(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】スイッチング回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230904BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20230904BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/00 F
H03K17/16 M
(21)【出願番号】P 2019238161
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐段田 裕平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 崇文
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-115715(JP,A)
【文献】特開平01-298949(JP,A)
【文献】特表2015-503319(JP,A)
【文献】特開2010-136089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 1/00
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、
前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、
前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、
前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、
前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、
前記サージ抑制回路は、
前記第1配線上に設けられた抵抗素子と、
前記駆動基準電位端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられたダイオードおよびキャパシタと、
前記キャパシタに印加される電圧を設定するキャパシタ電圧設定回路と、を備え、
前記ダイオードは、カソードが前記駆動基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することで、前記サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧を設定する、スイッチング回路。
【請求項2】
前記サージ抑制回路は、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間において、前記第1配線および前記第2配線を含むサージ抑制配線に並列に接続されたバイパス回路を備え、
前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記キャパシタ電圧設定回路により設定されるサージ抑制動作電圧の範囲内にあるように構成される、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、
前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、
前記駆動回路の駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、
前記サージ抑制回路は、
前記制御端子と前記
スイッチング素子の低電位側主端子とを接続するサージ抑制配線上に直列に設けられたダイオードおよびキャパシタと、
前記キャパシタに印加される電圧を設定するキャパシタ電圧設定回路と、を備え、
前記ダイオードは、カソードが前記制御端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することで、前記サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧を設定する、スイッチング回路。
【請求項4】
前記駆動回路の駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、
前記サージ抑制回路は、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間を接続する低電位側配線に並列に接続されたバイパス回路を備え、
前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記キャパシタ電圧設定回路により設定されるサージ抑制動作電圧の範囲内にあるように構成される、請求項3に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧が前記スイッチング素子のオン動作時に前記スイッチング素子のオフ動作時より高い所定の電圧となるように、前記キャパシタに印加される電圧を設定する、請求項1から4の何れかに記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン動作させるため
の駆動信号に基づいて、前記キャパシタ
に所定の電圧を印加するように構成されている、請求項1から5の何れかに記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記駆動回路の駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに並列に接続されるツェナーダイオードを含み、
前記ツェナーダイオードは、カソードが前記キャパシタの低電位側主端子側に接続され、アノードが前記キャパシタの前記制御基準電位端子側に接続される、請求項1から5の何れかに記載のスイッチング回路。
【請求項8】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン動作させ
る駆動信号を出力している間、前記低電位側主端子から前記駆動基準電位端子に流れる電流によって、前記サージ抑制動作電圧が前記バイパス回路動作電圧より大き
い所定の電圧になるまで前記キャパシタを充電するように構成されている、請求項2または4に記載のスイッチング回路。
【請求項9】
一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、
前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、
前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、
前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、
前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、
前記サージ抑制回路は、
前記第1配線上に設けられた抵抗素子と、
前記駆動基準電位端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられた第1ダイオードおよび第1ツェナーダイオードと、
前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間において、前記第1配線および前記第2配線を含むサージ抑制配線に並列に接続されたバイパス回路と、を備え、
前記第1ダイオードは、カソードが前記駆動基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、
前記第1ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御基準電位端子側に接続され、
前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記サージ抑制配線上の前記抵抗素子、前記第1ダイオードおよび前記第1ツェナーダイオードに電流が流れるためのサージ抑制動作電圧より大きいように構成される、スイッチング回路。
【請求項10】
一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、
前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、
前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、
前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、
