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特許7341859ポリマー固体電解質、その製造方法及び電気化学セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ポリマー固体電解質、その製造方法及び電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/00 20060101AFI20230904BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20230904BHJP
   C08K 5/109 20060101ALI20230904BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20230904BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230904BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230904BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALN20230904BHJP
【FI】
C08G59/00
C08K5/315
C08K5/109
C08K3/18
H01M10/0525
C08L63/00 C
H01M10/0565
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019196513
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2020076083
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/757,133
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/240,502
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/554,541
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519387623
【氏名又は名称】ファクトリアル インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォン, ペイシェン
(72)【発明者】
【氏名】フゥ, グーペン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ジア
(72)【発明者】
【氏名】レン, ドン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263988(JP,A)
【文献】特開2003-282141(JP,A)
【文献】特開2000-086711(JP,A)
【文献】特開平08-311138(JP,A)
【文献】特開平09-073907(JP,A)
【文献】特表2016-513093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08G 59/00-59/72
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式からなる群から選択されたポリマーを架橋反応した架橋ポリマーを含む物品であって、
【化1】
が次式からなる群から選択された構造を含み、
【化2】
nが3又は5であり、
mが1であり、
、R 、及びR水素原子である、物品。
【請求項2】
前記架橋ポリマー形成のための架橋反応が、前記ポリマーと第2のポリマーとを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリマーが尿素及び/又はカルバメート官能基を介して架橋された、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記物品が可塑剤と電解質塩とをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記可塑剤が、エチレンカーボネート及び/又はコハク酸ニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、グルタロニトリル、ヘキソニトリル、マロノニトリル、オリゴエーテル、プロピレンカーボネート、又はフルオロエチレンカーボネートを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記可塑剤が、コハク酸ニトリル、又はエチレンカーボネートを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項7】
前記電解質塩がリチウム塩を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリマーが開始剤の存在下架橋され、前記開始剤が0.001から0.01のモル分率を有する、請求項4から7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記ポリマーが0.027から0.200のモル分率を有し、前記可塑剤が0.287から0.916のモル分率を有し、前記電解質塩が0.04から0.617のモル分率を有する、請求項4から8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が無機添加剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記無機添加剤が、Al、SiO、SiO、TiO、LiPS、Li10GeP12、LiLaZr12、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaTiO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、及び/又はLi1.3Al0.3Ge1.7(PO、ZrO、BaTiO、LiTiOを含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の物品を含む電気化学セルであって、前記電気化学セルが電池、リチウムイオン電池、又はリチウムイオン固体電池である電気化学セル。
【請求項13】
ポリマー固体電解質を製造する方法であって、
ポリマーを含む組成物を溶媒と混合してスラリーを形成すること、
前記溶媒を除去すること、及び
前記ポリマーを架橋させて架橋ポリマーを形成し、その後、架橋ポリマーを含む固体電解質を形成すること、を含み、
前記ポリマーが、次式からなる群から選択された構造を含み、
【化3】
が次式からなる群から選択された構造を含み、
【化4】
nが3又は5であり、
mがであり、
、R 、及びR水素原子である、ポリマー固体電解質を製造する方法。
【請求項14】
前記ポリマーを架橋させる前に、前記溶媒に第2のポリマーを加えることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Huangらによる“Polymer Solid Electrolytes”という名称の2018年11月7日出願の米国仮特許出願第62/757,133号、Huangらによる“Polymer Solid Electrolytes”という名称の2019年1月4日出願の米国特許出願第16/240,502号、Huangらによる“POLYMER SOLID ELECTROLYTES,METHODS OF MAKING,AND ELECTROCHEMICAL CELLS COMPRISING THE SAME”という名称の2019年8月28日出願の米国特許出願第16/554,541号の利益を主張し、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、例えば電池、キャパシタ、センサ、コンデンサ、エレクトロクロミック素子、光電変換素子などの電気化学デバイスに適した様々なポリマー固体電解質材料に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池(LIB)のエネルギー密度の増加及び規模の拡大に伴い、LIBの安全性の懸念に対する解決策を見つけることがLIBの開発にとってますます重要となっている。LIBに存在する安全性の問題は、カーボネート/エーテルなどの可燃性の混合溶媒を溶媒系として使用することから生じる可能性があり、過充電や短絡や過熱などの場合にLIBが発火したり、燃えたり、あるいは爆発したりするなどの深刻な事故につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は概して様々なポリマー固体電解質材料に関する。本発明の主題は、一部の例では、相互に関連する生成物、特定の問題に対する代替的解決策、及び/又は1つ以上のシステム及び/又は物品の複数の異なる用途を含む。
【0005】
一態様では、本発明は概して、次式からなる群から選択されたポリマーを含む、架橋反応の生成物を含むポリマーを含む物品であって、
【0006】
【化1】
【0007】
が次式からなる群から選択された構造を含み、
【0008】
【化2】
【0009】
nが1以上10,000以下の整数であり、mが1以上5,000以下の整数であり、R、R、R、R、及びRがそれぞれ次式からなる群から独立に選択され、
【0010】
【化3】
【0011】
*が付着点を示す、物品を対象とする。
【0012】
別の態様では、本発明は概してポリマー固体電解質を製造する方法を対象とする。一組の実施形態では、方法は、ポリマーを含む組成物を溶媒と混合してスラリーを形成すること、溶媒を除去すること、及びスラリーを硬化させて固体電解質を形成することを含む。一部の例では、ポリマーは次式からなる群から選択された構造を含み、
【0013】
【化4】
【0014】
