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  • 特許-コイル部品、およびボビン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】コイル部品、およびボビン
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230904BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20230904BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230904BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230904BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01F30/10 F
H01F27/28 131
H01F27/29 T
H01F27/32 150
H01F30/10 E
H01F30/10 A
H01F27/26 160
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019115624
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002590
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】519315280
【氏名又は名称】NJコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正実
(72)【発明者】
【氏名】大田 智嗣
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-094804(JP,U)
【文献】特開2016-092069(JP,A)
【文献】実開平04-087615(JP,U)
【文献】実開平10-000205(JP,U)
【文献】特開2001-297925(JP,A)
【文献】特開2002-118023(JP,A)
【文献】実公昭49-46985(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/28
H01F 27/29
H01F 27/32
H01F 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する三方向を前後方向、左右方向、上下方向として、
前後方向を巻軸として導線が巻回されてなるコイルと、中脚を備えたコアと、前記導線が巻回されるボビンと、を備えたコイル部品であって
前記ボビンは、前後に開口を有して前記中脚が挿通される中空筒状の中空筒状の巻軸部と、当該巻軸部の下方に一体的に形成された端子台とを有し、
前記端子台は、左右方向からみると、下方が前後外方向に突出する階段状に形成され、下段側に前後外方向に突出する端子が取り付けられているとともに、上段側に前後外方向に棒状に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記端子が突出する位置よりも上方に形成され、
前記導線の端部は、前記突起部の下端に接しつつ当該突起部の下方を経由して前記端子に取り付けられている、
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記ボビンには、前記端子を前後外方向に案内する案内溝が形成され、
前記案内溝は、上方が開放しつつ、前記端子台の前後の端面に開口して前後内方向に延長して形成され、
前記突起部は、前記案内溝と上下方向で重複しない位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コアは、前後方向から見て下縁辺が台形状に切り欠かれた形状を有し、
前記端子台は、その上端側が、前記コアをその下縁辺で支持する形状に形成されているとともに、左右に分割して配置され、
左右に分割して配置されている二つの前記端子台の間には、前記導線の端部を前後外方向に案内する引出溝が形成され、
前記引出溝は、前記巻軸部の外周に連続して前後外方向に延長して形成され、
前記引出溝を左右に分割する仕切部が前記巻軸部の外周位置から下方に向けて形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻軸部の前後両端にフランジが形成され、
前記コアの前後内方の面と、前記フランジの前後外方の面とが接着剤によって接着され 前記フランジの前後外方の面には、前後方向から見て、前記巻軸部を取り囲む接着剤滞留溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
互いに直交する三方向を前後方向、左右方向、上下方向として、