前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、
前記サージ抑制回路は、
前記制御端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられた第1ダイオードおよび第1ツェナーダイオードと、
前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間を接続する低電位側配線に並列に接続されたバイパス回路と、を備え、
前記第1ダイオードは、カソードが前記制御端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、
前記第1ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御端子側に接続され、
前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記第2配線上の前記第1ダイオードおよび前記第1ツェナーダイオードに電流が流れるためのサージ抑制動作電圧より大きいように構成され
、
前記バイパス回路は、第2ダイオードおよび第2ツェナーダイオードが直列接続されるように構成されており、
前記第2ダイオードは、カソードが前記制御基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、
前記第2ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御基準電位端子側に接続される、スイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換回路等において、スイッチング素子の高周波駆動は、電力変換回路等の小型、軽量化のために有効である。しかし、スイッチング素子の高周波駆動において、スイッチング素子のオフ動作時に過渡的に発生する高電圧(サージ電圧)が問題となる。
【0003】
このようなサージ電圧を抑制するための構成として、従来からスイッチング素子の制御端子と高電位側主端子との間にサージ抑制クランプ回路を設けることが知られている。しかし、このような構成では、制御端子に高電位側主端子の電圧が印加されることになるため、スイッチング素子を高電圧かつ高速(高周波)で駆動した場合に生じる損失が大きくなる。
【0004】
これに対し、下記特許文献1では、制御端子と低電位側主端子との間に、サージ抑制クランプ回路としてダイオードとツェナーダイオードとが直列接続された回路要素が設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような構成においては、スイッチング素子の低電位側の寄生インダクタンスの電圧を用いてサージ電圧を抑制する。そのため、制御端子と高電位側主端子との間にサージ抑制クランプ回路が設けられた従来構成に比べて損失を小さくすることができる。
【0007】
しかし、特許文献1のような構成ではスイッチング素子の適切な保護の観点から改善の余地がある。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するものであり、サージ電圧の抑制を低損失で実現することができ、しかも、スイッチング素子をより適切に保護することができるスイッチング回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るスイッチング回路は、一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、前記サージ抑制回路は、前記第1配線上に設けられた抵抗素子と、前記駆動基準電位端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられたダイオードおよびキャパシタと、前記キャパシタに印加される電圧を設定するキャパシタ電圧設定回路と、を備え、前記ダイオードは、カソードが前記駆動基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することで、サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧を設定する。
【0010】
上記構成によれば、オフ動作時において、スイッチング素子の制御端子に印加される駆動電圧が低下し、スイッチング素子の主端子間に流れる電流が減少し、主端子間に過剰な電圧(サージ電圧)が発生すると、低電位側主端子の寄生インダクタンスに流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスによって生じる誘導電圧が発生し、サージ抑制回路において低電位側主端子から駆動基準電位端子方向に電流(クランプ電流)が流れる。これにより、第1配線上に設けられた抵抗素子に電圧が発生し、駆動基準電位端子からスイッチング素子の制御基準電位端子に流れる電流が小さくなる。このため、スイッチング素子におけるスイッチング速度(ターンオフ速度)が遅くなり、サージ電圧が抑制される。このとき、寄生インダクタンスによって発生する誘導電圧は低電圧であり、低い動作電圧でサージ抑制回路を動作させることができるため、サージ電圧の抑制による損失を低減することができる。さらに、キャパシタ電圧設定回路は、キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することにより、サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧が変更される。例えば、オン動作時にはキャパシタ電圧設定回路がキャパシタに印加される電圧を高くする。キャパシタに印加される電圧が高くなると、寄生インダクタンスに生じる電圧により抵抗素子に発生する電圧が小さくなる。したがって、キャパシタに印加される電圧が高くなるスイッチング素子のオン動作時においては、抵抗素子に生じる電圧が小さくなり、サージ抑制回路にクランプ電流が流れにくくなる。したがって、スイッチング素子のオン動作時においてクランプ電流が流れるのを抑制することにより、制御端子と制御基準電位端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができる。これにより、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0011】
前記サージ抑制回路は、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間において、前記第1配線および前記第2配線を含むサージ抑制配線に並列に接続されたバイパス回路を備え、前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記キャパシタ電圧設定回路により設定されるサージ抑制動作電圧の範囲内にあるように構成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、サージ抑制回路に流れるクランプ電流が増大し、クランプ電流に伴って低電位側主端子と制御基準電位端子との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧より大きくなると、バイパス回路に電流が流れ、クランプ電流が抑制される。したがって、制御端子と制御基準電位端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0013】
本開示の他の態様に係るスイッチング回路は、一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、前記駆動回路の駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記サージ抑制回路は、前記制御端子と前記低電位側主端子とを接続するサージ抑制配線上に直列に設けられたダイオードおよびキャパシタと、前記キャパシタに印加される電圧を設定するキャパシタ電圧設定回路と、を備え、前記ダイオードは、カソードが前記制御端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することで、前記サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧を設定する。
【0014】
