(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/62 20060101AFI20230904BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20230904BHJP
A44B 18/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61F13/62 110
A61F13/56 100
A61F13/56 211
A44B18/00
(21)【出願番号】P 2019544540
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033629
(87)【国際公開番号】W WO2019065216
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017186342
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中岡 健次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】池内 昌俊
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104091(JP,A)
【文献】特開2002-000647(JP,A)
【文献】特開2017-086565(JP,A)
【文献】特開2017-133143(JP,A)
【文献】特表2004-533280(JP,A)
【文献】特開2007-167130(JP,A)
【文献】特開2002-177325(JP,A)
【文献】特開2009-189701(JP,A)
【文献】特開2010-075542(JP,A)
【文献】特開2003-180751(JP,A)
【文献】特開2014-117322(JP,A)
【文献】特開2014-039754(JP,A)
【文献】特開2004-344514(JP,A)
【文献】特表2014-520633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A44B18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有する本体部の非肌面側にフック部材が設けられた吸収性物品であって、
前記フック部材は、基盤と、前記基盤から突出する複数の係合素子とを有し、
前記本体部の前側部と後側部にそれぞれ、吸収性物品の幅方向を長手方向として延在するように設けられ、
前記フック部材の基盤は、ホットメルト接着剤から形成され
前記フック部材の
前記長手方向に沿ってストライプ状に延びるように設けられた接着部で、前記本体部に接着され
固定されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有する本体部の幅方向の両側に止着テープが設けられた吸収性物品であって、
前記止着テープは、テープ基材にフック部材が設けられて構成され、
前記フック部材は、基盤と、前記基盤から突出する複数の係合素子とを有し、
吸収性物品の前後方向を長手方向として延在するように設けられ、
前記フック部材の基盤は、
前記フック部材の
前記長手方向に沿って
延びる2以上の帯状の接着部であるストライプ状
の接着部で、前記テープ基材に接着されて
おり、
前記フック部材において、前記複数の係合素子は、平面視で、前記2以上の帯状の接着部と、前記2以上の帯状の接着部の間に形成された非接着部の両方に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記接着部は、フック部材の延在方向に沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、フック部材の幅方向に複数列配置されることにより、ストライプ状に形成されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記接着部は、吸収性物品の前後方向に沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、吸収性物品の幅方向に複数列配置されることにより、ストライプ状に形成されている請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記フック部材の基盤は、フック部材の幅方向に対する両端部に前記接着部が設けられず、非接着部が形成されている請求項1または3に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記フック部材の基盤は、吸収性物品の幅方向に対する両端部に前記接着部が設けられず、非接着部が形成されている請求項2または4に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記非接着部は、吸収性物品の前後方向または幅方向に対して外方側にある非接着部が内方側にある非接着部よりも幅狭に形成されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記非接着部は、吸収性物品の幅方向に対して外方側にある非接着部が内方側にある非接着部よりも幅狭に形成されている請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記接着部の面積は、前記フック部材の面積の50%以上85%以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記フック部材の剥離強度は0.16N/cm以上6.4N/cm以下である請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記本体部または前記テープ基材の前記フック部材が設けられた部分の圧縮硬さが0.15N/cm以上0.70N/cm以下である請求項1