(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20230904BHJP
A01B 63/10 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B63/10 Z
(21)【出願番号】P 2019228667
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史也
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103422(JP,A)
【文献】特開2014-236707(JP,A)
【文献】特開2019-041771(JP,A)
【文献】特開2019-187358(JP,A)
【文献】特開2019-115299(JP,A)
【文献】特開2008-278840(JP,A)
【文献】特開平08-331943(JP,A)
【文献】米国特許第04515221(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00 - 63/12
A01B 69/00
A01C 11/00 - 11/02
G05D 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に作業装置を連結し、且つ前記作業装置を接地させる接地状態と接地させない不接地状態とに昇降可能な昇降装置と、
走行予定ルートに基づいて前記機体を自動走行させる自動走行制御部と、
前記不接地状態における前記昇降装置の第1高さの入力を受け付ける入力装置と、
前記昇降装置の昇降を手動で操作するポジションレバー
と、
を備え、
前記昇降装置は、複数の前記作業装置を着脱可能であり、
前記入力装置は、それぞれの前記作業装置に前記第1高さを対応付けて記憶する記憶装置を有し、
前記自動走行制御部は、前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記接地状態から前記不接地状態に上昇させる昇降制御部を有し、前記昇降制御部が前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記接地状態から前記不接地状態に上昇させてから前記機体を旋回、又は後進させ、
前記昇降制御部は、前記昇降装置に装着された前記作業装置に対応する前記第1高さを取得し、当該第1高さに基づいて前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記接地状態から前記不接地状態に上昇させる作業機において、
前記入力装置は、前記第1高さに加えて、前記接地状態における前記昇降装置の第2高さの入力を受け付け、
前記自動走行制御部は、前記ポジションレバーが前記第2高さに対応する操作位置である場合には、自動走行を開始でき、前記ポジションレバーが前記第2高さに対応する操作位置ではない場合には、自動走行を開始しない
作業機。
【請求項2】
前記昇降制御部は、前記記憶装置が記憶しているそれぞれの前記作業装置に対応付けられた第1高さのうち、前記昇降装置に装着された前記作業装置に対応する前記第1高さを取得する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記入力装置は、前記第1高さの入力を受け付ける入力画面を表示する表示装置であり、
前記表示装置は、前記昇降装置に装着された前記作業装置を選択する選択画面を表示して、当該作業装置を取得し、
前記昇降制御部は、前記表示装置が取得した前記作業装置の情報に基づいて、前記記憶装置が記憶しているそれぞれの前記作業装置に対応付けられた第1高さのうち、前記昇降装置に装着された作業装置に対応する前記第1高さを前記記憶装置から取得する請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記入力装置が受け付けた前記第1高さを所定の補正値に基づいて当該第1高さよりも高く補正する補正部を備えており、
前記昇降制御部は、前記補正部が補正した補正後の前記第1高さに基づいて前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記接地状態から前記不接地状態に上昇させる請求項
3に記載の作業機。
【請求項5】
前記自動走行制御部が前記機体を旋回、又は後進させる際に、前記昇降制御部が前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記接地状態から前記不接地状態に上昇させるまでの間、所定の警告を行う報知装置を備えている請求項1~
4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記昇降制御部は、前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記不接地状態から前記接地状態に下降でき、
前記自動走行制御部は、前記昇降制御部が前記昇降装置を制御して、前記作業装置を前記不接地状態から前記接地状態に下降させてから前記機体を旋回から直進、又は後進から前進させる請求項1~
5のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置を備える作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された作業機は、機体と、機体に作業装置を連結し、且つ作業装置を昇降可能な昇降装置と、走行予定ルートに基づいて機体を自動走行させる制御装置と、を備え、機体の旋回時には昇降装置は、手動又は自動で作業装置を上昇させ、作業を行うときには手動又は自動で作業装置を下降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、走行予定ルートに沿って機体を自動走行させ、且つ機体を旋回させる際に作業装置を上昇させる。
しかしながら、機体が旋回する際に、作業装置が接地していない状態(不接地状態)であるか否かを確実に認知、検知するためには機体が旋回するたびに作業者が直接目視する必要、又は当該接地を検出するセンサ等を作業装置に取り付ける必要がある。また、機体が旋回する場合に加え、機体が後進する場合に作業装置が接地していると機体の走行を妨げ、さらに当該後進によって作業装置に負担がかかる虞がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、自動走行を行う作業機が旋回又は後進する際に、確実に作業装置を不接地状態に上昇させることができる作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、機体と、機体に作業装置を連結し、且つ作業装置を接地させる接地状態と接地させない不接地状態とに昇降可能な昇降装置と、走行予定ルートに基づいて機体を自動走行させる自動走行制御部と、不接地状態における昇降装置の第1高さの入力を受け付ける入力装置と、昇降装置の昇降を手動で操作するポジションレバーと、を備え、昇降装置は、複数の作業装置を着脱可能であり、入力装置は、それぞれの作業装置に第1高さを対応付けて記憶する記憶装置を有し、自動走行制御部は、昇降装置を制御して、作業装置を接地状態から不接地状態に上昇させる昇降制御部を有し、昇降制御部が昇降装置を制御して、作業装置を接地状態から不接地状態に上昇させてから機体を旋回、又は後進させ、昇降制御部は、昇降装置に装着された作業装置に対応する第1高さを取得し、当該第1高さに基づいて昇降装置を制御して、作業装置を接地状態から不接地状態に上昇させる作業機において、入力装置は、第1高さに加えて、接地状態における昇降装置の第2高さの入力を受け付け、自動走行制御部は、ポジションレバーが第2高さに対応する操作位置である場合には、自動走行を開始でき、ポジションレバーが第2高さに対応する操作位置ではない場合には、自動走行を開始しない。
また、昇降制御部は、記憶装置が記憶しているそれぞれの作業装置に対応付けられた第1高さのうち、昇降装置に装着された作業装置に対応する第1高さを取得する。
【0007】
また、入力装置は、第1高さの入力を受け付ける入力画面を表示する表示装置であり、表示装置は、昇降装置に装着された作業装置を選択する選択画面を表示して、当該作業装置を取得し、昇降制御部は、表示装置が取得した作業装置の情報に基づいて、記憶装置が記憶しているそれぞれの作業装置に対応付けられた第1高さのうち、昇降装置に装着された作業装置に対応する第1高さを記憶装置から取得する。
【0008】
また、入力装置が受け付けた第1高さを所定の補正値に基づいて当該第1高さよりも高く補正する補正部を備えており、昇降制御部は、補正部が補正した補正後の第1高さに基づいて昇降装置を制御して、作業装置を接地状態から不接地状態に上昇させる。
また、自動走行制御部が機体を旋回、又は後進させる際に、昇降制御部が昇降装置を制御して、作業装置を接地状態から不接地状態に上昇させるまでの間、所定の警告を行う報知装置を備えている。
【0009】
また、昇降制御部は、昇降装置を制御して、作業装置を不接地状態から接地状態に下降でき、自動走行制御部は、昇降制御部が昇降装置を制御して、作業装置を不接地状態から接地状態に下降させてから機体を旋回から直進、又は後進から前進させる。
【発明の効果】
【0010】
上記作業機によれば、機体が旋回又は後進する際に、確実に作業装置を不接地状態に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5A】表示部が表示する案内画面の一例を示す図である。
【
図5B】表示部が表示する第1入力画面の一例を示す図である。
【
図5C】表示部が表示する第2入力画面の一例を示す図である。
【
図5D】入力装置による高さ設定における作業装置を示す図である。
【
