(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ガラス保持金具及び建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/60 20060101AFI20230904BHJP
E06B 3/24 20060101ALI20230904BHJP
E06B 3/67 20060101ALI20230904BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
E06B3/60
E06B3/24
E06B3/67 A
E06B5/16
(21)【出願番号】P 2020060731
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
(72)【発明者】
【氏名】亀田 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 理史
(72)【発明者】
【氏名】春山 幸浩
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-65559(JP,A)
【文献】特開2019-127768(JP,A)
【文献】特開2010-248836(JP,A)
【文献】特開2010-248837(JP,A)
【文献】特開2010-255206(JP,A)
【文献】特開2019-85822(JP,A)
【文献】特開2019-85831(JP,A)
【文献】特開2019-85833(JP,A)
【文献】特開2019-85834(JP,A)
【文献】特開2007-31992(JP,A)
【文献】特開2011-6874(JP,A)
【文献】特開2012-140785(JP,A)
【文献】特開2013-83133(JP,A)
【文献】特開2014-114558(JP,A)
【文献】特開2014-194119(JP,A)
【文献】実開昭48-79144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/04-3/46
E06B 3/50-3/88
E06B 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの周縁部を収容するガラス収容部を有する枠体の、前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの一方の面と対面する第一対面部を有し前記枠体に固定される固定金具と、
前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの他方の面と対面する第二対面部を有し前記固定金具に係止される係止金具と、
を有し、
前記第一対面部は、前記ガラスとは反対側に突出し、前記ガラス収容部をなす前記枠体の部位に当接される枠体当接部を有していることを特徴とするガラス保持金具。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス保持金具であって、
前記枠体当接部は、見込み方向の押圧力に対して弾性変形可能であることを特徴とするガラス保持金具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガラス保持金具であって、
前記枠体当接部は、前記第一対面部の縁から前記ガラスとは反対側に延出され、前記第一対面部に沿う方向と鋭角をなす方向に屈曲されていることを特徴とするガラス保持金具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガラス保持金具と、
前記ガラス保持金具により周端部が保持される前記ガラスと、
前記ガラス保持金具が設けられる前記ガラス収容部を有する前記枠体と、
を有することを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具であって、
前記ガラスは、耐熱強化ガラスを含む3枚以上のガラス板を有するガラスユニットであることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの周縁部を保持するガラス保持金具及びガラス保持具を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス保持金具として、框体の内側に納められるガラスが外れないように、框体に設けられるガラス外れ止め部材は知られている(例えば、特許文献1参照)。このガラス外れ止め部材は、框体の見込み面に固定される金属製の保持金具と、保持金具によって保持される金属製の押さえ片と、で構成されている。保持金具は、框体の見込み面との間に隙間を形成する台部と、台部の両側に配置される取付部と、台部の端部からガラス側に向かって延出された延出片と、を有している。押さえ片は、ガラスの端部に対向する押さえ部と、押さえ部の下部から室内側に延びる係合部と、を有し、係合部が保持金具の台部に設けられた係合孔に係合することで押さえ片が保持金具に係合固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のガラス外れ止め部材は、框体に固定される保持金具により位置決めされるが、保持金具は固定されるまでは、框体の長手方向に移動しやすく、所定の位置に留めておくことが難しいため、ガラス外れ止め部材を所望の位置に配置し難いという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、枠体の長手方向において所望の位置に配置し易いガラス保持金具及びこのガラス保持金具を備えた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、ガラスの周縁部を収容するガラス収容部を有する枠体の、前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの一方の面と対面する第一対面部を有し前記枠体に固定される固定金具と、前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの他方の面と対面する第二対面部を有し前記固定金具に係止される係止金具と、を有し、前記第一対面部は、前記ガラスとは反対側に突出し、前記ガラス収容部をなす前記枠体の部位に当接される枠体当接部を有していることを特徴とするガラス保持金具である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体の長手方向において所望の位置に配置し易いガラス保持金具及びこのガラス保持金具を備えた建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る建具を屋外側から見た斜視図である。
【
図6】FIX枠における下の枠材と縦の枠材との接合部を示す斜視図である。
【
図7】下の枠材の押縁を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図10】ガラスユニットがガラス保持金具に保持されている状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、
