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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20230904BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20230904BHJP
   G01C 15/00 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
G01S19/43
G09B29/00 A
G01C15/00 102C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019216061
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085799
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 直裕
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163514(JP,A)
【文献】特開2002-341757(JP,A)
【文献】特開2002-340591(JP,A)
【文献】特開2019-45457(JP,A)
【文献】特開2002-340589(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
G09B 29/00
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
基地局の基準位置を取得する基準取得部と、
前記基地局に対応し且つ前記車体の位置の測位方法が異なる第1モード及び第2モードに切換可能であり、測位衛星からの衛星信号と前記基準取得部が取得した前記基準位置とに基づいて、前記車体の位置を測位する車体測位装置と、
前記車体測位装置が前記第1モードで測位した前記車体の位置に基づいて、第1圃場マップを作成可能なマップ作成部と、
を備え、
前記マップ作成部は、前記車体測位装置が前記第1モードで測位した前記車体の位置のうちの所定の第1位置と、前記車体測位装置が前記第1位置を測位した位置に前記車体が停止した状態で、当該車体測位装置が前記第2モードで測位した前記車体の位置である第2位置との偏差と、前記第1圃場マップとに基づいて前記第1圃場マップとは異なり、且つ前記第2モードに対応する第2圃場マップを作成する作業機。
【請求項2】
前記マップ作成部は、前記第1圃場マップに対して前記偏差をシフトすることで前記第2圃場マップを作成する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1モードは、前記基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を前記基準位置として前記車体の位置を求める可搬局モードであり、前記第2モードは、前記基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を前記基準位置として前記車体の位置を演算するVRSモードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1モードは、前記基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を前記基準位置として前記車体の位置を求める可搬局モードであり、前記第2モードは、前記基地局である固定基地局の絶対位置を前記基準位置として前記車体の位置を演算する固定局モードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項5】
前記第1モードは、前記基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を前記基準位置として前記車体の位置を演算するVRSモードであり、前記第2モードは、前記基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を前記基準位置として前記車体の位置を求める可搬局モードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項6】
前記第1モードは、前記基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を前記基準位置として前記車体の位置を演算するVRSモードであり、前記第2モードは、前記基地局である固定基地局の絶対位置を前記基準位置として前記車体の位置を演算する固定局モードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項7】
前記第1モードは、前記基地局である固定基地局の絶対位置を前記基準位置として前記車体の位置を演算する固定局モードであり、前記第2モードは、前記基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を前記基準位置として前記車体の位置を求める可搬局モードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項8】
前記第1モードは、前記基地局である固定基地局の絶対位置を前記基準位置として前記車体の位置を演算する固定局モードであり、前記第2モードは、前記基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を前記基準位置として前記車体の位置を演算するVRSモードである請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項9】
前記第1圃場マップと前記第2圃場マップとを切り換えて表示する表示装置を備えている請求項1~8のいずれかに記載の作業機。
【請求項10】
前記表示装置は、前記第1圃場マップ及び前記第2圃場マップの少なくとも一方に走行予定ルートを作成するルート作成部を備えている請求項9に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置を測位可能な車体測位装置を有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、高精度な測位を比較的簡単に実現する技術としてRTK法が知られている。このRTK法で用いる基地局には、特許文献1に示すような圃場の近傍に配置する可搬型の基地局(可搬基地局)や圃場の比較的遠方に配置される固定型の基地局(固定基地局)を用いたRTK-GNSS測位、特許文献2に示すようなVRS(仮想基準点方式:Virtual Reference Station)測位技術を用いたVRS-GNSS測位等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-105707号公報
