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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
F16F9/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020018392
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124174
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康二
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌弘
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-071197(JP,U)
【文献】特開平07-305707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0080519(US,A1)
【文献】特開平09-105437(JP,A)
【文献】特開2016-114213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状であって下端側外周に車両の車輪を支持するブラケットが嵌合されるブラケット取付部と前記ブラケット取付部よりも下方の下端を縮径して形成される縮径部とを有するアウターシェルと、
前記アウターシェルの下端に溶接されて前記アウターシェルの下端を閉塞するロアキャップとを備え、
前記ロアキャップは、円盤状の鏡部と前記鏡部の外周から反アウターシェル側へ突出する環状のスカート部とを有して前記鏡部と前記スカート部とで凹部を形成するロアキャップ本体と、前記鏡部を貫通して前記アウターシェル内にガスおよび液体の一方または両方を注入を可能とする注入口と、前記鏡部に溶接されて前記注入口を閉塞する蓋とを有し、
前記スカート部の外周が前記縮径部の下端に溶接されている
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記スカート部の下端は、前記蓋の下端よりも下方に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるピストンロッドとを備え、たとえば、車両におけるサスペンションに組み込まれて使用され、アウターシェルに対してピストンロッドが軸方向に移動する伸縮時に減衰力を発揮して車体と車輪の振動を抑制する。このようにサスペンションに組み込まれる緩衝器は、たとえば、車両の車体にピストンロッドを連結するマウントと、車輪を保持するナックルにアウターシェルを連結するためのブラケットとによって、車体と車輪との間に介装される。
【0003】
サスペンションがダブルウイッシュボーンである場合、アウターシェルTは、図3に示すように、ブラケットBを介してナックルに連結される代わりに、ナックルを揺動自在に車体に連結するロアアームに連結される場合がある。
【0004】
加えて、緩衝器が駆動輪を懸架するサスペンションに組み込まれる場合、ブラケットBは、ドライブシャフトを避けてドライブシャフトの上方にアウターシェルTを配置させる必要がある。よって、ブラケットBは、アウターシェルTの下端を把持する筒状の把持部b1と、把持部b1から二股に伸びて内方にドライブシャフトが挿通されるフォークb2とを備えて構成される。
【0005】
したがって、このようなブラケットBが装着される緩衝器にあっては、アウターシェルTの下端外周に取り付けたストッパSよりも下方にブラケットBが装着されるブラケット取付部t1が形成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
このような従来の緩衝器では、アウターシェルTの下端にロアキャップCと称されてアウターシェルTの下端を閉塞する円盤状の蓋部材が溶接によって取り付けられる。具体的には、ロアキャップCは、アウターシェルTの下端径を一段絞って形成した小径部t2に溶接されており、このように小径部t2を設けることで溶接後にアウターシェルTの下端とロアキャップCの外周に生じるビードがブラケットBの下端側からの挿入の際に邪魔とならずに済む。よって、ブラケット取付部t1は、アウターシェルTの下端側であって前記小径部t2と前記ストッパSとの間の径の変化がない部分で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-82492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そして、このロアキャップCには、内部にバルブやシリンダといった緩衝器を構成する種々の部品が組み込まれた後に、アウターシェルT内に作動油とガスとを注入する注入口が設けられる場合がある。作動油とガスの注入後、ロアキャップに設けられた注入口にアウターシェルを仮封止するプラグが挿入されたうえ、ワッシャと称される円盤状の蓋WをロアキャップCに溶接機によってプロジェクション溶接して注入口の出口が閉塞される。
