(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】変色体、変色体セット
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20230904BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20230904BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230904BHJP
G09B 3/02 20060101ALI20230904BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B41M3/00 A
B32B5/32
B32B27/20 A
G09B3/02
A63H33/22 K
(21)【出願番号】P 2019108725
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】中島 明雄
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-227314(JP,A)
【文献】特開2008-145620(JP,A)
【文献】特開2009-271321(JP,A)
【文献】特開2006-149433(JP,A)
【文献】特開2004-033656(JP,A)
【文献】特開2008-188996(JP,A)
【文献】特開2001-104661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0324619(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005029056(DE,A1)
【文献】特開2008-037095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00
B32B 5/32
B32B 27/20
G09B 3/02
A63H 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、着色像、前記着色像上に低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化して着色像を隠蔽し、吸液状態で有色透明化して着色像を視認させる多孔質層、前記着色像を設けた箇所の多孔質層上に低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で不透明化して着色像を隠蔽し、吸液状態で透明化して着色像を視認させる多孔質像を設けてなり、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率が
30:70~70:30の範囲にあ
り、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)と、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)と、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)が式(1)及び式(2)を満たし、前記多孔質層の周囲に問題表示部を備えてなり、前記着色像が問題表示部の正答である変色体。
0≦D1-D2<0.5 (1)
0.1≦D2-D3 (2)
【請求項2】
複数の問題表示部と、複数の着色像を備えてなる請求項1記載の変色体。
【請求項3】
前記着色像の文字サイズが3~13ポイントの範囲にある文字である請求項2記載の変色体。
【請求項4】
前記着色像がプロセス印刷像である請求項3記載の変色体。
【請求項5】
前記問題表示部が地図であり、着色像が地名である請求項2乃至4のいずれか一項に記載の変色体。
【請求項6】
前記問題表示部が国旗であり、着色像が国名である請求項2乃至4のいずれか一項に記載の変色体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の変色体と水付着具とからなる変色体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色体、変色体セットに関する。更に詳細には乾燥状態で隠蔽された像が判別され難く、水等の液体を吸液した状態では隠蔽された像が明瞭に視認される変色体、変色体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥状態と吸水状態で異なる像を視認させるシートとして、低屈折率顔料を含む塗布層及び塗布層上に表面画像を設けた透明フィルムを、着色された面に画像を有する台紙に貼り合わせた水像シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記水像シートは、乾燥状態で塗布層によって下層の画像が隠蔽されるため表面画像のみが視認され、吸液状態で塗布層が透明化し、且つ、表面画像が台紙或いは下層の画像の色調と同調して視認され難くなり、下層の画像のみが視認されるよう構成したものであって、異なる像が視認されるとしても、表面画像を下層の画像及び/又は台紙の色調と同調させるために同系色或いは薄い色にしたり、表面画像と下層の画像ができる限り重ならないように配慮することを余儀なくされる。従って、乾燥状態で下層の画像が視認され難いと共に、吸液状態で前記画像を明瞭に視認させる構成には不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の水像シートの不具合を解消しようとするものであって、即ち、乾燥状態では、隠蔽された着色像が視認され難く、吸液状態では前記着色像が明瞭に視認される変色体、変色体セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支持体上に、着色像、前記着色像上に低屈折率顔料及び着色剤をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で有色不透明化して着色像を隠蔽し、吸液状態で有色透明化して着色像を視認させる多孔質層、前記着色像を設けた箇所の多孔質層上に低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で不透明化して着色像を隠蔽し、吸液状態で透明化して着色像を視認させる多孔質像を設けてなり、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率が30:70~70:30の範囲にあり、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)と、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)と、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)が式(1)及び式(2)を満たし、前記多孔質層の周囲に問題表示部を備えてなり、前記着色像が問題表示部の正答である変色体を要件とする。
0≦D1-D2<0.5 (1)
0.1≦D2-D3 (2)
更には、複数の問題表示部と、複数の着色像を備えてなること、前記着色像の文字サイズが3~13ポイントの範囲にある文字であること、前記着色像がプロセス印刷像であること、前記問題表示部が地図であり、着色像が地名であること、前記問題表示部が国旗であり、着色像が国名であること等を要件とする。
