(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】離型剤吹付装置及びプレス装置
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20230904BHJP
B21J 13/02 20060101ALN20230904BHJP
B21D 37/18 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
B30B15/00 F
B21J13/02 Z
B21D37/18
(21)【出願番号】P 2019158279
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大西 健晴
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-229457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
B21J 13/02
B21D 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置本体の金型の表面に離型剤を吹き付ける離型剤吹付装置であって、
サーボモータと、
前記プレス装置本体のプレス方向と交差する方向に進退し、先端から離型剤を噴射する移動ノズルと、
前記サーボモータと前記移動ノズルとを連結し、前記サーボモータの一方向への回転出力により前記移動ノズルを進退させるリンク機構と、
を備え
、
前記リンク機構は、
前記サーボモータに連結された回転体と、
揺動に伴って前記移動ノズルを進退させるレバーと、
前記回転体の偏心部に一端部が連結され、前記レバーに他端部が連結されて、前記回転体の回転に伴って前記レバーを揺動させるコネクティングロッドと、
を備えるクランク機構である、
離型剤吹付装置。
【請求項2】
前記移動ノズルの起動停止位置が前記リンク機構の上死点近傍に対応し、
前記移動ノズルの進退ストロークの後退端が前記リンク機構の下死点に対応する、
請求項1に記載の離型剤吹付装置。
【請求項3】
前記移動ノズルの起動停止位置は、離型剤の吹き付けを行う位置であって、前記リンク機構の上死点に対応する前記移動ノズルの進退ストロークの前進端から所定距離だけ後退した位置である、
請求項1又は請求項2に記載の離型剤吹付装置。
【請求項4】
前記サーボモータの動作と、前記移動ノズルからの離型剤の噴射とを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記起動停止位置を中心に前記移動ノズルを前後に揺動させつつ、当該移動ノズルの先端から離型剤を噴射させる、
請求項3に記載の離型剤吹付装置。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の離型剤吹付装置と、
前記金型が固定されて前記プレス方向に進退するスライドを備える前記プレス装置本体と、
前記サーボモータの動作及び前記移動ノズルからの離型剤の噴射を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記スライドの動作に同期させて、前記サーボモータ及び前記移動ノズルの動作を制御する、
プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤吹付装置及びプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置では、金型を有するスライドと連動して進退する移動ノズルにより、金型への離型剤の吹き付けが行われる。この移動ノズルの駆動機構は、メカ連動型とサーボモータ駆動型に大別される。
メカ連動型では、スライドと移動ノズルとがリンク機構で連結されており、スライドの上下運動が移動ノズルの進退移動に機械的に変換される(例えば、特許文献1参照)。
一方、サーボモータ駆動型では、移動ノズルがボールねじとその駆動源であるサーボモータに連結されており、移動ノズルがスライドと同期して進退するようにサーボモータの駆動が制御される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4319631号公報
【文献】特許第2845171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メカ連動型では、スライドと移動ノズルが機械的に連結されているため、プレス装置本体の起動・停止時の衝撃が移動ノズルやリンク機構に直接伝わってしまう。そのため、移動ノズルやリンク機構の可動部にガタや破損などの不具合が生じるおそれがある。
この点、サーボモータ駆動型では、プレス装置本体の衝撃が移動ノズルの駆動機構に伝わることはない。しかし、移動ノズルをボールねじで動かしているため、移動ノズルの後退から前進への切り替え時にサーボモータの回転を加減速して逆転させる必要がある。このことや、ボールねじに許容回転数の制限があることなどから、移動ノズルを高速動作させることが難しい。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、プレス動作の衝撃による不具合を抑制しつつ、移動ノズルを高速動作させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る離型剤吹付装置は、
プレス装置本体の金型の表面に離型剤を吹き付ける離型剤吹付装置であって、
サーボモータと、
前記プレス装置本体のプレス方向と交差する方向に進退し、先端から離型剤を噴射する移動ノズルと、
