(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】保護カバー
(51)【国際特許分類】
F16L 3/02 20060101AFI20230904BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230904BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
F16L3/02 A
F16L57/00 A
H02G3/04 087
H02G3/04 018
(21)【出願番号】P 2020010614
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】川端 誠規
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254889(JP,A)
【文献】特開2007-002999(JP,A)
【文献】特開2007-292174(JP,A)
【文献】特開平08-210560(JP,A)
【文献】実開平01-122576(JP,U)
【文献】実開昭49-017962(JP,U)
【文献】米国特許第4566660(US,A)
【文献】特開2008-298125(JP,A)
【文献】特開2009-180314(JP,A)
【文献】特開2010-025174(JP,A)
【文献】中国実用新案第204886047(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/02
F16L 57/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定される基部を備えた基台と、当該基台との組付けにより配線・配管材の収容空間を形成する蓋体と、から成る長尺状の保護カバーであって、
前記蓋体は、前記基台と対向する天壁と、先端側内面に前記基台に形成された被係合部に係合して組み付けられる係合部が形成されて、前記天壁の幅方向の両端から前記基台に向けて垂下するように形成された一対の側壁とを備え、
前記基台には、その間に配置された配線・配管材を両側から保持すべく対向配置された一対の保持片が前記基部から上方に向けて立設されており、
前記一対の保持片は、先端側が弾性変形により相互に離間することで前記配線・配管材を、その間に受け入れ可能であると共に、原位置に戻ろうとする弾性復元力を備え、前記各保持片の基端側には、前記基部から立設されて、幅方向外側に屈曲されることで外側に凹設されて、前記係合部と係合される前記被係合部が形成されており、
前記一対の保持片の間には、近接する側の前記保持片に向けて前記基部から延設された一対の補助支持片が設けられ、
前記一対の補助支持片は、受け入れられた前記配線・配管材に押圧されて、その先端が相互に離間するように前記各保持片の前記基部側にそれぞれ移動可能であると共に、前記一対の保持片のうち遠い側の保持片の先端側内面に向けた付勢力がそれぞれ生じた状態で、前記配線・配管材の下部外周面に当接する構成であることを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
前記基台には、前記各補助支持片の先端が当接することで、それ以上の前記基部側移動を規制する移動規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記移動規制部は、前記一対の保持片の基端部における前記幅方向外側に屈曲された箇所の上面であることを特徴とする請求項2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記一対の補助支持片は、延設方向の途中が前記収容空間側に膨らむわん曲状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の保護カバー。
【請求項5】
前記一対の保持片は、その基端部が前記幅方向外側に屈曲されて、当該屈曲された箇所の先端から前記基部に対して垂直な方向に延設され、更に、当該各垂直延設部の各先端部は、互いに近接するように延設され、
前記一対の保持片の各垂直延設部の間隔は、保持する第1配線・配管材の直径に対応した寸法となっており、
