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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】生分解性の骨用接着剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/04 20060101AFI20230904BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20230904BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230904BHJP
   A61B 17/88 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61L24/04 200
C08G63/91
A61L27/18
A61L27/58
A61L27/54
A61L24/00 210
A61L27/04
A61L24/00 260
A61L24/00 240
A61L27/52
A61B17/88
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019558497
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018060965
(87)【国際公開番号】W WO2018197706
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】62/491,665
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182534
【弁理士】
【氏名又は名称】バーナード 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トン シュエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルイージ ルッピ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア ルッゲリ サヴィエット
(72)【発明者】
【氏名】ハワード ケイ. ボウマン ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジョセフ スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カーラウ
(72)【発明者】
【氏名】チエン-フォン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ リツィオ
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル スコット ジョーンズ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-185091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010139(US,A1)
【文献】特表2002-533377(JP,A)
【文献】COLLOIDS AND SURFACES B:BIOINTERFACES,2016年,Vol.142,p.1-9
【文献】PNAS,2014年07月15日,Vol.111, No.28,p.10287-10292
【文献】COLLOIDS AND SURFACES B:BIOINTERFACES,1999年,Vol.16,p.185-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、C08G、A61B
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、
Rは
【化2】
であり、ここで
mは4~90であり、
nは5~200であり、
xは1~200であり、且つ
yは0~200である]
の生体吸収性ポリマー。
【請求項2】
式Ia
【化3】
[式中、
Rは
【化4】
であり、ここで
mは4~90であり、
nは5~200であり、
xは1~200であり、且つ
yは0~200である]
の生体吸収性ポリマー。
【請求項3】
請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物と、
溶剤と、
非溶剤と
を含む、組成物。
【請求項4】
前記組成物がさらに添加剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記添加剤が前記非溶剤中に溶解されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がさらに抗微生物剤、抗菌剤またはそれらの混合物を含む、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶剤がアセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、またはN-メチル-2-ピロリドンである、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項8】
前記非溶剤がエタノール、メタノール、水、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、過酸化水素、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはそれらの混合物である、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項9】
前記添加剤が成長因子、ビタミン、生物学的製剤、抗生物質、抗ウイルス剤、アレンドロネート、オルパドロネート、エチドロネート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、トコフェロール(ビタミンE)、ピリドキシン(ビタミンB6)、コバラミン(ビタミンB12)、血小板誘導成長因子(PDGF)、グリシン、リシン、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ラミブジンおよびジドブジン、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸、脂肪族ポリエステル、糖類、多糖類、脂肪族ポリカーボネート、ポリアミン、ポリ無水物、ステロイド、グリセロール、アスコルビン酸、アミノ酸またはペプチド、無機粒子、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-l-リシン(PLL)、ポリ-d-リシン(PDL)、ポリ-d,l-リシン(PDLL)、ポリ-l-システイン、ポリ-d-システイン、ポリ-d,l-システイン、短いオリゴマーのl-リシン、d-リシン、l-システイン、d-システイン、アミノ官能化PEG、アミノ官能化無機粒子およびスズ触媒である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーの製造方法であって、ポリマー主鎖と官能基前駆体とを混合して混合物を形成する段階、および前記混合物にリンカーを添加して生体吸収性ポリマーを形成する段階を含む、前記製造方法。
【請求項11】
請求項3から9までのいずれか1項に記載の組成物を含有する、材料を接着するための接着剤
【請求項12】
前記材料が生物学的組織である、請求項11に記載の接着剤
【請求項13】
前記材料が生物学的組織基材および骨基材である、請求項11に記載の接着剤
【請求項14】
前記材料が金属基材および骨基材である、請求項11に記載の接着剤
【請求項15】
前記材料が金属基材および生物学的組織である、請求項11に記載の接着剤
【請求項16】
前記材料が金属基材である、請求項11に記載の接着剤
【請求項17】
ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物と、溶剤と、非溶剤とを含む歯科用メンブレン。
【請求項18】
ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤とを含む3D印刷された部品。
【請求項19】
ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを含有する3D印刷された部品の製造方法であって、
(a) ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを準備すること、
(b) ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層の3D印刷された部品を形成すること、および
(e) 前記の3D印刷された部品を硬化させること、
を含む、前記方法。
【請求項20】
ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤と、生物活性剤とを含む、バイオプリントされた部品。
【請求項21】
ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを含有するバイオプリントされた部品の製造方法であって、
(a) ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを準備すること、
(b) ポリマー主鎖と、請求項1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたは請求項2に記載の式Iaの生体吸収性ポリマーまたはこれらの混合物とを溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層のバイオプリントされた部品を形成すること、
(e) 前記バイオプリントされた部品を硬化させること
