CPU等を有する処理回路によって構成され、複数の電極とコリメータ19との位置関係に基づいて、スイッチ124を制御する。例えば、制御回路126は、3つの接続パターン(接続パターンA,B,C)により、複数のスイッチ124を切り換える制御を行う。
【0060】
接続パターンAでは、スイッチ124aが「OFF」、スイッチ124bが「ON」、スイッチ124cが「ON」、スイッチ124dが「ON」、スイッチ124eが「OFF」にそれぞれ切り換えられる。この場合、主電極122b及び2つのサブ電極123c,123dがASIC125に接続されるため、
図3Aに示した検出素子121aが構成される。
【0061】
接続パターンBでは、スイッチ124aが「OFF」、スイッチ124bが「OFF」、スイッチ124cが「ON」、スイッチ124dが「ON」、スイッチ124eが「ON」にそれぞれ切り換えられる。この場合、主電極122b及び2つのサブ電極123d,123eがASIC125に接続されるため、
図3Bに示した検出素子121bが構成される。
【0062】
接続パターンCでは、スイッチ124aが「ON」、スイッチ124bが「ON」、スイッチ124cが「ON」、スイッチ124dが「OFF」、スイッチ124eが「OFF」にそれぞれ切り換えられる。この場合、主電極122b及び2つのサブ電極123b,123cがASIC125に接続されるため、
図3Cに示した検出素子121cが構成される。
【0063】
すなわち、制御回路126は、それぞれの検出素子に含まれる主電極122及びサブ電極123から出力される信号を共通のASIC125へ出力させることで、主電極122及びサブ電極123からそれぞれ出力された信号を束ねる。
【0064】
ここで、制御回路126は、それぞれの接続パターンにおける検出素子からの出力を比較する。例えば、制御回路126は、3つの接続パターン(接続パターンA,B,C)それぞれにおいて、単位時間当たりの光子数をASIC125に計測させ、X線検出器12内部のメモリに記憶させる。そして、制御回路126は、接続パターンAにおける光子数と、接続パターンBにおける光子数と、接続パターンCにおける光子数とを比較する。
【0065】
ここで、ミスアライメントが生じていない場合には、接続パターンAにおける光子数が最大になると考えられる。また、コリメータ19がチャネル方向の正方向にミスアライメントした場合には、接続パターンBにおける光子数が最大になると考えられる。また、コリメータ19がチャネル方向の負方向にミスアライメントした場合には、接続パターンCにおける光子数が最大になると考えられる。
【0066】
そこで、制御回路126は、比較した結果、光子数が最大となる接続パターンに各スイッチ124を切り換える。具体的には、制御回路126は、サブ電極123とASIC125との間のスイッチ124を制御する。
【0067】
このように、制御回路126は、各検出素子からの信号の出力に基づいて、スイッチ124を制御する。これにより、制御回路126は、ミスアライメントが生じていたとしても、ミスアライメントに応じて接続する検出素子を変更し、当該位置に対応する複数の電極からの信号を読み出すので、ミスアライメントの影響を低減させることができる。
【0068】
なお、
図4では、説明の都合上、1つのASIC125を図示したが、実際にはX線検出器12は、複数のASIC125を備える。例えば、X線検出器12は、構成される検出素子の数(主電極122の数)と同じ数のASIC125を備えるのが好適である。
【0069】
また、
図4では、複数の接続パターンの中から適切な接続パターンを自動的に選択する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、操作者は、電極とコリメータ19との位置関係を目視にて確認し、確認した位置関係を示す情報を指定することができる。この場合、制御回路126は、操作者から指定された位置関係に基づいて、スイッチ124を制御する。
【0070】
また、
図4では、接続パターンが規定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御回路126は、各スイッチ124のON/OFFを操作者の任意で切り換え可能である。ただし、X線検出器12の動作中に各電極が接続するASIC125は1つである。
【0071】
また、制御回路126は、任意のタイミングでスイッチ制御を実行可能である。例えば、制御回路126は、検出器モジュール120上にコリメータ19がアライメントされる度に、上述したスイッチ制御を行うのが好適であるが、これに限定されるものではない。例えば、制御回路126は、定期的(例えば、毎日、毎週など)にスイッチ制御を行っても良いし、撮像中の任意のタイミングでスイッチ制御を行っても良い。
【0072】
上述してきたように、第1の実施形態に係るX線検出器12において、検出素子は、複数の電極から構成され、放射線を検出する。ASIC125は、電極から出力される信号に基づいて、デジタルデータを出力する。スイッチ124は、電極ごとに、電極とASIC125との間に設けられる。制御回路126は、複数の電極とコリメータ19との位置関係に基づいて、スイッチ124をフィードバック制御する。これによれば、X線検出器12は、ミスアライメントの影響を低減させることができる。
【0073】
また、ミスアライメントによるX線の検出効率が低下すると、被検体にとって不要な被爆が増大することとなる。第1の実施形態に係るX線検出器12は、ミスアライメントによるX線の検出効率の低下を抑制することができるので、不要な被爆を低減させることができる。
