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  • 特許-ポリウレタン弾性糸およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ポリウレタン弾性糸およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/94 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
D01F6/94 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019139719
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021021171
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克哉
(72)【発明者】
【氏名】上林 達昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 利宏
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006242(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153375(WO,A1)
【文献】特開2012-127015(JP,A)
【文献】特開2015-038261(JP,A)
【文献】特開2017-119925(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0028547(KR,A)
【文献】国際公開第2018/128436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/70
D01F 6/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンとリン酸ジルコニウムとを含有するポリウレタン弾性糸であって、
ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素の原子の総質量をM(X)と、ポリウレタン弾性糸に含まれるZr原子の質量をZr(X)と、したとき、質量比率、M(X)/Zr(X)が0.00004以下であるポリウレタン弾性糸。
【請求項2】
ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を含む化合物の総含有率が0.1質量%以下である、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
前記リン酸ジルコニウムの含有量が3質量%以上10質量%以下の範囲である請求項1または請求項2に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項4】
前記リン酸ジルコニウムのメジアン径が0.1μm以上0.7μm以下である、請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項5】
以下に示すアンモニアガス消臭性測定の1項および2項に従いポリウレタン弾性糸0.15gを、アンモニアガスに暴露し、同ガスを吸着させる処理、洗濯処理、および、洗濯後の乾燥処理を1サイクルとし、5サイクル目のサンプルへのアンモニアガス暴露後の乾燥空気中の残存ガス濃度(ppm)を以下に示すアンモニアガス消臭性測定の3項から5項に従い、成分対応検知管(ガステック社製)で測定したアンモニアガス消臭率が70%以上である、請求項1から請求項4のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
アンモニアガス消臭性測定:
1.ポリウレタン弾性糸0.15gをテドラーバッグに入れる。
2.アンモニアを100ppm含む乾燥空気を3L注入して密封し、2時間静置する。
3.2時間静置した後の乾燥空気中の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)で測定する。
4.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空測定とする。
5.下記の式に従って、消臭率を算出する。
【数1】
【請求項6】
リン酸ジルコニウムをポリウレタン紡糸原液の溶剤で用いるのと同じ溶剤を添加した湿潤系として、機械的微粉砕処理した後に、ポリウレタン紡糸原液に添加し紡糸する、請求項1から請求項5のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸を得る、ポリウレタン弾性糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返しの着用と洗濯後においてもアンモニア臭気に対する消臭性に優れたポリウレタン弾性糸に関するものであり、汗臭、加齢臭に対する消臭性を有する布帛を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向が高まり肌着や機能性インナーウエアにおいて伸縮性素材が幅広く使用されている。特に夏場のインナーウエアやスポーツ分野においては繰り返しの洗濯を経ても消臭性能が損なわれない素材が求められている。
【0003】
これらの用途においては、汗臭、加齢臭に対する消臭性のニーズが非常に高く、従来このような消臭機能を付与するために、後加工方法による機能付与が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、伸縮性を与える弾性繊維に直接、消臭剤を繊維に含有させる方法も提案されている(特許文献2)。これには活性炭、銀含有ゼオライト、ゼオライト、微粒子酸化亜鉛、金属リン酸塩などの無機消臭剤が用いられている。これらの無機消臭剤は、耐候性・耐薬品性に優れ、急性経口毒性が低いという優れた特性を有している。加えて、耐熱性が高いため、弾性繊維の製造や加工時においても消臭機能が損なわれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-140731号公報