図6A】入力装置による高さ設定の一連の流れを説明する図である。
【
図6B】昇降制御部による昇降装置の制御の一連の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図7は、作業機1の一例であるトラクタを示している。本実施形態においては、作業機1としてトラクタを例にあげて説明するが、作業機1は、トラクタに限定されない。本発明の実施形態において、作業機1の運転席10に着座した作業者(運転者)の前側(
図7の矢印A1方向)を前方、作業者の後側(
図7の矢印A2方向)を後方、作業者の左側を左方(
図7の手前側)、作業者の右側を右方(
図7の奥側)として説明する。また、作業機1の前後方向に直交する方向である水平方向を幅方向として説明する。
【0013】
図7に示すように、作業機1は、走行装置7を有し且つ走行可能である走行車両(機体)3と、原動機4と、変速装置5と、操舵装置11と、を備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。なお、前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジンである。
【0014】
変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。機体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
図7に示すように、機体3の後部には、昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置2が着脱可能である。昇降装置8は、装着された作業装置2を昇降可能である。作業装置2は、
図7に示すような耕耘する耕耘装置(ロータリ耕耘機)や、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、及び牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0015】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、シャトル部5bと、主変速部5cと、副変速部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。
図1に示すように、シャトル部5bは、シャトル軸5b1と、前後進切換部5b2とを有している。シャトル軸5b1には、推進軸5aからの動力が伝達される。前後進切換部5b2は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸5b1の回転方向、即ち、作業機1の前進及び後進を切り換える。具体的には、前後進切換部5b2は、前進クラッチ部35と、後進クラッチ部36とを有している。前進クラッチ部35及び後進クラッチ部36は、推進軸5aと一体回転するハウジング37を有している。
【0016】
図1に示すように、前進クラッチ部35は、円筒軸35bと、ハウジング37と円筒軸35bとの間に配置された摩擦プレート35cと、押圧部材35dとを有している。押圧部材35dは、図示省略のバネ等の付勢部材により押圧部材35dから摩擦プレート35
cから離れる方向に付勢されている。
図1に示すように、前進クラッチ部35側のハウジング37内は、作動油を給排する第1油路18aが接続されている。
図2に示すように、第1油路18aは、第1制御弁17aと接続されており、第1制御弁17aの開度を変更して、第1油路18aからハウジング37側に作動油が供給されると、押圧部材35dはバネの付勢力に抗して押圧側(接続側)に移動することで、摩擦プレート35cがハウジング37側に圧接して、前進クラッチ部35は接続状態になる。推進軸5aの動力が円筒軸35bと一体回転するギア38に伝達される。一方、ハウジング37側から第1油路18aに作動油が排出されると、押圧部材35dはバネの付勢力によって切断側に移動することで、摩擦プレート35cがハウジング37側から離れて、前進クラッチ部35は切断状態になる。推進軸5aの動力はギア38に伝達されない。前進クラッチ部35の出力側のギア(出力ギア)38は、出力軸5b3に噛み合っていて、前進クラッチ部35が接続状態になった場合には、駆動力が出力軸5b3に伝達される。
【0017】
図1に示すように、後進クラッチ部36は、円筒軸36bと、ハウジング37と円筒軸36bとの間に配置された摩擦プレート36cと、押圧部材36dとを有している。押圧部材36dは、図示省略のバネ等の付勢部材により押圧部材36dから摩擦プレート36cから離れる方向に付勢されている。
図1に示すように、後進クラッチ部36側のハウジング37内は、作動油を給排する第2油路18bが接続されている。
図2に示すように、第2油路18bは、第2制御弁17bと接続されており、第2制御弁17bの開度を変更して、第2油路18bからハウジング37側に作動油が供給されると、押圧部材36dはバネの付勢力に抗して押圧側(接続側)に移動することで、摩擦プレート36cがハウジング37側に圧接して、後進クラッチ部36は接続状態になる。推進軸5aの動力が円筒軸36bと一体回転するギア39に伝達される。一方、ハウジング37側から第2油路18bに作動油が排出されると、押圧部材36dはバネの付勢力によって切断側に移動することで、摩擦プレート36cがハウジング37側から離れて、後進クラッチ部36は切断状態になる。推進軸5aの動力はギア39に伝達されない。後進クラッチ部36の出力側のギア(出力ギア)39は、出力軸5b3に噛み合っていて、後進クラッチ部36が接続状態になった場合には、駆動力が出力軸5b3に伝達される。
【0018】
主変速部5cは、入力された動力を無段に変更する無段変速機構である。
図1に示すように、無段変速機構は、油圧ポンプ5c1と、油圧モータ5c2と、遊星歯車機構5c3とを有している。油圧ポンプ5c1は、シャトル部5bの出力軸5b3からの動力により回転する。油圧ポンプ5c1は、例えば、斜板12を有する可変容量ポンプであって、斜板12の角度(斜板角)を変更することにより、当該油圧ポンプ5c1から吐出する作動油の流量を変更することができる。油圧モータ5c2は、配管等の油路を介して油圧ポンプ5c1から吐出された作動油によって回転するモータである。油圧ポンプ5c1の斜板角を変更したり、油圧ポンプ5c1へ入力する動力を変更することによって、油圧モータ5c2の回転数を変更することができる。
【0019】
図1に示すように、遊星歯車機構5c3は、複数のギア(歯車)と、入力軸及び出力軸等の動力伝達軸とで構成された機構であって、油圧ポンプ5c1の動力が入力される入力軸13と、油圧モータ5c2の動力が入力される入力軸14と、動力を出力する出力軸15とを含んでいる。遊星歯車機構5c3は、油圧ポンプ5c1の動力と、油圧モータ5c2の動力とを合成して合成した動力を出力軸15に伝達する。
【0020】
したがって、主変速部5cによれば、油圧ポンプ5c1の斜板12の斜板角、原動機4の回転数等を変更することによって、副変速部5dに出力する動力を変更することができる。
本実施形態において、斜板12は、第3制御弁17cから供給される作動油によって角度を変更可能である。斜板12及び第3制御弁17cは、例えば作動油を給排する第3油路18cによって接続されている。第3制御弁17cは、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することで、第3油路18cを流れる作動油を調
整し、斜板12の角度を調整、即ち、副変速部5dに出力する動力を変更することができる。なお、主変速部5cは、無段変速機構で構成しているが、ギアによって変速を行う有段変速機構であってもよい。
【0021】
副変速部5dは、動力を変速する有段の複数のギア(歯車)を有する変速機構であって、複数のギアの接続(噛合)を適宜変更することによって、遊星歯車機構5c3の出力軸15から当該副変速部5dに入力された動力を変更して出力する(変速する)。
図1に示すように、副変速部5dは、入力軸5d1と、第1変速クラッチ5d2と、第2変速クラッチ5d3と、出力軸5d4とを含んでいる。入力軸5d1は、遊星歯車機構5c3の出力軸15の動力が入力される軸であり、当該入力された動力を、ギア等を介して第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3に入力する。第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3のそれぞれの接合及び切断を切り換えることにより、入力された動力は変更され、出力軸5d4に出力される。出力軸5d4に出力された動力は、後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0022】
図1に示すように、PTO動力伝達部5eは、PTOクラッチ5e1と、PTO推進軸5e2と、PTO変速部5e3とを有している。PTOクラッチ5e1は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達しない状態とに切り換わる。PTO変速部5e3は、変速クラッチと複数のギア等を含んでいて、PTO推進軸5e2からPTO変速部5e3へ入力された動力(回転数)を変更して出力する。PTO変速部5e3の動力は、ギア等を介してPTO軸16に伝達される。
【0023】
図1に示すように、前変速部5fは、第1前変速クラッチ5f1と、第2前変速クラッチ5f2とを有している。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、副変速部5dからの動力が伝達可能であって、例えば、出力軸5d4の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0024】