を含み、段階(b)または(c)のいずれかがさらに、生物活性剤を添加することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨および組織の接着剤として使用するための生体吸収性ポリマーに関する。本発明はさらに、接着剤部分を有する生体吸収性ポリマー分子の合成、および骨折した骨および損傷した組織を接着し且つ安定化するための、かかる化合物の使用に関する。本発明は、創傷部のケアにおける用途のための接着シーリング材としての、かかる化合物の使用にも関する。本発明は、組織工学および3D印刷における用途のための生分解性インクとしての、かかる化合物の使用にも関する。本発明は、薬物送達プラットフォームとしての、かかる化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、骨折した骨および損傷した組織を固定するための最も一般的な方法は、主に機械的且つ硬質の手段の使用に依存している。施与領域に依存して、固定器具の選択肢はネイル、ねじ、プレート等であり得る。これらの方法は、太く且つ頑丈な骨、例えば長骨を安定化し且つ治癒させるために有利であり得るが、固定器具の使用は、それらが上肢および下肢におけるより小さな領域およびより複雑な骨を治癒させるために実装される場合、有害なことがある(Hoffmann,B., Volkmer,E., Kokott,A. et al. J Mater Sci: Mater Med(2009)20: 2001. doi:10.1007/s10856-009-3782-5; Fortschr Kiefer Gesichtschir. 1991 ;36:30-3)。これらの場合においては、小さい領域の片にかけられる力に起因して、施与の手順がさらなる骨折を引き起こしかねず、それが合併症の片をもたらすことがある(International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery[2004, 33(4):377-381]; Compend Contin Educ Dent. 2005;8:565-571; J Oral Maxillofac Surg. 1991 ;49:683-688; J Craniofac Surg. 1990;1 :35-52; J Oral Maxillofac Surg. 1999;57:130-134)。従って、最低限の侵襲的手術で小さな骨片および軟組織を一緒に接着できる生体吸収性接着剤の使用は、科学および医学界にとって非常に興味深い。かかる接着剤系の開発は、観血的手術において医療器具の固定を支援することに関して極めて有益である。この系は、通常はパイロットホールの穿孔を必要とし、ひいては解剖学的構造、例えば血管または神経を損傷して合併症、入院期間の延長および費用の増加をもたらすリスクを有する標準的な方法よりも、骨片の間のより均一な質量分布、およびより容易な施与手順を可能にする。さらに、かかる材料の使用を、負荷支持骨、骨補填材、骨パテ、歯科、薬物送達、付加製造、3D印刷等を含む広範な用途に拡張することができる。
【0003】
現在までに、十分な機械的強度と、軟組織と共に使用するための適切な生体適合性および生分解性の特性とを兼ね備えることを可能にするいくつかの例が文献内で報告されている(Spotnitz WD: Fibrin sealant: past, present, and future: a brief review. World J Surg 2010, 34(4):632-634)。骨を伴う用途のための同様のシステムの開発に向けた多くの努力にもかかわらず、主に非生分解性の骨セメントが現在商品化されている。この分野における生体吸収性接着剤の使用は、最低限の侵襲的手術を実施する可能性ゆえに非常に興味深く、且つ小さい骨、例えば肢、耳骨等の効率的な接合のニーズに取り組む。完全に生分解性の接着剤の使用は、内部固定器具の使用が実用的ではない場所で小さい骨を安定化することを助けるだけでなく、埋め込まれた内部固定器具を除去するための追加的な手術も回避する。
【0004】
生体内での用途のために使用される接着剤系の現在の状況は、2つの主なカテゴリー: 1)合成接着剤および2)生物学的誘導体/バイオインスパイアード接着剤に分けることができる。
【0005】
生物学的組織の安定化のために最も報告されている類の合成接着剤の1つは、アルキルシアノアクリレートである。広範な類のシアノアクリレート接着剤が創傷部のケアの分野において商品化に成功しているにも関わらず、内部の生物学的組織を伴う用途のための市販のシアノアクリレート接着剤の開発は、報告されている有毒な副作用に起因してまだ問題がある。
【0006】
広範な類のポリメチルメタクリレート(PMMA)材料が骨セメントとしての用途のために開発されている。PMMAの骨セメントは、特に湿った条件下で、骨に対する固有の接着性をほとんど有さないか、または有さないので、それらの固定特性は代わりに、材料の硬化の間の、多孔質の骨と医療用移植材との間の機械的な連結の形成によってもたらされる(D.F.Farrar/International Journal of Adhesion&Adhesives 33(2012)89-97)。
【0007】
ポリウレタンは、医療用途のための他の重要な類の材料である。Polynovo Biomaterialsは、接着剤に類似しており且つ容易に体内に注入されるNovoSorbと称される液状ゲルを開発した。骨折部で施与されると、そのゲルは硬化し、骨折した骨を一緒に接着し且つ機械的にそれを支持する生分解性ポリウレタン系ポリマーになる一方で、該ポリマーは治癒プロセスを助ける(Adhikari Raju et al. Biodegradable injectable polyurethanes: Synthesis and evaluation for orthopedic applications-Biomaterials(2008),29(28),3762-3770)。Cohera Medical Inc.は、外科的な内部用途についてFDAの認可を受けたTissuGluという合成リシンに基づくウレタン接着剤を開発した。Cohera Medical Inc.は最近、FDAの認可を受けて、そのSylys外科用シーリング材の吻合部漏出の低減における用途のための臨床試験を開始した。しかしながら、骨用接着剤の用途におけるその使用については強調されていない。
【0008】
合成接着剤の使用の代替として、科学界では、実現性のあるバイオインスパイアード接着剤の開発に大きな興味が持たれつつある。これに関する主な問題は、湿った環境下でバイオインスパイアード接着剤が通常は低い機械的および接着強度をもたらすことである(D.F.Farrar/International Journal of Adhesion&Adhesives 33(2012)89-97)。しかしながら、自然界には、天然接着剤が湿った環境下で施与された場合に高い機械的および接着強度を示すいくつかの例が見出されている。イガイ類および海の環形動物は、非常に湿った表面に強く付着することができる天然粘液を分泌する。かかる生物材料における高い割合のカテコールおよび有機ホスフェート部分により、科学界は、かかる系を合成により再現し、カテコールおよび有機ホスフェートの付着特性を活用することを思いついた(The Journal of Experimental Biology 207, 4727-4734, The Company of Biologistsにより出版,2004 doi:10.1242/jeb.01330; Timothy J Deming, Current Opinion in Chemical Biology 1999,3:100-105)。
【0009】
これに関し、天然由来の接着剤であるポリ(DHHCA-co-3HPPA)コポリマー(DHHCA=3,4-ジヒドロキシヒドロケイ皮酸、3HPPA=3-(3-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸が開発され、そして、天然の芳香環によって構成される強い主鎖に起因する素晴らしい付着力を示した。この接着剤の接着機構は、自然界のイガイ類の付着性に由来する。(特許:国際公開第2015068503号(WO2015068503))。
【0010】
骨用接着剤としてのPEGおよびDOPAに基づく生体吸収性ポリマーが開発されている。官能化されたPEGを、in-situの酸化性架橋を介して処理して機械的強度が高められたヒドロゲルを形成することもできる(特許: 米国特許出願公開第2012/0156164号明細書(US2012/0156164))。それらは主鎖として天然ポリマー、例えばゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、アルギネート、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸およびフィブリノーゲン等を使用する。天然ポリマーの使用は、潜在的により低い機械的特性をもたらし、且つ生物学的応答を引き起こすこともあるので、それらの生体内での施与は適切に評価される必要がある。
【0011】
硬組織、例えば骨および歯に結合する能力を有するホスフェート部分で官能化された多糖類(プルラン)に基づく多官能化生体材料が開発されている(Biomedical Materials,2015,10(6),1-9)。それらも天然ポリマー、例えばプルランを主鎖として使用する。しかしながら、天然ポリマーの使用は潜在的により低い機械的特性をもたらす。天然ポリマーは生物学的応答を引き起こすこともある。従って、それらの生体内での施与は適切に評価される必要がある。
【0012】
所望の機械的特性および生体適合特性を達成するために多くの異なるアプローチが進められているが、全ての医療的需要に見合う実現性のある生体吸収性接着剤系は未だにない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2015068503号
【文献】米国特許出願公開第2012/0156164号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】Hoffmann,B., Volkmer,E., Kokott,A. et al. J Mater Sci: Mater Med(2009)20: 2001. doi:10.1007/s10856-009-3782-5
【文献】Fortschr Kiefer Gesichtschir. 1991 ;36:30-3
【文献】International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery[2004, 33(4):377-381]
【文献】Compend Contin Educ Dent. 2005;8:565-571
【文献】J Oral Maxillofac Surg. 1991 ;49:683-688
【文献】J Craniofac Surg. 1990;1 :35-52
【文献】J Oral Maxillofac Surg. 1999;57:130-134
【文献】Spotnitz WD: Fibrin sealant: past, present, and future: a brief review. World J Surg 2010, 34(4):632-634
【文献】D.F.Farrar/International Journal of Adhesion&Adhesives 33(2012)89-97
【文献】Adhikari Raju et al. Biodegradable injectable polyurethanes: Synthesis and evaluation for orthopedic applications-Biomaterials(2008),29(28),3762-3770
【文献】D.F.Farrar/International Journal of Adhesion&Adhesives 33(2012)89-97
【文献】The Journal of Experimental Biology 207, 4727-4734, The Company of Biologistsにより出版,2004 doi:10.1242/jeb.01330
【文献】Timothy J Deming, Current Opinion in Chemical Biology 1999,3:100-105
【文献】Biomedical Materials,2015,10(6),1-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、骨および組織用の接着剤、創傷部のケアのための接着シーリング材、生物学的組織における充填剤、薬物送達プラットフォーム、および組織工学および3D印刷における用途のための生分解性インクとして使用できる生体吸収性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式Iの新規の化合物に関する:
【化1】
[式中、
Rは
【化2】
であり、ここで
mは4~90であり、
nは5~200であり、
xは1~200であり、且つ
yは0~200である]。
【0017】
1つの態様において、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤とを含む組成物が開示される。
【0018】
他の態様において、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤とを含む組成物が開示される。
【0019】
さらに他の態様において、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤とを含む組成物であって、前記添加剤が前記非溶剤中に溶解されている前記組成物が開示される。
【0020】
さらに他の態様において、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、抗微生物剤、抗菌剤またはそれらの混合物とを含む組成物が開示される。
【0021】
さらに他の態様において、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤と、抗微生物剤、抗菌剤またはそれらの混合物とを含む組成物であって、前記添加剤が前記非溶剤中に溶解されている前記組成物が開示される。
【0022】
さらに他の態様において、式Iの生体吸収性ポリマーの製造方法であって、ポリマー主鎖と官能基前駆体とを混合して混合物を形成する段階、および前記混合物にリンカーを添加して生体吸収性ポリマーを形成する段階を含む、前記製造方法が開示される。
【0023】
さらに他の態様において、ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤とを含む歯科用メンブレンが開示される。
【0024】
さらに他の態様において、ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤とを含む3D印刷された部品が開示される。
【0025】
さらに他の態様において、ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を含有する3D印刷された部品の製造方法であって、
(a) ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を準備すること、
(b) ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層の3D印刷された部品を形成すること、および
(e) 前記3D印刷された部品を硬化させること、
を含む前記方法が開示される。
【0026】
さらに他の態様において、式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤と、生物活性剤とを含むバイオプリントされた部品が開示される。
【0027】
さらに他の態様において、ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を含有するバイオプリントされた部品の製造方法であって、
(a) ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を準備すること、
(b) ポリマー主鎖、式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物を溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層のバイオプリントされた部品を形成すること、
(e) 前記バイオプリントされた部品を硬化させること
を含み、段階(b)または(c)のいずれかがさらに、生物活性剤を添加することを含む、前記方法が開示される。
【0028】
追加的な利点は、一部は下記の説明内で述べられ、且つ一部は明細書から明らかであるか、以下に記載される態様の実施によって知ることができる。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素および組み合わせによって実現され且つ達成される。先述の一般的な説明も以下の詳細な説明も、例示的且つ説明のためだけのものであり、限定的ではないことが理解されるべきである。
【0029】
本発明の上記および他の対象、特徴および利点は、添付の図面と関連付けて、以下の詳細な説明からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1はポリマー主鎖の合成を示す反応スキームである。
図2図2は式Aの合成を示す反応スキームである。
図3図3は式Bの合成を示す反応スキームである。
図4図4は式Cの合成を示す反応スキームである。
図5図5は式Dの合成を示す反応スキームである。
図6図6は式Dの組成物(式D/1%PLL)の引張強度をシアノアクリレート接着剤に比して示す。
図7図7は式Dの組成物(式D/1%PLL)およびシアノアクリレート接着剤の応力対歪みのプロットを示す。
図8図8は、様々な時間間隔での式D(式D/0.1%PLL)の組成物の試料の分解の質量損失を示す。
図9図9は、様々な時間間隔での式D(式D/0.1%PLL)の組成物の試料の分解の数平均分子量(Mn)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本願の化合物および方法を開示し且つ説明する前に、本願に記載される態様は特定の方法、化合物、合成方法、物品、装置または用途に限定されず、当然のことながらそれらは変化できることが理解されるべきである。本願内で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、特段定義されない限り、限定することは意図されていないことも理解されるべきである。
【0032】
人骨、軟組織および金属への接着特性を示す生体吸収性ポリマーが本願内で開示される。合成されたポリマーはA-B-A主鎖のトリブロックコポリマーであり、ここでAは200Da~4000Daの範囲のMnを有するポリエチレングリコールであり、Bは1000Da~15000Daの範囲のMnを有するポリ-D,Lラクチド・グリコリドコポリマーである。主鎖には、R基として示される鎖端がある。合成されたポリマーは、人骨、軟組織および金属を共有結合する機能を有するR基のところで活性な官能性部分を有する。
【0033】
開示される生体吸収性ポリマーは、生分解性プロファイルの利点をもたらし、それは、通常はパイロットホールの穿孔を必要とし、ひいては解剖学的構造、例えば血管または神経を損傷して合併症、入院期間の延長および費用の増加をもたらすリスクを有する標準的な方法よりも容易な施与手順をもたらす。生体吸収性ポリマーの他の利点は、それを、負荷支持骨、骨補填材、骨パテ、歯科、薬物送達、付加製造、3D印刷等を含む広範な用途に拡張することができることである。
【0034】
用語の定義
特段定義されない限り、本願内で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって慣例的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含めて本書面が管理する。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本願内に記載されたものと類似または均等な方法および材料を、本発明の実施または試験において使用できる。本願内で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照をもってその全文が本願内に含まれるものとする。本願内で開示される材料、方法および例は、説明のためだけであり、限定することは意図されていない。
【0035】
本願内で使用される際、用語「含む」、「有する」、「できる」、「含有する」およびそれらの変化形は、開放型の移行句、用語または文言であり、さらなる行為または構造の可能性を排除しないことが意図されている。単数形は、文脈上明らかに指示されない限り、複数の対照物も含む。本開示は、本願内で示される実施態様または要素を「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」他の実施態様も、明示的に記載されているかどうかには関わらず、想定している。
【0036】
接続語「または」は、その接続語によって関連付けられた1つ以上の挙げられた要素のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。例えば、「AまたはBを含む装置」との句は、Aを含みBが存在しない装置、Bを含みAが存在しない装置、AとBとの両方が存在する装置に関し得る。「少なくとも1つのA、B、…およびN」または「少なくとも1つのA、B、…Nまたはそれらの組み合わせ」との句は、最も広い意味において定義され、A、B、…およびNを含む群から選択される1つ以上の要素、つまり、A、B、…またはNの要素の1つ以上の任意の組み合わせを意味し、単独の任意の1つの要素、または含まれ得る1つ以上の他の要素との組み合わせ、挙げられていないさらなる要素との組み合わせを含む。
【0037】
量に関連して使用される修飾語「約」は、記載された値を含み且つ文脈によって示された意味を有する(例えば、少なくともその特定の量の測定に関連する程度の誤差を含む)。修飾語「約」はまた、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するとみなされるべきである。例えば「約2~約4」との表現は、「2~4」の範囲も開示している。「約」との用語は、示された数字の±10%に関し得る。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲も示すことがあり、且つ「約1」は0.9~1.1を意味することがある。「約」の他の意味、例えば丸めは文脈から明らかであり、例えば「約1」は0.5~1.4を意味することもある。
【0038】
「質量%」との用語は、質量パーセントを意味する。
【0039】
「w/w」との用語は、質量対質量を意味する。
【0040】
本発明の目的では、「生分解性」との用語は、具体的な治療の状況において受け容れ可能である時間内で、生体内で溶解または分解するポリマーに関する。そのような溶解されたまたは分解された生成物は、より小さな化学種を含み得る。分解は例えば、酵素プロセス、化学的プロセスおよび/または物理的プロセスによって生じ得る。生分解は、生理的pHおよび温度、例えば6~9の範囲のpHおよび22℃~40℃の範囲の温度に曝露された後、典型的には5年未満、通常は1年未満かかる。
【0041】
本発明の目的では、「3D印刷された部品」との用語は、3D印刷機によって印刷された部品に関する。3D印刷機は、限定されずに、バイオプロッタ、熱溶解積層(fused filament fabrication; FFF)、選択的レーザー焼結(SLS)、およびステレオリソグラフィー(SLA)を含む。3D印刷された部品は、バイオプリントされた部品であってもよい。
【0042】
「生物学的組織」との用語は、限定されずに、人間の軟組織、皮膚、皮下層、粘膜、軟骨、靭帯、腱、筋組織、血管、人間の臓器、心筋組織、心臓弁、神経組織、心膜、胸膜、および腹膜を含む。
【0043】
「歯科用メンブレン用途」との用語は、限定されずに、歯科用移植材、歯周再生誘導の用途、および歯周ポケット用途を含む。
