(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230904BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230904BHJP
G03F 7/42 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 645B
G03F7/42
(21)【出願番号】P 2019194037
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
(72)【発明者】
【氏名】宗徳 皓太
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-077069(JP,A)
【文献】特開2007-273806(JP,A)
【文献】特開2001-110772(JP,A)
【文献】特表2003-533865(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を、前記第2の面が下方を向くように保持する工程と、
前記基板の前記第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する工程と、
前記空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程と、
前記基板の前記第2の面と前記空間との界面を加熱する工程と、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程と、
を備え、
前記処理液を配置する工程は、前記圧力保持部上に前記処理液を供給する工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程は、前記処理液に混入されているオゾンガスを前記空間中へ放出する工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液に混入されているオゾンガスの少なくとも一部は、粒径50nm以下の気泡として混入されている、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板の前記第2の面と前記空間との界面を加熱する工程は、
前記基板を加熱する工程と、
前記基板の前記第2の面から前記空間へ熱を与える工程と、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板を加熱する工程は、前記基板を前記第2の面から加熱する工程を含む、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板を加熱する工程は、前記基板を前記第1の面から加熱する工程を含む、請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板の前記第2の面と前記空間との界面を加熱する工程は、第1の温度を有する前記処理液に、前記第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水を混合する工程を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理液の圧力および前記空間の圧力の少なくともいずれかを制御する工程をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ウイング部は、前記基板の前記第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面と前記主部との間へ前記処理液を供給し断面積SCを有する供給部を含み、
SC > LI・HG
が満たされている、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記圧力保持部は、前記処理液を受け入れるための複数の導入路を有しており、
前記処理液を配置する工程は、前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記処理液を導入する工程を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記処理液を導入する工程は、前記複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から前記複数の導入路へ前記処理液を分岐させる工程を含む、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を、前記第2の面が下方を向くように保持する工程と、
前記基板の前記第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する工程と、
前記空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程と、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程と、
前記処理液の圧力および前記空間の圧力の少なくともいずれかを制御する工程と、
を備え、
前記処理液を配置する工程は、前記圧力保持部上に前記処理液を供給する工程を含む、基板処理方法。
【請求項14】
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記ウイング部は、前記基板の前記第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面と前記主部との間へ前記処理液を供給し断面積SCを有する供給部を含み、
SC > LI・HG
が満たされている、請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記圧力保持部は、前記処理液を受け入れるための複数の導入路を有しており、