更に、前記第1配線・配管材よりも相対的に小径の第2配線・配管材に対応すべく、
前記一対の保持片の先端の間隔は、前記第2配線・配管材の外径よりも狭く形成され、
前記一対の補助支持片は、前記第2配線・配管材を受け入れた際に、
その先端間の離間方向への移動量は、前記第1配線・配管材を受け入れた場合よりも小さくなることで、前記被係合部に対する各補助支持片の先端位置は、前記第1配線・配管材を受け入れた場合に比較して離間した状態で、当該各補助支持片の先端側内面が第2配線・配管材の外面に当接して、前記一対の保持片のうち遠い側の保持片の先端側内面に向けて付勢することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に固定される基台と、当該基台に組み付けられて、内部に長尺状の配線・配管材の収容空間を形成する蓋体とから成る長尺状の保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した長尺状の保護カバーとしては、特許文献1に開示のものが知られている。この保護カバーは、壁面に固定される基台を構成していて、配管材を保持する一対の保持片の基端部の外側に凹状の被係合部が形成されていると共に、蓋体を構成する一対の側板の先端部(設置状態で壁面に近接する側)の内面に凸状の係合部が形成されて、前記基台の一対の保持片の間の収容空間に配線・配管材を収容保持した状態で、当該基台に対して蓋体を覆蓋させると、当該蓋体の係合部が基台の被係合部と係合されて、基台と蓋体とが一体に組み付けられる構成である。
【0003】
特許文献1の保護カバーは、基台の一対の保持片の間に配管材を収容保持させて、当該一対の保持片と、基台の前記被係合部の内側の部分として配線・配管材を保持しているため、当該配管材の保持状態で一対の保持片が外側に拡がることで、或いはウォーターハンマー現象等で配管材が揺動することで、前記係合状態が不安定となって、甚だしい場合には、蓋体が外れる問題があった。
【0004】
また、特許文献2に開示の保護カバーは、基台を構成する一対の保持片が、中間に空間部を有する内外の二重壁構造になっていて、配管材の外径に対応して、各保持片を構成する内外の各壁部が協働して外方にたわみ変形するために、外径の異なる複数の配管材の収容保持を可能にしている。しかし、中間に空間部を有する内外の各壁部により保持片が構成されているため、保護カバーの幅が広くなって大型化する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-016799号公報
【文献】特開2007-292174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、配線・配管材の保持を、基台の一対の保持片による両側方からの保持のみならず、当該配線・配管材を斜下方からも支持することで、当該一対の保持片の下端部外側の被係合部の変形を少なくして、基台と蓋体との係合状態、及び配線・配管材の保持を安定化させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、壁面に固定される基部を備えた基台と、当該基台との組付けにより配線・配管材の収容空間を形成する蓋体と、から成る長尺状の保護カバーであって、
前記蓋体は、前記基台と対向する天壁と、先端側内面に前記基台に形成された被係合部に係合して組み付けられる係合部が形成されて、前記天壁の幅方向の両端から前記基台に向けて垂下するように形成された一対の側壁とを備え、
前記基台には、その間に配置された配線・配管材を両側から保持すべく対向配置された一対の保持片が前記基部から上方に向けて立設されており、
前記一対の保持片は、先端側が弾性変形により相互に離間することで前記配線・配管材を、その間に受け入れ可能であると共に、原位置に戻ろうとする弾性復元力を備え、前記各保持片の基端側には、前記基部から立設されて、幅方向外側に屈曲されることで外側に凹設されて、前記係合部と係合される前記被係合部が形成されており、
前記一対の保持片の間には、近接する側の前記保持片に向けて前記基部から延設された一対の補助支持片が設けられ、