が次式からなる群から選択された構造を含み、
【0015】
【化5】
【0016】
nが1以上10,000以下の整数であり、mが1以上5,000以下の整数であり、R、R、R、R、及びRがそれぞれ次式からなる群から独立に選択され、
【0017】
【化6】
【0018】
*が付着点を示す。
【0019】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の実施形態の1つ以上、例えばポリマー固体電解質材料を製造する方法を含む。さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の実施形態の1つ以上、例えばポリマー固体電解質材料を使用する方法を含む。
【0020】
本発明の他の利点及び新規な特徴は、添付図面と合わせて検討するとき、本発明の種々の非限定的な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の非限定的な実施形態を、添付図面を参照して例として説明するが、これらの図面は模式的なものであり、縮尺に合わせることを意図していない。図面中、図示されるそれぞれの同一又はほぼ同一の成分は、典型的には単一の数字により表される。明確性の目的のために、必ずしも全ての成分が全ての図面中で標識化されているわけではなく、当業者が本発明を理解するのを可能にするために説明が必要ではない場合には、本発明の各実施形態の必ずしも全ての成分が示されているわけではない。
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るポリマー固体電解質の機械的性能試験曲線を示す図。
図2】本発明の別の実施形態のポリマー固体電解質のイオン伝導率曲線を示す図。
図3】本発明の一部の実施形態に係るポリマーの特定の化学構造を示す図。
図4】本発明の特定の実施形態のポリマー固体電解質のイオン伝導率曲線を示す図。
図5】本発明の一実施形態に係るポリマーの合成を示す模式図。
図6】本発明の別の実施形態に係るポリマーの合成を示す模式図。
図7】比較例の合成を示す模式図。
図8】本開示の一部の実施形態に係るポリマー固体電解質のサイクル性能曲線を示す図。
図9】本開示の別の実施形態のポリマー固体電解質のイオン伝導率曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は概して、様々な電気化学デバイスに適した様々なポリマー固体電解質材料に関する。特定の態様は、ポリマーと、可塑剤と、電解質塩とを含む。一部の例では、ポリマーは次のような特定の構造を示すことができ、
【0024】
【化7】
【0025】
は次の群のうちの1つであってよく、
【0026】
【化8】
【0027】
nは1から10,000の整数であり、mは1から5,000の整数であり、RからRはそれぞれ独立に次の構造のうちの1つであってよい。
【0028】
【化9】
【0029】
また、特定の実施形態は、ポリマー固体電解質と共に使用する組成物、そのようなポリマー固体電解質を含む電池又は他の電気化学デバイス、及びそのようなポリマーを生成する方法を対象とする。一部の例では、UV架橋による尿素官能基又はカルバメート官能基の組み込みを用いて、機械的特性及び/又は電気化学的性能を改善することができる。特定の実施形態では、一部のポリマー固体電解質を使用して、より安全かつより寿命が長いリチウム電池を実現することができる。この電解質は良好なイオン伝導率を示すことができ、リチウムイオンはより速く及び/又はより効率的に伝導可能である。このような特性は、充電/放電速度性能に利益をもたらすことができる。また、ポリマー材料の改善された分解電位は固体電解質の安定性を高めることができ、より寿命が長い及び/又はより高電圧のリチウム電池を提供することができる。
【0030】
したがって、一部の態様では、本発明は概して、本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質材料を含む電池などの電気化学セルを対象とする。一組の実施形態では、電池は、リチウムイオン固体電池などのリチウムイオン電池である。電気化学セルはまた、アノード、カソード、セパレータなどを備えることができる。これらの多くは市販されている。ポリマー固体電解質材料は、電気化学セルの電解質として単独で及び/又は他の電解質材料と組み合わせて使用することができる。
【0031】
例えば、一態様は概して、電気化学デバイス、例えばリチウムイオン電池などの電池内で使用可能な特定のポリマーを含む固体電解質を対象とする。そのような電気化学デバイスは一般に電解質により分離されたアノード及びカソードを備えた1つ以上のセルを備える。固体ポリマー電解質は、液体電解質に比べて軽く、良好な密着性及び処理特性を有することができる。これによって、より安全な電池及び他の電気化学デバイスをもたらすことができる。一部の例では、ポリマー電解質は、例えば電子を輸送することなく、イオンの輸送を可能にすることができる。ポリマー電解質は、ポリマーと電解質とを含むことができる。電解質は、例えばリチウム塩、又は本明細書に記載されているような他の塩であってよい。
【0032】
本発明の特定の実施形態は、概して比較的高いイオン伝導率と、例えば引張強度又は分解電位などの他の機械的特性又は電気的特性とを有する固体電解質を対象とする。一部の例では、例えばポリマーは、尿素部分及び/又はカーバメイト部分などの官能基をポリマー内に、例えばポリマーの骨格構造内に加えることに起因して改善された特性を示すことができる。一部の例では、尿素部分及び/又はカーバメイト部分は互いに、及び/又は、例えば本明細書に記載される他のポリマーに架橋することができる。
【0033】
いかなる理論による制約も望まずに、尿素、ウレタン、又はカルバメートなどの基は、水素結合供与体と水素結合受容体とを共に含み、これによって、例えば本明細書に記載される機械的特性及び/又は電気化学的特性などの特性の改善がもたらされ得ると考えられている。例えば強固な結合を有する尿素リンカーは、機械的強度を改善するのに役立つ可能性がある。また、水素結合はリチウム塩を解離させるのに役立つ可能性があり、これによってイオン伝導率の改善がもたらされ得る。
【0034】
一部の実施形態では、尿素、ウレタン、又はカルバメートなどの基は、例えば真ん中のポリマーフラグメントと2つのアクリル酸末端の間のリンカーとしてポリマーの骨格中に存在することができる。尿素及び/又はカルバメートは、ポリマーの形成中に、アミン及びカルバメート又はアルコール及びイソシアネートなどの官能基の異なる組み合わせを使用してポリマー内に提供されてよい。このような基は互いに隣同士に存在してよい、及び/又は一部の基は、例えば尿素及び/又はカルバメートとアクリレートの間のスペーサ基によって分離されてよい。
【0035】
尿素部分及び/又はカルバメート部分を含むポリマーの非限定的な例には次の構造が含まれる。
【0036】
【化10】
【0037】
これらの構造において、Rは、例えば電解質の機能を果たし得るポリマー/塩錯体を生成するように、塩又はイオンとの錯体形成を可能にするように選択することができる。例えばRは、荷電部分、及び/又は荷電されていないがイオン化しやすく、例えば酸性又はアルカリ性pHで(例えば、5未満、4未満、3未満、若しくは2未満、又は9より大きい、10より大きい、11より大きい、若しくは12より大きいpHで)電荷を生成する部分を含むことができる。Rの具体的な例は、これに限定されないが、次のものを含む(*は付着点を示す)。
【0038】
【化11】
【0039】
また、一部の例では、以下の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上が、例えばコポリマーとしてR構造内に同時に存在してよい。例えば、これらは交互、ブロック、ランダム又はその他のコポリマー構造中に存在してR部分を規定してよい。一部の例では、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のポリマーが存在してよく、一部の例では、例えば本明細書に記載されるように互いに架橋されてよい。
【0040】
これらの構造において、n及び/又はm(該当する場合)はそれぞれ整数であってよい。一部の例では、n及び/又はmはそれぞれ、100,000未満、50,000未満、30,000未満、10,000未満、5,000未満、3,000未満、1,000未満、500未満などであってよい。特定の例では、n及び/又はmは、少なくとも1、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも300、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも3,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも30,000、少なくとも50,000などであってよい。これらの範囲の任意の組み合わせが可能であり、非限定的な例として、例えば、nは1から10000の間の整数であってよく、mは1から5000の間の整数であってよく、nは1000から5000の間の整数であってよく、mは500から1000の間の整数であってよい。
【0041】
これらの構造において、R、R、R、R、及びRは、ポリマーを対称又は非対称にするために、(該当する場合)それぞれ独立に選ぶことができる。R、R、R、R、及びRの例は、これに限定されないが、次の構造のうちの1つを含む。
【0042】
【化12】
【0043】
、R、R、R、及びRの他の例は、これに限定されないが、アクリレート、エチレンオキシド、エポキシエチル基、イソシアネート、環状炭酸エステル、ラクトン、ラクタム、ビニル基(CH=CH-)、又はビニル誘導体(すなわち、CH=CH-構造のHの1,2,又は3が、F又はClに置換されている)を含む。環状炭酸エステルの非限定的な例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどを含む。また、これらの末端基はほんの一例として示されていることを理解すべきである。一般に末端基は、一般的にはあまり性能に影響を与えないため重要ではない。
