(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】プレス装置、プレス装置のスライド速度制御方法及びスライド速度制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B30B 15/14 20060101AFI20230904BHJP
B30B 15/20 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B30B15/14 B
B30B15/20 A
(21)【出願番号】P 2019143460
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史晃
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277800(JP,A)
【文献】特開平04-361839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置であって、
前記制御手段は、
前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れ
て小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させる、
プレス装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スライドの速度を減速させる場合に、前記速度分解能が、制御中の前記スライドの速度以下に保持されるように、前記スライドの速度に応じて当該速度分解能を変化させる、
請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記スライドの速度を減速させる場合に、前記速度分解能が、制御上の前記スライドの速度の最小値である最小制御速度以下に保持されるように、前記スライドの速度に応じて当該速度分解能を変化させる、
請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記速度分解能が制御中の前記スライドの速度以下に保持されるように、前記スライドの速度に応じて、前記位置計測手段による位置計測のサンプリング周期を動的又は段階的に変化させる、
請求項2又は請求項3に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記制御手段は、制御上の前記スライドの位置の変化量として、前記位置計測手段による位置計測のサンプリング周期を、前記速度分解能が制御中の前記スライドの速度以下に保持されるように変化させた場合の当該サンプリング周期に相当する過去の期間における前記スライドの位置の集計値を用いる、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記スライドの最小速度に対する最大速度の比が100以上である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項7】
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置のスライド速度制御方法であって、
前記制御手段が、
前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れ
て小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させる、
プレス装置のスライド速度制御方法。
【請求項8】
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置のスライド速度制御プログラムであって、
前記制御手段により、
前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れ
て小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させる、
プレス装置のスライド速度制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置、プレス装置のスライド速度制御方法及びスライド速度制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型が固定されたスライドを所定の速度で動作させて金型成形を行うプレス装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のプレス装置、特にスライドの最高速度と最低速度の比率が大きいものにおいては、高速領域では応答速度が求められ、低速領域では精密な速度制御が求められる。すなわち、プレス装置のスライド速度制御では、前者の実現には高速サンプリングが、後者の実現には精密な速度分解能が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高速領域と低速領域とで単純に共通の制御条件としてしまうと、所望のスライド速度制御を実行できない場合がある。
例えば、スライドを高速で動作させるために必要なサンプリング周期ΔTが0.005[s]のとき、制御上のスライド位置の最小単位(例えば位置センサの分解能)ΔYを1[μm]とすると、速度分解能ΔV=ΔY/ΔT=0.2[mm/s]となる。この場合、速度演算の幅が0.2[mm/s]ピッチであるので、この制御条件のままではスライド速度を低速の0.1[mm/s]には制御できない。つまり、速度分解能が所望の制御速度よりも大きいために、精密なスライド速度制御を実現できない。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、精密なスライド速度制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレス装置は、
