(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20230904BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230904BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20230904BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230904BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230904BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20230904BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20230904BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20230904BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04 Z
H01M8/2475
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/04664
H01M8/04694
F24H1/00 631A
(21)【出願番号】P 2019098641
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】小黒 裕希
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英隆
(72)【発明者】
【氏名】早川 直
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-080039(JP,A)
【文献】特開2013-075821(JP,A)
【文献】特開2008-251553(JP,A)
【文献】特開2018-076998(JP,A)
【文献】特開2010-272288(JP,A)
【文献】特開2004-039527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0214065(US,A1)
【文献】特開2008-159462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
該筐体内に配置される燃料電池と、
給水元に接続される給水流路と、
燃料電池の運転に必要な水を貯留する水タンクと、
外気温を測定する第一温度測定部と、
前記筐体内の温度を測定する第二温度測定部と、
前記水タンクおよび前記給水流路のうち、すくなくとも一方の温度を測定する第三温度測定部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第一温度測定部により測定される外気温に関連して設定された所定の第1温度を第一給水条件とし、前記第二温度測定部および前記第三温度測定部により測定されるそれぞれの温度に関連して設定された設定温度を第二給水条件とし、
前記第一給水条件の判定を実行して、前記第一給水条件が満たされない場合、前記水タンクへの給水を待機
し、
その後、前記第二給水条件の確認の要求がある場合に、第一判定制御として、前記第二給水条件の判定を実行する、燃料電池装置。
【請求項2】
前記第二給水条件は、複数の設定温度により構成されており、少なくとも1つの前記設定温度が、前記第一
給水条件における前記第1温度未満に設定されている、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
筐体内部を加温する加温装置と、
筐体内の空気を流動させる流動装置と、を備え
前記制御装置は、前記第一判定制御を実行する前に、
第一温度制御として、前記加温装置の停止および前記流動装置の駆動を実行する、請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第二給水条件を構成する複数の条件のうち、少なくとも1つの条件が満たされない場合に、
第二温度制御として、前記流動装置の停止および前記加温装置の作動を実行する、請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第二温度測定部より測定される温度に関連して設定された所定の第2温度と、前記第三温度測定部により測定される温度に関連して設定された所定の第3温度とを含む、複数の所定温度を、第三給水条件とし、