前記処理液を配置する工程は、前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記処理液を導入する工程を含む、請求項13から15のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を、前記第2の面が下方を向くように保持する基板保持部と、
加圧されている処理液を配置する、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部と、
前記基板の前記第2の面に空間を介して対向するように、前記圧力保持部上に前記処理液を供給する供給部と、
前記基板の前記第2の面と前記空間との界面を加熱する加熱部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項18】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を、前記第2の面が下方を向くように保持する基板保持部と、
加圧されている処理液を配置する、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部と、
前記基板の前記第2の面に空間を介して対向するように、前記圧力保持部上に前記処理液を供給する供給部と、
前記処理液の圧力および前記空間の圧力の少なくともいずれかを制御する圧力制御部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項19】
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、請求項17または18に記載の基板処理
装置。
【請求項20】
前記ウイング部は、前記基板の前記第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面と前記主部との間へ前記処理液を供給し断面積SCを有する供給部を含み、
SC > LI・HG
が満たされている、請求項19に記載の基板処理
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関し、特に、処理液を用いた基板処理方法と、そのために用いられる基板処理装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上でレジスト膜を用いた工程が行われた後、多くの場合、基板からこのレジスト膜が除去される。特に、イオン注入工程用の注入マスクとして用いられたレジスト膜は除去されにくいことから、一般に、強い作用を有する洗浄液が用いられる。このような洗浄液としては、硫酸・過酸化水素水・混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM)が、従来から広く知られている。しかしながら、環境負荷を考慮しての廃液処理の負担が大きいことなどから、近年、SPMを用いない基板処理方法が求められている。
【0003】
国際公開第2016/088731号によれば、環境負荷を低減しつつ、基板上のレジスト残渣等を効率的に除去することを意図した技術が開示されている。具体的には、基板に付着したレジスト膜が、平均粒径が100nm以下の気体のマイクロ・ナノバブルを含有する処理液によって除去される。より具体的には、例えば、オゾンのマイクロ・ナノバブルを含有する50℃~85℃に加熱された純水が基板に対して噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術によれば、マイクロ・ナノバブルが基板と直接接触することによって、基板にダメージが与えられることがある。具体的には、バブルが圧壊する際のキャビテーションダメージが基板に与えられることがある。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板へのオゾンの作用を強めつつ、基板へのダメージを抑制することができる基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、基板処理方法であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を、第2の面が下方を向くように保持する工程と、基板の第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する工程と、空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程と、基板の第2の面と空間との界面を加熱する工程と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様の基板処理方法であって、空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程は、処理液に混入されているオゾンガスを空間中へ放出する工程を含む。
【0009】
第3の態様は、第2の態様の基板処理方法であって、処理液に混入されているオゾンガスの少なくとも一部は、粒径50nm以下の気泡として混入されている。
【0010】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の基板処理方法であって、基板の第2の面と空間との界面を加熱する工程は、基板を加熱する工程と、基板の第2の面から空間へ熱を与える工程と、を含む。
【0011】
第5の態様は、第4の態様の基板処理方法であって、基板を加熱する工程は、基板を第2の面から加熱する工程を含む。
【0012】
第6の態様は、第4または第5の態様の基板処理方法であって、基板を加熱する工程は、基板を第1の面から加熱する工程を含む。
【0013】