更には、変色体と水付着具とからなる変色体セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、乾燥状態では、隠蔽された着色像が視認され難く、吸液状態では前記着色像が明瞭に視認され、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性に優れた変色体、変色体セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の変色体の一実施例の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、乾燥した状態と、水等の液体を吸液した状態で互いに異なる様相が視認され、吸液した状態で視認される様相が乾燥状態では判別し難い変色体と、それを用いた変色体セットあって以下に説明する。
【0009】
前記支持体は印刷適性を備えた基材であれば全て有効であり、例えば、紙、合成紙、織物、編物、組物、不織布等の布帛、天然又は合成皮革、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が用いられる。また、形状としては平面状のものが好ましいが、凹凸状の形態であってもよい。
【0010】
前記支持体上には着色像を設けてなる。
前記着色像は、着色剤を含むバインダー樹脂により形成されてなる。
前記着色剤としては、一般染料、一般顔料、蛍光染料、蛍光顔料、金属光沢顔料等が挙げられる。
前記着色剤はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて着色像を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記着色像は、プロセス印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、インクジェット印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により支持体上に形成される。
また、予め別の基材上に着色剤とバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を塗布して転写層を設け、前記転写層を支持体上に転写して着色像を設けることもできる。
なお、前記着色像は、色の異なる複数の着色剤を用いて多色の像とすることもでき、カラフルな像を視認できるため、商品性を高めることもできる。
更に、前記支持体が透明性を有する場合は、支持体の裏面(多孔質層と多孔質像を設けていない面)に着色像を設けることもできる。
前記着色像は、各種文字、数字、記号、図形、多数の平行線、交叉線、線の組み合わせにより形成されるハニカム状、網状、格子状、方眼状、亀甲模様、その他の幾何学模様の他、人、動物、植物、果実、食料品、乗物、建物、天体等の形状が挙げられる。
【0011】
前記多孔質層は、低屈折率顔料及び着色像をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態で有色不透明化して下層を隠蔽するため着色像の視認を妨げ、且つ、有色を呈することから後述する多孔質像を明瞭に視認させることができる。
前記着色剤は着色像に用いられる着色剤と同様のものを用いることができる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸、珪酸塩が挙げられる。
また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料の粒子径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、この点を説明すると、珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別され、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、前記多孔質層は、主に水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
なお、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0012】
前記多孔質層中の低屈折率顔料は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1~30g/m2であることが好ましく、より好ましくは、5~20g/m2である。1g/m2未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、また、30g/m2を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料及び着色剤はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、支持体上に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2質量部であり、より好ましくは、0.8~1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が損なわれ易くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。また、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
なお、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0013】
前記多孔質層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0014】
前記着色像を設けた箇所の多孔質層上には、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた乾燥状態で不透明化して着色像を隠蔽し、吸液状態で透明化して着色像を視認させる多孔質像を設けてなる。
前記着色像を明瞭に視認させるためには、着色像の濃度を高くすると共に、多孔質層中に含まれる低屈折率顔料を少なくすることが考えられるが、その一方で多孔質層が乾燥状態で十分な隠蔽性を示さなくなる。
前記多孔質像は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた像であり、乾燥状態で不透明化して白色の多孔質像が視認され、乾燥状態で多孔質層が完全に着色像を隠蔽していなくても、視覚的に隠蔽したような効果を付与することができる。即ち、前記多孔質像は着色像による残像(乾燥状態で多孔質層を通して視認される着色像)を部分的に隠蔽し、且つ、多孔質像を設けていない箇所の残像を視覚的にカムフラージュする効果を有する。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂は多孔質層に用いられる低屈折率顔料、バインダー樹脂と同様のものを用いることができる。
前記多孔質像は、多孔質層と同様の方法により形成できる。
前記のようにして得られる変色体は、吸液状態においては、多孔質像は透明化して視認されなくなると共に、多孔質層も有色透明化するため、着色像が視認される。なお、吸液状態で視認される着色像の色は、多孔質層の色と混色となった色である。
従って、乾燥状態における多孔質像と、吸液状態における着色像を択一的に視認することができる。
【0015】
前記乾燥状態で多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は30:70~70:30、より好ましくは40:60~60:40の範囲にある。