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記接着部は、湿気硬化型ウレタン系接着剤により形成されている請求項1~11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記接着剤はノニオン性界面活性剤を含有する請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記係合素子の頂部は、前記ストライプ状の接着部の延在方向に対して略垂直方向に配向している請求項1~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、尿パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものであり、詳細には、面ファスナーのフック部材を備えた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、面ファスナーのフック部材を備えた吸収性物品が知られている。例えば、尿パッドや生理用ナプキンでは、非肌面側にフック部材を設けることにより、パンツやショーツ等の下着やアウターとして用いられる使い捨ておむつの肌面側に取り付けて用いることが可能となる。テープタイプの使い捨ておむつの止着テープにもフック部材が用いられており、止着テープを使い捨ておむつの後側部の幅方向の両側に設け、着用時に止着テープのフック部材を使い捨ておむつの前側部に設けられたターゲットテープに接合させることにより、使い捨ておむつを着用者の腰回りに装着させることができる。
【0003】
吸収性物品に設けられるフック部材は、接着剤により吸収性物品の非肌面側に接着したり、止着テープのテープ基材に接着することができる。例えば特許文献1には、スチレン系ブロックポリマーをベースポリマーとして含む接着剤を用いて、フック部材を止着テープのテープ基材に接着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように吸収性物品にフック部材が設けられる場合、吸収性物品はフック部材が設けられた部分で剛性が高まり、吸収性物品を着用した際に着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が低下して、着用者が違和感を覚えやすくなる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フック部材を備えた吸収性物品であって、フック部材が設けられた部分で、着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が向上した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有する本体部の非肌面側にフック部材が設けられた吸収性物品であって、フック部材は、基盤と、基盤から突出する複数の係合素子とを有し、フック部材の基盤が、フック部材の延在方向に沿ってストライプ状に延びるように設けられた接着部で本体部に接着されているものである(以下、「第1実施態様に係る吸収性物品」と称する)。本発明の吸収性物品はまた、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有する本体部の幅方向の両側に止着テープが設けられた吸収性物品であって、止着テープはテープ基材にフック部材が設けられて構成され、フック部材は、基盤と、基盤から突出する複数の係合素子とを有し、フック部材の基盤が、吸収性物品の前後方向に沿ってストライプ状に延びるように設けられた接着部でテープ基材に接着されているものであってもよい(以下、「第2実施態様に係る吸収性物品」と称する)。
【0007】
吸収性物品に設けられるフック部材は、通常、フック部材の基盤の略全面に接着部が形成され、吸収性物品の非肌面側や止着テープのテープ基材に接着されるところ、本発明の吸収性物品は、フック部材の基盤がストライプ状に設けられた接着部で吸収性物品の本体部またはテープ基材に接着されているため、ストライプ状の接着部の間に形成された非接着部、すなわち隣接する帯状の接着部の間に形成された非接着部でフック部材が曲がりやすくなる。そのため、フック部材が設けられた部分で着用者の体表面の曲面形状に対する吸収性物品の追従性が向上し、吸収性物品の着用者へのフィット性を高めることができる。
【0008】
第1実施態様に係る吸収性物品では、接着部は、フック部材の延在方向に沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、フック部材の幅方向に複数列配置されることにより、ストライプ状に形成されていることが好ましい。第2実施態様に係る吸収性物品では、接着部は、吸収性物品の前後方向に沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、吸収性物品の幅方向に複数列配置されることにより、ストライプ状に形成されていることが好ましい。このようにストライプ状の接着部が形成されることにより、接着部における柔軟性を高めることができ、フック部材が設けられた部分で着用者の体表面の曲面形状に対する吸収性物品の追従性をより高めることができる。
【0009】
第1実施態様に係る吸収性物品では、フック部材の基盤は、フック部材の幅方向に対する両端部に接着部が設けられず、非接着部が形成されていることが好ましい。第2実施態様に係る吸収性物品では、フック部材の基盤は、吸収性物品の幅方向に対する両端部に接着部が設けられず、非接着部が形成されていることが好ましい。このようにフック部材を接着することにより、フック部材を他の部材に係合させた際に、係合状態を安定して維持しやすくなる。
【0010】
第1実施態様に係る吸収性物品では、前記非接着部は、吸収性物品の前後方向または幅方向に対して外方側にある非接着部が内方側にある非接着部よりも幅狭に形成されていることが好ましい。第2実施態様に係る吸収性物品では、前記非接着部は、吸収性物品の幅方向に対して外方側にある非接着部が内方側にある非接着部よりも幅狭に形成されていることが好ましい。このようにフック部材を接着することにより、フック部材を他の部材に係合させる際は係合状態を安定して維持しつつ、フック部材を他の部材から取り外す際には係合状態を解除することが容易に行えるようになる。
