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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドの吐出検査方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20230904BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230904BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230904BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B41M5/52 110
B32B5/18 101
B32B27/18 Z
B32B27/20 Z
B41J2/01 501
B41M5/50 120
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019227546
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021070309
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019195830
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】志野 成樹
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-276783(JP,A)
【文献】特開2012-051223(JP,A)
【文献】特開2008-246988(JP,A)
【文献】特開平11-078216(JP,A)
【文献】特開平10-029368(JP,A)
【文献】特開2007-125729(JP,A)
【文献】特開2002-019278(JP,A)
【文献】国際公開第00/041889(WO,A1)
【文献】特開2005-280341(JP,A)
【文献】特開平11-208103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、微粒子、樹脂バインダー及び、常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を少なくとも含有する多孔質層を有するインクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層上に、揮発性溶媒を主成分とし、色材を実質的に含有しないテスト用インクを印字し、印字部分の痕跡を画像データとし、この痕跡を画像処理ソフトウエアにより検出するインクジェットヘッドの吐出検査方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドが有するノズルの吐出状態を検査するためのインクジェットヘッドの吐出検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドを有する製造装置を用い、液晶や有機EL等のディスプレイパネル、グルコースセンサーなどの各種センサー、ウェアラブルデバイス、レンズや導光板等の光学部品といった各種デバイスの製造が検討されている。例えば、特開2003-191462号公報においては、インクジェットヘッドを有する描画装置を用いたカラーフィルタや有機ELの製造方法、スペーサ形成方法、金属配線形成方法、レンズ形成方法、レジスト形成方法及び光拡散体形成方法等が開示されている。
【0003】
このような各種デバイスを製造する描画装置に用いられるインクは、色材を含有するカラーインクのみならず、UV硬化インク、半導体インク、金属インク、絶縁体インク、誘電体インク、導電性高分子インク、樹脂インク、液晶インク等、様々な機能性物質を含有する機能性インクが使用される。また各種デバイスを製造するために用いられる描画装置においては、特定の機能を有する一種類のインクのみを吐出することが多く、別種類のインクと交換することは、コンタミネーションによる品質低下等の問題が発生するため、通常行われることはない。
【0004】
一般的にインクジェットヘッドは製造後にノズルからの吐出検査を行い、欠陥が無いことを確認した後に、描画装置メーカーへと納入される。インクジェットヘッドの吐出検査は、インクジェット装置検査用メディアに対し、個々のノズルに対応したドットあるいはドットの集合体からなるラインなどのパターンを印刷することにより行われる。ノズルに吐出不良がある場合には前記したパターンなどに欠落が生じるため、この状態をデジタルカメラ等を利用してデータ化し、機械的に検査する。例えば特開2014-94534号公報(特許文献1)には、機能液を浸透させる浸透層と、該浸透層の一方の面に形成された反射層を有する検査用記録媒体に対して、吐出された機能液のドット形状を撮像する方法が開示されている。しかしながら、このような検査方法では、各種デバイスを製造するために用いられるインクとは異なる機能液で検査することとなり、実際に各種デバイスを製造する際に、コンタミネーションによる性能低下等が発生してしまうという問題があった。
【0005】
上記したコンタミネーションが生じても問題が生じないインクとして、各種デバイスの製造に用いるカラーインクや機能性インクが含有する揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクが例示される。
【0006】
しかしながら、上記した揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合、従来のインクジェット装置検査用メディアでは、吐出検査が困難であるという問題があった。
【0007】