【0009】
ロアキャップCは、溶接機における溶接を行う機械が蓋Wの溶接の邪魔とならないように円盤状とされる他、下方に突出する凸部c1を備えており、注入口は、凸部c1に開口している。蓋Wは、ロアキャップCの本体から下方に突出する凸部c1に溶接されるので、必然的にロアキャップCから下方へ突出することになる。
【0010】
このように構成された緩衝器を前述のブラケットBを利用してダブルウイッシュボーン形式のサスペンションへ組み込むのであるが、ブラケットBに作用する曲げ力に対して十分な連結強度を得るために、把持部b1の長さを長くしたい場合がある。
【0011】
把持部b1の長さを長くするためには、アウターシェルTにおけるブラケット取付部t1の長さも必然的に長くなるが、このようにすると、緩衝器をサスペンションに組み込んだ際に、ロアキャップCから下方へ突出する蓋Wがブラケット取付部t1の長さを長くした分だけ下方へ配置されることになり、蓋Wがドライブシャフトに干渉する可能性がある。
【0012】
そうかと言って、アウターシェルTに前述の小径部t2を設ける際に、アウターシェルTの径を急激に絞って小径部t2を設けてブラケット取付部t1と小径部t2との間の部分の長さを短くしようとすると、形状変化が激しくなり強度面の問題が生じるために、ブラケット取付部t1と小径部t2との間の部分t3の長さも切り詰め難い。
【0013】
したがって、従来の緩衝器には、ブラケット取付部t1の長さを確保しようとしても車両側の部品との干渉が避けられず、車両への搭載が難しいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、車両への搭載性を損なわずにブラケット取付部の長さを長くできる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、筒状であって下端側外周に車両の車輪を支持するブラケットが嵌合されるブラケット取付部とブラケット取付部よりも下方の下端を縮径して形成される縮径部とを有するアウターシェルと、アウターシェルの下端に溶接されてアウターシェルの下端を閉塞するロアキャップとを備え、ロアキャップは、円盤状の鏡部と鏡部の外周から反アウターシェル側へ突出する環状のスカート部とを有して鏡部とスカート部とで凹部を形成するロアキャップ本体と、鏡部を貫通してアウターシェル内にガスおよび液体の一方または両方の注入を可能とする注入口と、鏡部に溶接されて注入口を閉塞する蓋とを備え、スカート部の外周が縮径部の下端に溶接されている。このように構成された緩衝器によれば、アウターシェルの全長を長くしてもアウターシェルの上端から蓋までの長さを従来の緩衝器のアウターシェルから蓋までの長さと同等にできるとともに、ロアキャップの溶接部位をロアキャップの下端に近づけることができるため、アウターシェルの全長を伸ばすうえで有利となり、より効果的にブラケット取付部の全長を長くできる。
【0016】
また、ロアキャップのスカート部の下端が蓋の下端よりも下方に突出していてもよく、このように構成された緩衝器によれば、蓋を完全に凹部内に収容でき、蓋を保護できる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明の緩衝器によれば、車両への搭載性を損なわずにブラケット取付部の長さを長くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態における緩衝器の側面図である。
図2】一実施の形態における緩衝器の下端部の拡大断面図である。
図3】従来の緩衝器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、緩衝器Dは、筒状であって下端側外周に図示しない車両の車輪を支持するブラケット3が嵌合されるブラケット取付部1aを有するアウターシェル1と、アウターシェル1の下端1bに溶接されてアウターシェル1の下端1bを閉塞するロアキャップ2とを備えて構成されており、ブラケット3を利用して車両における図示しないロアアームに連結される。
【0021】
緩衝器Dは、詳しくは図示しないが、筒状のアウターシェル1と、アウターシェル1の下端を閉塞するロアキャップ2と、アウターシェル1内に挿入されたシリンダ4と、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッド5と、ピストンロッド5に連結されるとともにシリンダ4内に挿入されてシリンダ4内を伸側室と圧側室6とに区画するピストンとを備えている。