前後方向を巻軸として導線が巻回されてなるコイルを有するコイル部品を構成するボビンであって、
前後に開口を有する中空筒状の巻軸部と、当該巻軸部の下方に一体的に形成された端子台とを有し
前記端子台は、左右方向からみると、下方が前後外方向に突出する階段状に形成され、下段側に前後外方向に突出する端子が取り付けられているとともに、上段側に前後外方向に棒状に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記端子が突出する位置よりも上方に形成されている、
ことを特徴とするボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品、およびボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスなどのコイル部品には、端子を備えて基板上に直接実装することができるものがある。この種(以下、基板実装型と言うことがある)のコイル部品のボビンは、コイルの巻線が巻回される巻軸部と、コイル部品を基板に実装するための端子が取り付けられた端子台とが一体的に形成されている。端子は、導電性の線材からなり、中間部分がボビン内に埋め込まれている。そして、端子の一端が、コイル部品を基板に実装する際に、半田付けなどによって基板に固定される実装用端子となっており、他端がコイルの巻線の巻きはじめと巻き終わりの端部が巻き付けられる、所謂「絡げ端子」となっている。
【0003】
なお、基板実装型のコイル部品には、コイルの巻軸が基板の面と平行となる横型と、巻軸と基板の面とが直交する縦型とがある。横型のコイル部品は、縦型のコイル部品に対し、基板に実装した際の上下高を抑制することができ、低背化に有利である。
【0004】
ここで、横型のコイル部品の巻軸方向を前後方向とし、コイル部品が基板に実装された際に、基板の面に直交する方向を上下方向とし、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向とすると、横型の基板実装型のコイル部品のボビンは、前端と後端とに開口を有する中空筒状の巻軸部を備え、巻軸部の下方に複数の端子を備えた端子台が形成されている。ボビンに装着されるコアは、左右に外脚を有して中脚がボビンの巻軸部の中空部に挿通される。
【0005】
各端子は、L字状に屈曲し、絡げ端子は、端子台の前端と後端から、それぞれ、前後外方に向かって突出し、実装用端子は下方に向かって突出している。そして、巻軸部に巻回されるコイルの巻線の端部は、ボビンの下方から前方、および後方に向かって引き出されて絡げ端子に取り付けられる。なお、以下の非特許文献1には、様々な形状のコアについて記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】FDK株式会社、”fe_shape.pdf”、[online]、[令和1年6月10日検索]、インターネット<URL:http://www.fdk.co.jp/cyber-j/pdf/fe_shape.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絡げ端子を備えた横型の基板実装型のコイル部品(以下、コイル部品ということがある)は、低背化に有利であるが、巻軸が実装面と平行であることに起因する種々の問題がある。例えば、巻軸方向を前後方向とすると、ボビンの巻軸部に巻回されたコイルの導線の端部は、前後方向に引出され、その引き出された導線の端部(以下、引出線と言うことがある)が、前後外方向に突出する絡げ端子に取り付けられている。そして、引出線は、コアとの絶縁性を確保するために、巻軸部から絡げ端子に至る経路においてコアと接触しないようにしておく必要がある。そのため、コイル部品は、その組み立て工程において、引出線がコアに接触しないように引出線に癖を付ける「フォーミング作業」が必要となる。そして、フォーミング作業は、コイル部品のコストダウンを阻害する要因の一つになる。
【0008】
そこで本発明は、絡げ端子を備えつつ、コアとコイルの引出線との絶縁性が確保され、フォーミング作業が不要な横型の基板実装型のコイル部品と、そのコイル部品を構成するボビンとを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、互いに直交する三方向を前後方向、左右方向、上下方向として、前後方向を巻軸として導線が巻回されてなるコイルと、中脚を備えたコアと、前記導線が巻回されるボビンと、を備えたコイル部品であって、前記ボビンは、前後に開口を有して前記中脚が挿通される中空筒状の巻軸部と、当該巻軸部の下方に一体的に形成された端子台とを有し、前記端子台は、左右方向からみると、下方が前後外方向に突出する階段状に形成され、下段側に前後外方向に突出する端子が取り付けられているとともに、上段側に前後外方向に棒状に突出する突起部を有し、前記突起部は、前記端子が突出する位置よりも上方に形成され、前記導線の端部は、前記突起部の下端に接しつつ当該突起部の下方を経由して前記端子に取り付けられている、コイル部品としている。