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置であって、
前記制御手段は、前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れて小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させるように構成した。
【0007】
本発明に係るプレス装置のスライド速度制御方法は、
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置のスライド速度制御方法であって、
前記制御手段が、前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れて小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させるものとした。
【0008】
本発明に係るプレス装置のスライド速度制御プログラムは、
所定のプレス方向に進退するスライドと、
前記プレス方向における前記スライドの位置を計測する位置計測手段と、
前記位置計測手段の計測結果に基づいて前記スライドの速度を制御する制御手段と、
を備えるプレス装置のスライド速度制御プログラムであって、
前記制御手段により、前記位置計測手段の分解能を位置計測のサンプリング周期で除した速度分解能の値が、前記スライドの速度が低くなるに連れて小さくなるように、前記スライドの速度に応じて前記速度分解能を変化させるものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精密なスライド速度制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るプレス装置の装置本体を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るプレス装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】スライド位置を計測する移動量計測器の分解能が1μmの場合のサンプリング周期と速度分解能の関係を示すグラフである。
【
図4】速度分解能とサンプリング周期が
図3の関係にあるときに、このサンプリング周期で制御した場合のスライドの反応距離を示す図である。
【
図5】スライド速度に応じたサンプリング周期の変化態様の一例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[プレス装置の構成]
図1は、本実施形態に係るプレス装置1の装置本体100を示す図である。
この図に示すように、本実施形態に係るプレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、装置本体100を備える。装置本体100は、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10、移動量計測器35を備える。
【0013】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、プレス装置1のフレーム部を構成する。これらベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、その内部にタイロッド25aが挿入され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。
【0014】
ボルスタ24は、ベッド23上に固定され、その上部には下金型4が固定される。
スライド18は、複数のアップライト22の各々に設けられたガイド19により、上下方向に進退可能に支持される。スライド18の下部には上金型3が固定される。スライド18が下降することで、上金型3と下金型4とが近接し、これらの間で成形材料が鍛造成形される。なお、スライド18が進退する方向は特に制限されないが、本実施形態では、上下方向に進退するものとして説明する。
【0015】
駆動部10は、サーボモータ11、伝動軸12、減速機13、エキセン軸14及びコネクティングロッド15を備える。駆動部10は、クラウン21などのフレーム部に支持される。エキセン軸14は左右方向に沿って延在するように配置される。サーボモータ11が駆動されると、その回転運動が伝動軸12、減速機13、エキセン軸14の順に伝達され、エキセン軸14の回転運動がコネクティングロッド15を介してスライド18の並進運動に変換される。これにより、スライド18が上下方向に進退する。
【0016】
移動量計測器35は、上下方向におけるスライド18の位置(以下、「スライド位置」という。)を検出するための、所定の分解能(本実施形態では1μm)を有する位置センサである。移動量計測器35は、例えばガイド19に設けられて、スライド18の移動量を計測し、計測した移動量を後述の制御装置50に出力する。
【0017】
図2は、プレス装置1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、プレス装置1は、装置本体100の動作を制御する制御装置50を備える。
制御装置50は、記憶部52と制御部53を備える。
【0018】