【0044】
また、一組の実施形態では、尿素及び/又はカルバメートなどの官能基が、例えば本明細書に記載されるように互いに架橋されてよい。例えばそのような官能基は、UV光、熱成形又は昇温(例えば20℃~100℃の温度)暴露、又は本明細書に記載のものを含む他の方法を用いて互いに架橋されてよい。一部の例では、尿素官能基又はカルバメート官能基の組み込みによって、比較的高いイオン伝導率、イオン輸率、分解電圧、又は引張強度などの機械的特性、電気化学的性能などを改善することができる。
【0045】
一部の例では、架橋度を決定することができる。架橋度は一般に、反応したアクリレート基と未反応のアクリレート基の比によって定義される。組成中のポリマーの重量又はモルパーセントは、全てのアクリレート基が反応したと仮定して推測して架橋度を制御することができる。一部の例では、ポリマーの少なくとも1%、少なくとも3%、又は少なくとも5%が架橋された。
【0046】
一部の例では、例えば本明細書に記載されるような固体電解質は、他の固体電解質と比べて、驚くほど高いイオン伝導率などの特定の有益な特性を提供することができる。例えば、このポリマー固体電解質は、少なくとも10-8S/cm、少なくとも2×10-8S/cm、少なくとも3×10-8S/cm、少なくとも5×10-8S/cm、少なくとも10-7S/cm、少なくとも2×10-7S/cm、少なくとも3×10-7S/cm、少なくとも5×10-7S/cm、少なくとも10-6S/cm、少なくとも2×10-6S/cm、少なくとも3×10-6S/cm、少なくとも5×10-6S/cm、少なくとも10-5S/cm、少なくとも2×10-5S/cm、少なくとも3×10-5S/cm、少なくとも5×10-5S/cm、少なくとも10-4S/cm、少なくとも2×10-4S/cm、少なくとも3×10-4S/cm、少なくとも5×10-4S/cm、少なくとも10-3S/cm、少なくとも2×10-3S/cm、少なくとも3×10-3S/cm、少なくとも5×10-3S/cmなどのイオン伝導率を示してよい。一実施形態では、ポリマー固体電解質は、例えば2.1×10-6S/cmと5.2×10-6S/cmの間のイオン伝導率を有する。別の実施形態では、イオン伝導率は、10-8S/cmと10-2S/cmの間であってよく、5×10-5S/cmと10-2S/cmの間であってもよい。いかなる理論による制約も望まずに、尿素又はカルバメートなどの基は水素結合供与体と水素結合受容体とを共に含むためイオン伝導率が改善し、これによって、水素結合により機械的性能及び電気化学的性能の両方の改善をもたらし得ると考えられている。また、水素結合は、イオン伝導率を良好にするためにリチウムなどの塩を解離させるのに役立ち得ると考えられている。
【0047】
また、一部の実施形態では、例えば本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質が比較的高い分解電圧を提供することができる。比較的高い分解電圧を有するポリマー固体電解質は、例えばより高い電圧が必要な用途において特に有用な可能性がある。特定の例では、ポリマー固体電解質の分解電圧は、少なくとも0.3V、少なくとも0.4V、少なくとも0.5V、少なくとも0.6V、少なくとも0.7V、少なくとも0.8V、少なくとも0.9V、少なくとも1V、少なくとも1.5V、少なくとも2V、少なくとも2.5V、少なくとも3V、少なくとも3.5V、少なくとも3.8V、少なくとも4V、少なくとも4.3V、少なくとも4.5V、又は少なくとも5Vであってよい。分解電圧は、サイクリックボルタンメトリーなどの当業者に知られている標準的な技術を用いて試験することができる。いかなる理論による制約も望まずに、尿素又はカルバメートは、炭素と酸素又は窒素の間の強いシグマ結合を含むと考えられる。構造中の炭素原子は、炭素-酸素二重結合を含む最高の共有結合状態にあり、これによって構造が分解に抵抗するのを助けることができる。
【0048】
特定の実施形態では、例えば本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質は、比較的高いイオン輸率を提供することができる。一般に、そのような輸率は、特定のイオン種、例えばリチウムイオンによって運ばれる電流の割合を測定する。一部の例では、比較的高いイオン輸率は、例えばリチウム電池内のリチウムデンドライトの成長を遅らせる及び/又は鈍化させるのを助けることができる。したがって、一部の実施形態では、例えば本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質は、少なくとも0.1、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.25、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、少なくとも0.95などのリチウム輸率を提供することができる。一部の例では、リチウム輸率は、1未満、0.95未満、0.9未満、0.85未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.65未満、0.6未満、0.55未満、0.5未満であってよい。特定の実施形態では、これらの任意の組み合わせも可能である。例えばリチウム輸率は、0.4と0.65の間、0.45と0.6の間、0.3と0.7の間、0.42と0.64の間、0.1と1の間などであってよい。イオン輸率は、Bruce and Vincent法(J.Electroanal.Chem.Interfacial Electrochem.,255:1-17,1987)などの方法、又は当業者に知られている他の技術を用いて決定することができる。
【0049】
一組の実施形態では、例えば本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質は比較的高い引張強度を示すことができる。例えばポリマー固体電解質の引張強度は、少なくとも8MPa、少なくとも10MPa、少なくとも12MPa、少なくとも15MPa、少なくとも20MPa、少なくとも25MPa、少なくとも30MPa、少なくとも35MPa、少なくとも40MPa、少なくとも45MPa、少なくとも50MPaなどであってよい。一部の例では、ポリマー固体電解質の引張強度は、50MPa以下、40MPa以下、30MPa以下などであってよい。特定の実施形態では、ポリマー固体電解質は、任意の範囲内の引張強度、例えば8MPaから40MPa、30MPaから50MPa、20MPaから40MPa、8.2MPaから38.4MPa、5から500MPa、10から500MPaなどを示すことができる。引張強度は、動的機械分析などの当業者に知られている標準的な技術を用いて試験することができる。
【0050】
一組の実施形態では、ポリマー固体電解質は可塑剤を含むことができ、可塑剤は、ポリマー固体電解質の加工性を改善すること、及び/又はイオン伝導率及び機械的強度を制御することに有用であり得る。例えば可塑剤は、ポリマー、小分子(すなわち1kDa未満の分子量を持つ)、ニトリル、オリゴエーテル(例えばトリグライム)、環状炭酸エステル、又はイオン液体などであってよい。潜在的に適切な可塑剤の非限定的な例は、エチレンカーボネート、コハク酸ニトリル、スルホラン、又はリン酸塩などを含む。ニトリルの非限定的な例は、コハク酸ニトリル、グルタロニトリル、ヘキソニトリル、及び/又はマロノニトリルを含む。環状炭酸エステルの非限定的な例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどを含む。イオン液体の非限定的な例は、N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む。可塑剤の他の非限定的な例は、例えばポリエチレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、又はポリ乳酸などのポリマーを含む。一部の例では、可塑剤は、例えば90°未満の水接触角を有する、比較的親水性のポリマーであってよい。また、ポリマーは硫黄を含まない可能性がある。
【0051】
一部の実施形態では、電解質塩が存在してよい。これらはリチウムやナトリウムなどのアルカリ金属塩を含んでよい。リチウム塩の具体的な非限定的な例は、LiTFSI、LiFSI、LiBOB、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiDFOB、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、LiNO、LiPO、LiCO、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、シュウ酸リチウムなどを含む。他の例は、これらに限定されないが、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、遷移金属塩、又はプロトン酸塩を含む。プロトン酸の非限定的な例は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、硫酸コバルト、硫酸リチウムなどを含む。
【0052】