【文献】特開2008-3042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RTK-GNSS測位及びVRS-GNSS測位等では、補正情報を移動局に送信することによって、移動局側で正確な位置を補正することができる。
しかしながら、可搬基地局を用いたRTK-GNSS測位、固定基地局を用いたRTK-GNSS測位及びVRS-GNSS測位の相互で測位方法(モード)の切換を行うと、基準位置を含む測位環境が変わり、切換前のモードで作成したマップを切換後のモードで利用すると位置ズレが生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、切換前のモードで作成したマップを切換後のモードにおいて位置ズレを抑制して使用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、車体と、基地局の基準位置を取得する基準取得部と、基地局に対応し且つ車体の位置の測位方法が異なる第1モード及び第2モードに切換可能であり、測位衛星からの衛星信号と基準取得部が取得した基準位置とに基づいて、車体の位置を測位する車体測位装置と、車体測位装置が第1モードで測位した車体の位置に基づいて、第1圃場マップを作成可能なマップ作成部と、を備え、マップ作成部は、車体測位装置が第1モードで測位した車体の位置のうちの所定の第1位置と、車体測位装置が第1位置を測位した位置に車体が停止した状態で、当該車体測位装置が第2モードで測位した車体の位置である第2位置との偏差と、第1圃場マップとに基づいて第1圃場マップとは異なり、且つ第2モードに対応する第2圃場マップを作成する。
【0007】
また、マップ作成部は、第1圃場マップに対して偏差をシフトすることで第2圃場マップを作成する。
また、第1モードは、基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を基準位置として車体の位置を求める可搬局モードであり、第2モードは、基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を基準位置として車体の位置を演算するVRSモードである。
【0008】
また、第1モードは、基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を基準位置として車体の位置を求める可搬局モードであり、第2モードは、基地局である固定基地局の絶対位置を基準位置として車体の位置を演算する固定局モードである。
また、第1モードは、基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を基準位置として車体の位置を演算するVRSモードであり、第2モードは、基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を基準位置として車体の位置を求める可搬局モードである。
【0009】
また、第1モードは、基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を基準位置として車体の位置を演算するVRSモードであり、第2モードは、基地局である固定基地局の絶対位置を基準位置として車体の位置を演算する固定局モードである。
また、第1モードは、基地局である固定基地局の絶対位置を基準位置として車体の位置を演算する固定局モードであり、第2モードは、基地局であり且つ圃場に設置された圃場測位装置の設置位置を基準位置として車体の位置を求める可搬局モードである。
【0010】
また、第1モードは、基地局である固定基地局の絶対位置を基準位置として車体の位置を演算する固定局モードであり、第2モードは、基地局である固定基地局に定められた絶対位置に基づいて定められた仮想基準点を基準位置として車体の位置を演算するVRSモードである。
また、第1圃場マップと第2圃場マップとを切り換えて表示する表示装置を備えている。
【0011】
また、表示装置は、第1圃場マップ及び第2圃場マップの少なくとも一方に走行予定ルートを作成するルート作成部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
上記作業機によれば、移行前のモードで作成したマップを移行後のモードで位置ズレを抑制して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】作業機が自動走行している状況を示す図である。
図2】作業機のブロック図を示す図である。
図3】昇降装置を示す図である。
図4】自動走行を説明する図である。
図5】第1圃場マップを作成する際の作業機等の様子を示す図である。
図6】第1マップ作成画面の一例を示す図である。
図7A】走行軌跡から圃場の輪郭を求める図である。
図7B】走行軌跡の変曲点から圃場の輪郭を求める図である。
図8】車体測位装置のモード切換の一連の流れを示す図である。
図9】第2圃場マップの作成について説明する図である。
図10】第2マップ作成画面の一例を示す図である。
図11】圃場マップに走行予定ルートを作成した図である。
図12】ルート設定画面の一例を示す図である。
図13A】作業エリアに単位作業区画を作成した図である。
図13B図13Aとは異なる単位作業区画を示す図である。
図14】トラクタの側面全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、作業機1が走行予定ルートLに沿って、自動走行している状況を示している。作業機1における自動走行においては、衛星航法、特に、高精度な測位が可能なRTK法を用いて、作業機1の位置、方位等を検出しながら自動走行を行う。RTK法においては、測位衛星Gからの衛星信号を基地局100と移動局(以下における作業機1に取り付けられた車体測位装置42)とで受信する。
【0015】
基地局100では、測位衛星Gの衛星信号を受信し、当該衛星信号によって求めた衛星受信機間距離等を含む補正情報、基準位置X等を移動局(車体測位装置)42に無線通信により送信する。移動局42においては、基地局100から取得した補正情報に基づいて、測位衛星Gから受信した情報を補正して、より高い精度の位置情報を取得する。
作業機1について説明すると、作業機1は、例えば、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械である。作業機1は、トラクタであるとして説明を進める。以下、トラクタ1の運転席10に着座した運転者の前側を前方、運転者の後側を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。