例えば、特開2006-88466号公報(特許文献2)には、無色あるいは淡色インクの付着部と非付着部の濃度差が0.02以上で、かつ、L表色系におけるΔEが10.0以下である液体確認用フィルムを用いる方法が開示されており、該液体確認用フィルムとしては、フィルムの表面をサンドペーパーで粗くしたものが記載されている。特許文献1には、インクの浸透層と、該浸透層の一方の面に、光を反射させる反射層を有する検査用記録媒体が開示されており、該浸透層はシリカやアルミナ等を含有する透明な空隙層であり、反射層はアルミニウムや銀等を蒸着することで浸透層上に形成される。また特開2014-113797号公報(特許文献3)には、インクを吸収することにより膨潤し、厚さ方向に隆起するインク受容層を備えた検査用メディアが開示されている。しかし上記した液体確認用フィルム、検査用記録媒体、あるいは検査用メディアに対し、揮発性溶媒を主成分とし色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いて吐出検査を行っても、該テスト用インクが揮発し乾燥した後に何ら痕跡が残らないため、塗出検査を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-94534号公報
【文献】特開2006-88466号公報
【文献】特開2014-113797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合においても、適切な吐出検査を行う事が可能な、インクジェットヘッドの吐出検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
透明支持体上に、微粒子、樹脂バインダー及び、常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を少なくとも含有する多孔質層を有するインクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層上に、揮発性溶媒を主成分とし、色材を実質的に含有しないテスト用インクを印字し、印字部分の痕跡を画像データとし、この痕跡を画像処理ソフトウエアにより検出するインクジェットヘッドの吐出検査方法
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合においても、適切な吐出検査を行う事が可能な、インクジェットヘッドの吐出検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のインクジェットヘッドの吐出検査方法に用いるインクジェット装置検査用メディアは、透明支持体上に、微粒子、樹脂バインダー及び、常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を少なくとも含有する多孔質層を有する。
【0014】
本発明のインクジェット装置検査用メディアを用いた、インクジェットヘッドの吐出検査方法としては、該インクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層上に、揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを印字し、印字部分の痕跡を画像データとし、この痕跡を画像処理ソフトウエアにより検出する
【0015】
本発明においてインクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層は、インクジェットヘッドから吐出された揮発性溶媒を主成分として含有するテスト用インクを速やかに吸収することができる。そして該インクが揮発すると、該インクを吸収していた部分の多孔質層は全光線透過率が向上し、かつ該インクを吸収していた部分の周辺部では全光線透過率が低下する現象が発現する。
【0016】
上記した現象について、更に詳細に説明する。本発明においてインクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層は、常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を含有する。該脂肪族化合物は、多孔質層の全光線透過率を変化させる効果を有しており、含有量が増加するに従い全光線透過率が低下する傾向を有する。
【0017】
本発明においてインクジェット装置検査用メディアに対し、インクジェットヘッドから一乃至複数個のテスト用インクの液滴が吐出され、ドットが形成されると、該インク液滴は多孔質層内部へ吸収され、揮発性溶媒が多孔質層に含まれる脂肪族化合物、すなわち常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を溶解する。脂肪族化合物が溶解された揮発性溶媒はドットの周囲へ多孔質層内部を拡散すると同時に、ドット部及び拡散したドット周辺部より揮発が進行する。これによりドット中の脂肪族化合物が減少し(ドット中心部の全光線透過率は高くなり)、ドット周辺部は脂肪族化合物が増加し(ドット周辺部の全光線透過率は低くなり)、テスト用インクが色材等を含有せずとも、ドットの印字された痕跡がインクジェット装置検査用メディア上に生じ、テスト用インクの揮発性溶媒が揮発し乾燥した後もドットの痕跡が残存する。
【0018】