【0074】
(第1の実施形態の変形例1)
複数の電極の他の配置例について説明する。
図5は、第1の実施形態の変形例1に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
図5には、X線検出器12において検出素子を構成する電極(陽極)の配置を例示する。また、
図5において、「c」はチャネル方向に対応し、「s」はスライス方向に対応する。
【0075】
図5に示すように、X線検出器12は、複数の主電極122a,122b,122cと、複数のサブ電極123a,123b,123c,123d,123e,123fとを有する。また、各電極は、スイッチ124へ接続されるバンプ127を有する。具体的には、バンプ127aは、サブ電極123aに形成され、バンプ127bは、サブ電極123bに形成され、バンプ127cは、サブ電極123cに形成され、バンプ127dは、主電極122bに形成され、バンプ127eは、サブ電極123aに形成され、バンプ127fは、サブ電極123aに形成され、バンプ127gは、サブ電極123aに形成される。なお、複数のバンプ127a,127b,127c,127d,127e,127f,127gを区別無く総称する場合に、「バンプ127」と表記する。また、バンプ127は、接合部の一例である。
【0076】
ここで、隣り合う2つのサブ電極123のバンプ127は、遮蔽板19a及び遮蔽板19bの配列方向(つまり、チャネル方向)とは異なる方向にずれて配置される。例えば、バンプ127aとバンプ127bは、スライス方向にずれて配置されている。また、バンプ127bとバンプ127cは、スライス方向にずれて配置されている。これにより、検出素子121aを高精細化することが可能となる。
【0077】
この検出素子121aの高精細化について説明する。一般的に、電極やバンプ127のサイズを小さくするほど、検出素子の高精細化を行うことができるが、バンプ127の最小サイズにはある程度の限界がある。このため、複数のサブ電極123をチャネル方向に並べて配置する場合、それぞれのサブ電極123の幅はバンプ127の最小サイズより大きくせざるを得ない。
【0078】
一方、本実施形態では、サブ電極123a,123b,123cをチャネル方向に並べて配置する場合に、各サブ電極123のバンプ127の位置をスライス方向にずらして配置する。これにより、サブ電極123a,123b,123cの幅を、部分的に、バンプ127の最小サイズより小さくすることが可能となる。
【0079】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態では、コリメータ19が1次元コリメータである場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コリメータ19が2次元コリメータである場合にも、ミスアライメントの影響を低減させることができる。
【0080】
図6は、第1の実施形態の変形例2に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
図6には、X線検出器12において検出素子を構成する電極(陽極)の配置を例示する。また、
図6において、「c」はチャネル方向に対応し、「s」はスライス方向に対応する。
【0081】
図6に示すように、X線検出器12は、主電極131と、複数のサブ電極141,142,143,144,145,146,147,148,149,150,151,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,164とを有する。また、図示しないが、各電極は、スイッチ124を介してASIC125に接続される。
【0082】
例えば、ミスアライメントが生じていない場合には、主電極131と、8個のサブ電極147,148,149,152,153,156,157,158とが、検出素子130aを構成する。この場合、制御回路126は、主電極131と、8個のサブ電極147,148,149,152,153,156,157,158とに接続された各スイッチ124を「オン」にし、他のスイッチを「オフ」にすることで、検出素子130aを構成する。
【0083】
また、例えば、コリメータ19がチャネル方向の正方向及びスライス方向の正方向にミスアライメントした場合には、主電極131と、8個のサブ電極153,154,157,158,159,162,163,164とが、検出素子130bを構成する。この場合、制御回路126は、主電極131と、8個のサブ電極153,154,157,158,159,162,163,164とに接続された各スイッチ124を「オン」にし、他のスイッチを「オフ」にすることで、検出素子130bを構成する。
【0084】
このように、X線検出器12は、2次元コリメータが適用される場合にも、チャネル方向及びスライス方向のそれぞれのミスアライメントの影響を低減させることができる。
【0085】
(第1の実施形態の変形例3)
また、第1の実施形態では、複数の電極が、大きさが異なる複数種類の電極(主電極122とサブ電極123)を含む場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の電極は、均一な大きさを有する複数の電極であっても良い。
【0086】
図7は、第1の実施形態の変形例3に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