また、例えばカソード保護剤、アノード保護剤、抗酸化剤、無機添加剤などの他の化合物が存在する可能性もある。無機添加剤の非限定的な例は、Al、SiO、SiO、TiO、LiPS、Li10GeP12、LiLaZr12、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaTiO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、BaTiO、LiTiO、ZrOなどを含む。カソード保護剤の一例はLiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)である。アノード保護剤の一例はフルオロエチレンカーボネートである。抗酸化剤の一例はLiBOB(ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム)である。他の類似の化合物も当業者には分かるだろう。これらは、サイクル性などの他の性能測定基準を改善するためなど様々な理由で添加することができる。一部の例では、一般に陽イオンを引き付け得る酸素などの電気陰性原子を含む無機添加剤を使用することができる。したがって、Liなどのイオンは陰イオンよりも比較的容易に移動させることができる。
【0053】
一部の例では、ポリマー固体電解質は、ネットワーク型のミクロ相分離構造などのミクロ相分離構造を示すことができる。一部の例では、架橋ポリマーは沈殿し、高分子-液体界面又は高分子-固体界面を形成することができる。これは、元素同定を用いた走査電子顕微鏡法などの技術を用いて確認することができる。
【0054】
特定の例では、ポリマー、可塑剤、及び電解質塩が、それぞれ任意の適切な濃度で電解質材料中に存在してよい。また、これらの1つ又はそれ以上が存在してよく、例えば2つ以上のポリマー、及び/又は2つ以上の可塑剤、及び/又は2つ以上の電解質塩が存在してよい。一部の例では、例えばカソード保護剤、アノード保護剤、抗酸化剤、無機添加剤などの他の成分が同様に存在してもよい。
【0055】
一組の実施形態では、ポリマーは、モル分率が少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.027、少なくとも0.03、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.11、少なくとも0.12、少なくとも0.13、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.21、少なくとも0.22、少なくとも0.23、少なくとも0.25、少なくとも0.3、及び/又は0.3以下、0.25以下、0.32以下、0.22以下、0.21以下、0.2以下、0.15以下、0.13以下、0.12以下、0.11以下、0.1以下、0.05以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下などで存在してよい。
【0056】
一部の実施形態では、可塑剤は、モル分率が少なくとも0.1、少なくとも0.11、少なくとも0.12、少なくとも0.13、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.22、少なくとも0.23、少なくとも0.25、少なくとも0.287、少なくとも0.3、少なくとも0.31、少なくとも0.32、少なくとも0.33、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも0.93、少なくとも0.95、及び/又は0.95以下、0.93以下、0.916以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.35以下、0.33以下、0.32以下、0.31以下、0.3以下、0.25以下、0.32以下、0.22以下、0.21以下、0.2以下、0.15以下、0.13以下、0.12以下、0.11以下、0.1以下などで存在することができる。
【0057】
一組の実施形態では、電解質塩は、モル分率が少なくとも0.01、少なくとも0.03、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.13、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.23、少なくとも0.25、少なくとも0.3、少なくとも0.33、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.43、少なくとも0.45、少なくとも0.5、少なくとも0.53、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.63、少なくとも0.65、少なくとも0.7、及び/又は0.7以下、0.65以下、0.63以下、0.617以下、0.6以下、0.55以下、0.53以下、0.5以下、0.45以下、0.43以下、0.4以下、0.35以下、0.33以下、0.3以下、0.25以下、0.23以下、0.2以下、0.15以下、0.13以下、0.1以下などで存在してよい。
【0058】
上記の範囲及び間隔の1つ以上の任意の組み合わせも可能である。例えば組成物は、モル分率が0.027~0.200のポリマー(2つ以上のポリマーを含む)と、モル分率が0.287~0.916の可塑剤(2つ以上の可塑剤を含む)と、モル分率が0.04~0.617の電解質塩(2つ以上の電解質塩を含む)とを含んでよい。いかなる理論による制約も望まずに、ポリマー濃度が高すぎる場合は、固体電解質は比較的柔らかく、取り扱いが困難になる可能性がある一方、可塑剤濃度が高すぎる場合は、固体電解質は非常に硬く、取扱中に破損しやすく、また良好な密着性をもたらさない可能性がある。
【0059】
本発明の特定の態様は、概して本明細書で考察されるポリマー固体電解質のいずれかを生成するためのシステム及び方法を対象とする。例えば一組の実施形態では、各種のモノマーを一緒に反応させることによってポリマーを生成することができる。モノマーの非限定的な例は、本明細書に記載の構造の様々な組み合わせ、例えばメタクリル酸ノルボルニルなどの、様々なエステル基を持つメタクリル酸モノマーを含む。エステルのその他の例は、これらに限定されないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルなどを含む。
【0060】
一部の例では、例えば重合を促進するための開始剤が存在してよい。例えば、開始剤は、Irgacure開始剤、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、過硫酸アンモニウムなどの化学開始剤、又は当業者に知られている他の開始剤を含んでよい。一部の例では、開始剤は、重合を促進するために0.001から0.01のモル分率、又は他の適切なモル分率となるように加えることができる。
【0061】
一組の実施形態では、ポリマーは、固体を形成するために硬化可能なスラリーを形成するために溶媒と混合されてよい。また、一部の例では、2つ以上のポリマー、例えばスラリーに順次、同時に加えられ得る第1のポリマー及び第2のポリマーなどがスラリー中に存在してよい。ポリマーは、それぞれが例えば本明細書に記載されるような独立したポリマー、及び/又は他の適切なポリマーであってよい。
【0062】
適切な溶媒の非限定的な例は、水(例えば蒸留水)、メタノール、エタノール、又は他の水性溶媒などの溶媒を含む。溶媒のその他の例は、例えばピリジンやクロロホルムなどの有機溶媒を含む。一部の例では、そのような溶媒の2つ以上が存在してよい。また、溶媒は、スラリーの形成後、例えば蒸発などの手法を用いて除去することができる。
【0063】
また、一部の例では、例えばコハク酸ニトリル、エチレンカーボネート、スルホラン、又はリン酸トリメチルなどの可塑剤が同様に存在してよい。また、一部の実施形態では、電解質塩、例えばリチウムやナトリウムなどのアルカリ金属塩が存在してもよい。リチウム塩の具体的な非限定的な例は、LiTFSI、LiFSI、LiBOB、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiDFOB、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、LiNO、LiPO、LiCO、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、シュウ酸リチウムなど、又は例えば本明細書に記載されるようなその他の塩を含む。
【0064】
一部の実施形態では、スラリーは、固体膜などの膜を形成するために硬化させることができる。例えば、UV光、熱成形、又は昇温暴露などを用いて硬化させることによって混合物を膜に形成することができる。例えば、硬化は少なくとも3分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間などのUV光照射によって、及び/又は、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃などの温度に暴露することによって誘発することができる。一例として、スラリーを表面上及び/又はモールド内にコーティング又は配置し、UV光を照射してポリマーを硬化させることができる。
【0065】
また、一部の例では、ポリマーの少なくとも一部はまた、硬化プロセス中に、例えば本明細書で考察されるように架橋することができ、一部の例では、機械的特性及び/又は電気化学的性能を改善することができる。例えばUV光照射は架橋プロセスを促進することができる。別の例として、熱架橋を用いることができる。
【0066】
Huangらによる“Polymer Solid Electrolytes”という名称の2018年11月7日出願の米国仮特許出願第62/757,133号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、Huangらによる“Polymer Solid Electrolytes”という名称の2019年1月4日出願の米国特許出願第16/240,502号、Huangらによる“POLYMER SOLID ELECTROLYTES,METHODS OF MAKING,AND ELECTROCHEMICAL CELLS COMPRISING THE SAME”という名称の2019年8月28日出願の米国出願第16/554,541号、及びHuangらによる“Polymer Solid Electrolytes”という名称の2019年1月4日出願の国際特許出願第PCT/US19/12310号も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することが意図されているが、本発明の全範囲を例示するわけではない。