前記サーボモータと前記移動ノズルとを連結し、前記サーボモータの一方向への回転出力により前記移動ノズルを進退させるリンク機構と、
を備え、
前記リンク機構は、
前記サーボモータに連結された回転体と、
揺動に伴って前記移動ノズルを進退させるレバーと、
前記回転体の偏心部に一端部が連結され、前記レバーに他端部が連結されて、前記回転体の回転に伴って前記レバーを揺動させるコネクティングロッドと、
を備えるクランク機構である構成とした。
【0007】
本発明に係るプレス装置は、
上述の離型剤吹付装置と、
前記金型が固定されて前記プレス方向に進退するスライドを備える前記プレス装置本体と、
前記サーボモータの動作及び前記移動ノズルからの離型剤の噴射を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記スライドの動作に同期させて、前記サーボモータ及び前記移動ノズルの動作を制御する構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレス動作の衝撃による不具合を抑制しつつ、移動ノズルを高速動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るプレス装置を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る離型剤吹付装置が備えるレバー駆動部の概略構成を示す(a)平面図であり、(b)側面図である。
【
図3】本実施形態に係るプレス装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】スライド及び移動ノズルの各ストローク位置とサーボモータの出力軸回転数の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】移動ノズルとクランク機構の動きを説明するための図である。
【
図6】移動ノズルとクランク機構の動きを説明するための図である。
【
図7】移動ノズルの離型剤吹き付け時の揺動動作を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[プレス装置の装置本体]
図1は、本実施形態に係るプレス装置1を示す図である。
この図に示すように、本実施形態に係るプレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、装置本体100を備える。装置本体100は、スライド11、上金型12及び下金型13を備える。
【0012】
上金型12は、スライド11の下部に固定される。
下金型13は、ボルスタ14上に固定され、スライド11の下方に配置される。
スライド11は、フレーム10に設けられた図示しないガイドにより、上下方向に進退可能に支持される。スライド11は駆動部20(
図3参照)により上下方向に駆動される。スライド11が下降することで、上金型12と下金型13とが近接し、これらの間で成形材料が鍛造成形される。なお、スライド11が進退する方向(プレス方向)は特に制限されないが、本実施形態では、上下方向に進退するものとして説明する。また、スライド11を駆動する駆動部20の構成は特に限定されず、機械式や油圧式、サーボ式などでもよい。
【0013】
[離型剤吹付装置]
プレス装置1は離型剤吹付装置30を備える。
離型剤吹付装置30は、装置本体100の金型(上金型12及び下金型13)の表面に離型剤を吹き付けるものである。
具体的に、離型剤吹付装置30は、移動ノズル31と、レバー32と、レバー駆動部33とを備える。
【0014】
移動ノズル31は、長尺な管状部材であり、内部を流通する液状の離型剤を先端31aから上下に向けて噴霧する。この移動ノズル31は、上下方向と略直交する方向に沿って延在するように配置され、図示しないスライドガイドにより、その延在方向に沿って移動可能に支持されている。また、移動ノズル31は、離型剤を先端31aから噴射させる噴射装置38(
図3参照)に接続されている。
なお、以下では、上下方向と略直交する移動ノズル31の延在方向(進退方向)を「前後方向」といい、このうち装置本体100に近接する方向を「前方」、装置本体100から離間する方向を「後方」ということとする。また、移動ノズル31の進退方向は、装置本体100のプレス方向と交差する方向であればよい。
【0015】
レバー32は、その上端が、回動軸32aにより回動可能なように支持部321に取り付けられている。支持部321はフレーム10に取り付けられた駆動軸ハウジング15に固定されている。駆動軸ハウジング15はスライド11を進退させる図示しない駆動軸を収容している。一方、レバー32の下端には、先端(下端)に向かってU字状に開口した係合部32bが設けられている。この係合部32bには、移動ノズル31に設けられた係合ローラ31bが、レバー32の長手方向に移動可能かつ回転可能に係合している。
このような構成により、レバー32は、上端の回動軸32a回りの揺動に伴って、移動ノズル31を前後方向に進退させる。
【0016】
図2(a)、(b)は、レバー駆動部33の概略構成を示す平面図及び側面図である。
この図に示すように、レバー駆動部33は、サーボモータ34、減速機35及びギヤ36を備える。
サーボモータ34は、出力軸が減速機35の入力軸に連結されている。
減速機35は、出力軸が小ギヤ351に連結されている。
【0017】
ギヤ36は、小ギヤ351と噛合した平歯車であり、小ギヤ351とともにギヤハウジング361内に収容されている。ギヤハウジング361は駆動軸ハウジング15に固定されている(
