(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】可変容量型液圧回転機
(51)【国際特許分類】
F04B 1/22 20060101AFI20230904BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20230904BHJP
F04B 1/324 20200101ALI20230904BHJP
F03C 1/40 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
F04B1/22
F03C1/253
F04B1/324
F03C1/40
(21)【出願番号】P 2019237811
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-294339(JP,A)
【文献】特開2017-020415(JP,A)
【文献】特開2017-036713(JP,A)
【文献】特開平10-281073(JP,A)
【文献】実開昭55-035318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00- 7/06
F03C 1/00-99/00
F04B 49/12
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量可変部を傾転させるために、シリンダ穴に移動可能にサーボピストンが挿嵌された傾転アクチュエータと、
前記傾転アクチュエータの前記サーボピストンを駆動するレギュレータと、
前記サーボピストンの一端部と前記シリンダ穴との間に形成された一の液圧室と前記レギュレータとを接続する一の液圧通路と、
前記サーボピストンの他端部と前記シリンダ穴との間に形成された他の液圧室と前記レギュレータとを接続する他の液圧通路と、を備え、
前記レギュレータは、
円筒穴が設けられているレギュレータケーシングと、
前記レギュレータケーシング内に制御スリーブを介して相対変位可能に設けられ、前記液圧通路を通じて前記各液圧室に前記サーボピストンを動作させるための傾転制御圧を給排するスプールと、
前記サーボピストンと前記制御スリーブとの間に設けられ、前記サーボピストンの変位を前記制御スリーブに伝えるフィードバックリンクと、
前記スプールを他の方向に動作させるために前記スプールの一側に位置して前記レギュレータケーシングに設けられた一のパイロット圧室と、
前記スプールを一の方向に動作させるために前記スプールの他側に位置して前記レギュレータケーシングに設けられた他のパイロット圧室とを含んで構成された可変容量型液圧回転機において、
前記レギュレータケーシングには、前記スプールを他の方向に動作させるために前記スプールの一側に位置して設けられ、前記一のパイロット圧室と独立した一の補助圧室と、前記スプールを一の方向に動作させるために前記スプールの他側に位置して設けられ、前記他のパイロット圧室と独立した他の補助圧室とを備え、
前記一の補助圧室と前記他の液圧通路とを接続する第1補助通路と、前記他の補助圧室と前記一の液圧通路とを接続する第2補助通路とが設けられていることを特徴とする可変容量型液圧回転機。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量型液圧回転機において、
前記スプールの一端側には、前記スプールの軸線と直交する径方向に並んで第1メインピストンおよび第1サブピストンが設けられ、
前記スプールの他端側には、前記スプールの軸線と直交する径方向に並んで第2メインピストンおよび第2サブピストンが設けられ、
前記第1メインピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記一のパイロット圧室であり、
前記第2メインピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記他のパイロット圧室であり、
前記第1サブピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記一の補助圧室であり、
前記第2サブピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記他の補助圧室であることを特徴とする可変容量型液圧回転機。
【請求項3】
請求項1に記載の可変容量型液圧回転機において、
前記スプールの一端側には、前記スプールの軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第1メインピストンおよび第1サブピストンが設けられ、
前記スプールの他端側には、前記スプールの軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第2メインピストンおよび第2サブピストンが設けられ、
前記第1メインピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記一のパイロット圧室であり、
前記第2メインピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記他のパイロット圧室であり、
前記第1サブピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記一の補助圧室であり、
前記第2サブピストンと前記レギュレータケーシングとの間に形成された空間が前記他の補助圧室であることを特徴とする可変容量型液圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル等の建設機械に搭載され、可変容量型の油圧ポンプまたは油圧モータとして用いられる可変容量型液圧回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、可変容量型液圧回転機は、例えば斜板または弁板等の容量可変部を傾転させるために、シリンダ穴に移動可能にサーボピストンが挿嵌された傾転アクチュエータと、傾転アクチュエータのサーボピストンを駆動するレギュレータと、サーボピストンの一端部とシリンダ穴との間に形成された一の液圧室とレギュレータとを接続する一の液圧通路と、サーボピストンの他端部とシリンダ穴との間に形成された他の液圧室とレギュレータとを接続する他の液圧通路とを備えている。
【0003】
また、レギュレータは、円筒穴が設けられているレギュレータケーシングと、レギュレータケーシング内に制御スリーブを介して相対変位可能に設けられ、液圧通路を通じて各液圧室にサーボピストンを動作させるための傾転制御圧を給排するスプールと、サーボピストンと制御スリーブとの間に設けられ、サーボピストンの変位を制御スリーブに伝えるフィードバックリンクと、スプールを他の方向に動作させるためにスプールの一側に位置してレギュレータケーシングに設けられた一のパイロット圧室と、スプールを一の方向に動作させるためにスプールの他側に位置してレギュレータケーシングに設けられた他のパイロット圧室とを含んで構成されている(特許文献1)。
【0004】
このように構成された可変容量型液圧回転機は、例えば、一のパイロット圧室にパイロット圧が供給されると、スプールが制御スリーブ内を他の方向に移動し、ポンプからの圧油を他の液圧通路を通じて傾転アクチュエータの他の液圧室に供給する。これにより、サーボピストンが一の方向に移動し、容量可変部は、斜板等を指令された角度まで傾転させる。また、サーボピストンの移動時には、フィードバックリンクによって制御スリーブが他の方向に向けて移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1では、パイロット圧室に供給されるパイロット圧だけでスプールを移動させる構成となっている。