図1に示すように、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、油圧クラッチ等で構成されている。第1前変速クラッチ5f1には第4油路18dが接続され、
図2に示すように、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される第4制御弁17dに接続されている。第1前変速クラッチ5f1は、第4制御弁17dの開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。
図1に示すように、第2前変速クラッチ5f2には第5油路18eが接続され、
図2に示すように、当該第5油路18eには第5制御弁17eに接続されている。第2前変速クラッチ5f2は、第5制御弁17eの開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第4制御弁17d及び第5制御弁17eは、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0025】
第1前変速クラッチ5f1が切断状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、第2前変速クラッチ5f2を通じて副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪7Fと後輪7Rとの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態、等速駆動)。一方、第1前変速クラッチ5f1が接続状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態、増速駆動)。また、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Rが動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。なお、変速装置5は、走行装置7の前進及び後進等を切り換えることができればよく、その構成は上記構成に限定されない。
【0026】
図2、
図3A、
図3Bに示すように、昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8
b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、第6制御弁17fを介して油圧ポンプと接続されている。第6制御弁17fは、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0027】
図2、
図3A、
図3Bに示すように、ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。このため、昇降装置8は、作業装置2が圃場等の地面に接地する接地状態と、接地していない不接地状態と、に昇降させることができる。
【0028】
図2に示すように、操舵装置(操舵機構)11は、走行装置7の操舵角を変更することで機体3の向きを変更可能な装置である。ステアリングハンドル(ステアリングホイール)11aと、ステアリングハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ステアリングハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。ステアリングハンドル11aは、機体3の操向を操作する部材であり、運転者によって手動操作される。補助機構11cは、第7制御弁17gと、ステアリングシリンダ32とを含んでいる。第7制御弁17gは、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、第7制御弁17gは、回転軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ32は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)33に接続されている。したがって、ステアリングハンドル11aを操作すれば、当該ステアリングハンドル11aに応じて第7制御弁17gの切換位置及び開度が切り換わり、当該第7制御弁17gの切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ32が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0029】
また、
図2に示すように、作業機1は、表示装置50を備えている。表示装置50は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネルのいずれかで構成された表示部51と、記憶装置52と、を有する装置である。表示部51は、作業機1の走行を支援するための情報の他に作業機1に関する様々な情報を表示可能である。記憶装置52は、不揮発性のメモリ等であり、表示部51に表示する情報等を記憶している。また、表示装置50は、作業機1が有する機器と有線又は無線によって通信可能に接続されている。
【0030】
図2に示すように、作業機1は、制御装置40と記憶部44とを備えている。制御装置40は、作業機1の様々な制御を行う装置である。制御装置40には、複数の検出装置41が接続されている。複数の検出装置41は、作業機1の状態を検出する装置であり、例えば、水温を検出する水温センサ41a、燃料の残量を検出する燃料センサ41b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)41c、アクセル42fの操作量を検出するアクセルペダルセンサ41d、操舵装置11の操舵角を検出する操舵角センサ41e、リフトシリンダ8eの伸長(ストローク)を検出する伸長センサ41f、機体3の幅方向(右方向又は左方向)の傾きを検出する傾き検出センサ41g、機体3の速度を検出する車速センサ41h、PTO軸16の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)41i、バッテリー等の蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ41j等である。なお、車速センサ41hは、例えば、前車軸21Fの回転数、後車軸21Rの回転数に基づいて機体3の速度を検出する。また、車速センサ41hは、前車軸21F、後車軸21R、前輪7F及び後輪7Rのいずれかの回転方向も検出することができ、作業機1(機
体3)が前進しているか、後進しているかも検出することができる。上述した検出装置41は一例であり、上述したセンサに限定されない。
【0031】
また、制御装置40には、複数の操作部材42が接続されている。複数の操作部材42は、機体3の前進又は後進を切り換える前後進切換レバー(シャトルレバー)42a、原動機4の始動等を行うイグニッションスイッチ42b、PTO軸16の回転数を設定するPTO変速レバー42c、自動変速及び手動変速のいずれかを切り換える変速切換スイッチ42d、変速装置5の変速段(変速レベル)を手動で切り換える変速レバー42e、車速を増減させるアクセル42f、昇降装置8の昇降を操作するポジションレバー42g、昇降装置8の上限を設定する上限設定ダイヤル42h、車速を設定する車速レバー42i等である。なお、上述した操作部材42は一例であり、上述した操作部材42に限定されない。
【0032】
記憶部44は、不揮発性のメモリ等であり、制御装置40の制御に関するプログラム等を記憶している。
制御装置40がポジションレバー42g及び上限設定ダイヤル42hの操作に基づいて、昇降装置8の昇降を制御する場合について説明すると、例えば、制御装置40は、伸長センサ41fから出力された検出信号と、ポジションレバー42gから出力された操作信号と、上限設定ダイヤル42hから出力された操作信号と、に基づいて制御装置40を昇降させる。制御装置40は、伸長センサ41fから出力された検出信号と記憶部44に記憶された所定のテーブルとに基づいて、リフトシリンダ8eの実際の伸長量(実伸長量)を算出(取得)する。制御装置40は、ポジションレバー42gから出力された操作信号と記憶部44に記憶された所定のテーブルとに基づいて、ポジションレバー42gの操作に基づくリフトシリンダ8eの伸長量(指示伸長量)を算出(取得)する。また、制御装置40は、上限設定ダイヤル42hから出力された操作信号と記憶部44に記憶された所定のテーブルとに基づいて、上限設定ダイヤル42hの操作に基づくリフトシリンダ8eの伸長量の上限(上限値)、言い換えると昇降装置8の高さの上限を算出(取得)する。
【0033】
制御装置40は、指示伸長量が上限値よりも小さく且つ実伸長量が指示伸長量よりも小さい場合、又は指示伸長量が上限値よりも大きく且つ実伸長量が上限値よりも小さい場合、
図3Bの上図の状態から
図3Bの下図の状態に移行するように第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0034】
制御装置40は、指示伸長量が上限値よりも小さく且つ実伸長量が指示伸長量と等しい場合、又は指示伸長量が上限値よりも大きく且つ実伸長量が上限値と等しい場合、第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを維持し、リフトアーム8aの高さを維持させる。
制御装置40は、指示伸長量が上限値よりも小さく且つ実伸長量が指示伸長量よりも大きい場合、又は指示伸長量が上限値よりも大きく且つ実伸長量が上限値よりも大きい場合、
図3Bの下図の状態から