【0068】
[実施例1]
この実施例は、次の一般構造を有するPEG-ウレタン-ジエポキシポリマーの合成を説明する。
【0069】
【化13】
【0070】
この実施例では、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(TTDDA;ポリエチレングリコールジアミン(PEGDAm)として一般に知られている)40mmol、ピリジン200mmol及びCHCl100mlを250mLの丸底フラスコに加えた。これらは全て一般に市販されており、特にPEGDAmは、化合物中のポリエチレングリコールの繰り返し単位数に対応する様々な分子量で入手可能である。図5も参照。
【0071】
混合物を0℃で5時間撹拌した後、淡黄色溶液を得た。0.1mol/lの塩酸100mlを反応混合物に注ぎ、生成物を集め、CHCL200mlで2回洗浄した。粗生成物は、MgSOで乾燥させた後に蒸発され、薄茶色の粗ジイソシアネートになった。生成物(PEG-ジイソシアネートすなわちPEGDI)を、シリカゲルカラムで精製した。
【0072】
PEG-ジイソシアネート(PEGDI)10mmol及びグリシドール(25mmol)を0℃で24時間、0.1%ジブチル錫ジラウレート触媒と反応させた。生成物を0.5M重曹溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。CHCL-ヘキサンを溶離液として1:4から3:2の体積比で用いることによって、カラムクロマトグラフィーを用いて生成物を精製してポリマー(PEG-ウレタン-ジエポキシすなわちPEGDEp)を生成した。
【0073】
表1に記載された割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSI)と、可塑剤(コハク酸ニトリル、SN)とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0074】
上記の混合物をPET薄膜に塗布した。特に、5分間のUV硬化によって固体ポリマー電解質膜を得た。膜の機械的特性、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を、以下のように処理直後の膜について決定した。
【0075】
機械的特性試験は、動的機械分析装置(DMA Q800、TAインスツルメンツ社)を使用した動的機械分析によって行われた。ポリマー固体膜を寸法が7mm×58mmの標準的な引張試験試料に成形した。伸長速度は3mm/分であった。
【0076】
電気化学的安定性試験は、ACインピーダンス分析装置(Interface 1010E ポテンショスタット、Gamry社)を使用したサイクリックボルタンメトリー測定を用いて行われた。面積が1cmの試料をステンレス鋼板とリチウムホイル(参照電極)の間に密封した。作動電圧範囲は、走査速度が10mV/秒で-0.5から5.6Vであった。実験は室温で行われた。
【0077】
ACインピーダンス分析装置(Interface 1010E ポテンショスタット、Gamry社)を使用してイオン伝導率試験を行った。有効面積が1cmの試料を2032コインセルに配置した。イオン伝導率は、13MHzから5Hzの周波数範囲かつ10mVのバイアス電圧で測定された。
【0078】
[実施例2]
この実施例は、次の一般構造を有するPEG-尿素-ジエポキシポリマーの合成を説明する。
【0079】
【化14】
【0080】
この実施例では、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(TTDDA;ポリエチレングリコールジアミン(PEGDAm)として一般に知られている)40mmol、ピリジン200mmol及びCHCl100mlを250mLの丸底フラスコに加えた。混合物を-10℃で10分間撹拌した後、トリホスゲン85mmolのCHCL溶液80mlを溶液に-20℃で10分間加えた。そして混合物を0℃で5時間撹拌した。淡黄色溶液を得た。
【0081】
0.1mol/Lの塩酸100mlを反応混合物に加えて、二相に分離した液体混合物を得た。生成物を集め、CHCL200mlで2回洗浄した。生成物中の水分をMgSOを加えることによって除去した。溶媒を蒸発させた後に、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。生成物(PEG-ジイソシアネートすなわちPEGDI)をシリカゲルカラムで精製した。
【0082】
次にPEGDI10mmol及びグリシジルアミン25mmolを0℃で24時間、0.1%ジブチル錫ジラウレート触媒と反応させた。生成物を0.5M重曹溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。CHCL-ヘキサンを溶離液として1:4から3:2の体積比で用いることによって、カラムクロマトグラフィーを用いて生成物(PEG-尿素-ジエポキシすなわちPEGDEp)を精製した。
【0083】
表1に記載された割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSI)と、可塑剤(コハク酸ニトリル、SN)とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0084】
上記の混合物をPET薄膜に塗布した。特に、5分間のUV硬化によって固体ポリマー電解質膜を得た。膜の機械的特性、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を、実施例1と同様の測定方法及び条件を用いて処理直後の膜について決定した。
【0085】
[実施例3]
この実施例は、デシル-ウレタン-ジエポキシ、ポリマーB(図3参照)の合成を説明する。
【0086】
【化15】
【0087】
この構造では、nは5である。この実施例では、1,10-ジアミノデカン60mmol、ピリジン120mmol及びCHCl50mlを100mlの丸底フラスコに加えた。混合物を-20℃で30分間撹拌した後、トリホスゲン85mmolのCHCL溶液80mlを溶液に-20℃で10分以内に加えた。そして混合物を0℃で12時間撹拌した。淡黄色溶液を得た。
【0088】
0.1mol/lの塩酸100mlを反応混合物に加えて、二相に分離した液体混合物を得た。生成物を集め、CHCL200mlで2回洗浄した。生成物中の水分をMgSOを加えることによって除去した。溶媒を蒸発させた後に、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。生成物(デシルジイソシアネートすなわちDDI)をシリカゲルカラムで精製した。
【0089】
DDI10mmol及びグリシドール25mmolを0℃で24時間、0.1%ジブチル錫ジラウレート触媒と反応させた。生成物を0.5M重曹溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。CHCL-ヘキサンを溶離液として1:4から3:2の体積比で用いることによって、カラムクロマトグラフィーを用いて生成物(デシル-ウレタン-ジエポキシすなわちDDEp)を精製した。
【0090】
表1に記載された割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSI)と、可塑剤(エチレンカーボネート、EC)とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0091】
上記の混合物をPET薄膜に塗布した。特に、5分間のUV硬化によって固体ポリマー電解質膜を得た。膜の機械的特性、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を、実施例1と同様の測定方法及び条件を用いて、処理直後の膜について決定した。
【0092】
[実施例4]
この実施例は、ベンゼン-ウレタン-ジエポキシ、ポリマーC(図3参照)の合成を説明する。
【0093】
【化16】
【0094】
この構造では、mは1である。この実施例では、1,4-ジアミノベンゼン60mmol、ピリジン120mmol及びCHCl50mlを100mlの丸底フラスコに加えた。混合物を-20℃で30分間撹拌した後、トリホスゲン85mmolのCHCL溶液80mlを溶液に-20℃で10分以内に加えた。そして混合物を0℃で12時間撹拌した。淡黄色溶液を得た。
【0095】
0.1mol/lの塩酸100mlを反応混合物に加えて、二相に分離した液体混合物を得た。生成物を集め、CHCL200mlで2回洗浄した。MgSOで乾燥させた後、溶媒蒸発によって粗生成物を得た。生成物(1,4-ベンゼンジイソシアネートすなわちDDI)をシリカゲルカラムで精製した。
【0096】
DDI10mmol及びグリシドール25mmolを0℃で24時間、0.1%ジブチル錫ジラウレート触媒と反応させた。生成物を0.5M重曹溶液100mlで洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、薄茶色の粗ジイソシアネートを得た。CHCL-ヘキサンを溶離液として1:4から3:2の体積比で用いることによって、カラムクロマトグラフィーを用いて生成物(ベンゼン-ウレタン-ジエポキシすなわちDDEp)を精製した。
【0097】
表1に記載された割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSI)と、可塑剤(コハク酸ニトリル、SN)とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0098】
