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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ADコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20230904BHJP
   H03M 1/38 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
H03M1/10 C
H03M1/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019188437
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021064873
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 玄明
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-005185(JP,A)
【文献】特開平11-055120(JP,A)
【文献】特開2018-133601(JP,A)
【文献】特開2001-345699(JP,A)
【文献】特開2011-228996(JP,A)
【文献】特開2011-041231(JP,A)
【文献】特開2012-227623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00- 1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパレータと、
デジタルデータである第1DACデータを生成する第1DACデータ生成部と、
DAC(DAコンバータ)と、
を有して、
前記コンパレータは、アナログ信号である入力信号をサンプリングし、サンプリングされた前記入力信号と、前記DACにより前記第1DACデータから変換されたアナログデータとを比較し、
前記第1DACデータ生成部は、前記コンパレータによる比較結果に応じて前記第1DACデータを更新し、
前記コンパレータによる比較結果に応じて出力信号のビットデータを確定する、AD変換部を備えたADコンバータであって、
所定のデジタルデータである第2DACデータを生成する第2DACデータ生成部と、
前記第2DACデータと前記出力信号とを比較し、比較結果としての第1検出信号を出力するデータ比較部と、
を有する第1異常検出部と、
前記第1DACデータと前記第2DACデータとのうちいずれかを選択するセレクタと、をさらに備え、
テスト動作時において、前記コンパレータは、前記セレクタにより選択された前記第2DACデータを前記DACにより変換したアナログデータをサンプリングし、サンプリングされた前記アナログデータと、前記セレクタにより選択された前記第1DACデータと、を比較し、
3ビット以上の前記所定のデジタルデータは、
前記出力信号のビット数のデータであって、1であるMSB(最上位ビット)からLSB(最下位ビット)まで順に0と1が交互に並ぶデータと、
前記出力信号のビット数のデータであって、0であるMSBからLSBまで順に0と1が交互に並ぶデータと、
を連続して設定可能である、ADコンバータ。
【請求項2】
前記ビット数は、12ビットであり、前記所定のデジタルデータは、AAAhまたは555hである、請求項に記載のADコンバータ。
【請求項3】
前記データ比較部における比較判定には、許容誤差が設けられる、請求項1または請求項2に記載のADコンバータ。
【請求項4】
前記データ比較部は、比較判定を複数回行い、前記許容誤差を超える回数が1以上の所定回数以下である場合、正常を示す前記第1検出信号を出力する、請求項に記載のADコンバータ。
【請求項5】
前記許容誤差は、外部信号により可変に設定される、請求項または請求項に記載のADコンバータ。
【請求項6】
前記所定のデジタルデータは、前記AD変換部による1回の変換動作ごとに変更されることで、前記出力信号のビット数でのダイナミックレンジにおける全てのデジタル値に設定される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のADコンバータ。
【請求項7】
第2検出信号を出力する第2異常検出部をさらに備え、
前記AD変換部は、変換完了信号を生成する変換完了信号生成部をさらに有し、
前記第2異常検出部は、
前記AD変換部による変換動作が開始されるときにカウントを開始するカウンタと、
前記カウンタが所定期間をカウントするまで、前記変換完了信号が未完了を示すことを確認した場合、または前記カウンタが前記所定期間をカウントした場合に、前記変換完了信号が完了を示すことを確認した場合、正常を示す前記第2検出信号を出力し、それ以外の場合は、異常を示す前記第2検出信号を出力する監視部と、
を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のADコンバータ。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のADコンバータと、
第3異常検出部と、
第4異常検出部と、
を備え、
前記第3異常検出部は、前記入力信号を第2出力信号にAD変換する第2ADコンバータと、前記出力信号と前記第2出力信号を比較して比較結果としての第3検出信号を出力する第1比較回路と、を有し、
前記第4異常検出部は、前記出力信号と前記第2出力信号を比較して比較出力信号を出力する第2比較回路と、前記第3検出信号と前記比較出力信号との排他的論理和をとることで第4検出信号を出力するEX-OR回路と、を有する、ADコンバータシステム。
【請求項9】
前記コンパレータは、サンプリングに用いるコンデンサと、前記コンデンサの前段側に配置されるスイッチと、を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のADコンバータと、
第5異常検出部と、
を備え、
前記第5異常検出部は、
前記入力信号とDC参照電圧とのいずれかを選択して前記スイッチの前段側に印加させる選択部と、
前記出力信号を前記DC参照電圧に対応する期待値と比較して比較結果としての第5検出信号を出力する期待値比較部と、
を有する、ADコンバータシステム。
【請求項10】
電源電圧が印加される外部端子と、
前記入力信号として前記外部端子の電圧が入力される請求項1から請求項のいずれか1項に記載のADコンバータ、または、請求項または請求項に記載のADコンバータシステムと、
を備える、電源監視IC。
【請求項11】
請求項10に記載の電源監視ICと、
バッテリから供給されるDC電圧を前記電源電圧に変換するDC/DCコンバータと、
前記電源監視ICと通信を行うマイコンと、
を備える、車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ信号をデジタル信号に変換するADC(ADコンバータ)は、様々なシステムに適用されている。ADCの一種として、逐次比較型ADCが存在する。このようなADCが正しく動作しているかを検出する回路として、例えば特許文献1に、次のようなADCセルフテスト回路が開示されている。
【0003】