本発明において、テスト用インクが含有する揮発性溶媒としては、常温で揮発する程度の蒸気圧を有する公知の有機溶媒を例示することができる。例えば、芳香族系有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、直鎖または分岐のプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼンなどを例示することができる。ハロゲン系有機溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどを例示することができる。エーテル系有機溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、3-フェノキシトルエンなどを例示することができる。炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンなど炭素数が6以上の直鎖、または分岐鎖の、飽和または不飽和の炭化水素を例示することができる。エステル系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸オクチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどを例示することができる。ケトン系有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを例示することができる。アルコール系有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコールなどを例示することができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、テスト用インクが含有する揮発性溶媒が揮発が遅い有機溶媒である場合は、印字後のインクジェット装置検査用メディアを加熱し揮発させることも行われる。
【0019】
本発明においてテスト用インクは、上記した揮発性溶媒を主成分として含有することが好ましい。ここで主成分とは、テスト用インクの全質量に対し、上記した揮発性溶媒の占める割合が95質量%以上であることを意味し、好ましくは99質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上であり、100質量%であることが特に好ましい。揮発性溶媒以外に含まれる化合物としては、界面活性剤、ポリマーやベントナイト等のレオロジーコントロール剤(増粘剤)が例示され、色材などは実質的に含有しないテスト用インクが好適である。ここで実質的にとは、色材に代表される着色成分の含有量が0.1質量%未満であることを意味し、より好ましくは0.01質量%未満である。
【0020】
本発明においてインクジェット装置検査用メディアが有する透明支持体としては、全光線透過率が85%以上、ヘイズ値は30%以下である透明支持体が好適であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂、トリアセチルセルロース、セロファン、ナイロン、ポリスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド等の各種樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中でもコスト、汎用性の観点からトリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートから選ばれる樹脂フィルムが好ましい。
【0021】
多孔質層の透明支持体に対する接着性を改善するため、透明支持体はゼラチンや各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等を含有する公知の下塗層を有していてもよく、予め接着性を改善するための層が設けられた易接着処理品(例えば易接着処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いることも可能である。また透明支持体をコロナ処理あるいはプラズマ処理により濡れ性を改善することも好ましい。
【0022】
上記した下塗層の固形分量としては、0.5g/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/m以下、更に好ましくは0.1g/m以下である。下限は0.01g/m以上であることが望ましい。
【0023】
本発明においてインクジェット装置検査用メディアが有する多孔質層は、微粒子、樹脂バインダー及び、常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を少なくとも含有する。
【0024】
多孔質層が含有する微粒子としては、公知の微粒子を広く用いることができる。例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機微粒子、アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、スチレン/イソプレン系樹脂、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の有機微粒子が挙げられる。有機微粒子は上記した少なくとも1種以上の樹脂からなる真球状あるいは不定型の無孔質あるいは多孔質の有機微粒子等を挙げることができる。無論、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を共に含有することもできる。上記した微粒子の中でも、前記した揮発性溶媒の吸収性の観点から無機微粒子を含有することが好ましく、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物がより好ましく、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物が特に好ましい。また、インクジェット装置検査用メディアに可撓性が要求される場合には、アルミナ水和物が好適である。
【0025】
微粒子を用いて多孔質層を形成するためには、多孔質層の全固形分中に占める微粒子の割合は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。このように微粒子の割合が高い多孔質層は、テスト用インクが含有する揮発性溶媒の吸収性に優れるため、好ましい。
【0026】
