(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230904BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20230904BHJP
G01R 33/54 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B5/055 370
G01N24/08 510Y
G01R33/54
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2019236884
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 知樹
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0299205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0018097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 22/00 - 22/04
24/00 - 24/14
G01R 33/28 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象が発生する核磁気共鳴信号を収集して検査対象の画像を取得する撮像部と、パルスシーケンスを用いて前記撮像部を制御する撮像制御部と、を備え、
前記パルスシーケンスは、コントラストが異なる複数の画像をそれぞれ取得する複数の撮像シーケンスを組み合わせたパルスシーケンスを含み、前記複数の撮像シーケンスのうち一つの撮像シーケンスは、反転パルスの印加と前記反転パルス印加から反転時間が経過した後に信号を収集する信号収集シーケンスとを含むIR(反転回復)シーケンスであり、
前記撮像制御部は、
一つの前記IRシーケンスの反転時間内で前記反転パルスの印加タイミングをずらしながら、
複数のスライスについて、それぞれIRシーケンスを実行し、
第1のスライスに対応するIRシーケンスの反転パルスと
第2のスライスに対応するIRシーケンスの反転パルスとの間で、
前記第1のスライス及び前記第2のスライスとは別のスライスについて、前記IRシーケンスとは異なる撮像シーケンスを実行することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像制御部は、
前記第1のスライス及び前記第2のスライスを、互いに空間的に隣接しないスライスとする制御を行うことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像制御部は、
前記複数のスライスを奇数番目のスライスと偶数番目のスライスに分け、時間的に隣り合う反転パルスを印加するスライスを前記奇数番目のスライスとし、前記異なる撮像シーケンスを実行するスライスを前記偶数番目のスライスとする第1の計測と、
前記時間的に隣り合う反転パルスを印加するスライスを前記偶数番目のスライスとし、前記異なる撮像シーケンスを実行するスライスを前記奇数番目のスライスとする第2の計測と、を実行することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像制御部は、
前記複数のスライスが含まれる検査対象の領域を第1及び第2の領域に分割し、前記IRシーケンスを実行するスライスを前記第1の領域に含まれるスライスとし、前記異なる撮像シーケンスを実行するスライスを前記第2の領域に含まれるスライスとする第1の計測と、
前記IRシーケンスを実行するスライスを前記第2の領域に含まれるスライスとし、前記異なる撮像シーケンスを実行するスライスを前記第1の領域に含まれるスライスとする第2の計測と、を実行することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像制御部は、前記第1の領域及び前記第2の領域に含まれるスライスをそれぞれ奇数番目のスライスと偶数番目のスライスとに分け、前記第1の計測及び前記第2の計測を、前記奇数番目のスライス及び前記偶数番目のスライスのそれぞれについて分けて実行することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像制御部は、
第1のスライスに対応するIRシーケンスの反転パルスと
第2のスライスに対応するIRシーケンスの反転パルスとの間で、互いにコントラストが異なる複数種の撮像シーケンスを実行することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記複数種の撮像シーケンスは、T1強調シーケンス、T2強調シーケンス、T2*強調シーケンス、プロトン強調シーケンス、拡散強調シーケンスのいずれかを含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記IRシーケンスは、FLAIRシーケンス、STIRシーケンス、DIRシーケンスのいずれかであることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記IRシーケンスの信号取得シーケンス及び前記IRシーケンスとはコントラストが異なる撮像シーケンスの少なくとも一つは、1回の励起後に複数のエコー信号を計測するシーケンスであることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項10】