上記構成によれば、スイッチング素子の制御端子に印加される駆動電圧が低下し、スイッチング素子の主端子間に流れる電流が減少し、主端子間に過剰な電圧(サージ電圧)が発生すると、低電位側主端子の寄生インダクタンスに流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスによって生じる誘導電圧が発生し、サージ抑制回路のサージ抑制配線において低電位側主端子から制御端子方向に電流(クランプ電流)が流れる。スイッチング素子の制御端子に流れるクランプ電流により、スイッチング素子におけるスイッチング速度が遅くなり、サージ電圧が抑制される。このとき、寄生インダクタンスにサージ電圧による電流が流れることにより生じる電圧は低電圧であるため、サージ電圧の抑制の際に生じる損失を低減することができる。さらに、キャパシタ電圧設定回路は、キャパシタに印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することにより、サージ抑制回路に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧が変更される。例えば、オン動作時にはキャパシタ電圧設定回路がキャパシタに印加される電圧を高くする。キャパシタに印加される電圧が高くなると、寄生インダクタンスに生じる電圧により発生するクランプ電流が流れにくくなる。したがって、スイッチング素子のオン動作時においてクランプ電流が流れるのを抑制することにより、制御端子と低電位側主端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができる。これにより、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0015】
前記駆動回路の駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、前記サージ抑制回路は、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間を接続する低電位側配線に並列に接続されたバイパス回路を備え、前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記キャパシタ電圧設定回路により設定されるサージ抑制動作電圧の範囲内にあるように構成されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、サージ抑制回路に流れるクランプ電流が増大し、クランプ電流に伴って低電位側主端子と制御端子との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧より大きくなると、バイパス回路に電流が流れ、クランプ電流が抑制される。したがって、制御端子と低電位側主端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0017】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに印加される電圧が前記スイッチング素子のオン動作時に前記スイッチング素子のオフ動作時より高い所定の電圧となるように、前記キャパシタに印加される電圧を設定してもよい。
【0018】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン動作させるための前記駆動信号に基づいて、前記キャパシタに前記所定の電圧を印加するように構成されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、駆動信号に基づいてキャパシタに印加する電圧を切り替えるため、新たに信号を生成する必要をなくし、かつ、確実な電圧切替動作を実現することができる。
【0020】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記キャパシタに並列に接続されるツェナーダイオードを含み、前記ツェナーダイオードは、カソードが前記キャパシタの低電位側主端子側に接続され、アノードが前記キャパシタの前記制御基準電位端子側に接続されてもよい。
【0021】
上記構成によれば、サージ抑制動作電圧がツェナーダイオードの降伏電圧として設定される。寄生インダンクタンスにより生じる電圧がサージ抑制動作電圧を超えると、サージ抑制回路にクランプ電流が流れる。サージ抑制回路にクランプ電流が流れると、キャパシタが充電され、サージ抑制回路の動作電圧(サージ抑制動作電圧)が上昇する。サージ抑制動作電圧が上昇することによりクランプ電流が流れにくくなり、過度なクランプ電流がサージ抑制回路を流れることを抑制することができる。クランプ電流が流れなくなると、ツェナーダイオードの経路を通じてキャパシタに充電された電荷が放電され、サージ抑制動作電圧が元の状態(ツェナーダイオードの降伏電圧)に復帰する。したがって、キャパシタに印加する電圧を決定するために制御信号を別途生成することなく、キャパシタの電圧生成およびリセットを受動的に行うキャパシタ電圧設定回路を実現することができる。
【0022】
前記キャパシタ電圧設定回路は、前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン動作させる前記駆動信号を出力している間、前記低電位側主端子から前記駆動基準電位端子に流れる電流によって、前記サージ抑制動作電圧が前記バイパス回路動作電圧より大きい前記所定の電圧になるまで前記キャパシタを充電するように構成されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、サージ抑制回路に流れるクランプ電流を用いてキャパシタが充電されるため、サージ抑制回路の動作電圧が上昇する。サージ抑制動作電圧が上昇し、バイパス回路動作電圧より大きくなると、バイパス回路に電流が流れ、クランプ電流が抑制される。これにより、サージ抑制回路に過度な電流が流れることが防止される。したがって、スイッチング素子の端子間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0024】
本開示の他の態様に係るスイッチング回路は、一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、前記サージ抑制回路は、前記第1配線上に設けられた抵抗素子と、前記駆動基準電位端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられた第1ダイオードおよび第1ツェナーダイオードと、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間において、前記第1配線および前記第2配線を含むサージ抑制配線に並列に接続されたバイパス回路と、を備え、前記第1ダイオードは、カソードが前記駆動基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、前記第1ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御基準電位端子側に接続され、前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記サージ抑制配線上の前記抵抗素子、前記第1ダイオードおよび前記第1ツェナーダイオードに電流が流れるためのサージ抑制動作電圧より大きいように構成される。
【0025】
上記構成によれば、オフ動作時において、スイッチング素子の制御端子に印加される駆動電圧が低下し、スイッチング素子の主端子間に流れる電流が減少し、主端子間に過剰な電圧(サージ電圧)が発生すると、低電位側主端子の寄生インダクタンスに流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスによって生じる誘導電圧が発生し、サージ抑制回路において低電位側主端子から駆動基準電位端子方向に電流(クランプ電流)が流れる。これにより、第1配線上に設けられた抵抗素子に電圧が発生し、駆動基準電位端子からスイッチング素子の制御基準電位端子に流れる電流が小さくなる。このため、スイッチング素子におけるスイッチング速度(ターンオフ速度)が遅くなり、サージ電圧が抑制される。このとき、寄生インダクタンスによって発生する誘導電圧は低電圧であり、低い動作電圧でサージ抑制回路を動作させることができるため、サージ電圧の抑制による損失を低減することができる。また、サージ抑制回路に流れるクランプ電流が増大し、クランプ電流に伴って低電位側主端子と制御基準電位端子との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧より大きくなると、バイパス回路に電流が流れ、クランプ電流が抑制される。したがって、制御端子と制御基準電位端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0026】