前記一対の補助支持片は、受け入れられた前記配線・配管材に押圧されて、その先端が相互に離間するように前記各保持片の前記基部側にそれぞれ移動可能であると共に、前記一対の保持片のうち遠い側の保持片の先端側内面に向けた付勢力がそれぞれ生じた状態で、前記配線・配管材の下部外周面に当接する構成であることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、保護カバーを構成する基台の基部に一対の補助支持片が、一対の保持片のうち近接する側の保持片に向けて延設され、基台の一対の保持片の各先端の間から内部の収容空間に配線・配管材が挿入されて受け入れられると、前記一対の保持片が外側に変形されることで、原位置に戻ろうとする弾性復元力により当該配線・配管材の両側部が保持されると共に、一対の補助支持片は、当該配線・配管材の押圧により基部の側に押圧されて、当該一対の補助支持片の各先端は、互いに離間して、近接する側の保持片の基端側に向けて弾性変形される。その結果、一対の補助支持片が基台の基部の側に押圧されることで、原形状に戻ろうとする弾性復元力は、保持された配線・配管材に対して、一対の保持片のうちそれぞれ遠い側の保持片の先端に向かった付勢力として作用し、一対の補助支持片は、当該付勢力を有して配線・配管材の両斜下部の外面に当接する。
【0009】
このように、基台を構成する一対の保持片の間の収容空間に収容された配線・配管材は、一対の保持片の弾性復元力により、両側部を保持されるのみならず、一対の補助支持片の弾性復元力により両斜下部も支持されるので、即ち、配線・配管材は、一対の保持片により、その両側部の対向する4箇所又は2箇所が保持されると共に、一対の補助支持片により、その両斜下部の2箇所が補助的に支持されるので、配線・配管材の保持状態が安定化すると共に、一対の保持片の外側への変形量を皆無にしても配線・配管材の保持が可能であるので、基台の各保持片の基端外側に形成された各被係合部と、蓋体の係合部との係合状態も安定化して、基台に対して蓋体が外れる恐れもなくなる。
【0010】
配線・配管材の斜下部の2箇所を補助的に支持する一対の補助支持片を一対の保持片に対して弾性変形し易くすると、一対の保持片は、弾性変形されずに原形状を維持したままで、一対の補助支持片のみが弾性変形することで、配線・配管材の外面に対して一対の保持片は、付勢力を作用させずに、単に当接しているのみで、一対の補助支持片により斜上方への付勢力を作用させて、配線・配管材を支持することも可能である。この場合には、一対の保持片は、基台の基部に対して垂直な原形状を維持していて、この状態で、基台の被係合部と蓋体の係合部を係合させられるので、係合状態が一層に安定化する利点がある。
【0011】
また、配線・配管材は、一対の保持片が変形しないか、又は殆ど変形しないで、即ち、一対の保持片と一対の補助支持片との計4つの片のうち当該一対の補助支持片の弾性変形による斜上方への付勢力が主体となって、一対の保持片の間の収容空間に受け入れられるので、配線・配管材の下側の2箇所を補助的に支持する一対の補助支持片の弾性変形量を異ならしめることで、外径の異なる複数の配線・配管材を計4箇所又は6箇所で保持することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記基台には、前記各補助支持片の先端が当接することで、それ以上の前記基部側移動を規制する移動規制部が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明によれば、基台に設けられた各移動規制部に各補助支持片が当接して、その移動(変形)が規制されることで、各補助支持片が配線・配管材の両斜下部に当接した状態で基台の各保持片の間に保持される配線・配管材は、各補助支持片の変形形状が確定されているため、当該配線・配管材の保持が安定化する。また、各補助支持片が最大移動(変形)された前記当接状態において、一対の保持片の間に収容保持される配線・配管材を最大外径となるように、一対の保持片の形状を定めると、最大外径の配線・配管材の保持状態では、一対の保持片の変形量をなくして、原形状のままで保持可能となる。この結果、配線・配管材を基台に保持した状態で、各保持片の基端外側の被係合部の変形を極力小さくできて、基台と蓋体との係合状態も安定化する。