【0011】
接着部の面積は、フック部材の面積の50%以上85%以下であることが好ましい。このように接着部を設けることにより、フック部材と本体部の非肌面側またはテープ基材との接着力を確保しつつ、フック部材が設けられた部分で、着用者の体表面の曲面形状に対する吸収性物品の追従性を向上させやすくなる。
【0012】
フック部材の剥離強度は0.16N/cm以上6.4N/cm以下であることが好ましい。このような剥離強度でフック部材を吸収性物品の非肌面側やテープ基材に接着することにより、フック部材を安定して本体部の非肌面側やテープ基材に接着することができる。
【0013】
本体部またはテープ基材のフック部材が設けられた部分の圧縮硬さは0.15N/cm以上0.70N/cm以下であることが好ましい。このように本体部またはテープ基材のフック部材が設けられた部分が形成されていれば、フック部材が設けられた部分で、本体部またはテープ基材の着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が向上しやすくなる。
【0014】
接着部は、湿気硬化型ウレタン系接着剤により形成されていることが好ましい。湿気硬化型ウレタン系接着剤は、塗工後に空気中の水分と反応して硬化が促進されるため、吸収性物品が使用される加湿下でも十分な強度を発現するものとなる。また、吸収性物品を着用した際に、接着部が着用者の体温や暖房器具等の熱によって加温されても、軟化による剥離強度の低下を抑えることができる。湿気硬化型ウレタン系接着剤はノニオン性界面活性剤を含有することが好ましく、これにより接着部の接着強度をより高めることができる。
【0015】
フック部材の係合素子の頂部は、ストライプ状の接着部の延在方向に対して略垂直方向に配向していることが好ましい。このようにフック部材を設けることにより、フック部材の係合素子を他の部材に係合させた際に、係合状態を安定して維持しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸収性物品は、フック部材の基盤がストライプ状に設けられた接着部で吸収性物品の本体部またはテープ基材に接着されているため、ストライプ状の接着部の間に形成された非接着部、すなわち隣接する帯状の接着部の間に形成された非接着部でフック部材が曲がりやすくなる。そのため本発明の吸収性物品は、フック部材が設けられた部分で着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が向上し、着用者へのフィット性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の吸収性物品の一例として、非肌面側にフック部材が設けられた尿パッドを肌面側から見た平面図を表す。
【
図2】
図1に示した吸収性物品を非肌面側から見た平面図を表す。
【
図3】
図1および
図2に示した吸収性物品のIII-III断面図を表す。
【
図4】
図2に示した吸収性物品のIV-IV断面図を表す。
【
図5】
図2に示した吸収性物品の部分拡大図を表し、フック部材を取り除いた状態のフック部材とバックシートとの接着部の設置パターンを表す。
【
図6】本発明の吸収性物品の一例として、テープタイプの使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表す。
【
図7】
図6に示した吸収性物品のVII-VII断面図を表す。
【
図8】
図6に示した吸収性物品のVIII-VIII断面図を表す。
【
図9】
図6に示した吸収性物品の止着テープの部分拡大図を表し、フック部材を取り除いた状態のフック部材とテープ基材との接着部の設置パターンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、フック部材を備えた吸収性物品に関するものである。フック部材は面ファスナーの一種であり、面ファスナーは、「マジックテープ」(登録商標)、「ベルクロ」(登録商標)、「クイックロン」(登録商標)等の商品名で知られている。フック部材は、基盤から複数の係合素子が突出して構成されており、通常、ループ部材と対になって用いられ、ループ部材に対して着脱可能に取り付けられるか、あるいは、ループ部材として機能する材料(例えば、不織布、織布、編布等の布材料)に着脱可能に取り付けられる。
【0019】
吸収性物品においては、フック部材は、尿パッドや生理用ナプキンの非肌面側に設けられたり、テープタイプの使い捨ておむつの止着テープにフック部材が用いられる。前者の場合、フック部材が設けられた尿パッドや生理用ナプキンは、フック部材によって、パンツやショーツ等の下着に取り付けたり、あるいはアウターとして用いられる使い捨ておむつの肌面側に尿パッドを配置し、フック部材によって尿パッドを使い捨ておむつの肌面側に取り付けることができる。後者の場合、テープタイプの使い捨ておむつは、使い捨ておむつの後側部の幅方向の両側にフック部材を備えた止着テープが設けられ、着用時に止着テープのフック部材を使い捨ておむつの前側部に設けられたターゲットテープに接合させることにより、使い捨ておむつを着用者の腰回りに装着させることができる。
【0020】
本発明はこのようにフック部材が設けられた吸収性物品に関するものであり、以下、本発明の吸収性物品について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0021】
図1~
図5には、本発明の吸収性物品の第1実施態様として、非肌面側にフック部材が設けられた吸収性物品(尿パッド)を示し、
図6~
図9には、本発明の吸収性物品の第2実施態様として、フック部材を備えた止着テープが設けられた吸収性物品(テープタイプの使い捨ておむつ)を示した。なお、