本開示の他の態様に係るスイッチング回路は、一対の主端子と、制御端子とを有するスイッチング素子と、前記制御端子に駆動電圧を印加することにより前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記一対の主端子間にサージ電圧が生じるのを抑制するサージ抑制回路と、を備え、前記駆動回路は、駆動信号出力端子および駆動基準電位端子を有し、前記駆動信号出力端子は、前記スイッチング素子の前記制御端子に接続され、前記駆動基準電位端子は、前記スイッチング素子の低電位側主端子とは別に前記スイッチング素子の低電位側に設けられる制御基準電位端子に第1配線を介して接続され、前記サージ抑制回路は、前記制御端子と前記低電位側主端子とを接続する第2配線上に直列に設けられた第1ダイオードおよび第1ツェナーダイオードと、前記低電位側主端子と前記制御基準電位端子との間を接続する低電位側配線に並列に接続されたバイパス回路と、を備え、前記第1ダイオードは、カソードが前記制御端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、前記第1ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御端子側に接続され、前記バイパス回路は、当該バイパス回路に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧が、前記第2配線上の前記第1ダイオードおよび前記第1ツェナーダイオードに電流が流れるためのサージ抑制動作電圧より大きいように構成される。
【0027】
上記構成によれば、スイッチング素子の制御端子に印加される駆動電圧が低下し、スイッチング素子の主端子間に流れる電流が減少し、主端子間に過剰な電圧(サージ電圧)が発生すると、低電位側主端子の寄生インダクタンスに流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスによって生じる誘導電圧が発生し、サージ抑制回路のサージ抑制配線において低電位側主端子から制御端子方向に電流(クランプ電流)が流れる。スイッチング素子の制御端子に流れるクランプ電流により、スイッチング素子におけるスイッチング速度が遅くなり、サージ電圧が抑制される。このとき、寄生インダクタンスにサージ電圧による電流が流れることにより生じる電圧は低電圧であるため、サージ電圧を抑制する際に生じる損失を低減することができる。また、サージ抑制回路に流れるクランプ電流が増大し、クランプ電流に伴って低電位側主端子と制御端子との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧より大きくなると、バイパス回路に電流が流れ、クランプ電流が抑制される。したがって、制御端子と低電位側主端子との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子を適切に保護することができる。
【0028】
前記バイパス回路は、第2ダイオードおよび第2ツェナーダイオードが直列接続されるように構成されており、前記第2ダイオードは、カソードが前記制御基準電位端子側に接続され、アノードが前記低電位側主端子側に接続され、前記第2ツェナーダイオードは、カソードが前記低電位側主端子側に接続され、アノードが前記制御基準電位端子側に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示の構成によれば、サージ電圧の抑制を低損失で実現することができ、しかも、スイッチング素子をより適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスイッチング回路において、キャパシタ電圧設定回路の一例を適用した場合を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すスイッチング回路において、キャパシタ電圧設定回路の他の例を適用した場合を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態2に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すバイパス回路の一具体例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態3に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態4に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態5に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態6に係るスイッチング回路の概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1のスイッチング回路におけるサージ抑制動作のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施の形態2のスイッチング回路におけるオフ動作時にバイパス回路が機能し、誤点呼が抑制されたシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施の形態2のスイッチング回路におけるオン動作時のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または同じ機能を有する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係るスイッチング回路1Aの概略構成を示す図である。本実施の形態におけるスイッチング回路1Aは、少なくとも1つのスイッチング素子2を備えている。スイッチング素子2は、一対の主端子(高電位側主端子T1および低電位側主端子T2)と、制御端子T3を備えている。
【0033】
さらに、スイッチング素子2は、低電位側主端子T2とは別にスイッチング素子2の低電位側に設けられる制御基準電位端子T4を備えている。制御基準電位端子T4は、後述する駆動回路3の基準電位を設定するために設けられる。例えば、スイッチング素子2は、4端子構造を有するn型MOSFETにより構成される。制御基準電位端子T4は、スイッチング素子2の低電位側において、低電位側主端子T2よりFETチップに近い場所に位置している。制御基準電位端子T4を、負荷が接続される低電位側主端子T2とは別に設けることにより、駆動回路3における駆動信号(駆動電圧)への影響を低減させることができる。なお、
図1では、制御基準電位端子T4と低電位側主端子T2との間の配線に生じる寄生インダクタンスLpを表現するために、仮想のコイル2aを図示している。
【0034】
さらに、スイッチング回路1Aは、制御端子T3に駆動電圧Vdを印加することによりスイッチング素子2を駆動する駆動回路3を備えている。駆動回路3は、駆動信号出力端子T5および駆動基準電位端子T6を有している。駆動信号出力端子T5は、スイッチング素子2の制御端子T3に接続されている。駆動基準電位端子T6は、後述する第1配線W1を介してスイッチング素子2の制御基準電位端子T4に接続されている。
【0035】
駆動回路3は、駆動信号出力端子T5に駆動基準電位端子T6の電位よりスイッチング素子2の駆動電圧Vd分高い電位を有する駆動信号を出力する。駆動信号によりスイッチング素子2の制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に印加される制御電圧Vgが所定のオン電圧となった場合、スイッチング素子2がオン動作する。また、駆動信号出力端子T5と駆動基準電位端子T6との間に印加される駆動電圧Vdが低くなり、制御電圧Vgがオン電圧より低い所定のオフ電圧となった場合、スイッチング素子2がオフ動作する。
【0036】
オフ動作の際、駆動電圧Vdの低下による制御電圧Vgの低下に伴い、主端子T1,T2間の電流(スイッチ電流Ia)が減少すると、スイッチング素子2の主端子T1,T2間に過渡的に過大な電圧(サージ電圧Vs)が生じる恐れがある。サージ電圧Vsを含むスイッチ両端電圧Vaがスイッチング素子2の耐電圧を超えるとスイッチング素子2が損傷してしまう。一方で、このようなスイッチング回路1Aが用いられる電力変換回路を小型化、軽量化するためには、スイッチング回路1Aにおける高周波スイッチングが有効となる。そのため、スイッチング回路1Aは、高周波スイッチングを行うために、高速のスイッチング動作が求められる。その結果、高いサージ電圧Vsが発生し易い状況となる。