静磁場発生部と、静磁場に傾斜磁場を与える傾斜磁場発生部と、高周波パルスを発生する送信部と、核磁気共鳴信号を受信する受信部とを備え、所定のパルスシーケンスに従って前記傾斜磁場発生部、前記送信部及び前記受信部を動作させて検査対象の画像を取得する磁気共鳴撮像装置であって、
前記所定のパルスシーケンスとして、
反転パルスの印加と前記反転パルス印加から反転時間が経過した後に信号を収集する信号収集シーケンスとを含み、
一つの反転パルス印加後の反転時間内で印加タイミングをずらしながら反転パルスを印加し、複数のスライスからなる第1のスライス群の画像を取得するIR(反転回復)シーケンスと、
前記IRシーケンスにおける1のスライスに対する反転パルスとそれに続く別のスライスに対する反転パルスとの間に挿入され、前記IRシーケンスとはコントラストが異なる画像であって前記第1のスライス群とは異なる第2のスライス群の画像を取得する撮像シーケンスと、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項11】
所定のパルスシーケンスに従って検査対象の画像を取得する磁気共鳴撮像装置の制御方法であって、
前記所定のパルスシーケンスは、反転パルスの印加と前記反転パルス印加から反転時間が経過した後に信号を収集する信号収集シーケンスとを含み、
一つの反転パルス印加後の反転時間内で印加タイミングをずらしながら反転パルスを印加し、複数のスライスからなる第1のスライス群の画像を取得するIR(反転回復)シーケンスと、
前記IRシーケンスにおける1のスライスに対する反転パルスとそれに続く別のスライスに対する反転パルスとの間に挿入され、前記IRシーケンスとはコントラストが異なる画像であって前記第1のスライス群とは異なる第2のスライス群の画像を取得する撮像シーケンスと、を含み、
前記第1のスライス群と第2のスライス群とを入れ替えて、前記IRシーケンスと前記撮像シーケンスとを繰り返し、前記第1のスライス群及び前記第2のスライス群に含まれる全スライスについて、IR画像及びそれとコントラストの異なる画像を取得する制御を行うことを特徴とする磁気共鳴撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置という)による撮像のための技術に係り、特に、FLAIR画像等を含む複数のコントラストの異なる画像を同時に取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIの撮像手法の一つにFLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)と呼ばれる撮像方法がある。この撮像方法では、スピンを反転させる高周波パルス(IRパルス)を印加し、水のスピンと脂肪のスピンとの縦緩和時間の差を利用して、水のスピンが横磁化のみとなるタイミングで、信号計測のためのパルスシーケンス、例えば、FSE等のパルスシーケンスを実行し、水のスピンからの信号を抑制したエコー信号を計測する。IRパルスから信号計測までの待ち時間(TI)は、信号計測時間に比べ長いので、この時間を有効に使うために、通常、スライス位置を異ならせて順次IRパルスと信号計測を行うマルチスライス撮像が行われる。
【0003】
しかし、IRパルスとIRパルスとの間隔は、信号計測時間に依存するので、信号計測において例えば10~20エコーを計測しようとすると、ある程度間隔を空けざるを得ない。即ち待ち時間TIの活用には制限がある。
【0004】
一方、MRI装置を用いた検査では、一つのコントラスト画像だけでなく、プロトン(PD)画像、T1強調(T1W)画像、T2強調(T2W)画像、など複数のコントラスト画像を取得したいという要請がある。このような要請に対し、例えば、特許文献1には、上述したFLAIRとT2W撮像とを組み合わせた撮像方法が提案されている。この方法では、一つのスライスについてIRパルスを印加した後、複数スライスを同時に励起する高速スピンエコー法(FSE)シーケンスを用いて、FLAIR画像とT2W画像を同時に取得する。
【0005】
また特許文献2には、マルチスライスのFLAIRにおいて、複数のスライスのIRパルスの後に、1回目のIRパルス印加後の信号計測までの間に、FLAIRで励起されたスライスとは異なるスライスに対し、T2強調撮像などを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許10261153号
【文献】米国特許出願公開公報2018/0128891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術では、1回の撮像で2種の画像を取得できるという利点はあるが、IRシーケンスの待ち時間TIは活用されていないので、時間の短縮には限界がある。