【0022】
伸側室と圧側室6は、作動油が充填されている。また、緩衝器Dに使用される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体でもよい。アウターシェル1とシリンダ4との間の環状隙間は、リザーバ8として利用され、液体として作動油とガスが充填されている。
【0023】
ピストンは、伸側室と圧側室6とを連通する伸側ポートと圧側ポートを備えており、ピストンの上面と下面にはそれぞれ圧側のリーフバルブと伸側のリーフバルブが積層される。伸側のリーフバルブは、伸側ポートの下端を閉塞しており、伸側室の圧力によって撓むことで伸側ポートを開放して伸側室から圧側室6へ向かう液体の流れに抵抗を与える。圧側のリーフバルブは、圧側ポートの上端を閉塞しており、圧側室6の圧力によって撓むことで圧側ポートを開放して圧側室6から伸側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0024】
なお、アウターシェル1の上端には、ピストンロッド5の外周に摺接するロッドガイドが装着されている。また、シリンダ4の下端には、バルブケース7が嵌合されており、アウターシェル1の下端に溶接されたロアキャップ2とロッドガイドとでシリンダ4とバルブケース7が挟持されてアウターシェル1に対して固定される。
【0025】
また、バルブケース7は、リザーバ8と圧側室6とを連通する吸込ポート7aと排出ポート7bとを備えている。吸込ポート7aの上端は、環状のチェックバルブ9によって閉塞されている。チェックバルブ9は、リザーバ8の圧力が圧側室6の圧力よりも高くなると撓んで吸込ポート7aを開放してリザーバ8から圧側室6へ向かう液体の流れを許容するが、圧側室6からリザーバ8へ向かう液体の流れを阻止する。排出ポート7bの下端は、環状のベースバルブ10によって閉塞されている。ベースバルブ10は、圧側室6の圧力によって撓むことで排出ポート7bを開放して圧側室6からリザーバ8へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0026】
緩衝器Dは、アウターシェル1に対してピストンロッド5が上方へ移動する伸長時には、ピストンによって圧縮される伸側室から拡大する圧側室へ移動する液体の流れに対して伸側のリーフバルブが抵抗を与えて伸長を妨げる減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長時には、チェックバルブ9が開いて作動油が吸込ポート7aを介してリザーバ8から圧側室6へ供給され、ピストンロッド5がシリンダ4内から退出する体積が補償される。他方、緩衝器Dは、アウターシェル1に対してピストンロッド5が下方へ移動する収縮時には、ピストンによって圧縮される圧側室から拡大する伸側室へ移動する液体の流れに対して圧側のリーフバルブが抵抗を与える。また、緩衝器Dの収縮時には、ベースバルブ10が開いて作動油が排出ポート7bを介して圧側室6からリザーバ8へ排出され、ピストンロッド5がシリンダ4内へ侵入する体積が補償される。よって、緩衝器Dは、収縮時には、圧側のリーフバルブとベースバルブ10とにより収縮を妨げる減衰力を発生する。なお、ピストンに積層される圧側のリーフバルブは、チェックバルブとされてもよく、その場合には圧側の減衰力はベースバルブ10のみによって発生される。
【0027】
また、前述した緩衝器Dは、いわゆる複筒型の緩衝器とされているが、アウターシェル1の内周にピストンを摺接させてアウターシェル1内をピストンで伸側室と圧側室とに区画するいわゆる単筒型の緩衝器とされてもよい。
【0028】
アウターシェル1の下端外周には、図1および図2に示すように、C型のストッパ11が溶接されており、アウターシェル1の外周であってストッパ11より下方にブラケット3が装着される途中で外径が変化しないブラケット取付部1aが設けられている。ストッパ11は、C型であってアウターシェル1の外周に嵌合される本体11aと、本体11aの終端から径方向へ突出して本体11aよりも下方へ延びるガイド片11bとを備えている。ガイド片11bは、後述するブラケット3の位置合わせのために利用される。
【0029】
アウターシェル1におけるブラケット取付部1aには、水平方向へ沿って凹部1cが設けられている。凹部1cは、水平方向から見て円弧状のへこんだ形状とされている。
【0030】
アウターシェル1のブラケット取付部1aより下方は、ロアキャップ2のアウターシェル1の下端1bへの溶接の際に生じるビード12がブラケット3の取付けの邪魔にならないように、縮径されて縮径部1dが形成されている。
【0031】