図1~
図5の吸収性物品には、符号「1」または「1A」が付され、
図6~
図9の吸収性物品には、符号「1」または「1B」が付されている。
【0022】
まず、第1実施態様に係る吸収性物品と第2実施態様に係る吸収性物品のフック部材以外に関する構成を、
図1~
図3、
図6、
図7を参照して説明する。
図1は、第1実施態様に係る吸収性物品(尿パッド)を肌面側から見た平面図を表し、
図2は、
図1に示した吸収性物品を非肌面側から見た平面図を表し、
図3は、
図1および
図2の吸収性物品のIII-III断面図を表す。
図6は、第2実施態様に係る吸収性物品(テープタイプの使い捨ておむつ)を肌面側から見た平面図を表し、
図7は、
図6の吸収性物品のVII-VII断面図を表す。
【0023】
図面では、矢印xが吸収性物品の幅方向、矢印yが吸収性物品の前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。前後方向とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。幅方向とは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向と直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、吸収性物品を着用者が着用した際に、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、その反対側を非肌面側とする。
【0024】
吸収性物品1は、トップシート3とバックシート4とこれらの間に配された吸収性コア5とを有する本体部2を有する。本体部2は、吸収性物品1の主要部分を構成し、着用者から排泄された尿等を受け、吸収するように機能する。本体部2は、前後方向yに対して、前側部と後側部とこれらの間に位置する中間部を有する。使い捨ておむつである吸収性物品1Bにおいては、前側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の腹側に当てる部分に相当し、後側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の背側に当てる部分に相当する。中間部は、前側部と後側部との間に位置し、着用者の股間に当てる部分に相当する。
【0025】
トップシート3は吸収性コア5の肌面側に配されるシートであり、吸収性物品の着用の際に着用者の肌に面するように設けられる。トップシート3は、液透過性であることが好ましい。トップシート3としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシート3として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0026】
バックシート4は吸収性コア5の非肌面側に配されるシートであり、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側に位置するように設けられる。バックシート4は、吸収性物品の非肌面側面の少なくとも一部を構成するように設けられる。バックシート4は、液不透過性であることが好ましい。バックシート4としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。バックシート4は2以上のシートの積層体から構成されていてもよく、例えば、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。この場合、積層体を構成する少なくとも1つのシートが液不透過性であればよく、また積層体を構成する各シートは同じ大きさであっても異なる大きさであってもよい。液不透過性には撥水性の意味も含まれる。
【0027】
トップシート3やバックシート4を構成する不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、トウ開繊不織布、SMS不織布等を用いることができる。
【0028】
吸収性コア5は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収性コア5としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは当該成形体を紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布シート等の被覆シートで覆ったものを用いることができる。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0029】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収性コア5は親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0030】
吸収性コア5は、シート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は、不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0031】
シート状吸収体は、吸収性材料として吸水性繊維を用いてもよい。この場合もまた、シート状吸収体は嵩張らず薄型に形成される。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。
【0032】
吸収性コア5の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性コア5の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。図面では、吸収性コア5は砂時計形に形成されている。
【0033】