【0008】
特許文献2に記載された技術は、上述したFLAIRにおける待ち時間の利用と複数コントラスト画像の同時取得という2つの要請を満たすものであるが、信号計測時間に対応するIRパルス間の時間は依然として待ち時間として残り、全体としての撮像時間の短縮効果は限定的である。
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決し、FLAIR画像等を含む複数のコントラスト画像を最短の撮像時間で取得する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、IRパルス間の間隙を利用して複数のコントラスト撮像を行う。この際、スライス位置を制御し、時間的に隣接する撮像間でそれぞれ用いるRFパルスの影響を最小にする。
【0011】
即ち本発明の第1の態様のMRI装置は、検査対象が発生する核磁気共鳴信号を収集して検査対象の画像を取得する撮像部と、パルスシーケンスを用いて前記撮像部を制御する撮像制御部と、を備え、前記パルスシーケンスは、コントラストが異なる複数の画像をそれぞれ取得する複数の撮像シーケンスを組み合わせたパルスシーケンスを含み、前記複数の撮像シーケンスのうち一つの撮像シーケンスは、反転パルスの印加と前記反転パルス印加から反転時間が経過した後に信号を収集する信号収集シーケンスとを含むIR(反転回復)シーケンスであり、前記撮像制御部は、複数のスライスについて、前記IRシーケンスの前記反転パルスの印加タイミングをずらしながら、複数回のIRシーケンスを実行し、1回のIRシーケンスの反転パルスと次回のIRシーケンスの反転パルスとの間で、それら2つの反転パルスが印加されたスライスとは別のスライスについて、前記IRシーケンスとは異なる撮像シーケンスを実行することを特徴とする。
を特徴とする。
【0012】
また本発明の第2の態様のMRI装置は、静磁場発生部と、静磁場に傾斜磁場を与える傾斜磁場発生部と、高周波パルスを発生する送信部と、核磁気共鳴信号を受信する受信部とを備え、所定のパルスシーケンスに従って前記傾斜磁場発生部、前記送信部及び前記受信部を動作させて検査対象の画像を取得する磁気共鳴撮像装置であって、前記所定のパルスシーケンスとして、反転パルスの印加と前記反転パルス印加から反転時間が経過した後に信号を収集する信号収集シーケンスとを含み、第1のスライス群の画像を取得するIR(反転回復)シーケンスと、1回のIRシーケンスの反転パルスと次回のIRシーケンスの反転パルスとの間に挿入され、前記IRシーケンスとはコントラストが異なる画像であって前記第1のスライス群とは異なる第2のスライス群の画像を取得する撮像シーケンスと、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す図。
【
図2】第一実施形態のMRI装置が実行するパルスシーケンスの一例を示す図。
【
図3】
図1の撮像シーケンスのうちFLAIRシーケンスを示す図。
【
図4】(A)、(B)は、それぞれ、第一実施形態及び第二実施形態におけるスライスの撮像順序を説明する図。
【
図5】第二実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
【
図6】第二実施形態のスライス計測順序を説明する図。
【
図7】第三実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
【
図8】第三実施形態のスライス計測順序を説明する図。
【
図9】第四実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のMRI装置の実施形態を説明する。
最初に本発明が適用されるMRI装置の概要を説明する。
図1に示すように、MRI装置100は、主な構成として、撮像部10と、撮像部10が収集した信号を用いて各種演算を行うとともに装置全体の制御を行う計算機20とを備える。
撮像部10は、静磁場を発生するマグネット11、静磁場に磁場勾配を与える傾斜磁場コイル12、高周波磁場を発生するRF送信コイル13、核磁気共鳴信号を受信するRF受信コイル14、及びシーケンサ15を備えている。
【0015】
マグネット11には、発生する静磁場の方向によって、水平磁場方式や垂直磁場方式があり、被検体50が置かれる検査空間に均一な磁場を発生する。傾斜磁場コイル12は、傾斜磁場電源16に接続され、傾斜磁場を発生させる。傾斜磁場コイル12は、互いに直交する3軸方向の傾斜磁場を発生する3組のコイルからなり、これら傾斜磁場コイル12が発生する傾斜磁場を組み合わせることで任意の方向の傾斜磁場を発生させることができる。
【0016】
RF送信コイル13は、高周波磁場発生器17に接続され、被検体50に高周波磁場を照射(送信)する。RF受信コイル14は、受信器18に接続され、被検体(検査対象)50からの核磁気共鳴信号を受信する。核磁気共鳴信号を発生させて受信させる間に傾斜磁場コイル12により、所定の方向の傾斜磁場を所定のタイミングで印加することで核磁気共鳴信号に位相エンコードや周波数エンコードなどの情報を付与することができる。
