(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】タイヤ力表示システムおよびタイヤ力表示方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C19/00 J
B60C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2019218323
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】榊原 一泰
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-121274(JP,A)
【文献】特開2008-247064(JP,A)
【文献】特開2009-234306(JP,A)
【文献】国際公開第2005/016670(WO,A1)
【文献】特開2005-014697(JP,A)
【文献】特開2006-142991(JP,A)
【文献】特開2014-125161(JP,A)
【文献】特開2017-001630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに配設されたセンサによって計測されるタイヤの物理量を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報取得部によって取得したタイヤの物理量を演算モデルに入力してタイヤ力および限界タイヤ力を算出するタイヤ力算出部と、
前記タイヤ力算出部により算出した前記タイヤ力および前記限界タイヤ力を表示する表示部と、
を備えることを特徴とするタイヤ力表示システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記タイヤ力および限界タイヤ力を図形によって表すことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ力表示システム。
【請求項3】
タイヤの摩耗状態を推定する摩耗推定部を更に備え、
前記表示部は、前記摩耗推定部により推定したタイヤの摩耗状態を表示することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ力表示システム。
【請求項4】
前記表示部は、タイヤの摩耗状態を濃淡または色によって表すことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ力表示システム。
【請求項5】
前記表示部は、車両と無線によって通信接続された端末装置に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ力表示システム。
【請求項6】
タイヤに配設されたセンサによって計測されるタイヤの物理量を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記センサ情報取得ステップによって取得したタイヤの物理量を演算モデルに入力してタイヤ力および限界タイヤ力を算出するタイヤ力算出ステップと、
前記タイヤ力算出ステップにより算出した前記タイヤ力および前記限界タイヤ力を表示する表示ステップと、
を備えることを特徴とするタイヤ力表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ力表示システムおよびタイヤ力表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態を搭乗者等に対して知得させるために、車両の走行速度、エンジン温度等の各種装置の状態などを表示するシステムが車両に搭載されている。車両の走行速度などを表示するインジケータは、主として運転者の前方のダッシュボードに配置されており、運転者が運転しながら表示された情報を目視し易くなっている。
【0003】
特許文献1には、従来の車両の情報を表示する無線モバイルデバイスに表示するシステムが記載されている。無線モバイルデバイスは、エンジン性能や運転操作、走行速度、位置、気象情報を含む車両性能データを取得し、表示画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、車両から離れた位置に存在する無線モバイルデバイスに車両性能データが表示される。本発明者は、車両に装着されたタイヤで発生しているタイヤ力に関する情報を表示することによって、タイヤの挙動について認識性が高まり、例えばタイヤが路面に対してグリップまたはスリップしているかなど視覚的に認識し易くなることに気付いた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤ力に関する情報を表示してタイヤの挙動について認識性を高めることができるタイヤ力表示システムおよびタイヤ力表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はタイヤ力表示システムである。タイヤ力表示システムは、タイヤに配設されたセンサによって計測されるタイヤの物理量を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報取得部によって取得したタイヤの物理量を演算モデルに入力してタイヤ力および限界タイヤ力を算出するタイヤ力算出部と、前記タイヤ力算出部により算出した前記タイヤ力および前記限界タイヤ力を表示する表示部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様はタイヤ力表示方法である。タイヤ力表示方法は、タイヤに配設されたセンサによって計測されるタイヤの物理量を取得するセンサ情報取得ステップと、前記センサ情報取得ステップによって取得したタイヤの物理量を演算モデルに入力してタイヤ力および限界タイヤ力を算出するタイヤ力算出ステップと、前記タイヤ力算出ステップにより算出した前記タイヤ力および前記限界タイヤ力を表示する表示ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤ力に関する情報を表示してタイヤの挙動について認識性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るタイヤ力表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】演算モデルの学習について説明するための模式図である。