図3Bの上図の状態に移行するように第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部を下降させる。
【0035】
なお、制御装置40は、ポジションレバー42g及び上限設定ダイヤル42hの操作に基づいて、昇降装置8の昇降を制御すればよく、その制御方法は上記方法に限定されず既存の技術を適用可能である。例えば、制御装置40は、伸長センサ41fに代えて、リフトアーム8aの角度を検出する角度センサから検出信号を取得し、リフトアーム8aの角度に基づいて昇降装置8の昇降を制御してもよい。
【0036】
また、作業機1は、機体3の位置(機体位置W1)を検出する位置検出装置43と、当該機体位置W1に基づいて機体3の自動走行を制御する自動走行制御部40aを備えており、所定の走行予定ルートLに基づいて自動走行を行うような構成であってもよい。
図4Aに示すように、走行予定ルートLは、機体3が直進する直進部L1と、機体3が旋回する旋回部L2と、を含んでいる。また、直進部L1は、機体3が前進する前進部L1aと機体3が後進する後進部L1bとを含んでいる。走行予定ルートLの設定は、作業機1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン(多機能携帯電
話)、タブレット等のコンピュータを用いて行う。設定された走行予定ルートLは、例えば記憶部44又は記憶装置52等に記憶される。
【0037】
位置検出装置43は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己(機体3)の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、位置検出装置43は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、作業機1の位置(例えば、緯度、経度)を検出する。本実施形態において、位置検出装置43は、
図7に示すように、作業機1の運転席10を覆うキャビン9の上部(ルーフ)に設けられている。なお、位置検出装置43は、作業機1の位置を検出することができればよく、その取り付け位置や構成は、上記構成に限定されない。
【0038】
図2に示すように、制御装置40は、自動走行制御部40aを有している。自動走行制御部40aは、制御装置40に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動走行制御部40aは、制御装置40から出力された制御信号に基づいて機体3が走行予定ルートLに沿って走行するように補助機構11cを制御する。詳しくは、自動走行制御部40aは、記憶部44又は記憶装置52から走行予定ルートLを取得し、自動走行を開始すると、機体3が当該走行予定ルートLに沿って走行するように補助機構11cを制御し、変速装置5の変速段や原動機4の回転数等を自動的に変更することによって、作業機1の車速(速度)を制御する。また、自動走行制御部40aは、走行予定ルートLに基づいて昇降装置8を制御する。具体的には、自動走行制御部40aは、走行予定ルートLに基づいて操舵装置11の操舵角の設定と、変速装置5や原動機4の制御を行う第1制御部40a1を含んでいる。
【0039】
第1制御部40a1は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されており、作業機1が自動走行を行っている状況下において、機体3が走行予定ルートLに沿って走行するよう制御する。つまり、機体3と走行予定ルートLとの偏差が予め設定された所定未満である場合、自動走行制御部40aは、回転軸11bの回転角を維持する。機体3と走行予定ルートLとの偏差が所定以上である場合、自動走行制御部40aは、偏差が零になるよう回転軸11bを回転させる。
【0040】
図4Bに示すように、機体位置W1と走行予定ルートLとの偏差(位置偏差)が予め設定された所定未満である場合、第1制御部40a1は、回転軸11bの回転角を維持する。一方、機体位置W1と走行予定ルートLとの位置偏差が所定以上であって、作業機1が走行予定ルートLに対して左側に位置している場合は、第1制御部40a1は、作業機1の操舵方向が右方向となるように回転軸11bを回転する。また、機体位置W1と走行予定ルートLとの位置偏差が所定以上であって、作業機1が走行予定ルートLに対して右側に位置している場合は、第1制御部40a1は、作業機1の操舵方向が左方向となるように回転軸11bを回転する。
【0041】
なお、上述した実施形態では、機体位置W1と走行予定ルートLとの位置偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、
図4Bに示すように、走行予定ルートLの方位と作業機1(機体3)の進行方向(走行方向)の方位(機体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ルートLに対する機体方位F1の角度(方位偏差)θgが所定以上である場合、第1制御部40a1は、角度θgが零になる(機体方位F1が走行予定ルートLの方位に一致する)ように操舵角を設定してもよい。また、第1制御部40a1は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)θgに基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動走行における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動走行における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0042】
また、第1制御部40a1は、作業機1が自動走行を行っている状況下において、走行予定ルートLに基づいて変速装置5を制御して、車速、前進、及び後進を変更する。例えば走行予定ルートLに対応付けられた車速が速度vである場合を例に説明すると、第1制御部40a1は、車速センサ41hから出力された検出信号に基づいて実車速を算出し、実車速が速度vよりも低い場合、主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、又は原動機4の回転数を制御して増速を行う。第1制御部40a1は、実車速が
速度vと等しい場合、主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、又は原動機4の回転数を制御して車速を維持させる。第1制御部40a1は、実車速が速度vよりも高い場合、主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、又は原動機4の回転数を制御して減速を行う。
【0043】
また、第1制御部40a1は、走行予定ルートLに基づいて、シャトル部5bの前後進切換部5b2を作動させ、前進から後進、又は後進から前進に切り換える。例えば、位置検出装置43が検出した機体位置W1が直進部L1のうち前進部L1aに位置している場合、第1制御部40a1は、第1制御弁17aの開度を変更して前進クラッチ部35を接続状態に切り換え、第2制御弁17bの開度を変更して後進クラッチ部36は切断状態に切り換え、変速装置5(走行装置7)を前進に切り換える。一方、位置検出装置43が検出した機体位置W1が直進部L1のうち後進部L1bに位置している場合、第1制御部40a1は、第1制御弁17aの開度を変更して前進クラッチ部35を切断状態に切り換え、第2制御弁17bの開度を変更して後進クラッチ部36は接続状態に切り換え、変速装置5(走行装置7)を後進に切り換える。
【0044】
図2に示すように、自動走行制御部40aは、走行予定ルートLに基づいて昇降装置8の昇降の制御を行う第2制御部(昇降制御部)40a2を有している。昇降制御部40a2は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されており、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。また、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1が機体3を旋回又は後進させる前に作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。言い換えると、自動走行制御部40a(第1制御部40a1)は、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させてから機体3を旋回、又は後進させる。
【0045】
まず、第1制御部40a1が機体3を旋回させる前に昇降制御部40a2が作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる場合について説明すると、昇降制御部40a2は、旋回部L2の始点Lbに侵入する際において、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。具体的には、位置検出装置43が検出した機体位置W1が旋回部L2の始点Lbの手前に位置している場合、予め設定された高さ(第1高さ:不接地状態における昇降装置8の高さ)に基づいて第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させ、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。
【0046】
また、昇降制御部40a2は、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbに位置し且つ作業装置2が不接地状態ではない場合、第1制御部40a1に停止信号を出力する。具体的には、昇降制御部40a2は、走行予定ルートL、位置検出装置43が検出した機体位置W1、及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbに位置しているか否か、及び作業装置2が不接地状態か否かを判断する。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる。