上記の混合物をPET薄膜に塗布した。特に、5分間のUV硬化によって固体ポリマー電解質膜を得た。膜の機械的特性、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を、実施例1と同様の測定方法及び条件を用いて処理直後の膜について決定した。
【0099】
[比較例1及び2]
比較例1のポリマーは次のものである。
【0100】
【化17】
【0101】
比較例2のポリマーはポリマーAである(図3も参照)。
【0102】
【化18】
【0103】
これらのポリマーは商業的に入手可能である。
【0104】
表1に記載された割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSI)と、可塑剤とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。比較例1ではコハク酸ニトリル(SN)を使用した。比較例2ではエチレンカーボネート(EC)を使用した。
【0105】
上記の混合物をPET薄膜に塗布した。特に、5分間のUV硬化によって固体ポリマー電解質膜を得た。膜の機械的特性、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を、実施例1と同様の測定方法及び条件を用いて処理直後の膜について決定した。
【0106】
実施例の概要
表1は、実施例1~4並びに比較例1及び2に示されたポリマー固体電解質の特性データを示している。
【0107】
【表1】
【0108】
これらの実施例では、異なる可塑剤を比較し(コハク酸ニトリル、SN対エチレンカーボネート、EC)、異なるR基を比較した(C-C-O親水性骨格対C-C疎水性骨格)。比較例1及び2と比較すると、ポリマーにカルバメート基(実施例1、3、及び4)又は尿素基(実施例2)を導入することによって、ポリマー固体電解質の引張強度、イオン伝導率、及び分解電圧が全て改善した。
【0109】
[実施例5]
この実施例は、次の一般構造を有するポリエチレングリコール-ビス-カルバメートポリマーの合成を説明する。図6も参照。
【0110】
【化19】
【0111】
この実施例では、丸底フラスコをポリ(エチレングリコール)ジアミン(40mmol、Mn=2000、PEG2000DAm)、プロピレンカーボネート(85mmol)、及びクロロホルム(100ml)で満たした。混合物を20℃で24時間撹拌した。結果として生じた反応混合物溶液を水(100ml)で洗浄した。水分画をクロロホルム(100ml)の2つの部分によって分離し、再抽出した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリエチレングリコール-ビス-カルバメート(PEGBC2000)の粗混合物を黄色固体として形成した。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0112】
最終工程から得たPEGBC2000(10mmol)を、氷冷槽のビーカー内で無水メタクリル酸(25mmol)と混合した。4-ジメチルアミノピリジン(0.1%、DMAP)を触媒として、ハイドロキノン(0.1%、HQr)を阻害剤として、さらにトリエチルアミン(50mmol、TEA)を使用した。反応を24時間行った。粗反応混合物を中和し、0.5M含水重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。次に水相をクロロホルムで2回洗浄した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリエチレングリコール-ビス-カルバメートジメタクリレート(PEGBC2000DA)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって、体積比が1:4から3:2のクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶媒の溶離液で精製した。
【0113】
表2に記載された量及び割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩と、可塑剤とを、室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0114】
これらの方法で得た生成物を、ポリマー、リチウム塩、開始剤及び無機充填剤と特定のモル比で混合した。混合物を室温で撹拌することによって単相液体に配合した。得られた混合物を固めて固体電解質とした。リチウム塩、可塑剤、及び他の成分の詳細は表3に示されている。
【0115】
上述の液体及び粘性混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に直接塗布した。5分間のUV照射をコーティングに対して行った。機械的特性(例えば引張強度及び引張伸び)、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を決定した。測定方法及び条件は実施例1と同様である。結果は表2及び表3に示す。
【0116】
実施例5-19、5-20、及び5-2を比較することによって、引張強度及び/又はイオン輸率を向上させるものとして特定の無機添加剤を示した。無機添加剤は、尿素及び/又はカルバメートが存在する場合に特定の利点を提供することができる。例えば実施例5では、試験構造は全てカルバメートを使用する。比較的高いイオン輸率はリチウムデンドライトの成長を遅らせるのに役立ち得る。一部の例では、さらに充電及び放電中の分極を抑制することによって内部電気抵抗を減らすことができる。
【0117】
図5は、実施例5のポリマーにより製造された固体電解質の電気化学的インピーダンス分光法を示している。組成は表2の実施例5-2に示されている。半サイクルと線Y=0との間の左端のクロスは、固体電解質膜の体抵抗を示す。イオン伝導率は、膜の既知の厚さ及び面積を用いて計算することができる。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
サイクル性能:ポリマー固体電解質を、グラファイトをアノードとし、NMC811をカソードとする2032コインセルに組み込んだ。サイクル試験をNewareサイクル試験装置を使用して行った。同じ充放電レートで全ての電池を試験した。充電/放電電位窓は2.8Vから4.2Vであった。電池は、第1サイクルから第5サイクルは電流レート0.1Cでサイクルさせ、第6サイクルから第10サイクルは電流レート0.33Cでサイクルさせ、第11サイクルから第15サイクルは電流レート0.5Cでサイクルさせ、第16サイクルからは電流レート0.33Cでサイクルさせた。図8は、室温で電流レートが0.1C、0.33C、0.5C、0.33Cの場合の実施例5-2、実施例5-22、及び比較例1の容量保持曲線を示している。
【0121】
図8から、第1サイクルから第10サイクルにかけて、比較例1、実施例5-2及び実施例5-22は、電流レート0.1C及び0.33Cで標準的な放電容量175mAh/gの98%超の同様の容量保持率を示した。比較例1及び実施例5-2は電流レート0.5Cで60%未満の容量保持率を示し、実施例5-22は電流レート0.5Cで70%の容量保持率を示した。したがって、実施例5-22の組成は、0.5Cレートの容量保持率を0.1Cレートの容量保持率の70%に保持した。これに対して、比較例1及び実施例5-2の容量保持率はいずれも60%未満で、レート性能はBaTiOを添加剤として加えることによって改善された。
【0122】
0.5Cでのサイクル後の容量保持率(第16サイクル後の電流レート0.33Cでの容量保持率)と0.5Cでのサイクル前の容量保持率(第6サイクルから第10サイクルまでの電流レート0.33Cでの容量保持率)とを比較したところ、比較例1は0.5Cでのサイクル後の容量保持率が低下したことを示したのに対し、実施例5-2及び実施例5-22は0.5Cでのサイクル前後の容量保持率が同様であったことを示した。実施例5-2及び5-22のサイクル容量保持率は比較例1より良好であった。したがって、ポリマー固体電解質のサイクル性能はこの実施例において改善された。
【0123】
また実施例5-22は、実施例5-2と比較して、より高く安定的な容量保持率を示した。サイクル性能はBaTiOを添加剤として加えることによって改善された。
【0124】
図9は、実施例5-22のポリマー固体電解質のイオン伝導率曲線を示している。
【0125】
実施例5-22の電解質のイオン伝導率は0.95×10-3S/cmであった。無機添加剤BaTiOは、この実施例を実施例5-19~5-21と比較することで分かるように、引張強度を39.2MPaに高めた。また、イオン輸率も0.77にまで改善された。
【0126】
イオン輸率は、DC分極が10mVで、EISスペクトルが100kHz~1Hzの範囲のGamry 1010B又はGamry 1010E機器を使用して測定した。試験方法は、Peter G.Bruce、James Evants及びColin A.Vincent、“Conductivity and transference number measurements on polymer electrolytes,”Solid State Ionics,28-30(1988)918-922を基にした。
【0127】
[実施例6]
この実施例は、ポリエチレングリコール-ビス-尿素、ポリマーGの合成を説明する(図3参照)。
【0128】
【化20】
【0129】
この実施例では、丸底フラスコをポリ(エチレングリコール)ジアミン(40mmol、Mn=2000、PEG2000DAm)、3-メチル-2-オキサゾリジノン(85mmol)、及びクロロホルム(100ml)で満たした。混合物を20℃で24時間撹拌した。結果として生じた反応混合物溶液を水(100ml)で洗浄した。水分画をクロロホルム(100ml)の2つの部分によって分離し、再抽出した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリエチレングリコール-ビス-尿素(PEGBU2000)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0130】