第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様の基板処理方法であって、基板の第2の面と空間との界面を加熱する工程は、第1の温度を有する処理液に、第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水を混合する工程を含む。
【0014】
第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様の基板処理方法であって、処理液の圧力および空間の圧力の少なくともいずれかを制御する工程をさらに備える。
【0015】
第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様の基板処理方法であって、基板の第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程をさらに備え、処理液を配置する工程は、圧力保持部上に処理液を供給する工程を含む。
【0016】
第10の態様は、第9の態様の基板処理方法であって、圧力保持部は、基板の第2の面に間隔を空けて対向する主部と、主部の縁に配置され、主部から基板の第2の面へ向かって延び、基板の第2の面に対向するウイング部と、を含む。
【0017】
第11の態様は、第10の態様の基板処理方法であって、ウイング部は、基板の第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、圧力保持部は、基板の第2の面と主部との間へ処理液を供給し断面積SCを有する供給部を含み、SC>LI・HGが満たされている。
【0018】
第12の態様は、第9から第11のいずれかの態様の基板処理方法であって、圧力保持部は、処理液を受け入れるための複数の導入路を有しており、処理液を配置する工程は、圧力保持部の複数の導入路へ処理液を導入する工程を含む。
【0019】
第13の態様は、第12の態様の基板処理方法であって、圧力保持部の複数の導入路へ処理液を導入する工程は、複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から複数の導入路へ処理液を分岐させる工程を含む。
【0020】
第14の態様は、基板処理方法であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を、第2の面が下方を向くように保持する工程と、基板の第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する工程と、空間をオゾンガスを含有し加圧された状態とする工程と、処理液の圧力および空間の圧力の少なくともいずれかを制御する工程と、を備える。
【0021】
第15の態様は、基板処理装置であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、基板を、第2の面が下方を向くように保持する基板保持部と、基板の第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する圧力保持部と、基板の第2の面と空間との界面を加熱する加熱部と、を備える。
【0022】
第16の態様は、基板処理装置であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、基板を、第2の面が下方を向くように保持する基板保持部と、基板の第2の面に空間を介して対向するように、加圧されている処理液を配置する圧力保持部と、処理液の圧力および空間の圧力の少なくともいずれかを制御する圧力制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
第1の態様によれば、基板の第2の面と処理液との間には、オゾンガスを含有し加圧された空間が介在する。これにより、処理液の蒸気またはミストによって湿潤された状態で高濃度のオゾンを基板の第2の面へ作用させつつ、処理液と直接接することに起因しての基板の第2の面へのダメージが避けられる。基板の第2の面と空間との界面が加熱されることによって、基板の第2の面上でのオゾンの活性が高められる。以上から、基板へのオゾンの作用を強めつつ、基板へのダメージを抑制することができる。
【0024】
第2の態様によれば、処理液に混入されているオゾンガスを空間中へ放出することによって、オゾンガスを含有し加圧された状態を容易に得ることができる。また、空間中のオゾンを、処理液の蒸気またはミストによって十分に湿潤された状態とすることができる。
【0025】
第3の態様によれば、粒径50nm以下のオゾン気泡が処理液表面上に密集することによって、処理液表面上に密集する気泡周辺での処理液のオゾン濃度が高められる。また、気泡が圧壊したときのOHラジカルの発生が促進される。以上から、基板処理の作用を高めることができる。
【0026】
第4の態様によれば、基板からの熱によって、オゾンをユースポイントで加熱することができる。
【0027】
第5の態様によれば、基板の第1の面および第2の面のうち、処理される面である第2の面を優先的に加熱することができる。
【0028】
第6の態様によれば、基板が第1の面から加熱される。これにより、加熱の悪影響を基板の第2の面上に及びにくくすることができる。
【0029】
第7の態様によれば、処理液を、温水と混合することによって加熱することができる。
【0030】
第8の態様によれば、圧力制御により、基板処理を安定化することができる。
【0031】
第9の態様によれば、圧力保持部により、上記空間が十分に加圧された状態を容易に得ることができる。
【0032】
第10の態様によれば、ウイング部により、圧力保持部内の圧力を高めやすくすることができる。
【0033】
第11の態様によれば、SC>LI・HGが満たされている。これにより、圧力保持部内の圧力が、より高めやすくなる。
【0034】
第12の態様によれば、処理液が圧力保持部の複数の導入路へ導入される。これにより、新鮮な処理液が導入される位置のむらが抑えられる。よって、処理液の失活に起因しての処理むらを抑えることができる。