メカフィードバックの構造上、サーボピストンが目標位置に近付くと、サーボピストンの移動速度減少区間の影響により、目標位置到達時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、サーボピストンを目標位置まで短時間で移動させることができるようにした可変容量型液圧回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、容量可変部を傾転させるために、シリンダ穴に移動可能にサーボピストンが挿嵌された傾転アクチュエータと、前記傾転アクチュエータの前記サーボピストンを駆動するレギュレータと、前記サーボピストンの一端部と前記シリンダ穴との間に形成された一の液圧室と前記レギュレータとを接続する一の液圧通路と、前記サーボピストンの他端部と前記シリンダ穴との間に形成された他の液圧室と前記レギュレータとを接続する他の液圧通路と、を備え、前記レギュレータは、円筒穴が設けられているレギュレータケーシングと、前記レギュレータケーシング内に制御スリーブを介して相対変位可能に設けられ、前記液圧通路を通じて前記各液圧室に前記サーボピストンを動作させるための傾転制御圧を給排するスプールと、前記サーボピストンと前記制御スリーブとの間に設けられ、前記サーボピストンの変位を前記制御スリーブに伝えるフィードバックリンクと、前記スプールを他の方向に動作させるために前記スプールの一側に位置して前記レギュレータケーシングに設けられた一のパイロット圧室と、前記スプールを一の方向に動作させるために前記スプールの他側に位置して前記レギュレータケーシングに設けられた他のパイロット圧室とを含んで構成された可変容量型液圧回転機において、前記レギュレータケーシングには、前記スプールを他の方向に動作させるために前記スプールの一側に位置して設けられ、前記一のパイロット圧室と独立した一の補助圧室と、前記スプールを一の方向に動作させるために前記スプールの他側に位置して設けられ、前記他のパイロット圧室と独立した他の補助圧室とを備え、前記一の補助圧室と前記他の液圧通路とを接続する第1補助通路と、前記他の補助圧室と前記一の液圧通路とを接続する第2補助通路とが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、サーボピストンを目標位置まで短時間で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態による可変容量型の斜板式油圧ポンプを示す断面図である。
【
図2】
図1の斜板式油圧ポンプを矢示II-II方向から見た断面図である。
【
図3】傾転アクチュエータ、レギュレータ等を示す断面図である。
【
図4】スプールを他の方向に移動させて傾転アクチュエータの他の液圧室に圧油を供給している状態を
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図5】スプールをさらに他の方向に移動させた状態を
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図6】傾転アクチュエータのサーボピストンが一の方向に移動した状態を
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図7】スプールを一の方向に移動させた状態を
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図8】目標傾転角度と時間との関係を示す特性線図である。
【
図9】第2の実施形態によるレギュレータを傾転アクチュエータ等と一緒に
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図10】
図9中の一側段付きピストンを単体で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による可変容量型液圧回転機として、可変容量型の斜板式油圧ポンプ(特に、斜板を傾転角度が0度の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプの油圧ポンプ)を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1ないし
図8は本発明の第1の実施形態を示している。
図1において、可変容量型液圧回転機としての可変容量型の斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、外殻を構成するケーシング2を有している。ケーシング2は、エンジン等の原動機(図示せず)側となる基端側がフロント底部3Aとなった段付円筒状のケーシング本体3と、ケーシング本体3の先端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。ケーシング2のリヤケーシング4には、後述の給排通路15A,15B等が形成されている。
【0013】
ケーシング2のケーシング本体3には、フロント底部3Aから軸線方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられている。アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出して設けられ、内部には、後述の傾転アクチュエータ16等が設けられている。このアクチュエータ取付部3Bには、例えば四角形状の開口部3Cが後述のレギュレータ21との間に形成されている。この開口部3Cには、後述のフィードバックリンク31が移動可能に挿入されている。
【0014】
ケーシング2内には、回転軸5が回転可能に設けられている。回転軸5は、ケーシング本体3のフロント底部3Aとリヤケーシング4に対してそれぞれ軸受等を介して回転可能に取付けられている。フロント底部3Aから軸線方向に突出した回転軸5の突出端側には、例えばエンジン、モータ等の原動機の出力軸(図示せず)が連結され、回転軸5は、原動機によって回転駆動される。
【0015】
シリンダブロック6は、ケーシング2内に位置して回転軸5の外周側に設けられている。シリンダブロック6は、回転軸5に対してスプライン結合され、回転軸5と一体に回転駆動される。シリンダブロック6には、軸線方向に延びるシリンダ7が周方向に離間して複数個、例えば9個(
図2参照)穿設されている。各シリンダ7内には、それぞれピストン8が摺動可能に挿嵌されている。各ピストン8は、シリンダブロック6の回転によってシリンダ7内を往復動し、後述の弁板14側から各シリンダ7内に作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出させる。
【0016】
この場合、各ピストン8は、シリンダ7から軸方向に突出(伸長)した下死点位置と、シリンダ7内へと進入(縮小)した上死点位置との間で往復動される。シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン8は、シリンダ7内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返す。
【0017】
シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン8の吸入行程では、後述の給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油が吸入される。また、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン8の吐出行程では、ピストン8がシリンダ7内の油液を高圧の圧油として後述の給排通路15A,15Bの他方側から吐出配管内へと吐出させる。
【0018】
図1に示すように、各ピストン8の突出側端部には、それぞれシュー9が揺動可能に設けられている。各シュー9は、ピストン8からの押付力(油圧力)で後述する斜板11の平滑面11Aに押付けられている。各シュー9は、平滑面11Aに押付けられた状態で回転軸5、シリンダブロック6およびピストン8と一緒に回転することにより、円形状の軌跡を描くように平滑面11A上を摺動する。
【0019】
ケーシング本体3のフロント底部3Aには、斜板支持体10が固定して設けられている。斜板支持体10は、回転軸5の周囲に位置して斜板11の裏面側に配置されている。斜板支持体10には、斜板11を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面10Aが凹湾曲面(図示せず)として形成されている。一対の傾転摺動面10Aは、回転軸5の径方向で互いに離間して配置されている。
【0020】
斜板11は、ケーシング2内に傾転可能に設けられている。斜板11は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体10を介して取付けられ、表面側が摺動面としての平滑面11Aとなっている。また、斜板11の中央部には、回転軸5が隙間をもって挿通される挿通孔11Bが穿設されている。さらに、斜板11の背面側には、挿通孔11Bを挟んで互いに離間した一対の脚部11Cが設けられている。各脚部11Cは、斜板支持体10の各傾転摺動面10A上に傾転可能に当接されている。