【
図3】タイヤ力Fおよび限界タイヤ力について説明するための模式図である。
【
図4】サーバ装置および端末装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】表示画像の表示処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図6を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るタイヤ力表示システム100の機能構成を示すブロック図である。タイヤ力表示システム100は、タイヤ10に配設されたセンサ20によってタイヤ10で発生している加速度、空気圧および温度等のタイヤ物理量を車両の走行時に計測する。
【0013】
タイヤ力表示システム100は、取得したタイヤ10の物理量を演算モデル32aに入力し、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する。限界タイヤ力は、タイヤ10が路面上で滑り始める直前のタイヤ力であり、タイヤ10の鉛直方向の荷重に、路面との最大摩擦係数を掛けた値である。
【0014】
演算モデル32aは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルである。演算モデル32aは、タイヤ10において実際に計測したタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を教師データとし、演算の実行と演算モデルの更新による学習を繰り返すことによって精度が高められる。
【0015】
またタイヤ力表示システム100は、タイヤ10の摩耗状態を推定する。タイヤ力表示システム100は、タイヤ力F、限界タイヤ力および摩耗状態を含むタイヤ情報をサーバ装置7へ送出する。サーバ装置7は、タイヤ力F、限界タイヤ力および摩耗状態を図形によって表した画像を生成して端末装置8へ配信し、端末装置8で当該画像を表示する。また、サーバ装置7はタイヤ情報を記憶して端末装置8へ送出し、端末装置8においてタイヤ力F、限界タイヤ力および摩耗状態を図形によって表した画像を生成し、当該画像を表示するようにしてもよい。
【0016】
タイヤ力表示システム100は、タイヤ力F、限界タイヤ力および摩耗状態を画像で表示することによってタイヤ10の挙動についての視認性を向上させる。
【0017】
タイヤ力表示システム100は、センサ20およびタイヤ力推定装置30を備える。センサ20は、加速度センサ21、圧力センサ22および温度センサ23等を有し、加速度、タイヤ空気圧およびタイヤ温度などタイヤ10における物理量を計測する。センサ20は、タイヤ10に生じる歪を計測するために歪ゲージを有していてもよい。これらのセンサは、タイヤ10の物理量として、タイヤ10の変形や動きに関わる物理量を計測している。
【0018】
加速度センサ21は、タイヤ10のゴム材料等で形成されたタイヤ本体部分またはタイヤ10の一部をなすホイール15に配設されており、タイヤ10とともに機械的に運動しつつ、タイヤ10に生じる加速度を計測する。加速度センサ21は、タイヤ10の周方向、軸方向および径方向の3軸における加速度を計測する。圧力センサ22および温度センサ23は、例えばタイヤ10のエアバルブへの装着やホイール15への固定によって配設されており、それぞれタイヤ10の空気圧および温度を計測する。また圧力センサ22および温度センサ23は、タイヤ10のインナーライナー等に配設されていてもよい。
【0019】
センサ20は、タイヤ10における加速度および歪、タイヤ空気圧、並びにタイヤ温度などタイヤ10の物理量を計測しており、計測したデータをタイヤ力推定装置30へ出力する。タイヤ力推定装置30は、センサ20で計測されたデータに基づいてタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を推定する。
【0020】
タイヤ10は、各タイヤを識別するために、例えば固有の識別情報が付与されたRFID11等が取り付けられていてもよい。例えば、タイヤ10に取り付けたRFID11の固有情報に応じて、演算モデル32aを予め用意したデータ群の中から選択して設定してもよいし、またはサーバ装置などで提供されるデータベースから選択するようにしてもよい。また、RFID11の固有情報に対してタイヤ10の仕様が記録され、更にタイヤ10の仕様に応じた演算モデル32aがデータベースで提供されてもよい。RFID11の固有情報からタイヤ10の仕様を呼び出し、演算モデル32aを設定してもよいし、呼び出したタイヤ10の仕様に応じた演算モデル32aをデータベースから選択するようにしてもよい。
【0021】