図1参照)。ギヤ36の偏心部(回転中心からずれた部分)には、コネクティングロッド(コンロッド)37の一端部のコンロッド連結部37aが連結されている。コンロッド37の他端部は、レバー32の上側部分(上端から所定距離の位置)に連結されている。ギヤ36、コンロッド37及びレバー32はクランク機構Cを構成しており、このクランク機構Cを介して駆動源のサーボモータ34と移動ノズル31が連結されている。
このような構成により、レバー駆動部33では、サーボモータ34が駆動されると、その出力(回転力)が減速機35及び小ギヤ351を介してギヤ36を回転させる。ギヤ36が回転すると、レバー32が所定の揺動範囲で揺動する。このレバー32の揺動により、後述するように、移動ノズル31が前進端から後退端までの範囲で前後方向に進退する。
【0018】
なお、サーボモータ34と移動ノズル31とは、サーボモータ34の一方向への回転出力により移動ノズル31を進退させるリンク機構を介して接続されていればよい。このようなリンク機構は、本実施形態のクランク機構Cに限定されず、例えば偏心ギヤ機構などであってもよい。また、このリンク機構は、本実施形態のクランク機構Cのように、トグル効果を得られるトグル機構であることがより好ましい。
【0019】
[制御構成]
図3は、プレス装置1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、プレス装置1は、装置本体100及び離型剤吹付装置30の動作を制御する制御装置50を備える。
制御装置50は、記憶部52と制御部53を備える。
【0020】
記憶部52は、装置本体100の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。
制御部53は、プレス装置1の各部を中央制御する。具体的に、制御部53は、ユーザ操作や所定のプログラムに基づいて、装置本体100の駆動部20を動作制御してスライド11を進退させ、離型剤吹付装置30のサーボモータ34を動作制御して移動ノズル31を移動させ、噴射装置38を動作制御して移動ノズル31の先端31aから離型剤を噴射させる等する。
【0021】
[離型剤の吹き付け動作]
続いて、離型剤吹付装置30による離型剤の吹き付け動作について説明する。
図4は、スライド11及び移動ノズル31の各ストローク位置(ストローク中の位置)とサーボモータ34の出力軸回転数の一例を示すタイムチャートである。
図5及び
図6は、移動ノズル31とクランク機構Cの動きを説明するための図である。
図7は、移動ノズル31の離型剤吹き付け時の揺動動作を説明するためのグラフである。
本実施形態のプレス装置1では、制御部53は、例えば記憶部52に格納された所定のプログラムに基づいて、スライド11の進退動作(スライドモーション)と連動(同期)させつつ、移動ノズル31の動作を制御する。
【0022】
まず、移動ノズル31が吹き付け動作を開始する起動時には、
図4に示すように、移動ノズル31は先端31aがプレス中心Pcに位置した状態となっている(
図5(a))。プレス中心Pcは、移動ノズル31の進退方向における金型(上金型12と下金型13)の中心位置である(
図1参照)。
このとき、クランク機構Cでは、コンロッド連結部37aが上死点(
図5、6における9時方向の位置)近傍に位置している。上死点近傍とは、ギヤ36の回転角が上死点から所定の角度範囲内(例えば±30度以内)をいう。本実施形態では、コンロッド連結部37aが図中の10時方向に位置している。
またこのとき、スライド11は上死点に位置したままである。
【0023】
次に、制御部53がサーボモータ34の駆動を開始し、ギヤ36を
図5、6中の反時計回り(以下、単に「反時計回り」という。)に回転させる。そして、クランク機構Cにおいてコンロッド連結部37aがほぼ上死点に位置したときに、移動ノズル31は、先端31aが進退ストロークにおける前進端に位置した状態となる(
図5(b))。この前進端は、プレス中心Pcから所定距離Lだけ前進した位置である。
このとき、スライド11は未だ上死点に位置したままである。
【0024】
その後、制御部53は、ギヤ36を反時計回りにさらに回転させつつ、スライド11を下死点に向けて移動開始させる。それから、制御部53は、クランク機構Cの下死点に近づくに連れて、サーボモータ34の速度(回転数)を一定に保持させ、その後減速させる。
【0025】
そして、クランク機構Cにおいてコンロッド連結部37aが下死点(
図5、6における3時方向の位置)に位置したときに、移動ノズル31は、先端31aが進退ストロークにおける後退端に位置した状態となる(
図6(a))。
このとき、スライド11も下死点に位置した状態となる。
【0026】
その後、制御部53は、サーボモータ34を駆動してギヤ36を反時計回りにさらに回転させることにより、移動ノズル31を後退端から前進端に移動させる。そして、クランク機構Cにおいてコンロッド連結部37aがほぼ上死点に位置したときに、移動ノズル31は、先端31aが進退ストロークにおける前進端に位置した状態となる(
図5(b))。
このとき、スライド11は、移動ノズル31が前進端に位置するよりも先に上死点に到達し、移動が停止される。
【0027】
そして、制御部53は、ギヤ36を反時計回りにさらに回転させ、移動ノズル31が先端31aをプレス中心Pcに位置した状態で、当該移動ノズル31の移動を停止させる(
図6(b))。
このとき、クランク機構Cでは、コンロッド連結部37aが上死点近傍にあり、本実施形態では図中の8時方向に位置している。