吸収性物品1は、本体部2の一部として、トップシート3の幅方向xの両側にサイドシート6が設けられていてもよい。サイドシート6は、トップシート3とサイド接合部8で接合され、サイド接合部8よりも幅方向xの内方部分がトップシート3から起立可能に形成され、サイド接合部8よりも幅方向xの外方部分がバックシート4に積層されている(
図3および
図7を参照)。サイドシート6の幅方向xの内方部分が起立することにより立ち上がりフラップが形成され、これにより尿等の幅方向xの横漏れを防止することができる。なお、サイドシート6の幅方向xの内方部分がトップシート3から起立可能に形成されるために、サイドシート6には、サイド接合部8よりも幅方向xの内方部分に前後方向yに延びる起立用弾性部材7が設けられることが好ましい。サイドシート6は、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
【0034】
テープタイプの使い捨ておむつである吸収性物品1Bには、幅方向xの両側に前後方向yに延びる脚用弾性部材9が設けられることが好ましい。脚用弾性部材9により、着用者の脚周りにギャザーを形成して脚周りのフィット性を高めたり、横漏れを防止することができる。
【0035】
吸収性物品1Bの前後方向yの端部には、幅方向xに延びるウェスト弾性部材10が設けられることが好ましい。ウェスト弾性部材10により着用者の腰回りに沿ったウェストギャザーが形成され、腹部や背部からの尿等の漏れが防止される。
【0036】
上記に説明した各弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常の使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。弾性部材は、伸張状態で、ホットメルト接着剤等の接着剤で取り付けられることが好ましい。例えば、繊度40~1,240dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1~5.0倍に伸張して配設し、固定する。接合手段としては、好ましくは、ゴム系のホットメルト接着剤が用いられる。なお、前記倍率は、非伸張状態を1.0倍とする。
【0037】
吸収性物品1には、フック部材11が設けられている。吸収性物品1Aでは、本体部2の非肌面側であるバックシート4にフック部材11が設けられており、吸収性物品1Bでは、本体部2の幅方向xの両側に、テープ基材17にフック部材11が設けられた止着テープ16が設けられている。フック部材11は、
図4および
図8に示すように、基盤12と、基盤12から突出する複数の係合素子13とを有し、基盤12は、係合素子13が設けられる面と反対側の面が本体部2の非肌面側やテープ基材17に接着・固定されている。なお
図4は、
図2の吸収性物品のIV-IV断面図を表し、
図8は、
図6の吸収性物品のVIII-VIII断面図を表している。係合素子13の形状は特に限定されず、鉤形、錨形、きのこ形、柱形等が挙げられる。
【0038】
尿パッドである吸収性物品1Aは、フック部材11の係合素子13を、パンツやショーツの下着やアウターとして用いられる使い捨ておむつの肌面側に係合させることにより、吸収性物品1Aを下着や使い捨ておむつの肌面側に取り付けることができる。尿パッドである吸収性物品1Aでは、フック部材11が、前側部と後側部にそれぞれ、幅方向xに延在するように設けられる場合が多く、これによりフック部材11の設置面積を少なくしつつ、フック部材11により吸収性物品1Aを下着や使い捨ておむつの肌面側に安定して取り付けることができる(
図2を参照)。なお図面には示していないが、吸収性物品1の非肌面側にフック部材11が設けられる場合、フック部材11は吸収性物品1の前後方向yに延在するように設けられる場合もある。例えば、本体部の幅方向の両側がウィング部として幅方向の外方に延出して形成された吸収性物品では、本体部の一部であるウィング部の非肌面側にフック部材が前後方向に延びるように設けられる場合がある。
【0039】
テープタイプの使い捨ておむつである吸収性物品1Bは、
図6に示すように、後側部の幅方向xの両側に止着テープ16が設けられ、止着テープ16に設けられたフック部材11の係合素子13を吸収性物品1Bの前側部の非肌面側に設けられたターゲットテープ18に係合させることにより、吸収性物品1Bをパンツ形状に形成して着用することができる。ターゲットテープ18は、面ファスナーのループ部材から構成することができる。テープタイプの使い捨ておむつである吸収性物品1Bでは、フック部材11は基本的に吸収性物品1Bの前後方向yに延在するように設けられ、これにより吸収性物品1Bを装着した際に、止着テープ16を安定してターゲットテープ18に止着することができる。
【0040】
ところで、このように吸収性物品1にフック部材11が設けられる場合、フック部材11は通常、基盤12の略全面がバックシート4や止着テープ16のテープ基材17に接着・固定される。具体的には、フック部材11の基盤12の係合素子13が設けられる面とは反対側の面の略全面に接着剤が塗布され、基盤12の略全面がバックシート4や止着テープ16のテープ基材17に取り付けられる。そのため、吸収性物品1は、フック部材11が取り付けられた部分で剛性が高まり、吸収性物品を着用した際に、フック部材11が取り付けられた部分で着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が低下して、着用者が違和感を覚えやすくなる。
【0041】
そこで吸収性物品1では、フック部材11の基盤12を、ストライプ状に設けた接着部14で、本体部2や止着テープ16のテープ基材17に接着している。これについて、
図4および
図8に加えて
図5および
図9を参照して説明する。
図5は、
図2の吸収性物品の部分拡大図を表しており、吸収性物品からフック部材を取り除いた状態のフック部材とバックシートとの接着部の設置パターンを示している。
図9は、
図6の吸収性物品の止着テープの部分拡大図を表し、フック部材を取り除いた状態のフック部材とテープ基材との接着部の設置パターンを示している。
図5および