上記した微粒子の中でも平均粒子径が500nm以下(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している微粒子は平均二次粒子径が500nm以下)の微粒子が好ましい。かかる微粒子を含有する多孔質層は、テスト用インクを吸収した部分では全光線透過率が向上し、かつ該インクを吸収した部分の周辺部において全光線透過率が低下した現象を、より容易に検出できるため好ましい。
【0027】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。本発明において多孔質層が含有する湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカを用いることが好ましく、沈降法シリカがより好ましい。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシール(登録商標)として、丸尾カルシウム(株)からトクシール(登録商標)、ファインシール(登録商標)として、水澤化学工業(株)からミズカシル(登録商標)として市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップジェル(登録商標)として、GCPジャパン(株)からシロイド(登録商標)、シロジェット(登録商標)として、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。
【0028】
本発明に用いられる湿式法シリカとしては、平均一次粒子径は50nm以下が好ましく、より好ましくは3~40nmであり、かつ平均二次粒子径は500nm以下である湿式法シリカが好ましく、より好ましい平均二次粒子径は20~300nmである。湿式法シリカは水性媒体中で粉砕し分散された湿式法シリカ微粒子分散液の形で使用されることが好ましい。粉砕方法としては、湿式法シリカ粒子を機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用され、これにはビーズミルなどのメディアミルを用いることが好ましい。ビーズミルは密閉されたベッセル内に充填されたビーズとの衝突により粉砕を行うものであり、ウィリー・エ・バッコーフェン社よりダイノーミルとして、淺田鉄工(株)よりグレンミル(登録商標)として、アシザワ・ファインテック(株)よりスターミル(登録商標)として市販されている。具体的にはプロペラ羽根型撹拌機、のこぎり歯状ブレード型撹拌機、ホモミキサー型撹拌機等で湿式法シリカと水性媒体を予備混合した後、メディアミルを用いて湿式法シリカを粉砕し、湿式法シリカ微粒子分散液とすることが好ましい。また更に高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を用いて粉砕し湿式法シリカ微粒子分散液とすることも好ましい。
【0029】
本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱方式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製、LA910)や動的光散乱方式の粒度分布計(例えば、大塚電子(株)製、PAR-III)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0030】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル(登録商標)、(株)トクヤマからレオロシール(登録商標)として市販されている。
【0031】
本発明において多孔質層が含有する気相法シリカの平均一次粒子径は40nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3~15nmでかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250~500m/g)のものを用いることである。
【0032】
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0033】
気相法シリカを用いた場合において、平均二次粒子径は500nm以下であることが好ましく、より好ましい平均二次粒子径は10~300nmである。気相法シリカは水性媒体中に分散された気相法シリカ微粒子分散液の形で使用される。具体的には、プロペラ羽根型撹拌機、のこぎり歯状ブレード型撹拌機、ホモミキサー型撹拌機等で気相法シリカと水性媒体を予備混合した後、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散し、気相法シリカ微粒子分散液とすることが好ましい。
【0034】
本発明において、上記した平均二次粒子径500nm以下の湿式法シリカ微粒子分散液あるいは気相法シリカ微粒子分散液の製造にあたり、分散液の高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いてもよい。例えば、特開2002-144701号公報、特開2005-1117号公報に記載されているアルカリ性化合物、またはカチオン性化合物、あるいはシランカップリング剤を用いることができるが、カチオン性化合物を用いることがより好ましい。
【0035】
上記したカチオン性化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、1~3級アミノ基や4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特にジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物が好ましく用いられる。湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオン性化合物の分子量は、2,000~10万程度が好ましく、特に2,000~3万程度が好ましい。