【0017】
シーケンサ15は、受信器18に検波の基準とする磁気共鳴周波数をセットするとともに、計算機(PC)20からの指示に従って傾斜磁場電源16、高周波磁場発生器17及び受信器18に命令を送り、それぞれ動作させる。
【0018】
計算機20は、受信器18で検波された信号をA/D変換回路を介して受信し、画像再構成などの信号処理を行い、その結果を表示装置等に表示させる。計算機20はCPUやGPUとメモリを備えた汎用の計算機やワークステーションで構成することができ、その諸機能はCPUが、記憶部に記憶されたプログラムを読み込むことで実行するソフトェアとして実現される。ただし、信号処理や演算の一部は、ASICやFPGAなどのハードウェアで実現することもでき、本実施形態ではそれらを含め計算機20という。
【0019】
計算機20には、ユーザとの間でインタラクティブに装置を制御するためのユーザインターフェイス(UI)部30や、計算機20における演算や制御に必要なデータやプログラムなどを格納する記憶装置40(計算機の内部記憶装置及び外部記憶装置を含む)が接続されている。UI部30は、計算機20の演算結果である画像やGUIを表示するディスプレイ31及びユーザからの指令を受付ける入力デバイス32などが備えられている。
【0020】
撮像部10による撮像は、シーケンサ15にセットされたパルスシーケンスとUI部30を介して入力された撮像パラメータとに従って行われる。
【0021】
パルスシーケンスは、RF送信コイル13が発生するRFパルス及び傾斜磁場コイル12が発生する傾斜磁場パルスの強度や印加タイミング、及び受信器18における信号収集時間を定めたもので、撮像方法や撮像目的に応じて種々のパルスシーケンスがあり、これらは予め記憶装置40内に格納されている。
【0022】
撮像パラメータは、エコー時間(TE)、繰り返し時間(TR)、スライス厚やスライス数などを含む。ユーザーが、パルスシーケンスあるいは撮像パラメータを、強調して撮像したい物性値(例えば縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)、見かけの横緩和時間(T2*)、プロトン密度(PD)、拡散係数、など)に応じて設定することにより、物性値の違いの強調度合いが異なる各種の画像(例えば、T1強調画像、T2強調画像、T2*強調画像、プロトン密度強調画像、拡散強調画像等)、即ちコントラストが異なる画像を撮像することができる。
【0023】
計算機20は、UI部30を介して入力されたユーザ指示に従い所定のパルスシーケンスと撮像パラメータをシーケンサ15にセットし、シーケンサ15を介して撮像部10を制御する。この計算機20の機能を撮像制御部21とする。
【0024】
本実施形態では、パルスシーケンスとして、縦磁化を反転させる反転パルス(IRパルス)を用いた撮像シーケンス(IRシーケンス)と、IRシーケンスとはコントラストが異なる画像を取得する撮像シーケンスとを組み合わせて、マルチスライス撮像を行うパルスシーケンスが設定される。マルチスライス撮像では、計算機20のメモリには、受信器で受信した信号をスライス毎に格納する計測空間が準備されるが、本実施形態ではさらにIRシーケンスで収集した信号と、異なるコントラストの撮像シーケンスで収集した信号とをそれぞれ格納する計測空間がスライス毎に準備され、各撮像シーケンスの実行によって順次収集されるエコー信号はスライス毎に且つシーケンス種毎に対応する計測空間に格納される。
【0025】
<第一実施形態>
以下、本実施形態のMRI装置が実行するパルスシーケンスとその制御方法の実施形態を説明する。
【0026】
図2に本実施形態のMRI装置が実行するマルチスライスの
パルスシーケンスの一例を示す。このパルスシーケンスは、FLAIRシーケンス300と、それとはコントラストが異なる画像、例えばT2強調画像を取得する撮像シーケンス400とを含み、スライスを入れ替えながらFLAIRシーケンス300と撮像シーケンス400とを交互に実行する。なお図ではスライス数が6である場合を示している。また図中の符号の「-1」は対象であるスライスの違いを示すためにつけたものであり、総括的な説明では省略する(以下、同じ)。
【0027】
具体的には、まずFLAIRシーケンス300では、スライスS1を選択してIRパルス301-1を印加し、印加から所定のTI時間経過後に信号取得シーケンス302-1を実行し、スライスS1からのエコー信号を収集する。信号取得シーケンス302は、エコー信号を取得するシーケンスであれば特に限定されないが、高速スピンエコー法やエコープラナー法のシーケンスなどの1回の励起RFパルス後に複数のエコー信号を収集できるシーケンスであることが好ましい。
【0028】
FLAIRシーケンス300の一例を
図3に示す。この撮像シーケンスでは、IRパルス301をスライス傾斜磁場パルスGsとともに印加し、所定のスライス内の縦磁化(原子核スピン)を反転させる。スライス傾斜磁場パルスの方向と強度によって所望のスライスを選択できる。IRパルス301を印加してTI時間経過後に、信号取得シーケンス302を開始する。