【0021】
ここで、斜板11は、斜板支持体10の各傾転摺動面10Aにより各脚部11Cを介して傾転可能に支持され、この状態で後述の傾転アクチュエータ16により傾転駆動される。斜板11は、傾転角に応じて油圧ポンプ1の吐出容量を変化させる容量可変部の一部を構成している。傾転アクチュエータ16は、斜板11を傾転角度が0度の位置から一方向と他方向との両方向(
図2に示す矢示A方向と矢示B方向)に傾転し、圧油の吐出方向を反転させるように適宜に切換えることができる。
【0022】
傾転レバー12は、斜板11の側部に一体的に設けられている。傾転レバー12は、斜板11の側部から後述のサーボピストン19に向けて延設されている。そして、傾転レバー12の先端側には、係合ピン12Aが設けられ、この係合ピン12Aには、後述のサーボピストン19がスライド板13を介して連結されている。
【0023】
スライド板13は、後述するサーボピストン19のスライド溝19D内に摺動可能に挿嵌されている。スライド板13は、略長方形をなす板体(プレート)として形成され、スライド溝19D内でサーボピストン19を横切る方向にスライド(摺動変位)するものである。スライド板13の中心部には、傾転レバー12の係合ピン12Aが回動可能に挿嵌される嵌合孔13Aが形成されている。即ち、スライド板13は、嵌合孔13A内に傾転レバー12の係合ピン12Aを予め挿嵌した状態で、サーボピストン19のスライド溝19D内に取付けられる。スライド板13は、傾転レバー12を介してサーボピストン19の軸方向変位を斜板11へと伝達し、これにより斜板11は、サーボピストン19に追従して矢示A方向と矢示B方向に傾転駆動されるものである。
【0024】
弁板14は、リヤケーシング4に固定して設けられている。弁板14は、シリンダブロック6の端面に摺接する切換弁板を構成している。このため、弁板14には、眉形状をなして回転軸5の周囲を延びる一対の給排ポート14A,14Bが形成されている。これらの給排ポート14A,14Bは、斜板11の傾転方向に応じて吸込ポートと吐出ポートとのいずれかに切換えられる。例えば、給排ポート14Aが低圧側の吸込ポートとなったときには、給排ポート14Bが高圧側の吐出ポートとなる。一方、斜板11の傾転方向が反転されたときには、給排ポート14Aが高圧側の吐出ポートとなり、給排ポート14Bが低圧側の吸込ポートとなる。
【0025】
リヤケーシング4に形成された一対の給排通路15A,15Bは、作動油の吸込みと吐出とを行う通路である。これらの給排通路15A,15Bは、弁板14を介してシリンダ7内へと作動油(圧油)を給排させる。ここで、ケーシング2内で回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ7内をピストン8が往復動し、これらのピストン8が給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油を吸込みつつ、給排通路15A,15Bの他方側に圧油を吐出する。
【0026】
傾転アクチュエータ16は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられている。
図2、
図3に示すように、傾転アクチュエータ16は、シリンダブロック6の径方向の外側に位置してアクチュエータ取付部3Bに形成されたシリンダ穴17A,17Bと、各シリンダ穴17A,17Bに亘って移動可能に挿嵌されたサーボピストン19とにより構成されている。傾転アクチュエータ16は、サーボピストン19により斜板11を傾転角度が0度の位置から一方向と他方向との両方向(
図2中の矢示A方向と矢示B方向)に傾転駆動する。シリンダ穴17Aの軸方向の外側の開口は、蓋体18Aによって閉塞されている。また、シリンダ穴17Bの軸方向の外側の開口は、蓋体18Bによって閉塞されている。
【0027】
サーボピストン19は、例えば、円柱体(または内部に隔壁を備えた円筒体)として形成されている。サーボピストン19は、シリンダ穴17Aに摺動可能に挿嵌された軸方向の一端部19Aと、シリンダ穴17Bに摺動可能に挿嵌された軸方向の他端部19Bとを有している。一端部19Aと他端部19Bとは、互いに等しい直径(同一径)を有している。
【0028】
また、サーボピストン19の軸方向(長さ方向)中間には、その径方向(
図2中の上下)で互いに対向する位置にリンク取付溝19Cとスライド溝19Dとが凹設されている。そして、サーボピストン19のリンク取付溝19Cには、後述のフィードバックリンク31の先端部31Bが揺動可能に係合している。サーボピストン19のスライド溝19Dには、スライド板13を介して傾転レバー12の係合ピン12Aが係合している。
【0029】
図2、
図3に示すように、リンク取付溝19Cは、サーボピストン19の外周側の一部を接線方向(軸方向と直交する方向)に切欠くことにより形成された断面コ字形状の切欠き溝からなる。リンク取付溝19Cは、フィードバックリンク31の先端部31Bが係合することで、フィードバックリンク31の先端部31Bをサーボピストン19と一緒に軸方向に移動する。
【0030】
スライド溝19Dは、サーボピストン19の軸線を挟んでリンク取付溝19Cと径方向の反対側に設けられている。スライド溝19Dは、サーボピストン19の外周側の一部を接線方向(軸方向と直交する方向)に切欠くことにより形成された断面コ字形状の切欠き溝からなる。スライド溝19Dには、スライド板13を介して傾転レバー12の係合ピン12Aが係合している。
【0031】
一の液圧室20Aは、サーボピストン19の一端部19Aとシリンダ穴17A(蓋体18A)との間に油室として形成されている。一の液圧室20Aは、後述する一の液圧通路42を通じてケース本体23の一側アクチュエータポート23Fに接続されている。
【0032】
他の液圧室20Bは、サーボピストン19の他端部19Bとシリンダ穴17B(蓋体18B)との間に油室として形成されている。他の液圧室20Bは、後述する他の液圧通路43を通じてケース本体23の他側アクチュエータポート23Gに接続されている。
【0033】
傾転アクチュエータ16は、一の液圧室20Aに一の液圧通路42を通じて傾転制御圧を給排し、他の液圧室20Bに他の液圧通路43を通じて傾転制御圧を給排する。これにより、傾転アクチュエータ16は、各液圧室20A,20Bに給排される傾転制御圧に従ってサーボピストン19をシリンダ穴17A,17Bの軸線方向へと摺動変位させる。また、サーボピストン19の軸方向の変位は、スライド板13、傾転レバー12を介して斜板11へと伝達され、これにより、斜板11は、サーボピストン19に追従して矢示A方向または矢示B方向に傾転駆動される。
【0034】
次に、本実施形態の特徴部分となるレギュレータ21の構成および制御動作について詳細に説明する。
【0035】
レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16に傾転制御圧を給排する油圧サーボ弁として構成されている。レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16のサーボピストン19を駆動する。
図3に示すように、レギュレータ21は、レギュレータケーシング22、制御スリーブ26、スプール27、フィードバックリンク31、一のパイロット圧室35、他のパイロット圧室37、一の補助圧室39、他の補助圧室41を含んで構成されている。
【0036】
図1に示すように、レギュレータケーシング22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bの側部に設けられている。レギュレータケーシング22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けられた開口部3Cを外側から覆うように配設されている。これにより、レギュレータケーシング22の内部は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内と開口部3Cを介して連通している。
【0037】
レギュレータケーシング22は、サーボピストン19の軸方向(