【0036】
本発明において多孔質層が好ましく含有するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ-アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ-アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕したものが使用できる。アルミナの平均二次粒子径は500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20~300nmである。
【0037】
本発明において多孔質層が好ましく含有するアルミナ水和物はAl・nHO(n=1~3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、一般にアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。アルミナ水和物の平均二次粒子径は好ましくは500nm以下、より好ましくは20~300nmである。
【0038】
本発明において多孔質層が好ましく含有する上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散され、アルミナ微粒子分散液、及びアルミナ水和物微粒子分散液の形で使用されることが好ましい。
【0039】
本発明において、多孔質層が含有する樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性、シリル変性、カチオン性基変性、ジアセトンアクリルアミド変性、アセトアセチル変性などの各種変性ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白などの天然高分子化合物、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックスなどのラテックス類、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤等を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
【0040】
これらの内、好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールである。これらポリビニルアルコールの平均重合度は200~5000であることが好ましい。
【0041】
微粒子に対する樹脂バインダーの含有量は特に限定されないが、微粒子を用い多孔質層を形成するためには、樹脂バインダーの含有量は、微粒子に対して3~80質量%であることが好ましく、より好ましくは5~50質量%の範囲である。
【0042】
本発明において、多孔質層が含有する樹脂バインダーが硬膜性(架橋性)を有する場合は、多孔質層には該樹脂バインダーの硬膜剤を含有することが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、グリオキシル酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2-クロロエチル)尿素、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、チタンアセチルアセテートの如き多価金属化合物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンの如きアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインの如きヒドラジン化合物、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN-メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の含有量は特に限定されないが、樹脂バインダーに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。下限は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0043】
樹脂バインダーとしてケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコールを用いる場合、硬膜剤はホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸が特に好ましい。これら硬膜剤の使用量はポリビニルアルコールに対し、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。下限は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0044】
本発明において、多孔質層が含有する常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物としては、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル等を例示することができる。常温において蒸気圧を実質的に有さないとは、25℃における脂肪族化合物の蒸気圧が1Pa以下であることを示し、より好ましい蒸気圧は0.1Pa以下である。
【0045】
脂肪族炭化水素としては、各種アルカン、アルケン、アルキンが挙げられ、中でも炭素数が17以上のアルカンが好ましく、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン等が例示される。なお、これら化合物の25℃における蒸気圧は何れも0Paである。
【0046】