【0035】
第13の態様によれば、圧力保持部の複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から複数の導入路へ処理液が分岐される。これにより、導入路内の処理液の圧力を維持しやすくすることができる。
【0036】
第14の態様によれば、圧力制御により、基板処理を安定的に行うことができる。
【0037】
第15の態様によれば、基板の第2の面と処理液との間に、オゾンガスを含有し加圧された空間を介在させることができる。これにより、処理液の蒸気またはミストによって湿潤された状態で高濃度のオゾンを基板の第2の面へ作用させつつ、処理液と直接接することに起因しての基板の第2の面へのダメージが避けられる。基板の第2の面と空間との界面が加熱されることによって、基板の第2の面上でのオゾンの活性が高められる。以上から、基板へのオゾンの作用を強めつつ、基板へのダメージを抑制することができる。
【0038】
第16の態様によれば、基板の第2の面と処理液との間に、オゾンガスを含有し加圧された空間を介在させることができる。これにより、処理液の蒸気またはミストによって湿潤された状態で高濃度のオゾンを基板の第2の面へ作用させつつ、処理液と直接接することに起因しての基板の第2の面へのダメージが避けられる。さらに、圧力制御により、基板処理を安定化することができる。以上から、基板へのオゾンの作用を安定的に強めつつ、基板へのダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施の形態1における基板処理システムの構成の例を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1の基板処理システムに含まれる制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における基板処理方法を概略的に示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施の形態2における基板処理装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態3における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0041】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1における基板処理システム100の構成の例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、ロードポートLPと、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部90と、少なくとも1つの処理ユニットDP(
図1においては4つの処理ユニット)とを含む。複数の処理ユニットDPは、基板WFを処理するためのものであり、そのうちの少なくとも1つが、基板処理装置101(後述する実施の形態2および3のそれぞれにおいては基板処理装置102および基板処理装置103)に対応する。基板処理装置101は、基板WFに付着した有機物を除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。この有機物は、典型的には、使用済のレジスト膜である。このレジスト膜は、例えば、イオン注入工程用の注入マスクとして用いられたものである。
【0042】
制御部90は、基板処理システム100に備えられた各部の動作を制御することができ、特に基板処理装置101(後述する実施の形態2および3のそれぞれにおいては基板処理装置102および基板処理装置103)に備えられた各部の動作を制御することができる。キャリアCの各々は、基板WFを収容する収容器である。ロードポートLPは、複数のキャリアCを保持する収容器保持機構である。インデクサロボットIRは、ロードポートLPと基板載置部PSとの間で基板WFを搬送することができる。基板載置部PSは、基板を一時的に保持することができる。また基板載置部PSは、基板WFの面を反転させることができる。センターロボットCRは、基板載置部PSおよび少なくとも1つの処理ユニットDPのいずれかひとつから他のひとつへと基板WFを搬送することができる。以上の構成により、インデクサロボットIR、基板載置部PSおよびセンターロボットCRは、処理ユニットDPの各々とロードポートLPとの間で基板WFを搬送する搬送機構として機能する。
【0043】
未処理の基板WFはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PSを介してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板WFを処理ユニットDPに搬入する。処理ユニットDPは基板WFに対して処理を行う。処理済みの基板WFはセンターロボットCRによって処理ユニットDPから取り出され、必要に応じて他の処理ユニットDPを経由した後、基板載置部PSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板WFをキャリアCに搬入する。以上により、基板WFに対する処理が行われる。
【0044】
図2は、制御部90(
図1)の構成を概略的に示すブロック図である。制御部90は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互接続するバスライン95とを有している。
【0045】