特許文献1のADCセルフテスト回路は、ADCのダイナミックレンジを超えるテスト信号と上記ダイナミックレンジ範囲内の基準信号をコンパレータに入力してハイレベルが出力されることを確認するとともに、上記ダイナミックレンジ未満のテスト信号と上記ダイナミックレンジ範囲内の基準信号をコンパレータに入力してローレベルが出力されることを確認する。これにより、基準信号を出力するローカルDAC(DAコンバータ)の全ての出力レベルについて異常が生じていないことを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-220172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、コンパレータの異常を検出することはできるが、コンパレータの出力をデジタル出力に変換する制御回路の異常を検出してはいないので、AD変換動作の異常を検出する機能として十分であるとは言えなかった。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、AD変換動作の異常を検出する機能を向上させたADコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係るADコンバータは、
コンパレータと、
デジタルデータである第1DACデータを生成する第1DACデータ生成部と、
DAC(DAコンバータ)と、
を有して、
前記コンパレータは、アナログ信号である入力信号をサンプリングし、サンプリングされた前記入力信号と、前記DACにより前記第1DACデータから変換されたアナログデータとを比較し、
前記第1DACデータ生成部は、前記コンパレータによる比較結果に応じて前記第1DACデータを更新し、
前記コンパレータによる比較結果に応じて出力信号のビットデータを確定する、
AD変換部を備えたADコンバータであって、
所定のデジタルデータである第2DACデータを生成する第2DACデータ生成部と、
前記第2DACデータと前記出力信号とを比較し、比較結果としての第1検出信号を出力するデータ比較部と、
を有する第1異常検出部と、
前記第1DACデータと前記第2DACデータとのうちいずれかを選択するセレクタと、をさらに備え、
テスト動作時において、前記コンパレータは、前記セレクタにより選択された前記第2DACデータを前記DACにより変換したアナログデータをサンプリングし、サンプリングされた前記アナログデータと、前記セレクタにより選択された前記第1DACデータと、を比較する構成としている(第1の構成)。
【0008】
また、上記第1の構成において、前記所定のデジタルデータは、前記出力信号のビット数のデータであって、MSB(最上位ビット)からLSB(最下位ビット)まで順に0と1が交互に並ぶデータであることとしてもよい(第2の構成)。
【0009】
また、上記第2の構成において、前記ビット数は、12ビットであり、前記所定のデジタルデータは、AAAhまたは555hであることとしてもよい(第3の構成)。
【0010】
また、上記第2または第3の構成において、前記所定のデジタルデータは、前記出力信号のビット数のデータであって、1であるMSBからLSBまで順に0と1が交互に並ぶデータと、前記出力信号のビット数のデータであって、0であるMSBからLSBまで順に0と1が交互に並ぶデータと、の両方を設定可能であることとしてもよい(第4の構成)。
【0011】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記データ比較部における比較判定には、許容誤差が設けられることとしてもよい(第5の構成)。
【0012】
また、上記第5の構成において、前記データ比較部は、比較判定を複数回行い、前記許容誤差を超える回数が1以上の所定回数以下である場合、正常を示す前記第1検出信号を出力することとしてもよい(第6の構成)。
【0013】
また、上記第5または第6の構成において、前記許容誤差は、外部信号により可変に設定されることとしてもよい(第7の構成)。
【0014】
また、上記第1から第7のいずれかの構成において、前記所定のデジタルデータは、前記AD変換部による1回の変換動作ごとに変更されることで、前記出力信号のビット数でのダイナミックレンジにおける全てのデジタル値に設定されることとしてもよい(第8の構成)。
【0015】
また、上記第1から第8のいずれかの構成において、第2検出信号を出力する第2異常検出部をさらに備え、
前記AD変換部は、変換完了信号を生成する変換完了信号生成部をさらに有し、
前記第2異常検出部は、
前記AD変換部による変換動作が開始されるときにカウントを開始するカウンタと、
前記カウンタが所定期間をカウントするまで、前記変換完了信号が未完了を示すことを確認した場合、または前記カウンタが前記所定期間をカウントした場合に、前記変換完了信号が完了を示すことを確認した場合、正常を示す前記第2検出信号を出力し、それ以外の場合は、異常を示す前記第2検出信号を出力する監視部と、
を有することとしてもよい(第9の構成)。
【0016】
また、本発明の一態様に係るADコンバータシステムは、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のADコンバータと、
第3異常検出部と、
第4異常検出部と、
を備え、
前記第3異常検出部は、前記入力信号を第2出力信号にAD変換する第2ADコンバータと、前記出力信号と前記第2出力信号を比較して比較結果としての第3検出信号を出力する第1比較回路と、を有し、
前記第4異常検出部は、前記出力信号と前記第2出力信号を比較して比較出力信号を出力する第2比較回路と、前記第3検出信号と前記比較出力信号との排他的論理和をとることで第4検出信号を出力するEX-OR回路と、を有する構成としている(第10の構成)。
【0017】
また、本発明の一態様に係るADコンバータシステムは、
前記コンパレータは、サンプリングに用いるコンデンサと、前記コンデンサの前段側に配置されるスイッチと、を有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のADコンバータと、
第5異常検出部と、
を備え、
前記第5異常検出部は、
前記入力信号とDC参照電圧とのいずれかを選択して前記スイッチの前段側に印加させる選択部と、
前記出力信号を前記DC参照電圧に対応する期待値と比較して比較結果としての第5検出信号を出力する期待値比較部と、を有する構成としている(第11の構成)。
【0018】
また、本発明の一態様に係る電源監視ICは、
電源電圧が印加される外部端子と、
前記入力信号として前記外部端子の電圧が入力される請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のADコンバータ、または、請求項10または請求項11に記載のADコンバータシステムと、を備える構成としている(第12の構成)。
【0019】
また、本発明の一態様に係る車載システムは、
上記電源監視ICと、
バッテリから供給されるDC電圧を前記電源電圧に変換するDC/DCコンバータと、
前記電源監視ICと通信を行うマイコンと、を備える構成としている(第13の構成)。
【発明の効果】
【0020】
本発明のADコンバータによれば、AD変換動作の異常を検出する機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るADコンバータの構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るADコンバータにおける通常動作時のサンプリング動作状態を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るADコンバータにおける通常動作時の比較動作状態を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るADコンバータにおけるテスト動作時のサンプリング動作状態を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るADコンバータにおけるテスト動作時の比較動作状態を示す図である。