記憶部52は、装置本体100の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。
制御部53は、プレス装置1の各部を中央制御する。具体的に、制御部53は、ユーザ操作や所定のプログラムに基づいて、サーボモータ11の動作を制御したり、移動量計測器35の出力等に基づいてスライド18の速度を制御したりする。
【0019】
[スライド速度制御方法]
続いて、スライド18の速度を制御するスライド速度制御方法について説明する。
本実施形態のプレス装置1では、制御部53は、例えば記憶部52に格納された所定のプログラム(モーションプログラム)に基づいて、サーボモータ11を駆動し、スライド18の動作を制御する。このとき、制御部53は、移動量計測器35により計測されたスライド位置の情報からスライド速度の実測値を取得し、その設定速度(目標速度)との差分に基づいてフィードバック制御等のスライド速度制御を行う。
【0020】
本実施形態のプレス装置1では、高速領域から低速領域までの広範囲のスライド速度制御が行われる(例えば、最大スライド速度/最小スライド速度>100)。ここで「高速」、「低速」とは、スライド速度の絶対値ではなく、その速度範囲における相対的な速度を意味する。
このように広い速度範囲でスライド速度制御を行う場合、以下に説明するように、スライド速度に応じた適切な制御条件を設定する必要がある。
【0021】
制御上のスライド速度の最小値(以下、「最小制御速度」という。)は、単純な速度指定制御の場合には、その速度範囲における最低速度である。歪速度制御を行う場合は、被成形物の最終寸法に最小歪速度を乗じたものが最小制御速度となる。歪速度dε[s]は、スライド速度V[mm/s]、被成形物の初期長さL[mm]、被成形物の変形量y[mm]から、dε=V/(L-y)で表される。
例えば、設定速度が0.01[mm/s]であり、その速度保証値を±10%とする場合には、最小制御速度は0.001[mm/s]となる。したがって、速度分解能ΔVはこの最小制御速度以下に設定する必要がある。速度分解能ΔVはスライド速度V(=dY/dt)の制御上の精度を表す。速度保証値(ΔV/V)は、その値が小さいほど精密な速度制御が行われていると言え、±10%以下が好ましい。
図3に、スライド位置を計測する移動量計測器35の分解能が1μmの場合のサンプリング周期ΔTと速度分解能ΔVの関係を示す。この場合、速度分解能ΔVを0.001[mm/s]以下とするためには、計測されたスライド位置のデータを取り込むサンプリング周期ΔTを1[s]以上とする必要がある。
【0022】
一方、スライド18が高速で動く場合は、応答速度を高めるためにサンプリング周期ΔTは出来るだけ短くする必要がある。
図4は、速度分解能ΔVとサンプリング周期ΔTが
図3の関係にあるときに、このサンプリング周期ΔTで制御した場合のスライド18の反応距離ΔDを示すグラフである。反応距離ΔDとは、サンプリング間隔の間にスライド18がそのときのスライド速度Vで等速運動を続けると仮定した場合のスライド18の空走距離である。
例えば、上述のとおり、速度分解能ΔVを0.001[mm/s]とするためのサンプリング周期ΔTを1[s]に定めたとすると、スライド速度Vが低速の0.01[mm/s]であれば、サンプリング周期ΔTの間に0.01[mm/s]×1[s]=0.01[mm]しかスライド18は移動しない。しかし、サンプリング周期ΔTが1[s]のまま、スライド速度Vが100[mm/s]まで高速化したとすると、サンプリング周期ΔTの間に100[mm/s]×1[s]=100[mm]もスライド18が移動してしまい、良好な応答性が得られない。
反対に、スライド速度Vが100[mm/s]のときに反応距離ΔDを0.01[mm]に抑えるには、サンプリング周期ΔTを0.01[s]以下とする必要がある。このサンプリング周期ΔTでの速度分解能ΔVは0.1[mm/s]である(
図3参照)。この速度分解能ΔVでは、例えばこの値よりも小さいスライド速度Vまで減速しようとしても、±0.1[mm/s]よりも精密なスライド速度制御を実行することができない。
【0023】
そこで、本実施形態では、スライド速度Vが低くなるに連れて速度分解能ΔVの値が小さくなるように、スライド速度Vに応じて当該速度分解能ΔVを変化させる。ここで、「スライド速度Vが低くなるに連れて速度分解能ΔVの値が小さくなる」とは、その反対に「スライド速度Vが高くなるに連れて速度分解能ΔVの値が大きくなる」場合を含む。また、この場合のスライド速度Vは、プログラム内などで予め設定された設定値(目標値)であってもよいし、移動量計測器35の計測値に基づく実測値(実績値)であってもよい。
【0024】
まず、スライド速度Vを減速させる場合には、速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるように、スライド速度Vに応じて当該速度分解能ΔVを変化させる。
具体的に、制御部53は、設定値又は実測値のスライド速度Vの値を取得し、このスライド速度Vに対応して変化する速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるように、当該スライド速度Vに応じてサンプリング周期ΔTを変化させる。
【0025】
速度分解能ΔVを最小制御速度以下とするサンプリング周期ΔTの条件は、以下により求められる。
まず速度分解能ΔV[mm/s]は、制御上のスライド位置の最小単位(以下、「最小制御位置」という。本実施形態では、移動量計測器35の分解能:1μm=0.001mm)をΔYとして以下の式(1)で表される。