【0016】
図14に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する車体3と、原動機4と、変速装置5と、を備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0017】
また、図14に示すように、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を昇降装置8に連結することによって、車体3は作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0018】
図2に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含んでいる。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)24に接続されている。
【0019】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
図3に示すように、昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁を介して油圧ポンプ21と接続されている。制御弁は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0020】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0021】
図2に示すように、トラクタ1は、表示装置30を備えている。表示装置30は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネルのいずれかで構成された表示部31と、表示部31に表示する情報等を記憶する記憶装置32と、を有する装置である。表示装置30は、トラクタ1の走行を支援するための情報の他にトラクタ1に関する様々な情報を表示可能である。また、表示装置30は、トラクタ1が有する機器と有線又は無線によって通信可能に接続されている。
【0022】
図2に示すように、トラクタ1は、車体通信装置40と、基準取得部41と、車体測位装置42と、を備えている。車体通信装置40は、様々なデータを当該トラクタ1の外部に送信したり、外部のデータをトラクタ1に取り込む装置である。車体通信装置40は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)等により基地局100と無線通信を行ったり、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等によって外部と無線通信を行う装置である。例えば車体通信装置40は、基地局100から当該基地局100の設置位置X1や外部から位置情報等を受信する。
【0023】
基準取得部41は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されており、基準位置Xを取得する。具体的には、例えば基準取得部41は、車体通信装置40が受信した設置位置X1を基準位置Xとして取得し、車体通信装置40が受信した位置情報に基づいて基準位置Xを取得する。
車体測位装置42は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星G)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、車体測位装置42は、測位衛星Gから送信された衛星信号(測位衛星Gの位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、トラクタ1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。車体測位装置42は、受信装置43と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)44と、位置演算部46と、を有している。受信装置43は、アンテナ等を有していて測位衛星Gから送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置44とは別に車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置43は、車体3であって、詳しくはキャビン9に取付けられている。なお、受信装置43の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0024】
慣性計測装置44は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置44によって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
位置演算部46は、基準取得部41が取得した基準位置Xと、受信装置43が受信した衛星信号に基づいて、車体3の位置の演算を行う。位置演算部46は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。また、位置演算部46は、単独測位によって車体3の位置の演算が可能であってもよい。
【0025】
図2に示すように、トラクタ1は、制御装置50を備えている。制御装置50は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御等を行う装置である。制御装置50は、トラクタ1の自動走行を制御する自動走行制御部51を有している。自動走行制御部51は、制御装置50に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動走行制御部51は、自動走行を開始すると、車体3が走行予定ルートLに沿って走行するように操舵装置11の制御弁22を制御する。また、自動走行制御部51は、自動走行を開始すると、変速装置5の変速段、原動機4の回転数等を自動的に変更することによって、トラクタ1の車速(速度)を制御する。
【0026】