図6】テスト動作時のサンプリング対象のデジタルデータ(AAAh、555h)の設定について説明するための図である。
図7】テスト動作時のサンプリング対象のデジタルデータ(AAAh)に対する許容誤差について説明するための図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るADコンバータの構成を示す図である。
図9】本発明の第4実施形態に係るADコンバータシステムの構成を示す図である。
図10】本発明の第5実施形態に係るADコンバータシステムの構成を示す図である。
図11】車載システムの一例を示す図である。
図12】本発明の別実施形態に係るADコンバータの構成を示す図である。
図13】本発明の別実施形態に係るADコンバータにおけるコンパレータのサンプリング状態を示す図である。
図14】本発明の別実施形態に係るADコンバータにおけるコンパレータの比較動作の初期状態を示す図である。
図15】本発明の別実施形態に係るADコンバータにおけるコンパレータの比較動作の途中状態の一例を示す図である。
図16】本発明の別実施形態に係るADコンバータにおけるコンパレータの比較動作の最終状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
<1.第1実施形態>
<<ADCの構成>>
図1は、本発明の第1実施形態に係るADC10の構成を示すブロック図である。ADC10は、AD変換部1と、異常検出部2と、を備えている。ADC10は、ロジックのみで構成できる異常検出部2を設けることで実現されるので、回路面積の増大を抑制できる。
【0024】
AD変換部1は、アナログ信号である入力信号INをデジタル信号である出力信号OUTに変換してADC10外部へ出力する。AD変換部1は、いわゆる逐次比較型のAD変換を行う。なお、以下では、出力信号OUTは一例として12ビットのデジタル信号であるとするが、出力信号OUTのビット数はこれに限らない。
【0025】
AD変換部1は、コンパレータ11と、比較ラッチ部12と、データラッチ部13と、DACデータ生成部14と、セレクタ15と、変換完了信号生成部16と、変換開始信号取込み部17と、タイミング制御部18と、DAC(DAコンバータ)19を有する。
【0026】
コンパレータ11は、入力信号INと、DAC19から出力されるアナログデータADATと、を比較し、比較結果としての比較信号CMPを出力する。より具体的には、コンパレータ11は、入力信号INのサンプリング動作と、入力信号INとアナログデータADATとを比較する比較動作を行う。
【0027】
比較ラッチ部12は、コンパレータ11から出力される比較信号CMPを保持する。すなわち、比較ラッチ部12は、HighまたはLowの1ビット信号を保持する。
【0028】
データラッチ部13は、比較ラッチ部12の保持データに応じてビットごとにHighまたはLowのデータを保持し、12ビットのデータを保持する。データラッチ部13に保持された12ビットのデータは、出力信号OUTとして出力される。
【0029】
DACデータ生成部14は、比較ラッチ部12の保持データに応じて、デジタルデータである第1DACデータDACDT1を生成する。入力信号INが出力信号OUTに変換される通常動作時には、セレクタ15によって第1DACデータDACDT1と後述する第2DACデータDACDT2のうち第1DACデータDACDT1が選択されて、DAC19へ入力される。第1DACデータDACDT1は、DAC19によってアナログデータADATに変換され、コンパレータ11へ入力される。
【0030】
変換完了信号生成部16は、出力信号OUTへの変換が完了したことを示す変換完了信号FLGを生成してADC10外部へ出力する。
【0031】
変換開始信号取込み部17は、ADC10外部から入力される変換開始信号STARTを取り込み、タイミング制御部18および後述するタイミング制御部22へAD変換の開始を指令する。
【0032】
タイミング制御部18は、コンパレータ11、DACデータ生成部14、データラッチ部13、および変換完了信号生成部16のタイミング制御を行う。
【0033】
異常検出部2は、AD変換部1が正常に動作するかを確認するために設けられ、DACデータ生成部21と、タイミング制御部22と、データ比較部23と、を有する。
【0034】
DACデータ生成部21は、AD変換部1が正常に動作するかを確認するテスト動作時に、所定のデジタルデータである第2DACデータDACDT2を生成する。テスト動作時には、セレクタ15によって第1DACデータDACDT1と第2DACデータDACDT2のうち第2DACDT2が選択され、DAC19へ入力される。第2DACデータDACDT1は、DAC19によってアナログデータADATに変換され、コンパレータ11へ入力される。入力されたアナログデータADATは、コンパレータ11により入力信号INの代わりにサンプリングされる。
【0035】
タイミング制御部22は、セレクタ15、DACデータ生成部21、およびデータ比較部23のタイミング制御を行う。
【0036】
データ比較部23は、DACデータ生成部21から出力される第2DACデータDACDT2と、出力信号OUTとの比較を行い、比較結果としての検出信号FLOUTをADC10外部へ出力する。検出信号FLOUTは、AD変換部1が正常に動作しているか否かを示す異常検出信号となる。
【0037】
<<逐次比較型のAD変換>>
ADC10において入力信号INを出力信号OUTへ変換する逐次比較型のAD変換動作について説明する。逐次比較型のAD変換動作は、サンプリング動作と比較動作からなる。なお、入力信号INを出力信号OUTへ変換する動作は、通常動作である。
【0038】
まず、サンプリング動作において、コンパレータ11は、アナログ信号である入力信号INをサンプリングする。
【0039】
ここで、図2は、ADC10の通常動作時におけるサンプリング動作状態を示す。図2には、コンパレータ11の具体的な構成例が示される。コンパレータ11は、スイッチ111A、スイッチ111B、コンデンサ112、インバータ113、およびスイッチ114を有している。
【0040】
スイッチ111Aは、入力信号INの印加端とコンデンサ112の第1端との間の導通・遮断を切替える。コンデンサ112の第2端は、インバータ113の入力端に接続される。インバータ113の出力端は、比較ラッチ部12に接続される。スイッチ114は、インバータ113の入力端と出力端との間の導通・遮断を切替える。スイッチ111Bは、DAC19の出力端とコンデンサ112の第1端との間の導通・遮断を切替える。
【0041】
また、図2には、DACデータ生成部14の具体的な構成例が示される。DACデータ生成部14は、SAR(逐次比較レジスタ:Successive Approximation Register)141を有している。
【0042】
スイッチ111A,111Bは、テスト信号tst1と切替信号ins1によりオンオフ状態を制御される。切替信号ins1は、サンプリング動作と比較動作とを切替える信号である。テスト信号tst1および切替信号ins1は、タイミング制御部18(図1)から出力される。