最終工程から得たPEGBU2000(10mmol)を、氷冷槽のビーカー内で無水メタクリル酸(25mmol)と混合した。4-ジメチルアミノピリジン(0.1%、DMAP)を触媒として、ハイドロキノン(0.1%、HQr)を阻害剤として、さらにトリエチルアミン(50mmol、TEA)を使用した。反応を24時間行った。粗反応混合物を中和し、0.5M含水重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。次に水相をクロロホルムで2回洗浄した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリエチレングリコール-ビス-尿素ジメタクリレート(PEGBU2000DA)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって、体積比が1:4から3:2のクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶媒の溶離液で精製した。
【0131】
表4に記載された量及び割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩と、可塑剤とを、室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0132】
上述の液体及び粘性混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に直接塗布した。5分間のUV照射をコーティングに対して行った。機械的特性(例えば引張強度及び引張伸び)、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を決定した。測定方法及び条件は実施例1と同様であった。結果は表4に示す。
【0133】
[実施例7]
この実施例は、ポリプロピレングリコール-ビス-カルバメート、ポリマーEの合成を説明する(図3参照)。
【0134】
【化21】
【0135】
この構造では、nは45である。この実施例では、丸底フラスコをポリ(プロピレングリコール)ジアミン(40mmol、Mn=2000、PEG2000DAm)、プロピレンカーボネート(85mmol)、及びクロロホルム(100ml)で満たした。混合物を20℃で24時間撹拌した。結果として生じた反応混合物溶液を水(100ml)で洗浄した。水分画をクロロホルム(100ml)の2つの部分によって分離し、再抽出した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリプロピレングリコール-ビス-カルバメート(PPGBC2000)の粗混合物を褐色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0136】
最終工程から得たPPGBC2000(10mmol)を、氷冷槽のビーカー内で無水メタクリル酸(25mmol)と混合した。4-ジメチルアミノピリジン(0.1%、DMAP)を触媒として、ハイドロキノン(0.1%、HQr)を阻害剤として、さらにトリエチルアミン(50mmol、TEA)を使用した。反応を24時間行った。粗反応混合物を中和し、0.5M含水重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。次に水相をクロロホルムで2回洗浄した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリプロピレングリコール-ビス-カルバメートジメタクリレート(PPGBC2000DA)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって、体積比が1:4から3:2のクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶媒の溶離液で精製した。
【0137】
表4に記載された量及び割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩と、可塑剤とを、室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0138】
上述の液体及び粘性混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に直接塗布した。5分間のUV照射をコーティングに対して行った。機械的特性(例えば引張強度及び引張伸び)、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を決定した。測定方法及び条件は実施例1と同様であった。結果は表4に示す。
【0139】
[実施例8]
この実施例は、ポリフェニレン-ビス-カルバメート、ポリマーFの合成を説明する(図3参照)。
【0140】
【化22】
【0141】
この構造では、mは45である。この実施例では、丸底フラスコを1,4-フェニレンジアミン(40mmol、Mn=2000、PDAm)、プロピレンカーボネート(85mmol)、及びクロロホルム(100ml)で満たした。混合物を20℃で24時間撹拌した。結果として生じた反応混合物溶液を水(100ml)で洗浄した。水分画をクロロホルム(100ml)の2つの部分によって分離し、再抽出した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリフェニレン-ビス-カルバメート(PPBC2000)の粗混合物を褐色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0142】
最終工程から得たPPBC2000(10mmol)を、氷冷槽のビーカー内で無水メタクリル酸(25mmol)と混合した。4-ジメチルアミノピリジン(0.1%、DMAP)を触媒として、ハイドロキノン(0.1%、HQr)を阻害剤として、さらにトリエチルアミン(50mmol、TEA)を使用した。反応を24時間行った。粗反応混合物を中和し、0.5M含水重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。次に水相をクロロホルムで2回洗浄した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリフェニレン-ビス-カルバメートジメタクリレート(PPBC2000DA)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって、体積比が1:4から3:2のクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶媒の溶離液で精製した。
【0143】
表4に記載された量及び割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩と、可塑剤とを、室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0144】
上述の液体及び粘性混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に直接塗布した。5分間のUV照射をコーティングに対して行った。機械的特性(例えば引張強度及び引張伸び)、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を決定した。測定方法及び条件は実施例1と同様であった。結果は表4に示す。
【0145】
[比較例3]
この例は、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリマーDの合成を説明する。
【0146】
【化23】
【0147】
この構造では、nは16である。このポリマーは商業的に容易に入手可能である。この例では、ポリエチレングリコール(10mmol、Mn=700、PEG700)を、氷冷槽のビーカー内で無水メタクリル酸(25mmol)と混合した。4-ジメチルアミノピリジン(0.1%、DMAP)を触媒として、ハイドロキノン(0.1%、HQr)を阻害剤として、さらにトリエチルアミン(50mmol、TEA)を使用した。反応を24時間行った。粗反応混合物を中和し、0.5M含水重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。次に水相をクロロホルムで2回洗浄した。有機相の全てを結合し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させた有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレータを使用して濃縮した。ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDA700)の粗混合物を黄色固体として得た。さらに粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって、体積比が1:4から3:2のクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶媒の溶離液で精製した。
【0148】
表4に記載された量及び割合で合成直後のポリマーと、リチウム塩と、可塑剤とを室温及び液体状態での機械的撹拌により混合することによって固体ポリマー電解質を得た。
【0149】
上述の液体及び粘性混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に直接塗布した。5分間のUV照射をコーティングに対して行った。機械的特性(例えば引張強度及び引張伸び)、イオン伝導率、及び電気化学的安定性を決定した。測定方法及び条件は実施例1と同様である。結果は表4に示されており、このポリマーの応力-歪みと実施例5の応力-歪みのグラフが図1に示されている。これらは上記実施例1で開示されたものと同様の手順を用いて特徴付けられた。データは同様の方法及び条件下で収集された。