【文献】国際公開2012/053401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法では一時的に消臭性を持つ製品は得られるものの、伸縮性布帛の場合においては機能剤を付着させるためのバインダーにより風合いが損われたり、加工工程が長くなることによる生産性の低下や臭気への暴露と洗濯を繰り返し行うことで消臭機能が低下するといった問題があった。
【0007】
また、弾性繊維に消臭剤を含有させたものを弾性繊維以外の繊維と組み合わせて消臭機能を発現させようとすると、弾性繊維以外の繊維自身がほとんどアンモニア消臭機能を持たないために弾性繊維の混率を非常に高くする必要があり、所望の風合いや物性の生地が得られないという問題があった。また、臭気への暴露と洗濯を繰り返すことにおける耐久性において、消臭性能が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、特にアンモニア臭に対して、暴露と洗濯を繰り返しても優れた消臭性を有するポリウレタン弾性糸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)ポリウレタンとリン酸ジルコニウムとを含有するポリウレタン弾性糸であって、
ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素の原子の総質量をM(X)と、ポリウレタン弾性糸に含まれるZr原子の質量をZr(X)と、したとき、質量比率、M(X)/Zr(X)が0.01以下であるポリウレタン弾性糸。
(2)ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を含む化合物の総含有率が0.1質量%以下である、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3)前記リン酸ジルコニウムの含有量が3質量%以上10質量%以下の範囲である前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
(4) 前記リン酸ジルコニウムのメジアン径が0.1μm以上2μm以下である、前記(1)から(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(5)以下に示すアンモニアガス消臭性測定の1項および2項に従いポリウレタン弾性糸0.15gを、アンモニアガスに暴露し、同ガスを吸着させる処理、洗濯処理、および、洗濯後の乾燥処理を1サイクルとし、5サイクル目のサンプルへのアンモニアガス暴露後の乾燥空気中の残存ガス濃度(ppm)を以下に示すアンモニアガス消臭性測定の3項から5項に従い、成分対応検知管(ガステック社製)で測定したアンモニアガス消臭率が70%以上である、前記(1)から(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
アンモニアガス消臭性測定:
1.ポリウレタン弾性糸0.15gをテドラーバッグに入れる。
2.アンモニアを100ppm含む乾燥空気を3L注入して密封し、2時間静置する。
3.2時間静置した後の乾燥空気中の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)で測定する。
4.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空測定とする。
5.下記の式に従って、消臭率を算出する。
【0010】
【数1】
【0011】
(6) リン酸ジルコニウムをポリウレタン紡糸原液の溶剤で用いるのと同じ溶剤を添加した湿潤系として、機械的微粉砕処理した後に、ポリウレタン紡糸原液に添加し紡糸する、前記(1)から(5)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸を得る、ポリウレタン弾性糸の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンモニア臭に対して、暴露と洗濯を繰り返しても優れた消臭性を有するポリウレタン弾性糸を得ることが出来る。そのため、かかるポリウレタン弾性糸を使用した布帛は着用と洗濯を繰り返しても汗臭、加齢臭に対する消臭性に優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1および比較例2のアンモニアガス吸着-洗濯繰り返し消臭試験の0~11サイクルにおける消臭率の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0015】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0016】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質として得られる構造を含むものであれば、特に限定されるものではない。なお、ここで、ポリウレタンの構造を出発原料で特定するのは、ポリマージオールおよびジイソシアネートそれぞれについて複数種のものを適用する場合があり、そのような場合の構造を、化学名で的確に表現することは、困難であるという事情によるためである。すなわち、出発物質はそれに由来する構造単位を特定するために用いられる。従って、異なる原料を用いて得られたポリウレタンであっても、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質として得られる構造を有するものであれば、これを排除するものではなく、その合成法も特に限定されるものではない。このようなポリウレタンとして、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンとを出発物質とするポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを出発物質とするポリウレタンウレタンであってもよい。これらに加えて、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を出発物質に使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で出発物質に3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0017】
ポリマージオールはポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0018】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3-メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG、THFおよび2,3-ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0019】
また、ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61-26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2-289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0020】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0021】
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1500以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
【0022】
次に、ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5-ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
次にポリウレタンを合成するにあって用いられる鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0024】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p,p’-メチレンジアニリン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0025】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1-メチル-1,2-エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0026】
また、本発明においてポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0027】
ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0028】
本発明は、以上のような基本構成を有するポリウレタンと、リン酸ジルコニウムとを含有するポリウレタン弾性糸であって、ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素の原子の総質量をM(X)と、ポリウレタン弾性糸に含まれるZr原子の質量をZr(X)と、したとき、質量比率、M(X)/Zr(X)が0.01以下であるポリウレタン弾性糸である。かかる構成を有することで、ポリウレタン弾性糸が元来保有している酢酸ガス、ノネナールガス、イソ吉草酸ガスに対する消臭性を阻害することなく、アンモニアガスに対しても消臭性を向上させ、更に、驚くべきことに、アンモニアガスに繰り返し暴露され、アンモニアガスの吸着-洗濯を繰り返し受けても優れた消臭性を維持しうることを見いだしたものである。なお、Zn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agの各元素は、ポリウレタン弾性糸の機能性や解舒性等を向上させるための添加剤や処理剤等に含まれることがあり、かかる元素を含まない添加剤、処理剤を選択することにより、上記質量比率とすることができる。すなわち、一般的にポリウレタン弾性糸の機能性向上剤として用いられる、耐久性向上剤としての金属酸化物や金属炭酸塩、ハイドロタルサイト類や、抗菌剤としてのAg、Cu、Znを担持したジルコニウム化合物やゼオライト類等を含まないことが好ましい。
【0029】
本発明におけるリン酸ジルコニウムは、消臭性という観点から2層構造、または3層構造を有し、平板状結晶であるリン酸ジルコニウムが好ましい。より好ましくは、消臭容量が大きいという観点から2層構造のリン酸ジルコニウムである。これらは、単独で使用しても良いし、混合しても良い。
【0030】
リン酸ジルコニウムの含有量は、ポリウレタン弾性糸全質量に対して3質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。リン酸ジルコニウム3質量%未満だと、繰り返しアンモニア暴露をした際に十分なアンモニアガスの消臭性が得られにくくなるので、好ましくない。より好ましくは4質量%以上である。一方、含有量が10質量%を越えると、伸縮特性の悪化やコスト面で好ましくない。より好ましくは7.0質量%以下である。アンモニアガスに対する消臭性と物性面、コスト面というバランスを考慮すると、4質量%以上6.0重量%以下の範囲が特に好ましい。
【0031】
また、本発明においてリン酸ジルコニウムは、紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、メジアン径が0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましい。さらに、D90粒子径が2.5μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。また、分散性の観点からメジアン径が0.1μmより小さい場合、凝集力が高まり紡糸原液中に均一に混合することが困難になるため、メジアン径が0.1μm以上のものが好ましい。より好ましくは0.15μm以上である。
【0032】
