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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】デバイス搭載用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20230904BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20230904BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230904BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/12 C
H05K1/02 Z
H05K1/05 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019126345
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021012947
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-004731(JP,A)
【文献】特開2016-059147(JP,A)
【文献】特開2006-179856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12-23/15
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 1/00-1/02
H05K 1/05
H05K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスが搭載されるデバイス搭載用基板であって、
金属もしくはセラミックスまたはこれらの複合体からなる導電性を有する基板本体と、
前記基板本体の表面に形成され、前記デバイスが搭載される搭載面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の内部に、前記搭載面に沿って延在する複数の導電層と、
を備え、
前記複数の導電層は、電気的に浮いた状態で形成されると共に前記絶縁層の厚み方向に互いに離間して配置され、
前記複数の導電層によって前記絶縁層が区画されることにより形成された複数の分割絶縁層の厚みが均等である、
デバイス搭載用基板。
【請求項2】
デバイスが搭載されるデバイス搭載用基板であって、
金属もしくはセラミックスまたはこれらの複合体からなる導電性を有する基板本体と、
前記基板本体の表面に形成され、前記デバイスが搭載される搭載面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の内部に、前記搭載面に沿って延在する複数の導電層と、
を備え、
前記複数の導電層は、電気的に浮いた状態で形成されると共に前記絶縁層の厚み方向に互いに離間して配置され、前記絶縁層から露出しないように形成されている、
デバイス搭載用基板。
【請求項3】
前記導電層は、前記搭載面に対して垂直な方向から見て、前記デバイスが搭載される領域を包含するように形成されている、請求項1または2に記載のデバイス搭載用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス(SiCデバイス等)やLED等のデバイスが搭載されるデバイス搭載用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(例えばSiCデバイス)やLED等のデバイスは、通常、金属製の基板に搭載されて使用される。デバイスを金属製の基板に搭載することにより、デバイスからの発熱が基板によって放熱されるように構成されている。すなわち、金属製の基板が、デバイスに対するヒートシンクとして機能する(特許文献1等)。
【0003】
ここで、デバイスを金属製基板に搭載する際には、基板とデバイスとの間を電気的に絶縁する必要がある。
【0004】
そこで、金属製の基板にデバイスを搭載する際には、基板のデバイス搭載面に絶縁層を設け、この絶縁層の上にデバイスを搭載するようにしている。
【0005】