【0044】
本発明の主鎖のために適した生分解性ポリマーは、限定されずに、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブタラート)を含有するコポリマー、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリアセタール、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレート、またはポリヒドロキシバレレートを含有するコポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)、およびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせを含む。
【0045】
生分解性ポリマーは、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、ジオキサノン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシドまたはそれらの組み合わせの1つ以上の残基を含み得る。いくつかの態様において、生分解性ポリマーは、1つ以上のラクチド残基を含む。前記ポリマーはラクチドの全てのラセミおよび立体特異性の形態を含む任意のラクチド残基を含むことができ、限定されずに、L-ラクチド、D-ラクチドおよびD,L-ラクチドまたはそれらの混合物を含む。ラクチドを含む有用なポリマーは、限定されずに、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド)およびポリ(DL-ラクチド); およびポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(D-ラクチド-co-グリコリド)およびポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド)、またはそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせまたはブレンドを含む。ラクチド/グリコリドポリマーは、溶融重合によって、ラクチドおよびグリコリドモノマーの開環を通じて適切に製造できる。さらに、ラセミDL-ラクチド、L-ラクチドおよびD-ラクチドのポリマーが市販されている。L-ポリマーはより結晶質であり、DL-ポリマーよりもゆっくりと再吸収する。グリコリドとDL-ラクチドまたはL-ラクチドとを含むコポリマーの他に、L-ラクチドとDL-ラクチドとのコポリマーが市販されている。ラクチドまたはグリコリドのホモポリマーも市販されている。
【0046】
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド)、またはポリ(グリコリド)を使用する場合、ポリマー中のラクチドおよびグリコリドの量を変化させることができる。例えば、生分解性ポリマーは、0~100mol%、40~100mol%、50~100mol%、60~100mol%、70~100mol%、または80~100mol%のラクチド、および0~100mol%、0~60mol%、10~40mol%、20~40mol%、または30~40mol%のグリコリドを含有でき、ここでラクチドとグリコリドの量は100mol%である。さらなる態様において、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、95:5のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、85:15のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、75:25のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、65:35のポリ(ラクチド-co-グリコリド)であってよい。
【0047】
分子の主鎖の製造において、触媒的に有効な量の触媒を使用して重合段階を行うことができる。環状エステルのポリマーの形成を、環状エステルの重合のために公知の任意の適した触媒を用いて行うことができる。重合触媒は金属質または非金属質であってよく、様々な非金属の有機触媒を含む。適した金属触媒は、亜鉛粉末、スズ粉末、アルミニウム、マグネシウムおよびゲルマニウム、金属酸化物、例えば酸化スズ(II)、酸化アンチモン(III)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン(IV)および酸化ゲルマニウム(IV)、金属ハロゲン化物、例えば塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(II)、臭化スズ(IV)、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、酸化亜鉛、塩化マグネシウムおよび塩化アルミニウム、硫酸塩類、例えば硫酸スズ(II)、硫酸亜鉛および硫酸アルミニウム、炭酸塩類、例えば炭酸マグネシウムおよび炭酸亜鉛、ホウ酸塩類、例えばホウ酸亜鉛、有機カルボキシレート類、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、乳酸スズ(II)、酢酸亜鉛および酢酸アルミニウム、有機スルホン酸塩類、例えばトリフルオロメタンスルホン酸スズ(II)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、メタンスルホン酸スズ(II)およびp-トルエンスルホン酸スズ(II)、ジブチルスズジラウラート(DBTL)、Sb23、Ti(IV)bu、Ti(IV)isoおよびその他を含む。重合触媒は、非金属の酸、例えば有機酸であってもよい。有機酸は弱酸であっても強酸であってもよい。適した有機酸の例は、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸およびナフタレン2-スルホン酸、および強酸、例えば塩酸、硫酸、氷酢酸、およびリン酸を含む。前記方法の好ましい態様において、重合触媒はオクタン酸スズ(II)である。分子の主鎖の製造において、連鎖開始剤も使用して重合段階を行うことができる。カップリング反応のために使用できる様々な開始剤は、限定されずに、グリコール酸、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリオールを含む。
【0048】
触媒をニートで、または溶剤に溶解して添加することによって、反応混合物中への触媒の添加を実施できる。触媒を溶解するために使用できる、適した溶剤は、限定されずに、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびトルエンを含む。
【0049】
前記方法は、環状エステルを含む溶融された反応混合物を、約100℃~約300℃の温度で、約0.5時間~約24時間の範囲の時間、加熱することにより重合して、溶融された反応混合物中にポリマーエステルを形成することを含む。
【0050】
前記方法のこの態様によれば、環状エステルは約80℃~約250℃、好ましくは約100℃~約200℃の温度で、減圧、大気圧、または十分な圧力下で、任意の重合触媒および開始剤の存在下で加熱して、重合反応を行う。環状エステルのポリマーの形成後、そのポリマーをさらなるカルボキシル化反応段階に供して、カルボキシル化されたポリマーを形成できる。カルボキシル化反応を、同じまたは異なる反応容器内で行うことができる。その2段階の方法を、単独の反応容器(ワンポット)内で行うことができる。カルボキシレートポリマーの製造を、典型的には有機の環状無水物を反応物質として使用することによって実施できる。ポリマー主鎖のカルボキシル化のために使用できる様々な有機の環状無水物は、限定されずに、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物およびマレイン酸無水物を含む。従って、前記方法は、溶融された反応混合物に、適切な量の環状無水物を添加し、その反応混合物を約0.5時間~約72時間の範囲の時間、約80℃~約250℃、好ましくは約100℃~約200℃の温度で撹拌して、カルボキシル化されたポリマーを形成することを含む。残留モノマーおよび環状無水物を、約1トール~10トール、好ましくは1トール~5トールの圧力で反応物から留去する。カルボキシル化されたポリマーを反応容器から取り出し、析出によって精製する。例えば、カルボキシル化されたポリマーを溶剤中で溶解し、次にカルボキシル化されたポリマー用の非溶剤を添加することによって析出させる。カルボキシル化されたポリマー用の溶剤として使用できる様々な有機溶剤は、限定されずに、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドを含む。カルボキシル化されたポリマー用の非溶剤として使用できる様々な溶剤は、限定されずに、エタノール、メタノール、水、シクロヘキサン、ヘキサンおよびペンタンを含む。
【0051】
分子の主鎖とPEG部分とのカップリングは、典型的には活性化剤を使用してカップリング反応を媒介することにより実施できる。カップリング反応のために使用できる様々な活性化剤は、限定されずに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびN-メチルモルホリン(NMM)、およびそれらの混合物を含む。カップリング反応を、N-メチルピロリドン(NMP)中、DMF中またはジクロロメタン(DCM)中で行うことができる。従って、前記方法は、カルボキシル化されたポリマーを含む液体の反応媒体を、約20℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約72時間の範囲の時間撹拌して、前記液体の反応媒体中でトリブロックコポリマーを形成することを含む。
【0052】
前記トリブロックコポリマーを析出によって、例えばトリブロックコポリマー用の非溶剤を添加して、トリブロックコポリマーを混合物から析出させることによって、またはトリブロックコポリマーを再結晶化させることによって、液体の反応媒体から取り出す。溶剤、例えば酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物を使用して、トリブロックコポリマーを再結晶化させることもできる。トリブロックコポリマーを、遠心沈殿または傾瀉によって混合物からそれを分離することによってさらに精製することもできる。トリブロックコポリマーを、トリブロックコポリマー用の非溶剤、例えばシクロヘキサン、メタノール、エタノールまたはエーテルで洗浄することもできる。
【0053】
カルボキシレート形態のトリブロックコポリマーの製造を、典型的には有機の環状無水物を反応物質として使用することによって実施できる。ポリマー主鎖のカルボキシル化のために使用できる様々な有機の環状無水物は、限定されずに、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物およびマレイン酸無水物を含む。従って、前記方法は、分子の主鎖を含む液体の反応媒体を、約20℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約72時間の範囲の時間撹拌して、前記液体の反応媒体中でカルボキシル化されたトリブロックコポリマーを形成することを含む。
【0054】