前記第二温度制御の実行後に、第二判定制御として、前記第三給水条件における少なくとも1つの条件の判定を実行する、請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第二判定制御において、前記第三給水条件を構成する全ての条件が満たされた場合に、前記第一判定制御を実行する、請求項5に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記第一判定制御は、前記第二給水条件を構成する全ての条件が満たされ後に待機する第1待機時間を含み、
前記第二判定制御は、前記第三給水条件を構成する全ての条件が満たされ後に待機する第2待機時間を含み、
前記第2待機時間は、前記第1待機時間よりも短い、請求項6に記載の燃料電池装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第二給水条件の確認の要求があった後、所定時間経過しても、前記水タンクへの給水が実行されない場合に、当該事象の発生の情報を外部に発報する、請求項1~7のいずれか1つに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、多くのプロセスに水が介在しており、これらプロセスに用いられる水を、水タンクに多く貯留している。そのため、長期にわたり燃料電池装置の運転または稼動を停止する場合は、水タンク内およびその水が循環する配管内の「水抜き」が行なわれる。
【0003】
そして、燃料電池装置の運転の再開する前には、上述の水タンク内および配管内に水を満たすための「水張り」が行なわれる。
【0004】
特許文献1に記載の燃料電池発電システムは、自動でタンクの水張りを行なう「水張りモード」を備えており、ユーザ等が簡単に水張りを行なうことができるようになっている。
【0005】
たとえば、前述の燃料電池発電システムは、水張り操作部が操作されると、水張りモードを開始するように設定されており、操作パネル等に表示された水張りスイッチ等、水張りモードの要否を問う表示に対して、表示ボタンを押す等、そのモードが必要である旨の情報が入力されると、前述の水張りモードが開始されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1に記載のシステムは、冬季や寒冷地等で発生する「水配管の凍結」が考慮されていない。そのため、凍結の可能性がある時期に、水張りが自動で正常に続行されているか否か、確認する術を有していなかった。その結果、低温時に水張りを実行すると、配管等の内部で凍結が発生し、水張りが完了できない場合があった。
【0008】
本開示の目的は、凍結の発生を抑制して、安全に水張りを行なうことができる燃料電池装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の燃料電池装置は、筐体と、該筐体内に配置される燃料電池と、給水元に接続される給水流路と、燃料電池の運転に必要な水を貯留する水タンクと、外気温を測定する第一温度測定部と、前記筐体内の温度を測定する第二温度測定部と、前記水タンクおよび前記給水流路のうち、すくなくとも一方の温度を測定する第三温度測定部と、制御装置と、を備える。
前記制御装置は、前記第一温度測定部により測定される外気温に関連して設定された所定の第1温度を第一給水条件とし、前記第二温度測定部および前記第三温度測定部により測定されるそれぞれの温度に関連して設定された設定温度を第二給水条件とする。
前記第一給水条件の判定を実行して、前記第一給水条件が満たされない場合、前記水タンクへの給水を待機し、その後、前記第二給水条件の確認の要求がある場合に、第一判定制御として、前記第二給水条件の判定を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の燃料電池装置によれば、凍結の発生が抑制され、安全かつ確実に水張りを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図2】外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】第一判定制御に関するフローチャートである。
【