図2、
図3の左右方向)に延びる筒状のケース本体23と、ケース本体23の軸方向の一側(
図2、
図3の左側)に設けられた一側ブロック24と、ケース本体23の軸方向の他側(
図2、
図3の右側)に設けられた他側ブロック25とを含んで構成されている。
【0038】
ケース本体23内は、軸方向の中間部から一側が円筒穴としてのスリーブ摺動部23Aとなり、スリーブ摺動部23Aの他端から他側がスリーブ摺動部23Aよりも大径なばね収容部23Bとなり、さらに、ばね収容部23Bの他端から他側がばね収容部23Bよりも大径なばね受け収容部23Cになっている。スリーブ摺動部23Aとばね収容部23Bとの間は、段差部23Dとなっている。
【0039】
スリーブ摺動部23Aには、後述の制御スリーブ26が軸方向に移動可能に挿嵌されている。また、ばね収容部23Bには、段差部23Dと後述のばね受け30との間に位置してばね部材29が収容されている。さらに、ばね受け収容部23Cには、円筒状のばね受け30が収容されている。ばね受け30の内周面は、後述の他側共通ピストン33が摺動する。
【0040】
ケース本体23には、スリーブ摺動部23Aの軸方向の中間部に連通するようにポンプポート23Eが設けられている。また、ケース本体23には、ポンプポート23Eを挟む位置に一側アクチュエータポート23Fと他側アクチュエータポート23Gとが設けられている。各アクチュエータポート23F,23Gは、ポンプポート23Eと同様に、スリーブ摺動部23Aに連通している。
【0041】
一方、ケース本体23には、スリーブ摺動部23Aの一側とばね収容部23Bとを連通してドレン通路23Hが形成されている。このドレン通路23Hは、後述する制御スリーブ26よりも一側に位置してスリーブ摺動部23Aに開口している。これにより、ドレン通路23Hは、一側アクチュエータポート23Fに戻された作動油を、ばね収容部23Bを介して連通しているケーシング本体3に流す。
【0042】
さらに、ケース本体23には、スリーブ摺動部23Aの他側に位置してリンク挿通口23Jが設けられている。例えば、リンク挿通口23Jは、ケーシング本体3の開口部3Cの一部であり、後述するフィードバックリンク31を動作可能に挿通させると共に、アクチュエータ取付部3Bを介してケース本体23内をケーシング本体3に接続している。
【0043】
一側ブロック24は、スリーブ摺動部23Aの一側を閉塞している。一側ブロック24には、ケース本体23側の端面に開口してメイン小径シリンダ24Aとサブ小径シリンダ24Bとが設けられている。各小径シリンダ24A,24Bは、スリーブ摺動部23Aの直径寸法に収まる位置に、スリーブ摺動部23Aの軸線(スプール27の軸線)と平行に延びた小径な有底穴として形成されている。各小径シリンダ24A,24Bは、スプール27の軸線と直交する径方向、即ち、スリーブ摺動部23Aの径方向に並んで配置されている。
【0044】
また、一側ブロック24には、メイン小径シリンダ24Aに連通してパイロットポート24Cと、サブ小径シリンダ24Bに連通して補助ポート24Dとが設けられている。パイロットポート24Cは、パイロット管路を介して一の傾転操作弁(いずれも図示せず)に接続されている。補助ポート24Dは、後述の第1補助通路44を介して他の液圧通路43に接続されている。
【0045】
一方、他側ブロック25は、ばね受け収容部23Cの他側を閉塞すると共に、後述のばね受け30をばね受け収容部23C内に固定する。他側ブロック25には、一側ブロック24と同様に、メイン小径シリンダ25A、サブ小径シリンダ25B、パイロットポート25Cおよび補助ポート25Dが設けられている。パイロットポート25Cは、パイロット管路を介して他の傾転操作弁(いずれも図示せず)に接続されている。補助ポート25Dは、後述の第2補助通路45を介して一の液圧通路42に接続されている。
【0046】
制御スリーブ26は、ケース本体23のスリーブ摺動部23A内に軸方向に変位可能に挿嵌されている。制御スリーブ26は、円筒体として形成され、外周面がスリーブ摺動部23Aに油密に摺接している。また、制御スリーブ26の内周側は、後述のスプール27が油密に摺動するスプール摺動穴26Aとなっている。制御スリーブ26は、径方向に貫通して3組の油孔26B,26C,26Dを有している。各油孔26B,26C,26Dは、一側から他側に向けて油孔26C、油孔26B、油孔26Dの順で間隔をもって配置されている。
【0047】
中間に位置する油孔26Bは、ケース本体23のポンプポート23Eに常時連通し、各アクチュエータポート23F,23Gと隔てられている。一側に位置する油孔26Cは、ケース本体23の一側アクチュエータポート23Fに常時連通している。また、他側に位置する油孔26Dは、ケース本体23の他側アクチュエータポート23Gに常時連通している。
【0048】
制御スリーブ26には、他側の端部に位置してリンク係合溝26Eが設けられている。リンク係合溝26Eは、接線方向に切欠かれることにより形成され、後述するフィードバックリンク31のピン部材31Aが係合する。
【0049】
レギュレータ21のスプール27は、レギュレータケーシング22内、即ち、ケース本体23のスリーブ摺動部23Aに制御スリーブ26を介して相対変位可能に設けられている。スプール27は、各液圧通路42,43を通じて各液圧室20A,20Bにサーボピストン19を動作させるための傾転制御圧を給排する。スプール27は、制御スリーブ26よりも長尺な段付き円柱体として形成されている。スプール27は、制御スリーブ26のスプール摺動穴26Aに摺動変位可能に挿入されている。この状態で、スプール27は、一側端面27Aが後述の一側共通ピストン32(第1メインピストン34、第1サブピストン38)に押動されることにより他側(矢示B方向)に変位し、他側端面27Bが後述の他側共通ピストン33(第2メインピストン36、第2サブピストン40)に押動されることにより一側(矢示A方向)に変位する。
【0050】
スプール27の外周側には、鍔状のランド27C,27Dが設けられている。ランド27Cは、スプール27の長さ方向の一側に配置され、制御スリーブ26の油孔26Cに対応している。ランド27Dは、スプール27の長さ方向の中間寄りに配置され、制御スリーブ26の油孔26Dに対応している。また、各ランド27C,27Dの幅寸法は、油孔26C,26Dの孔径と同等に設定されている。
【0051】
ここで、
図3に示すように、スプール27のランド27C,27Dは、スプール27が中立位置にあるときには、制御スリーブ26の油孔26C,26Dを内側のスプール摺動穴26Aに対して遮断している。また、スプール27のランド27C,27Dは、例えば、
図4、
図5に示すように、スプール摺動穴26A内でスプール27が中立位置から軸方向の他側(矢示B方向)に変位したときには、ランド27Cが制御スリーブ26の油孔26Cよりも他側に移動し、ランド27Dが油孔26Dよりも他側に移動する。これにより、油孔26Dは、スプール摺動穴26Aを通じて油孔26Bと連通する。一方、スプール27のランド27C,27Dは、スプール摺動穴26A内でスプール27が中立位置から軸方向の一側に変位したときには、ランド27Cが制御スリーブ26の油孔26Cよりも一側に移動し、ランド27Dが油孔26Dよりも一側に移動する。これにより、油孔26Cは、スプール摺動穴26Aを通じて油孔26Bと連通する。
【0052】
スプール27の外周側には、長さ方向の他側寄りに位置して環状凸部27Eが設けられている。この環状凸部27Eは、後述する一側のばね受け板28Aが当接するストッパを構成している。スプール27の他端部には、環状溝27Fを介して止め輪27Gが設けられている。この止め輪27Gは、後述する他側のばね受け板28Bが当接するストッパを構成している。
【0053】
ばね受け板28A,28Bは、円環状の板体からなり、スプール27の他側に設けられている。ばね受け板28Aは、スプール27の環状凸部27Eに他側から当接して軸方向に位置決めされ、ばね受け板28Bは、スプール27の止め輪27Gに一側から当接して軸方向に位置決めされている。
【0054】
ばね部材29は、スプール27の外周側に位置して各ばね受け板28A,28B間に設けられている。ばね部材29は、圧縮コイルばねとして形成されている。ばね部材29は、ばね受け板28Aを環状凸部27Eに押付け、ばね受け板28Bをばね受け30に押付けることで、スプール27を