前記カルボキシル化されたトリブロックコポリマーを析出によって、例えばカルボキシル化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤を添加して、カルボキシル化されたトリブロックコポリマーを混合物から析出させることによって、またはカルボキシル化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることによって、液体の反応媒体から取り出す。溶剤、例えば酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物を使用して、カルボキシル化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることもできる。カルボキシル化されたトリブロックコポリマーを、遠心沈殿または傾瀉によって混合物からそれを分離することによってさらに精製することもできる。カルボキシル化されたトリブロックコポリマーを、カルボキシル化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤、例えばシクロヘキサン、メタノール、エタノールまたはエーテルで洗浄することもできる。
【0055】
官能化された形態のポリマーの析出を、典型的には望ましいアミノ、ヒドロキシまたはチオール官能性部分を反応物質として使用することによって実施できる。カルボキシル化されたトリブロックコポリマーとアミノ官能性部分とのカップリングは、典型的には活性化剤を使用してカップリング反応を媒介することにより実施できる。カップリング反応のために使用できる様々な活性化剤は、限定されずに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびN-メチルモルホリン(NMM)、およびそれらの混合物を含む。カップリング反応を、N-メチルピロリドン(NMP)中、DMF中またはジクロロメタン(DCM)中で行うことができる。従って、前記方法は、分子の主鎖を含む液体の反応媒体を、約20℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約72時間の範囲の時間撹拌して、前記液体の反応媒体中で官能化されたトリブロックコポリマーを形成することを含む。
【0056】
前記官能化されたトリブロックコポリマーを析出によって、例えば官能化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤を添加して、官能化されたトリブロックコポリマーを混合物から析出させることによって、または官能化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることによって、液体の反応媒体から取り出す。溶剤、例えばアセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物を使用して、官能化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることもできる。官能化されたトリブロックコポリマーを、遠心沈殿または傾瀉によって混合物からそれを分離することによってさらに精製することもできる。官能化されたトリブロックコポリマーを、官能化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤、例えばシクロヘキサン、エタノールまたはエーテルで洗浄することもできる。いくつかの態様においては、活性化されたカルボン酸エステルの形成を含む全体の工程を、単独の反応容器内でワンポット法として行う。他の態様においては、カップリング工程を行う前に、活性化されたカルボン酸エステルを単離および/または精製できる。活性化されたカルボン酸エステルのための様々な精製方法、例えば析出、または非溶剤、例えばエーテルを用いた洗浄を使用して、未反応の反応物を除去することができる。
【0057】
官能化された形態のポリマーの析出を、望ましいイソシアネート官能性部分を反応物質として使用することによって実施することもできる。トリブロックコポリマーとイソシアネート官能性部分とのカップリングを、典型的には触媒的に有効な量の触媒を使用して行うことができる。トリブロックコポリマーを官能性部分に結合するためのウレタン基の形成を、イソシアネート反応性を促進することが知られている任意の適した触媒を用いて行うことができる。その反応触媒は金属質または非金属質であってよく、様々な非金属の有機触媒を含む。適した金属触媒は、限定されずに、有機スズ化合物、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、乳酸スズ(II)、メタンスルホン酸スズ(II)およびp-トルエンスルホン酸スズ(II)、ジブチルスズジラウラート(DBTL)を含む。反応触媒は、非金属の化合物、例えば有機塩基であってもよい。有機塩基は弱塩基であっても強塩基であってもよい。適した有機塩基の例は、限定されずに、トリエチルアミン(TEA)、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含む。
【0058】
従って、前記方法は、トリブロックコポリマーを含む液体の反応媒体を、約20℃~約100℃の温度で、約0.5時間~約72時間の範囲の時間撹拌して、前記液体の反応媒体中で官能化されたトリブロックコポリマーを形成することを含む。
【0059】
前記官能化されたトリブロックコポリマーを析出によって、例えば官能化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤を添加して、官能化されたトリブロックコポリマーを混合物から析出させることによって、または官能化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることによって、液体の反応媒体から取り出す。溶剤、例えばアセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物を使用して、官能化されたトリブロックコポリマーを再結晶化させることもできる。官能化されたトリブロックコポリマーを、遠心沈殿または傾瀉によって混合物からそれを分離することによってさらに精製することもできる。官能化されたトリブロックコポリマーを、カルボキシル化されたトリブロックコポリマー用の非溶剤、例えばシクロヘキサン、メタノール、エタノールまたはエーテルで洗浄することもできる。
【0060】
前記生体吸収性ポリマーのmの値は4~90である。好ましくは、前記生体吸収性ポリマーのmの値は7~25である。
【0061】
前記生体吸収性ポリマーのnの値は5~200である。好ましくは、前記生体吸収性ポリマーのnの値は15~100である。
【0062】
前記生体吸収性ポリマーのxの値は1~200である。好ましくは、前記生体吸収性ポリマーのxの値は15~100である。
【0063】
前記生体吸収性ポリマーのyの値は0~200である。好ましくは、前記生体吸収性ポリマーのyの値は4~35である。
【0064】
本発明において使用される適した生物活性剤は、動物または人間に投与された際に効果を有することができる任意の剤であってよい。特定の実施態様において、それらは、限定されずに有機分子、無機分子、抗感染剤、細胞毒、抗高血圧症剤、抗真菌剤、抗精神病剤、抗体、タンパク質、ペプチド、抗糖尿病剤、免疫刺激剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス物質、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、心血管作動剤、凝固阻止剤、ホルモン、抗マラリア剤、鎮痛剤、麻酔剤、核酸、ステロイド、アプタマー、ホルモン、ステロイド、血液凝固因子、造血因子、サイトカイン、インターロイキン、細胞、コロニー刺激因子、成長因子、およびそれらの類似物、それらの断片およびその種のものを含む。
【0065】
適した抗微生物剤は、限定されずに、ペニシリン類、ペニシリンV、ペニシリンG、アモキシリン、アンピシリン、クロキサシリン、メチシリン、アモキシリン+クラブラン酸(オーグメンチン)、チカルシリン+クラブラン酸、ナフシリン、第一世代のセファロスポリン類、セファレキシン(ケフレックス)、セファゾリン、セファドロキシル、(LEXie DROpped ZOLa)、第二世代のセファロスポリン類、セファクロル、セフロキシム、(LACking URine)、第三世代のセファロスポリン類、セフォタキシム、セホペラゾン、セフトリアキソン、第四世代のセファロスポリン類、セフェピム、テトラサイクリン類、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、マクロライド類、アジスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、リンコサミド類/リンコサミン、クリンダマイシン(クレオシン)、スルホンアミド類/スルファ薬類、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ジェネリック)、(バクトリム)、(コトリム)、(セプトラ)、フルオロキノロン類、シプロフロキサシン(シプロ)、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド類、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシンを含む。
【0066】
本発明のいくつかの実施態様において、抗微生物剤は抗菌剤である。任意の抗菌剤を当該の抗微生物溶液の製造において使用できる一方で、いくつかの限定されない例示的な抗菌剤は、アミノグリコシド類、β-ラクタム類、キノロン類またはフルオロキノロン類、マクロライド類、スルホンアミド類、スルファメトキサゾール類、テトラサイクリン類、ストレプトグラミン類、オキサゾリジノン類(例えばリネゾリド)、クリンダマイシン類、リンコマイシン類、リファマイシン類、グリコペプチド類、ポリミキシン類、リポペプチド抗生物質類に分類されるもの、並びに薬理学的に認容性のナトリウム塩、薬理学的に認容性のカルシウム塩、薬理学的に認容性カリウム塩、脂質製剤、上記の誘導体および/または類似物を含む。
【0067】
本発明において使用される溶剤は、限定されずに、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含む。
【0068】
本発明において使用される非溶剤は、限定されずに、エタノール、メタノール、水、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、過酸化水素、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはそれらの混合物を含む。
【0069】
適した添加剤は、限定されずに、成長因子、ビタミン、ペプチド、生物学的製剤、アミノ酸、抗生物質および抗ウイルス剤を含む。
【0070】
他の実施態様において、添加剤は限定されずに、アレンドロネート、オルパドロネート、エチドロネート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、トコフェロール(ビタミンE)、ピリドキシン(ビタミンB6)、コバラミン(ビタミンB12)、血小板誘導成長因子(PDGF)、グリシン、リシン、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ラミブジンおよびジドブジンを含む。