【0043】
通常動作時におけるサンプリング動作では、テスト信号ts1=Low、切替信号ins1=Highとされる。テスト信号tst1=Lowの場合は、スイッチ111A,111Bは、切替信号ins1に応じて状態を切替えられる。上記のように切替信号ins1=Highであると、図2に示すようにスイッチ111Aはオン、スイッチ111Bはオフとされる。
【0044】
また、スイッチ114は、切替信号ins1によりオンオフ状態を切替えられる。上記のように切替信号ins1=Highであると、図2に示すようにスイッチ114はオンとされる。
【0045】
スイッチ114のオンにより、インバータ113の入出力端が短絡されると、コンデンサ112の第2端とインバータ113の入力端とが接続されるノードN2における電圧は、インバータ113の閾値電圧Vthとなる。一方、スイッチ111Aのオンにより、スイッチ111A,111Bとコンデンサ112の第1端とが接続されるノードN1における電圧は、入力信号INとなる。従って、コンデンサ112には、ノードN1,N2間の電圧、すなわちIN-Vthに応じた電荷が充電される。これにより、入力信号INのサンプリングが行われる。
【0046】
なお、図2に示すように、AD変換部1はAND回路A1を有しており、AND回路A1には、テスト信号tst2と切替信号ins2が入力される。テスト信号tst2および切替信号ins2は、タイミング制御部22(図1)から出力される。なお、切替信号ins2は、ins1と同じ挙動となるので、切替信号ins2をins1としてもよい。通常動作時はテスト信号tst2はLowとされるので、AND回路A1の出力ANDはLowとなる。セレクタ15は、出力ANDに応じてDACデータ生成部14の出力とDACデータ生成部21の出力とのいずれかを選択して出力する。上記のように出力ANDがLowの場合、セレクタ15は、図2に示すようにSAR141(DACデータ生成部14)の出力を選択する。
【0047】
このような通常動作時におけるサンプリング動作の後、通常動作時における比較動作に移行する。図3は、ADC10の通常動作時における比較動作状態を示す。
【0048】
通常動作時における比較動作では、テスト信号tst1=Low、切替信号ins1=Lowとされるので、図3に示すように、スイッチ111Aはオフ、スイッチ111Bはオン、スイッチ114はオフとされる。
【0049】
比較動作では、初期値としてSAR141における12ビットのデジタル値のMSB(最上位ビット)に“1”がセットされ、それ以外のビットが“0”にセットされる。すなわち、12ビットのダイナミックレンジ(0~4095)の半値(2048)にセットされる。このようにセットされたSAR141のデジタル値が第1DACデータDACDT1として出力される。ここで、出力ANDによりセレクタ15は第1DACデータDACDT1を選択してDAC19へ出力する。スイッチ111Bがオンであるので、DAC19により第1DACデータDACDT1から変換されたアナログデータADATの電圧は、スイッチ111Bを介してノードN1(コンデンサ112の第1端)に印加される。
【0050】
ここで、ノードN2の電圧をV2とすれば、ADAT-(IN-Vth)=V2が成り立つので、ADAT-IN=V2-Vthとなる。従って、ADAT>INの場合、V2>Vthとなり、インバータ113の出力である比較信号CMPはLowとなり、ADAT<INの場合、V2<Vthとなり、インバータ113の出力である比較信号CMPはHighとなる。このように、コンパレータ11により入力信号INとアナログデータADATとの比較が行える。
【0051】
比較ラッチ部12に保持された比較信号CMPのレベルがHighである場合(IN>ADATの場合)、データラッチ部13における12ビットのデジタル値のうちMSB=“1”と確定される。また、この場合、SAR141における12ビットのデジタル値のMSBに“1”、MSBの次のビットに“1”、それ以外のビットに“0”がセットされる。すなわち、12ビットのダイナミックレンジの上半分の半値(3072)にセットされる。そして、DAC19により第1DACデータDACDT1(SAR141にセットされたデジタル値)は、アナログデータADATに変換されてノードN1に印加される。
【0052】
一方、比較ラッチ部12に保持された比較信号CMPのレベルがLowである場合(IN<DADATの場合)、データラッチ部13における12ビットのデジタル値のうちMSB=“0”と確定される。また、この場合、SAR141における12ビットのデジタル値のMSBに“0”、MSBの次のビットに“1”、それ以外のビットに“0”がセットされる。すなわち、12ビットのダイナミックレンジの下半分の半値(1024)にセットされる。そして、DAC19により第1DACデータDACDT1(SAR141にセットされたデジタル値)は、アナログデータACDATに変換されてノードN1に印加される。
【0053】
以降、同様にコンパレータ11による比較結果に応じてデータラッチ部13におけるデジタル値のビットが順次確定されつつ、SAR141にセットされるデジタル値(第1DACデータDACDT1)が更新される。そして、データラッチ部13におけるデジタル値のLSB(最下位ビット)までビットが確定すると、変換動作が完了され、データラッチ部13におけるデジタル値は出力信号OUTとして出力される。
【0054】
<<テスト動作>>
次に、ADC10におけるテスト動作について説明する。テスト動作は、先述した通常動作と同じくサンプリング動作と比較動作からなる。
【0055】
図4は、ADC10のテスト動作におけるサンプリング動作状態を示す。なお、図4に示すように、異常検出部2(図1)に含まれるDACデータ生成部21は、レジスタ211を有している。
【0056】
テスト動作におけるサンプリング動作では、テスト信号tst1=High、切替信号ins1=Highとされる。テスト信号tst1=Highの場合、切替信号ins1のレベルに依らず、スイッチ111Aはオフ、スイッチ111Bはオンとされる。また、切替信号ins1=Highであるので、スイッチ114はオンとされる。
【0057】
このとき、テスト信号tst2=High、切替信号ins2=Highとされるので、出力AND=Highとなり、セレクタ15はDACデータ生成部21の出力を選択する。
【0058】
レジスタ211における12ビットのデジタル値は所定の第2DACデータDACDT2にセットされる。所定の第2DACデータDACDT2は、後述するように、少なくとも555hおよびAAAhの両方にセットされることが望ましい(hは16進数表記であることを示す)。
【0059】
第2DACデータDACDT2は、図4に示すように、セレクタ15により選択されてDAC19へ出力され、DAC19によりアナログデータADATに変換される。アナログデータADATの電圧は、オンであるスイッチ111Bを介してノードN1に印加される。これにより、先述した通常動作時のサンプリングと同様にコンデンサ112に電荷が充電され、第2DACデータDACDT2がサンプリングされる。
【0060】
すなわち、テスト動作時のサンプリング動作では、入力信号INの代わりに、第2DACデータDACDT2がサンプリングされる。
【0061】
このようなテスト動作時におけるサンプリング動作の後、テスト動作時における比較動作に移行する。図5は、ADC10のテスト動作時における比較動作状態を示す。
【0062】