図3に示す例は、信号取得シーケンス302は高速スピンエコー法のシーケンス(FSE)であり、まず同じスライスを選択して励起用RFパルス(例えば90度パルス)を印加し、その後エコー信号Echoを生じさせるためのリフォーカス用RFパルス(例えば180度パルス)繰り返し印加しながら、リフォーカス用RFパルスとリフォーカス用RFパルスとの間で読み出し傾斜磁場パルスGrを印加してエコー信号Echoを計測する。読み出し傾斜磁場パルスGrの印加の前に、エコー信号毎に強度が異なる位相エンコード傾斜磁場パルスGpを印加し、エコー信号に位相エンコードを付与する。なお、リフォーカス用RFパルスは180度パルス以外に、毎回のフリップ角を180度よりも小さい角度で変調するVariable Flip Angle法を用いることもできる。
【0029】
このようにスライスS1について信号取得を行った後、スライスS3についても、同様にIRパルス301-2の印加と、信号取得シーケンス302-2を実行するが、1回目のIRパルス301-1と2回目のIRパルス301-2との間に、スライスS1及びS3とは異なるスライスS2を選択して撮像シーケンス400-1を実行する。
【0030】
撮像シーケンス400は、コントラストの異なる画像を取得するシーケンスであり、シーケンスの種類は、限定されるものではないが、信号取得シーケンス302と同様に、1回の励起RFパルス後に複数のエコー信号を収集できるシーケンスであることが好ましい。1回の信号収集時間に取得するエコー信号数を同じとすることにより、各スライスについて2種の画像、FLAIR画像及び別のコントラスト画像を同じ繰り返しで取得することができ、効率のよい計測を行うことができる。但し、撮像シーケンス400の種類に応じて、スピンエコー法シーケンスやグラディエントエコー法シーケンスなどの1回の励起で1ないし少ない数のエコーを収集する撮像シーケンスを採用してもよい。
【0031】
撮像シーケンス400は、パルスシーケンスの種類(例えばFSE法やエコープラナー法、スピンエコー法、グラディエントエコー法)を変える、あるいは位相エンコード傾斜磁場の印加順序(オーダリング)を並び替えることにより強調度合いを異ならせ、コントラストの異なる画像、例えばT1強調画像、T2強調画像、T2*強調画像、プロトン強調画像、拡散強調画像など、を取得することができる。
【0032】
具体的には、撮像シーケンス400が
図3に示す信号取得シーケンス302と同様のシーケンスの場合、k空間の中心に配置されるエコー信号(最小の位相エンコード)を最初に収集するオーダリングとした場合にはプロトン強調画像が得られる。また、
図3の例のように、同エコー信号を収集するタイミングを遅くした場合には、T2(或いはT2*)強調画像が得られる。T1強調画像は、通常、スピンエコーシーケンスを用いて撮像されるが、本実施形態の場合には、隣接するスライスのIRパルスの影響を排除するため縦磁化をゼロにする90度パルスを印加し、一定の待ち時間(TR’)後に、
図2の信号取得シーケンスと同様のFSEを実行してもよい。この待ち時間(TR’)による縦磁化の回復度合いを調整することによりT1強調度合いを調整したT1強調画像が得られる。拡散強調画像は、MPGパルスと呼ばれる強度の大きい傾斜磁場パルスを付加してT2強調と同様に信号収集する。
【0033】
上述の撮像シーケンス400を、FLAIRシーケンス300-1とFLAIRシーケンス300-2との間で実行する(
図2)。ここで前のFLAIRシーケンスのIRパルスと次のFLAIRシーケンスのIRパルスとの間隔は、信号取得シーケンス302の時間(T
ACQ)によって決まるので(即ち、IRパルス間隔は時間(T
ACQ)以上でなければならないので)、信号取得シーケンス302の時間(T
ACQ)と撮像シーケンス400の時間はIRパルス間隔よりも短くする必要がある。一方、一回の励起でのエコーの収集回数が多いほど撮像に必要な時間は短くなるため、この条件を満たす範囲で信号取得シーケンス302の時間と撮像シーケンス400の時間は長くし、エコー収集回数を多くするのが好適である。より好適には、IRパルス間隔、信号取得シーケンス302の時間、および撮像シーケンス400の時間をほぼ等しく設定することで、時間あたりのエコーの収集回数が最大化するため撮像時間短縮効果が大きくなる。
【0034】
スライスS5についても、スライスS1、S3と同様に、IRパルス301-3の印加と信号取得シーケンス302-3を実行し、この2回目のIRパルス301-2と3回目のIRパルス301-3との間で、スライスS4を選択して撮像シーケンス400-2を実行する。またスライスS5のIRパルス301-3の印加後にはスライスS6を選択して撮像シーケンス400-3を実行する。
【0035】
以上を繰り返し単位として、縦磁化の回復時間を待って、信号取得シーケンス302と撮像シーケンス400のそれぞれで画像再構成に必要なエコー信号を取得するまで、パルスシーケンスを繰り返す。これによりスライスS1、S3、S5についてFLAIR画像用信号が収集され、スライスS2、S4、S6について、例えば、T1W画像やPD画像などFLAIR画像とはコントラストが異なる画像用の信号が収集される。