【0071】
本発明のいくつかの実施態様において、添加剤は硬化剤である。硬化剤は、限定されずに、チオール、アルコールおよびアミン官能基を含む。好ましい硬化剤は多官能性分子である。硬化剤は、材料全体にわたる架橋を促進にすることによって、強い接着結合の形成を補助できる。硬化剤は、ポリマーの官能基と反応することにより、接着剤の硬化プロセスを加速できる。好ましくは、硬化剤はポリマー官能基との共有結合を形成する。硬化剤は一般に、基材とは反応しない。
【0072】
前記多官能性分子は例えば、少なくとも1つのポリエチレングリコール、ポリアミノ酸(典型的には、50個を上回る結合したアミノ酸、および例えばタンパク質および/またはポリペプチドを含む)、脂肪族ポリエステル(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸および/またはポリカプロラクトンを含む)、糖類(例えば糖を含む)、多糖類(例えばデンプン)、脂肪族ポリカーボネート、ポリアミン(例えばポリエチレンイミンを含む)、ポリ無水物、ステロイド(例えばヒドロコルチゾン)、グリセロール、アスコルビン酸、アミノ酸(例えばリシン、チロシン、セリンおよび/またはトリプトファン)またはペプチド(典型的には2~50個結合したアミノ酸)、無機粒子(例えばバイオガラス、ヒドロキシアパタイト、セラミック粒子)を含むことができる。
【0073】
1つの実施態様において、非溶剤中に存在する硬化剤は、限定されずに、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-l-リシン(PLL)、ポリ-d-リシン(PDL)、ポリ-d,l-リシン(PDLL)、ポリ-l-システイン、ポリ-d-システイン、ポリ-d,l-システイン、短いオリゴマーのl-リシン、d-リシン、l-システイン、d-システイン、アミノ官能化PEG、アミノ官能化無機粒子(バイオガラス、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム)およびスズ触媒を含む。
【0074】
硬化剤として使用されるポリマーの分子量は1~500kDaである。好ましくは、硬化剤として使用されるポリマーの分子量は150~300kDaである。
【0075】
硬化剤として使用される短いオリゴマー中に存在する残基の数は3~20である。好ましくは、添加剤として使用される短いオリゴマー中に存在する残基は4~15である。
【0076】
硬化剤の濃度は0.1~50g/lである。好ましくは、硬化剤の濃度は1~10g/lである。
【0077】
1つの実施態様において、リンカーは、限定されずに、カルボン酸エステル、カーボネート、カルバメート(ウレタン)、カルバミド(ウレア)、アミド、スルフィドおよびジスルフィドを含む様々な共有結合の組み合わせである。本発明の他の実施態様において、リンカーは、官能基前駆体の結合のために混合された官能性の結合を含有することがある。
【0078】
適したリンカーは、限定されずに、ジクロロメタン(DCM)、トリエチルアミンおよび1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を含む。
【0079】
重ね剪断試験手順において使用される金属基材は、限定されずに、チタン、ニチノール、マグネシウム、ステンレス鋼、およびコバルト/クロム合金を含む。
【0080】
重ね剪断試験手順において使用される医療用の移植可能な基材は、限定されずに、PEEK、PLA、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸カルシウムを含む。
【0081】
硬化剤と混合される式A、式B、式C、式Dまたはそれらの混合物の典型的な分解プロファイルは、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも24ヶ月であることができる。
【0082】
口腔の用途において、ポリマー主鎖、式A、式B、式C、式Dまたはそれらの混合物を歯科用メンブレン用途のために使用できる。そのメンブレンを骨の上ではあるが歯肉組織の下に設置できる。溶液1において、ポリマー主鎖、式A、式B、式C、式Dまたはそれらの混合物を溶剤中に溶解できる。溶液2において、添加剤を非溶剤中に溶解できる。他の実施態様において、溶液2は非溶剤のみを含有する。1つの実施態様においては、溶液1および溶液2を、別々のシリンジを使用して同時に部位に施与できる。他の実施態様においては、溶液1および溶液2を、アプリケーターのチップのデュアルカニューレに接続された2つのシリンジを使用して部位に施与できる。溶液1と溶液2とが物理的に接触したら、溶解された生体吸収性ポリマーが溶液から析出してゲルを形成する。残りの溶剤を洗浄することができ、ゲル状のポリマーが骨と歯肉との間の部位に存在する。1つの実施態様において、溶液1と溶液2との比は1:1である。他の実施態様において、溶液1と溶液2との比は2:1~1:10である。
【0083】
3D印刷の用途において、ポリマー主鎖、式A、式B、式C、式Dまたはそれらの混合物を用いた3D印刷された部品の製造方法は、印刷されるべき前記ポリマーを有するポリマー溶液を製造することを含む。ポリマー溶液を製造し、3Dプリンタと適合性のあるカートリッジ内で保管する。添加剤溶液を製造し、適切な条件下で保管する。所望の印刷形状を有するソリッドモデルを作り出す。「スライス」作業を実施して、そのソリッドモデルを印刷のために準備する。そのスライス作業により、ソリッドの部品の形状が、プリンタが印刷しようとしている複数の層へと分けられる。スライスの層の高さは、作業者およびチップ開口部の直径によって決定される。ペトリ皿の取り付け台をプラットフォームに固定する。印刷表面として使用されるペトリ皿を、取り付け台の中に設置する。準備された印刷形状のファイルを、3Dプリンタのソフトウェアにインポートする。印刷のために使用される材料を指定し、印刷インフィルのために使用されるパターンを指定することにより、印刷の準備をする。この段階で、さらなる係数が印刷作業について変更されるが、最も基本的な2つの変更は、印刷するための材料および印刷インフィルのためのパターンを指定することである。所望の直径のチップをポリマー溶液のカートリッジに付け、そのカートリッジを3Dプリンタの印刷ヘッド内に設置する。ペトリ皿の印刷表面を、添加剤の均質な層を噴霧することによって準備する。ポリマー溶液を含有する印刷ヘッドを較正し、最初の印刷パラメータを見積もり、3Dプリンタソフトウェアにおける材料プロファイルへと配置する。作業者が印刷作業を開始する。3Dプリンタの印刷ヘッドがx方向およびy方向に動いて、部品の形状を印刷する。層の間で、ポリマーを最低30秒間、硬化させる。次に、印刷ヘッドを上昇させ(z)、次の層の形状を印刷する。部品全体が印刷されるまで、この工程を繰り返す。
【実施例
【0084】
以下の実施例は、本願内で特許請求される化合物、組成物、物品、装置および/または方法がどのように成され且つ評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するように示され、且つ純粋に本発明を例示することを意図されており、且つ発明者らが彼らの発明として関する範囲を限定することは意図されていない。数値(例えば量、温度等)に関する精度を確実にする努力が成されたが、いくらかの誤差およびずれは考慮されるべきである。特段示されない限り、部は質量部であり、温度は℃での温度であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0085】
式A、B、CおよびDの化合物を以下の反応スキームに従って製造できる。一般に、本発明の化合物を、特に本願内に含まれる説明に鑑み、化学分野において公知の方法と類似した方法を含む方法によって製造できる。この発明の化合物の特定の製造方法は、本発明のさらなる特徴として提供され、且つ以下の反応スキームによって説明される。
【0086】
製造例1
PEG-PLGA-PEG主鎖(ポリマー主鎖)の合成
図1に描かれるスキーム1はPEG-PLGA-PEG主鎖の製造に関する。D,Lラクチド(601.3g、4.17mol)およびグリコシド(149.0g、1.28mol)の溶融混合物に、ガラス漏斗を用いてグリコール酸(18.9g、0.25mol)を添加した。前記混合物を10分間撹拌し、次に2-エチルヘキサン酸スズ(II)(0.2309g、0.57mmol)のトルエン(5ml)中の溶液を、シリンジを用いて添加した。その添加の直後に、反応器の温度を170℃に設定した。3時間30分後、コハク酸無水物(124.3g、1.24mol)を添加し、溶融された混合物を170℃で2時間撹拌した。次に、反応器を最大限の真空度が達成されるまでゆっくりと排気し、真空下でさらに2時間保持した。反応器を窒素でパージした。前記のポリマーをパンに注ぎ入れ、液体窒素で冷却した。得られた粗製材料(736g)を、次に真空下、室温で乾燥させ(真空度は-28インチ/Hgである)、析出によって精製し(水/アセトン比20:1)、清浄な生成物をもたらした。全体の収率は70%であった。
【0087】
機械撹拌機を備えた500mlの反応器内で、PEG(9.76g、24.4mmol)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、3.79g、18.3mmol)を、カルボン酸末端化PLGA(II、20g、6.68mmol)のジクロロメタン(DCM、200ml)中の溶液に添加した。その溶液を10分間撹拌した後、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、2.24g、18.3mmol)を添加し、その反応混合物を12時間、室温で撹拌した。析出したジシクロヘキシル尿素をろ過して取り出し、その溶液を冷たいジエチルエーテル中に注ぎ、析出物をろ過して、ジエチルエーテルで洗浄した。次に、その粘着性の粘性固体を真空下、室温で2日間乾燥させた。次に、粘着性のオフホワイトの固体が得られ(生成物III)、全体の収率は80%であった。
【0088】
500mLの反応器内で、基材III(10g、2.5mmol)およびコハク酸無水物(15g、15mmol)をジクロロメタン(100mL)中に溶解し、18時間、60℃で撹拌した。次に、前記のポリマーを冷たいジエチルエーテル(400mL)中で析出させて、エタノールおよびジエチルエーテルで洗浄した。次に、その脂っぽい固体を真空下で乾燥させて、オフホワイトの固体(生成物IV)をもたらし、全体の収率は80%であった。
【0089】
製造例2
Rが
【化3】
である式I(式Aとしても示される)の合成
図2に描かれるスキーム2は式Aの製造に関する。50mlの丸底フラスコ内で、塩酸ドパミン(0.356g、1.88mmol)を、トリエチルアミン(TEA、0.26ml、1.88mmol)の存在下でジクロロメタン中に溶解し、10分間、室温で撹拌した。別のフラスコ内で、カルボン酸末端化PEG-PLGA-PEG(IV)(3g、0.75mmol)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.387g、1.88mmol)を、ジクロロメタン(DCM、10ml)中で溶解した。次に、その2つの溶液を合わせて、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.23g、1.88mmol)を添加した。次に、この溶液を12時間、還流条件下で撹拌した。形成された析出物のジシクロヘキシル尿素をろ過して取り出し、反応混合物を冷たいジエチルエーテル中に注いだ。析出物をろ過し、エタノールで洗浄し、真空下、室温で2日間乾燥させて、生成物Vをもたらした。