タイヤ力推定装置30は、センサ情報取得部31、タイヤ力算出部32、摩耗推定部33、記憶部34および通信部35を有する。タイヤ力推定装置30は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置である。タイヤ力推定装置30における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
センサ情報取得部31は、無線通信等によりセンサ20で計測された加速度、タイヤ空気圧およびタイヤ温度等のタイヤ物理量を取得する。タイヤ力算出部32は、演算モデル32aおよび補正処理部32bを有する。タイヤ力算出部32は、センサ情報取得部31から入力されたタイヤ物理量を演算モデル32aに入力し、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する。
図1に示すように、タイヤ力Fは、タイヤ10の前後方向の前後力Fx、横方向の横力Fy、および鉛直方向の荷重Fzの3軸方向成分を有する。
【0023】
演算モデル32aは、ニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。演算モデル32aは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)型であり、その原型であるいわゆるLeNetで使用された畳み込み演算およびプーリング演算を備える学習型モデルなどを用いる。演算モデル32aは、入力層に入力されたデータに対して畳み込み演算およびプーリング演算などを用いて特徴量を抽出して中間層の各ノードへ伝達し、中間層の各ノードに対して線形演算等を実行して全結合し、出力層の各ノードへ結び付ける。全結合では、線形演算に加えて、活性化関数などを用いて非線形演算を実行するようにしてもよい。演算モデル32aの出力層の各ノードには、3軸方向のタイヤ力Fおよび限界タイヤ力が出力される。
【0024】
図2は演算モデル32aの学習について説明するための模式図である。演算モデル32aへの入力データは、センサ情報取得部31によって取得されたタイヤ物理量のほか、外部領域情報等を用いることができる。タイヤ物理量には、加速度、タイヤ空気圧、タイヤ温度およびタイヤに生じる歪などを用いる。外部領域情報としては、天候、気温および降水量などの気象情報、並びに、路面の凹凸、温度および凍結状態等の路面情報を用いる。入力データは、これらの他、車両に搭載されたデジタルタコグラフのデータによる車重、速度などを用いてもよい。
【0025】
演算モデル32aの学習の際には、演算結果としてのタイヤ力Fおよび限界タイヤ力と、教師データとを比較して演算モデル32aの更新を繰り返すことによって演算モデル32aの精度が高められる。演算モデル32aは、基本的にタイヤ10の仕様に応じて例えばモデル内の全結合部における階層数等の構成や重みづけが変わるが、各仕様のタイヤ10(ホイールを含む)での回転試験において演算モデル32aの学習を実行することができる。
【0026】
但し、厳密にタイヤ10の仕様ごとに演算モデル32aの学習を実行する必要性はない。例えば乗用車用タイヤ、トラック用タイヤなどのタイプ別に演算モデル32aを学習させて構築し、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力が一定の誤差範囲内で推定されるようにすることで、複数の仕様に含まれるタイヤ10に対して1つの演算モデル32aを共用し、演算モデル数を低減してもよい。また演算モデル32aは、実際の車両にタイヤ10を装着し、該車両を試験走行させて演算モデル32aの学習を実行することもできる。タイヤ10の仕様には、例えばタイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、タイヤ強度、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤの性能に関する情報が含まれる。
【0027】
図3は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力について説明するための模式図である。
図3では、横軸にタイヤ力Fの前後力Fx、縦軸にタイヤ力Fの横力Fyをとり、原点を中心とする円で限界タイヤ力を示している。
図3に示すタイヤ力F1およびF2では、限界タイヤ力よりも小さくタイヤ10がスリップすることなく車両が走行できる。タイヤ力Fが限界タイヤ力よりも大きくなると、タイヤ10は路面に対してスリップした状態となる。
【0028】
補正処理部32bは、タイヤ10の状態に基づいて演算モデル32aを補正する。タイヤ10は、車両への装着時にアライメント誤差が生じ、経時的にゴム硬度等の物性値が変化し、走行することによって摩耗が進行する。アライメント誤差、物性値や摩耗等の要素を含むタイヤ10の状態が使用状況によって変化し、演算モデル32aによるタイヤ力Fおよび限界タイヤ力の算出に誤差が生じる。補正処理部32bは、演算モデル32aの誤差を低減するためにタイヤ10の状態に応じた補正項を演算モデル32aに付加する処理を行う。
【0029】
摩耗推定部33は、タイヤ10の摩耗状態を推定する。タイヤ10の摩耗状態とは、タイヤ10の摩耗量、または摩耗限界までの残量(例えば溝深さ残量、トレッドの厚み残量など)である。タイヤ10の摩耗状態はタイヤ10のトレッドに設けられた溝深さやタイヤ10の半径を例えば光学的方法による寸法計測装置(図示略)を用いて計測することによって推定される。光学的方法による寸法計測は、例えばタイヤ10の画像に基づく画像認識によって対象の寸法を計測する手法や、レーザ光を用いた寸法計測手法など公知の技術を用いることができる。
【0030】