前記面積比率を満たすことにより、多孔質像は着色像による残像を部分的に隠蔽し、且つ、残像を視覚的にカムフラージュする効果を十分に発現することができる。
【0016】
更に、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)と、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)と、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)が式(1)及び式(2)を共に満たすことが好ましく、着色像上に設けた多孔質層と支持体上に設けた多孔質層の色濃度に式(1)で示される差があっても、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)と多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)が式(2)で示される差を有することにより、残像を視覚的にカムフラージュする効果をよりいっそう発現することができる。
前記式(1)としては0≦D1-D2<0.5であり、前記式(2)としては0.1≦D2-D3である。
なお、着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)は、コニカミノルタ社製の蛍光分光濃度計FD-7でそれぞれ測定した濃度のK値、C値、M値、Y値の合計とした。
【0017】
前記変色体の多孔質層の周囲(着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部の周囲)には、問題表示部を備えてなり、前記着色像が問題表示部の正答であり、知育具、知育玩具、教習具、教習玩具として好適な変色体を得ることができる。
前記多孔質層の周囲に問題表示部を備えてなり、前記着色像が問題表示部の正答である系において、複数の問題表示部と、複数の着色像を備えることにより、知育や教習の実用性に富む変色体を得ることができる。
複数の問題表示部と、複数の着色像を備えた変色体は、前記着色像の文字サイズが4~12ポイントの範囲にある文字を用いることにより、複数の着色像の形成性に優れ、知育や教習の実用性に富む変色体を得ることができると共に、前記着色像がプロセス印刷像であることにより像の明瞭性に優れる。
前記知育具、知育玩具、教習具、教習玩具として具体的には、前記問題表示部が地図であり、着色像が地名である変色体、前記問題表示部が国旗であり、着色像が国名である変色体が挙げられる。
【0018】
前記変色体の具体的な実施形態としては、例えば、ぬいぐるみ、人形、人形用ドレス等の人形用衣装、鞄等の人形用付属品、水鉄砲の標的、動物を模した模型、人間と人形の手形や足形等の形跡を現すボード等の玩具類、水筆シート等の教習具類、ドレス、水着等の衣類、靴類、鞄類、家具、造花、コースター等が挙げられる。
また、各種インジケーターとして適用することもでき、例えば、配管、パイプ、水槽、タンク等の液洩れ検知、身の回り品や家具の水濡れ検知、禁水性薬品の輸送や保管場所での水濡れ検知、結露、使い捨ておむつの尿の検知、土壌中の水分検知等が挙げられる。
【0019】
前記変色体に水を付着させる手段としては、直接水中に浸漬したり、手や指を水で濡らして接触させる他、水付着具を適用することもできる。
前記水付着具としては、水鉄砲、噴霧機、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具、スタンプ具等が挙げられる。
前記水付着具として、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具は、筆記像を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
なお、前記水付着具と、変色体とを組み合わせて変色体セットを構成することもできる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(
図1参照)
変色体の作製
支持体2として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して12ポイントの文字「東京都」と、前記文字の上段に6ポイントの送り仮名からなる文字「とうきょうと」からなる黒色の着色像3を形成した。
次いで、前記着色像3上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーF707-E、山陽色素(株)製〕0.4部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層4を形成した。
次いで、前記多孔質層4上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのドット模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させてドット模様の多孔質像5を形成して変色体1を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は50:50であった。
前記支持体上には、問題表示部として日本地図が印刷され、前記日本地図の東京都の位置の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
また、
図1のAで示される前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)は1.31(K:0.38、C:0.64、M:0.20、Y:0.09)、
図1のBで示される支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)は1.19(K:0.36、C:0.64、M:0.16、Y:0.03)、
図1のCで示される多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)は0.22(K:0.07、C:0.10、M:0.04、Y:0.01)となり、D1-D2=0.12であり、D2-D3=0.97であった。
【0021】
前記変色体は、乾燥状態では日本地図の東京都の近傍にパステル調の青色の多孔質層上に白色ドット模様の多孔質像(青地に白色のドット模様)が視認されるが、水を含ませた筆を用いて水を付着させると、多孔質像は透明化し、且つ、多孔質層が青色透明化するため、全面が青色になり、前記多孔質層の青色と着色像の黒色が混色となった暗青色の「東京都」、「とうきょうと」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「東京都」と「とうきょうと」の文字は視認され難くなると共に、白色のドット模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、青地に白色のドット模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0022】
実施例2
変色体セットの作製
実施例1の変色体と、水付着手段として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて携帯性に優れた変色体セットを得た。