図4に示す中立位置に向けて付勢している。
【0055】
ばね受け30は、ケース本体23のばね受け収容部23Cに挿嵌された円筒体として形成されている。ばね受け30内は、他側共通ピストン33が軸方向に移動可能に挿嵌されるピストン摺動部30Aとなっている。
【0056】
フィードバックリンク31は、サーボピストン19と制御スリーブ26との間に設けられている。フィードバックリンク31は、レギュレータ21の制御スリーブ26を、サーボピストン19の動きに追従してフィードバック制御するリンク部材である。
図1、
図3に示すように、フィードバックリンク31は、長さ方向の基端側がピン部材31Aを介して制御スリーブ26のリンク係合溝26Eに揺動可能に係合(連結)している。フィードバックリンク31の先端部31Bは、サーボピストン19のリンク取付溝19Cに係合している。フィードバックリンク31の長さ方向中間部には、支点ピン31Cがケーシング2の径方向に延びて設けられている。この支点ピン31Cは、開口部3Cの位置でケーシング本体3に回動可能に取付けられている。これにより、フィードバックリンク31は、支点ピン31Cを回動中心として、一方向と他方向(矢示A方向と矢示B方向)とに揺動される。
【0057】
一側共通ピストン32は、一側ブロック24とスプール27との間に位置してケース本体23のスリーブ摺動部23Aに設けられている。一側共通ピストン32は、スリーブ摺動部23A内に摺動可能に設けられた大径部32Aと、大径部32Aの他側の中央から突出して制御スリーブ26内に進入可能な小径部32Bとにより構成されている。小径部32Bの先端は、スプール27の一側端面27Aに当接している。一方、大径部32Aの一側の端面には、後述する第1メインピストン34と第1サブピストン38が当接している。
【0058】
一側共通ピストン32は、大径部32Aが第1メインピストン34に押動された場合、大径部32Aが第1サブピストン38に押動された場合、または両方のピストン34,38によって押動された場合のいずれの場合でも、小径部32Bによってスプール27を他側に向けて押動することができる。
【0059】
他側共通ピストン33は、他側ブロック25とスプール27との間に位置してばね受け30のピストン摺動部30Aに設けられている。他側共通ピストン33は、一側共通ピストン32同様に、大径部33Aと小径部33Bとにより構成されている。小径部33Bの先端は、スプール27の他側端面27Bに当接している。一方、大径部33Aの他側の端面には、後述する第2メインピストン36と第2サブピストン40が当接している。
【0060】
他側共通ピストン33は、大径部33Aが第2メインピストン36に押動された場合、大径部33Aが第2サブピストン40に押動された場合、または両方のピストン36,40によって押動された場合のいずれの場合でも、小径部33Bによってスプール27を一側に向けて押動することができる。
【0061】
第1メインピストン34は、一側ブロック24のメイン小径シリンダ24Aに軸方向に摺動可能に挿嵌されている。第1メインピストン34は、円柱体からなり、メイン小径シリンダ24Aから突出した端部は、一側共通ピストン32の大径部32Aに当接している。
【0062】
一のパイロット圧室35は、レギュレータケーシング22を構成する一側ブロック24のメイン小径シリンダ24Aと第1メインピストン34との間に形成されている。即ち、一のパイロット圧室35は、第1メインピストン34とレギュレータケーシング22(一側ブロック24)との間に形成された空間である。一のパイロット圧室35には、スプール27を他の方向(矢示B方向)に動作させるための動作圧がパイロットポート24Cを通じて供給される。これにより、一のパイロット圧室35は、第1メインピストン34、一側共通ピストン32を介してスプール27を矢示B方向に動作させることができる。
【0063】
第2メインピストン36は、他側ブロック25のメイン小径シリンダ25Aに軸方向に摺動可能に挿嵌されている。第2メインピストン36は、円柱体からなり、メイン小径シリンダ25Aから突出した端部は、他側共通ピストン33の大径部33Aに当接している。
【0064】
他のパイロット圧室37は、レギュレータケーシング22を構成する他側ブロック25のメイン小径シリンダ25Aと第2メインピストン36との間に形成されている。即ち、他のパイロット圧室37は、第2メインピストン36とレギュレータケーシング22(他側ブロック25)との間に形成された空間である。他のパイロット圧室37には、スプール27を一の方向(矢示A方向)に動作させるための動作圧がパイロットポート25Cを通じて供給される。これにより、他のパイロット圧室37は、第2メインピストン36、他側共通ピストン33を介してスプール27を矢示A方向に動作させることができる。
【0065】
第1サブピストン38は、一側ブロック24のサブ小径シリンダ24Bに軸方向に摺動可能に挿嵌されている。これにより、第1メインピストン34と第1サブピストン38とは、スプール27の軸線と直交する径方向に並んで配置されている。第1サブピストン38は、円柱体からなり、サブ小径シリンダ24Bから突出した端部は、一側共通ピストン32の大径部32Aに当接している。
【0066】
一の補助圧室39は、スプール27の一側に位置して設けられ、スプール27を他の方向に動作させる。一の補助圧室39は、一のパイロット圧室35と独立した状態で、レギュレータケーシング22を構成する一側ブロック24のサブ小径シリンダ24Bと第1サブピストン38との間に形成されている。即ち、一の補助圧室39は、第1サブピストン38とレギュレータケーシング22(一側ブロック24)との間に形成された空間である。一の補助圧室39には、スプール27を他の方向(矢示B方向)に動作させるための動作圧として他の液圧室20Bから流出する作動油の圧力が他の液圧通路43、第1補助通路44、補助ポート24Dを通じて供給される。これにより、一の補助圧室39は、第1サブピストン38、一側共通ピストン32を介してスプール27を矢示B方向に動作するための押圧力を作用させる。
【0067】
第2サブピストン40は、他側ブロック25のサブ小径シリンダ25Bに軸方向に摺動可能に挿嵌されている。これにより、第2メインピストン36と第2サブピストン40とは、スプール27の軸線と直交する径方向に並んで配置されている。第2サブピストン40は、円柱体からなり、サブ小径シリンダ25Bから突出した端部は、他側共通ピストン33の大径部32Aに当接している。
【0068】
他の補助圧室41は、スプール27の他側に位置して設けられ、スプール27を一の方向に動作させる。他の補助圧室41は、他のパイロット圧室37と独立した状態で、レギュレータケーシング22を構成する他側ブロック25のサブ小径シリンダ25Bと第2サブピストン40との間に形成されている。即ち、他の補助圧室41は、第2サブピストン40とレギュレータケーシング22(他側ブロック25)との間に形成された空間である。他の補助圧室41には、スプール27を一の方向(矢示A方向)に動作させるための動作圧として一の液圧室20Aから流出する作動油の圧力が一の液圧通路42、第2補助通路45、補助ポート25Dを通じて供給される。これにより、他の補助圧室41は、第2サブピストン40、他側共通ピストン33を介してスプール27を矢示A方向に動作するための押圧力を作用させる。
【0069】
一の液圧通路42は、一の液圧室20Aとレギュレータ21とを接続している。詳しくは、一の液圧通路42は、一の液圧室20Aとレギュレータケーシング22のケース本体23を形成する一側アクチュエータポート23Fとを接続している。
【0070】
他の液圧通路43は、他の液圧室20Bとレギュレータ21とを接続している。詳しくは、他の液圧通路43は、他の液圧室20Bとレギュレータケーシング22のケース本体23を形成する他側アクチュエータポート23Gとを接続している。
【0071】
第1補助通路44は、一の補助圧室39と他の液圧通路43とを接続して設けられている。第1補助通路44は、他の液圧通路43の圧力を一側ブロック24の補助ポート24Dを介して一の補助圧室39内の第1サブピストン38に作用させるための通路である。
【0072】
第2補助通路45は、他の補助圧室41と一の液圧通路42とを接続して設けられている。第2補助通路45は、一の液圧通路42の圧力を他側ブロック25の補助ポート25Dを介して他の補助圧室41内の第2サブピストン40に作用させるための通路である。