図4】第二判定制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参考にしながら、実施形態を説明する。
【0013】
図1は、実施形態の燃料電池装置の構成の概略を示すブロック図である。なお、燃料電池装置において汎用的な装置や機器等については、詳しい説明を行なわず、図中への符号の付与のみに留めているものもある。
【0014】
図1に示す燃料電池装置100は、収納容器10内に収容された燃料電池モジュール1と、燃料電池モジュール1に接続された熱交換器2と、燃料電池モジュール1から排出される高温度の排ガスの熱および熱エネルギーを熱交換により回収し、温水として貯留する蓄熱タンク3と、排ガス中に含まれる水分が熱交換により凝縮して生成した凝縮水を、原燃料の水蒸気改質用の水(以下、改質水)として貯留する改質水タンク6とを備える。
【0015】
なお、前述の蓄熱タンク3と改質水タンク6とは、ともに、本開示の、燃料電池の運転に必要な水を貯留する水タンク、の一例である。本実施形態では、主に、比較的貯水量の多い蓄熱タンク3周りの温度や凍結防止等について説明する。
【0016】
燃料電池装置100は、原燃料ポンプB1および原燃料流路等を含む原燃料供給装置と、空気ブロアB2および酸素含有ガス流路等を含む酸素含有ガス供給装置を備える。また、水自立運転を継続するための、凝縮水流路C、前述の改質水タンク6、改質水供給ポンプP1および改質水流路Rを含む改質水供給装置を含む。
【0017】
さらに、先に述べた熱交換器2、蓄熱タンク3、ラジエータ4、熱媒循環ポンプP2とこれらを環状に接続する熱媒循環流路HC1とからなる熱媒循環系(第1のヒートサイクル)を備える。
【0018】
また、燃料電池装置100は、外部に供給するための水道水(上水)を加温するための第2熱交換器5と、前述の蓄熱タンク3から高温の熱媒を取り出して循環させるための与熱ポンプP3および熱媒循環流路HC2等を含む、温水供給システム(第2のヒートサイクル)を備えている。なお、燃料電池装置は、外部への温水供給を行なわない、いわゆるモノジェネレーションシステムとしてもよい。
【0019】
そして、燃料電池装置100は、前述の水タンクである、蓄熱タンク3および改質水タンク6に、それぞれ、給水元である水道水等の外部水を供給(給水という)あるいは補給(補水という)するための給水流路(配管)K1,K2を備える。
【0020】
なお、給水流路(配管)K1,K2には、給水を開始・停止するための電磁式開閉弁等を含む給水バルブV
1,V
2が備えられている。また
図1に示す、燃料電池装置100は、あわせて、給水元である水道水を第2熱交換器5に供給する給水流路(配管)Winを備えている。
【0021】
給水流路(配管)K1,K2,Winは、本開示の給水流路の一例である。燃料電池装置100としては、給水元を1つとして、K1,K2,Winを分岐配管とすることもできる。
【0022】
なお、燃料電池装置100は、
図2に示すような、各フレーム71と各外装パネル72とからなるケース70の中に配設されている。このケース70の中の、燃料電池モジュール1および各補機の周りや、流路、配管等には、以下のような制御手段や、複数の計測機器やセンサ、または他の補機等が設けられている。
【0023】
また、燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1および各補機の動作を制御する手段として、発電量調整装置(パワーコンディショナ20)と、このパワーコンディショナ20と連係して、燃料電池の発電運転を補助する各補機の動作を制御する制御装置30と、この制御装置30に対してユーザ等が指示を出すための、屋内に設置された操作基板(操作パネル)40等を備える。
【0024】
制御装置30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、それに付属する記憶装置(図示省略)に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0025】
また、制御装置30は、ケース70内で発生する熱をケース外に排出するための換気ファン50と、前述の熱媒循環系(流路)HC1,HC2周りに取り付けられた、複数の凍結防止用のヒータ60(図示は一部のみ)とを、制御する。
【0026】
さらに、燃料電池装置100は、筐体(ケース70)内外の各部の温度を計測するための、温度センサ、サーミスタ(以下、TMと略称)等の温度計測器または温度計を、複数備える。
【0027】