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記移動規制部は、前記一対の保持片の基端部における前記幅方向外側に屈曲された箇所の上面であることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明によれば、一対の保持片の基端外側に凹状の被係合部を形成するために、当該一対の保持片の基端部には、前記幅方向外側に屈曲された箇所が必然的に形成されるので、別途移動規制部を設けることなく、内面側が凹状となった当該屈曲箇所の上面の部分を移動規制部として利用できる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において,前記一対の補助支持片は、延設方向の途中が前記収容空間側に膨らむわん曲状に形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明によれば、一対の補助支持片は、延設方向の途中が前記収容空間側に膨らむわん曲状に形成されているために、当該収容空間に収容途中の配線・配管材により各補助支持片が下方に押圧された場合には、各補助支持片は、必ず原形状又はこれに近い形状を保持して、配線・配管材の外径に対応した移動量(変形量)だけ一対の保持片のうち近接する側の保持片に向けて移動(変形)させられ、その逆方向に移動されたり、或いは前記押圧力により座屈させられたりすることがなくなる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において,前記一対の保持片は、その基端部が前記幅方向外側に屈曲されて、当該屈曲された箇所の先端から前記基部に対して垂直な方向に延設され、更に、当該各垂直延設部の各先端部は、互いに近接するように延設され、
前記一対の保持片の各垂直延設部の間隔は、保持する第1配線・配管材の直径に対応した寸法となっており、
更に、前記第1配線・配管材よりも相対的に小径の第2配線・配管材に対応すべく、
前記一対の保持片の先端の間隔は、前記第2配線・配管材の外径よりも狭く形成され、
前記一対の補助支持片は、前記第2配線・配管材を受け入れた際に、
その先端間の離間方向への移動量は、前記第1配線・配管材を受け入れた場合よりも小さくなることで、前記被係合部に対する各補助支持片の先端位置は、前記第1配線・配管材を受け入れた場合に比較して離間した状態で、当該各補助支持片の先端側内面が第2配線・配管材の外面に当接して、前記一対の保持片のうち遠い側の保持片の先端側内面に向けて付勢することを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、基台を構成する一対の保持片の形状を特定して、外径の異なる第1及び第2の各配線・配管材との対比により、基台を構成する一対の保持片、及び一対の補助支持片の寸法、及び移動(変形)前後の各部分の位置を特定したものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基台を構成する一対の保持片の間の収容空間に収容された配線・配管材は、一対の保持片の弾性復元力により、両側部を保持されるのみならず、一対の補助支持片の弾性復元力により両斜下部も支持されるので、即ち、配線・配管材は、一対の保持片により、その両側部の対向する4箇所又は2箇所が保持されると共に、一対の補助支持片により、その両斜下部の2箇所が補助的に支持されるので、配線・配管材の保持状態が安定化すると共に、一対の保持片の外側への変形量を小さくしても配線・配管材の保持が可能であるので、基台の各保持片の基端外側に形成された各被係合部と、蓋体の係合部との係合状態も安定化して、基台に対して蓋体が外れる恐れもなくなる。また、配線・配管材は、一対の保持片と一対の補助支持片との計4つの片を弾性変形されて、一対の保持片の間の収容空間に受け入れられるので、計4つの各片の弾性変形量を異ならしめることで、外径の異なる複数の配線・配管材の保持が可能となる。
【0021】
基台の収容空間に収容された配線・配管材の下端側は、収容空間の側が膨らむような形状にわん曲された一対の補助支持片で支持されて、当該配線・配管材の収容状態においても、当該配線・配管材の下端側を支持する各補助支持片は、弾性変形可能であるため、配線・配管材の下端側は、恰もクッション材で支持されたような状態となる。よって、ウォーターハンマー現象により、配線・配管材が揺動されても、各補助支持片の弾性変形により前記揺動が吸収されて、基台と蓋体との係合部分が変形されることはないので、基台と蓋体との係合の解除の恐れが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の保護カバーCを構成する基台Vと蓋体Lの分離状態の斜視図である。