ROM92は基本プログラムを格納している。RAM93は、CPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置94は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部96は、各種スイッチまたはタッチパネル等により構成されており、オペレータから処理レシピ等の入力設定指示を受ける。表示部97は、例えば液晶表示装置およびランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN(Local Area Network)等を介してのデータ通信機能を有している。記憶装置94には、基板処理システム(
図1)を構成する各装置の制御についての複数のモードが予め設定されている。CPU91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記複数のモードのうちの1つのモードが選択され、該モードによって各装置が制御される。また、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要は無く、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0046】
図3は、本実施の形態1における基板処理装置101の構成を概略的に示す断面図である。図中、説明の便宜上、基板処理装置101によって処理されることになる基板WFも図示されている。基板処理装置101は、裏面S1(第1の面)と処理面S2(第1の面と反対の第2の面)とを有する基板WFを処理するためのものである。基板処理装置101は、真空チャック11(基板保持部)と、圧力カップ31(本実施の形態における圧力保持部)と、加熱部80と、圧力制御部50と、処理液源40と、処理液バルブ44と、オゾンガス源47と、オゾンガスバルブ48とを有している。
【0047】
真空チャック11は基板WFを、処理面S2が下方を向くように保持する。具体的には、真空チャック11の排気路12によって、基板WFの裏面S1が吸着される。排気路12は真空ポンプ13によって排気される。変形例として、真空チャックに代わってメカニカルチャックが用いられてもよい。
【0048】
処理液源40は圧力カップ31へ、加圧状態で処理液LQを供給する。処理液源40は、純水源41と、オゾン気泡混合器42とを有している。オゾン気泡混合器42は、純水源41から供給された純水(典型的には、脱イオン水)にオゾン気泡を混合する。これにより処理液にオゾンガスが混入される。処理液に混入されるオゾンガスの少なくとも一部は、粒径50nm以下の気泡、すなわちナノバブル、として混入されることが好ましい。処理液バルブ44は、処理液源40から圧力カップ31への処理液の供給量を調整するためのものであり、例えば、開閉バルブ、流量制御バルブ、または圧力制御バルブである。
【0049】
圧力カップ31は、基板WFの処理面S2に間隔を空けて対向する対向面SSを有している。圧力カップ31と真空チャック11とが封止材59(例えばOリング)を介して互いに押し付け合うことによって、圧力カップ31の内部が、加圧可能な程度に封止される。処理液LQが供給された圧力カップ31は、基板WFの処理面S2に空間GPを介して対向するように処理液LQを配置する。処理液LQは、加圧された状態とされる。
【0050】
加熱部80は、直接的または間接的に、基板WFの処理面S2と空間GPとの界面を加熱する。また加熱部80は、圧力カップ31内で処理液LQを加熱してよい。加熱部80は、伝導ヒータ81Cと、伝導ヒータ82Cとを有している。伝導ヒータ81Cおよび伝導ヒータ82Cのそれぞれは、基板WFの裏面S1および処理面S2に面している。伝導ヒータ81Cは、真空チャック11に取り付けられていてよく、基板WFの裏面S1を加熱する。伝導ヒータ82Cは、圧力カップ31に取り付けられていてよく、基板WFの処理面S2を加熱する。なお、伝導ヒータ81Cおよび伝導ヒータ82Cのいずれかが省略されてもよい。また伝導ヒータに代わってランプヒータが用いられてもよい。適切な波長の光を発するランプヒータを用いることによって、基板WFを効率的に加熱することができる。
【0051】
圧力制御部50は、圧力カップ31内における処理液LQの圧力および空間GPの圧力の少なくともいずれかを制御する。処理液LQの圧力および空間GPの圧力はおおよそ同じであり、よって、圧力制御部50は、実質的に、処理液LQおよび空間GPの圧力、言い換えれば圧力カップ31内の圧力、を制御する。この制御を可能とするため、圧力制御部50は、液逆止弁51Lと、液バルブ52Lと、ガス逆止弁51Gと、ガスバルブ52Gとを有している。液逆止弁51Lの作動圧力を所望のものに選択しておくことによって、圧力カップ31内の処理液LQの圧力を当該差動圧力以下とする制御を容易に行うことができる。またガス逆止弁51Gの作動圧力を所望のものに選択しておくことによって、圧力カップ31内の空間GPの圧力を当該差動圧力以下とする制御を容易に行うことができる。また液バルブ52Lおよびガスバルブ52Gの一方を選択的に開状態とすることによって、圧力カップ31から液およびガスのいずれを排出することによって圧力を制御するかを選択することができる。好ましくは、圧力カップ31内の圧力を検出する圧力計55が設けられ、その値を参照して精密な圧力制御が行われてよい。
【0052】
なお、封止材59と、真空チャック11および圧力カップ31の少なくともいずれかとの間からのガスのリーク量を調整することによって、空間GPの圧力が制御されてもよい。この場合、例えば、真空チャック11と圧力カップ31とが互いに押し付け合う力を調整することによって、空間GPの圧力が制御され得る。このような調整が行われない場合、封止材59は真空チャック11と圧力カップ31との間を実質的に完全に封止してよい。
【0053】