図9では、フック部材が設けられる部分の輪郭を点線で表している。
【0042】
吸収性物品1Aでは、フック部材11の延在方向に沿ってストライプ状に延びるように設けられた接着部14で、フック部材11の基盤12を本体部2に接着している。このようにフック部材11を本体部2に接着することにより、フック部材11が設けられた部分で、着用者の体表面の曲面形状に対する吸収性物品1Aの追従性が向上する。すなわち、ストライプ状の接着部14の間に形成された非接着部(隣接する帯状の接着部14の間に形成された非接着部)でフック部材11が曲がりやすくなるため、吸収性物品1Aは、フック部材11が設けられた部分で、下着や使い捨ておむつの肌面側に取り付けて装着した際に、着用者の股間部へのフィット性を高めることができる。なお、フック部材11は通常、フック部材11の延在方向に沿った両側縁(フック部材11の幅方向に対する両側縁)がフック部材11の延在方向に略平行な直線状に形成されている。フック部材11の延在方向は、基本的に、フック部材11の長手方向と略一致する。
【0043】
吸収性物品1Bでは、吸収性物品1Bの前後方向yに沿ってストライプ状に延びるように設けられた接着部14で、フック部材11の基盤12をテープ基材17に接着している。このようにフック部材11をテープ基材17に接着することにより、吸収性物品1Bを装着した際に、着用者の体表面の曲面形状に対する止着テープ16の追従性が向上する。具体的には、吸収性物品1Bを着用者の腰回りに装着する際、止着テープ16は着用者の腰回りに沿って湾曲形成されるが、吸収性物品1Bでは、フック部材11のストライプ状の接着部14が吸収性物品1Bの前後方向yに延びるように設けられているため、ストライプ状の接着部14の間に形成された非接着部(隣接する帯状の接着部14の間に位置する非接着部)でフック部材11が吸収性物品1Bの幅方向xに曲がりやすくなる。そのため吸収性物品1Bは、フック部材11が設けられた部分で、止着テープ16の着用者の腰回りへのフィット性を高めることができる。
【0044】
吸収性物品1Aでは、フック部材11の基盤12は、フック部材11の幅方向に対する両端部に接着部14が設けられず、非接着部15が形成されていることが好ましい。吸収性物品1Bでは、フック部材11の基盤12は、吸収性物品1Bの幅方向xに対する両端部に接着部14が設けられず、非接着部15が形成されていることが好ましい。なお、この非接着部15を、端部非接着部15と称する。フック部材11の基盤12に端部非接着部15を設けることにより、フック部材11の係合素子13を他の部材に係合させた際に、係合状態を安定して維持しやすくなる。吸収性物品1Aでは、フック部材11の基盤12に、フック部材11の幅方向の両端部に端部非接着部15が設けられることにより、吸収性物品1Aを下着や使い捨ておむつの肌面側に取り付けて装着した際に、吸収性物品1Aに下着や使い捨ておむつに対してずれる力が作用しても、フック部材11の基盤12が当該両端部を起点として剥がれにくくなる。吸収性物品1Bでは、フック部材11の基盤12に、吸収性物品1Bの幅方向xに対する両端部に端部非接着部15が設けられることにより、止着テープ16にターゲットテープに対してずれる力が作用しても、フック部材11の基盤12が当該両端部を起点として剥がれにくくなる。そのため、フック部材11を安定して他の部材に係合させることができる。
【0045】
端部非接着部15は、吸収性物品1の前後方向yまたは幅方向xに対して外方側にある端部非接着部15Aが内方側にある端部非接着部15Bよりも幅狭に形成されていることが好ましい。特に吸収性物品1Bでは、端部非接着部15は、吸収性物品1の幅方向xに対して外方側にある端部非接着部15Aが内方側にある端部非接着部15Bよりも幅狭に形成されていることが好ましい。吸収性物品1Aでは、
図1や
図2に示すようにフック部材11が吸収性物品1Aの幅方向xに延びるように設けられている場合は、端部非接着部15は、吸収性物品1の前後方向yに対して外方側にある端部非接着部15Aが内方側にある端部非接着部15Bよりも幅狭に形成されていることが好ましい。このように端部非接着部15を形成することにより、フック部材11を他の部材に係合させる際は係合状態を安定して維持しつつ、フック部材11を他の部材から取り外す際には係合状態を解除することが容易に行えるようになる。具体的には、吸収性物品1Aでは、吸収性物品1Aの端縁に近い側にある端部非接着部15Aの幅を狭く形成することにより、吸収性物品1Aを下着や使い捨ておむつから取り外す際に、吸収性物品1Aを掴んで引っ張る力がフック部材11に伝わりやすくなり、フック部材11の他の部材への係合を解除しやすくなる。吸収性物品1Bでは、幅方向xの外方にある端部非接着部15Aの幅を狭く形成することにより、止着テープ16をターゲットテープ18から取り外す際に、止着テープ16を掴んで引っ張る力がフック部材11に伝わりやすくなり、フック部材11のターゲットテープ18への係合を解除しやすくなる。
【0046】
ストライプ状の接着部14は、複数の帯状の接着部が並行して設けられることにより形成されるが、帯状の接着部の数は2以上であれば特に限定されない。帯状の接着部の幅は、例えば、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、また10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。隣接する接着部の間には非接着部が形成され、当該非接着部を中間非接着部とした場合、中間非接着部の幅は、例えば、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、また5mm以下が好ましく、4mm以下がさらに好ましい。上記に説明した端部非接着部15の幅は、例えば、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、また5mm以下が好ましく、4mm以下がさらに好ましい。なお、フック部材11の幅は、5mm以上であることが好ましく、8mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましく、また40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下がさらに好ましい。