本発明のポリウレタン弾性糸は、アンモニアへの消臭性を向上させる観点から、ポリウレタン弾性糸に含まれるZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を含む化合物の総含有率が0.1質量%以下であることが好ましい。これらの化合物を、0.1質量%を超えてポリウレタン弾性糸が含有すると、ポリウレタン弾性糸のアンモニア消臭性が悪化し、特に、アンモニアガスへの暴露と、洗濯とを繰り返した際の、アンモニア臭の消臭率が低下する場合がある。Zn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を含む化合物は、前述の通りポリウレタン弾性糸の機能性や解舒性等を向上させるための処理剤由来の化合物等に含まれることがある。すなわち、糸表面および糸内部を含めてポリウレタン弾性糸中に、Zn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を含む化合物の総含有率が0.1質量%以下の含有量に抑えることが好ましく、0.05質量%以下であるとより好ましい。このとき、ジルコニウム化合物やゼオライト類等にZn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素を担持している物質については、これらの元素を担持した状態を1つの化合物と見なす。
【0033】
本発明のポリウレタン弾性糸には、Zn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Agからなる群に含まれる元素またはそれらの元素を含む化合物に関する上記の要件を満たす限り、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P-16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN-150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0034】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明においては、先に述べたポリウレタンを含む紡糸原液に、リン酸ジルコニウムを含有させて紡糸する。ポリウレタンを得る際の重合を安定化させるという観点から、予めポリウレタンを重合し、ポリウレタン溶液を調製した後、それにリン酸ジルコニウムを添加することが好ましい。ポリウレタン溶液の調製法は特に限定されず、常法を適用することができる。また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0036】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0037】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0038】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0039】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0040】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0041】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0042】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液にリン酸ジルコニウムを添加する。リン酸ジルコニウムの添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
【0043】
リン酸ジルコニウムの分散液を得る方法としては特に限定されないが、リン酸ジルコニウムをポリウレタン紡糸原液の溶剤で用いるのと同じ溶剤を添加した湿潤系として、機械的微粉砕処理した後に、ポリウレタン紡糸原液に添加することが好ましい。かかる方法を採ることで、アンモニアの消臭容量をより高めることができる。
【0044】
湿潤系での機械的微粉砕処理としては、ボールミルによる分散処理が特に好ましい。本処理により、リン酸ジルコニウムの粒子が微細化し、表面積が増え、より優れたアンモニア臭に対する消臭性能が発現し、アンモニアガスへの暴露と洗濯との繰り返しにおいても優れた消臭性能を保つことが出来る。
【0045】
そして、本発明においては、アンモニアガスに対する消臭性を向上させるため、リン酸ジルコニウムを3質量%以上10質量%以下の範囲でポリウレタン弾性糸に含有させることが好ましい。そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に、リン酸ジルコニウムを3質量%以上10質量%以下の範囲で斑なく分散させることが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタンの紡糸原液に、上述のリン酸ジルコニウムを加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することが好ましい。具体的には、リン酸ジルコニウムを、あらかじめN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のポリウレタン重合体と同一の溶媒に分散してリン酸ジルコニウム分散液とし、その分散液をポリウレタン紡糸原液に混合することが好ましい。
【0046】
また、リン酸ジルコニウムをポリウレタン紡糸原液へ混合する際に2次凝集を防ぐ観点で、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート(以下CABと略する)、ポリスチレン等の樹脂成分をリン酸ジルコニウム分散液中に予め溶解していることも好ましい。また、リン酸ジルコニウムのポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤などを同時に添加してもよい。
【0047】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0048】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0049】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0050】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。
【0051】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【実施例