図4に示すように、トラクタ1が自動走行を行っている状況下において、車体位置と走行予定ルートLとの偏差が閾値未満である場合、自動走行制御部51は、操舵軸(回転軸)11bの回転角を維持する。車体位置と走行予定ルートLとの偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ルートLに対して左側に位置している場合は、自動走行制御部51は、トラクタ1の操舵方向が右方向となるように操舵軸11bを回転する。車体位置と走行予定ルートLとの偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ルートLに対して右側に位置している場合は、自動走行制御部51は、トラクタ1の操舵方向が左方向となるように操舵軸11bを回転する。なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ルートLとの偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ルートLの方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ルートLに対する車体方位F1の角度θgが閾値以上である場合、自動走行制御部51は、角度θgが零(車体方位F1が走行予定ルートLの方位に一致)するように操舵角を設定してもよい。また、自動走行制御部51は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0027】
以上のように、制御装置50によって、トラクタ1(車体3)を自動走行させることができる。
また、制御装置50は、手動昇降制御、自動上昇制御等を行うことができる。手動昇降制御では、制御装置50に接続された昇降スイッチ52の操作に基づいて昇降装置8による作業装置2の昇降する制御である。具体的には、昇降スイッチ52は、運転席10の周囲に設けられていて、3位置切換スイッチである。昇降スイッチ52を中立位置から一方に切り換えると、昇降装置8(リフトアーム8a)を上昇させる上昇信号が制御装置50に入力される。また、昇降スイッチ52を中立位置から他方に切り換えると、昇降装置8(リフトアーム8a)を下降させる下降信号が制御装置50に入力される。制御装置50は、上昇信号を取得すると制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を上昇させ、下降信号を取得すると制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を下降させる。つまり、制御装置50は、昇降スイッチ52の手動操作に応じて昇降装置8を昇降させる手動昇降制御をすることができる。
【0028】
また、自動上昇制御では、操舵装置11の操舵角が所定以上、例えば、旋回に対応する操舵角である場合に、自動的に昇降装置8を作動させることで作業装置2を上昇する制御である。具体的には、制御装置50には、操舵角検出装置53と、切換スイッチ54とが接続されている。操舵角検出装置53は、操舵装置11の操舵角を検出する装置である。切換スイッチ54は、自動上昇制御の有効/無効を切り換えるスイッチであって、ON/OFFに切り換え可能なスイッチである。切換スイッチ54がONである場合、自動上昇制御が有効に設定され、切換スイッチ54がOFFである場合、自動上昇制御が無効に設定される。
【0029】
制御装置50は、自動上昇制御が有効であり且つ操舵角検出装置53が検出した操舵角が旋回に相当する操舵角以上である場合、制御弁に制御信号を出力することで昇降装置8を自動的に上昇させる自動上昇制御を行う。
以上のように、制御装置50によって、トラクタ1に関する制御、例えば、手動昇降制御、自動上昇制御を行うことができる。
【0030】
作業機1は、位置演算部46が演算した車体3の位置に基づいて、圃場Hのマップ(以下、第1圃場マップMP1という)を作成するマップ作成部33を備えている。本実施形態において、マップ作成部33は、表示装置30が有しており、当該マップ作成部33は、例えば表示装置30が有する電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。マップ作成部33は、位置演算部46が演算した車体3の位置を取得し、当該車体3の位置(車体位置VP1)に基づいて、第1圃場マップMP1を作成する。
【0031】
作業者(運転者)が表示装置30に対して所定の操作を行うと、図6に示すように、表示装置30の表示部31は、第1マップ作成画面M1を表示する。第1マップ作成画面M1には、圃場Hを含むマップ、圃場名及び圃場管理番号等の圃場識別情報が表示される。マップには、圃場Hを示す画像データの他に緯度、経度等の位置情報が対応付けられている。
【0032】
図5に示すように、作業機1が圃場H内に入り、圃場H内を周回すると、マップ作成部33は、位置演算部46が演算した車体位置VP1を取得する。図6に示すように、第1マップ作成画面M1には、作業機1が周回したときの複数の車体位置VP1が表示される。また、基準取得部41は、車体通信装置40を介して基準位置Xを取得する。
作業機1による圃場Hの周回が終了し、作業者(運転者)が第1マップ作成画面M1に表示された登録ボタン70を選択すると、マップ作成部33は、図7Aに示すように、作業機1が周回したときの複数の車体位置VP1によって得られた走行軌跡Kを圃場Hの輪郭(外形)とし、当該輪郭を第1圃場マップMP1として圃場識別情報と共に登録する。
【0033】
なお、マップ作成部33は、図7Bに示すように、車体位置VP1で示される走行軌跡Kから変曲点を演算して変曲点を結ぶ輪郭を第1圃場マップMP1として登録してもよいし、第1圃場マップMP1の作成方法は、上記方法に限定されない。
第1圃場マップMP1の位置情報(緯度、経度)は、位置演算部46が演算した車体位置VP1と、基準位置Xとの相対位置として表現され、表示装置30に設けられた記憶装置32に記憶される。
【0034】
車体測位装置42は、基地局100に対応するモードを切り換え可能であり、マップ作成部33は、モードごとに第1圃場マップMP1を作成可能であり、記憶装置32は、第1圃場マップMP1と当該第1圃場マップMP1を作成したモードと対応付けて記憶する。切換前のモード(第1モード)で作成した第1圃場マップMP1をそのまま切換後のモード(第2モード)で使用すると、第1モードで測位した位置と、第2モードで測位した位置とが同じ位置に位置している場合でも、測位方法によってはズレが生じる虞があるが、図9に示すように、マップ作成部33は、第1モードで作成した第1圃場マップMP1に基づいて、第2モードに対応する第2圃場マップMP2を作成(変換)することで、第2モードでの圃場マップのズレを抑制することができる。
【0035】
まず、基地局100について説明すると、基地局100は、図1に示すように、圃場Hの近傍に配置する可搬型の圃場測位装置100A(以下、可搬基地局ということがある)、圃場Hの比較的遠方に配置され、移動させることを前提とせず設置された電子基準局等の固定型の固定基地局100B等である。
図2に示すように、基地局100は、それぞれ受信部101、処理部102、記憶部103、及び基地通信装置104を備えている。受信部101、処理部102、記憶部103、及び基地通信装置104は、電子・電気部品、プログラム等から構成されている。
【0036】