たとえば、
図1に示すように、筐体(ケース70)外部の環境温度(以下、外気温)を測定するための第一温度測定部として、サーミスタTM1が配設されている。また、筐体内の温度(気温)を測定するためのサーミスタTM2が、第二温度測定部として配置されている。
【0028】
さらに、水張りおよび水の凍結に関連する水の温度を計測する温度計測器または温度計として、熱媒である水の低温部分に相当する、蓄熱タンク3内の下部の温度を計測するサーミスタTM3が取り付けられている。また、ケース70内部に流入する水道水の温度を測るために、給水流路K1にサーミスタTM4が取り付けられている。
【0029】
なお、サーミスタTM4は、ケース70内部に流入する水道水(特には蓄熱タンク3に供給される水道水)の温度を、直接的または間接的に測定することができれば、その配設位置に制限はない。たとえば、1つの給水元から各給水流路が分岐している場合に、分岐流路のいずれに設けられていてもよい。これらサーミスタTM3,TM4は、本開示の第三温度測定部の一例である。
【0030】
他にも、凍結の発生し易い箇所、たとえば、第1のヒートサイクル(循環流路)HC1内における、ラジエータ4の下流側位置の温度を測定するために、温度測定部としてサーミスタTM5が配設されている。
【0031】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行なう本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。
【0032】
なお、実施形態において、制御装置30は特に、外部水の給水(前述の「水張り」操作)を制御する。また、各図では、制御装置30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0033】
以上の構成の燃料電池装置100において、たとえば長期の運転停止または稼動停止のために、水タンク内およびその水が循環する配管内の「水抜き」が既に行なわれており、運転再開のために、水タンク等に水道水を給水する「水張り」が行なわれる場合の制御は、つぎのように行なわれる。
【0034】
なお、以下の燃料電池装置の制御は、冬季や寒冷地等で発生する「水配管の凍結」を考慮したものであり、低温時における水張り操作の完了を目指すものである。この制御は、凍結の可能性の有無に関わらず、種々の地域に出荷される全製品に適用するか、あるいは、寒冷地等に適用される特別な製品仕様や、全製品で選択可能な一部のモードとして搭載してもよい。また、同様の制御を、試運転等、燃料電池装置の設置後の初回運転の前に、管理者等によって行なわれる水張り操作に適用することもできる。
【0035】
図3および
図4は、燃料電池装置100の「水張り」の制御フローを示すチャートである。
図3は、制御装置による第一判定制御のフローを示し、
図4は、それに続く、第二判定制御のフローを示す。なお、各フローチャート内においては、判定制御における「満たす(肯定)」を[Yes]で、「満たさない(否定)」を[No]で表している。
【0036】
図3に示す、実施形態の燃料電池装置100の「水張り」は、たとえば、ユーザによる、燃料電池装置のリモコンの操作パネル等の操作や、メンテナンス管理者等による、燃料電池装置のメンテナンス用パネルのスイッチの操作等の、開始の「指示」によりスタートする。ここで、開始の指示とは、水張りのみを行なう指示であってもよく、燃料電池装置100の起動指示等のように、一連の動作の中に水張りを含む指示であってもよい。
【0037】
なお、以降、図中の「ステップ1」等は、〔S1〕等と略して記載する。また、制御装置30は、前述の、ユーザ等による開始の「指示」を記憶して、以下の一連の制御を実行する根拠とする。すなわち、この開始の指示は、後記の「第二給水条件の確認の要求」または「第一判定制御」の実行指示または判定要求を、兼ねるものである。
【0038】
制御がスタートすると、制御装置30は、まず、第一給水条件である〔S1〕において、第一温度測定部(この例ではサーミスタTM1)が測定した外気温X(℃)が、予め定められた第1温度(以下、第1所定温度X1(℃))より高いか否か、を判定する。
【0039】
実施形態において、この第1所定温度X1は、たとえば5~10℃の範囲内で適宜設定される。そして、〔S1〕において、外気温Xが第1所定温度X1より高い[Yes]である場合、制御装置30は、外気温に関して凍結のおそれがないと判断して、即時に、水張りの実行を開始する〔S10〕。