液位計60は、圧力カップ31内の処理液LQの液位を検出する。検出された液位に基づいて、処理液LQの供給および排出の少なくともいずれかを調整することによって、処理液LQの液位を所望の高さに保持することができる。例えば、処理液バルブ44の開度を大きくすることは液位の増大につながり、液バルブ52Lの開度を大きくすることは液位の減少につながる。なお、液逆止弁51Lによる処理系LQの排出がおおよそ常時可能とされる場合、圧力カップ31内において液逆止弁51Lへつながる排出口の高さによって、液位を維持することができる。その場合、液位計60が省略されても、液位を安定的に制御することができる。
【0054】
オゾンガス源47は、圧力カップ31内へオゾンガスを供給する。オゾンガスバルブ48は、オゾンガス源47から圧力カップ31へのオゾンガスの供給量を調整するためのものであり、例えば、開閉バルブ、流量制御バルブ、または圧力制御バルブである。
【0055】
空間GPには、処理液LQから脱気したオゾンガスと、オゾンガス源47から供給されたオゾンガスとが充満する。なおオゾンガス源47は省略されていてもよく、その場合、空間GP中のオゾンガスは処理液LQからの脱気によってのみ供給される。
【0056】
次に、本実施の形態1における基板処理方法について、以下に説明する。
【0057】
ステップS10(
図4)にて、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1)が、基板WFをロードポートLPから基板処理装置101へ搬送する。基板WFは、基板載置部PS(
図1)を通過する際に反転される。
【0058】
ステップS20(
図4)にて、真空チャック11(
図3)が基板WFを保持する。具体的には、真空ポンプ13による排気によって真空チャック11が基板WFの裏面S1を吸着する。前述したように基板載置部PS(
図1)によって基板WFが反転されていることから、基板WFは、処理面S2が下を向くように保持される。次に、封止材59を介して真空チャック11と圧力カップ31とが組み合わされる。
【0059】
ステップS30(
図4)にて、
図3に示されているように、基板WFの処理面S2に空間GPを介して対向するように、加圧されている処理液LQが配置される。具体的には、処理液源40から圧力カップ31内へ処理液LQが供給される。言い換えれば、圧力カップ31の底面上に処理液LQが供給される。処理液LQが加圧状態で供給されることによって、圧力カップ31内に、加圧されている処理液LQが配置される。加圧されている状態は、処理液源40およびオゾンガス源47の少なくともいずれかからの加圧によって実現されてよい。処理液LQの液位が処理面S2に達しないように調整されることによって空間GPが維持される。液位の調整は液位計60を参照して行われてよい。液位が過度に高くなった場合、処理液LQを液逆止弁51Lから排出することによって液位を適正化することができる。
【0060】
圧力カップ31に供給されることになる処理液LQは、処理液源40において、オゾン気泡混合器42が純水中にオゾン気泡を混合することによって生成される。なお、処理液LQは、純水およびオゾンガス以外の成分を含んでいてもよく、例えば、処理液LQ中にアンモニアおよび過酸化水素の少なくともいずれかが溶解されてもよい。
【0061】
ステップS40(
図4)にて、空間GPが、オゾンガスを含有し、かつ加圧された状態とされる。具体的には、処理液LQに混入されているオゾンガスが空間GP中へ放出されることによって、空間GPにオゾンガスが含有させられる。さらに、オゾンガス源47から供給されたオゾンガスによって空間GPにオゾンガスが含有させられてもよい。
【0062】
処理液LQの圧力および空間GPの圧力の少なくともいずれかは、圧力制御部50によって制御される。前述したように、処理液LQの圧力および空間GPの圧力はおおよそ同じであり、よって、圧力制御部50は、実質的に、処理液LQおよび空間GPの圧力、言い換えれば圧力カップ31内の圧力、を制御する。また圧力カップ31内の処理液LQの液位が、液位計60を参照して制御される。これにより処理液LQと処理面S2との間に空間GPが維持される。
【0063】
ステップS50(
図4)にて、加熱部80によって、基板WFの処理面S2と空間GPとの界面が加熱される。これにより処理面S2での化学反応が促進される。加熱が開始されるタイミングは、特に限定されない。このステップにおいて、基板WFが加熱され、その結果として高温となった基板WFの処理面S2から空間GPへ熱が与えられてよい。基板WFが加熱される際、伝導ヒータ82Cによって基板WFが処理面S2から加熱されてよく、それに代わって、あるいはそれと共に、伝導ヒータ81Cによって基板WFが裏面S1から加熱されてよい。また、前述したように、伝導ヒータに代わってランプヒータが用いられてもよい。また加熱部80によって圧力カップ31内で処理液LQが加熱されてよい。
【0064】
上記のステップS10~S50の結果、基板WFの処理面S2と処理液LQとの間には、オゾンガスを含有し加圧された空間GPが介在する。空間GPは、処理液LQの蒸気またはミストによって湿潤された高濃度のオゾンを含有する。このオゾンは、処理面S2と空間GPとの間の加熱された界面において、高い活性で処理面S2に作用する。これにより基板WFへの処理が行われる。具体的には、基板WFの洗浄、例えばレジスト除去、が行われる。
【0065】
上記処理の後、基板WFのリンス工程が行われる。リンス工程は、基板処理装置101がリンス機能も有している場合、基板処理装置101によって行われてよく、あるいは他の処理ユニットDP(
図1)によって行われてもよい。続いて、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1)が、リンスされた基板WFを処理ユニットDPからロードポートLPへ搬送する。
【0066】
以上により、基板WFへの処理が完了する。
【0067】