テスト動作時における比較動作では、テスト信号tst1=High、切替信号ins1=Lowとされるので、図5に示すように、スイッチ111Aはオフ、スイッチ111Bはオン、スイッチ114はオフとされる。
【0063】
また、このとき、テスト信号tst2=High、切替信号ins2=Lowとなり、出力AND=Lowとなるので、セレクタ15はDACデータ生成部14の出力を選択する。
【0064】
すなわち、図5の状態は、先述した通常動作時の比較動作状態を示す図3と同様となる。これにより、サンプリングされた第2DACデータDACDT2と、DACデータ生成部14の出力である第1DACデータDACDT1とがコンパレータ11により比較され、比較結果に応じてデータラッチ部13における12ビットのデジタル値のビットがMSBより順次確定されつつ、SAR141にセットされるデジタル値が順次更新される。そして、データラッチ部13におけるデジタル値のLSBまでビットが確定すると、変換動作が完了され、データラッチ部13におけるデジタル値は出力信号OUTとして出力される。
【0065】
このように第2DACデータDACDT2に基づくアナログデータADATがAD変換された出力信号OUTと、DACデータ生成部21から出力される第2DACデータDACDT2は、データ比較部23(図1)によって比較される。出力信号OUTと第2DACデータDACDT2とが一致した場合、データ比較部23は、Lowの検出信号FLOUTを出力し、一致しない場合、Highの検出信号FLOUTを出力する。但し、出力信号OUTとデジタルデータDGDATとの一致は、完全一致としてもよいが、それに限らず、後述するように所定の誤差のずれを許容した一致としてもよい。
【0066】
すなわち、AD変換部1が正常に動作している場合、検出信号FLOUTはLowとなり、AD変換部1の動作が異常である場合、検出信号FLOUTはHighとなる。このように、ADC10は、テスト動作を行うことにより、AD変換部1が正常に動作しているかを確認できる。
【0067】
<<テスト動作用のデジタルデータ設定について>>
先述したようにテスト動作時にDA変換されてサンプリングされる所定の第2DACデータDACDT2は、少なくともAAAhおよび555hの両方を設定可能であることが望ましい。以下、この理由について述べる。
【0068】
図6には、AAAhまたは555hとした所定の第2DACデータDACDT2(破線)と、AAAhまたは555hと比較されるSAR141にセットされるデジタル値(実線)と、を示す。
【0069】
例えばAAAhがDA変換されてサンプリングされる場合、SAR141にセットされるデジタル値は、図6に示すように、800h→C00h→A00h→B00h→・・と順次更新される。このとき、データラッチ部13におけるデジタル値は、MSBから順次1→0→1→・・とLSBまで1と0が交互に確定される。
【0070】
また、555hがDA変換されてサンプリングされる場合、SAR141にセットされるデジタル値は、図6に示すように、800h→400h→600h→500h→・・と順次更新される。このとき、データラッチ部13におけるデジタル値は、MSBから順次0→1→0→・・とLSBまで0と1が交互に確定される。
【0071】
このように所定の第2DACデータDACDT2としてAAAhおよび555hの両方を設定可能とすれば、AAAhの場合と555hの場合とでデジタル値の同じビットで0と1のいずれか一方と他方となる(例えば、MSBは、AAAhの場合に1であり、555hの場合に0であり、MSBの次のビット(11ビット目)は、AAAhの場合に0であり、555hの場合に1である等)。これにより、デジタル値の各ビットでHigh(1)かLow(0)に固定されるスタック故障を検出可能となる。
【0072】
また、図6に示すように、AAAhおよび555hのいずれの場合でも、SAR141に更新設定されるデジタル値(図6の実線)は、AAAhまたは555hからバランス良く離れて位置するので、上記デジタル値をDA変換した第1DACデータDACDT1の電圧にノイズやオフセット誤差が生じた場合でも、データラッチ部13におけるデジタル値の上位ビットで誤ったデータが確定されることを抑制できる。また、後述するように、SAR141に更新設定されるデジタル値がAAAhまたは555hと一致して比較判定が困難となるのは、データラッチ部13におけるデジタル値の下位ビット位置であるので、データラッチ部13において確定されるデジタル値の誤差を小さくすることができる。
【0073】
また、SAR141に更新設定されるデジタル値をDAC19によりDA変換した電圧は、図6に例示的に一点鎖線で示すように、上記デジタル値に対してなまった波形となる。これにより、例えば図6の例であれば、AAAhに対してB00hをDA変換した電圧値がなまることで、当該電圧値がAAAhを下回ってしまい、データラッチ部13におけるデジタル値の9ビット目(図6の[8])が本来は“0”に確定されるべきところを誤って“1”に確定されてしまう。AAAhまたは555hに対して上記デジタル値は上下するので、DAC19のセトリング特性を厳しめの条件で確認することができる。また、コンパレータ11のセトリング特性も確認できる。
【0074】
なお、テスト動作時に設定される第2DACデータDACDT2には、外部入力データを設定可能としてもよい。
【0075】
<<許容誤差の設定>>
ここで、図7に示すように、SAR141に更新設定されるデジタル値が例えばAAAhと一致して比較判定が困難となるのは、データラッチ部13におけるデジタル値の下位ビット位置である2ビット目(図7の[1])である。2ビット目で正しく“1”が確定されると、SAR141におけるデジタル値は、AABhに更新設定されるので、LSB(図7の[0])は正しく“0”に確定される。この場合、出力信号OUTは正しくAAAhとなる。
【0076】
しかしながら、2ビット目で誤って“0”が確定された場合、SAR141におけるデジタル値は、AA9hに更新設定されるので、LSBは “1”に確定される。この場合、出力信号OUTは、AA9hとなり、AAAhとは-1LSBの誤差が生じる。
【0077】
また、SAR141に更新設定されるデジタル値をDA変換した電圧値にノイズやオフセット誤差が生じた場合は、出力信号OUTにAAAhから数LSBのずれが発生する可能性がある。
【0078】
しかしながら、このように出力信号OUTにAAAhから数LSBのずれが発生しても、スペック未達の場合はあるが、ハザード状態とはならない。そこで、出力信号OUTのAAAhに対する許容誤差を設けることが望ましい。例えばAAAhに対して±2LSBの許容誤差を設けた場合、AA8h~AAChの出力信号OUTは許容することになる。すなわち、テスト動作時のデータ比較部23(図1)における比較判定に許容誤差を設けることとなる。
【0079】
なお、突発的なノイズにより出力信号OUTが許容誤差を超える可能性を考慮し、例えばAAAhに対する出力信号OUTの生成を数回行い、データ比較部23において出力信号OUTのAAAhに対する比較判定を数回行い、許容誤差を超える回数が1回以下である場合、正常を示す検出信号FLOUTを出力してもよい。その他にも、1回の出力信号OUTの生成ごとに検出信号FLOUTを出力し、例えば外部のマイコンにより検出信号FLOUTが異常を示す回数をカウントしてもよい。この場合、上記突発的なノイズが生じたときに検出信号FLOUTは異常を示す状態として出力される。
【0080】