前記変色体の青地に白色のドット模様の箇所に水を収容した前記ペンを用いて筆記すると「東京都」、「とうきょうと」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「東京都」と「とうきょうと」の文字は視認され難くなると共に、白色のドット模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、青地に白色のドット模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0023】
実施例3
変色体の作製
支持体として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して7ポイントの文字「日本」と、前記文字の上段に4ポイントの送り仮名からなる文字「にほん」からなる青色の着色像を形成した。
次いで、前記着色像上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ピンク色顔料〔商品名:TCルビンFR-H、大日精化工業(株)製〕1.0部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュの水玉模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて水玉模様の多孔質像を形成して変色体を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は70:30であった。
前記支持体上には、問題表示部として日本の国旗が印刷され、前記日本の国旗の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
また、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)は0.78(K:0.23、C:0.14、M:0.30、Y:0.11)、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)は0.45(K:0.14、C:0.01、M:0.26、Y:0.04)、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)は0.29(K:0.06、C:0.03、M:0.18、Y:0.02)となり、D1-D2=0.33であり、D2-D3=0.16であった。
【0024】
前記変色体は、乾燥状態では日本の国旗の近傍にパステル調のピンク色の多孔質層上に白色水玉模様の多孔質像(ピンク地に白色の水玉模様)が視認されるが、水を付着させた指で水を付着させると、多孔質像は透明化し、且つ、多孔質層がピンク色透明化するため、全面がピンク色になり、前記多孔質層のピンク色と着色像の青色が混色となった紫色の「日本」、「とうきょうと」のおくり仮名からなる文字が現出した。
前記様相は温度25℃、湿度50%の室内で3分間この状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「日本」と「にほん」の送り仮名からなる文字は視認され難くなると共に白色の水玉模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、ピンク地に白色の水玉模様となり、「日本」の文字と「にほん」のおくり仮名からなる文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0025】
実施例4
変色体セットの作製
実施例3の変色体と、水付着手段として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて携帯性に優れた変色体セットを得た。
前記変色体のピンク地に白色の水玉模様の箇所に水を収容した前記ペンを用いて筆記すると「日本」、「にほん」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「日本」と「にほん」の文字は視認され難くなると共に、白色の水玉模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、ピンク地に白色の水玉模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0026】
実施例5
変色体の作製
支持体として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して6ポイントの文字「日本」、「アメリカ合衆国」からなる黒色の各着色像を形成した。
次いで、前記各着色像上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーF707-E、山陽色素(株)製〕0.3部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのチェック模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて格子模模様の多孔質像を形成して変色体を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は80:20であった。
前記支持体上には、問題表示部として世界地図が印刷され、前記世界地図の日本とアメリカ合衆国の位置の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
また、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)は1.26(K:0.38、C:0.59、M:0.20、Y:0.09)、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)は0.78(K:0.23、C:0.42、M:0.11、Y:0.02)、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)は0.18(K:0.06、C:0.08、M:0.03、Y:0.01)となり、D1-D2=0.48であり、D2-D3=0.60であった。
【0027】
前記変色体は、乾燥状態では世界地図の日本とアメリカ合衆国の近傍にパステル調の青色の多孔質層上に白色格子模様の多孔質像(青地に白色の格子模様)が視認されるが、水を含ませた筆を用いて水を付着させると、多孔質像は透明化し、且つ、多孔質層が青色透明化するため、全面が青色になり、前記多孔質層の青色と着色像の黒色が混色となった暗青色の「日本」、「アメリカ合衆国」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「日本」と「アメリカ合衆国」の文字は視認され難くなると共に、白色の格子模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、青地に白色の格子模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0028】
変色体セットの作製
実施例6
実施例5の変色体と、水付着手段として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて携帯性に優れた変色体セットを得た。
前記変色体の青地に白色の格子模様の箇所に水を収容した前記ペンを用いて筆記すると「日本」、「アメリカ合衆国」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「日本」と「アメリカ合衆国」の文字は視認され難くなると共に、白色の格子模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、青地に白色の格子模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0029】