【
図3-A】(a)は、基台Vの一対の保持片11が外側に最大に変形されて、その収容空間Kに大径の配管材P
1 の一部が挿入された状態の断面図であり、(b)は、配管材P
1 のほぼ全体が収容空間Kに収容された状態の断面図である。
【
図3-B】(c)は、(b)の状態において、配管材P
1 を更に押圧して一対の補助支持片17を最大に移動(変形)された状態の断面図である。
【
図4】(a)は、基台Vの一対の保持片11が外側に変形されて、その収容空間Kに小径の配管材P
3 の一部が挿入された状態の断面図であり、(b)は、配管材P
3 が収容空間Kに収容された状態の断面図である。
【
図5】各配管材P
1 ,P
3 の中間の外径D
2 を有する配管材P
2 が基台Vの収容空間Kに収容された状態の断面図である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ基台Vに対して蓋体Lが覆蓋されて配管材P
1 ,P
3 が収容保護された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
図1及び
図2において、長尺状の保護カバーCは、建物の壁面Wに固定される基台Vと、当該基台Vとの組付けにより配管材P
1 ~P
3 の収容空間Kを形成する蓋体Lとから成る。基台Vと蓋体Lとは、いずれも樹脂の押出成形により形成されることで、自由端部を有する後述の基台Vの一対の保持片11、一対の補助支持片17並びに蓋体Lの一対の側壁22及び当該各側壁22に接続する天壁21の接続部は弾性変形可能になっている。
【0024】
基台Vは、断面視において左右対称な形状であって、凹凸板状の基部1と、当該基部1の上面における幅方向の両端よりも僅かに内側の部分に、一対の保持片11が当該基部1に対して垂直となって上方に向けて立設されている。基部1は、幅方向の中央部の固定板部2の幅方向の両端部に、別の基台V又は端末カバーの一対の位置決め片を挿入する一対の位置決め溝3を形成すべく、上方に嵩上げされた嵩上げ板部4が前記固定板部2と平行に形成され、更に、当該嵩上げ板部4の幅方向の外方端部に、凹状の被係合部5の一部を形成するための傾斜板部6及び壁面Wに密着する密着板部7が連続して形成されている。基台Vは、固定板部2の部分において固定ビスを介して壁面Wに固定されるため、当該固定板部2の上面の幅方向の中央部には、前記固定ビスの配置位置を案内する案内溝8が全長に亘って形成されている。
【0025】
前記一対の保持片11は、前記基部1に対して直接に接続される各保持片基端部12の僅かに上方の部分が幅方向外側に傾斜して屈曲されて各傾斜屈曲部13がそれぞれ形成され、当該各傾斜屈曲部13の斜上端部には、前記基部1に対して垂直となって各本体保持片部14がそれぞれ形成され、当該各本体保持片部14の上端部には、内側に向けてわん曲されたわん曲保持片部15がそれぞれ形成されて、非変形時の各わん曲保持片部15の先端部の間隔Aは、一対の保持片11の間の収容空間Kに保持される複数の配管材P1 ~P3 のうち最小の配管材P3 の外径D3 よりも狭く形成されている。一対のわん曲保持片部15の先端部の間の開口は、配管材P1 ,P2 の挿入開口(受入れ開口)10となっている。このため、全ての配管材P1 ~P3 は、対向する各わん曲保持片部15及びこれに接続される各本体保持片部14を幅方向外側に弾性変形させてわん曲させることで、内部の収容空間Kに収容される。一対の保持片11の基端部の外側に基部1と協働して凹状に形成される被係合部5は、基部1の幅方向両端部の傾斜板部6、密着板部7、保持片基端部12及び保持片11を構成する傾斜屈曲部13とで形成される。なお、各わん曲保持片部15における各本体保持片部14との接続部の外側には、当該各わん曲保持片部15の幅方向外側へのわん曲を容易にするための易変形溝16が全長に亘って形成されている。
【0026】