【0036】
次に、FLAIRシーケンス300の対象であるスライスと、撮像シーケンス400の対象であるスライスとを入れ替えて、
図2のパルスシーケンスを繰り返す。これによりスライスS2、S4、S6についてFLAIR画像が得られ、スライスS1、S3、S5についてコントラストが異なる画像が得られる。最終的に全スライスについて2種の画像が得られる。
【0037】
実施形態によれば、IRパルスを用いたマルチスライス撮像において、時間的に連続する2つIRパルスの間に(1回のIRシーケンスのIRパルスと次回のIRシーケンスのIRパルスとの間に)、それらIRパルスが印加されるスライスとは異なるスライスに対しコントラストが異なる画像を取得するシーケンスを実施することで、IRパルスを用いたマルチスライスの撮像時間内で、時間を延長することなく、複数種の画像を取得することができる。また最後のスライスの待ち時間のみを利用するものでではないので、TIを十分利用したスライス数の設定が可能になる。
【0038】
なお以上の説明では、IRパルスを用いるシーケンスとしてFLAIRを例にしたが、FLAIRのほかに、同一スライスについて2回のIRパルスを印加するDIR(Double Inversion Recovery)や比較的短いTIで信号収集するSTIR(Short Time Inversion Recovery)などのシーケンスでもよい。
【0039】
また
図2では、
図4(A)に示すように、複数のスライスを奇数番目のスライスと偶数番目のスライスとに分け、一方をFLAIRシーケンス300とし、他方を別のコントラストの撮像シーケンス400とし、これを交互に実行にする例を示したが、スライスS1~S6の順序は、それぞれが異なるスライスであれば、
図2の例に限定されない。但し、時間的に隣り合うFLAIRシーケンスは、前のIR
パルスの影響が隣接するスライスに与える影響を排除するために、空間的に隣接しないスライスとすることが好ましい。
【0040】
スライスの順序は、
図2に示す撮像シーケンスとともに、デフォルトで設定されていてもよいし、撮像制御部21が、スライス数やスライス厚などの撮像パラメータに応じてスライス順序を制御する構成としてもよい。
【0041】
<第二実施形態>
本実施形態でも、時間的に連続する2つのFLAIRシーケンスのIRパルス間でコントラストの異なる撮像シーケンスを実行して短時間で複数画像種を取得することは第一実施形態と同じであるが、本実施形態ではスライス順序を制御し、近いスライスに印加されたIRパルスの影響を極力排除し、画質の向上をする。
【0042】
即ち、本実施形態では、複数のスライスが含まれる検査対象の領域を第1及び第2の領域に分割し、時間的に隣り合う反転パルスを印加するスライスを第1の領域に含まれるスライスとし、異なる撮像シーケンスを実行するスライスを第2の領域に含まれるスライスとする第1の計測(計測ブロック1)と、時間的に隣り合う反転パルスを印加するスライスを第2の領域に含まれるスライスとし、異なる撮像シーケンスを実行するスライスを第1の領域に含まれるスライスとする第2の計測(計測ブロック2)と、を実行する。
【0043】
この際、第1の領域及び第2の領域に含まれるスライスをそれぞれ奇数番目のスライスと偶数番目のスライスとに分け、第1の計測及び第2の計測を、奇数番目のスライス及び偶数番目のスライスのそれぞれについて分けて実行する。
【0044】
本実施形態のパルスシーケンスの一例を
図5に示す。ここでは、
図4(B)に示すように、12のスライスをマルチスライス撮像する例を示している。パルスシーケンスを構成するFLAIRシーケンス300及び撮像シーケンス400の詳細は、第一実施形態で説明したとおりであり、ここでは説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、図示するように、第1の領域に含まれる奇数番目のスライスS1、S3、S5を対象として、順次、IRパルス301の印加タイミング及び信号取得シーケンス302をずらしながらFLAIRシーケンス300を実行する。
【0046】
スライスS1の撮像とスライスS3の撮像との間、スライスS3の撮像とスライスS5の撮像との間、及び、スライスS5のIRパルス印加後に、それぞれ、第2の領域の奇数番目のスライスS7、S9、S11を対象として、FLAIR画像と異なるコントラストの画像を取得する撮像シーケンス400を実行する。ここまでの計測をブロック1とする。
【0047】
次に第2の領域に含まれる偶数番目のスライスS8、S10、S12を選択して、順次、IRパルス301の印加タイミング及び信号取得シーケンス302をずらしながらFLAIRシーケンス300を実行する。このスライスS8の撮像とスライスS10の撮像との間、スライスS10の撮像とスライスS12の撮像との間、及び、スライスS12のIRパルス印加後に、それぞれ、第1の領域の偶数番目のスライスS2、S4、S6を選択して、FLAIR画像と異なるコントラストの画像を取得する撮像シーケンス400を実行する。この計測をブロック2とする。