なお、データ比較部23において許容誤差を外部信号により可変に設定してもよい。例えば、外部信号により許容誤差を±2LSB、±4LSB、±8LSB、±16LSBに可変に設定してもよい。この場合、例えば次のような実施例を実施することができる。外部のマイコンにより初期は許容誤差を小さく設定しておき、出力信号OUTが許容誤差を超えた場合、マイコンが異常を示す検出信号FLOUTを受けて警告を行う。そして、マイコンは、現在の許容誤差より大きい許容誤差をデータ比較部23に設定する。その後、出力信号OUTが許容誤差を超えた場合、マイコンが異常を示す検出信号FLOUTを受けて先の警告よりも重い警告を行う。
【0081】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、先述した第1実施形態の一変形例であり、第1実施形態との相違点は、テスト動作時においてコンパレータ11にサンプリングさせるデータである。
【0082】
より具体的には、先述した図4のサンプリング動作状態において、レジスタ211に設定されるデジタル値(第2DACデータDACDT2)を000h(12ビットの最小値)からFFFh(12ビットの最大値)まで出力信号OUTの生成ごと(1変換ごと)にインクリメント(1ずつ増加)させ、出力信号OUTの生成ごとにデータ比較部23において比較判定を行う。当該比較判定において完全一致を判定条件とした場合は、全ての生成された出力信号OUTについて一致が確認されると、ミッシングコードが発生していないことが確認される(単調性の確認)。
【0083】
但し、上記比較判定においても先述した第1実施形態のように許容誤差を設けることが可能であるが、この場合、許容誤差分だけミッシングコードの判定はできないことになる。
【0084】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、以降の第3~第5実施形態は、単独で実施してもよいし、先述した第1、第2実施形態と組み合わせて実施してもよい。
【0085】
第3実施形態に係るADC101の構成を図8に示す。図8に示すように、ADC101は、AD変換部1と、異常検出部3と、を備えている。AD変換部1は、先述した第1実施形態の構成(図1)とほぼ同様であり、セレクタ15は有していない。
【0086】
異常検出部3は、カウンタ31と、監視部32と、を有している。カウンタ31は、変換開始信号取込み部17が変換開始信号STARTを取り込んだ際に、変換開始信号取込み部17からの指令により、カウントを開始する。なお、このとき、AD変換部1による変換動作が開始される。監視部32は、カウンタ31がカウントを開始すると、変換完了信号生成部16により生成される変換完了信号FLGの監視を開始する。
【0087】
監視部32は、カウンタ31が所定期間をカウントするまで、変換完了信号FLGが未完了を示すLowであることを確認すると、検出信号FLOUT2を正常を示すLowとする。そして、監視部32は、カウンタ31が所定期間をカウントした場合に、変換完了信号FLGが完了を示すHighであることを確認すると、検出信号FLOUT2を正常を示すLowとする。それ以外の場合は、監視部32は、検出信号FLOUT2を異常を示すHighとする。
【0088】
このように、本実施形態によれば、AD変換完了信号FLGが正常に挙動しているかを確認できる。特に、本実施形態では、AD変換部1による通常動作を行いつつ、バックグラウンドで異常検出部3による検出動作を行うことができる。
【0089】
<4.第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9は、本発明の第4実施形態に係るADCシステム201の構成を示す。
【0090】
ADCシステム201は、ADC4と、異常検出部5と、異常検出部6と、を備えている。ADC4は、入力信号INを出力信号OUT1にAD変換して出力する。なお、ADC4は、逐次比較型に限ることはない。
【0091】
異常検出部5は、ADC4が正常に動作しているかを確認するために設けられ、ADC51と、比較回路52と、を有している。すなわち、ADCシステム201においては、ADCを2重化している。
【0092】
ADC51は、入力信号INを出力信号OUT2にAD変換して出力する。比較回路52は、出力信号OUT1とOUT2とを比較し、比較結果としての検出信号FLOUT11を出力する。より具体的には、比較回路52は、出力信号OUT1とOUT2が一致する場合、検出信号FLOUT11を正常を示すLowとし、出力信号OUT1とOUT2が一致しない場合、検出信号FLOUT11を異常を示すHighとする。検出信号FLOUT11がHighとなることにより、ADC4の異常状態を検出できる。なお、比較回路52による比較判定では、許容誤差を設けてもよい。
【0093】
また、異常検出部6は、比較回路52の異常状態を検出するために設けられ、比較回路61と、EX-OR回路62と、を有している。すなわち、ADCシステム201では、比較回路を2重化している。
【0094】
比較回路61は、出力信号OUT1とOUT2とを比較し、比較結果としての比較出力信号CPOUTを出力する。より具体的には、比較回路61は、比較回路52と同じく、出力信号OUT1とOUT2が一致する場合、比較出力信号CPOUTを正常を示すLowとし、出力信号OUT1とOUT2が一致しない場合、比較出力信号CPOUTを異常を示すHighとする。なお、比較回路61による比較判定では、許容誤差を設けてもよい。
【0095】
EX-OR回路62は、検出信号FLOUT11と比較出力信号CPOUTの排他的論理和をとり、検出信号FLOUT12を出力する。これにより、検出信号FLOUT11と比較出力信号CPOUTとが一致する場合、検出信号FLOUT12はLowになり、検出信号FLOUT11と比較出力信号CPOUTとが一致しない場合、検出信号FLOUT12はHighとなる。
【0096】
これにより、比較回路52が正常の場合、検出信号FLOUT11と比較出力信号CPOUTとは一致するので、検出信号FLOUT12は正常を示すLowとなり、比較回路52が異常の場合、検出信号FLOUT11と比較出力信号CPOUTとは一致しないので、検出信号FLOUT12は異常を示すHighとなる。
【0097】
例えば、ADC4が故障して出力信号OUT1が異常となった場合、比較回路52が故障していると、検出信号FLOUT11は本来はHighであるところがLowとなって正常を示すことになるが、一方、比較出力信号CPOUTはHighとなる。これにより、検出信号FLOUT12は、Highとなる。これにより、検出信号FLOUT11の信頼性が損なわれていることを確認できる。
【0098】
また、本実施形態によれば、ADC4による通常動作を行いつつ、バックグラウンドで異常検出部5,6による検出動作を行うことができる。
【0099】
<5.第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図10は、本発明の第5実施形態に係るADCシステム202の構成を示す。図10に示すように、ADCシステム202は、ADC40と、異常検出部7と、を有している。
【0100】
ADC40は、逐次比較型である。異常検出部7は、MUX(マルチプレクサ)71と、期待値比較部72と、を有している。MUX71は、入力される入力信号INとDC参照電圧VREFのうちいずれかを選択して、選択出力信号SELOUTとして出力する。DC参照電圧VREFは、精度が保証されたDC電圧であり、例えばバンドギャップ電圧としてもよいし、DACの出力電圧としてもよい。