【0037】
このようなサージ電圧Vsが一対の主端子T1,T2間に発生するのを抑制するために、スイッチング回路1Aは、スイッチング素子2の保護回路としてサージ抑制回路4Aを備えている。サージ抑制回路4Aは、抵抗素子5、ダイオード(第1ダイオード)6、キャパシタ7、およびキャパシタ電圧設定回路8を備えている。
【0038】
抵抗素子5は、第1配線W1上に設けられる。すなわち、抵抗素子5の第1端部は、スイッチング素子2の制御基準電位端子T4に接続され、抵抗素子5の第2端部は、駆動回路3の駆動基準電位端子T6に接続されている。
【0039】
ダイオード6およびキャパシタ7は、駆動回路3の駆動基準電位端子T6とスイッチング素子2の低電位側主端子T2とを接続する第2配線W2上に直列に設けられている。ダイオード6は、カソードが駆動基準電位端子T6側に接続され、アノードが低電位側主端子T2側に接続されている。キャパシタ7は、低電位側主端子T2から駆動基準電位端子T6に流れる電流によって充電可能に構成されている。
【0040】
図1の例では、ダイオード6のカソード側にキャパシタ7が接続されている。すなわち、ダイオード6のアノードに低電位側主端子T2が接続され、ダイオード6のカソードにキャパシタ7の一端部(高電位側)が接続され、キャパシタ7の他端部(低電位側)が駆動基準電位端子T6に接続されている。
【0041】
以下に、本実施の形態におけるスイッチング回路1Aのオフ動作を説明する。スイッチング素子2の制御端子T3に印加される制御電圧Vgをスイッチング素子2がオフ状態となる閾値電圧以下に低下させるために、駆動回路3が駆動電圧Vdを低下させ、駆動基準電位端子T6から制御基準電位端子T4に向けて電流(放電電流)Idが流れる。スイッチング素子2の制御端子T3に印加される制御電圧Vgが低下すると、スイッチング素子2の主端子T1,T2間に流れるスイッチ電流Iaが減少し、主端子T1,T2間に過剰な電圧(サージ電圧Vs)が発生する場合がある。このとき、低電位側主端子T2の仮想のコイル2a(寄生インダクタンスLp)に流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧VLが発生し、誘導電圧VLがサージ抑制回路4Aのサージ抑制動作電圧Vo以上となった場合、サージ抑制回路4Aにおいて低電位側主端子T2から駆動基準電位端子T6方向に電流(クランプ電流)Icpが流れる。これにより、第1配線W1上に設けられた抵抗素子5に電圧(抵抗電圧VR)が発生し、駆動基準電位端子T6からスイッチング素子2の制御基準電位端子T4に流れる放電電流Idが小さくなる。
【0042】
このため、駆動回路3における放電の速度が遅くなる。すなわち、スイッチング素子2におけるスイッチング速度(ターンオフ速度)が遅くなり、サージ電圧Vsが抑制される。このとき、寄生インダクタンスLpによって発生する誘導電圧VLは低電圧であり、低い動作電圧でサージ抑制回路4Aを動作させることができるため、サージ電圧Vsの抑制による損失を低減することができる。
【0043】
ここで、キャパシタ電圧設定回路8は、キャパシタ7に印加される電圧を設定するように構成されている。キャパシタ電圧設定回路8は、キャパシタ7に印加される電圧を能動的、もしくは受動的に変更することで、サージ抑制回路4Aに電流が流れるためのサージ抑制動作電圧Voを設定する。より具体的には、キャパシタ電圧設定回路8は、キャパシタ7に印加される電圧がスイッチング素子2のオン動作時にスイッチング素子2のオフ動作時の電圧VC1より高い所定の電圧VC2となるように、キャパシタ7に印加される電圧を設定する。
【0044】
スイッチング素子2のオン動作時において、寄生インダクタンスLpに振動的な電流が流れることにより、誘導電圧VLが生じ、誘導電圧VLがサージ抑制回路4Aのサージ抑制動作電圧Vo以上となった場合、サージ抑制回路4Aにクランプ電流Icpが流れ得る。オン動作時にサージ抑制回路4Aにクランプ電流Icpが流れることにより、制御電圧Vgが過大となる恐れがある。
【0045】
そこで、オン動作時にはキャパシタ電圧設定回路8がキャパシタ7に印加される電圧を高くする。キャパシタ7に印加される電圧が高くなると、キャパシタ7に印加される電圧およびダイオード6に印加される電圧の和で示されるサージ抑制動作電圧Voが高くなる。オフ動作時におけるサージ抑制動作電圧をVo1とし、オン動作時におけるサージ抑制動作電圧をVo2とすると、Vo2>Vo1となる。これにより、誘導電圧VLにより抵抗素子5に発生する抵抗電圧VRが小さくなる。
【0046】
したがって、キャパシタ7に印加される電圧が高くなるスイッチング素子2のオン動作時においては、抵抗素子5に生じる抵抗電圧VRが小さくなり、サージ抑制回路4Aにクランプ電流Icpが流れにくくなる。したがって、スイッチング素子2のオン動作時においてクランプ電流Icpが流れるのを抑制することにより、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に過大な電圧が印加されることを防止することができる。これにより、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0047】
なお、キャパシタ電圧設定回路8は、キャパシタ7に印加される電圧がスイッチング素子2のオン動作時にスイッチング素子2のオフ動作時の電圧VC1より高い所定の電圧VC2となるように、キャパシタ7に印加される電圧を設定可能である限り、特に限定されない。
【0048】
図2は、
図1に示すスイッチング回路1Aにおいて、キャパシタ電圧設定回路の一例を適用した場合を示す図である。
図2の例においては、キャパシタ電圧設定回路の符号を8aとする。
図2の例において、キャパシタ電圧設定回路8aは、駆動回路3と同様の構成を備えている。キャパシタ電圧設定回路8aは、駆動信号出力端子T7および駆動基準電位端子T8を有している。駆動信号出力端子T7は、キャパシタ7の高電位側端子に接続され、駆動基準電位端子T8は、キャパシタ7の低電位側端子に接続される。
【0049】
キャパシタ電圧設定回路8aの駆動信号出力端子T7から駆動回路3の駆動信号出力端子T5から出力される駆動信号と同じタイミングで駆動信号が出力される。すなわち、駆動回路3から出力される駆動電圧Vdに基づいてスイッチング素子2に制御電圧Vgとしてオン電圧が印加される間、駆動信号出力端子T7に駆動基準電位端子T8の電位より所定電圧分高い電位を有する駆動信号を出力する。キャパシタ電圧設定回路8aが出力する駆動信号の電圧は、駆動回路3が出力する駆動電圧Vdと同じでもよいし異なっていてもよい。
【0050】
このように、キャパシタ電圧設定回路8aは、駆動回路3がスイッチング素子2をオン動作させるための駆動信号に基づいて、キャパシタ7に所定の電圧を印加するように構成されている。すなわち、スイッチング素子2の駆動信号に基づいてキャパシタ7に印加する電圧が切り替えられるため、新たに信号を生成する必要をなくし、かつ、確実な電圧切替動作を実現することができる。
【0051】
図3は、
図1に示すスイッチング回路1Aにおいて、キャパシタ電圧設定回路の他の例を適用した場合を示す図である。
図3の例においては、キャパシタ電圧設定回路の符号を8bとする。
図3の例において、キャパシタ電圧設定回路8bは、キャパシタ7に並列に接続されるツェナーダイオード13を含んでいる。
【0052】
ツェナーダイオード13は、カソードがキャパシタ7の低電位側主端子T2側(
図3の例ではキャパシタ7とダイオード6との間)に接続され、アノードがキャパシタ7の制御基準電位端子T4側に接続される。さらに、
図3の例では、ツェナーダイオード13に抵抗素子14が直列に接続されている。
【0053】
上記構成によれば、サージ抑制動作電圧Voがツェナーダイオード13の降伏電圧Vz3として設定される。オン動作時またはオフ動作時において寄生インダクタンスLpにより生じる誘導電圧VLがサージ抑制動作電圧Voを超えると、サージ抑制回路4Aにクランプ電流Icpが流れる。
【0054】
サージ抑制回路4Aにクランプ電流Icpが流れると、キャパシタ7が充電され、サージ抑制回路4Aの動作電圧(サージ抑制動作電圧)Voが上昇する。サージ抑制動作電圧Voが上昇することによりクランプ電流Icpが流れにくくなり、過度なクランプ電流Icpがサージ抑制回路4Aを流れることを抑制することができる。
【0055】
オン動作またはオフ動作が完了し、クランプ電流Icpが流れなくなると、ツェナーダイオード13の経路を通じてキャパシタ7に充電された電荷が放電され、サージ抑制動作電圧Voが元の状態(ツェナーダイオード13の降伏電圧Vz3)に復帰する。したがって、キャパシタ7に印加する電圧を決定するために制御信号を別途生成することなく、キャパシタ7の電圧生成およびリセットを受動的に行うキャパシタ電圧設定回路8bを実現することができる。