参考例1
変色体の作製
支持体として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して8ポイントの文字「犬」、「猫」からなる黒色の着色像を形成した。
次いで、前記各着色像上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ピンク色顔料〔商品名:TCルビンFR-H、大日精化工業(株)製〕1.5部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなるピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュの水玉模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて水玉の抜き柄模様の多孔質像を形成して変色体を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は30:70であった。
前記支持体上には、問題表示部として動物の絵(犬と猫)が印刷され、前記犬と猫の絵の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
また、前記着色像上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D1)は1.36(K:0.59、C:0.15、M:0.45、Y:0.17)、支持体上に設けた多孔質層の乾燥状態の色濃度(D2)は0.55(K:0.18、C:0.01、M:0.30、Y:0.06)、多孔質層上に設けた多孔質像の乾燥状態の色濃度(D3)は0.41(K:0.07、C:0.03、M:0.28、Y:0.03)となり、D1-D2=0.81であり、D2-D3=0.14であった。
【0030】
前記変色体は、乾燥状態では動物の絵(犬と猫)の近傍にピンク色の多孔質層上に白色の水玉の抜き模様の多孔質像(ピンク地に白色水玉の抜き模様)が視認されるが、水を付着させた指で水を付着させると、多孔質像は透明化し、且つ、多孔質層がピンク色透明化するため、全面がピンク色になり、前記多孔質層のピンク色と着色像の黒色が混色となった赤黒色の「犬」、「猫」の文字が現出した。
前記様相は温度25℃、湿度50%の室内で3分間この状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「犬」と「猫」の文字は視認され難くなると共に白色水玉の抜き模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、ピンク地に白色水玉の抜き模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0031】
変色体セットの作製
参考例2
参考例1の変色体と、水付着手段として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて携帯性に優れた変色体セットを得た。
前記変色体のピンク地に白色水玉の抜き模様の箇所に水を収容した前記ペンを用いて筆記すると「犬」と「猫」の文字が現出した。
前記様相は25℃、湿度50%の室内で3分間はこの状態を示していたが、乾燥するにつれて徐々に多孔質層と多孔質像が不透明化して「犬」と「猫」の文字は視認され難くなると共に、白色水玉の抜き模様が現出し、5分後には水を付着させる前の状態、即ち、ピンク地に白色水玉の抜き模様となり、文字は視認されなくなった。
前記様相変化は、水を付着させることにより何度も繰り返し行なうことができ、知育玩具や教習玩具として有用であった。
【0032】
比較例1
変色体の作製
支持体として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して12ポイントの文字「東京都」と、前記文字の上段に6ポイントの送り仮名からなる文字「とうきょうと」からなる黒色の着色像を形成した。
次いで、前記着色像上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーF707-E、山陽色素(株)製〕0.4部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのドット模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させてドット模様の多孔質像を形成して変色体を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は90:10であった。
前記支持体上には、問題表示部として日本地図が印刷され、前記日本地図の東京都の位置の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
前記変色体は、乾燥状態では日本地図の東京都の近傍にパステル調の青色の多孔質層上に白色ドット模様の多孔質像(青地に白色のドット模様)が視認されるが、着色像を視覚的にカムフラージュする効果に乏しいため「東京都」の文字が多孔質層の淡青色と多孔質像の白色のドット模様を介して視認でき、知育玩具や教習玩具としての実用性を満たしていなかった。
【0033】
比較例2
変色体の作製
支持体として白色の合成紙上に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非変色性紫外線硬化型オフセット印刷インキを用いて、オフセット印刷機でプロセス印刷(解像度:180線・350dpi)して12ポイントの文字「東京都」と、前記文字の上段に6ポイントの送り仮名からなる文字「とうきょうと」からなる黒色の着色像を形成した。
次いで、前記着色像3上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料〔商品名:サンダイスーパーブルーF707-E、山陽色素(株)製〕0.4部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成した。
次いで、前記多孔質層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水35部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤1部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのチェック模様のスクリーン版にて印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させてドットの抜き模様の多孔質像を形成して変色体を得た。
なお、乾燥状態で前記多孔質層が視認される箇所の面積と、乾燥状態で前記多孔質像が視認される箇所の面積比率は10:90であった。
前記支持体上には、問題表示部として日本地図が印刷され、前記日本地図の東京都の位置の近傍に前記着色像と多孔質層と多孔質像の重ね刷り印刷部が設けられ、前記着色像は問題表示部の正答となっている。
前記変色体は、乾燥状態では日本地図の東京都の近傍にパステル調の青色の多孔質層上に白色ドット模様の多孔質像(青地に白色のドット模様)が視認されるが、着色像を視覚的にカムフラージュする効果に乏しいため「東京都」の文字が多孔質層の淡青色と多孔質像の白色のドット模様を介して視認でき、知育玩具や教習玩具としての実用性を満たしていなかった。
【符号の説明】
【0034】
1 変色体
2 支持体
3 着色像
4 多孔質層
5 多孔質像