【0047】
ストライプ状の接着部14を構成する帯状の各接着部の幅は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、接着部14は、吸収性物品1の前後方向yまたは幅方向xに対して外方側にある接着部が内方側にある接着部よりも幅広に形成されてもよい。このように接着部を設けることにより、フック部材11は、吸収性物品1の前後方向yまたは幅方向xに対する外方側の部分の剛性が高まり、フック部材11の係合素子13を他の部材に係合させた際に、係合状態が安定して維持されやすくなる。例えば吸収性物品1Aでは、吸収性物品1Aが下着や使い捨ておむつの肌面側に取り付けられた状態で、吸収性物品1Aの前後方向yまたは幅方向xの端部が捲れ上がっても、それに合わせてフック部材11の下着や使い捨ておむつへの係合が外れることが起こりにくくなる。吸収性物品1Bでは、止着テープ16がターゲットテープに止着した状態で止着テープ16の幅方向xの端部が捲れ上がっても、それに合わせてフック部材11のターゲットテープへの係合が外れることが起こりにくくなる。
【0048】
ストライプ状の接着部14を構成する帯状の各接着部は、べた塗りで形成されてもよく、細線状の接着剤が所定またはランダムのパターンで帯状の領域内に塗工されることにより形成されてもよい。なかでも接着部14での柔軟性を高める点から、後者の態様で帯状の各接着部が形成されることが好ましく、これにより、フック部材11が設けられた部分で、着用者の体表面の曲面形状に対する吸収性物品1の追従性をより高めることができる。この場合、ストライプ状の接着部14は次のように形成されることが好ましい。吸収性物品1Aでは、フック部材11の延在方向に沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、フック部材11の幅方向に複数列配置されることにより、ストライプ状の接着部14が形成されることが好ましい。吸収性物品1Bでは、前後方向yに沿って蛇行状および/またはらせん状に延びる細線状の接着剤が、幅方向xに複数列配置されることにより、ストライプ状の接着部14が形成されることが好ましい。このように細線状の接着剤を塗工することにより、接着部14をストライプ状に形成しやすくなる。
【0049】
接着部14は、ホットメルト接着剤により形成されることが好ましい。これにより接着剤をより細かいパターンで塗工することが可能になる。ホットメルト接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;ウレタン系反応性接着剤等をベースポリマーとして用いることが好ましい。また、ベースポリマーに、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリエステル;アクリル系エラストマー;ポリオレフィン系エラストマー等を配合して、粘着性や流動性を調節してもよい。ポリオレフィン系エラストマーの一種として、エチレン・プロピレンコポリマー等のアモルファスポリアルファオレフィン(APAO)を用いることも好ましい。
【0050】
接着部14の接着強度を高める点から、接着部14が湿気硬化型ウレタン系接着剤により形成されることも好ましい。湿気硬化型ウレタン系接着剤はイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含み、塗工後に空気中の水分と反応して硬化が促進されるため、吸収性物品が使用される加湿下でも十分な強度を発現するものとなる。また、吸収性物品を着用した際に、接着部14が着用者の体温や暖房器具等の熱によって加温されても、軟化による剥離強度の低下を抑えることができる。
【0051】
ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを反応することにより得ることができる。ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。ポリイソシアネートとしては、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族系ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族系ジイソシアネートを用いることができる。
【0052】
湿気硬化型ウレタン系接着剤はホットメルト接着剤であることが好ましい。これにより、湿気硬化型ウレタン系接着剤をより細かいパターンで塗工することが容易になる。湿気硬化型ウレタン系接着剤の溶融温度としては、例えば70℃~200℃が好ましく、80℃~160℃がより好ましい。
【0053】
接着部14を形成する接着剤には、必要に応じて可塑剤、粘着付与剤、各種充填剤、顔料、ワックス、粘度調整剤、水分除去剤、貯蔵安定剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。なお、接着剤として湿気硬化型ウレタン系接着剤を用いる場合は、添加剤としてノニオン性界面活性剤が含まれることが好ましく、これにより接着部14の接着強度を高めることができる。ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル類;ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、湿気硬化型ウレタン系接着剤が空気中の水分と反応する際の泡の発生を抑え、接着剤の本体部2やテープ基材17への浸透性に優れる点から、ポリオキシアルキレンエーテル類が好ましく用いられる。
【0054】