【0048】
次に奇数スライスと偶数スライスとを入れ替えて、同様に、ブロック1とブロック2の計測を行う。即ち、ブロック1では、第1領域の偶数番目スライスS2、S4、S6でFLAIR画像用信号を収集し、第2領域の偶数番目のスライスS8、S10、S12で他のコントラスト画像用信号を収集する。ブロック2では、第1領域の奇数番目スライスS7、S9、S11でFLAIR画像信号を収集し、第2領域の奇数番目のスライスS1、S3、S5で他のコントラスト画像信号を収集する。
【0049】
すなわち、
図6に示すように、1回目のブロック1及びブロック2の計測と、奇遇を入れ替えた2回目のブロック1(1’)及びブロック2(2’)の計測とを行うことで、すべてのスライスについてFLAIRシーケンス300と他のコントラストの撮像シーケンス400とが実行される。1回のシーケンスで画像の再構成に必要な数のエコー信号が収集するように設定されている場合には、すべてのスライスについて2種の画像が得られる。或いは2回の計測をセットとして繰り返し、すべてのスライスについて2種の画像を得る。
【0050】
以上、スライス数が12の場合を示したが、スライス数がそれより少ない場合や多い場合でも、同じ手法でスライス順序の制御を行うことができる。
【0051】
本実施形態によれば、第一実施形態と同様に、FLAIRシーケンスのIRパルスが印加されるスライスが、その直前にIRパルスを印加されたスライスと隣接していないので、隣接するスライスに印加されたIRパルスの影響を受けない画質のよいFLAIR画像が得られる。また本実施形態によれば、FLAIRシーケンスを行うスライスと、他のコントラストのシーケンスを行うスライスが異なる領域のスライスであるため、他のコントラスト画像についても、隣接したスライスに印加したIRパルスの影響を排除することができ画質を向上することができる。
【0052】
<第三実施形態>
本実施形態では、複数回のIRシーケンスにおいて、隣り合う反転パルスの印加間で、互いにコントラストが異なる複数種の撮像シーケンスを実行する。
【0053】
本実施形態のパルスシーケンスの一例を
図7に示す。図中、
図2及び
図5と同じ要素は同じ符号で示し、重複する説明は省略する。
【0054】
本実施形態では、4つのスライスの計測を1つのブロックとして、計測を繰り返し、FLAIR画像と、それとはコントラストが異なる3種の画像を取得する。
最初のブロック1では、スライスS1を選択して、FLAIRシーケンス300のIRパルス301を印加した後、信号収集シーケンス302までの間に、スライスS2、S3、S4について、それぞれ、コントラストの異なる3種の画像を取得する撮像シーケンス402,403及び404を実行する。ここでは撮像シーケンスが、T1W画像を取得するシーケンス(T1Wシーケンスと略す)、T2W画像を取得するシーケンス(T2Wシーケンスと略す)、及び、PD画像を取得するシーケンス(PDシーケンスと略す)の3種である場合を例に説明する。
【0055】
図示する例では、まずスライスS3を選択してT2Wシーケンス403を実行しスライスS3からの信号を取得し、次にスライスS4を選択してPDシーケンス404を実行しスライスS4からの信号を取得する。またT2Wシーケンス403終了後PDシーケンス404開始前に、スライスS2を選択してプリパルス(π/2パルス)401を印加し、所定の待ち時間TR’後にT1Wシーケンス402によりスライスS2から信号を取得する。すなわちPDシーケンス404はT1Wシーケンス402の待ち時間TR’の間に実行される。その後、FLAIRシーケンス300の信号収集シーケンス302を実行し、スライスS1からの信号を取得する。
【0056】
次のブロックでは、スライスS5~スライスS8までの4スライスについて、上記と同様に
FLAIRシーケンス300と3種の撮像シーケンス402~404を実行する。全スライスについて、4スライスを1組とする計測が終わったら(即ち、ブロック内で最も大きい番号のスライスの番号が全スライス数を超えた場合、そのブロックを最後のブロックとし)、ブロック内のスライスの組み合わせは変えずに順番をずらして、同ブロック数の計測を繰り返す。例えば、最初の計測では、ブロック1はスライスS1、S2、S3、S4の順番で撮像シーケンス300、402~404を行ったものを、次の計測のブロック1はスライスS2、S3、S4、S1の順番で撮像シーケンス300、402~404を行う。次のブロック2も同様である。このようなスライス制御の様子を
図8に示す。この図では、ブロック1~ブロックP(Pは2以上の整数)までの計測を、ブロック内のスライス順序を変えながら、繰り返す。これにより全てのスライスの全てのコントラストの画像を計測することができる。
【0057】