脂肪族アルコールとしては、炭素数が14以上の高級アルコールが好ましく、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ミリシルアルコール等が例示される。なお、これら化合物の25℃における蒸気圧は何れも0Paである。
【0047】
脂肪酸としては、炭素数が12以上の高級脂肪酸が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が例示される。なお、これら化合物の25℃における蒸気圧は何れも0Paである。
【0048】
脂肪酸エステルとしては、炭素数が16以上の高級脂肪酸エステルが好ましく、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、アラキジン酸メチルが例示される。なお、これら化合物の25℃における蒸気圧は何れも0Paである。
【0049】
これらの脂肪族化合物は混合して用いることができる。特に、炭素数が16以上のアルカンの混合物である固形パラフィンは、入手性や価格の点から好ましい。固形パラフィンは、例えば日本精蝋(株)からパラフィンワックスシリーズとして市販されている。
【0050】
本発明において、多孔質層中における常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物の含有量は特に限定されないが、本発明の効果を奏し、かつ多孔質層においてテスト用インクを吸収するための空隙を確保するために、多孔質層の全固形分量中に占める常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物の割合は3~40質量%であることが好ましく、より好ましくは10~30質量%の範囲である。
【0051】
多孔質層はその他、必要に応じ、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、微粒子の分散剤、消泡剤、レベリング剤、粘度安定剤、pH調節剤などを含有することができる。多孔質層の固形分量は1~100g/mが好ましく、3~50g/mがより好ましい。
【0052】
上記した多孔質層を透明支持体上に形成するにあたり、該多孔質層は上記した成分を含有する塗布液を作製し、該塗布液を透明支持体上に塗布し乾燥して形成する方法は、簡便であり好ましい。一方、上記した脂肪族化合物の含有量にもよるが、塗布液が該脂肪族化合物を含有することで塗布故障が生じる場合がある。このような問題を回避する観点から多孔質層は、微粒子及び樹脂バインダーを少なくとも含有する塗布液を透明支持体上に塗布し乾燥して、多孔質な微粒子含有層を形成した後、該微粒子含有層に常温において蒸気圧を実質的に有さない脂肪族化合物を含有する塗布液を塗布し乾燥する二段階の工程により形成されることが好ましい。
【0053】
第一段階である、微粒子及び樹脂バインダーを少なくとも含有する塗布液を透明支持体上に塗布し乾燥する工程では、微粒子及び樹脂バインダー等を、水等の適当な溶媒に溶解または分散させ、必要に応じ、有機溶媒、レベリング剤、着色染料、界面活性剤等を添加して微粒子含有層形成塗布液を調製し、透明支持体上に該微粒子含有層形成塗布液を塗布し乾燥して微粒子含有層を形成する。塗布方式としては、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等の各種塗布方式が例示される。
【0054】
次いて第二段階では、脂肪族化合物を加熱及び/または適当な有機溶媒に溶解した脂肪族化合物塗布液を調製し、第一段階にて形成された微粒子含有層に、該脂肪族化合物塗布液を塗布、乾燥し、本発明の多孔質層を形成する。塗布方式としては、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式、インクジェット方式等の各種塗布方式が例示される。
【実施例
【0055】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【0056】
(インクジェット装置検査用メディア1の作製)
水に硝酸2.5部とアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を用いて、固形分濃度30%の無機微粒子分散液1を得た。無機微粒子分散液中に分散しているアルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。この無機微粒子分散液1を用い、下記組成の微粒子含有層形成塗布液を作製した。
【0057】
<微粒子含有層形成塗布液>
無機微粒子分散液1 (無機微粒子の固形分として)100部
ポリビニルアルコール 9部
(ケン化度88%、平均重合度3500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.5部
固形分濃度が16%になるように水で調整した。
【0058】
透明支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、全光線透過率89%、ヘイズ値6%)に、上記微粒子含有層形成塗布液を、固形分量として20.0g/mになるようにスライドビード塗布装置にて塗布し乾燥して微粒子含有層を形成した。
【0059】
次いで、微粒子含有層面に下記組成の脂肪族化合物塗布液1を、脂肪族化合物の固形分量として3.6g/mになるようにリバースグラビアロール塗布装置を用いて塗布を行った。塗布後に乾燥を行い本発明の多孔質層を有する実施例のインクジェット装置検査用メディア1を得た。脂肪族化合物を含む多孔質層の全固形分塗布量中に占める脂肪族化合物の割合は15.3%であった。
【0060】
<脂肪族化合物塗布液1>
n-ヘプタン 100.0部
Paraffin Wax 115(固形パラフィン) 47.0部
(日本精蝋(株)製、25℃における蒸気圧0Pa)
加熱溶融した固形パラフィンにn-ヘプタンを加え溶解した。
【0061】
(インクジェット装置検査用メディア2の作製)