基台Vの基部1の各嵩上げ板部4の幅方向内側の部分は、固定板部2の直上の部分まで僅かに延設され、当該延設部4aに、当該基台Vの収容空間Kに収容された配管材P1 ,P2 の両斜下部外面に当接して、当該配管材P1 ,P2 を斜下方の2箇所で補助的に支持する各補助支持片17が一体に形成されている。各補助支持片17は、収容空間Kに配管材P1 ~P3 を挿入する際には、押圧されて変形されるため、当該変形時において、幅方向内側に変形されたり、或いは座屈形状に変形するのを確実に防止するために、前記収容空間K又は基台Vの内側(基台Vの幅方向の中心側)に向けて膨らんだ形状となっている。この形状により、補助支持片17は、配管材P1 ,P2 の斜下部の部分で押圧された場合には、必ず外側に向けて変形される。ここで、補助支持片17が「内側に向けて膨らんでいる形状」とは、外側に向けて膨らんでいる形状、及び直線形状を排除することを意味する。
【0027】
また、補助支持片17の長さは、外径の異なる複数の配管材P
1 ,P
2 のうち最大外径の配管材P
1 の収容時には、当該補助支持片17の先端部(自由端部)が前記傾斜屈曲部13に当接して、当該補助支持片17の外側への移動(変形)が規制される寸法に定めてある。従って、基台Vの収容空間Vに臨んでいる当該傾斜屈曲部13の上面は、最大に変形された補助支持片17の移動規制部18として機能し、既存形状を利用して、補助支持片17の移動を規制できる利点がある。なお、補助支持片17は、基台Vの全長に亘って形成されて、収容時には、配管材P
1 ,P
2 を斜下方の2箇所で補助的に支持する機能を果すが、収容空間Kに対する配管材P
1 ~P
3 の挿入時には、挿入抵抗となるので、当該挿入抵抗を小さくする必要があると共に、基台Vの収容空間Kに対して配管材P
1 ~P
3 を安定状態で収容するには、一対の保持片11の変形量は、皆無とするか、又は極力小さくして、一対の補助支持片17の変形量を大きくして、可能な限り配管材P
1 ~P
3 を収容空間Kの内部に入り込ませて収容することが望ましいために、一対の補助支持片17は、相対的に一対の保持片11よりも弾性変形し易くする必要がある。このため、補助支持片17の基端部は他の部分よりも薄肉に形成されていると共に、当該補助支持片17の外側には、易変形溝19が形成されている。また、基台Vの固定板部2の内側における左右一対の補助支持片17の間の空間は、電熱線,信号線等の線材Eを配置する線材配置空間20として利用できる(
図6参照)。
【0028】
なお、配管材P1 ~P3 のサイズとは無関係に、当該配管材P1 ~P3 の下端側は、常に、弾性変形可能な一対の補助支持片17により保持部の僅かな変位が可能な状態で保持されているため、上記した線材配置空間20は、長手方向の全長に亘って常に確保できる。
【0029】
一方、蓋体Lは、組付け状態で前記基台Vと対向する天壁21と、当該天壁21の幅方向両端部から基台Vの基部1の側に向けて垂化された平板状の一対の側壁22とから成り、各側壁22の自由端側の内面に一対の係合部23がそれぞれ突設されている。天壁21における基台Vの一対のわん曲保持片部15に対応する部分は、傾斜して形成されている。断面視で凸状の係合部23の外面形状は、断面視で凹状の被係合部5の底面形状に対応している。基台Vに対して蓋体Lを押し付けることで、一対の側壁22が幅方向外側に弾性変形された後に原形状に復元することで、各側壁22の各係合部23が、基台Vの各被係合部5にそれぞれ係合されて、基台Vに対して蓋体Lが一体に組み付けられる。
【0030】
そして、保護カバーCで収容保護可能な複数の配管材P
1 ~P
3 のうち、最大外径D
1 の配管材P
1 を挿入開口10から基台Vの収容空間Kに収容する場合には、
図3-A(a)に示されるように、基台Vに対して配管材P
1 を押圧して、当該基台Vの一対の保持片11が最大に離間された後に、同(b)に示されるように、配管材P
1 の両斜下部の2箇所が各補助支持片17に当接するまで押圧し、更に押圧すると、
図3-B(c)に示されるように、当該配管材P
1 の押圧により一対の補助支持片17が外方に大きく弾性変形されて、その先端部が移動規制部18に当接することで、これを超える押圧ができなくなって、前記配管材P
1 は、基台Vの収容空間Kに対する配管材P
1 の配置位置が定められた状態で、当該収容空間Kに収容される。