【0047】
一方、昇降制御部40a2は、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbに位置し且つ作業装置2が不接地状態である場合、第1制御部40a1に許可信号を出力する。これにより、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を継続、又は再開させる。
なお、昇降制御部40a2は、旋回部L2の始点Lbに侵入する際において、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させればよく、位置検出装置43が検出した機体位置W1が旋回部L2の始点Lbの手前ではなく旋回部L2の始点Lbに位置している場合に、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させてもよい。斯かる場合において、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbに位置し且つ作業装置2が接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に停止信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を停止させる。また、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbに位置し且つ作業装置2が不接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に許可信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を再開させる。
【0048】
つぎに、第1制御部40a1が機体3を後進させる前に昇降制御部40a2が作業装置
2を接地状態から不接地状態に上昇させる場合について説明すると、昇降制御部40a2は、後進部L1bの始点La2に侵入する際において、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。具体的には、位置検出装置43が検出した機体位置W1が後進部L1bの始点La1の手前に位置している場合、予め設定された高さ(第1高さ)に基づいて第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させ、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。
【0049】
また、昇降制御部40a2は、機体位置W1が後進部L1bの始点La2に位置し且つ作業装置2が不接地状態ではない場合、第1制御部40a1に停止信号を出力する。具体的には、昇降制御部40a2は、走行予定ルートL、位置検出装置43が検出した機体位置W1、及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて、機体位置W1が後進部L1bの始点La2に位置しているか否か、及び作業装置2が不接地状態か否かを判断する。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる。
【0050】
一方、昇降制御部40a2は、機体位置W1が後進部L1bの始点La2に位置し且つ作業装置2が不接地状態である場合、第1制御部40a1に許可信号を出力する。これにより、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を継続、又は再開させる。
なお、昇降制御部40a2は、後進部L1bの始点La2に侵入する際において、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させればよく、位置検出装置43が検出した機体位置W1が後進部L1bの始点La2の手前ではなく後進部L1bの始点La2に位置している場合に、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させてもよい。斯かる場合において、機体位置W1が後進部L1bの始点La1に位置し且つ作業装置2が接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に停止信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を停止させる。また、機体位置W1が後進部L1bの始点La2に位置し且つ作業装置2が不接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に許可信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を再開させる。
【0051】
さらに、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1が機体3を旋回から直進又は後進から前進させる前に作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる。言い換えると、自動走行制御部40a(第1制御部40a1)は、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させてから機体3を旋回から直進、又は後進から前進させる。
【0052】
まず、第1制御部40a1が機体3を旋回から直進させる前に昇降制御部40a2が作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる場合について説明すると、昇降制御部40a2は、直進部L1の始点Laに侵入する際において、昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる。具体的には、位置検出装置43が検出した機体位置W1が直進部L1の始点Laの手前に位置している場合、予め設定された高さ(第2高さ:接地状態における昇降装置8の高さ)に基づいて第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させ、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる。
【0053】
また、昇降制御部40a2は、機体位置W1が直進部L1の始点Laに位置し且つ作業装置2が接地状態ではない場合、第1制御部40a1に停止信号を出力する。具体的には、昇降制御部40a2は、走行予定ルートL、位置検出装置43が検出した機体位置W1、及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて、機体位置W1が直進部L1の始点Laに位置しているか否か、及び作業装置2が接地状態か否かを判断する。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる。
【0054】
一方、昇降制御部40a2は、機体位置W1が直進部L1の始点Laに位置し且つ作業装置2が接地状態である場合、第1制御部40a1に許可信号を出力する。これにより、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を継続、又は再開させる。
なお、昇降制御部40a2は、直進部L1の始点Laに侵入する際において、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させればよく、位置検出装置43が検出した機体位置
W1が直進部L1の始点Laの手前ではなく直進部L1の始点Laに位置している場合に、昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させてもよい。斯かる場合において、機体位置W1が直進部L1の始点Laに位置し且つ作業装置2が不接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に停止信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を停止させる。また、機体位置W1が直進部L1の始点Laに位置し且つ作業装置2が接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に許可信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を再開させる。
【0055】
つぎに、第1制御部40a1が機体3を後進から前進させる前に昇降制御部40a2が作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる場合について説明すると、昇降制御部40a2は、前進部L1aの始点La1に侵入する際において、昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる。具体的には、位置検出装置43が検出した機体位置W1が前進部L1aの始点La1の手前に位置している場合、予め設定された高さ(第2高さ)に基づいて第6制御弁17fを制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させ、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる。
【0056】