【0150】
実施例の概要
表4は、同じ測定方法及び条件を用いた実施例5~8の比較データセットを示している。
【0151】
【表4】
【0152】
尿素官能基を持つ実施例6のポリマーは、比較例3と比較して大きい引張強度及び破断伸びを示した。イオン伝導率も向上した。また、尿素官能基は、より高い分解電位を有するより安定的な材料をもたらす。
【0153】
カルバメート官能基を持つ実施例5、7、及び8のポリマーは、比較例3と比較して大きい引張強度及び破断伸びを示した。イオン伝導率も向上した。また、カルバメート官能基は、より高い分解電位を有するより安定的な材料をもたらす。
【0154】
図4は、実施例3、4、7、及び8、並びに比較例1及び3のポリマーにより製造された固体電解質の電気化学的インピーダンス分光法を示している。組成は表1、2及び3に示されている。半サイクルと線Y=0との間の左端のクロスは、固体電解質膜の体抵抗を示す。イオン伝導率は、膜の既知の厚さ及び面積を用いて計算することができる。
【0155】
要約すると、UV架橋固化を伴う尿素及び/又はカルバメート官能基の組み込みは、様々な機械的特性及び電気化学的性能を大幅に向上させるように見えた。これらのポリマー固体電解質は、安全で寿命の長いリチウム二次電池を実現するのに役立ち得る。これらの実験においてポリマー固体電解質は、比較材料より良好なイオン伝導率を示し、リチウムイオンはより速くかつ効率的に伝導した。これらの特性は、リチウムイオン電池の充電/放電速度性能の向上に役立ち得る。また、ポリマー材料の分解電位が改善されることによって固体電解質の安定性を高めることができ、ひいてはより寿命の長い及び/又はより高電圧のリチウム電池を提供することができる。また、これらの実施例におけるポリマー固体電解質は有機溶媒を使用しなかった。したがって、他の用途と同様に、確実にリチウムイオン電池の安全性能をもたらすことができる。
【0156】
本明細書において、本発明の複数の実施形態について記載且つ説明を行ったが、当業者は、機能を実施するための、及び/又は、結果及び/又は本明細書に記載の1つ以上の利点を得るための、他の様々な手段及び/又は構成を想定することは容易であり、そのような変更物/修正物の各々は、本発明の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者には、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的なものであり、また、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成が、本発明の教示を使用する特定の用途に応じて決定されることが容易に認識されるであろう。当業者は、日常的な実験のみを利用して、本明細書に記載された発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識し、又は、確認できるであろう。したがって、前述の実施形態は一例としてのみ示されており、また、本発明が、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内において、具体的に記載且つ特許請求されたものとは異なる他の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された、個別の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の2つ以上の任意の組み合わせが、互いに矛盾しない限り、本発明の範囲内に包含される。
【0157】
本明細書と、参照により組み込まれた文献とが相反及び/又は矛盾する開示を含んでいる場合は、本明細書が優先するものとする。参照により組み込まれた2個以上の文献が相互に相反及び/又は矛盾する開示を含んでいる場合は、発効日が新しい方の文書が優先するものとする。
【0158】
本明細書で定義及び使用された全ての定義は、辞書定義、参照により組み込まれた文書内の定義、及び/又は定義された用語の普通の意味に優先することを理解すべきである。
【0159】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲においてここで使用するときに、反対の明示がない限り、「少なくとも1つ」を意味することを理解すべきである。
【0160】
語句「及び/又は」は、本明細書及び特許請求の範囲においてここで使用するときに、そのように結合された要素、すなわち、一部の例では共同で存在し、他の例では別々に存在する要素の「一方又は両方」を意味することを理解すべきである。「及び/又は」と共に記載された複数の要素も、同様に、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されなければならない。具体的に特定された要素と関係があるなしに関わらず、特に「及び/又は」という句により特定された要素以外の他の要素は、任意的に存在することができる。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」のような幅広い解釈ができる言語に関連して使用されたときに、一実施形態において、Aのみ(任意的にB以外の要素を含む)、別の実施形態において、Bのみ(任意的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態において、AもBも(任意的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0161】
本明細書及び特許請求の範囲においてここで使用するときの「又は」は、先に定義したような「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されなければならない。例えば、リストにおいて品目を分離するときの「又は」又は「及び/又は」は、網羅的であり、すなわち、少なくとも1つの包含であるが、同じくいくつかの要素又は要素のリストの1つよりも多く及び任意的に更に別のリストに載ってない品目を含むと解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」、「のうちの正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用するときの「から成る」のようなその逆を明確に示す用語だけが、いくつかの要素又は要素のリストのまさに1つの要素の包含を示すこととする。一般的に、本明細書で使用するときの用語「又は」は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、「のうちの正確に1つ」のような排他性の用語に先行されたときに排他的二者択一(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すのみと解釈されるものとする。
【0162】
本明細書及び特許請求の範囲においてここで使用するときに、1つ以上の要素のリストに関連の語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内であるが必ずしも要素のリスト内に具体的に説明された各々かつ全ての要素の少なくとも1つを含み、かつ要素のリスト内の要素のあらゆる組み合わせを除外するわけではない要素のいずれか1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味することを理解すべきである。この定義は、具体的に特定されたそれらの要素と関係があるなしに関わらず、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外に要素が任意的に存在することができることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも一方」(同等に「A又はBのうちの少なくとも一方」、又は同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも一方」)は、一実施形態において、任意的に1つよりも多くを含み、Bは存在せずに(かつ任意的にB以外の要素を含んで)少なくとも一方、すなわち、Aを指し、別の実施形態において、少なくとも1つ、任意的に1つよりも多くを含み、Aは存在せずに(かつ任意的にA以外の要素を含んで)少なくとも一方、すなわち、Bを指し、更に別の実施形態において、少なくとも1つ、任意的に1つよりも多く、すなわち、Aを含み、かつ少なくとも1つ、任意的に1つよりも多く、すなわち、Bを含む(かつ任意的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0163】
「約(about)」という用語が数に関連して本明細書において用いられた場合、本発明の更に他の実施形態は、「約」という用語の存在により修飾されない数を含むと理解されるべきである。
【0164】
更に、反対の明示がない限り、本明細書において請求された1つ以上のステップ又は行為を含む任意の方法において、方法のステップ又は行為の順序は、方法のステップ又は行為の順序が列挙された順序に必ずしも限定されないと理解されるべきである。
【0165】
特許請求の範囲及び以上の本明細書では、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、及び「で構成される」などのような全ての移行句は、制限がない、すなわち、含むがそれに限定されない意味であることは理解されるものとする。移行句「から成る」及び「から本質的に成る」のみが、それぞれ、米国特許庁特許審査手順マニュアル、2111.03節に定められているように、限定又は半限定移行句であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9