また摩耗推定部33は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する演算モデル32aと同様に、タイヤ10の摩耗量を算出する演算モデル(図示略)を構築し、摩耗量を推定するようにしてもよい。当該演算モデルは、演算モデル32aと同様に、センサ20によって計測されたタイヤ物理量を入力として、出力である摩耗量に関する学習を繰り返すことで、摩耗量の推定精度を高めることができる。
【0031】
記憶部34は、ハードディスク等の記憶装置で構成されており、タイヤ力算出部32によって算出されたタイヤ力Fおよび限界タイヤ力、並びに摩耗推定部33によって推定されたタイヤ10の摩耗状態を記憶する。通信部35は、記憶部34に記憶されたタイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を含むタイヤ情報をサーバ装置7へ送出する。尚、通信部35は無線等によって通信ネットワーク9と通信接続し、サーバ装置7、更には端末装置8との間で通信する。
【0032】
図4は、サーバ装置7および端末装置8の機能構成を示すブロック図である。サーバ装置7は、タイヤ力推定装置30が送出したタイヤ情報を通信ネットワーク9を介して受信する。端末装置8は、タイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を表示する。
【0033】
サーバ装置7は、通信部71、記憶部72および表示画像生成部73を備える。通信部71は、通信ネットワーク9を介して車両から送信されるタイヤ情報を受信する。記憶部72は、ハードディスク等の記憶装置で構成されており、通信部71によって受信したタイヤ情報を記憶する。
【0034】
表示画像生成部73は、タイヤ情報に含まれるタイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を図形化して表示画像を生成する。
図5は表示画像40の一例を示す模式図である。表示画像40は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を図形化したタイヤ力画像41、およびタイヤ10の摩耗量を図形化した摩耗画像42を含む。
【0035】
表示画像生成部73は、立体、面、線、点などの集合としての図形によって、タイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を図形化し、タイヤ10の位置関係や、抽象化した形状などの概念も表示画像に含まれている。タイヤ力画像41は、視覚化のため、横軸にタイヤ力Fの横力Fyをとり、縦軸にタイヤ力Fの前後力Fxをとっている。また原点を中心とする円で限界タイヤ力を示している。限界タイヤ力の大きさは、タイヤ力Fの鉛直成分の荷重Fzで決まるが、タイヤ力画像41では円の大きさで表されている。タイヤ力Fは現時点での値を、プロットした点で表している。タイヤ力Fを表す点の位置、および限界タイヤ力を表す円の大きさは、タイヤ挙動に合わせてリアルタイムで変化する。
【0036】
摩耗画像42は、タイヤ10を模式的に表した長方形を濃淡を付けて塗りつぶすことによって摩耗状態を表す。例えば摩耗量が少ない摩耗状態に対し濃淡を薄くし、摩耗量が多い摩耗状態に対し濃く表す、またはその逆で表してもよい。摩耗画像42は、長方形を塗りつぶす色の変化によって摩耗状態を表すようにしてもよい。また、表示画像40は、中央に車両を模式化して表すことによってタイヤ10の位置関係を表している。タイヤ力画像41および摩耗画像42は、
図5に示す例に限られず、タイヤ力Fの位置、限界タイヤ力の大きさ、タイヤ10の摩耗状態を示す他の表現方法によって表されていてもよい。
【0037】
表示画像生成部73で生成された表示画像40は、通信部71を介して端末装置8へ配信される。端末装置8は通信部81および表示部82を備える。通信部81は通信ネットワーク9を介して表示画像40を受信する。表示部82は、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成されており、通信部81で受信した表示画像40を表示する。
【0038】
端末装置8は、タイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を含むタイヤ情報を受信し、表示画像生成部83によって表示画像40を生成するようにしてもよい。この場合、サーバ装置7は、表示画像生成部73が不要となり、記憶部72に記憶したタイヤ情報を配信すればよい。また、端末装置8は、サーバ装置7を経由せずに、タイヤ力推定装置30が送出したタイヤ情報を通信部81で受信し、表示画像生成部83で表示画像40を生成して表示部82で表示するようにしてもよい。また、
図1に示すタイヤ力推定装置30内に表示画像生成部、および表示部を設け、車両内で表示画像を表示するようにしてもよい。
【0039】
次にタイヤ力表示システム100の動作を説明する。
図6は、表示画像40の表示処理の手順を示すフローチャートである。タイヤ力推定装置30のセンサ情報取得部31は、センサ20で計測されたタイヤ10における加速度、タイヤ空気圧およびタイヤ温度などのタイヤ物理量の取得を開始する(S1)。
【0040】
タイヤ力算出部32は、タイヤ物理量を演算モデル32aに入力し、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する(S2)。摩耗推定部33は、タイヤ10の摩耗状態を推定する(S3)。タイヤ力推定装置30とサーバ装置7との間で、タイヤ力F、限界タイヤ力およびタイヤ10の摩耗状態を含むタイヤ情報を送受信する(S4)。サーバ装置7の表示画像生成部73は、受信したタイヤ情報に基づいてタイヤ力画像41および摩耗画像42を含む表示画像40を生成する(S5)。端末装置8の表示部82は、サーバ装置7から受信した表示画像40を表示し(S6)、処理を終了する。