また、昇降制御部40a2は、機体位置W1が前進部L1aの始点La1に位置し且つ作業装置2が接地状態ではない場合、第1制御部40a1に停止信号を出力する。具体的には、昇降制御部40a2は、走行予定ルートL、位置検出装置43が検出した機体位置W1、及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて、機体位置W1が前進部L1aの始点La1に位置しているか否か、及び作業装置2が接地状態か否かを判断する。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる。
【0057】
一方、昇降制御部40a2は、機体位置W1が前進部L1aの始点La1に位置し且つ作業装置2が接地状態である場合、第1制御部40a1に許可信号を出力する。これにより、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を継続、又は再開させる。
なお、昇降制御部40a2は、前進部L1aの始点La1に侵入する際において、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させればよく、位置検出装置43が検出した機体位置W1が前進部L1aの始点La1の手前ではなく前進部L1aの始点La1に位置している場合に、昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させてもよい。斯かる場合において、機体位置W1が前進部L1aの始点La1に位置し且つ作業装置2が不接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に停止信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を停止させる。また、機体位置W1が前進部L1aの始点La1に位置し且つ作業装置2が接地状態であると、昇降制御部40a2は、第1制御部40a1に許可信号を出力し、第1制御部40a1は、走行装置7の走行を再開させる。
【0058】
作業機1は、不接地状態における昇降装置8の高さの入力を受け付ける入力装置を備えている。具体的には、入力装置は、少なくとも上述した第1高さの入力を受付可能であり、昇降制御部40a2は、入力装置が受け付けた高さ(第1高さ)に基づいて、昇降制御部40a2は、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。本実施形態において、入力装置は、第1高さに加えて第2高さの入力を受け付ける。入力装置は、高さの入力を受付可能な装置であり、例えば入力画面を表示可能な表示装置50や、予め第1高さ及び第2高さに入力操作可能な操作スイッチである。本実施形態において、入力装置は表示装置50である。表示装置(入力装置)50が入力を受け付けた第1高さ及び第2高さは記憶装置52又は記憶部44に記憶される。
【0059】
図5A、
図5B、
図5Cに示すように、表示装置50の表示部51は、例えば第1高さの入力方法を案内する案内画面M1と、第1高さの入力を受け付ける入力画面(以下、第1入力画面M2という)と、第2高さの入力を受け付ける入力画面(以下、第2入力画面M3)と、を表示する。
図5Aに示すように、表示装置50は、作業者が当該表示装置50に所定の操作を行った場合に表示部51に案内画面M1を表示し、案内画面M1には、第1高さの入力方法を
案内する第1案内部61が表示される。第1案内部61は、例えば、作業者にポジションレバー42gを最上げするよう指示する旨が表示する。なお、本実施形態において、第1案内部61は、所定の文章で第1高さの入力方法を表示するが、アイコンや図面で表示するような構成であってもよい。
【0060】
また、
図5Aに示すように、案内画面M1には、作業装置2を選択する選択部62が表示されていてもよい。選択部62は、昇降装置8に連結された作業装置2を手動で選択する部分であり、例えば作業装置2を一覧で表示する。なお、選択部62における作業装置2の選択方法は上述したような一覧に限定されず、作業装置2の名称を任意で入力して選択するような構成であってもよいし、既存技術を適用可能である。ポジションレバー42gが最上げ操作されると、当該ポジションレバー42gの操作信号が制御装置40に入力され、制御装置40を介して表示装置50が当該操作信号を取得する。表示装置50がポジションレバー42gの最上げ操作の操作信号を取得すると、表示装置50は、表示部51に第1入力画面M2を表示する。
【0061】
表示装置50は、制御装置40が算出した実伸長量を取得し、当該実伸長量に基づいて第1高さの入力を受け付ける。具体的には、
図5Bに示すように、第1入力画面M2は、第1案内部61とは別に第1高さの入力方法を案内する第2案内部65と、実伸長量に基づく昇降装置8の高さを表示する第1高さ表示部66と、第1高さの入力を確定させる第1受付具67と、を表示する。第2案内部65は、例えば、上限設定ダイヤル42hを操作して、作業装置2が不接地状態になるよう昇降装置8を下降させる旨が表示する。作業装置2が不接地状態になるよう作業者が上限設定ダイヤル42hを操作すると、
図5Dに示すように昇降装置8が下降する。
【0062】
図5Bに示すように、第1高さ表示部66は、実伸長量に基づく昇降装置8の高さを例えば昇降度合い(上限設定ダイヤル42hを最上げ操作した場合を100%とした割合)として表示する。このため、第1高さ表示部66は、上限設定ダイヤル42hの操作に応じて、表示する値を変更する。
図5Bに示すように、第1受付具67は、本実施形態において表示部51に表示された操作可能な表示画像であり、本実施形態においては、「次へボタン」である。第1受付具67が操作されると、表示装置50は、制御装置40が算出した実伸長量を取得し、当該実伸長量に基づく高さ(第1入力高さ)が所定の第1閾値以上であるか否かを判断する。表示装置50は、第1入力高さが第1閾値以上である場合、第1入力高さを第1高さの入力として受け付ける。一方、表示装置50は、第1入力高さが第1閾値未満である場合、第1入力高さを第1高さの入力として受け付けず、表示部51に所定の警告画面を表示させる。なお、第1閾値は、記憶装置52に予め記憶された所定の値であり任意に変更可能であってもよい。
【0063】
第1受付具67が操作されて表示装置50が第1入力高さを第1高さの入力として受け付けると、当該表示装置50は、案内画面M1で選択された作業装置2と、入力を受け付けた第1高さと、を対応づけて記憶装置52に記憶させる。
表示装置50は、記憶装置52に第1高さを記憶させると、
図5Cに示すように、表示部51に第2入力画面M3を表示する。表示装置50は、第2入力画面M3において制御装置40が算出した実伸長量を取得し、当該実伸長量に基づいて第2高さの入力を受け付ける。具体的には、
図5Cに示すように、第2入力画面M3は、第2高さの入力方法を案内する第3案内部70と、実伸長量に基づく昇降装置8の高さを表示する第2高さ表示部71と、第2高さの入力を受け付ける第2受付具72と、を表示する。第3案内部70は、例えば、ポジションレバー42gを操作して、作業装置2が接地状態になるよう昇降装置8を昇降させる旨が表示する。
【0064】
図5Cに示すように、第2高さ表示部71は、実伸長量に基づく昇降装置8の高さを例えば昇降度合い(ポジションレバー42gを最上げ操作した場合を100%とした割合)として表示する。このため、第2高さ表示部71は、ポジションレバー42gの操作に応じて、表示する値を変更する。
図5Cに示すように、第2受付具72は、本実施形態において第2受付具72は表示部
51に表示された操作可能な表示画像であり、本実施形態においては、「次へボタン」である。第2受付具72が操作されると、表示装置50は、制御装置40が算出した実伸長量を取得し、当該実伸長量に基づく高さ(第2入力高さ)が所定の第2閾値以下であるか否かを判断する。表示装置50は、第2入力高さが第2閾値以下である場合、第2入力高さを第2高さの入力として受け付ける。一方、表示装置50は、第2入力高さが第2閾値を超過している場合、第2入力高さを第2高さの入力として受け付けず、表示部51に所定の警告画面を表示させる。なお、第2閾値は、記憶装置52に予め記憶された所定の値であり任意に変更可能であってもよい。
【0065】
第2受付具72が操作されて表示装置50が第2入力高さを第2高さの入力として受け付けると、当該表示装置50は、案内画面M1で選択された作業装置2と、入力を受け付けた第2高さと、を対応づけて記憶装置52に記憶させる。表示装置50が第2高さを記憶装置52に記憶させる。第2制御部(昇降制御部)40a2は、昇降装置8に接続されている作業装置2に応じて、記憶装置52から第1高さ及び第2高さを取得し、表示装置50が入力を受け付けた第1高さ及び第2高さ、即ち第1高さに対応する伸長量及び第2高さに対応する伸長量に基づいて昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態、又は不接地状態から接地状態に昇降させる。なお、表示装置50は、所定の選択画面を表示して作業者が昇降装置8に接続されている作業装置2を選択することで当該作業装置2の情報を取得してもよく、その取得方法は何でもよい。
【0066】
なお、本実施形態において、表示装置50は第1高さの設定後に第2入力画面M3に移行して第2高さの設定に移行するが、表示装置50は自動走行制御部40aが作業機1の自動走行を開始する前に第1高さ及び第2高さを設定できればよく、第1高さ及び第2高さの設定の手順はこの限りではない。例えば、自動走行制御部40aが作業機1の自動走行を開始時に第2高さを設定してもよい。
【0067】