本実施の形態によれば、基板WFの処理面S2と処理液LQとの間には、オゾンガスを含有し加圧された空間GPが介在する。これにより、処理液LQの蒸気またはミストによって湿潤された状態で高濃度のオゾンを基板WFの処理面S2へ作用させつつ、処理液LQと直接接することに起因しての基板WFの処理面S2へのダメージが避けられる。特に、ナノバブルが用いられる場合、その圧壊時のキャビテーションダメージが基板WFに及ぶことが防止される。基板WFの処理面S2と空間GPとの界面が加熱されることによって、基板WFの処理面S2上でのオゾンの活性が高められる。以上から、基板WFへのオゾンの作用を強めつつ、基板WFへのダメージを抑制することができる。
【0068】
さらに、オゾン気泡混合器42によって処理液LQに混入されているオゾンガスを空間GP中へ放出することによって、オゾンガスを含有し加圧された状態を容易に得ることができ、そして圧力制御により、基板処理を安定化することができる。また、空間GP中のオゾンを、処理液LQの蒸気またはミストによって十分に湿潤された状態とすることができる。
【0069】
粒径50nm以下のオゾン気泡が処理液LQ(
図3)の表面上に密集することによって、処理液LQの表面上に密集する気泡周辺での処理液LQのオゾン濃度が高められる。また、気泡が圧壊したときのOHラジカルの発生が促進される。以上から、基板処理の作用を高めることができる。なお、ナノバブルは液中で安定的に分散されやすいが、加熱部80によって加熱されることによって、処理液LQの表面上への上昇が促進される。
【0070】
基板WFからの熱によって、オゾンをユースポイントで加熱することができる。伝導ヒータ82Cによって、基板WFの裏面S1および処理面S2のうち、処理される面である処理面S2を優先的に加熱することができる。伝導ヒータ81Cによって、基板WFが裏面S1から加熱される。これにより、加熱の悪影響を基板WFの処理面S2上に及びにくくすることができる。
【0071】
<実施の形態2>
図5は、本実施の形態2における基板処理装置102の構成を概略的に示す側面図である。
図6は、
図5の一部断面図である。図中、説明の便宜上、基板処理装置102によって処理されることになる基板WFも図示されている。
【0072】
基板処理装置102は、回転軸14と、回転モータ15とを有している。回転軸14は真空チャック11を支持している。回転モータ15が回転軸14を矢印RCに示すように回転させることによって真空チャック11が回転する。これにより、真空チャック11に保持された基板WFが回転する。
【0073】
基板処理装置102はさらに、圧力ノズル32(本実施の形態における圧力保持部)と、アーム61と、軸62と、角度調整器63と、高さ調整器64とを有している。圧力ノズル32は、アーム61の一方端に支持されている。アーム61の他方端は軸62に支持されている。軸62は、高さ方向に沿って延在している。軸62は回転することができ、その回転角度は、矢印RN(
図5)に示すように、アクチュエータである角度調整器63によって調整される。これにより、軸62からアーム61が延びる方向が調整される。これにより、矢印SN(
図5)に示すように、圧力ノズル32の位置が基板WFの処理面S2上でスキャンされる。当該スキャンと、基板WFの上述した回転とが組み合わさることによって、処理面S2の広範囲にわたって処理を行うことができる。軸62は高さ方向において変位することができ、その高さ位置は、アクチュエータである高さ調整器64によって調整される。これにより、矢印HN(
図5)に示すようにアーム61の高さが調整される。これにより、圧力ノズル32と基板WFの処理面S2との間のギャップ長HG(
図6)が調整される。これにより圧力ノズル32内の処理液LQの圧力を調整することができるので、高さ調整器64は、一種の圧力制御部である。
【0074】
圧力ノズル32は、ウイング部32Aと、主部32Bと、供給部32Cとを有している。主部32Bは、基板WFの処理面S2の一部に間隔を空けて対向する対向面SSを有している。ウイング部32Aは、主部32Bの縁に配置され、主部32Bから基板WFの処理面S2へ向かって延びており、基板WFの処理面S2に対向している。ウイング部32Aの内側は、処理面S2に平行な面において内周長LIを有する筒形状を有している。ウイング部32Aの内面は直径D2の円筒形状を有していてよく、その場合、内周長LI=π・D2が満たされる。供給部31Cは、基板WFの処理面S2と主部32Bとの間へ処理液LQを供給する。具体的には、供給部32Cは主部32Bの対向面SS上へ処理液LQを供給する。供給部32Cは、処理液LQの流れに垂直な面において断面積SCを有している。供給部32Cの内部は直径D1の円筒形状を有していてよく、その場合、断面積SC=(D1/2)2・πが満たされる。
【0075】
加熱部80は、本実施の形態においては、伝導ヒータ82C(
図3:実施の形態1)に代わって、ランプヒータ82Lを有している。ランプヒータ82Lからの光のエネルギーを吸収することによって、基板WFの処理面S2が加熱される。ランプヒータ82Lは発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を有することが好ましい。光の波長は、基板WFによって吸収されやすいものであることが好ましく、基板WFがシリコン基板の場合、波長450nm程度および550nm程度にピーク強度を有する光が好ましい。ランプヒータ82Lは、圧力ノズル32の外側の主部32Bの下面上に取り付けられていてよい。これにより、圧力ノズル32のスキャン(
図5:矢印SN)に同期してランプヒータ82Lをスキャンさせることができる。この場合、加熱のための光が基板WFに主部32Bを介して達するので、主部32Bは光を透過する材料からなる必要があり、例えば、石英ガラスのような透明材料からなる。なお、伝導ヒータ81Cおよびランプヒータ82Lのいずれかが省略されてもよい。また各ヒータは伝導ヒータおよびランプヒータのいずれであってもよい。
【0076】
基板処理装置102を用いた基板処理方法において、加圧されている処理液LQが圧力ノズル32へ供給される際、圧力ノズル32のウイング部32A(