近年、デバイスのハイパワー化や高耐電圧化の要請に伴い、デバイスと基板との間の電気絶縁性(耐電圧)を高める必要があり、デバイスと基板との間に設ける絶縁層の厚みを厚くする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-145376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、デバイスと基板との間に設ける絶縁層の厚みを厚くすると、デバイスで発生した熱量を基板側に十分に伝熱することができず、デバイスの温度が上昇して使用できなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであって、デバイスとの間に設ける絶縁層の厚みを厚くすることなく、電気絶縁性(耐電圧)を高めることができるデバイス搭載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため、本発明の第1態様のデバイス搭載用基板は、金属もしくはセラミックスまたはこれらの複合体からなる導電性を有する基板本体と、
前記基板本体の表面に形成され、前記デバイスが搭載される搭載面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の内部に、前記搭載面に沿って延在する複数の導電層と、
を備え、
前記複数の導電層は、電気的に浮いた状態で形成されると共に前記絶縁層の厚み方向に互いに離間して配置され、
前記複数の導電層によって前記絶縁層が区画されることにより形成された複数の分割絶縁層の厚みが均等である、ことを特徴とする。
[2]上記目的を達成するため、本発明の第2態様のデバイス搭載用基板は、
金属もしくはセラミックスまたはこれらの複合体からなる導電性を有する基板本体と、
前記基板本体の表面に形成され、前記デバイスが搭載される搭載面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の内部に、前記搭載面に沿って延在する複数の導電層と、
を備え、
前記複数の導電層は、電気的に浮いた状態で形成されると共に前記絶縁層の厚み方向に互いに離間して配置され、前記絶縁層から露出しないように形成されている、ことを特徴とする
【0010】
上記特徴を備えた本発明のデバイス搭載用基板によれば、絶縁層が、その内部に延在する導電層によって複数の層に区画されているので、区画された複数の層のうちの一層に耐電圧破壊が生じた場合でも、残りの層で電気絶縁性を維持することが可能であり、電気絶縁性の信頼性が向上する。また、絶縁層が区画されていない場合に比べて、耐電圧平均値(ワイブル分布の平均値)が高くなり、電気絶縁性の信頼性が向上する。
ここで、「均等」とは、分割絶縁層同士を比較したとき一方の分割絶縁層の厚みが他方の分割絶縁層の厚みの90%~110%の範囲にあるものを意味する
【0011】
]また、本発明のデバイス搭載用基板において、
前記導電層は、前記搭載面に対して垂直な方向から見て、前記デバイスが搭載される領域を包含するように形成されている、ことが好ましい。
【0012】
上記特徴を備えた本発明のデバイス搭載用基板によれば、上述した作用効果をより確実に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態であるデバイス搭載用基板にデバイスを搭載した状態を模式的に示した縦断面図。
図2図1に示したデバイス搭載用基板の絶縁層の部分を拡大して示した縦断面図。
図3図1に示した実施形態の一変形例によるデバイス搭載用基板の絶縁層の部分を拡大して示した縦断面図。
図4図1に示した実施形態の他の変形例によるデバイス搭載用基板の絶縁層の部分を拡大して示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態であるデバイス搭載用基板について、図面を参照して説明する。なお、図示内容の理解を容易にするための便宜上、図面に示した各部材のアスペクト比は実際の値から変更されている。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるデバイス搭載用基板にデバイスを搭載した状態を模式的に示している。
【0023】
本実施形態によるデバイス搭載用基板1は、基板本体2を備えている。基板本体2は、方形板状、円板状等、デバイスの形状に適した各種の形状とすることができる。
【0024】
基板本体2は、金属、もしくはセラミックス、またはこれら金属および/またはセラミックスの複合体からなる、導電性を有する材料によって形成されている。ここで、基体本体2を形成する金属としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等があげられる。また、基体本体2を形成する導電性を有するセラミックスとしては、炭化ケイ素(SiC)等があげられる。
【0025】
基板本体2の表面には、絶縁層3が設けられている。
【0026】
図2は、図1に示したデバイス搭載用基板1の絶縁層3の部分を拡大して示している。絶縁層3の、基板本体2と反対側の表面が、デバイス4が搭載されるデバイス搭載面3aを形成している。絶縁層3は、絶縁性の材料から成る基体5と、基体5の内部に埋設された、導電性の材料から成る導電層6とを備えている。