受信部101は、測位衛星Gから送信されるL1信号、L2信号、L6信号等の測位信号を受信する。処理部102は、少なくとも位置に関する処理を行うもので、基地局100として動作することができる。処理部102は、受信部101にて受信した測位情報に基づいた位置に関する情報として、自己の位置である設置位置X1や、補正情報(基準位置X、基地局100で取得した衛星受信機間距離等の情報)の取得又は演算を行う。記憶部103は、予め処理部102の処理によって測定した設置位置X1等を記憶している。基地通信装置104は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)や、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等によって外部と通信を行うことができる。具体的には、可搬型の基地局100は少なくとも車体通信装置40(トラクタ1)と無線通信を行うことができる。固定基地局100Bは、少なくとも車体通信装置40(トラクタ1)及びVRS-RTKセンター105のいずれか一方と無線通信を行うことができる。基地通信装置104は、移動局(車体測位装置42)が設けられた移動体であるトラクタ1の車体通信装置40に対して処理部102が求めた位置に関する情報(補正情報)を送信する。
【0037】
トラクタ1の車体測位装置42は、基地局100に応じてモードを切り換え、可搬基地局100A、固定基地局100B等の基地局100やVRS-RTKセンター105と通信することで車体3の位置を測位することができる。言い換えると、複数のモードは、基準位置Xに対応しており、複数のモードは、それぞれ当該基準位置Xを設定する設定方式である。本実施形態において、車体測位装置42は、可搬基地局100Aに対応して可搬基地局100Aと通信を行う可搬局モードと、固定基地局100Bに対応し且つ固定基地局100Bと通信を行う固定局モードと、固定基地局100Bに対応し且つVRS-RTKセンター105と通信を行うVRSモードと、に切り換え可能である。
【0038】
可搬局モードは、圃場Hに設置された可搬基地局(圃場測位装置)100Aと車体測位装置42との補正情報に基づいて車体3の位置を求めるモードである。可搬局モードにおいて、車体測位装置42は、可搬基地局100Aの設置位置X1を基準位置XとしたRTK法(RTK-GNSS方式)を用いて車体3の位置を測定する。つまり、可搬局モードは、圃場Hに設置された圃場測位装置100Aの設置位置X1を基準位置Xに設定する方式である。詳しくは、車体通信装置40は、可搬基地局100Aの処理部102が求めた位置に関する情報(補正情報)を受信する。位置演算部46は、受信装置43が受信した測位信号に基づいて得られた測位情報及び車体通信装置40が受信した補正情報を用いて、測位情報を補正情報により補正して、車体3の位置等を高精度に算出する。
【0039】
固定局モードは、固定基地局100Bの設置位置(絶対位置)X1から車体3の位置を演算するモードである。固定局モードにおいて、車体測位装置42は、固定基地局100Bの設置位置X1を基準位置XとしたRTK法(RTK-GNSS方式)を用いて車体3の位置を測定する。つまり、固定局モードは、固定基地局100Bの設置位置X1を基準位置Xに設定する方式である。詳しくは、車体通信装置40は、固定基地局100Bの処理部102が求めた位置に関する情報(補正情報)を受信する。位置演算部46は、受信装置43が受信した測位信号に基づいて得られた測位情報及び車体通信装置40が受信した補正情報を用いて、測位情報を補正情報により補正して、車体3の位置等を高精度に算出する。
【0040】
VRSモードは、固定基地局100Bに定められた設置位置(絶対位置)X1に基づいて定められた仮想基準点Yを基準位置Xとして、車体3の位置を演算するモードである。つまり、VRSモードは、仮想基準点Yを基準位置Xに設定する方式である。VRSモードにおいて、車体測位装置42は、仮想基準点方式のRTK法(RTK-VRS方式)を用いて車体3の位置を測位する。詳しくは、位置演算部46は、単独測位によって車体3の位置を算出し、車体通信装置40がVRS-RTKセンター105と通信を行い、当該単独測位による測位情報を送信する。VRS-RTKセンター105は、車体通信装置40から受信した測位情報と固定基地局(電子基準局)100Bから受信したデータを処理して補正情報を作成する。VRS-RTKセンター105は、補正情報を含むVRSデータを送信し、トラクタ1の車体通信装置40が当該VRSデータを受信する。これによって、位置演算部46は、車体通信装置40が受信したVRSデータを取得し、VRSモードにおいて、移動局(車体測位装置42)のそばの仮想基準点Yにあたかも基地局100があるような状態を作り出し、RTK法によって車体3の位置を高精度に算出する。
【0041】
なお、車体測位装置42が切り換え可能なモードは、基地局100に対応して少なくとも2以上のモードがあればよく、例えば車体測位装置42は、可搬局モードと固定局モードとのみ切り換え可能であってもよいし、切換可能なモードは、上記モードに限定されない。
車体測位装置42は、例えば表示装置30を操作することで基地局100に対応する複数のモードに切り換え可能である。車体測位装置42は、方式取得部45を有している。方式取得部45は、記憶装置32に予め記憶された条件に基づいて設定方式(モード)を取得する。方式取得部45は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0042】
車体測位装置42は、表示装置30を操作することで切換前のモード(第1モード)から切換後のモード(第2モード)へ切り換えることが可能であり、方式取得部45は、表示装置30の操作情報に基づいて設定方式(モード)を取得する。具体的には、車体測位装置42は、表示部31に表示された選択部材113を選択することでモードを切換可能である。なお、表示装置30が操作可能なタッチパネル等ではない場合、選択部材113は、操作可能な操作具34であり、当該操作具34を操作することでモードを切り換え可能であってもよく、モードの切換条件は、表示装置30や操作具34の操作に限定されない。
【0043】
さらに、車体測位装置42は、表示装置30の操作に加えて、或いは表示装置30の操作とは別に車体3と基地局100との距離に応じて基地局100に対応する複数のモードに切り換え可能である。本実施形態において、方式取得部45は、表示装置30の操作に加えて車体3と基地局100との距離に応じて設定方式(モード)を取得し、車体測位装置42は、当該モードに切り換え可能である。
【0044】