【0010】
本発明のその他の態様は、互いに直交する三方向を前後方向、左右方向、上下方向として、前後方向を巻軸として導線が巻回されてなるコイルを有するコイル部品を構成するボビンであって、前後に開口を有する中空筒状の巻軸部と、当該巻軸部の下方に一体的に形成された端子台とを有し、前記端子台は、左右方向からみると、下方が前後外方向に突出する階段状に形成され、下段側に前後外方向に突出する端子が取り付けられているとともに、上段側に前後外方向に棒状に突出する突起部を有し、前記突起部は、前記端子が突出する位置よりも上方に形成されている、ボビンである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絡げ端子を備えつつ、コアとコイルの引出線との絶縁性が確保され、フォーミング作業が不要な横型の基板実装型のコイル部品と、そのコイル部品を構成するボビンとが提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るコイル部品の外観図である。
図2】上記実施例に係るコイル部品の分解斜視図である。
図3】上記実施例に係るコイル部品を構成するボビンを示す図である。
図4】上記実施例に係るコイル部品において、絡げ端子に対する引出線の取り付け状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。図面によっては説明に際して不要な符号を省略することもある。
【0014】
===実施例===
図1に、本発明の実施例に係るコイル部品1の外観図を示した。図1に示したように、実施例に係るコイル部品1は、導線21が巻軸100周りに巻回されてなるコイル2と、樹脂の一体成形品からなるボビン3と、コイル2を囲繞して閉磁路を形成するコア4とを基本的な構成としている。コア4は、巻軸100方向で互いに対面する二つのコア部材(4a、4b)によって構成されている。コア部材(4a、4b)は、側面を周回するテープ5によって固定されている。また、ボビン3には、複数本の端子6が取り付けられた端子台31が形成されている。各端子6は、一本の線材がL字状に屈曲されてなり、線材の一端が絡げ端子6aとなり、他端が実装用端子6bとなっている。そして、絡げ端子6aには、引出線22が取り付けられている。なお、以下では、実施例に係るコイル部品1について、便宜的に、巻軸100方向を前後方向とし、絡げ端子6aがボビン3の前方および後方に向かって突出することとする。また、実装用端子6bが絡げ端子6aと直交しつつ下方に突出することとして上下の各方向を規定し、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向とする。
【0015】
図2に実施例に係るコイル部品1の分解斜視図を示した。また、図3にコイル部品1を構成するボビン3を示した。図3(A)は、ボビン3を上方から見たときの斜視図であり、図3(B)は、ボビン3を下方から見たときの斜視図である。図2に示したように、コア4を構成する二つのコア部材(4a、4b)は、PM型と呼ばれる形状であり、円柱状の中脚41を備え、上下方向から見ると、中脚41と左右両端に形成された外脚42とによってE字型に形成され、前後方向から見ると、矩形の上縁辺と下縁辺端とが、中脚41の外周に向かって台形状に切り欠かれた翼状の形状を有する。
【0016】
ボビン3は、図3(A)、(B)に示したように、巻軸100と共通の円筒軸を有する中空円筒状の巻軸部32の下方に端子台31が一体的に形成されてなる。巻軸部32の前後両端側にはフランジ33が形成されている。端子台31には、前方と後方とに、それぞれ8本ずつ、合計16本の端子6が取り付けられている。端子台31とフランジ33とは、前後内方の面34を共有し、端子台32がフランジ33に対して前後外方向に突出している。なお、端子台31の下端側で、端子6が取り付けられている領域は、ボビン3の下方に形成された溝(以下、引出溝8と言うことがある)によって前方と後方とで左右に分割され、4本で一組の端子6が四箇所に分散して配置されている。
【0017】
フランジ33の前後外方の面35には、前後方向から見て、PM型のコア部材(4a、4b)の上縁辺に沿う庇状の部位(以下、庇部36と言うことがある)が前後外方向に突出して形成されている。また、端子台31の上端側は、前後方向から見ると、左右内方側がPM型のコア部材(4a、4b)の下縁辺を下支えする形状に形成されている。具体的には、巻軸部32の下端側において、中空部32aの内周面32bが前後外方向に突出し、端子台31の上端31aに連続している。端子台31の上端31aは、前後方向から見ると下に凸の弧状で、その弧の左右両端から左右外方に向かって下る傾斜面31bが連続している。そして、当該傾斜面31bの下端が上下方向に法線を有する平面31cに連続している。また、端子台31は、左右方向からみると、下方が前後外方向に突出する階段状になっている。そして、下段側に端子6が取り付けられている。また、上段側には、前後外方向に突出する突起部7が形成されている。