【0027】
絶縁層3の基体5を構成する絶縁性の材料は、有機材料でも良いし、セラミックス材料等の無機材料でも良い。無機材料としては、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y)、フォルステライト(2MgO・SiO))、その他の酸化物、窒化物およびこれらの複合材があげられる。
【0028】
導電層6を構成する導電性の材料としては、金属が好適であり、例えば、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)等があげられる。導電層6の材料は、例えば導電層6を形成する製膜工程の耐熱性に合わせて選択される。製膜の方法としては、化学気相成長法(CVD)、プラズマ溶射等の溶射法、物理気相成長法(PVD)等、種々の製膜方法を好適に使用可能であり、また、複数の製膜方法を複合的に使用することもできる。
【0029】
本実施形態によるデバイス搭載用基板1においては、導電層6が複数(本例では3つ)設けられており、複数の導電層6は、絶縁層3の基体5の厚み方向に互いに離間して配置されている。
【0030】
複数の導電層6のそれぞれは、その周囲が、基体5を構成する絶縁材料で包囲されており、電気的に浮いた状態(フローティング状態)となされている。
【0031】
また、複数の導電層6のそれぞれは、デバイス搭載面3aの延在方向に沿って延在している。各導電層6は、デバイス搭載面3aに対して垂直な方向から見て、デバイス4が搭載される領域(デバイス搭載領域)を包含するように形成されている。
【0032】
絶縁層3の基体5は、複数の導電層6によって区画されることにより、デバイス搭載面3aに対して垂直な方向から見て、少なくともデバイス搭載領域に対応する部分が、複数(本例では4つ)の分割絶縁層5aを形成している。
【0033】
そして、複数の分割絶縁層5aの厚みは、均等とされている。すなわち、複数の導電層6同士の間隔が略同一であり、且つ、絶縁層3のデバイス搭載面3aとデバイス搭載面3aに最も近い導電層6との間隔が、複数の導電層6同士の間隔と略同一であり、且つ、絶縁層3の裏面3bとこの裏面3bに最も近い導電層6との間隔が、複数の導電層6同士の間隔と略同一である。
【0034】
ここで、複数の分割絶縁層5aの厚みが「均等」であるとは、分割絶縁層5a同士を比較したとき、一方の分割絶縁層5aの厚みが他方の分割絶縁層5aの厚みの90%~110%の範囲にあるものを意味する。
【0035】
また、本実施形態によるデバイス搭載用基板1においては、複数の導電層6のそれぞれは、絶縁層3の基体5から外部に露出しないように形成されている。すなわち、絶縁層3の基体5の内部においてデバイス搭載面3の延在方向に沿って延在する各導電層6は、その端縁が絶縁層3の側周面3cに達しておらず、絶縁層3の基体5の内部で終端している。
【0036】
上記構成を備えた本実施形態によるデバイス搭載用基板1においては、デバイス4の使用時に高電圧が印加されて耐電圧破壊が生じた場合でも、その耐電圧破壊は、複数の分割絶縁層5aのうちの1層に留まる。すなわち、他の分割絶縁層5aにおいては耐電圧破壊が生じず、これらの健全な分割絶縁層5aによって、絶縁層3全体として十分な電気絶縁性を維持することができる。
【0037】
このように本実施形態によるデバイス搭載用基板1によれば、デバイス4の使用を不可能とする耐電圧破壊の防止に関する信頼性を、従来の構造のデバイス搭載用基板、すなわち単層の絶縁層を備えたデバイス搭載用基板に比して、高くすることができる。換言すれば、本実施形態によるデバイス搭載用基板1においては、従来構造のデバイス搭載用基板と同等の耐電圧破壊性能を確保する場合、絶縁層の厚みを従来よりも薄くすることができる。
【0038】
すなわち、単層の絶縁層を備えた従来のデバイス搭載用基板の場合、絶縁層の厚さをd、厚さ方向の電位差をVとすると、絶縁層の電界強度Eは、E=V/dとなる。
【0039】
そして、耐電圧破壊が発生するときの電界強度値E(破壊電圧値)は、次式のワイブル分布に従って整理される。
【0040】
F(E)=1-exp{-(E/E(Veff/V)}
F:ワイブル分布関数
m:形状母数
:尺度母数
eff:有効体積
:基準体積
【0041】
このときのワイブル分布における強度値の平均値は、Γをガンマ関数として、
E(平均)=E(Veff/V-1/mΓ(1+1/m)
で表すことができる。
【0042】
これにより、単層の絶縁層を備えた従来のデバイス搭載用基板の場合のワイブル分布の平均値Eと、本実施形態によるデバイス搭載用基板1のワイブル分布の平均値Eとの比は、従来構造における絶縁層の有効体積をVeff2、本実施形態における絶縁層3の個々の分割絶縁層5aの有効体積をVeff1として、