【0031】
図3-B(c)の配管材P
1 が基台Vの収容空間Kに収容された状態では、基台Vの一対の保持片11は変形されずに原形状を維持していて、一対の補助支持片17のみが大きく弾性変形されている。このため、一対の補助支持片17の大きな弾性変形により生ずる各付勢力(弾性復元力)F
1 は、配管材P
1 の両斜下部の2箇所に作用して、一対の保持片11のうち遠い側の保持片11の先端部である斜上方に向けた配管材P
1 を付勢することで、基台Vの収容空間K内における配管材P
1 の配置位置が定められる。このように、大きく弾性変形された一対の補助支持片17は、配管材P
1 の収容保護時には、クッション材のように機能するので、ウォーターハンマー現象等により配管材P
1 に外力が作用して、当該配管材P
1 が揺動しても、当該揺動が一対の補助支持片17で吸収されることで、原形状を維持している一対の保持片11が大きく変形されるのを防止できる。このように、一対の保持片11は、原形状を保持して配管材P
1 を収容保護できるので、従来のように、当該保持片11の変形により、基台Vの被係合部5と蓋体Lの係合部23との係合が緩んだり、解除される恐れがなくなる。
【0032】
ここで、左右一対の補助支持片17は、収容空間Kの側が膨らむようなわん曲形状になっているため、基台Vの収容空間Kに配管材P
1 が挿入されることで、屈曲変形されることなく、当該配管材P
1 の外面に沿ってスムーズにわん曲される。また、
図3-B(c)で示されるように、一対の補助支持片17の先端部が起動規制部18に当接することで、当該一対の補助支持片17が最大にわん曲された状態においても、当該各補助支持片17は、原形状に復元しようとする最大の弾性復元力により、収容空間Kに収容された配管材P
1 を斜上方に向けて付勢する大きな付勢力F
1 が発生して、配管材P
1 の下端側を弾性的に支持しているので、ウォーターハンマー現象により生ずる配管材P
1 の揺れが吸収されるため、当該揺れに対して強い支持構造となる。この点において、非変形な下端側支持材で配管材の下端側を支持する場合には、上記付勢力は発生せず、配管材P
1 の揺れに対して弱い構造であるのと異なる。
【0033】
また、
図4(a),(b)には、最小外径(D
3 )の配管材P
3 が基台Vの収容空間Kに収容される途中、及び収容時の状態がそれぞれ断面図で示されている。基台Vに配管材P
3 が収容された状態では、一対の保持片11及び一対の補助支持片17は、いずれも弾性変形されずに原形状を維持していて、一対の保持片11及び一対の補助支持片17の各先端部が、いずれも配管材P
3 の外面における斜上方及び斜下方の計4箇所において当接しているのみであって、付勢力は生じていない。
【0034】
なお、配管材P
1 の最大外径D
1 及び配管材P
3 の最小外径D
3 の具体的寸法は、それぞれ(48mm),(43mm)である。従って、外径D
2 が(43mm)よりも大きくて、(48mm)よりも小さい配管材P
2 を前記基台Vで保持した場合には、
図5に示されるように、一対の補助支持片17のみが弾性変形されて、配管材P
2 に対して付勢力F
2 (F
2 <F
1 )を及ぼした状態となるが、その弾性変形量及び斜上方への付勢力は、最大外径D
1 の配管材P
1 を保持した場合に比較していずれも小さい。
【0035】
また、基台V
1 の収容空間Kに各配管材P
1 ,P
3 を収容した後には、
図6(a),(b)に示されるように、配管材P
1 ,P
3 が収容された基台Vに対して蓋体Lを押し付けると、当該蓋体Lの各側壁22が外側に弾性変形された後に、原形状に復元して、基台Vの凹状の被係合部5に対して蓋体Lの凸状の係合部23が挿入されて互いに係合されることで、基台Vと蓋体Lとが一体に組み付けられて、配管材P
1 ,P
3 の全体が保護される。なお、
図1及び
図6において、31は、蓋体Lの天壁21及び各側壁22の内側に断面逆U字状となって配置された断熱材を示す。
【符号の説明】
【0036】
D1 ~D3 :配管材の外径
F1 ,F2 :付勢力
K:収容空間
L:蓋体
P1 ~P3 :配管材(配線・配管材)
V:基台
W:壁面
1:基部
5:被係合部
11:保持片
17:補助支持片
18:移動規制部
21:天壁
22:側壁
23:係合部