以下、車体測位装置42のモード切換の流れについて説明する。まず、表示装置30を操作して可搬局方式への切り換え操作を行う場合を例に説明する。図8に示すように、車体測位装置42は、例えば単独測位等によって車体3の位置を測位する(S1)。車体測位装置42は、車体3の位置を測位すると、表示装置30の操作情報を取得する(S2)。車体測位装置42は、表示装置30の操作情報が可搬局方式への切り換え操作されているか判断する(S3)。
【0045】
図8に示すように、表示装置30が可搬局方式への切り換え操作されているため(S3,Yes)、車体通信装置40は、作業機1の周辺に配置されている可搬基地局100Aの基地通信装置104と通信を開始する(S4)。車体通信装置40が可搬基地局100Aの基地通信装置104と通信可能である場合(S5,Yes)、車体通信装置40が基地通信装置104から可搬基地局100Aの設置位置X1を受信し(S6)、車体測位装置42は、単独測位によって測位した車体3の位置と、当該設置位置X1と、に基づいて車体3と可搬基地局100Aとの距離が500m以内であるか否かを判断する(S7)。
【0046】
車体測位装置42が車体3と可搬基地局100Aとの距離が500m以内であると判断した場合(S7,Yes)、方式取得部45が可搬局方式を取得し、車体測位装置42は、可搬局方式(可搬局モード)に切り換わる(S8)。
一方、車体測位装置42が車体3と可搬基地局100Aとの距離が500m以下ではない判断した場合、つまり可搬基地局100Aとの距離が500mを超過している場合(S7,No)、車体通信装置40は作業機1の周辺に配置されている固定基地局100Bの基地通信装置104と通信を開始する(S9)。車体通信装置40が固定基地局100Bと通信可能である場合(S10,Yes)、車体通信装置40が基地通信装置104から固定基地局100Bの設置位置X1を受信し(S11)、車体測位装置42は、単独測位によって測位した車体3の位置と、当該設置位置X1と、に基づいて車体3と固定基地局100Bとの距離が10km以内であるか否かを判断する(S12)。
【0047】
車体測位装置42が車体3と固定基地局100Bとの距離が10km以内である判断した場合(S12,Yes)、方式取得部45が固定局方式を取得し、表示部31が所定の警告画面を表示し、車体測位装置42は、固定局方式(固定局モード)に切り換わる(S13)。一方、車体測位装置42が車体3と固定基地局100Bとの距離が10km以下ではないと判断した場合、つまり車体3と固定基地局100Bとの距離が10kmを超過している場合(S12,No)、方式取得部45がVRS方式を取得し、車体測位装置42は、表示部31が所定の警告画面を表示し、VRS方式(VRSモード)に切り換わる(S14)。
【0048】
図8に示すように、車体通信装置40が可搬基地局100Aの基地通信装置104と通信不可能である場合(S5,No)、車体通信装置40はS9に移行する。
また、図8に示すように、車体通信装置40が固定基地局100Bの基地通信装置104と通信不可能である場合(S10,No)、方式取得部45がVRS方式を取得し、表示部31が所定の警告画面を表示し、車体測位装置42は、VRS方式(VRSモード)に切り換わる(S14)。
【0049】
次に、表示装置30を操作して固定局方式への切り換え操作を行う場合を例に説明する。S3において、車体測位装置42は、車体測位装置42は、表示装置30の操作情報が可搬局方式への切り換え操作されているか判断し、表示装置30の操作情報が可搬局方式への切り換え操作されていないため(S3,No)、車体測位装置42は、表示装置30の操作情報が固定局方式への切り換え操作されているか判断する(S15)。表示装置30が固定局方式への切り換え操作されているため(S15,Yes)、車体通信装置40はS9に移行する。
【0050】
また、表示装置30を操作してVRS方式への切り換え操作を行う場合を例に説明すると、S3において、車体測位装置42は、表示装置30の操作情報が可搬局方式への切り換え操作されているか判断し、表示装置30の操作情報が可搬局方式への切り換え操作されていないため(S3,No)、車体測位装置42は、表示装置30の操作情報が固定局方式への切り換え操作されているか判断する(S15)。表示装置30がVRS方式への切り換え操作され、即ち表示装置30が固定局方式への切り換え操作されていないため(S15,No)、方式取得部45がVRS方式を取得し、車体測位装置42は、VRS方式に切り換わる(S14)。
【0051】
なお、車体測位装置42は、車体3と基地局100との距離に応じて基地局100に対応する複数の設定方式に切り換え可能であればよく、設定方式の切換条件及びその方法は上記構成に限定されない。
マップ作成部33による第2圃場マップMP2の作成について説明すると、図9に示すように、マップ作成部33は、切換前の第1モードで車体測位装置42が測位した第1位置FPと切換後の第2モードで車体測位装置42が測位した第2位置TPとの偏差と、第1圃場マップMP1とに基づいて第2圃場マップMP2を作成する。詳しくは、第2位置TPは、第2モードにおいて車体3を停止した状態で車体測位装置42が測位した車体3の位置である。以下の説明において、第1位置FP及び第2位置TPは、圃場Hの入口の地点とし、第1位置FPは、第1モードで測位した車体位置VP1のうち初期位置であるとして説明する。なお、第2位置TPは、第1位置FPと対応していればよく、その位置は、圃場Hの入口に限定されず、例えば圃場H外の作業機1を保管する倉庫等であってもよい。
【0052】
マップ作成部33は、図9に示すように、第1圃場マップMP1に対して第1位置FPと第2位置TPとの偏差をシフトする(ずらす)ことで第2圃場マップMP2を作成する。例えば、作業者(運転者)が表示装置30に対して所定の操作を行い、車体測位装置42が可搬局モード(第1モード)からVRSモード(第2モード)に切り換わる場合、作業者がマップ変換の操作を行うと、マップ作成部33は、図10に示すように、表示装置30の表示部31に第2マップ作成画面を表示する。第2マップ作成画面には、第1圃場マップMP1、複数の車体位置VP1、第1圃場マップMP1を作成した際のモード名、圃場名、圃場管理番号等の圃場識別情報が表示される。マップには、圃場Hを示す画像データの他に緯度、経度等の位置情報が対応付けられている。斯かる場合において、第1圃場マップMP1は、車体測位装置42が可搬局モード(第1モード)である場合に、マップ作成部33が作成し、記憶装置32が当該可搬局モードと対応付けて記憶しているマップである。
【0053】
作業者は表示装置30を操作して複数の車体位置VP1から第2位置TPに対応する第1位置FPを選択操作する。例えば、第1位置FPは、可搬局モード(第1モード)で車体測位装置42が測位した圃場Hの入口における車体3の位置であり、第2位置TPは、VRSモード(第2モード)で車体3が停止している状態で車体測位装置42が測位した圃場Hの入口における車体3の位置である。