ブラケット3は、アウターシェル1のブラケット取付部1aを抱持する割り入りのC型の抱持部3aと、抱持部3aの一端に設けられてボルト13の挿通を供する図外の孔を備えたボルト受部3bと、抱持部3aの他端に設けられてボルト受部3bに対向するナット部3cと、抱持部3aから下方へ延びる一対のアームで形成される二股のフォーク部3dとを備えている。以上、本実施の形態では、ブラケット3は、所謂フォークブラケットとされている。
【0032】
このように構成されたブラケット3は、以下のようにしてアウターシェル1に装着される。まず、アウターシェル1の下方からアウターシェル1の下端を抱持部3a内に挿入して、抱持部3aの上端をストッパ11の下端に当接させるとともに、ガイド片11bを抱持部3aの割内に挿入する。すると、ブラケット3の抱持部3aは、ガイド片11bによって周方向への僅かな回転のみが許容されるものの、ストッパ11の本体11aによってアウターシェル1に対する上方への移動が規制されて、アウターシェル1のブラケット取付部1aの外周に位置決められる。そして、ボルト13をボルト受部3bの孔に挿入してからナット部3cにねじ込んでいくと、抱持部3aの両端がボルト13のねじ込みによって互い引き寄せられ、抱持部3aは、縮径してアウターシェル1のブラケット取付部1aを強く緊迫して把持する。加えて、ボルト13は、アウターシェル1に設けた凹部1c内に挿入された状態でブラケット3とともにアウターシェル1に装着されており、これによって、ブラケット3のアウターシェル1からの抜けと、周方向への回転が阻止され、ブラケット3が強固にアウターシェル1に固定される。
【0033】
ロアキャップ2は、図2に示すように、円盤状の鏡部20aと鏡部20aの外周から反アウターシェル側となる図2中下方へ突出する環状のスカート部20bとを有して鏡部20aとスカート部20bとで凹部20cを形成するロアキャップ本体20と、鏡部20aを貫通してアウターシェル1内にガスおよび液体の注入を可能とする注入口21と、鏡部20aに溶接されて注入口21を閉塞する蓋22とを備えている。
【0034】
鏡部20aは、下端の中央に球状に下方へ突出する凸部20dを備えるほか、アウターシェル側端となる図2中上端にバルブケース7が嵌合される嵌合凹部20eを備えている。注入口21は、凸部20dから開口して鏡部20aを貫通して嵌合凹部20eに通じ、アウターシェル1内を緩衝器D外へ連通している。
【0035】
スカート部20bは、鏡部20aの外周に沿って環状に下方へ向けて突出している。つまり、スカート部20bは、鏡部20aの外周の全周を取り囲むように形成されている。スカート部20bの下端から鏡部20aの下面までの高さは、凸部20dの高さに凸部20dに溶接される蓋22の高さを足した合計高さと等しいか或いは前記合計高さよりも高く、スカート部20bは、蓋22の下端よりも下方に突出している。このスカート部20bの内方であって鏡部20aの下方には、円盤状の凹部20cが形成されており、蓋22の全体は、凹部20cに完全に収容されている。なお、スカート部20bの下端から鏡部20aの下面までの高さを前記合計高さ以上とすることで、寸法誤差や加工の都合によって蓋22の一部がスカート部20bの下端から下方へ突出したとしても、蓋22の突出量をごく少なくできる。
【0036】
このように構成されたロアキャップ2は、スカート部20bのみがアウターシェル1の下端1bから突出した状態でアウターシェル1の下端1bの内周に嵌合された後、スカート部20bとアウターシェル1の下端1bとが全周に亘って溶接される。スカート部20bの外周とアウターシェル1の下端1bの下面との間には、溶接によるビード12が形成されるが、アウターシェル1のブラケット取付部1aよりも下端1b側に縮径部1dが設けられており、ビード12の外径がブラケット3の抱持部3aの内径よりも小径となってブラケット3の取付けに邪魔にならないように配慮されている。
【0037】
このようにしてアウターシェル1の下端1bにロアキャップ2を装着し、アウターシェル1に緩衝器Dを構成するシリンダ4、ピストンロッド5、ピストン、バルブケース、バルブ類、ロッドガイド等の全部品を組み付ける。このようにして緩衝器Dの機械部品の組み立てが完了すると、注入口から作動油とガスの注入が行われ、リザーバ8内にガスと作動油が充填されるとともに、伸側室と圧側室6とに作動油が充填される。なお、緩衝器Dが単筒型の緩衝器の場合、緩衝器の下端側に気室が形成されることから、前記注入口21から注入されるのはガスのみとなる。また、緩衝器Dの構成によっては、注入口21は、ガスの注入には利用されず液体のみを注入に利用される場合もある。
【0038】