接着部14の面積は、フック部材11の面積の50%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、また85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。このように接着部14を設けることにより、フック部材11の基盤12と本体部2の非肌面側またはテープ基材17との接着力を確保しつつ、フック部材11が設けられた部分で、着用者の体表面の曲面形状に対する追従性を向上させやすくなる。なお、接着部の面積と非接着部(中間非接着部および端部非接着部)の面積の合計は100%となる。
【0055】
フック部材11の剥離強度は、0.16N/cm以上であることが好ましく、0.32N/cm以上がより好ましく、0.64N/cm以上がさらに好ましい。このような剥離強度でフック部材11の基盤12を本体部2の非肌面側(例えばバックシート4)やテープ基材17に接着することにより、フック部材11の基盤12を安定して本体部2の非肌面側やテープ基材17に接着することができる。フック部材11の剥離強度の上限は特に限定されないが、6.4N/cm以下が好ましく、4.8N/cm以下がより好ましく、3.2N/cm以下がさらに好ましい。フック部材の剥離強度は、JIS K 6854-3(1999)の「接着剤-剥離接着強さ試験方法 第3部:T形剥離」に準拠して測定し、剥離試験の試験片は、ストライプ状の接着部が試験片の長手方向に延びるように、吸収性物品から切り出す。試験片の幅はフック部材の幅とし、試験により得られた剥離強さの値は試験片の幅で除することにより、幅1cm当たりの値として求める。
【0056】
本体部2またはテープ基材17のフック部材11が設けられた部分の圧縮硬さは、0.70N/cm以下が好ましく、0.55N/cm以下がより好ましく、0.40N/cm以下がさらに好ましい。このように本体部2またはテープ基材17のフック部材11が設けられた部分が形成されていれば、フック部材11が設けられた部分で、本体部2またはテープ基材17の着用者の体表面の曲面形状に対する追従性が向上しやくなる。本体部2またはテープ基材17のフック部材11が設けられた部分の圧縮硬さの下限値は特に限定されないが、当該部分のコシ(Stiffness)をある程度確保する点から、0.15N/cm以上であることが好ましく、0.20N/cm以上がより好ましく、0.25N/cm以上がさらに好ましい。
【0057】
圧縮硬さは次の方法により求める。圧縮硬さの測定に使用する試験片は、本体部またはテープ基材のフック部材が設けられた部分を、ストライプ状の接着部が試験片の幅方向に延びるように、幅20mmで切り出す。この際、本体部としては、フック部材が取り付けられたシート部材(例えば、バックシート)のみを試験に供する。切り出した試験片を、引張・圧縮試験機(例えば、エー・アンド・ディー社製、テンシロン(登録商標)RTG-1210)を用い、試験片をチャック間距離10mmとなるようにチャック間に固定し(ただし、チャックはフック部材と本体部またはフック部材とテープ基材を挟持し、チャック間にフック部材が存在するようにする)、試験片を圧縮速度50mm/分でチャック間距離が5mmになるまで圧縮する。そのときの試験片の幅1cm当たりの応力(すなわち、引張・圧縮試験機で測定された応力の値を2で除した値)を、圧縮硬さとして求める。
【0058】
フック部材11は、次のように本体部2またはテープ基材17に設けられることが好ましい。すなわち、フック部材11の係合素子13の頂部が、ストライプ状の接着部14の延在方向に対して略垂直方向に配向するように、フック部材11が本体部2またはテープ基材17に設けられることが好ましい。より詳細には、フック部材11を平面視したときに、フック部材11の係合素子13の頂部の長手方向が、ストライプ状の接着部14の延在方向に対して略垂直となっていることが好ましい。このようにフック部材11が設けられることにより、フック部材11の係合素子13を他の部材に係合させた際に、係合状態を安定して維持しやすくなる。例えば吸収性物品1Aでは、下着や使い捨ておむつの肌面側に取り付けて装着した際に、フック部材11の幅方向にずれる力が作用すると、フック部材11の幅方向の長さが短いため、容易にフック部材11が下着や使い捨ておむつから剥がれやすくなる。しかし、フック部材11の係合素子13が上記のように形成されていれば、フック部材11の幅方向にずれる力が作用しても、フック部材11の係合素子13が下着や使い捨ておむつに引っ掛かって、係合状態を安定して維持しやすくなる。吸収性物品1Bでは、止着テープ16にターゲットテープに対して幅方向xにずれる力が作用しても、フック部材11の係合素子13がターゲットテープに引っ掛かって、係合状態を安定して維持しやすくなる。
【0059】
係合素子13の頂部の配向方向は次のように説明される。係合素子13の形状が鉤形の場合は、係合素子13の頂部が一方向に曲がって形成され、この曲がり方向が頂部の配向方向となる。係合素子13の形状が錨形の場合は、係合素子13の頂部に横木が設けられ、この横木の延在方向が頂部の配向方向となる。係合素子13の形状がきのこ形の場合は、係合素子13の頂部にキャップが設けられ、このキャップは、短軸方向と長軸方向を有するなど異方性を有している。そしてこのキャップの長軸方向が頂部の配向方向となる。
【0060】
本願は、2017年9月27日に出願された日本国特許出願第2017-186342号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年9月27日に出願された日本国特許出願第2017-186342号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0061】
1: 吸収性物品
2: 本体部
3: トップシート
4: バックシート
5: 吸収性コア
6: サイドシート
7: 起立用弾性部材
8: サイド接合部
9: 脚用弾性部材
10: ウェスト弾性部材
11: フック部材
12: 基盤
13: 係合素子
14: 接着部
15: (端部)非接着部
16: 止着テープ
17: テープ基材
18: ターゲットテープ