図2に示すように作業機1は補正部45を備えている。補正部45は、入力装置(表示装置50)が受け付けた高さ(第1高さ)を所定の補正値に基づいて、当該第1高さよりも高く補正する。本実施形態において、補正部45は、昇降制御部40a2が有しており、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。補正値は記憶装置52に予め記憶されており、表示装置50を操作することで任意に設定を変更できるような構成であってもよい。補正部45は、補正値を記憶装置52から取得し、表示装置50が受け付けた第1高さに補正値(例えばα=1.1)を乗算することで、当該第1高さよりも高い補正後の第1高さを設定する。本実施形態において、昇降制御部40a2は、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる場合、当該補正後の第1高さに基づいて昇降装置8を上昇させる。なお、補正部45は、表示装置50が受け付けた第1高さを所定の補正値に基づいて、当該第1高さよりも高く補正すればよく、補正値やその計算方法は上記方法に限定されない。例えば、補正部45は、第1高さに補正値を加算することで、当該第1高さよりも高い補正後の第1高さを設定してもよい。
【0068】
また、
図2に示すように作業機1は、報知装置46を備えている。報知装置46は、自動走行制御部40aが機体3を旋回、又は後進させる際に、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させるまでの間、所定の警告を行う。具体的には、自動走行制御部40aは、第1制御部40a1が機体3を旋回、又は後進させる際に、昇降制御部40a2が作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させるまでの間、報知装置46に所定の警告を行わせる。また、報知装置46は、自動走行制御部40aが機体3を旋回から直進、又は後進から前進させる際に、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させるまでの間、所定の警告を行ってもよい。斯かる場合、自動走行制御部40aは、第1制御部40a1が機体3を旋回から直進、又は後進から前進させる際に、昇降制御部40a2が作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させるまでの間、報知装置46に所定の警告を行わせる。
【0069】
報知装置46は、制御装置40と通信可能に接続されており、制御装置40(自動走行制御部40a)によって制御される。報知装置46は、音、光、映像、或いはそれらの組
み合わせによって、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる旨を報知する。具体的には、報知装置46が音によって報知する場合、報知装置46は、音声で通知を行う音声出力装置(スピーカ)である。なお、報知装置46が映像によって作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる旨を報知する場合、報知装置46は表示装置50であり、表示装置50は所定の警告画面を表示する。また、報知装置46は、運転席に周囲に設けられ、且つ複数のランプ(例えば、LED電球)から構成された発光装置(インジケータ)であってもよく、表示装置50、音声出力装置、及び発光装置のうちのいずれか1つ以上である。
【0070】
以下、表示装置(入力装置)50が昇降装置8の高さ(第1高さ及び第2高さ)の入力を受け付け、自動走行制御部40aが作業機1の自動走行を開始して、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御する一連の流れを説明する。
図6Aに示すように、作業者が表示装置50に所定の操作を行った場合、表示装置50が表示部51に案内画面M1を表示する(S1)。表示部51に案内画面M1が表示されると、表示装置50は、制御装置40から入力された信号に基づいて、ポジションレバー42gが最上げ操作されているか否かを判断する(S2)。
【0071】
作業者がポジションレバー42gを最上げして、制御装置40から表示装置50に当該ポジションレバー42gの最上げ操作の操作信号が出力されて、表示装置50がポジションレバー42gは最上げ操作されていると判断した場合(S2,Yes)、表示装置50は、表示部51に第1入力画面M2を表示する(S3)
図6Aに示すように、表示装置50は、表示部51に第1入力画面M2を表示すると(S3)、第1受付具67が操作されたか否かを判断する(S4)。表示装置50が第1受付具67は操作されたと判断した場合(S4,Yes)、つまり作業者が上限設定ダイヤル42hを操作して、作業装置2が不接地状態になるよう昇降装置8を昇降させ、第1受付具67を操作した場合、表示装置50は、制御装置40が算出した実伸長量を取得して、当該実伸長量に基づく高さ(第1入力高さ)が第1閾値以上であるか否かを判断する(S5)。表示装置50は、第1入力高さが第1閾値以上である場合(S5,Yes)、第1入力高さを第1高さの入力として受け付ける(S6)。第1受付具67が操作されて表示装置50が第1入力高さを第1高さの入力として受け付けると(S6)、表示装置50は、案内画面M1で選択された作業装置2と、入力を受け付けた第1高さと、を対応づけて記憶装置52に記憶させる(S7)。
【0072】
図6Aに示すように、表示装置50は、記憶装置52に第1高さを記憶させると(S7)、表示部51に第2入力画面M3を表示する(S8)。表示装置50は、表示部51に第2入力画面M3を表示すると(S8)、第2受付具72が操作されたか否かを判断する(S9)。表示装置50が第2受付具72は操作されたと判断した場合(S9,Yes)、つまり作業者がポジションレバー42gを操作して、作業装置2が接地状態になるよう昇降装置8を昇降させ、第2受付具72を操作した場合、表示装置50は、制御装置40が算出した実伸長量を取得して、当該実伸長量に基づく高さ(第2入力高さ)が第2閾値以下であるか否かを判断する(S10)。
【0073】
図6Aに示すように、表示装置50は、第2入力高さが第2閾値以下である場合(S10,Yes)、第2入力高さを第2高さの入力として受け付ける(S11)。第2受付具72が操作されて表示装置50が第2入力高さを第2高さの入力として受け付けると(S11)、表示装置50は、案内画面M1で選択された作業装置2と、入力を受け付けた第2高さと、を対応づけて記憶装置52に記憶させる(S12)。
【0074】
図6Aに示すように、表示装置50が記憶装置52に第2高さを記憶させると(S12)、ポジションレバー42gが第2入力高さに対応する操作位置であるか否かを判断する(S13)。表示装置50は、記憶装置52から制御装置40を介してポジションレバー42gの操作信号を取得し、当該取得した操作信号に基づいてポジションレバー42gが第2入力高さに対応する操作位置であるか否かを判断する。表示装置50がポジションレバー42gは第2入力高さに対応する操作位置であると判断した場合(S13,Yes)、自動走行を開始するか否か確認する所定の確認画面を表示して、自動走行を開始するか
否かの確認を行う(S14)。具体的には、確認画面は、例えば「次へボタン」や「確認ボタン」等を表示して当該ボタンが操作され、自動走行を開始するか否かの判断を行う。
【0075】
一方、表示装置50がポジションレバー42gは第2入力高さに対応する操作位置ではないと判断した場合(S13,No)、ポジションレバー42gの操作位置を変更する必要があり、自動走行を開始できない旨を表示する所定の指示画面を表示する(S15)。
図6Aに示すように、表示装置50が表示部51に確認画面を表示して(S14)、作業者が確認画面に表示された「次へボタン」や「確認ボタン」等を操作する等所定の操作を行った場合、即ち表示装置50が自動走行を開始するか否かを確認した場合、表示装置50は、当該ボタンが操作され且つ自動走行を開始する指示信号を制御装置40(自動走行制御部40a)に出力する(S16)。自動走行制御部40aは、表示装置50から指示信号を取得すると作業機1の自動走行を開始し(S17)、自動走行フェーズに移行する。
【0076】
自動走行制御部40aが自動走行を開始すると(S17)、
図6Bに示すように、制御装置40が位置検出装置43の検出した機体位置W1と記憶装置52に記憶された走行予定ルートLとに基づいて、機体位置W1が旋回部L2の始点Lbの手前、又は後進部L1bの始点La2の手前に位置しているか否かを判断する(S18)。制御装置40が機体位置W1は旋回部L2の始点Lbの手前又は後進部L1bの始点La2の手前に位置していると判断した場合(S18,Yes)、昇降制御部40a2は、補正部45が補正した第1高さに基づいて昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる(S19)
図6Bに示すように、昇降制御部40a2が昇降装置8を上昇させると(S19)、自動走行制御部40aは、報知装置46に所定の警告を行わせる(S20)。自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を行わせると(S20)、昇降制御部40a2は、補正後の第1高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が不接地状態か否かを判断する(S21)。昇降制御部40a2が作業装置2は不接地状態であると判断した場合(S21、Yes)、自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を終了させる(S22)。
【0077】
また、