図7には、X線検出器12において検出素子を構成する電極(陽極)の配置を例示する。また、
図7の下図は、
図7の上図のコリメータがチャネル方向の正方向に移動した場合を示す。また、
図7において、「c」はチャネル方向に対応し、「s」はスライス方向に対応する。なお、
図7では、図示の都合上、スライス方向に2列に並ぶ電極171を例示するが、実際にはチャネル方向及びスライス方向に複数の電極171が配列される。
【0087】
図7に示すように、X線検出器12は、均一なサイズを有する複数の電極171を有する。例えば、電極171は、最小サイズのバンプ172を含むことが可能な最小のサイズで形成される。
図7に示す例では、遮蔽板19aと遮蔽板19bとの間において、11個の電極171が配置される。
【0088】
図7の上図では、検出素子173a,174a,175a,176aが構成される。この場合、制御回路126は、各検出素子173a,174a,175a,176aに含まれる電極171に接続された各スイッチ124を「オン」にし、他のスイッチを「オフ」にすることで、各検出素子173a,174a,175a,176aを構成する。
【0089】
ここで、
図7の下図に示すように、コリメータがチャネル方向の正方向にずれた場合には、このずれに応じて検出素子を構成する電極を変更する。この場合、制御回路126は、コリメータの移動距離に応じて各検出素子173a,174a,175a,176aをずらし、各検出素子173b,174b,175b,176bを構成する。制御回路126は、各検出素子173b,174b,175b,176bに含まれる電極171に接続された各スイッチ124を「オン」にし、他のスイッチを「オフ」にすることで、各検出素子173a,174a,175a,176aを構成する。
【0090】
このように、X線検出器12は、各電極のサイズを均一にするとともに、最小サイズのバンプ172を含むことが可能な最小サイズとすることで、遮蔽板の間隔と比較して更に高精細な検出を行うことができる。なお、各検出素子を構成する電極の数は、図示のものに限定されるものではなく、任意の数に設定可能である。
【0091】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、X線検出器12とコリメータ19との間のミスアライメントの影響を低減させる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ミスアライメントは、X線の焦点位置の変更(フライングフォーカス)によっても生じ得る。そこで、第2の実施形態では、フライングフォーカスが行われる場合に、X線CT装置1がスイッチ制御を動的に行う場合を説明する。
【0092】
図8は、第2の実施形態に係る制御回路126の処理を説明するための図である。
図8に示すように、X線管11は、フィラメント(陰極)181と、ターゲット(陽極)182と、グリッド183と、焦点制御回路184とを有する。
【0093】
フィラメント181は、熱電子を放射する。ターゲット182は、フィラメント181から放射された熱電子を受けてX線を発生する。焦点制御回路184は、フィラメント181から放射される熱電子のターゲット182に対する照射位置を制御することで、X線の焦点を変更する。例えば、焦点制御回路184は、グリッド183に印加される電圧を制御することで、電磁偏向によりX線の焦点位置を変更する。なお、フライングフォーカスによる焦点位置の変更方法については、公知の技術を適宜選択して適用可能である。
【0094】
ここで、互いに異なる2つの焦点位置「F1」と焦点位置「F2」が存在する場合には、コリメータ19やX線検出器12との相対的な位置関係(アライメント)に違いが生じる可能性がある。そこで、制御回路126は、各焦点位置に対応する接続パターンを記憶しておく。なお、この接続パターンは、検出素子からの出力(例えば、光子数)を予め比較することで規定される。
【0095】
そして、制御回路126は、撮像中にフライングフォーカスが行われる場合には、撮像条件(例えば、電圧プロファイルなど)を参照して各焦点位置の変更タイミングを読み取り、変更タイミングに応じて各焦点位置に対応する接続パターンにスイッチ124を切り換える。
【0096】
このように、制御回路126は、焦点制御回路184によって変更されるX線の焦点位置に対する検出素子及びコリメータ19の位置関係に基づいて、スイッチ124を制御する。これにより、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、X線の焦点位置の変更に応じて、スイッチ制御を動的に行うことができる。
【0097】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0098】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0099】
また、上記の実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0100】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ミスアライメントの影響を低減することができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
1 X線CT装置
121 検出素子
124 スイッチ
125 ASIC
126 制御回路