緩衝器D内への作動油とガスの注入が済むと、注入口21にプラグ23を嵌合して注入口21を仮封止する。注入口21のプラグ23による仮封止の後、ロアキャップ2の凸部20dに蓋22を載置して注入口21の開口端を蓋22で覆う。そして、図示しない溶接機で蓋22を凸部20dにプロジェクション溶接することで蓋22をロアキャップ本体20に固定すると、注入口21が完全に閉塞されてアウターシェル1内が封止される。
【0039】
本実施の形態の緩衝器Dでは、ロアキャップ2が凹部20cを備えており、凹部20cを設けることで、注入口21を閉塞する蓋22の下端がロアキャップ2の下端から下方へ突出する突出量を低減できる。本実施の形態の場合、蓋22が凹部20cに完全に収容されているので、突出量はゼロになっている。
【0040】
このように、蓋22がロアキャップ2の下端から下方へ突出する突出量が低減されるので、アウターシェル1の全長を従来の緩衝器より伸ばしてロアキャップ2をアウターシェル1の下端1bに溶接しても、蓋22の突出量が低減されている分、アウターシェル1の上端から蓋22までの長さは従来の緩衝器のアウターシェルTから蓋Wまでの長さと同等にできる。つまり、従来の緩衝器では、図3に示すように、ロアキャップCを溶接部分と蓋Wの下端との間に無駄な長さL2が生じていたが、図2に示すように、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロアキャップ2に凹部20cを設けたことから溶接部分と蓋22の下端との間の長さL1が短くなる。したがって、その分だけ、アウターシェル1の全長を長くしても、アウターシェル1の上端から蓋22までの長さは従来の緩衝器のアウターシェルTから蓋Wまでの長さと同等にできる。そして、アウターシェル1の全長を長くした分だけ、ブラケット取付部1aの全長を長くすることができ、ブラケット3のアウターシェル1への連結強度を向上することができる。また、アウターシェル1の全長を従来の緩衝器のアウターシェルTよりも長くしてもアウターシェル1の上端から蓋22までの長さは従来の緩衝器のアウターシェルTから蓋Wまでの長さと同等にできるので、緩衝器Dを図示しないダブルウイッシュボーン形式のサスペンションに組み込んでも蓋22がドライブシャフトに干渉する恐れもない。
【0041】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、筒状であって下端側外周に車両の車輪を支持するブラケット3が嵌合されるブラケット取付部1aを有するアウターシェル1と、アウターシェル1の下端1bに溶接されてアウターシェル1の下端1bを閉塞するロアキャップ2とを備え、ロアキャップ2は、円盤状の鏡部20aと鏡部20aの外周から反アウターシェル側へ突出する環状のスカート部20bとを有して鏡部20aとスカート部20bとで凹部20cを形成するロアキャップ本体20と、鏡部20aを貫通してアウターシェル1内にガスおよび作動油(液体)の注入を可能とする注入口21と、鏡部20aに溶接されて注入口21を閉塞する蓋22とを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、アウターシェル1の全長を長くしてもアウターシェル1の上端から蓋22までの長さを従来の緩衝器のアウターシェルTから蓋Wまでの長さと同等にできるので、車両への搭載性を損なわずにブラケット取付部1aの長さを長くできる。
【0042】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロアキャップ2のスカート部20bの下端が蓋22の下端よりも下方に突出しているので、蓋22を完全に凹部20c内に収容できるから、蓋22を保護できる。
【0043】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロアキャップ2のスカート部20bの外周がアウターシェル1の下端1bに溶接されているので、ロアキャップ2の溶接部位をロアキャップ2の下端に近づけることができるため、アウターシェル1の全長を伸ばすうえで有利となり、より効果的にブラケット取付部1aの全長を長くすることができる。
【0044】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、ブラケット3がフォークブラケットとされていて緩衝器Dがサスペンションのロアアームに連結される態様となっているが、ブラケット3は、たとえば、特開2002-1953331の図1に示されているような車輪を回転可能に保持するナックルから延長されるものであってもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・アウターシェル、1a・・・ブラケット取付部、1b・・・アウターシェルの下端、2・・・ロアキャップ、3・・・ブラケット、20・・・ロアキャップ本体、20a・・・鏡部、20b・・・スカート部、20c・・・凹部、21・・・注入口、22・・・蓋
図1
図2
図3