【0040】
他方、〔S1〕において、サーミスタTM1が測定した外気温Xが、第1所定温度X1以下の[No]の場合、以下の第一温度制御〔S2〕と、それに続く第一判定制御〔S3〕~〔S5〕を開始する。
【0041】
すなわち、制御装置30は、第一判定制御として、第二給水条件の判定を行なう。ここで、第二給水条件は、たとえば筐体内の温度、水タンク内の温度、水配管内の温度等の複数の箇所の温度により構成することができる。
【0042】
また、制御装置30は、第一判定制御を行なうにあたり、これらの各温度の確認を行なう前に、第一温度制御として、加温装置(凍結防止ヒータ60)の作動停止と、流動装置(換気ファン50)の駆動開始とを、実行する〔S2〕。
【0043】
なお、先にも述べたように、凍結防止ヒータ60の停止と換気ファン50の駆動とは、〔S6〕において第一温度制御終了の指示があるまでは、継続してその状態が維持される。これは、筐体(ケース70)の内部温度を、筐体外部の環境温度(外気温)に近づけ、装置周りの現状に則した、正確な「凍結の可能性の有無」を判定するためである。
【0044】
〔S2〕において第一温度制御を開始したら、つぎに、〔S4-1〕,〔S4-2〕,〔S4-3〕の3つの第二給水条件の判定を順次行なう、第一判定制御を実行する〔S3〕。
【0045】
具体的には、1つ目(1/3)の第二給水条件として、第二温度測定部であるサーミスタTM2が測定した、ケース70内の温度(気温)Y(℃)が、予め定められた第2温度(以下、第2所定温度Y1(℃))以上であるか否か、を判定する。
【0046】
実施形態において、この第2所定温度Y1は、第1所定温度X1よりも比較的低い温度、たとえば1~5℃の範囲内で適宜設定される。そして、〔S4-1〕において、ケース70内の温度Yが第2所定温度Y1以上の[Yes]である場合、制御装置30は、筐体内温度に関して凍結のおそれがないと判断して、2つ目(2/3)の第二給水条件の判定に進む。
【0047】
また、〔S4-1〕において、温度Yが第2所定温度Y1未満の[No]である場合は、フローチャートの(A)に矢指するように、
図4に記載の「第二判定制御」に進む。第二判定制御は、後記で説明する。
【0048】
2つ目(2/3)の第二給水条件〔S4-2〕では、第三温度測定部の1つであるサーミスタTM3が測定した、蓄熱タンク3内の温度W(℃、この場合、気温)が、予め定められた第3温度(以下、第3所定温度W1(℃))以上であるか否か、を判定する。
【0049】
実施形態において、この第3所定温度W1は、第1所定温度X1よりも比較的低い温度、たとえば1~5℃の範囲内で適宜設定される。なお、第2所定温度Y1と同じとしてもよい。そして、〔S4-2〕において、蓄熱タンク3内の温度Wが第3所定温度W1以上の[Yes]である場合、制御装置30は、水タンクに給水しても凍結のおそれがないと判断して、3つ目(3/3)の第二給水条件の判定に進む。
【0050】
他方、〔S4-2〕において、温度Wが第3所定温度W1未満の[No]である場合は、〔S4-1〕と同様、フローチャートの(A)に矢指するように、
図4に記載の「第二判定制御」に進む。
【0051】
つぎに、3つ目(3/3)の第二給水条件〔S4-3〕では、第三温度測定部の1つであるサーミスタTM4が測定した、給水流路K1の温度Z(℃、この場合、管温度)が、予め定められた第4温度(以下、第4所定温度Z1(℃))以上であるか否か、を判定する。
【0052】
実施形態において、この第4所定温度Z1は、第1所定温度X1よりも比較的低い温度、たとえば1~5℃の範囲内で適宜設定される。なお、第2,第3所定温度と同じとしてもよく、さらに低い温度としてもよい。そして、〔S4-3〕において、給水流路K1の温度Zが第4所定温度Z1以上の[Yes]である場合、制御装置30は、各流路配管内に通水しても凍結のおそれがないと判断して、つぎの待機ステップ〔S5〕に進む。
【0053】
また、〔S4-3〕において、温度Zが第4所定温度Z1未満の[No]である場合は、〔S4-2〕と同様、フローチャートの(A)に矢指するように、
図4に記載の「第二判定制御」に進む。
【0054】
以上の構成により、筐体(ケース70)内で凍結が発生する可能性を、より低減することができる。
【0055】
なお、前述の第二給水条件において、配管の温度を測定する箇所は、給水流路K1,K2,Win上の一箇所のみを例示したが、配管温度の測定箇所は、循環配管上の他の位置と置き換えたり、さらに多くの箇所に温度計を設置して、測定回数(頻度)を増やしたりすることもできる。