【0018】
なお、端子台31の下段の上面31dには、絡げ端子6aを案内するために、下段の前端面に開口を有して上方に開放する溝(以下、案内溝31eと言うことがある)が前後内方向に向かって形成されている。この案内溝31eの底には、端子台31の下面に連絡する図示しない貫通孔が形成されており、各端子6は、直線状の線材をこの貫通孔に下方から挿通して上方に突出させた後、この上方に突出した部分を前後外方向に屈曲することでL字型に形成されたものである。なお、実施例に係るコイル部品1では、端子台31の貫通孔に挿通した直線状の線材が突起部7に緩衝しないように、突起部7と案内溝31eとは、上下方向で重ならないように形成されている。また、上述したように、端子台31において、端子6が取り付けられている下段側の領域は、引出溝8によって左右に分割されている。そして、図3(B)に示したように、引出溝8の底部は、前後内方向に向かって巻軸部31の外周面32cに連続している。また、引出溝8には、自身を左右に分割する仕切部81が形成されている。
【0019】
実施例に係るコイル部品1の組立手順については、図1図3を参照すると、まず、ボビン3の巻軸部32に導線21を巻回してコイル2を形成した上で、巻き始め側の引出線22と巻き終わり側の引出線22とを絡げ端子6aに巻き付ける。あるいは、巻き始め側の引出線22を所定の絡げ端子6aに巻き付けた状態で、導線21を巻軸部32に巻回し、巻き終わり側の引出線22を対応する絡げ端子6aに取り付ける。次いで、ボビン3のフランジ33の前後外方の面35に接着剤を塗布し、コア部材(4a、4b)の中脚41をボビン3の巻軸部32の中空部32aに挿通し、コア部材(4a、4b)の前後内方向の面を、フランジ33の前後外方向の面に接触させる。また、コア4の周囲にテープ5を巻回して、二つのコア部材(4a、4b)を固定する。接着剤が固化すればコイル部品1が完成する。そして、以上の構成や構造を備えた実施例に係るコイル部品1では、ボビン3に形成された突起部7を利用することで、引出線22に対するフォーミング作業をしなくても、引出線22とコア4との接触を確実に抑止することができるようになっている。
【0020】
図4に、コイル2から絡げ端子6aまでの引出線22の経路を示した。図4は、コイル部品1を前後方向から見たときの正面図であり、中心線200に対して紙面左半分に、実施例に係るコイル部品1が示され、右半分にボビン13に突起部7や端子台31の下段側を左右に分割する引出溝8が設けられていないコイル部品(以下、比較例に係るコイル部品11と言うことがある)が示されている。なお、図4では、ボビン(3,13)とコイル2とが識別し易いように、ボビン(3,13)を網点のハッチングで示している。また、コア4を省略している。
【0021】
図4に示したように、実施例に係るコイル部品1では、引出線22が、ボビン3に形成された突起部7の下方を経由して絡げ端子6aまで案内されている。それによって、引出線22が上方へ湾曲した形状であっても、引出線22が突起部7の下端に接し、引出線22が、コア4が配置される領域にまで逸脱することがない。あるいは、引出線22を絡げ端子6aに取り付けたり、絡げ端子6aに取り付けた引出線22を巻軸部22に案内したりする過程で引出線22を突起部7の下縁辺に当接させれば、フォーミング作業を行うことなく、引出線22がコア部材(4a、4b)に接触しない形状に整形される。
【0022】
一方、比較例に係るコイル部品11では、ボビン13に突起部7が形成されていないため、図中点線で示したように、引出線22aを直接絡げ端子6aに接続させようとすると、引出線22aがコアに接触する可能性がある。そこで、図中実線で示したように、フォーミング作業により、引出線22aに癖を付け、引出線22bがコア4に接触しないようにしている。
【0023】
また、実施例に係るコイル部品1は、端子台31の下端側に、巻軸部32の外周面32cの位置まで切り欠いた引出溝8が形成されている。そのため、巻き始め側の引出線22が、絡げ端子6aからフランジ33の縁を跨ぐことなく巻軸部32の外周面32cにまで案内される。そのため、コイル2の導線21を巻軸部32に巻回していく過程で、フランジ33の縁を跨いだ部分がフランジ33の形状に沿うように整形されることがない。すなわち、導線21が整形されることで引出線22がコイル2側に引っ張られることがない。
【0024】