【0073】
本実施形態による可変容量型の斜板式油圧ポンプ1は、上述のような構成を有している。次に、斜板式油圧ポンプ1の容量可変部(斜板11等)を傾転角度が0度の中立位置(
図3に示すニュートラル位置)から一方向と他方向の両方向に傾転駆動する場合のレギュレータ21による容量制御動作について説明する。
【0074】
本実施形態では、本実施形態の作用および効果が従来技術の作用、効果に比較して優れている点を明確にするために、本実施形態の特徴となる構成を用いることなくレギュレータ21によって傾転アクチュエータ16のサーボピストン19を動作させた場合、即ち、従来技術と同様の動作について述べる。
【0075】
図4に示すように、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角度が0度の中立位置から一の方向となる矢示A方向に傾転駆動する場合について説明する。この場合には、矢示aで示すように、一の傾転操作弁からパイロット管路、一側ブロック24のパイロットポート24Cを介してレギュレータ21に設けられた一のパイロット圧室35にパイロット圧を供給する。
【0076】
一のパイロット圧室35にパイロット圧が供給されると、第1メインピストン34は、一側共通ピストン32を介してスプール27を制御スリーブ26のスプール摺動穴26Aに沿って矢示B方向に変位(移動)させる。このときに、スプール27は、第1メインピストン34の押動力とばね部材29の付勢力とが平衡となる位置まで矢示B方向に変位する。スプール27が矢示B方向に変位すると、スプール27の2つのランド27C,27D間でスプール摺動穴26Aを介して制御スリーブ26の油孔26Bと油孔26Dとが連通する。これにより、ケース本体23のポンプポート23Eは、他側アクチュエータポート23Gに連通される。
【0077】
そして、パイロットポンプからポンプポート23Eに供給されている圧油(傾転制御圧)は、矢示bで示すように、ポンプポート23E、制御スリーブ26の油孔26B,26D、他側アクチュエータポート23Gに流通した後、矢示cで示すように、他の液圧通路43を通じて他の液圧室20Bへと供給される。これにより、
図5に示すように、サーボピストン19は、他の液圧室20Bに供給される圧油によって押動され、各シリンダ穴17A,17B内を矢示A方向に変位する。
【0078】
サーボピストン19が矢示A方向に変位したときに、フィードバックリンク31は、レギュレータ21の制御スリーブ26をスプール27の変位方向と同じ矢示B方向に変位させる。これにより、制御スリーブ26は、油孔26C,26Dがスプール27のランド27C,27Dにより内側のスプール摺動穴26Aに対して遮断(閉塞)される位置までフィードバック制御される。
【0079】
そして、傾転アクチュエータ16は、傾転レバー12を介して斜板11を矢示A方向に傾転させる。この場合、傾転アクチュエータ16は、斜板11の傾転角度を、設定した傾転角度(目標傾転角度)まで傾転させる。
【0080】
このように、一のパイロット圧室35に供給されるパイロット圧だけでスプール27を移動させた場合、矢示B方向に移動されるスプール27に制御スリーブ26が追い付いて、制御スリーブ26の油孔26C,26Dをスプール27のランド27C,27Dが絞ることになる。これにより、
図8中に点線で示すように、移動速度減少区間の存在によって傾転アクチュエータ16の斜板等を目標傾転角度まで到達させるのに時間を要してしまう。
【0081】
次に、本実施形態の特徴となる構成を用いたレギュレータ21によって傾転アクチュエータ16のサーボピストン19を動作させた場合について述べる。
【0082】
図4に示すように、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角度が0度の中立位置から一の方向となる矢示A方向に傾転駆動する場合には、矢示aで示すように、一の傾転操作弁からパイロット管路、一側ブロック24のパイロットポート24Cを介してレギュレータ21に設けられた一のパイロット圧室35にパイロット圧を供給する。
【0083】
一のパイロット圧室35にパイロット圧が供給されると、第1メインピストン34は、一側共通ピストン32を介してスプール27を制御スリーブ26のスプール摺動穴26Aに沿って矢示B方向に変位(移動)させる。このときに、スプール27は、第1メインピストン34の押動力とばね部材29の付勢力とが平衡となる位置まで矢示B方向に変位する。スプール27が矢示B方向に変位すると、スプール27の2つのランド27C,27D間でスプール摺動穴26Aを介して制御スリーブ26の油孔26Bと油孔26Dとが連通する。これにより、ケース本体23のポンプポート23Eは、他側アクチュエータポート23Gに連通される。
【0084】
そして、パイロットポンプからポンプポート23Eに供給されている圧油(傾転制御圧)は、矢示bで示すように、ポンプポート23E、制御スリーブ26の油孔26B,26D、他側アクチュエータポート23Gに流通した後、矢示cで示すように、他の液圧通路43を通じて他の液圧室20Bへと供給される。これにより、
図5に示すように、サーボピストン19は、他の液圧室20Bに供給される圧油によって押動され、各シリンダ穴17A,17B内を矢示A方向に変位する。
【0085】
ここで、他の液圧通路43には、第1補助通路44が接続されているから、他の液圧室20Bへと供給される圧油の一部は、矢示dで示すように、第1補助通路44、一側ブロック24の補助ポート24Dを通じて一の補助圧室39へと供給される。レギュレータ21は、一の補助圧室39に供給された圧油(サーボピストン19の動作圧)を利用して第1サブピストン38を矢示B方向に変位させる。これにより、第1サブピストン38は、一側共通ピストン32を介してスプール27を矢示B方向に押動することができる。
【0086】
一方、一の液圧室20Aは、一の液圧通路42、ケース本体23の一側アクチュエータポート23F、制御スリーブ26の油孔26C、ドレン通路23H、ばね収容部23B、リンク挿通口23J等を通じてドレン側となるケーシング本体3に接続されている。従って、第2補助通路45、他側ブロック25の補助ポート25Dを介して一の液圧通路42に接続された他の補助圧室41は、大気圧に近いタンク圧になっているから、第2サブピストン40が矢示B方向に押動されるスプール27の動作を妨げることはない。これにより、
図6に示すように、スプール27は、矢示B方向に大きく変位させることができる。
【0087】
さらに、矢示B方向に移動されるスプール27に制御スリーブ26が追い付いてくると、一側アクチュエータポート23Fが絞られて一の液圧通路42が昇圧されるから、他の補助圧室41も昇圧される。これにより、
図7に示すように、第2サブピストン40が他側共通ピストン33を介してスプール27を矢示A方向に押動する。そして、スプール27は、第1メインピストン34と第1サブピストン38の合力と、ばね部材29の付勢力と、第2サブピストン40の力とが平衡となる位置で停止する。また、制御スリーブ26は、一の液圧室20Aの圧力と他の液圧室20Bの圧力とサーボピストン19に作用する外力とが平衡となる位置で停止する。
【0088】
このように、スプール27は、第1メインピストン34の押圧力と第1サブピストン38の押圧力の合計の押圧力で押動されるから、スプール27は、大きく変位することができ、ケース本体23の他側アクチュエータポート23G開放時間を従来技術よりも延長することができる。これにより、他の液圧室20Bには、矢示B方向に移動されるスプール27に制御スリーブ26が追い付くまでに多くの圧油を供給することができる。
【0089】
次に、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角度が0度の中立位置から他の方向となる矢示B方向に傾転駆動する場合について説明する。この場合には、他の傾転操作弁からパイロット管路、他側ブロック25のパイロットポート25Cを介してレギュレータ21に設けられた他のパイロット圧室37にパイロット圧を供給する。
【0090】