図6Bに示すように、昇降制御部40a2が作業装置2は接地状態であると判断した場合(S21、No)、制御装置40は機体位置W1が旋回部L2の始点Lb又は後進部L1bの始点La2に位置しているか否かを判断する(S23)。制御装置40が機体位置W1は旋回部L2の始点Lb又は後進部L1bの始点La2に位置していないと判断した場合(S24,No)、昇降制御部40a2はS21に戻り、補正後の第1高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が不接地状態か否かを判断する(S21)。
【0078】
一方、制御装置40が機体位置W1は旋回部L2の始点Lb又は後進部L1bの始点La2に位置していると判断した場合(S23,Yes)、
図6Bに示すように、昇降制御部40a2は補正後の第1高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が不接地状態か否かを判断する(S24)。昇降制御部40a2が作業装置2は不接地状態であると判断した場合(S24、Yes)、昇降制御部40a2は第1制御部40a1に許可信号を出力する(S25)。第1制御部40a1は昇降制御部40a2から許可信号を取得すると走行装置7の走行を継続、又は再開させる(S26)。斯かる場合、自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を終了させる。
【0079】
また、
図6Bに示すように、昇降制御部40a2が作業装置2は接地状態であると判断した場合(S24、No)、昇降制御部40a2は第1制御部40a1に停止信号を出力する(S27)。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる(S28)。第1制御部40a1が走行装置7の走行を停止させると(S28)、昇降制御部40a2はS24に戻り、補正後の第1高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が不接地状態か否かを判断する(S24)。
【0080】
これにより、自動走行制御部40aは、作業装置2を不接地状態に上昇させた状態で旋回部L2の始点Lbから機体3を旋回させ、作業装置2を不接地状態に上昇させた状態で
後進部L1bの始点La2から機体3を後進させる。
さらに、
図6Bに示すように、S18において、制御装置40が機体位置W1は旋回部L2の始点Lbの手前又は後進部L1bの始点La2の手前に位置していないと判断した場合(S18,No)、制御装置40が位置検出装置43の検出した機体位置W1と記憶装置52に記憶された走行予定ルートLとに基づいて、機体位置W1が直進部L1の始点Laの手前、又は前進部L1aの始点La1の手前に位置しているか否かを判断する(S29)。
【0081】
制御装置40が機体位置W1は直進部L1の始点Laの手前、又は前進部L1aの始点La1の手前に位置していると判断した場合(S29,Yes)、昇降制御部40a2は、第2高さに基づいて昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させる(S30)。昇降制御部40a2が昇降装置8を下降させると(S30)、自動走行制御部40aは、報知装置46に所定の警告を行わせる(S31)。自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を行わせると(S31)、昇降制御部40a2は第2高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が接地状態か否かを判断する(S32)。昇降制御部40a2が作業装置2は接地状態であると判断した場合(S32、Yes)、自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を終了させる(S33)。
【0082】
また、
図6Bに示すように、昇降制御部40a2が作業装置2は不接地状態であると判断した場合(S32、No)、制御装置40は機体位置W1が直進部L1の始点La又は前進部L1aの始点La1に位置しているか否かを判断する(S34)。制御装置40が機体位置W1は直進部L1の始点La又は前進部L1aの始点La1に位置していないと判断した場合(S34,No)、昇降制御部40a2はS32に戻り、第2高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が接地状態か否かを判断する(S32)。
【0083】
一方、
図6Bに示すように、制御装置40が機体位置W1は直進部L1の始点La又は前進部L1aの始点La1に位置していると判断した場合(S34,Yes)、昇降制御部40a2は第2高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が接地状態か否かを判断する(S35)。昇降制御部40a2が作業装置2は接地状態であると判断した場合(S35、Yes)、昇降制御部40a2は第1制御部40a1に許可信号を出力する(S36)。第1制御部40a1は昇降制御部40a2から許可信号を取得すると走行装置7の走行を継続、又は再開させる(S37)。斯かる場合、自動走行制御部40aが報知装置46に所定の警告を終了させる。
【0084】
図6Bに示すように、昇降制御部40a2が作業装置2は不接地状態であると判断した場合(S35、No)、昇降制御部40a2は第1制御部40a1に停止信号を出力する(S38)。第1制御部40a1は、停止信号を取得すると走行装置7の走行を停止させる(S39)。昇降制御部40a2はS35に戻り、第2高さ及び制御装置40が算出した実伸長量に基づいて作業装置2が接地状態か否かを判断する(S35)。
【0085】
これにより、自動走行制御部40aは、作業装置2を接地状態に下降させた状態で直進部L1の始点Laから機体3を直進させ、作業装置2を接地状態に下降させた状態で前進部L1aの始点La1から機体3を前進させる。
上述した作業機1は、機体3と、機体3に作業装置2を連結し、且つ作業装置2を接地させる接地状態と接地させない不接地状態とに昇降可能な昇降装置8と、走行予定ルートLに基づいて機体3を自動走行させる自動走行制御部40aと、を備え、自動走行制御部40aは、昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる昇降制御部40a2を有し、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させてから機体3を旋回、又は後進させる。上記構成によれば、作業装置2が接地状態、又は接地状態から不接地状態への移行の最中に、機体3が旋回又は後進を行わず、作業装置2が不接地状態に上昇、即ち接地していない状態で、機体3が旋回又は後進を行う。このため、機体3が旋回又は後進する際に、確実に作業装置2を不接地状態に上昇させることができる。
【0086】
また、作業機1は、不接地状態における昇降装置8の高さの入力を受け付ける入力装置を備え、昇降制御部40a2は、入力装置が受け付けた高さに基づいて昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。上記構成によれば、不接地状態における昇降装置8の高さを任意に入力でき、作業装置2に応じて当該高さを変更できる。このため、作業装置2によって不接地状態おける昇降装置8の高さが異なる場合であっても、機体3が旋回、後退する際に確実に作業装置2を不接地状態に上昇させることができる。
【0087】
また、入力装置は、高さの入力を受け付ける入力画面を表示する表示装置50であり、表示装置50は、作業装置2と、入力画面が受け付けた高さと、を対応付けて記憶する記憶装置52を有し、昇降制御部40a2は、作業装置2に対応する高さを記憶装置52から取得する。上記構成によれば、作業装置2毎に対応する高さを入力することができ、作業装置2が接地状態で、機体3が旋回又は後進を行うことを確実に抑制できる。
【0088】
また、入力装置が受け付けた高さを所定の補正値に基づいて当該高さよりも高く補正する補正部45を備えており、昇降制御部40a2は、補正部45が補正した補正後の高さに基づいて昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させる。上記構成によれば、入力装置が受け付けた高さよりも高い位置まで昇降装置8を上昇させることで、圃場の傾斜や作業機1の振動によって、機体3が旋回又は後進を行う際に作業装置2が接地することを抑制できる。
【0089】
また、自動走行制御部40aが機体3を旋回、又は後進させる際に、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して、作業装置2を接地状態から不接地状態に上昇させるまでの間、所定の警告を行う報知装置46を備えている。上記構成によれば、作業者は、自動走行制御部40aによって作業機1が旋回又は後進している際に作業装置2を不接地状態から下降させることができないことを容易に認知することができる。
【0090】
また、昇降制御部40a2は、昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降でき、自動走行制御部40aは、昇降制御部40a2が昇降装置8を制御して、作業装置2を不接地状態から接地状態に下降させてから機体3を旋回から直進、又は後進から前進させる。上記構成によれば、作業装置2が不接地状態の場合に、機体3が旋回から直進に移行し、又は後進から前進に移行することを阻止し、確実に作業装置2に作業させることができる。
【0091】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 作業機(トラクタ)
2 作業装置
3 機体
8 昇降装置
40a 自動走行制御部
40a2 昇降制御部(第2制御部)
45 補正部
46 報知装置
50 表示装置(入力装置)
52 記憶装置
L 走行予定ルート