【0052】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例4は、参考例である。
【0053】
[洗濯処理]
繊維製品新機能評価評議会が制定している、洗濯方法マニュアルに準拠した(JIS L0217:1995の付表1、洗い方103)。すなわち、JIS L0217:1995の付表1、洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し、40℃の水30リットルに対しJAFET標準洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)40ミリリットルを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に1kgの試料である被洗濯物を入れた。5分間洗濯、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水の工程を1回とし、洗濯を行った。
【0054】
[アンモニアガス消臭性測定]
消臭試験は、消臭加工繊維製品認証基準(制定者:社団法人繊維評価技術協議会 製品認証部、制定日:平成14年9月1日) に準拠し、以下のように臭気成分の消臭性測定を行なった。なお、社団法人繊維評価技術協議会で、測定による各臭気成分の減少率について「消臭効果有り」とする合格基準は70%以上である。
1.サンプル(ポリウレタン弾性糸0.15g)をテドラーバッグに入れた。
2.アンモニアを100ppm含む乾燥空気を3L注入して密封し、2時間静置した。
3.2時間静置した後の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)で測定した。
4.サンプルを用いずに同様の測定を行い、空測定とする。
5.評価は下記の式に従って、残存ガス濃度の減少率を算出し、消臭率として表記する。
【0055】
【数1】
【0056】
なお、測定値はn=3の平均値で求めた。
【0057】
[アンモニアガス消臭性試験]
(1)JAFET洗濯前
ポリウレタン弾性糸を巻き上げた後、一度も洗濯処理をしない状態の糸を測定サンプルとし、前記[アンモニアガス消臭性測定]を行い、消臭率を求めた。
(2)JAFET洗濯10回後
ポリウレタン弾性糸を巻き上げた後、一度もアンモニアガス消臭性試験および洗濯処理をしない状態の糸をサンプルとし、前記[洗濯処理]を繰り返し10回行った。洗濯処理10回後のポリウレタン弾性糸を24時間風乾して測定サンプルとし、前記[アンモニアガス消臭性測定]を行い、消臭率を求めた。
【0058】
[アンモニアガス吸着-洗濯繰り返し消臭性試験]
前記[アンモニアガス消臭性測定]の1項および2項の手順によりアンモニアガスに暴露し、同ガスを吸着させた後、先述の[洗濯処理]を行い、サンプルを4時間室温にて風乾させる手順を吸着-洗濯の処理の1サイクルとした。
【0059】
吸着-洗濯の処理を11サイクル行い、5サイクル目および11サイクル目のサンプルのアンモニアガス暴露後の乾燥空気中の残存ガス濃度(ppm)を[アンモニアガス消臭性測定]の3項から5項に従い、成分対応検知管(ガステック社製)で測定し、各サイクルにおける消臭率を求めた。なお、11サイクル目は、アンモニアガス吸着後の洗濯処理を10回経たサンプルとなる。
【0060】
[ポリウレタン弾性糸中の特定の金属元素(Zn、Mg、Ca、Al、Ti、Cu、Ag)の定量]
ポリウレタン弾性糸をテフロンビーカーに秤量し、硫酸、硝酸、過塩素酸およびフッ化水素酸で分解し、硫酸白煙が生じるまで濃縮した。この溶液を希硝酸に溶かし定容とし、定容液中の金属元素の定量分析をICP発光分析法で行った。(測定装置:PerkinElmer製Optima4300DV)
[リン酸ジルコニウムの調整]
4L反応器中で、脱イオン水1.7Lにオキシ塩化ジルコニウム8水和物0.44モルを溶解後、シュウ酸2水和物1.26モルを溶解させた。この溶液を25℃にて攪拌しながら、5分間かけて、75%リン酸0.92モルを加え、反応器を98℃まで加熱し、還流をさせた。この後10時間攪拌還流を続けた。その後、反応液を冷却し、反応液を孔径0.5μmのフィルターでろ過し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を脱イオン水で洗浄し、洗浄後の脱イオン水の電導度が30μS/cm以下となるまで洗浄した後、沈殿物を電気乾燥機中にて、150℃で24時間乾燥することにより、層状リン酸ジルコニウム粉末を得た。
【0061】
[リン酸ジルコニウム分散液中のメジアン径]
マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0062】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液(35重量%)を調整した。次に、酸化防止剤として、t-ブチルジエタノールアミンとメチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネ-ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p-クレゾ-ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(質量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35質量%)を調整し、前記ポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液96質量部と酸化防止剤溶液4質部を混合し、ポリマ溶液(A1)とした。
【0063】
次に、リン酸ジルコニウムをホモミキサーによりDMAcに分散し、さらに樹脂成分としてCABを溶解し、機械的粉砕処理として横型ミルを使用して、リン酸ジルコニウム分散液(B1)(リン酸ジルコニウム35質量%、メジアン径0.56μm、CAB17.5質量%)とした。
【0064】
さらに、ステアリン酸マグネシウムを3質量%をジメチルシリコーン97質量%に分散処理した油剤(C1)を調整した。
【0065】