【0056】
たとえば、第二給水条件〔S4-3〕において、給水流路K2にサーミスタを設けて、給水流路K2の温度を条件としてもよい。この場合、このサーミスタによるK2配管の測定温度を、第二給水条件の4つ目の条件(ステップ)として追加してもよい。また、給水元を1つとして、K1,K2,Winを分岐配管とした場合には、給水流路K1とK2とWinとで共通する配管に、サーミスタを配設して測定してもよい。
【0057】
さらに、第三温度測定部の1つとして、第1のヒートサイクル(循環流路)HC1内における、ラジエータ4の下流側に位置するサーミスタTM5を用いて、この循環流路内温度測定するようにしてもよい。なお、このサーミスタTM5による配管の温度測定を、第二給水条件の4つ目の条件(ステップ)として追加してもよい。
【0058】
以上の第一判定制御を構成する各第二給水条件〔S4-1〕,〔S4-2〕,〔S4-3〕において、各条件が満たされない[No]の場合は、いずれも、制御は
図4のフローチャート最上段の〔S11〕に移行して、「第二温度制御」が実行される。この第二温度制御については、後記で説明する。
【0059】
つぎに、前述のように、第一判定制御を構成する全て(この例では上記3つ)の第二給水条件〔S4-1〕,〔S4-2〕および〔S4-3〕が満たされた場合、すなわち、判定の結果が全て[Yes]であった場合、制御装置30は、
図3に示すように、〔S5〕において、当該第一判定制御が開始されてからの経過時間が、第1待機時間(T1)に到達するまで、つぎのステップ(〔S6〕)への移行を待機する。
【0060】
実施形態において、この第1待機時間T1は、たとえば2時間程度の時間である。前述の第1待機時間T1は、以降に「水張り」が確実に実行されることを前提とし、短時間の間に、外部環境の急変等により、凍結発生の可能性が再度高まることがないか否かを、確認するものである。
【0061】
したがって、制御装置30は、〔S5〕を含む第一判定制御のループを繰り返した状態で、所定の第1待機時間T1(2時間)が経過すると、〔S6〕において、先に述べた〔S2〕とは逆の、流動装置(換気ファン50)の駆動停止と、加温装置(凍結防止ヒータ60)の作動開始とを実行し、第一温度制御を終了する。なお、この第一判定制御のループは、たとえば第1待機時間T1の間で、10分ごとに繰り返すように設定してもよい。
【0062】
そして、〔S7〕エンドにおいて水張りを実行し、一連の制御フローを完了する。
【0063】
一方、先にも述べたように、第一判定制御として、前述の各第二給水条件〔S4-1〕,〔S4-2〕および〔S4-3〕での条件判定中に、1つの条件でも満たされない、判定が[No]のものがあれば、制御装置30は、
図4に記載のフローに進む。
【0064】
図4のフローは、〔S11〕の第二温度制御と、〔S12〕~〔S14〕の第二判定制御とからなる。
【0065】
〔S11〕の第二温度制御は、前述のように、第一判定制御を構成する3つの第二給水条件のうち、1つでも満たされないものがあると、実行される。第二温度制御は、前述の第一温度制御〔S2〕とは異なり、ケース70内を外部環境より暖めて、凍結を防止する動作をした上で、水張りを実行しようとするものである。すなわち、第二温度制御は、流動装置(換気ファン50)の駆動停止と、加温装置(凍結防止ヒータ60)の作動開始とを、実行する。
【0066】
このように、加温装置(凍結防止ヒータ60)を作動させることで、筐体内の温度を上昇させるとともに、水が流入する経路の温度を上昇させることができる。なお、前述の第一温度制御と同様、換気ファン50の停止と、凍結防止ヒータ60の作動とは、〔S15〕において第二温度制御終了の指示があるまで、継続して実行される。これにより、筐体(ケース70)内の温度(気温)を、凍結の発生のない温度まで上昇させることができる。
【0067】
ついで、〔S13-1〕,〔S13-2〕の2つの第三給水条件の判定を行なう、第二判定制御を実行する。
【0068】
具体的には、1つ目(1/2)の第三給水条件として、〔S13-1〕において、第二給水条件〔S4-1〕と同様、第二温度測定部であるサーミスタTM2が測定した、ケース70内の温度(気温)Y(℃)が、予め定められた第5温度(以下、第5設定温度Y2(℃))以上であるか否か、を判定する。
【0069】
実施形態において、この第5設定温度Y2は、第2所定温度Y1と同じとしてもよく、異なる温度としてもよい。