一方、引出溝8がない比較例に係るコイル部品11では、巻き始め側の引出線22bが、フランジ33の縁を跨ぐため、導線21を巻軸部32に巻回していく過程で、巻き始め側の引出線22bがフランジ33の形状に沿うように整形され、引出線22bが巻軸側へ引っ張られる。そのため、引出線(22a、22b)が短くなり、引出線22bが絡げ端子6aに届かなくなる可能性がある。引出線22bが確実に絡げ端子6aに届くように引出線22bを長めに引き出しておけば、導線21の余長部分を切断する作業が必要となる。また、余長部分の導線21が無駄になる。導線21を巻軸部32に巻回する前に、巻き始め側の引出線22bを絡げ端子6aに取り付けておく場合には、導線21を巻軸部32に巻回していく過程で、引出線22bの部分に強い張力が掛かり、導線21が切断したり、絡げ端子6aに取り付けた引出線22bが脱落したりする可能性がある。なお、比較例に係るコイル部品11のボビン13に、引出溝8を設けた場合では、図中鎖線で示したようにコア4と引出線22cとが接触する可能性があることからフォーミング作業が必要となる。また、フォーミング作業に際して引出線22cが引っ張られるため、導線21に余長部分が必要になったり、引出線22cの断線や絡げ端子からの脱落などが生じたりする。
【0025】
このように、実施例に係るコイル部品1では、ボビン3に形成された突起部7により、フォーミング作業を行わなくても、コア4と引出線22との接触を確実に抑止することができる。また、ボビン3には、巻軸部32の外周面32cの位置にまで及ぶ深い引出溝8が形成されて、引出線22に余長部分を設けたり、絡げ端子6aに取り付けた引出線22の切断や脱落が発生したりすることがない。さらに、実施例に係るコイル部品1では、引出溝8を左右に分割する仕切部81が形成されている。それによって、左側および右側のそれぞれの絡げ端子6aに取り付ける引出線22同士の接触も抑止することができる。
【0026】
<コアの接着について>
上述したように、実施例に係るコイル部品1は、接着剤によってコア部材(4a、4b)がボビン3のフランジ33に接着されている。そして、従来のコイル部品では、ボビン3とコア部材(4a、4b)とを接着する工程において、コイル部品の上下方向を鉛直方向に一致させた状態で、フランジ33の前後外方の面35に接着剤を塗布した場合、フランジ33の前後外方の面35に塗布した接着剤が、鉛直下方に垂れ、コア部材(4a、4b)の中脚41に付着する可能性があった。
【0027】
接着剤は、固化する際に発熱するため、コア部材(4a、4b)やボビン3は、接着剤が固化する際の温度上昇とその後の冷却に際し、膨張したり収縮したりする。ボビン3の巻軸部32にコア部材(4a、4b)の中脚41が嵌め込まれている場合など、巻軸部32の内周面32bと中脚41の外周面との間に遊びが少ない場合では、中脚41に付着した接着剤が固化する際に、コア部材(4a、4b)を構成するフェライト材料と、ボビン3を構成する樹脂材料との熱膨張係数の違いによりコア部材(4a、4b)やボビン3が破損する可能性がある。そのため、従来のコイル部品では、コア部材(4a、4b)をフランジ33の前後外方の面35に接着する工程に際し、接着剤の量や塗布位置を厳しく管理する必要があった。
【0028】
しかし、実施例に係るコイル部品1では、図2図4に示したように、フランジ33の前後外方の面35に、接着剤の垂れを抑止するための溝(以下、接着剤滞留溝9と言うことがある)が、前後方向から見て巻軸部32の周囲を取り囲むように形成されている。本実施例では、フランジ33の前後が異方の面に形成された上記庇部36と、端子台31において上端31aから左右方向に下る斜面32bとの間に左右対称となるように、巻軸100と同心となる複数の弧状の接着剤滞留溝9が形成されている。そして、コア部材(4a、4b)をフランジ33の前後外方の面35に接着する際には、接着剤をこの接着剤滞留溝9の内側に塗布することとしている。それによって、実施例に係るコイル部品1では、接着剤が接着剤滞留溝9の内方に留まり、接着剤がコア部材(4a、4b)の中脚41に付着することがない。すなわち、実施例に係るコイル部品1は、接着剤が固化する際の熱に起因するコア部材(4a、4b)やボビン3の破損を抑止できるものとなっている。
【0029】
===その他の実施例===
上記実施例に係るコイル部品1のコア部材(4a、4b)は、PM型に限らず、前後方向から見て、上縁辺と下縁辺とに台形状の切欠が形成されたPQ型、あるいは矩形の下縁辺のみが台形状に切り欠かれた形状のものであってもよい。切欠がないE型などであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1,11 コイル部品、2 コイル、3,13 ボビン、4 コア、
4a,4b コア部材、5 テープ、6 端子、6a 絡げ端子、6b 実装用端子、
21 導線、22,22a~22c 引出線、31 端子台、31a 端子台の上端、
32 巻軸部、32a 中空部、32b 中空部の内面、33 フランジ、
34 端子台とフランジの前後内方の面、41 中脚、42 外脚、8 引出溝、
81 仕切部、9 溝、35 フランジの前後外方の面、100 巻軸
図1
図2
図3
図4