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)を93.25質量部、5.5質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)をポリウレタン弾性糸100質量部に対し、5質量部付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
得られたポリウレタン弾性糸は表1に示すようにアンモニアガス吸着-洗濯繰り返し処理後においても優れたアンモニアガスに対する消臭性能を有するものであった。
【0066】
[実施例2、3]
表1に示したリン酸ジルコニウムの比率となるようにポリマ溶液(A1)とリン酸ジルコニウム分散液(B1)の比率を変更した以外は実施例1と同様にポリウレタン弾性糸を巻き取り、各種評価を行った。
【0067】
いずれも、アンモニアガス吸着-洗濯繰り返し処理後においても優れたアンモニアガスに対する消臭性能を有するものであった。
【0068】
[実施例4]
メジアン径0.4μmのハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)35質量%をDMAcに分散し、ハイドロタルサイト分散液(D1)(ハイドロタルサイト35質量%)を得た。
【0069】
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)、ハイドロタルサイト分散液(D1)を93.2質量部、4.5質量部、0.05質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%、ハイドロタルサイトの含有量が0.05質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
得られたポリウレタン弾性糸は表1に示すようにアンモニアガス吸着-洗濯繰り返し処理後においても優れたアンモニアガスに対する消臭性能を有するものであった。
【0070】
[実施例5]
リン酸ジルコニウムをホモミキサーによりDMAcに分散し、さらに樹脂成分としてCABを溶解し、リン酸ジルコニウム分散液(B2)(リン酸ジルコニウム35質量%、メジアン径0.76μm、CAB17.5質量%)を得た。
【0071】
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B2)を93.25質量部、4.5質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%のポリウレタン弾性糸を得た。各種測定結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
メジアン径0.2μmの酸化亜鉛をDMAcに分散し、酸化亜鉛分散液(D2)(酸化亜鉛35質量%)を得た。
【0073】
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)、酸化亜鉛分散液(D2)を90.25質量部、4.5質量部、3質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%、酸化亜鉛含有量が3質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
【0074】
各種測定結果を表1に示す。
【0075】
[比較例2]
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)、ハイドロタルサイト分散液(D1)を91.25質量部、4.5質量部、2質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%、ハイドロタルサイトが2質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
【0076】
各種測定結果を表1に示す。
【0077】
[比較例3]
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)、ハイドロタルサイト分散液(D1)を92.75質量部、4.5質量部、0.5質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%、ハイドロタルサイトが0.5質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
【0078】
各種測定結果を表1に示す。
【0079】
[比較例4]
ステアリン酸マグネシウムをDMAcにメジアン径2μm以下となるよう分散処理し、ステアリン酸マグネシウム分散液(D3)(ステアリン酸マグネシウム35質量%)を得た。
【0080】
ポリマ溶液(A1)、リン酸ジルコニウム分散液(B1)、ステアリン酸マグネシウム分散液(D3)を92.25質量部、4.5質量部、1質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%、ステアリン酸マグネシウムが1質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
【0081】
各種測定結果を表1に示す。
【0082】
[比較例5]
層状リン酸ジルコニウムを、1N硝酸銀溶液に加え、60℃ で12時間攪拌した。その後濾過して純水で水洗し、110 ℃ で12時間乾燥した。更に、750℃ で4時間焼成することにより、銀担持のリン酸ジルコニウムを調製した( 銀含有量:3.8質量% )。
【0083】
得られた銀担持リン酸ジルコニウムをホモミキサーによりDMAcに分散し、さらに樹脂成分としてCABを溶解し、機械的粉砕処理として横型ミルを使用して、銀担持リン酸ジルコニウム分散液(B3)(銀担持リン酸ジルコニウム35質量%、メジアン径0.9μm、CAB17.5質量%)とした。
【0084】
ポリマ溶液(A1)、銀担持リン酸ジルコニウム分散液(B3)を93.25質量部、5.5質量部の比率で混合して紡糸原液とし、乾式紡糸を行い、巻き取り時に油剤(C1)を5質量%付与しながら、44dtex、4フィラメント、銀担持リン酸ジルコニウムの含有量が4.5質量%のポリウレタン弾性糸を得た。
【0085】
各種測定結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
図1