図6)は、基板WFの処理面S2に、ゼロよりも大きなギャップ長HGを空けて対向させられる。ギャップ長HG(
図6)がゼロよりも大きいことから、空間GP(
図6)中のガスは、矢印EVに示すように基板WFの処理面S2上において圧力ノズル32の外部へと漏れ出す。圧力ノズル32内の圧力を十分に高めるためには、ギャップ長HGと、ウイング部32Aの内周長LIと、供給部31Cの断面積SCとの間で、SC>LI・HGが満たされていることが好ましい。
【0077】
なお本実施の形態においては、圧力カップ33から矢印EVに示すようにガスを排出することができるので、ガス逆止弁51Gおよびガスバルブ52G(
図3:実施の形態1)が省略されていても、圧力カップ33内のガスの排出を制御することができる。変形例として、ガス逆止弁51Gおよびガスバルブ52Gが本実施の形態に適用されてもよい。
【0078】
処理液LQの圧力および空間GPの圧力の少なくともいずれかは、圧力制御部50によって制御される。前述したように、処理液LQの圧力および空間GPの圧力はおおよそ同じであり、よって、圧力制御部50は、実質的に、処理液LQおよび空間GPの圧力、言い換えれば圧力ノズル32内の圧力、を制御する。本実施の形態においては、実施の形態1において説明した方法だけでなく、高さ調整器64によってギャップ長HGを調整する方法によっても圧力を制御することができる。
【0079】
また実施の形態1と同様、圧力ノズル32内の処理液LQの液位が制御される。これにより処理液LQと処理面S2との間に空間GPが維持される。
【0080】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0081】
<実施の形態3>
図7は、本実施の形態3における基板処理装置103の構成を概略的に示す断面図である。図中、説明の便宜上、基板処理装置103によって処理されることになる基板WFも図示されている。以下、主に基板処理装置101(
図3:実施の形態1)との相違について説明する。
【0082】
圧力カップ33(本実施の形態における圧力保持部)は、温水を通すために温水経路33hを有している。また圧力カップ33は、処理液源40から処理液を受け入れるための複数の導入路33oを有している。導入路33oは、処理面S2に対向する対向面SSに達する少なくとも1つの導入路33o1を含んでよく、好ましくは、図示されているように複数の導入路33o1を含む。また導入路33oは、圧力カップ33内で温水経路33hに合流する導入路33o2を含んでよい。本実施の形態においては、空間GPを介して対向するように処理液LQを配置するために、処理液源40からの処理液が複数の導入路33oへ導入される。この構成によって、新鮮な処理液が導入される位置のむらが抑えられる。よって、処理液の失活に起因しての処理むらを抑えることができる。
【0083】
処理液源40からの処理液を圧力カップ33の複数の導入路33oへ導入する際、処理液は配管45から複数の導入路33oへ分岐させられる。ここで、配管45の断面積C8は、複数の導入路33oの各々の断面積C9よりも大きいことが好ましい。この構成によって、処理液の圧力を、温水と混合される直前まで、より高く維持しやすくなる。なお、ここでいう断面積は、配管45または導入路33oの延在方向に垂直な面における面積である。
【0084】
配管45と、複数の導入路33oのそれぞれとの間には、バルブ46が挿入されていることが好ましい。個々のバルブ46の開度を制御することによって、基板WFの処理面S2における処理むらを低減することができる。
【0085】
例えば、圧力カップ33は、円形の外縁を有する対向面SSを有しており、その中心に温水経路33hの出口が配置され、径方向(図中、横方向)に沿って複数の導入路33o1の出口が配列される。この構成により、径方向における処理むらを抑えることができる。また、上述したようにバルブ46の開度が制御が制御される場合、径方向における処理むらをさらに抑えることができる。なお変形例として、導入路33o1が省略されて導入路33o2のみが設けられてもよく、これにより構成を単純化することができる。ただしこの変形例においては、圧力カップ33の対向面SSの中心にのみ新鮮な処理液が供給されるので、中心から離れるほど、より失活の進んだ処理液しか供給されなくなる。よって処理むらが生じやすくなる。
【0086】
本実施の形態の基板処理方法においては、基板WFの処理面S2に空間GPを介して対向するように処理液を配置するために、圧力カップ33の複数の導入路33oへ処理液が導入される。複数の導入路33oへ処理液を導入するためには、配管45から複数の導入路33oへ処理液が分岐させられる。そして、基板WFの処理面S2と空間GPとの界面を加熱するために、処理液源40からの第1の温度を有する処理液LQに、温水源83からの第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水が混合される。
【0087】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0088】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0089】
11 :真空チャック(基板保持部)
31,33 :圧力カップ(圧力保持部)
32 :圧力ノズル(圧力保持部)
33h :温水経路
33o :導入路
40 :処理液源
41 :純水源
42 :オゾン気泡混合器
47 :オゾンガス源
50 :圧力制御部
60 :液位計
80 :加熱部
81C :伝導ヒータ
82C :伝導ヒータ
82L :ランプヒータ
83 :温水源
90 :制御部
100 :基板処理システム
101~103:基板処理装置
GP :空間
LQ :処理液
S1 :裏面(第1の面)
S2 :処理面(第2の面)
SS :対向面
WF :基板