【0041】
タイヤ力表示システム100は、センサ20によって計測されたタイヤ物理量に基づいて算出されるタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を表示部82に表示し、タイヤ10の挙動について認識性を高めることができる。タイヤ力表示システム100は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を
図5に示すように図形化して表すことによって、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力の認識性を高めることができる。
【0042】
またタイヤ力表示システム100は、タイヤ10の摩耗状態を表示することによって、タイヤ10の摩耗状態を含むタイヤ10の挙動の認識性を高めることができる。タイヤ力表示システム100は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を
図5に示すように図形化し濃淡または色で表すことによって、タイヤ10の摩耗状態の認識性を高めることができる。
【0043】
タイヤ力表示システム100は、通信ネットワーク9を介して通信接続される端末装置8の表示部82にタイヤ力画像41および摩耗画像42を含む表示画像40を表示することで、車両から離れた位置で車両におけるタイヤ10の挙動を視認することができる。
【0044】
タイヤ力表示システム100は、例えば、自動車レースで走行している車両に装着されたタイヤ10のタイヤ力F等を画像として表示することで、サーキットのストレートやコーナーにおけるタイヤ10の挙動を視認し易くする。またタイヤ力表示システム100は、一般の道路を走行している車両に装着されたタイヤ10のタイヤ力F等を画像として表示することでタイヤ10の挙動の視認性を高める。タイヤ力表示システム100は、タイヤ10の挙動の視認性を向上することによって、走行ルートにおける運転方法の改善、タイヤのセッティング、運転者の運転技能の教練、タイヤ10の挙動に関するコミュニケーション等を支援することができる。
【0045】
次に実施形態に係るタイヤ力表示システム100の特徴について説明する。
実施形態に係るタイヤ力表示システム100は、センサ情報取得部31、タイヤ力算出部32および表示部82を備える。センサ情報取得部31は、タイヤ10に配設されたセンサ20によって計測されるタイヤの物理量を取得する。タイヤ力算出部32は、センサ情報取得部31によって取得したタイヤの物理量を演算モデル32aに入力してタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する。表示部82は、タイヤ力算出部32により算出したタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を表示する。これにより、タイヤ力表示システム100は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を表示部82に表示し、タイヤ10の挙動について認識性を高めることができる。
【0046】
また表示部82は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を図形によって表す。これによって、タイヤ力表示システム100は、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力の認識性を高めることができる。
【0047】
タイヤ10の摩耗状態を推定する摩耗推定部33を更に備え、表示部82は、摩耗推定部33により推定したタイヤ10の摩耗状態を表示する。これにより、タイヤ力表示システム100は、タイヤ10の摩耗状態を含むタイヤ10の挙動の認識性を高めることができる。
【0048】
また表示部82は、タイヤ10の摩耗状態を濃淡または色によって表す。これにより、タイヤ力表示システム100は、タイヤ10の摩耗状態の認識性を高めることができる。
【0049】
また表示部82は、車両と無線によって通信接続された端末装置8に設けられている。これにより、タイヤ力表示システム100は、車両から離れた位置で車両におけるタイヤ10の挙動を視認することができる。
【0050】
タイヤ力表示方法は、センサ情報取得ステップ、タイヤ力算出ステップおよび表示ステップを備える。センサ情報取得ステップは、タイヤ10に配設されたセンサ20によって計測されるタイヤの物理量を取得する。タイヤ力算出ステップは、センサ情報取得ステップによって取得したタイヤの物理量を演算モデル32aに入力してタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を算出する。表示ステップは、タイヤ力算出ステップにより算出したタイヤ力Fおよび限界タイヤ力を表示する。このタイヤ力表示方法によれば、タイヤ力Fおよび限界タイヤ力を表示し、タイヤ10の挙動について認識性を高めることができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0052】
10 タイヤ、 20 センサ、 31 センサ情報取得部、
32 タイヤ力算出部、 32a 演算モデル、 33 摩耗推定部、
82 表示部、 100 タイヤ力表示システム。