他のパイロット圧室37にパイロット圧が供給されると、第2メインピストン36は、他側共通ピストン33を介してスプール27を制御スリーブ26のスプール摺動穴26Aに沿って矢示A方向に変位(移動)させる。このときに、スプール27は、第2メインピストン36の押動力とばね部材29の付勢力とが平衡となる位置まで矢示A方向に変位する。スプール27が矢示A方向に変位すると、スプール27の2つのランド27C,27D間でスプール摺動穴26Aを介して制御スリーブ26の油孔26Bと油孔26Cとが連通する。これにより、ケース本体23のポンプポート23Eは、一側アクチュエータポート23Fに連通される。
【0091】
そして、パイロットポンプからポンプポート23Eに供給されている圧油(傾転制御圧)は、ポンプポート23E、制御スリーブ26の油孔26B,26C、一側アクチュエータポート23Fに流通した後、一の液圧通路42を通じて一の液圧室20Aへと供給される。これにより、サーボピストン19は、一の液圧室20Aに供給される圧油によって押動され、各シリンダ穴17A,17B内を矢示B方向に変位する。
【0092】
ここで、一の液圧通路42には、第2補助通路45が接続されているから、一の液圧室20Aへと供給される圧油の一部は、第2補助通路45、他側ブロック25の補助ポート25Dを通じて他の補助圧室41へと供給される。レギュレータ21は、他の補助圧室41に供給された圧油(サーボピストン19の動作圧)を利用して第2サブピストン40を矢示A方向に変位させる。これにより、第2サブピストン40は、他側共通ピストン33を介してスプール27を矢示A方向に押動することができる。
【0093】
一方、他の液圧室20Bは、他の液圧通路43、ケース本体23の他側アクチュエータポート23G、制御スリーブ26の油孔26D、リンク挿通口23J等を通じてドレン側となる作動油タンク(図示せず)に接続されている。従って、第1補助通路44、一側ブロック24の補助ポート24Dを介して他の液圧通路44に接続された一の補助圧室39は、大気圧に近いタンク圧になっているから、第1サブピストン38が矢示A方向に押動されるスプール27の動作を妨げることはない。これにより、スプール27は、矢示A方向に大きく変位させることができる。
【0094】
さらに、矢示A方向に移動されるスプール27に制御スリーブ26が追い付いてくると、他側アクチュエータポート23Gが絞られて他の液圧通路43が昇圧されるから、一の補助圧室39も昇圧される。これにより、第1サブピストン38が一側共通ピストン32を介してスプール27を矢示B方向に押動する。そして、スプール27は、第2メインピストン36と第2サブピストン40の合力と、ばね部材29の付勢力と、第1サブピストン38の力とが平衡となる位置で停止する。また、制御スリーブ26は、一の液圧室20Aの圧力と他の液圧室20Bの圧力とサーボピストン19に作用する外力とが平衡となる位置で停止する。
【0095】
このように、スプール27は、第2メインピストン36の押圧力と第2サブピストン40の押圧力の合計の押圧力で押動されるから、スプール27は、大きく変位することができ、ケース本体23の一側アクチュエータポート23F開放時間を従来技術よりも延長することができる。これにより、一の液圧室20Aには、矢示A方向に移動されるスプール27に制御スリーブ26が追い付くまでに多くの圧油を供給することができる。
【0096】
かくして、第1の実施形態によれば、レギュレータケーシング22には、スプール27を他の方向となる矢示B方向に動作させるためにスプール27の一側に位置して設けられ、一のパイロット圧室35と独立した一の補助圧室39と、スプール27を一の方向となる矢示B方向に動作させるためにスプール27の他側に位置して設けられ、他のパイロット圧室37と独立した他の補助圧室41とを備えている。また、一の補助圧室39と他の液圧通路43とを接続する第1補助通路44と、他の補助圧室41と一の液圧通路42とを接続する第2補助通路45とが設けられている。
【0097】
従って、スプール27は、第1メインピストン34の押圧力と第1サブピストン38の押圧力との合計の押圧力で矢示B方向に押動することができ、第2メインピストン36の押圧力と第2サブピストン40の押圧力との合計の押圧力で矢示A方向に押動することができる。これにより、スプール27は、大きく変位させることができる。この結果、傾転アクチュエータ16のサーボピストン19を目標位置まで短時間で移動させることができる。
【0098】
スプール27の一端側には、スプール27の軸線と直交する径方向に並んで第1メインピストン34および第1サブピストン38が設けられている。また、スプール27の他端側には、スプール27の軸線と直交する径方向に並んで第2メインピストン36および第2サブピストン40が設けられている。そして、第1メインピストン34とレギュレータケーシング22との間に形成された空間が一のパイロット圧室35であり、第2メインピストン36とレギュレータケーシング22との間に形成された空間が他のパイロット圧室37である。また、第1サブピストン38とレギュレータケーシング22との間に形成された空間が一の補助圧室39であり、第2サブピストン40とレギュレータケーシング22との間に形成された空間が他の補助圧室41である。
【0099】
これにより、径方向に並んで配置された第1メインピストン34と第1サブピストン38、第2メインピストン36と第2サブピストン40は、レギュレータ21の長さ方向にコンパクトに形成することができ、油圧ポンプ1を小型化することができる。しかも、パイロット圧室35,37と補助圧室39,41とを完全に独立させることにより、パイロット圧室35,37と補助圧室39,41との間の圧漏れを防止でき、動作性能を向上することができる。
【0100】
次に、
図9および
図10は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態は、スプールの一端側には、スプールの軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第1メインピストンおよび第1サブピストンが設けられ、スプールの他端側には、スプールの軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第2メインピストンおよび第2サブピストンが設けられ、第1メインピストンとレギュレータケーシングとの間に形成された空間が一のパイロット圧室であり、第2メインピストンとレギュレータケーシングとの間に形成された空間が他のパイロット圧室であり、第1サブピストンとレギュレータケーシングとの間に形成された空間が一の補助圧室であり、第2サブピストンとレギュレータケーシングとの間に形成された空間が他の補助圧室であることを特徴としている。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0101】
図9において、第2の実施形態によるレギュレータ51は、前述した制御スリーブ26、フィードバックリンク31と、後述のレギュレータケーシング52、スプール55、一のパイロット圧室58、他のパイロット圧室59、一の補助圧室60、他の補助圧室61を含んで構成されている。
【0102】
レギュレータケーシング52は、ケース本体23の軸方向の一側(
図9の左側)に設けられた一側ブロック53と、ケース本体23の軸方向の他側(
図9の右側)に設けられた他側ブロック54とにより構成されている。
【0103】
一側ブロック53には、ケース本体23側の端面に開口したメインシリンダ53Aと、メインシリンダ53Aの奥底部から延びたサブシリンダ53Bとが設けられている。メインシリンダ53Aとサブシリンダ53Bとは、例えば、後述のスプール55と同一軸線上、即ち、スプール55の軸方向に並んで配置されている。また、メインシリンダ53Aは、サブシリンダ53Bよりも大径に形成されている。
【0104】
また、一側ブロック53には、メインシリンダ53Aに連通してパイロットポート53Cと、サブシリンダ53Bに連通して補助ポート53Dとが設けられている。パイロットポート53Cは、パイロット管路を介して一の傾転操作弁(いずれも図示せず)に接続されている。補助ポート53Dは、第1補助通路44を介して他の液圧通路43に接続されている。
【0105】
一方、他側ブロック54は、一側ブロック53と同様に、メインシリンダ54A、サブシリンダ54B、パイロットポート54Cおよび補助ポート54Dを備えている。パイロットポート54Cは、パイロット管路を介して他の傾転操作弁(いずれも図示せず)に接続されている。補助ポート54Dは、第2補助通路45を介して一の液圧通路42に接続されている。