ΔV=ΔY/ΔT=0.001/ΔT ・・・(1)
また、本実施形態ではスライド速度Vの速度保証値が±10%であるため、最小制御速度Vmin=0.1Vとなる。したがって、速度分解能ΔVがこの最小制御速度Vmin以下となる条件は以下の式(2)で表される。
ΔV≦0.1V ・・・(2)
以上の式(1)及び式(2)より、以下の式(3)が得られる。
ΔT≧0.01/V ・・・(3)
この式(3)で表されるΔTの下限を
図5に破線で示す。
【0026】
したがって、速度分解能ΔVを最小制御速度以下に保つには、式(3)を満足するように、スライド速度Vに応じてサンプリング周期ΔTを変化させればよい。
本実施形態では、
図5に実線で示すように、サンプリング周期ΔTを、破線で示す下限に対して所定の裕度を保ちつつ、スライド速度Vに対して動的に変化させる。ただし、サンプリング周期ΔTの最低値が設定されている場合には、サンプリング周期ΔTがこの最低値よりも小さくならないようにする。
あるいは、
図5に一点鎖線で示すように、所定のスライド速度Vの変化毎にサンプリング周期ΔTが変化するように、当該サンプリング周期ΔTを段階的に変化させてもよい。
これにより、スライド速度Vに依らず速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるので、常に精密なスライド速度制御を実行することができる。
【0027】
また、サンプリング周期ΔTの変化に代えて(又はこれと併せて)、速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるように、最小制御位置(制御上のスライド位置の変化量)ΔYを変化させてもよい。つまり、上記式(1)において、サンプリング周期ΔTではなく最小制御位置ΔYを変化させる(又はこれら両者を変化させる)ことで、速度分解能ΔVを最小制御速度以下に保持してもよい。
この場合、最小制御位置ΔYとして、速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるようにサンプリング周期ΔTを変化させた場合の、当該サンプリング周期ΔTに相当する過去の期間におけるスライド位置の集計値(例えば移動平均値等)を使用すればよい。
例えば、スライド速度Vが10[mm/s]から0.1[mm/s]に低速化した場合を考える。この場合、サンプリング周期ΔTを変化させて速度分解能ΔVを最小制御速度に保持するのであれば、サンプリング周期ΔTを0.001[s]から0.1[s]に変化させる必要がある(
図5の破線参照)。しかし、このサンプリング周期ΔTの変化は行わずに、高速時のサンプリング周期ΔTのまま0.001[s]毎にスライド位置のデータを取得する。そして、速度分解能ΔVが最小制御速度に保持されるように変化させた場合の低速時のサンプリング周期ΔT=0.1[s]の期間分だけ、スライド位置の100個のデータの移動平均値等の集計値を算出し、これを最小制御位置ΔYとして使用する。
これにより、上述したサンプリング周期ΔTを変化させたときと同様の効果が得られる。
【0028】
なお、上記では速度分解能ΔVを最小制御速度以下に保持することとしたが、速度分解能ΔVは制御中のスライド速度以下に保持されればよい。つまり、サンプリング周期ΔTを変化させる場合は、速度分解能ΔVが制御中のスライド速度以下に保持されるようにサンプリング周期ΔTを変化させればよい。また、最小制御位置(制御上のスライド位置の変化量)ΔYを変化させる場合は、速度分解能ΔVが制御中のスライド速度以下に保持されるようにサンプリング周期ΔTを変化させた場合の、当該サンプリング周期ΔTに相当する過去の期間におけるスライド位置の集計値を、最小制御位置ΔYとして用いればよい。
【0029】
また、スライド速度Vを増速させる場合には、例えば、上述した反応距離ΔDが所定値以下となるように、スライド速度Vに応じて速度分解能ΔVを変化させればよい。
【0030】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、スライド位置の計測結果に基づいてスライド速度Vを制御する場合に、スライド速度Vが低くなるに連れて速度分解能ΔVの値が小さくなるように、スライド速度Vに応じて速度分解能ΔVが変化する。
これにより、スライド速度Vに依らず速度分解能ΔVが最小制御速度以下に保持されるので、精密なスライド速度制御を実現することができる。
【0031】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、スライド18の最小速度に対する最大速度の比が100以上であることとしたが、本発明は、この速度比が100より小さいプレス装置に対しても好適に適用可能である。
【0032】
また、上記実施形態では、移動量計測器35により上下方向におけるスライド位置を計測することとした。しかし、本発明に係る位置計測手段は、スライド位置に相当する制御量を計測・取得するものであればよく、例えばエキセン軸の回転角度を計測するものなどであってもよい。
【0033】
また、本発明に係るプレス装置は、スライド速度を制御するものであれば、その構造等は特に限定されず、例えば機械プレスや油圧プレスであってもよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 プレス装置
18 スライド
35 移動量計測器(位置計測手段)
50 制御装置
53 制御部
100 装置本体
V スライド速度
Vmin 最小制御速度
ΔD 反応距離
ΔT サンプリング周期
ΔV 速度分解能
ΔY 最小制御位置