【0054】
作業者が第1位置FPを選択操作すると、マップ作成部33は、第1位置FPの緯度と第2位置TPの緯度との偏差、第1位置FPの経度と第2位置TPとの偏差を算出し、第1圃場マップMP1に対して当該偏差をシフトすることでVRSモード(第2モード)に対応する第2圃場マップMP2を作成する。例えば、図9に示すように第1位置FPの座標が(x、y)であり、第2位置TPの座標が(x+α,y-β)である場合、マップ作成部33は、第1位置FPの緯度と第2位置TPの緯度との偏差を第2位置TPの緯度と第1位置FPの緯度の差から、第1位置FPの緯度と第2位置TPの緯度との偏差-βを算出し、第1位置FPの経度と第2位置TPの経度との偏差を第2位置TPの経度と第1位置FPの経度の差から、第1位置FPの経度と第2位置TPの経度との偏差αを算出する。これによって、マップ作成部33は、第1圃場マップMP1に対して偏差(α,-β)をシフトすることで第2圃場マップMP2を作成する。
【0055】
なお、上述した実施形態において、第1位置FP及び第2位置TPは、圃場Hの入口の地点とし、作業者が表示装置30を操作して複数の車体位置VP1から第2位置TPに対応する第1位置FPを選択操作する例について説明したが、マップ作成部33は、第1圃場マップMP1に対して第1位置FPと当該第1位置FPに対応する第2位置TPとの偏差をシフトする(ずらす)ことで第2圃場マップMP2を作成することができればよく、その方法は上記方法に限定されない。例えば、記憶装置32が第1位置FPの位置情報を記憶し、当該第1位置FPと第2位置TPとの偏差を保持して、マップ作成部33は、第1圃場マップMP1に対して当該偏差をシフトする(ずらす)ことで第2圃場マップMP2を作成してもよい。第1位置FP及び第2位置TPが倉庫である場合を例に説明すると、まず、作業機1が倉庫において停止している際に、作業者が選択部材113を操作すると、方式取得部45は、選択部材113の操作情報に基づいて設定方式(第2モード)を取得する。
【0056】
方式取得部45が第2モードを取得すると、車体測位装置42は、切換前の第1モードにおいて第1位置FPを測位し、例えば再起動を行って第1モードから第2モードに切り換わる。車体測位装置42が第2モードに切り換わると、第2モードにおいて第2位置TPの測位を開始する。車体測位装置42が第2位置TPの測位を開始すると、表示部31は、例えば所定の警告画面を表示し、又は音声等によって作業者に作業機1を移動させないよう警告を行う。車体測位装置42が第2位置TPの測位を完了すると、表示部31は、所定の警告画面を表示し、又は音声等によって作業者に第2位置TPの測位が完了した旨の報知を行う。
【0057】
表示部31が上記完了した旨の報知を行うと、マップ作成部33は、第1位置FPの緯度と第2位置TPの緯度との偏差、第1位置FPの経度と第2位置TPとの偏差を算出し、第1圃場マップMP1に対して当該偏差をシフトすることで第2モードに対応する第2圃場マップMP2を作成する。
また、上述した説明においては、車体測位装置42が可搬局モード(第1モード)からVRSモード(第2モード)に切り換わる場合を例に説明したが、マップ作成部33は、切換前の第1モードで車体測位装置42が測位した第1位置FPと切換後の第2モードで車体測位装置42が測位した第2位置TPとの偏差と、第1圃場マップMP1とに基づいて第2圃場マップMP2を作成すればよく、マップ作成部33は、他のモードの切換においても、上述した例と同様の手順で第2圃場マップMP2を作成可能である。
【0058】
第2圃場マップMP2における位置情報(緯度、経度)は、少なくとも第2モードと対応づけて表示装置30の記憶装置32に記憶される。表示装置30は、第1圃場マップMP1と第2圃場マップMP2とを切り換えて表示する。また、表示装置30は、切換表示した圃場マップに走行予定ルートLを作成可能である。
図2に示すように、表示装置30は、走行予定ルートLを作成するルート作成部35を有している。ルート作成部35は、例えば、表示装置30に設けられた電気・電子部品、表示装置30に組み込まれたプログラム等から構成されている。ルート作成部35は、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2の少なくとも一方に作業機1が自動走行を行うための図11に示すような走行予定ルートLの作成を行う。本実施形態において、ルート作成部35は、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2の両方に走行予定ルートLを作成可能である。
【0059】
作業者(運転者)が表示装置30に対して所定の操作を行うと、ルート作成部35は、図12に示すようにルート設定画面M3を表示する。ルート設定画面M3は、車体測位装置42のモード及び選択されているマップに応じて第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2のいずれか一方を表示する。ルート設定画面M3には、例えば、枕地幅W1を入力する枕地幅入力部110と、作業幅W2を入力する作業幅入力部111と、入力された枕地幅W1及び作業幅W2を確定させる決定ボタン112と、が表示されている。作業者(運転者)が表示装置30に対して操作を行い、枕地幅入力部110に枕地幅W1を入力した後、決定ボタン112を選択すると、ルート作成部35は、圃場マップ(第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2のいずれか一方)に、枕地エリアA1を除く作業エリアA2を表示する。
【0060】
また、作業者(運転者)が表示装置30に対して操作を行い、作業幅入力部111に作業幅W2を入力した後、決定ボタン112を選択すると、ルート作成部35は、作業幅W2に基づいて、所定の圃場H、即ち、圃場マップ(第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2のいずれか一方)に複数の単位作業区画A3n(n:単位作業区画A3の個数)を作成する。具体的には、ルート作成部35は、図13Aに示すように、作業エリアA2を作業幅W2で縦方向又は横方向に区切ることによって、作業装置2で作業を行う複数の単位作業区画A3nを作業エリアA2内に作成する。即ち、ルート作成部35は、作業幅W2と同一の幅の単位作業区画A3を作業エリアA2内に複数作成する。なお、図13Bに示すように、ルート作成部35は、作業幅W2からオーバラップ幅を除した幅の単位作業区画A3nを作業エリアA2内に複数作成してもよい。オーバラップ幅は、例えばルート設定画面M3で入力することが可能である。
【0061】