E1/E2=(Veff1/Veff2-1/m
となる。ここで、従来構造と本実施形態とでは、絶縁層の膜質自体には差がなく、m値(形状母数)は変わらない点に留意されたい。
【0043】
eff1/Veff2は、絶縁層の厚み方向に平等電界が形成されているとして、絶縁層がn層に分割されている場合、
eff1/Veff2=(V/n)/V=1/n
となる。
【0044】
よって、m>1、n>1であるため、
E1/E2=(1/n)-1/m>1
となる。
【0045】
すなわち、本実施形態のようにn層に分割した絶縁層3の耐電圧平均値Eは、従来構造の単層の絶縁層の耐電圧平均値Eに比して高い値となる。
【0046】
上記の通り、本実施形態によるデバイス搭載用基板1によれば、複数の分割絶縁層5aのうちの一層に耐電圧破壊が生じた場合でも、他の健全な分割絶縁層5aによって絶縁層3全体としての電気絶縁性を維持することが可能であり、また、耐電圧の平均値を従来構造のものよりも高めることができる。
【0047】
これにより、単層の絶縁層を備えた従来のデバイス搭載用基板に比して、デバイスの使用を不可能とする耐電圧破壊の防止に関する信頼性(電気絶縁性の信頼性)を高めることができ、ひいては、絶縁層の厚みを厚くすることなく耐電圧破壊性能を高めることができる。
【0048】
上記実施形態の一変形例としては、図3に示したように、複数の導電層6のそれぞれの端部が、絶縁層3の側周面3cにおいて露出するように構成しても良い。また、複数の導電層6のうちの一部の導電層6の端部が、絶縁層3の側周面3cにおいて露出するように構成しても良い。
【0049】
上記実施形態の他の変形例としては、図4に示したように、絶縁層3の基体5の内部に導電層6を一層設けるようにしても良い。導電層6は、絶縁層3の基体5の厚さ方向の中央位置に形成されている。なお、絶縁層3の基体5の内部に形成する導電層6の数は任意である。
【0050】
(実施例)
[実施例1]
溶射膜による絶縁層形成
(i)50mm(一片の長さ)×5mm(厚さ)の正方形板状の銅(Cu)製の基板本体2を準備する。
(ii)基板本体2の表面にアルミナ(Al)を溶射して、厚さ30μmのアルミナ溶射膜を形成する。
(iii)アルミナ溶射膜上にニッケル(Ni)を溶射して、厚さ10μmのニッケル溶射膜を形成する。
(iv)ニッケル溶射膜上にアルミナを溶射して、厚さ30μmのアルミナ溶射膜を形成する。
(iii)、(iv)を繰り返し、最後にアルミナ溶射面が形成されるようにする。
そして、アルミナ溶射膜の総厚が150μmとなるようにする。
【0051】
[比較例1]
溶射膜による絶縁層形成
(i)50mm(一片の長さ)×5mm(厚さ)の正方形板状の銅(Cu)製の基板本体を準備する。
(ii)基板本体の表面にアルミナ(Al)を溶射して、厚さ150μmのアルミナ溶射膜を形成する。
【0052】
[実施例2]
CVD膜による絶縁層形成
(i)50mm(一片の長さ)×5mm(厚さ)の正方形板状の銅(Cu)製の基板本体2を準備する。
(ii)基板本体2の表面に厚さ30μmの酸化イットリウム(Y)膜をCVDにより形成する。
(iii)酸化イットリウム膜上に白金(Pt)をPVD法により厚さ3μmの白金膜を形成する。
(iv)白金膜上に厚さ30μmの酸化イットリウム膜をCVDにより形成する。
(iii)、(iv)を繰り返し、最後に酸化イットリウム膜が形成されるようにする。
そして、酸化イットリウム膜の総厚が150μmとなるようにする。
【0053】
[比較例2]
CVD膜による絶縁層形成
(i)50mm(一片の長さ)×5mm(厚さ)の正方形板状の銅(Cu)製の基板本体を準備する。
(ii)基板本体の表面に厚さ150μmの酸化イットリウム(Y)膜をCVDにより形成する。
【0054】
上述の実施例1、2および比較例1、2に対して、針電極で耐電圧試験を50箇所行い、ワイブル確率紙にプロットし、平均絶縁強度を計算した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示したように、実施例1(分割絶縁層)の耐電圧平均値は、比較例1(単一の絶縁層)の耐電圧平均値よりも大きい。また、実施例2(分割絶縁層)の耐電圧平均値は、比較例2(単一の絶縁層)の耐電圧平均値よりも大きい。
【0057】
このように、絶縁層3の基体5を導電層6により分割構造とすることにより、単一の絶縁層に比して耐電圧平均値を高めることができることを確認できた。
【符号の説明】
【0058】
1 デバイス搭載用基板
2 基板本体
3 絶縁層
3a デバイス搭載面(絶縁層の表面)
3b 絶縁層の裏面
3c 絶縁層の側周面
4 デバイス
5 絶縁層の基体
5a 基体の分割絶縁層
6 導電層
図1
図2
図3
図4