【0106】
スプール55は、レギュレータケーシング52内、即ち、ケース本体23のスリーブ摺動部23Aに制御スリーブ26を介して相対変位可能に設けられている。スプール55は、第1の実施形態によるスプール27と同様に、一側端面55A、他側端面55B、ランド55C,55D、環状凸部55E、環状溝55F、止め輪55Gを備えている。
【0107】
一側段付きピストン56は、一側ブロック53のメインシリンダ53Aとサブシリンダ53Bとに亘って軸方向に摺動可能に挿嵌されている。一側段付きピストン56は、メインシリンダ53Aに挿嵌された大径な第1メインピストン56Aと、第1メインピストン56Aの端部が同軸に延びて設けられ、第1メインピストン56Aよりも小径な第1サブピストン56Bとにより構成されている。第1メインピストン56Aは、第1サブピストン56Bとの段差部に環状受圧面56Cを有している。さらに、第1サブピストン56Bは、第1メインピストン56Aと反対側の端面に円形受圧面56Dを有している。
【0108】
ここで、
図10に示すように、第1メインピストン56Aの直径寸法はD1となり、第1サブピストン56Bの直径寸法は、直径寸法D1よりも小さいD2となっている。この直径寸法D1と直径寸法D2との関係は、第1メインピストン56Aの環状受圧面56Cがパイロット圧を受承したときの押圧力が、第1サブピストン56Bの円形受圧面56Dがサーボピストン19の動作圧を受承したときの押圧力よりも大きくなるように、面積や圧力を考慮してそれぞれの直径寸法が設定されている。
【0109】
他側段付きピストン57は、他側ブロック54のメインシリンダ54Aとサブシリンダ54Bとに亘って軸方向に摺動可能に挿嵌されている。他側段付きピストン57は、一側段付きピストン56と同形状を有している。即ち、他側段付きピストン57は、第2メインピストン57A、第2サブピストン57B、環状受圧面57Cおよび円形受圧面57Dを備えている。
【0110】
一のパイロット圧室58は、レギュレータケーシング52を構成する一側ブロック53のメインシリンダ53Aと一側段付きピストン56の第1メインピストン56Aとの間に形成されている。即ち、一のパイロット圧室58は、第1メインピストン56Aとレギュレータケーシング52(一側ブロック53)との間に形成された環状空間である。一のパイロット圧室58には、スプール55を他の方向に動作させるための動作圧がパイロットポート53Cを通じて供給される。これにより、一のパイロット圧室58は、一側段付きピストン56の第1メインピストン56Aを介してスプール55を他の方向に動作させることができる。
【0111】
他のパイロット圧室59は、レギュレータケーシング52を構成する他側ブロック54のメインシリンダ54Aと他側段付きピストン57の第2メインピストン57Aとの間に形成されている。即ち、他のパイロット圧室59は、第2メインピストン57Aとレギュレータケーシング52(他側ブロック54)との間に形成された環状空間である。他のパイロット圧室59には、スプール55を一の方向に動作させるための動作圧がパイロットポート54Cを通じて供給される。これにより、他のパイロット圧室59は、他側段付きピストン57の第2メインピストン57Aを介してスプール55を一の方向に動作させることができる。
【0112】
一の補助圧室60は、スプール55の一側に位置して設けられ、スプール55を他の方向に動作させる。一の補助圧室60は、一のパイロット圧室58と独立した状態で、レギュレータケーシング52を構成する一側ブロック53のサブシリンダ53Bと一側段付きピストン56の第1サブピストン56Bとの間に形成されている。即ち、一の補助圧室60は、第1サブピストン56Bとレギュレータケーシング52(一側ブロック53)との間に形成された円形空間である。一の補助圧室60には、スプール55を他の方向に動作させるための動作圧として他の液圧室20Bから流出する作動油の圧力が他の液圧通路43、第1補助通路44、補助ポート53Dを通じて供給される。これにより、一の補助圧室60は、一側段付きピストン56を介してスプール55を他の方向に動作するための押圧力を作用させる。
【0113】
他の補助圧室61は、スプール55の他側に位置して設けられ、スプール55を一の方向に動作させる。他の補助圧室61は、他のパイロット圧室59と独立した状態で、レギュレータケーシング52を構成する他側ブロック54のサブシリンダ54Bと他側段付きピストン57の第2サブピストン57Bとの間に形成されている。即ち、他の補助圧室61は、第2サブピストン57Bとレギュレータケーシング52(他側ブロック54)との間に形成された円形空間である。他の補助圧室61には、スプール55を一の方向に動作させるための動作圧として一の液圧室20Aから流出する作動油の圧力が一の液圧通路42、第2補助通路45、補助ポート54Dを通じて供給される。これにより、他の補助圧室61は、他側段付きピストン57を介してスプール55を一の方向に動作するための押圧力を作用させる。
【0114】
なお、ドレン通路62は、一側ブロック53のサブシリンダ53Bをケース本体23のスリーブ摺動部23A内に連通して設けられている。ドレン通路62は、一の補助圧室60に供給した圧油が一のパイロット圧室58に流入するのを防止している。同様に、ドレン通路63は、他側ブロック54のサブシリンダ54Bをケース本体23のばね受け収容部23C内(ばね受け30内)に連通して設けられている。
【0115】
なお、第2の実施形態によるレギュレータ51によって油圧ポンプ1の斜板11を傾転させるときの動作は、第1の実施形態によるレギュレータ21と同様であるので、その説明を省略する。
【0116】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、スプール55の一端側には、スプール55の軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第1メインピストン56Aおよび第1サブピストン56Bが設けられた一側段付きピストン56を有し、スプール55の他端側には、スプール55の軸方向に並んで配置され径寸法が異なる第2メインピストン57Aおよび第2サブピストン57Bが設けられた他側段付きピストン57を有している。また、第1メインピストン56Aとレギュレータケーシング52の一側ブロック53との間に形成された空間が一のパイロット圧室58であり、第2メインピストン57Aとレギュレータケーシング52の他側ブロック54との間に形成された空間が他のパイロット圧室59である。さらに、第1サブピストン56Bとレギュレータケーシング52の一側ブロック53との間に形成された空間が一の補助圧室60であり、第2サブピストン57Bとレギュレータケーシング52の他側ブロック54との間に形成された空間が他の補助圧室61である。
【0117】
このように構成したことにより、第1の実施形態の共通ピストン32,33を省略できる上に、各シリンダ53A,53B,54A,54B、各段付きピストン56,57は、容易に加工することができる。
【0118】
なお、各実施形態では、可変容量型液圧回転機として可変容量型の斜板式油圧ポンプ1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば可変容量型の斜板式油圧モータに適用してもよく、可変容量型の斜軸式油圧ポンプまたは油圧モータに適用してもよいものである。
【符号の説明】
【0119】
1 可変容量型の斜板式油圧ポンプ(可変容量型液圧回転機)
11 斜板(容量可変部)
16 傾転アクチュエータ
17A,17B シリンダ穴
19 サーボピストン
19A 一端部
19B 他端部
20A 一の液圧室
20B 他の液圧室
21,51 レギュレータ
22,52 レギュレータケーシング
23 ケース本体
23A スリーブ摺動部(円筒穴)
26 制御スリーブ
27,55 スプール
31 フィードバックリンク
34,56A 第1メインピストン
35,58 一のパイロット圧室
36,57A 第2メインピストン
37,59 他のパイロット圧室
38,56B 第1サブピストン
39,60 一の補助圧室
40,57B 第2サブピストン
41,61 他の補助圧室
42 一の液圧通路
43 他の液圧通路
44 第1補助通路
45 第2補助通路