【0056】
スイッチング素子2のオフ動作時において、サージ抑制回路4Aのサージ抑制配線に流れるクランプ電流Icpが増大すると、抵抗素子5に生じる抵抗電圧VRが増大し、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に印加される制御電圧Vgが大きくなる。制御電圧Vgが過大になると、スイッチング素子2がオン動作(誤点呼)してしまう恐れがある。
【0057】
このような問題についても、
図3に示すキャパシタ電圧設定回路8bであれば、クランプ電流が流れることにより、サージ抑制動作電圧Voが上昇するため、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間の電圧が過大となるのを抑制することができ、誤点呼を防止することができる。
【0058】
(実施の形態2)
次に、本開示の実施の形態2について説明する。
図4は、本開示の実施の形態2に係るスイッチング回路1Bの概略構成を示す図である。本実施の形態において実施の形態1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0059】
本実施の形態におけるスイッチング回路1Bが実施の形態1におけるスイッチング回路1Aと異なる点は、保護回路であるサージ抑制回路4Bが、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間に接続されたバイパス回路9を備えていることである。バイパス回路9は、第1配線W1および第2配線W2を含むサージ抑制配線に並列に接続されている。サージ抑制配線には、低電位側主端子T2から制御基準電位端子T4までの間において、ダイオード6、キャパシタ7および抵抗素子5が設けられる。
【0060】
バイパス回路9は、当該バイパス回路9に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧Vpが、キャパシタ電圧設定回路8により設定されるサージ抑制動作電圧Voの範囲(変動範囲)内にあるように構成される。本実施の形態において、オフ動作時におけるサージ抑制動作電圧Vo1、オン動作時におけるサージ抑制動作電圧Vo2およびバイパス回路動作電圧Vpの関係は、Vo1<Vp<Vo2となる。
【0061】
上述したように、サージ抑制回路4Bのサージ抑制配線に流れるクランプ電流Icpが増大すると、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に印加される制御電圧Vgが大きくなる。制御電圧Vgが過大になると、スイッチング素子2がオン動作(誤点呼)してしまう恐れがある。
【0062】
そこで、本実施の形態において、スイッチング回路1Bは、クランプ電流Icpが増大した場合にバイパス回路9に電流を流すように構成されている。すなわち、上記構成によれば、サージ抑制回路4Bに流れるクランプ電流Icpが増大し、クランプ電流Icpに伴って低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間に印加される制御電圧Vgがバイパス回路動作電圧Vpより大きくなると、バイパス回路9に電流(バイパス電流Ib)が流れ、サージ抑制配線に流れるクランプ電流Icpが抑制される。したがって、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に過大な電圧が印加され、スイッチング素子2が誤点呼することを防止することができる。
【0063】
さらに、バイパス回路9が設けられることにより、オン動作時に低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間に過大な電圧が印加された場合においても、バイパス回路9にバイパス電流Ibが流れるため、スイッチング素子2のオン動作時においてクランプ電流Icpが流れるのを抑制することができ、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に過大な電圧が印加されることを防止することができる。
【0064】
バイパス回路9は、所定のバイパス回路動作電圧Vp以上の電圧が印加された場合に、低電位側主端子T2および制御基準電位端子T4間にバイパス電流Ibを流す構成であれば特に限定されない。
図5は、
図4に示すバイパス回路9の一具体例を示す回路図である。例えば、バイパス回路9は、ダイオード(第2ダイオード)11およびツェナーダイオード12が直列接続されるように構成されている。
【0065】
ダイオード11は、カソードが制御基準電位端子T4側に接続され、アノードが低電位側主端子T2側に接続される。ツェナーダイオード12は、カソードが低電位側主端子T2側に接続され、アノードが制御基準電位端子T4側に接続される。
図5の例に示すバイパス回路9においては、ツェナーダイオード12の降伏電圧Vz2およびダイオード11の順方向電圧降下を加算した電圧がバイパス回路動作電圧Vpとなる。なお、
図5の例では、ダイオード11のカソードがツェナーダイオード12のカソードに接続されているが、両素子11,12のアノード同士が接続されてもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態において、
図3に示すキャパシタ電圧設定回路8bを適用した場合、キャパシタ電圧設定回路8bは、駆動回路3がスイッチング素子2をオン動作させる駆動信号を出力している間、スイッチング素子2の低電位側主端子T2から駆動回路3の駆動基準電位端子T6に流れる電流によって、サージ抑制動作電圧Voがバイパス回路動作電圧Vpより大きい所定の電圧になるまでキャパシタ7を充電するように構成してもよい。
【0067】
これにより、サージ抑制回路4Bに流れるクランプ電流Icpを用いてキャパシタ7が充電されるため、サージ抑制回路4Bのサージ抑制動作電圧Voが上昇する。サージ抑制動作電圧Voが上昇し、バイパス回路動作電圧Vpより大きくなると、バイパス回路9にバイパス電流Ibが流れ、クランプ電流Icpが抑制される。これにより、サージ抑制回路4Bに過度な電流が流れることが防止される。したがって、スイッチング素子2の主端子T1,T2間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0068】
(実施の形態3)
次に、本開示の実施の形態3について説明する。
図6は、本開示の実施の形態3に係るスイッチング回路1Cの概略構成を示す図である。本実施の形態において実施の形態2と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0069】
本実施の形態におけるスイッチング回路1Cが実施の形態2におけるスイッチング回路1Bと異なる点は、保護回路として、サージ抑制回路4Bにおけるキャパシタ7(およびキャパシタ電圧設定回路8)の代わりに、ツェナーダイオード(第1ツェナーダイオード)10が設けられたサージ抑制回路4Cを備えていることである。
【0070】
すなわち、サージ抑制回路4Cは、第1配線W1上に設けられた抵抗素子5と、第2配線W2上に直列に設けられた第1ダイオード6および第1ツェナーダイオード10と、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間において、第1配線W1および第2配線W2を含むサージ抑制配線に並列に接続されたバイパス回路9と、を備えている。第1ダイオード6は、カソードが駆動基準電位端子T6側に接続され、アノードが低電位側主端子T2側に接続されている。第1ツェナーダイオード10は、カソードが低電位側主端子T2側に接続され、アノードが制御基準電位端子T4側に接続されている。
【0071】
本実施の形態において、バイパス回路9は、当該バイパス回路9に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧Vpが、サージ抑制配線上の抵抗素子5、第1ダイオード6および第1ツェナーダイオード10に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧Voより大きいように構成される。