本実施形態によれば、IRパルス間に実行する撮像シーケンス種を増やすことで、一度に多数の画像種を取得することができさらに検査時間が短縮する。また本実施形態では、撮像時間が長いT1Wをプリパルス(π/2パルス)と組み合わせることで、IRパルス間に組み込むことができ、一般に撮像時間が長いFLAIR画像とT1W画像を一つの撮像シーケンスで取得することができ時間短縮効果が高い。さらに本実施形態では、プリパルスと組み合わせたT1W用シーケンスの、プリパルス401と信号取得シーケンス402との間を利用することにより、撮像時間を延長することなく、複数種の撮像シーケンスを実行することができる。
【0058】
なお
図7では、IRパルス間で3つのコントラストが異なる画像の信号を取得する場合を示したが、2種でもよいことは言うまでもないし、その組み合わせもT2WとPD、T2WとT1W、T1WとPDなど任意である。また
図7において、T2Wシーケンス403とPDシーケンス404とを入れ替えてもよい。さらに3つのシーケンス402~404のうち、2つのシーケンスを同種のシーケンスとし、収集するエコー信号の数を他の一つのシーケンスで収集するエコー信号数より少なく、例えば半分に設定してもよい。
【0059】
<第四実施形態>
本実施形態は、IRシーケンスと組み合わせる異なるコントラストの1ないし複数種の撮像シーケンスの一つに、T1Wシーケンスを採用し、その際、T1Wのプリパルス(π/2パルス)をIRパルスとの合成パルスとして印加することが特徴である。
【0060】
図9に本実施形態のパルスシーケンスの一例を示す。
図9では、第三実施形態と同様に、4つのスライスの計測を1つのブロックとして、計測を繰り返し、FLAIR画像と、それとはコントラストが異なる3種の画像を取得する。但し、本実施形態では、最初に印加するRFパルス301Mとして、スライスS1を選択する周波数とスライス2を選択する周波数を含むマルチバンドパルスを用いて、スライスS1とスライスS2の縦磁化を回転させる。この際、各周波数成分の強度(FA)を異ならせて、スライスS1の縦磁化を180度回転させるとともに、スライスS2内の縦磁化を90度回転させる。
【0061】
その後、スライスS1については、所定のTI後に信号取得シーケンス302を実行し、そのTIの間に、スライスS2について待ち時間TR’後に信号取得シーケンス402を実行する。またこの待ち時間TR’の間に、スライスS3を選択して他のコントラストのシーケンス、T2W又はPDWのシーケンス403を実行し、スライスS2の信号収集終了からスライスS1の信号収集までの間に、スライスS4を選択してさらに別のコントラストのシーケンスを実行する。
【0062】
これら4つのスライスの計測を1つのブロックとして、スライスS5以降のスライスについて同様の計測を行うこと、ブロック内のスライスの順序を変えて同様の計測を繰り返すこと、は第三実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態によれば、FLAIRシーケンスのIRパルス301とT1Wシーケンス402のπ/2パルス401とを一つのマルチバンドパルスにすることで、IRパルス301とπ/2パルス401を別々に印加する場合に比べ、パルス1個分の撮像時間を短くできるという効果が得られる。
【0064】
なお
図9では、コントラストの異なる画像を取得する撮像シーケンスが3種ある場合を示しているが、本実施形態は、撮像シーケンスはT1Wシーケンス402のみの場合や、T1Wシーケンス402の他に、撮像シーケンス403,404の一方のみを含む場合にも適用することが可能である。
【0065】
以上、本発明のMRI装置が実行するパルスシーケンスとそのスライス制御の実施形態を説明したが、撮像シーケンスの選択とスライス制御方法は、検査部位や検査目的などの応じた1乃至複数の組み合わせをデフォルトとして、装置側に設定しておいてもよいし、ユーザ指定によって撮像制御部21が制御する構成としてもよい。
【0066】
ユーザ指定としては、IRシーケンスにおけるTI時間、所望する画像の種類と数、スライス数、画質又は計測時間の優先度、などがあり、これらを、
図10に示すように、撮像条件を設定する際の撮像パラメータとして選択或いは入力可能にしてもよい。撮像制御部21は、UI部30を介してユーザ指定を受け取ると、それに合わせてパルスシーケンスとスライス制御方法を計算し、シーケンサ15にセットする。例えば、ユーザ指定の画像種がFLAIRとT2Wの場合には、
図5に示すような撮像シーケンスをセットするとともに、スライスの計測順序を決定する。その際、設定されたTIとスライス数に応じて、一つのブロックで計測するスライスの数や他のコントラストのシーケンス400の信号取得数を調整してもよい。
【0067】
ユーザ指定によりFLAIR画像のほかに3種の画像種が入力された場合には、
図7或いは
図9に示す撮像シーケンスをセットするとともに、入力されたTIの長さに応じて、シーケンス402~404の信号取得数を調整してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:撮像部、11:静磁場発生部、12:傾斜磁場コイル、13:送信コイル、14:受信コイル、20:計算機、21:撮像制御部、30:UI部、40:記憶装置。