制御部53は、この停止状態で噴射装置38を動作させ、移動ノズル31の先端31aから金型(上金型12及び下金型13)に向けて離型剤を噴霧状態で吹き付ける。
離型剤の吹き付け終了後、再び一連の吹き付け動作を開始するときには、制御部53は、サーボモータ34を駆動して移動ノズル31を上述の起動位置(図中の10時方向の位置)まで移動させる。そして、制御部53は、上述と同様の動作を繰り返す。
【0028】
なお、離型剤の吹き付け時には、
図7に示すように、起動停止位置(先端31aがプレス中心Pcの位置)を中心として移動ノズル31を前後に揺動させつつ、先端31aから離型剤を噴射させてもよい。このとき、制御部53は、サーボモータ34の回転方向を所定周期で繰り返し反転させつつ、噴射装置38を動作させればよい。移動ノズル31の揺動範囲は特に限定されない。
これにより、金型への離型剤の吹き付けムラを抑制することができる。また、上死点近傍でクランク機構Cを動作させるため、トグル効果によりサーボモータ34の負荷を低く抑えることができる。
【0029】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、サーボモータ34と、先端31aから離型剤を噴射する移動ノズル31とが、サーボモータ34の一方向への回転出力により移動ノズル31を進退させるリンク機構(クランク機構C)を介して連結されている。
そのため、従来のメカ連動型と異なり、移動ノズル31と装置本体100のスライド11(及びその駆動部20)とが機械的に縁が切れている(連結されていない)。これにより、装置本体100のプレス動作の衝撃が移動ノズル31の駆動機構に伝わることを防止できる。
また、サーボモータ34の一方向への回転出力により移動ノズル31を進退移動できるため、移動ノズルをボールねじで動かしていた従来のサーボモータ駆動型と異なり、移動ノズル31の後退から前進への切り替え時にサーボモータ34の回転を加減速して逆転させる必要がない。これにより、移動ノズル31を高速動作させることができる。
したがって、プレス動作の衝撃による不具合を抑制しつつ、移動ノズル31を高速動作させることができる。ひいては、移動ノズル31のストローク量を長くできるため、大型のプレス装置に好適に適用することができる。
【0030】
また本実施形態では、移動ノズル31の起動停止位置がクランク機構Cの上死点近傍に対応し、移動ノズル31の進退ストロークの後退端がクランク機構Cの下死点に対応している。
そのため、クランク機構Cのトグル効果により、特にこれらの位置におけるサーボモータ34の負荷や入力側(サーボモータ34側)への衝撃の伝達を抑制することができる。
【0031】
また本実施形態では、離型剤の吹き付けを行う移動ノズル31の起動停止位置が、クランク機構Cの上死点に対応する移動ノズル31の進退ストロークの前進端から所定距離Lだけ後退した位置である。
そのため、起動時にサーボモータ34の起動時間を確保でき、停止時には移動ノズル31が前進端からオーバーランする時間(減速時間)を確保できる。これにより、起動停止時の加速度を抑えることができ、クランク機構C等への機械的な負荷を抑制することができる。
【0032】
また本実施形態では、起動停止位置を中心に移動ノズル31を前後に揺動させつつ、当該移動ノズル31の先端31aから離型剤を噴射させている。
これにより、金型への離型剤の吹き付けムラを抑制することができる。また、上死点近傍でクランク機構Cを動作させるため、トグル効果によりサーボモータ34の負荷を低く抑えることができる。
【0033】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、クランク機構Cのギヤ36が図中の反時計回りに回転することとしたが、時計回りに回転してもよい。この場合、コンロッド連結部37aは、例えば起動位置が8時方向の位置で、停止位置が10時方向の位置であればよい。
【0034】
また、スライド11が降下中に装置を緊急停止させる場合には、移動ノズル31は後退端で停止させればよい。また、プレス上死点停止が外れる(上死点停止できない)場合には、サーボモータ34を加速させて回転を継続させることで、移動ノズル31とスライド11との干渉を回避すればよい。
【0035】
また、離型剤吹付装置30の動作をスライドモーションと同期させる場合、移動ノズル31の停止時間(停止してから次の起動までの時間)、すなわち離型剤の吹き付け時間を長く確保できるようにするのが好ましい。
また、プレスマスター方式(スライド11が上死点停止せず、連続的に鍛造を行う方式)で使用する場合も、サーボモータ34をスライド11と同期させながら一方向に連続回転させることで、サーボモータ34を起動・停止することなく連続的に離型剤の吹き付けを行うことができる。
【0036】
また、上記実施形態では、プレス装置1が装置本体100、離型剤吹付装置30及び制御装置50を備えることとした。しかし、制御装置50は装置本体100又は離型剤吹付装置30の一部であってもよいし、装置本体100と離型剤吹付装置30の各々に制御手段を設けてもよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 プレス装置
11 スライド
12 上金型
13 下金型
30 離型剤吹付装置
31 移動ノズル
31a 先端
32 レバー
34 サーボモータ
35 減速機
36 ギヤ
37 コンロッド
37a コンロッド連結部
38 噴射装置
50 制御装置
53 制御部
100 装置本体(プレス装置本体)
C クランク機構
Pc プレス中心