単位作業区画A3の設定が完了すると、ルート作成部35は、走行予定ルートLの作成を行う。ルート作成部35は、図11に示すように、単位作業区画A3毎に車体3が直進する直進部(直進ルート)L1を作成する。ルート作成部35は、枕地エリアA1に車体3が旋回する旋回部(旋回ルート)L2を作成する。ルート作成部35が作成した走行予定ルートLは、選択されている圃場マップ(第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2のいずれか一方)と対応付けられて表示装置30の記憶装置32に記憶される。
【0062】
なお、ルート作成部35は、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2のいずれか一方に走行予定ルートLを作成可能であればよく、上述した手順は例示に過ぎず、他の手順を採用してもよい。
上述した作業機1は、車体3と、基地局100の基準位置Xを取得する基準取得部41と、基地局100に対応する第1モードと測位衛星Gからの衛星信号と基準取得部41が取得した基準位置Xとに基づいて、第1位置FPを測位する車体測位装置42と、車体測位装置42が測位した第1位置FPに基づいて、第1圃場マップMP1を作成可能なマップ作成部33と、を備え、車体測位装置42は、車体3を停止した状態で、第1モードとは異なる第2モードに基づいて第2位置TPを測位し、マップ作成部33は、第1位置FPと第2位置TPとの偏差と、第1圃場マップMP1とに基づいて第1圃場マップMP1とは異なる第2圃場マップMP2を作成する。上記構成によれば、第2モードにおいてマップ作成部33は、第1圃場マップMP1を利用し、偏差によって位置ズレを補正して第2圃場マップMP2を作成することができる。これにより、第1モードで作成した第1圃場マップMP1を第2モードに引き継ぎさせることができる。
【0063】
また、マップ作成部33は、第1圃場マップMP1に対して偏差をシフトすることで第2圃場マップMP2を作成する。上記構成によれば、第1モードと第2モードとの間で生じる位置ズレをシフト補正することで、第2モードにおいても、第1圃場マップMP1の情報を簡単に活用することができる。
また、第1モードは、圃場Hに設置された圃場測位装置100Aと車体測位装置42との補正情報に基づいて第1位置FPを求める可搬局モードであり、第2モードは、固定基地局100Bに定められた絶対位置X1に基づいて定められた仮想基準点Yによって第2位置TPを演算するVRSモードである。上記構成によれば、作業機1は、圃場Hに圃場測位装置100Aを設置していなくとも第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0064】
また、第1モードは、圃場Hに設置された圃場測位装置100Aと車体測位装置42との補正情報に基づいて第1位置FPを求める可搬局モードであり、第2モードは、固定基地局100Bの絶対位置X1から第2位置TPを演算する固定局モードである。上記構成によれば、作業機1は、固定基地局100Bの有効範囲内にある場合、圃場Hに圃場測位装置100Aを設置していなくとも第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0065】
また、第1モードは、固定基地局100Bに定められた絶対位置X1に基づいて定められた仮想基準点Yによって第1位置FPを演算するVRSモードであり、第2モードは、圃場Hに設置された圃場測位装置100Aと車体測位装置42との補正情報に基づいて第2位置TPを求める可搬局モードである。上記構成によれば、可搬基地局100Aの有効範囲内にある場合、作業機1は、より高精度で第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0066】
また、第1モードは、固定基地局100Bに定められた絶対位置X1に基づいて定められた仮想基準点Yによって第1位置FPを演算するVRSモードであり、第2モードは、固定基地局100Bの絶対位置X1から第2位置TPを演算する固定局モードである。上記構成によれば、作業機1は、固定基地局100Bの有効範囲内にある場合、高精度で第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0067】
また、第1モードは、固定基地局100Bの絶対位置X1から第1位置FPを演算する固定局モードであり、第2モードは、圃場Hに設置された圃場測位装置100Aと車体測位装置42との補正情報に基づいて第2位置TPを求める可搬局モードである。上記構成によれば、可搬基地局100Aの有効範囲内にある場合、作業機1は、より高精度で第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0068】
また、第1モードは、固定基地局100Bの絶対位置X1から第1位置FPを演算する固定局モードであり、第2モードは、固定基地局100Bに定められた絶対位置X1に基づいて定められた仮想基準点Yによって第1位置FPを演算するVRSモードである。上記構成によれば、固定基地局100Bの有効範囲外にある場合であっても、作業機1は、第1圃場マップMP1を第2圃場マップMP2として利用することができる。
【0069】
また、第1圃場マップMP1と第2圃場マップMP2とを切り換えて表示する表示装置30を備えている。上記構成によれば、作業者は、第1圃場マップMP1と第2圃場マップMP2との切り換わりを容易に認識することができる。
また、表示装置30は、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2の少なくとも一方に走行予定ルートLを作成するルート作成部35を備えている。上記構成によれば、ルート作成部35は、第1圃場マップMP1及び第2圃場マップMP2の一方で走行予定ルートLを作成することで、他方で当該走行予定ルートLを利用することができる。
【0070】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上述した実施形態において作業機1は、走行予定ルートLに基づいて自動運転を行うが、作業機1は、走行予定ルートLに基づいて走行速度の制御は行わず、自動操舵を行うような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 作業機(トラクタ)
3 車体
30 表示装置
33 マップ作成部
35 ルート作成部
41 基準取得部
42 車体測位装置
100 基地局
100A 可搬基地局
100B 固定基地局
FP 第1位置
G 測位衛星
H 圃場
L 走行予定ルート
MP1 第1圃場マップ
MP2 第2圃場マップ
TP 第2位置
X 基準位置
X1 絶対位置
Y 仮想基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14