【0090】
製造例3
Rが
【化4】
である式I(式Bとしても示される)の合成
図3に描かれるスキーム3は式Bの製造に関する。機械撹拌機を備えた500mlの反応器内で、カルボン酸末端化PEG-PLGA-PEG(IV)(10g、2.5mmol)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.9g、9.15mmol)を、ジクロロメタン(DCM、100ml)中で溶解した。この溶液に、NHS(1.05グラム、9.15mmol)を添加した。この溶液を12時間、還流条件下で撹拌した。形成された析出物のジシクロヘキシル尿素をろ過して取り出し、反応混合物を冷たいジエチルエーテル中に注いだ。析出物をろ過し、エタノールで洗浄し、真空下、室温で2日間乾燥させて、生成物VIをもたらした。
【0091】
丸底フラスコ内で、O-ホスホリルエタノールアミン(0.082g、0.58mmol)およびトリエチルアミン(0.118g、1.17mmol)を1.5mlの水中で溶解した。別の丸底フラスコ内で、生成物VI(1g、0.26mmol)を10mlのテトラヒドロフラン中で溶解した。両方の溶液は透明な色となった。10分後、そのO-ホスホリルエタノールアミン溶液を生成物VIの溶液に添加した。軽い析出物が形成された。その最終的な懸濁液に、4mlのアセトニトリルを添加した。2相の懸濁液が形成した。その懸濁液を18時間、室温で撹拌した。その2つの相を分離した。上方の相の溶剤を減圧下で除去し、白い固体をもたらした。次に、得られた材料を、その粉末をアセトン、ジエチルエーテルおよびDCMで溶解および乾燥させることによって乾燥させた。次に、その最終的なDCM溶液を35mlのジエチルエーテル中に注いだ。形成された懸濁液を遠心分離し、固体の材料を真空下で乾燥させて0.7グラムの生成物VIIをもたらした。
【0092】
製造例4
Rが
【化5】
である式I(式Cとしても示される)の合成
図4に描かれるスキーム4は式Cの製造に関する。PTFEの丸底フラスコ内で、基材III(2g、0.53mmol)およびトリエチルアミン(0.3ml、2.1mmol)を20mLのテトラヒドロフラン中で溶解した。その透明な溶液に、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(0.26mL、1.05mmol)を滴下し、その反応混合物を還流温度で12時間撹拌した。次に、反応を平衡させて室温にした。6mlのエタノールを添加し、その溶液を室温で16時間撹拌した。その後、溶剤を減圧下で蒸発させた。残留油を6mlのDCM中で溶解し、その溶液をジエチルエーテル中に注いだ。析出物を単離し、真空下で8時間乾燥させて、1.8グラムの白い固体をもたらした(生成物VIII)。
【0093】
製造例5
Rが
【化6】
である式I(式Dとしても示される)の合成
図5に描かれるスキーム5は式Dの製造に関する。機械撹拌機を備えた500mlの反応器内で、カルボン酸末端化PEG-PLGA-PEG(IV)(10g、2.5mmol)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.9g、9.15mmol)を、ジクロロメタン(DCM、100ml)中で溶解した。この溶液に、NHS(1.05グラム、9.15mmol)を添加した。この溶液を12時間、還流条件下で撹拌した。形成された析出物のジシクロヘキシル尿素をろ過して取り出し、反応混合物を冷たいジエチルエーテル中に注いだ。析出物をろ過し、エタノールで洗浄し、真空下、室温で2日間乾燥させて、生成物VIをもたらした。
【0094】
生体吸収性ポリマーについてのNMRデータおよび試験結果
表1は、生体吸収性ポリマーについてのNMRデータに関する。
【0095】
【表1】
【0096】
生分解性ポリマーを、乾燥条件下と湿潤条件下との両方で、骨類似物基材上または骨類似基材と金属基材との上で、その接着特性の剪断強度について試験した。
【0097】
乾燥条件における試験
骨類似物基材は、BoneSim Laboratories製のウシ海綿骨1200シリーズから得られた(密度: 1.2g/cc、寸法10×10×40mm、シアノアクリレート結合剤5~7%)。).うざい1.2 boratories,100~200mgの生分解性ポリマーを0.1~1mLのジクロロメタン中に溶解し、透明な溶液をもたらした。次に、形成された溶液を1mlのシリンジ(Henke Sass Wolf 1ml NORM-JECT(登録商標)-Tuberkulin)内に装入した。第2の5mlシリンジ(Henke Sass Wolf 5ml(6ml) NORM-JECT(登録商標))にジエチルエーテルを装入した。2つの液体をシリンジから、第1の骨類似物基材の表面上へと押出し、受動的に混合させて粘性のゲルが形成された。そのゲルを第1の骨類似物基材上の15×10mmの表面上で広げ、16時間、減圧(約5Torr)下で乾燥させた。その後、第2の骨類似物基材(第1のものと同じ寸法を有する)を、第1の骨類似物基材の上の、ゲルが広げられた15×10mmの表面上に設置した。1.2kgの重りを、2つの一緒に接着された骨類似物基材の上に少なくとも16時間置いた。次に、製造された試料を、重ね剪断手順を使用して試験した。
【0098】
接着剤材料の剪断強度を、単純重ね合わせ接合試料によって測定した。接着された骨類似物基材の接触領域(約15×10mm)を測定し、最終的な剪断強度値を計算するための参照として保持した。次に該試料を、10kN負荷のセルおよび空気式のグリップ(気圧10PSI)を備えた引張試験機(Instron 3366、Instron Corporation製)上に載置した。次に、試料を5mm/分の速度で引き離して、剥離力をかけずに接着剤上で剪断力を生成した。次に、設定の引っ張り速度を保持するために必要とされる印加された力を記録した。このプロトコルは、骨および金属基材における用途のために修正されたこと以外、ASTM F2255の「Standard Test Method for Strength Properties of Tissue Adhesives in Lap-Shear by Tension Loading」において使用されるプロトコルと同様である。
【0099】
湿潤条件下での骨類似物基材上での試験
手順の開始前に骨基材を予め蒸留水に約10分間浸漬させたこと以外、前記乾燥条件下と同じ手順を使用した。
【0100】
外科的治癒(Surgi-Heal)条件下での骨類似物基材上での試験
1mlのシリンジに、PEG 400中の生分解性ポリマー溶液を装入し、且つ5mlのシリンジに水中で15%(w/w)の過酸化水素を装入したこと以外、前記湿潤条件と同じ手順を使用した。
【0101】
外科的治癒用接着剤のデュアルカニューレチップを備えた2シリンジアプリケーターのコンセプトに従う試験
50mlのPE試験管内で、0.3gの式A、B、CまたはDの生体吸収性ポリマーを、0.6mlの無水DMSO中に溶解させた。撹拌プレートを用いて2時間撹拌した後、前記溶液は透明になった(溶液1:0.7ml)。生じる溶液を1mlのシリンジに装入した。他方で、10mlの脱イオン水および可能性のある任意の添加剤(例えばトリエチルアミン、ポリ-l-リシン、架橋剤等)を12mlのシリンジに装入した。
【0102】
次に、その2つのシリンジをアプリケーターのチップのデュアルカニューレ(20ga×2”)に接続し、そのカニューレを通じて2種類の溶液を手で押し進めた。次に、形成されたゲルを人工骨類似物基材(BoneSim、ウシ海綿骨、密度1.3g/cc、修正されたASTM規準F2258に従う寸法、接着面積20×25mm、シアノアクリレート結合剤5%未満)の20×25mmの表面上に堆積させた。その後、前記の準備された基材に、先述のものと同じ特徴を有する第2の骨基材を近付けた。両方の骨試料を予め、脱イオン水に浸した(脱イオン水中に約10秒間浸漬)。次に、1kgの重りを前記試料上に置き、その系を16時間そのままにしておいた。次に、そのように準備された試料を、引張手順に従って試験した。
【0103】
骨類似物基材対金属基材における試験
第2の骨類似物基材を、ステンレス鋼である金属基材で置き換えたこと以外、前記乾燥条件と同じ手順を使用した。
【0104】
表2は、重ね剪断手順を使用して測定された生分解性ポリマーの剪断強度の値に関する。
【0105】
【表2】
【0106】
表3は、外科的治癒用接着剤のためのデュアルカニューレチップを備えた2シリンジアプリケーターを使用して準備され、引張手順を使用して測定された生分解性ポリマーの引張強度の値に関する。
【0107】
【表3】
【0108】
特段記載されない限り、接着試験は室温で、且つ試料の製造の16時間後に実施された。
【0109】
式Dの化合物がDMSO中で、0.6mlのDMSO中0.3gのポリマー濃度で溶解され且つ10mlの脱イオン水中に100mgのポリ-l-リシン臭化水素酸塩(Mn=150~300kDa)が溶解された場合に、最高の配合物は平均引張強度0.82MPaを示した。DMSO中の式Dの化合物の透明な溶液を、1mlのシリンジに装入した。脱イオン水中のポリ-l-リシンの透明な溶液を、10mlのシリンジに装入した。次に、その2つのシリンジをアプリケーターのチップのデュアルカニューレ(20ga×2”)に接続し、そのカニューレを通じて2種類の溶液を手で押し進めた。次に、形成されたゲルを人工骨類似物基材(BoneSim、ウシ海綿骨、密度1.3g/cc、修正されたASTM規準F2258に従う寸法、接着面積20×25mm、シアノアクリレート結合剤5%未満)の20×25mmの表面上に堆積させた。その後、前記の準備された基材に、先述のものと同じ特徴を有する第2の骨基材を近付けた。両方の骨試料を予め、脱イオン水に浸した(脱イオン水中に約10秒間浸漬)。次に、1kgの重りを前記試料上に置き、その系を16時間そのままにしておいた。次に、準備された試料を、引張手順に従って試験した。試験は、図6の棒グラフおよび図7の応力対歪みのプロットにおいて示されるとおり、同じ手順に従って試験されたシアノアクリレート接着剤に匹敵する引張強度を示す。
【0110】
生体吸収性ポリマーの分解結果
ポリマー溶液の6つの試料(各々、0.6gの式Dおよび20mlの0.1w/v%のポリ-L-リシンを含有)を、140rpmで終夜振盪した。該試料を水で洗浄し、実験の前に徹底的に乾燥させた。前記試料は各々、約0.5gの重量であった。次に、各々の試料を、30mLのリン酸緩衝食塩水(1×PBS)、pH7.4で満たされたファルコンの遠心管内に設置した。次に、試料を充填した管を、インキュベータ内に37℃で実験時間の間、設置した。各々の溶液のpHを一日おきに監視し、pHが7.2を下回ったら緩衝液を交換した。様々な時間間隔、具体的には1、2、3、4、6および8週で、管の1つを分析して、生じた分解を評価した。インキュベータから材料を取り出し、室温で1時間平衡させた。次に、その試料を3000rpmで10分間、遠心分離して、ポリマーから上澄み液を分離した。可溶性の分解生成物を含有する上澄み液を回収し、-20℃の冷凍庫でさらなる調査、例えばGPC、HPLC等のために保管した。PBS緩衝剤からの塩残留物を除去するために、残りの材料を脱イオン水で洗浄し、3000rpmで10分間、2回遠心分離した。次にその材料を回収し、一定の質量になるまで真空下で乾燥させた(通常、48時間)。質量損失を各々の時点で測定し、試料を-20℃(冷凍庫)で保管した後、GPCおよびNMRの調査に供した。