【0101】
選択出力信号SELOUTは、ADC40に入力される。より具体的には、逐次比較型であるADC40は、先述した図2に示すようなコンパレータ11におけるスイッチ111Aを有しており、選択出力信号SELOUTはスイッチ111Aの前段側に印加される。そして、ADC40は、入力された選択出力信号SELOUTを出力信号OUTにAD変換して出力する。
【0102】
通常動作時は、MUX71により入力信号INが選択されて選択出力信号SELOUTとしてADC40に入力され、出力信号OUTに変換される。
【0103】
また、テスト動作時には、MUX71によりDC参照電圧VREFが選択されて選択出力信号SELOUTとしてADC40に入力され、出力信号OUTに変換される。このとき、期待値比較部72は、出力信号OUTを、DC参照電圧VREFに対応した期待値(想定値)と比較する。期待値比較部72は、出力信号OUTが期待値と一致した場合、検出信号FLOUT21を正常を示すLowとして出力し、出力信号OUTが期待値と一致しない場合、検出信号FLOUT21を異常を示すHighとして出力する。なお、期待値比較部72における比較判定には、許容誤差を設けてもよい。
【0104】
このような実施形態により、ADC40における上記スイッチの故障による異常を検出することが可能となる。
【0105】
<6.電源監視ICへの適用>
次に、以上説明した各種実施形態に係るADC(またはADCシステム)を適用するシステムの一例として、車載システムについて説明する。近年、自動運転技術の開発、ADAS(高度運転支援システム)の採用の加速により、車載分野では機能安全の要求が高まっており、車載システムにおいて電源電圧を監視する電源監視ICを設ける必要性が生じている。
【0106】
図11は、一実施例としての車載システム500の構成を示すブロック図である。図11に示す車載システム500は、DC/DCコンバータ50と、センサ60と、CAN(Controller Area Network)70と、電源監視IC80と、MCU(マイコン)90と、を備えている。
【0107】
DC/DCコンバータ50は、バッテリにより供給される電源電圧(DC電圧)VCCを電源電圧V1~V5のそれぞれに変換する。電源電圧V1は、MCU90に供給される。電源電圧V2~V4のそれぞれは、センサ60に供給される。電源電圧V5は、CAN70に供給される。
【0108】
電源監視IC80は、外部端子として端子T1~T6を有している。端子T6には、電源電圧VCCが印加される。また、電源監視IC80は、端子T1~T5に印加されるDC/DCコンバータ50の各出力電圧を監視する。より具体的には、端子T1~端子T5のそれぞれには電源電圧V1~V5が印加される。電源監視IC80は、端子T1~T5に印加される電源電圧V1~V5に異常が生じたことを検出すると、MCU90にSPI(Serial Peripheral Interface)通信により異常を通知する。
【0109】
ここで、端子T1~T5に印加される電圧(アナログ信号)を入力信号として入力されて電源監視IC80に備えられるADC(またはADCシステム)として、先述した各種実施形態を利用することができる。これにより、端子T1~T5に印加される電圧をAD変換するADCが正常に動作しているかを電源監視IC80において検出することが可能となる。
【0110】
<7.その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【0111】
ここでは、本発明の趣旨の範囲内である容量型DACを有するコンパレータを用いたADCについて説明する。図12は、本発明の一実施形態に係るADC105の構成を示す図である。図12に示すADC105は、AD変換部106と、異常検出部107と、を備えている。AD変換部106は、アナログ信号である入力信号INをデジタル信号である出力信号OUTに変換する。以下、一例として、出力信号OUTは、12ビットデータであるとする。
【0112】
AD変換部106は、コンパレータ1065を有する。コンパレータ1065は、容量型DAC1060と、インバータ106Aと、スイッチ106Bと、を有する。
【0113】
容量型DAC1060は、コンデンサC0~C11と、スイッチSW0~SW11と、を有する。コンデンサC0~C11の各々の第1端同士は、インバータ106Aの入力端に共通接続される。スイッチSW0~SW11は、それぞれ、入力信号INの印加端と、High電圧VHの印加端と、Low電圧VLの印加端と、のいずれかとコンデンサC0~C11の各々の第2端との接続を選択的に切り替える。
【0114】
スイッチ106Bは、インバータ106Aの入出力端間の導通/遮断を切り替える。
【0115】
AD変換部106は、コンパレータ1065以外にも、比較ラッチ部106Cと、データラッチ部106Dと、第1DACデータ生成部106Eと、セレクタ106Fと、スイッチ制御部106Gと、を有している。
【0116】
比較ラッチ部106Cは、コンパレータ1065(インバータ106A)から出力される比較信号CMPを保持する。すなわち、比較ラッチ部106Cは、HighまたはLowの1ビット信号を保持する。
【0117】
データラッチ部106Dは、比較ラッチ部106Cの保持データに応じてビットごとにHighまたはLowのデータを保持し、12ビットのデータを保持する。データラッチ部13に保持された12ビットのデータは、出力信号OUTとして出力される。
【0118】
第1DACデータ生成部106Eは、SAR(逐次比較レジスタ)を有し、比較ラッチ部106Cの保持データに応じてデジタルデータである第1DACデータDT1を生成する。
【0119】
セレクタ106Fは、通常動作時には、第1DACデータDT1と、後述の第2DACデータ生成部107Aにより生成される第2DACデータDT2とのうち、第1DACデータDT1を選択してスイッチ制御部106Gに出力する。スイッチ制御部106Gは、スイッチSW0~SW11およびスイッチ106Bを制御する。
【0120】
ここで、AD変換部106による通常動作について説明する。まず、図13に示すように、スイッチ制御部106GによりスイッチSW0~SW11はすべて入力信号INの印加端を選択し、スイッチ106Bはオンとされる。これにより、コンデンサC0~C11のそれぞれの第2端には入力信号INが印加され、インバータ106Aの入出力端間が短絡されてインバータ106Aの入力電圧Vinvは、インバータ106Aの閾値電圧Vthとなる。従って、コンデンサC0~C11の第2端に印加される入力信号INと第1端に印加されるVinv=Vthとの電圧差によって、コンデンサC0~C11に充電される総電荷量Q1は、
Q1=(C0+C1+・・・+C11)・(Vth-IN)となる。
【0121】
このようにして、コンパレータ1065により、入力信号INのサンプリングが行われる。次に、比較動作が行われる。比較動作では、スイッチ制御部106Gは、セレクタ106Fから出力される第1DACデータDT1に応じてスイッチSW0~SW11を制御するとともに、スイッチ106Bはオフとする。
【0122】
具体的には、12ビットデータである第1DACデータDT1のMSBからLSBまでの各ビットがスイッチSW11~SW0の各々に対応しており、ビットが1である場合、スイッチはHigh電圧VHを選択し、ビットが0である場合、スイッチはLow電圧VL(=0V)を選択する。
【0123】