【0072】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧VLがサージ抑制回路4Cのサージ抑制動作電圧Vo以上となった場合、サージ抑制回路4Cにクランプ電流Icpが流れる。これにより、第1配線W1上に設けられた抵抗素子5に抵抗電圧VRが発生し、駆動基準電位端子T6からスイッチング素子2の制御基準電位端子T4に流れる放電電流Idが小さくなる。このため、スイッチング素子2におけるスイッチング速度が遅くなり、サージ電圧Vsが抑制される。
【0073】
さらに、実施の形態2と同様に、サージ抑制回路4Cに流れるクランプ電流Icpが増大し、クランプ電流Icpに伴って低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧Vpより大きくなると、バイパス回路9にバイパス電流Ibが流れ、クランプ電流Icpが抑制される。したがって、制御端子T3と制御基準電位端子T4との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0074】
(実施の形態4)
次に、本開示の実施の形態4について説明する。
図7は、本開示の実施の形態4に係るスイッチング回路1Dの概略構成を示す図である。本実施の形態において実施の形態1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0075】
本実施の形態におけるスイッチング回路1Dが実施の形態1におけるスイッチング回路1Aと異なる点は、保護回路として、サージ抑制回路4Aにおけるダイオード6およびキャパシタ7が制御端子T3と低電位側主端子T2とを接続するサージ抑制配線W3上に直列に設けられたサージ抑制回路4Dを備えていることである。
【0076】
すなわち、ダイオード6は、カソードが制御端子T3側に接続され、アノードが低電位側主端子T2側に接続されている。また、キャパシタ7は、低電位側主端子T2から制御端子T3に流れる電流によって充電可能に構成されている。
【0077】
本実施の形態において、スイッチ駆動電圧Vdの低下に伴い、スイッチング素子2の制御端子T3に印加される制御電圧Vgが低下すると、スイッチング素子2の主端子T1,T2間に流れるスイッチ電流Iaが減少し、主端子T1,T2間に過剰な電圧(サージ電圧Vs)が発生する場合がある。このとき、低電位側主端子T2の寄生インダクタンスLpに流れる電流が急減するため、寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧VLが発生し、誘導電圧VLがサージ抑制回路4Dのサージ抑制動作電圧Vo以上となった場合、サージ抑制回路4Dのサージ抑制配線W3において低電位側主端子T2から制御端子T3方向に電流(クランプ電流Icp)が流れる。これにより、スイッチング素子2の制御端子T3に流れる電流により、スイッチング素子2におけるスイッチング速度が遅くなり、サージ電圧Vsが抑制される。このとき、寄生インダクタンスLpにサージ電圧Vsによる電流が流れることにより生じる誘導電圧VLは低電圧であるため、サージ電圧Vsの抑制の際に生じる損失を低減することができる。
【0078】
さらに、実施の形態1と同様に、オン動作時にはキャパシタ電圧設定回路8がキャパシタ7に印加される電圧を高くする。キャパシタ7に印加される電圧が高くなると、寄生インダクタンスLpに生じる電圧により発生するクランプ電流Icpが流れにくくなる。したがって、スイッチング素子2のオン動作時においてクランプ電流Icpが流れるのを抑制することにより、制御端子T3と低電位側主端子T2との間に過大な電圧が印加されることを防止することができる。これにより、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0079】
なお、本実施の形態におけるキャパシタ電圧設定回路8として、実施の形態1(
図2,3)で説明したキャパシタ電圧設定回路8a,8bの何れをも採用し得る。
【0080】
(実施の形態5)
次に、本開示の実施の形態5について説明する。
図8は、本開示の実施の形態5に係るスイッチング回路1Eの概略構成を示す図である。本実施の形態において実施の形態4と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0081】
本実施の形態におけるスイッチング回路1Eが実施の形態4におけるスイッチング回路1Dと異なる点は、保護回路であるサージ抑制回路4Eが、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間に接続されたバイパス回路9を備えていることである。バイパス回路9は、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間を接続する低電位側配線W4に並列に接続されている。バイパス回路9の構成は、実施の形態2と同様である。
【0082】
本実施の形態において、サージ抑制回路4Eに流れるクランプ電流Icpが増大し、クランプ電流Icpに伴って低電位側主端子T2と制御端子T3との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧Vpより大きくなると、バイパス回路9に電流(バイパス電流Ib)が流れ、クランプ電流Icpが抑制される。したがって、制御端子T3と低電位側主端子T2との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0083】
(実施の形態6)
次に、本開示の実施の形態6について説明する。
図9は、本開示の実施の形態6に係るスイッチング回路1Fの概略構成を示す図である。本実施の形態において実施の形態5と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0084】
本実施の形態におけるスイッチング回路1Fが実施の形態5におけるスイッチング回路1Eと異なる点は、保護回路として、サージ抑制回路4Eにおけるキャパシタ7(およびキャパシタ電圧設定回路8)の代わりに、ツェナーダイオード(第1ツェナーダイオード)10が設けられたサージ抑制回路4Fを備えていることである。
【0085】
すなわち、サージ抑制回路4Fは、サージ抑制配線W3上に直列に設けられた第1ダイオード6および第1ツェナーダイオード10と、低電位側主端子T2と制御基準電位端子T4との間において、低電位側配線W4に並列に接続されたバイパス回路9と、を備えている。第1ダイオード6は、カソードが駆動基準電位端子T6側に接続され、アノードが低電位側主端子T2側に接続されている。第1ツェナーダイオード10は、カソードが低電位側主端子T2側に接続され、アノードが制御基準電位端子T4側に接続されている。
【0086】
本実施の形態において、バイパス回路9は、当該バイパス回路9に電流が流れるためのバイパス回路動作電圧Vpが、サージ抑制配線上の抵抗素子5、第1ダイオード6および第1ツェナーダイオード10に電流が流れるためのサージ抑制動作電圧Voより大きいように構成される。
【0087】
本実施の形態においても、実施の形態4と同様に、寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧VLがサージ抑制回路4Fのサージ抑制動作電圧Vo以上となった場合、サージ抑制回路4Fにクランプ電流Icpが流れる。これにより、スイッチング素子2の制御端子T3に流れる電流により、スイッチング素子2におけるスイッチング速度が遅くなり、サージ電圧Vsが抑制される。
【0088】
さらに、実施の形態5と同様に、サージ抑制回路4Fに流れるクランプ電流Icpが増大し、クランプ電流Icpに伴って低電位側主端子T2と制御端子T3との間に印加される電圧がバイパス回路動作電圧Vpより大きくなると、バイパス回路9にバイパス電流Ibが流れ、クランプ電流Icpが抑制される。したがって、制御端子T3と低電位側主端子T2との間に過大な電圧が印加されることを防止することができ、スイッチング素子2を適切に保護することができる。
【0089】
[シミュレーション結果]
図10は、実施の形態1の保護回路におけるサージ抑制動作のシミュレーション結果を示すグラフである。
図10に示すグラフは、上から順に、寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧V
L、クランプ電流Icp、抵抗電圧V
R、放電電流Idおよびスイッチ両端電圧Vaのオフ動作時における時間的変化を示すグラフである。
【0090】
図10の放電電流Idのグラフに示されるように、オフ動作が開始されると、駆動回路3における駆動電圧の放電に伴う放電電流Idが第1配線W1上を、駆動基準電位端子T6から制御基準電位端子T4に向けて流れる。この放電電流Idは、駆動電圧が放電に伴い降下するため、時間経過に伴って徐々に小さくなる。