【0111】
表4は、0~56日の期間にわたるポリマーの質量損失に関する。質量損失は、7日の時点での5.52%から、8週(56日)の時点での100%へと増加した。爆発的な分解は14日目の8.05%で開始し、21日目には49.5%になった。連続的な分解傾向は、28日目の63.75%および42日目の87.93%で観察された。様々な時点での分解試料の質量損失を図8にプロットする。
【0112】
質量損失に比して、分子量は同様の傾向に従って減少した。様々な時点での分解試料の数平均分子量(Mn)を図9にプロットする。
【0113】
【表4】
【0114】
分子量(Mn)は、最初の分子量である10.4kDaから6週間の分解後に0.9kDaへと減少した。最初の14日間でわずかにゆっくりと分解した後、分子量は14日の6.3kDaへと減少し、且つ42日まで線形の分解傾向を示した。56日目に残った試料中には非常にわずかな材料しか残されておらず、従って、この時点についてのGPCデータを採取することはできなかった。
【0115】
例6
生体吸収性ポリマーの3D印刷
ポリマー溶液(0.6mlのDMSO中の0.3gの式D)を準備し、3Dプリンタ(3D Bioplotter Manufacturing Series、Envision Tec製)に適合するカートリッジ内で保管した。0.1%のポリ-l-リシン臭化水素酸塩水溶液(Sigma-Aldrich社から購入)を準備し、4℃で保管した。数層分の高さを有する1cm2の面積の組織のソリッドモデルを作り出した。次に、「スライス」作業を実施して、そのソリッドモデルを印刷のために準備する。そのスライス作業により、ソリッドの部品の形状が、プリンタが印刷しようとしている複数の層へと分けられた。ペトリ皿の取り付け台をプラットフォームに固定した。印刷表面として使用されるペトリ皿を、取り付け台の中に設置した。準備された印刷形状のファイルを、3Dプリンタのソフトウェアにインポートした。印刷のために使用されるポリマー溶液を指定し、印刷インフィルのために使用されるパターンを指定することにより、印刷の準備をした。直径0.4mmのチップを、ポリマー溶液のカートリッジに付け、そのカートリッジを3Dプリンタの印刷ヘッド内に設置した。ペトリ皿の印刷表面を、0.1%のポリ-l-リシン臭化水素酸塩溶液の均質な層を噴霧することによって準備した。ポリマー溶液を含有する印刷ヘッドを較正し、最初の印刷パラメータを見積もり、3Dプリンタソフトウェアにおける材料プロファイルへと配置した。作業者が印刷作業を開始した。3Dプリンタの印刷ヘッドがx方向およびy方向に動いて、部品の形状を印刷した。層の間で、ポリマーを最低30秒間、硬化させた。次に、印刷ヘッドを上昇させ(z)、次の層の形状を印刷した。部品全体が印刷されるまで、この工程を繰り返した。次に、その部品を乾燥させた。
【0116】
例7A
生体吸収性ポリマーの口腔への施与
0.3gのポリマー主鎖を0.6mlのDMSO中に溶解させて溶液1を形成した。溶液2は0.6mlの水または0.6mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有した。溶液1および溶液2を、アプリケーターのチップのデュアルカニューレに接続された2つのシリンジを通じて同時に部位に施与した。溶液1が溶液2と接触することにより、溶解されたポリマー主鎖が生じ、溶液から析出してゲルを形成する。
【0117】
例7B
生体吸収性ポリマーの口腔への施与
0.3gの式Dのポリマーを0.6mlのDMSO中に溶解させて溶液1を形成した。ポリ-l-リシン(PLL)(0.1w/v%のポリ-L-リシン溶液)を0.6mlの水または0.6mlのリン酸緩衝生理食塩水中に溶解させて、溶液2を形成した。溶液1および溶液2を、アプリケーターのチップのデュアルカニューレに接続された2つのシリンジを通じて同時に部位に施与した。溶液1が溶液2と接触することにより、式Dの溶解されたポリマーが生じ、溶液から析出してゲルを形成する。
【0118】
項目1は、式I
【化7】
[式中、
Rは
【化8】
であり、ここで
mは4~90であり、
nは5~200であり、
xは1~200であり、且つ
yは0~200である]
の生体吸収性ポリマーである。
【0119】
項目2は、項目1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーまたはその混合物、溶剤、および非溶剤を含む組成物である。
【0120】
項目3は、前記組成物がさらに添加剤を含む、項目2に記載の組成物である。
【0121】
項目4は、前記添加剤が前記非溶剤中に溶解されている、項目3に記載の組成物である。
【0122】
項目5は、前記組成物がさらに抗微生物剤、抗菌剤またはそれらの混合物を含む、項目2または3に記載の組成物である。
【0123】
項目6は、前記溶剤がアセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、またはN-メチル-2-ピロリドンである、項目2または3に記載の組成物である。
【0124】
項目7は、前記非溶剤がエタノール、メタノール、水、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、過酸化水素、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはそれらの混合物である、項目2または3に記載の組成物である。
【0125】
項目8は、前記添加剤が成長因子、ビタミン、生物学的製剤、抗生物質、抗ウイルス剤、アレンドロネート、オルパドロネート、エチドロネート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、トコフェロール(ビタミンE)、ピリドキシン(ビタミンB6)、コバラミン(ビタミンB12)、血小板誘導成長因子(PDGF)、グリシン、リシン、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ラミブジンおよびジドブジン、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸(典型的には、50個を上回る結合したアミノ酸、および例えばタンパク質および/またはポリペプチドを含む)、脂肪族ポリエステル(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸および/またはポリカプロラクトンを含む)、糖類(例えば糖を含む)、多糖類(例えばデンプン)、脂肪族ポリカーボネート、ポリアミン(例えばポリエチレンイミンを含む)、ポリ無水物、ステロイド(例えばヒドロコルチゾン)、グリセロール、アスコルビン酸、アミノ酸(例えばリシン、チロシン、セリンおよび/またはトリプトファン)またはペプチド(典型的には2~50個結合したアミノ酸)、無機粒子(例えばバイオガラス、ヒドロキシアパタイト、セラミック粒子)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-l-リシン(PLL)、ポリ-d-リシン(PDL)、ポリ-d,l-リシン(PDLL)、ポリ-l-システイン、ポリ-d-システイン、ポリ-d,l-システイン、短いオリゴマーのl-リシン、d-リシン、l-システイン、d-システイン、アミノ官能化PEG、アミノ官能化無機粒子(バイオガラス、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム)およびスズ触媒である、項目3に記載の組成物である。
【0126】
項目9は、項目1に記載の式Iの生体吸収性ポリマーの製造方法であって、ポリマー主鎖と官能基前駆体とを混合して混合物を形成する段階、および前記混合物にリンカーを添加して生体吸収性ポリマーを形成する段階を含む、前記製造方法である。
【0127】
項目10は、材料を接着するための接着剤としての、項目1から8までのいずれかに記載の組成物の使用である。
【0128】
項目11は、前記材料が生物学的組織である、項目10に記載の使用である。
【0129】
項目12は、前記材料が生物学的組織基材および骨基材である、項目10に記載の使用である。
【0130】
項目13は、前記材料が金属基材および骨基材である、項目10に記載の使用である。
【0131】
項目14は、前記材料が金属基材および生物学的組織である、項目10に記載の使用である。
【0132】
項目15は、前記材料が金属基材である、項目10に記載の使用である。
【0133】
項目16は、生物学的組織内の中空空間の充填方法であって、ある量の項目2または3に記載の組成物を生物学的組織内の中空空間に施与することを含む前記方法である。
【0134】
項目17は、口腔内の生物学的組織内の中空空間の充填方法であって、ある量の項目2または3に記載の組成物を口腔内の生物学的組織内の中空空間に施与することを含む前記方法である。
【0135】
項目18は、ある量の項目2または3に記載の組成物および生物活性剤を、デュアルカニューレチップを備えた2シリンジアプリケーターを使用して施与する方法である。
【0136】
項目19は、項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤とを含む歯科用メンブレンである。
【0137】
項目20は、項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤とを含む3D印刷された部品である。
【0138】
項目21は、項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を含有する3D印刷された部品の製造方法であって、
(a) 項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を準備すること、
(b) 項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層の3D印刷された部品を形成すること、および
(e) 前記3D印刷された部品を硬化させること、
を含む、前記方法である。
【0139】
項目22は、項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物と、溶剤と、非溶剤と、添加剤と、生物活性剤とを含む、バイオプリントされた部品である。
【0140】
項目23は、項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を含有するバイオプリントされた部品の製造方法であって、
(a) 項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を準備すること、
(b) 項目1に記載の式Iのポリマー主鎖、生体吸収性ポリマーまたはその混合物を溶剤に添加して、ポリマー溶液を形成すること、
(c) 前記ポリマー溶液に添加剤を添加または接触させること、
(d) 印刷ヘッドを介して前記ポリマー溶液を印刷して、多層のバイオプリントされた部品を形成すること、
(e) 前記バイオプリントされた部品を硬化させること
を含み、段階(b)または(c)のいずれかがさらに、生物活性剤を添加することを含む、前記方法である。
図1
図2
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図9