これにより、第1DACデータDT1の各ビットをb0~b11(b11がMSB)とすると、比較動作においてコンデンサC0~C11に充電される総電荷量Q2は、
Q2=C0(Vinv-VH・b0)+C1(Vinv-VH・b1)+・・・+C11(Vinv-VH・b11)となる。
【0124】
ここで、総電荷量は維持されるので、Q1=Q2となり、式を整理すると、
Vinv=(C0・VH・b0+C1・VH・b1+・・・+C11・VH・b11)/(C0+C1+・・・+C11)+Vth-IN
【0125】
従って、(C0・VH・b0+C1・VH・b1+・・・+C11・VH・b11)/(C0+C1+・・・+C11)と入力信号INとの大小関係が、VinvとVthとの大小関係となるので、第1DACデータDT1を容量型DAC1060により変換したアナログデータと入力信号INとの比較結果がインバータ106Aの出力である比較信号CMPとして出力される。
【0126】
サンプリング動作の後、最初の比較動作として、第1DACデータ生成部106Eにより第1DACデータDT1は、MSBを1とし、残りのビットを0としたデータとされる。これにより、スイッチ制御部106Gは、図14に示すように、スイッチSW11のみHigh電圧VHを選択させ、残りのスイッチSW0~SW10にはLow電圧VLを選択させる。その結果、比較信号CMPが0の場合、第1DACデータ生成部106Eは、MSB(b11)を0とし、MSBの次の上位ビットである11ビット目(b10)を1として、それ以外のビット(b9~b0)は0とした第1DACデータDT1を生成する。一方、比較信号CMPが1の場合、第1DACデータ生成部106Eは、MSB(b11)を1とし、MSBの次の上位ビットである11ビット目(b10)を1として、それ以外のビット(b9~b0)は0とした第1DACデータDT1を生成する。
【0127】
また、このとき、データラッチ部106D(図12)は、比較信号CMPが0の場合、MSBのビットデータを0、比較信号CMPが1の場合、MSBのビットデータを1として保持する。
【0128】
すなわち、本実施形態における第1DACデータDT1の更新方法およびデータラッチ部106Dにおけるビットデータの確定方法は、上述した第1実施形態と同様である。
【0129】
そして、次の比較動作に移行し、スイッチ制御部1Gは、第1DACデータDT1に応じてスイッチSW0~SW11を制御する。図15は、上述で先の比較動作時に比較信号CMPが0であった場合のスイッチ状態を示す。11ビット目(b10)に対応するスイッチSW10のみがHigh電圧VHを選択し、それ以外のスイッチSW11、SW0~SW9はLow電圧VLを選択している。
【0130】
以降、同様に比較信号CMPに応じて第1DACデータDT1を更新しつつ、データラッチ部102Dにおける保持データのビットを確定して比較動作を繰り返し、データラッチ部106Dにおける保持データのすべてのビットが確定されると、確定された12ビットデータが出力信号OUTとして出力される。
【0131】
例えば、C0=1C、C1=2C、・・・・、C10=1028C、C11=2048C、VH=1V、Vth=0.5Vとした場合、上述した
(C0・VH・b0+C1・VH・b1+・・・+C11・VH・b11)/(C0+C1+・・・+C11)=(b0+2・b1+8・b3+16・b4+32・b5+64・b6+128・b7+256・b8+512・b9+1024・b10+2048・b11)/4095となる。
【0132】
この場合、例えば入力信号IN=0.1Vとすると、上述のサンプリングおよび比較動作によって出力信号OUT=0001_1001_1001となり、10進数では409に相当する。図16は、この場合の最終的なスイッチ状態を示す。
【0133】
図12に説明を戻し、異常検出部107は、第2DACデータ生成部107Aと、データ比較部107Bと、を有している。
【0134】
テスト動作時に、レジスタを有する第2DACデータ生成部107Aは、所定の12ビットデータである第2DACデータDT2を生成してセレクタ106Fに出力する。セレクタ106Fは、第2DACデータDT2を選択してスイッチ制御部106Gに出力する。
【0135】
すると、スイッチ制御部106Gは、第2DACデータDT2に応じてスイッチSW0~SW11を制御する。この場合の制御は、上述した第1DACデータDT1に応じた制御と同様である。また、スイッチ制御部106Gは、スイッチ106Bをオンとする。これにより、コンデンサC0~C11には、各々に印加される電圧差に応じた電荷が充電される。
【0136】
このようにして、コンパレータ1065は、セレクタ106Fにより選択された第2DACデータDT2を容量型DAC1060により変換したアナログデータをサンプリングする。
【0137】
その後、通常動作時と同様に、セレクタ106Fにより選択された第1DACデータDT1に応じたスイッチSW0~SW11の制御を行い、スイッチ106Bはオフとして、比較信号CMPを出力する比較動作を行う。すなわち、コンパレータ1065は、サンプリングされた上記アナログデータと、セレクタ106Fにより選択された第1DACデータDT1と、を比較する。
【0138】
比較信号CMPに応じて第1DACデータDT1を更新しつつ、データラッチ部102Dにおける保持データのビットを確定して比較動作を繰り返し、データラッチ部106Dにおける保持データのすべてのビットが確定されると、確定された12ビットデータが出力信号OUTとして出力される。
【0139】
そして、データ比較部107Bは、第2DACデータ生成部107Aから出力される第2DACデータDT2と、出力信号OUTとの比較を行い、比較結果としての検出信号FLOUTをADC105外部へ出力する。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、例えば、車載システムなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
10、101 ADC(ADコンバータ)
1 AD変換部
11 コンパレータ
111A、111B スイッチ
112 コンデンサ
113 インバータ
114 スイッチ
12 比較ラッチ部
13 データラッチ部
14 DACデータ生成部
141 SAR(逐次比較レジスタ)
15 セレクタ
16 変換完了信号生成部
17 変換開始信号取込み部
18 タイミング制御部
19 DAC(DAコンバータ)
2 異常検出部
21 DACデータ生成部
211 レジスタ
22 タイミング制御部
23 データ比較部
3 異常検出部
31 カウンタ
32 監視部
201、202 ADCシステム
4、40 ADC
5 異常検出部
51 ADC
52 比較回路
6 異常検出部
61 比較回路
62 EX-OR回路
7 異常検出部
71 MUX(マルチプレクサ)
72 期待値比較部
A1 AND回路
50 DC/DCコンバータ
60 センサ
70 CAN
80 電源監視IC
90 MCU(マイコン)
500 車載システム
105 ADC
106 AD変換部
1060 容量型DAC
1065 コンパレータ
106A インバータ
106B スイッチ
106C 比較ラッチ部
106D データラッチ部
106E 第1DACデータ生成部
106F セレクタ
106G スイッチ制御部
107 異常検出部
107A 第2DACデータ生成部
107B データ比較部
C0~C11 コンデンサ
SW0~SW11 スイッチ
図1
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