【0091】
この放電電流Idが抵抗素子5に流れることにより、抵抗素子5には抵抗電圧V
Rが発生する。
図10の抵抗電圧V
Rのグラフに示されるように、放電電流Idの低下に伴って抵抗電圧V
Rも時間経過に伴って徐々に小さくなる。
【0092】
一方、
図10のスイッチ両端電圧Vaのグラフに示されるように、スイッチング素子2のオフ動作に伴い、主端子T1,T2間にサージ電圧Vsが発生している。特に、
図10のグラフでは、時刻t1および時刻t2において比較的大きな電圧が発生している。ターンオフ時のスイッチ電流Iaの変化に伴い、
図10の誘導電圧V
Lのグラフに示されるように、寄生インダクタンスLpによる誘導電圧V
Lが発生している。
【0093】
図10のクランプ電流Icpのグラフに示されるように、時刻t1,t2におけるサージ電圧Vsの発生とともに生じる誘導電圧V
Lがサージ抑制回路4Aのサージ抑制動作電圧Vo以上となることで、クランプ電流Icpが発生している。このクランプ電流Icpにより抵抗電圧V
Rが時刻t1,t2において一時的に持ち上げられる。この結果、駆動回路3の放電が抑制され、放電電流Idが小さくなる。
【0094】
駆動回路3の放電が抑制されることにより、スイッチング素子2におけるスイッチング速度(ターンオフ速度)が遅くなり、その後のサージ電圧Vsの発生が抑制される。
図10のスイッチ両端電圧Vaのグラフにおける実施例は、サージ抑制回路4Aを備えた実施の形態1のスイッチング回路1Aを示し、比較例は、サージ抑制回路4Aを備えていないスイッチング回路におけるスイッチ両端電圧Vaを示している。このグラフにおける実施例と比較例との対比から、スイッチング素子2に上記サージ抑制回路4Aを設けることにより、サージ電圧Vsの発生が抑制されていることが示される。
【0095】
図11は、実施の形態2のスイッチング回路1Bにおけるオフ動作時にバイパス回路9が機能し、誤点呼が抑制されたシミュレーション結果を示すグラフである。
図11に示すグラフは、上から順に、スイッチ駆動電圧Vd、スイッチ電流Ia、誘導電圧V
L、クランプ電流Icp、バイパス電流Ibおよびスイッチ両端電圧Vaのオフ動作時における時間的変化を示すグラフである。
【0096】
図11のスイッチ駆動電圧Vdのグラフに示されるように、オフ動作の開始によって駆動電圧Vdは時間経過とともに低下する。駆動電圧Vdの低下に伴ってスイッチ電流Iaも低下する。これらに対応して、スイッチ両端電圧Vaは急上昇する。このときに、主端子T1,T2間にはサージ電圧Vsが生じ得る。例えば特許文献1のような、コンデンサとツェナーダイオードとで構成された従来のサージ抑制回路においては、実施の形態2のようなバイパス回路9が存在しないため、オフ動作時に誤点呼が発生し、
図11のスイッチ両端電圧Vaのグラフにおける破線の波形(比較例の波形)に示されるように、スイッチ両端電圧Vaの波形は、振動的となる場合がある。
【0097】
これに対し、本実施の形態では、サージ電圧Vsの発生に伴って寄生インダクタンスLpによって生じる誘導電圧V
Lがサージ抑制動作電圧Vo(オフ動作時におけるサージ抑制動作電圧Vo1)以上となった場合、
図11のクランプ電流Icpのグラフに示されるように、サージ抑制回路4Bにクランプ電流Icpが流れる。これにより、スイッチング素子2のターンオフ速度が遅くなり、
図11のスイッチ両端電圧Vaのグラフにおける実線の波形(実施例の波形)に示されるように、サージ電圧Vsが抑えられる。
【0098】
さらに、
図11のバイパス電流Ibのグラフに示されるように、例えば時刻t3等において、誘導電圧V
Lがバイパス回路動作電圧Vpを超えるとバイパス回路9にバイパス電流Ibが流れる。これにより、
図11のクランプ電流Icpのグラフに示されるように、クランプ電流Icpが過大になるのが抑えられる。その結果、誤点呼が抑えられ、スイッチング素子2が適切に保護される。
【0099】
図12は、実施の形態2のスイッチング回路1Bにおけるオン動作時のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12に示すグラフは、上から順に、スイッチ駆動電圧Vd、スイッチ電流Ia、誘導電圧V
L、クランプ電流Icp、バイパス電流Ibおよびスイッチ両端電圧Vaのオフ動作時における時間的変化を示すグラフである。
【0100】
図12のスイッチ駆動電圧Vdのグラフに示されるように、時刻t4におけるオン動作の開始によって駆動電圧Vdは時間経過とともに上昇する。駆動電圧Vdの上昇の際、
図12の誘導電圧V
Lのグラフに示されるように、サージ抑制動作電圧がオフ動作時の電圧Vo1からそれより高い電圧Vo2に切り替えられる。
【0101】
図12のスイッチ電流Iaのグラフに示されるように、駆動電圧Vdの上昇に伴ってスイッチ電流Iaも上昇する。これらに対応して、
図12のスイッチ両端電圧Vaのグラフに示されるように、スイッチ両端電圧Vaは急激に下降する。
図12の誘導電圧V
Lのグラフに示されるように、このようなスイッチ両端電圧Vaの急変に伴ってスイッチング素子2の寄生インダクタンスLpによって誘導電圧V
Lが発生する。
【0102】
しかし、このような誘導電圧VLによってオフ動作時と同様のクランプ電流Icpがサージ抑制回路4Bに流れると、スイッチ駆動電圧Vdが過大になってしまい、それに伴ってスイッチング素子2に印加される制御電圧Vgがスイッチング素子2の耐電圧を超えることによりスイッチング素子2が損傷してしまう恐れがある。
【0103】
これに対し、本実施の形態では、キャパシタ電圧設定回路8によりオン動作時におけるサージ抑制動作電圧Voがオフ動作時の電圧Vo1より高い電圧Vo2に切り替えられている。このため、
図12のクランプ電流Icpのグラフに示されるように、誘導電圧V
Lが発生してもその誘導電圧V
Lは、サージ抑制動作電圧Vo2未満となり、クランプ電流Icpが発生しない。
【0104】
また、本例においては、バイパス回路動作電圧Vpがオン動作時におけるサージ抑制動作電圧Vo2よりも低い電圧に設定されている。このため、
図12の誘導電圧V
Lのグラフに示されるように、時刻t5において誘導電圧V
Lがバイパス回路動作電圧Vpを超えている。これにより、
図12のバイパス電流Ibのグラフに示されるように、バイパス電流Ibが発生している。
【0105】
このように、比較的に大きい誘導電圧VLが生じても、クランプ電流Icpが流れる前に、バイパス回路9にバイパス電流Ibが流れる。これにより、オン動作時においては、クランプ電流Icpを極力流さないようにすることができ、スイッチ駆動電圧Vdが過大になるのを防止することができる。
【0106】
以上のように、
図10~
図12のグラフによれば、本開示の各実施の形態において、サージ電圧Vsの抑制を低損失で実現することができ、しかも、スイッチング素子2をより適切に保護することができることが示されている。なお、
図10~
図12においては、実施の形態1における保護回路または実施の形態2における保護回路についてのシミュレーション結果を示したが、他の実施の形態においても、同様の作用を奏する構成を有する限り、同様のシミュレーション結果が得られると推察される。
【0107】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0108】
例えば、上記各実施の形態においては、スイッチング素子2として、4端子構造を有するn型MOSFETを用いた例を示したが、本開示の構成は、p型MOSFET等の他のFET素子、IGBT等のバイポーラトランジスタ素子等、他の種類のスイッチング素子2にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示は、スイッチング回路において、サージ電圧の抑制を低損失で実現することができ、しかも、スイッチング素子をより適切に保護するために有用である。
【符号の説明】
【0110】
1A~1F スイッチング回路
2 スイッチング素子
3 駆動回路
4A~4F サージ抑制回路(保護回路)
5 抵抗素子
6 ダイオード(第1ダイオード)
7 キャパシタ
8,8a,8b キャパシタ電圧設定回路
9 バイパス回路
10 ツェナーダイオード(第1ツェナーダイオード)
11 ダイオード(第2ダイオード)
12 ツェナーダイオード(第2ツェナーダイオード)
13 ツェナーダイオード(第3ツェナーダイオード)
T1 高電位側主端子(一対の主端子)
T2 低電位側主端子(一対の主端子)
T3 制御端子
T4 制御基準電位端子
T5 駆動信号出力端子
T6 駆動基準電位端子
W1 第1配線
W2 第2配線
W3 サージ抑制配線