【0070】
〔S13-1〕において、ケース70内の温度Yが第5設定温度Y2以上の[Yes]である場合、制御装置30は、筐体内の温度が、凍結のおそれがない温度まで上昇したと判断して、2つ目(2/2)の第三給水条件の判定に進む。
【0071】
対して、〔S13-1〕において、温度Yが第5設定温度Y2未満の[No]である場合は、加温装置(凍結防止ヒータ60)による筐体内の加温がさらに必要であると判断して、前述の温度Yが第5設定温度Y2以上になるまで、すなわち、〔S13-1〕の第三給水条件が満たされるまで、ループを繰り返し、待機する。
【0072】
ついで、2つ目(2/2)の第三給水条件として、〔S13-2〕において、第二給水条件〔S4-3〕と同様、第三温度測定部の1つであるサーミスタTM3が測定した、蓄熱タンク3内の温度W(℃)が、予め定められた第6温度(以下、第6設定温度W2(℃))以上であるか否か、を判定する。
【0073】
実施形態において、この第6設定温度W2は、第3所定温度W1と同じとしてもよく、異なる温度としてもよい。
【0074】
〔S13-2〕において、蓄熱タンク3内の温度Wが第6設定温度W2以上の[Yes]である場合、制御装置30は、タンク3に給水しても凍結のおそれがない温度まで上昇したと判断して、給水を待機する〔S14〕に進む。
【0075】
他方、〔S13-2〕において、温度Wが第6設定温度W2未満の[No]である場合は、加温装置(凍結防止ヒータ60)による、給水されるタンクの温度上昇が不充分であると判断して、前述の温度Wが第6設定温度W2以上になるまで、すなわち、〔S13-2〕の2つ目の第三給水条件が満たされるまで、ループを繰り返し、待機する。
【0076】
つぎに、第二判定制御を構成する全て(この例では上記2つ)の第三給水条件〔S13-1〕,〔S13-2〕が満たされた場合、すなわち、判定の結果が全て[Yes]になった場合、制御装置30は、〔S14〕において、第三給水条件が全てクリアされてからの経過時間が、第2待機時間(T2)に到達するまで、つぎのステップ(〔S15〕および〔S16〕)への移行を待機する。
【0077】
なお、実施形態において、この第2待機時間T2は、前述の第1待機時間T1より短い時間で設定できる。たとえば、第2待機時間T2は、10分間程度の時間で設定できる。この時間により、凍結防止ヒータ60による筐体内や水タンク内の水の加温が第三給水条件以上に追加されて、凍結の発生しない温度に達したことを、確実なものにすることができる。
【0078】
したがって、制御装置30は、〔S14〕を含む第二判定制御のループを繰り返した状態で、所定の第2待機時間T2(10分間)が経過すると、〔S15〕において第二温度制御を終了し、〔S16〕において第二判定制御を終了する。
【0079】
そして、フローチャートの(B)に矢指するように、
図3に記載の第一温度制御〔S2〕を経由して、〔S4-1〕,〔S4-2〕,〔S4-3〕の3つの第二給水条件の判定を行なう、第一判定制御に復帰する。なお、この時点で、前述の凍結防止ヒータ60により、筐体内各部は凍結が発生しない温度まで加温されていると考えられる。したがって、再び第一温度制御を実行し、第一判定制御を構成する〔S5-1〕,〔S5-2〕,〔S5-3〕の3つの第二給水条件の判定を行なう。
【0080】
以上の構成により、実施形態の燃料電池装置100は、凍結の発生が抑制され、水タンクの水張りを実行することができる。
【0081】
なお、燃料電池装置100は、先にも述べたように、操作パネル等のボタンの押下やメンテナンス用パネルのスイッチの操作等による、ユーザ等による水張り開始の「指示」を、第二給水条件の確認の要求、または、第一判定制御の実行指示または判定要求として記憶している。
【0082】
この記録を利用して、たとえば、前述のボタンが押下されてから72時間経過する等、長時間にわたって水タンクへの給水が実行されない場合は、当該事象(水張りが実行されない事)の発生の情報を、制御装置30が備える表示装置(図示省略)や、前述の操作パネル、メンテナンス用パネルの表示等を通じて、ユーザや管理者等の外部に、伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 燃料電池モジュール
2 熱交換器
3 蓄熱タンク
6 改質水タンク
30 制御装置
50 換気ファン
60 凍結防止ヒータ
70 ケース
100 燃料電池装置
K1,K2 給水流路
TM サーミスタ