インクジェット装置検査用メディア1の作製において、脂肪族化合物塗布液1を下記組成の脂肪族化合物塗布液2へ変更し、脂肪族化合物の固形分量として6.6g/mになるようにリバースグラビアロール塗布装置を用いて塗布を行った以外は同様にして、実施例のインクジェット装置検査用メディア2を得た。脂肪族化合物を含む多孔質層の全固形分塗布量中に占める脂肪族化合物の割合は24.8%であった。
【0062】
<脂肪族化合物塗布液2>
n-ヘプタン 100.0部
Paraffin Wax 115 121.9部
加熱溶融した固形パラフィンにn-ヘプタンを加え溶解した。
【0063】
(インクジェット装置検査用メディア3の作製)
インクジェット装置検査用メディア1の作製において、脂肪族化合物塗布液1を下記組成の脂肪族化合物塗布液3へ変更し、脂肪族化合物の固形分量として3.6g/mになるようにリバースグラビアロール塗布装置を用いて塗布を行った以外は同様にして、実施例のインクジェット装置検査用メディア3を得た。脂肪族化合物を含む多孔質層の全固形分塗布量中に占める脂肪族化合物の割合は15.3%であった。
【0064】
<脂肪族化合物塗布液3>
エチルアルコール 100.0部
セチルアルコール 43.0部
【0065】
(インクジェット装置検査用メディア4の作製)
インクジェット装置検査用メディア1の作製において、脂肪族化合物塗布液1を下記組成の脂肪族化合物塗布液4へ変更し、脂肪族化合物の固形分量として3.6g/mになるようにリバースグラビアロール塗布装置を用いて塗布を行った以外は同様にして、実施例のインクジェット装置検査用メディア4を得た。脂肪族化合物を含む多孔質層の固形分塗布量中に占める脂肪族化合物の割合は15.3%であった。
【0066】
<脂肪族化合物塗布液4>
エチルアルコール 100.0部
ミリスチルアルコール 43.0部
【0067】
(インクジェット装置検査用メディア5の作製)
インクジェット装置検査用メディア1の作製において、脂肪族化合物塗布液1を下記組成の脂肪族化合物塗布液5へ変更し、脂肪族化合物の固形分量として1.0g/mになるようにリバースグラビアロール塗布装置を用いて塗布を行った以外は同様にして、実施例のインクジェット装置検査用メディア5を得た。脂肪族化合物を含む多孔質層の全固形分塗布量中に占める脂肪族化合物の割合は4.8%であった。
【0068】
<脂肪族化合物塗布液5>
n-ヘプタン 100.0部
Paraffin Wax 115 10.5部
加熱溶融した固形パラフィンにn-ヘプタンを加え溶解した。
【0069】
(インクジェット装置検査用メディア6の作製)
インクジェット装置検査用メディア1の作製において、脂肪族化合物塗布液1を塗布しない以外は同様にして、比較例のインクジェット装置検査用メディア6を得た。
【0070】
<インクジェット印刷1>
上記したインクジェット装置検査用メディア1~4、6をA4サイズにそれぞれ裁断し、テスト用インクとして揮発性溶媒(3-フェノキシトルエン)を用い、該インクを装填したピエゾタイプのインクジェットプリンタ(富士フイルムダイマティックス社製のピエゾ駆動方式によるオンデマンド・インクジェットヘッドを装着した、富士フイルム(株)製のDMP-2831)を用い、約10pLの液滴を1回吐出し1個のドットを印刷した。同様にして、離散した位置に合計20個のドットを印刷した後、室温にて48時間放置し乾燥させた。
【0071】
<インクジェット印刷2>
上記インクジェット装置検査用メディア1~4、6をA4サイズにそれぞれ裁断し、テスト用インクとして揮発性溶媒(メチルエチルケトン)を用い、上記したピエゾタイプのインクジェットプリンタにて約10pLの液滴を1回吐出し1個のドットを印刷した。同様にして、離散した位置に合計20個のドットを印刷した後、室温にて48時間放置し乾燥させた。
【0072】
<インクジェット印刷3>
上記インクジェット装置検査用メディア1~4、6をA4サイズにそれぞれ裁断し、テスト用インクとして揮発性溶媒(トルエン)を用い、上記したピエゾタイプのインクジェットプリンタにて約10pLの液滴を1回吐出し1個のドットを印刷した。同様にして、離散した位置に合計20個のドットを印刷した後、室温にて48時間放置し乾燥させた。
【0073】
<インクジェット印刷4>
上記インクジェット装置検査用メディア5及び6をA4サイズにそれぞれ裁断し、テスト用インクとして揮発性溶媒(3-フェノキシトルエン)を用い、上記したピエゾタイプのインクジェットプリンタにて約10pLの液滴を同じ位置に連続して9回吐出し1個のドットを印刷した。同様にして、離散した位置に合計20個のドットを印刷した後、60℃のホットステージ上で48時間放置し乾燥させた。
【0074】
<視認性の評価>
インクジェット装置検査用メディア1~6に印刷された各ドット(各ドットの印刷位置を含む範囲)をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製VHX-5000)を用い、倍率500倍、透過照明で撮影し、各ドットの画像データを得た。次いで該画像データを画像処理ソフトウエア((株)ファースト製WIL-Builder)を用い、ドット検出を行った。この結果を表1及び表2に示す。
○:印刷された20個のドット全てを検出することができた。
△:印刷された20個のドット中、1~19個のドットを検出することができなかった。
×:印刷された20個のドット全ての検出をすることができなかった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1及び表2の結果より、本発明のインクジェットヘッドの吐出検査方法では、揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しない、テスト用インクを用いて形成されたドットを検出することが可能であり、吐出検査を行う事が可能である。