図1に示すように、ガラスとして屋内外を仕切るガラスユニット2を備えたFIX窓用の建具1を例に挙げて説明する。
【0010】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具1を屋外側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0011】
本実施形態の建具1は、
図2、
図3に示すように、耐熱強化ガラスを含む3枚のガラス板20、21、22を備えた、所謂トリプルガラスでなるガラスユニット2と、ガラスユニット2の周端部を収容するガラス収容部3aを備えた枠体としてのFIX枠3と、を有している。
【0012】
ガラスユニット2は、3枚のガラス板20、21、22が、周縁部に設けられたスペーサー2aにより互いに間隔を空けて対面させて配置され一体をなしている。3枚のガラス板20、21、22は、2枚のLow-Eガラス20、22と、1枚の耐熱強化ガラス21により構成されており、2枚のLow-Eガラス20、22の間に耐熱強化ガラス21が設けられている。
【0013】
FIX枠3は、合成樹脂製の押し出し成形材でなりガラスユニット2の上に位置する上の枠材30、ガラスユニット2の下に位置する下の枠材30、及び、ガラスユニット2の左右に位置する左右の縦の枠材30をなす4本の枠材30が矩形状に接合された枠本体31と、各枠材30に嵌合される押縁32と、を有している。
【0014】
4本の枠材30は、長尺の成形材を所定の長さに切断して形成されているため同一の断面形状をなしている。各枠材30の端部は長手方向に対して45度の角度をなすように切断され、互いに隣り合う枠材30の端部同士を突き合わせた状態で溶着し矩形状の枠本体31が形成されている。各枠材30の断面形状は同一なので、ここでは、図面にて下の枠材30を示して枠構造を説明する。以下の説明では、各枠材30に共通する説明となるように、下の枠材30の上側を、枠本体31の内周側(以下、内周側という)とし、下の枠材30の下側を枠本体31の外周側(以下、外周側という)として説明する。
【0015】
下の枠材30は、
図4に示すように、ガラスユニット2がセッティングブロック4を介して載置され当該ガラスユニット2の端面2bと対向する枠見込み面部30aと、枠見込み面部30aの屋内側にて内周側に突出する枠内周突出部30bと、枠見込み面部30aの屋外側に設けられ押縁32が嵌合される枠押縁嵌合部30cと、枠見込み面部30aの外周側に間隔を空けて対向する枠外周対向面部30dと、枠外周対向面部30dから外周側に延出されて躯体6に固定される躯体固定部30eと、を有している。
【0016】
枠見込み面部30aの屋内側の縁から内周側に突出する枠内周突出部30bは、突出している先端側に屋外側に向かって突出させて設けられるビード7が嵌合される枠ビード嵌合部30fを有しており、枠内周突出部30bにおける枠ビード嵌合部30fよりも枠見込み面部30a側には、枠ビード嵌合部30fの屋外側の縁と、見込み方向においてほぼ同じ位置に枠見付け面30gが形成されている。
【0017】
下の枠材30の枠見込み面部30aと枠外周対向面部30dとの間には、長手方向に貫通する枠中空部30hが設けられている。枠中空部30hは、枠見込み面部30aの見込み方向における両端部から外周側に延出されて枠外周対向面部30dと繋がる2つの枠連結壁部30iによって仕切られてほぼ矩形状をなしている。2つの枠連結壁部30iは、見込み方向において互いに対向している。
【0018】
枠中空部30h内には、長手方向に沿い全長にわたってアルミニウム合金製の押し出し成形材でなる補強部材8が設けられている。補強部材8については後述する。
【0019】
枠押縁嵌合部30cは、枠見込み面部30aよりも屋外側に設けられ、枠見込み面部30aよりも外周側に窪んでおり、押縁32の嵌合片32aが嵌合される。枠押縁嵌合部30cは、屋外側の枠連結壁部30iの屋外側にて枠見込み面部30aよりも外周側に位置する枠底部30jを有する2つの枠凹部30k、30lのうちの屋外側の枠凹部30kである。屋内側の枠凹部30lの屋内側の縁30mは、枠見込み面部30aの屋外側の縁と繋がり、外周面が円弧状をなしている。
【0020】
押縁32は、嵌合片32aが枠押縁嵌合部30cに嵌合された状態で、枠内周突出部30bと見込み方向に対向し、枠本体31とともにガラスユニット2の周縁部が収容されるガラス収容部3aを形成する。すなわち、ガラス収容部3aは、枠本体31に嵌合された押縁32と、屋内側の枠凹部30lと、枠見込み面部30aと、枠内周突出部30bとにより囲まれた空間である。
【0021】
ガラス収容部3aに周縁部が収容されたガラスユニット2は、ガラス収容部3aに設けられるセッティングブロック4により面内方向の位置が規制されてガラス保持金具9に保持され、枠内周突出部30bのビード7と、押縁32の先端に設けられたビード32bとにより挟持される。このとき、ガラスユニット2の屋内側の面2cは、枠内周突出部30bのビード7に押圧され、枠内周突出部30bの枠見付け面30gと見込み方向に間隔を空けて配置されている。また、ガラスユニット2の屋外側の面2dは、枠見込み面部30aと屋内側の枠凹部30lとの境界付近に位置している。ガラス保持金具9については後述する。
【0022】
躯体固定部30eは、枠外周対向面部30dにおいて枠中空部30hとは反対側となる外周面側から外周方向に延出されており、枠中空部30hを仕切る屋外側の枠連結壁部30iより僅かに屋内側に設けられている。このため、ガラス収容部3aに周縁部が収容されたガラスユニット2は、最も屋外側に位置するガラス板(以下、最外ガラス板という)20が、躯体固定部30eを上方に延長した位置に配置されており、最外ガラス板20よりも屋内側の部位が躯体6上に位置している。
【0023】
下の枠材30の躯体固定部30eは、屋外側から進入するビス33により躯体6に固定されるが、上及び縦の枠材30の躯体固定部30eは、
図2、
図3に示すように、補強金具5と共に屋外側から進入するビス33により躯体6に固定される。尚、下の枠材30の躯体固定部30eも補強金具5と共に屋外側から進入するビス33により躯体6に固定されていても構わない。
【0024】
枠中空部30hに設けられている補強部材8は、枠見込み面部30aと対向し見込み方向のほぼ全域に設けられる見込み面補強部8aと、見込み面補強部8aから外周方向に延出された2つの延出補強部8bと、を有している。見込み面補強部8aは、枠見込み面部30aの反対側に設けられる後述する固定金具90を固定するビス34が螺合可能な厚みを有している。見込み面補強部8aの枠見込み面部30a側の面には、長手方向に沿う凹部8cが屋内側の端部近傍と、見込み方向における中央より屋外側寄りの部位との2カ所に設けられており、凹部8c内には、加熱発泡材10が設けられている。
【0025】
2つの延出補強部8bは、見込み方向に互いに間隔を空けて設けられており、それぞれ見込み面補強部8aに設けられた加熱発泡材10の屋外側の端部近傍に配置されている。屋外側の延出補強部8bの先端には、見込み方向における両方向に延出された補強部材延出片8dが設けられており、屋内側の延出補強部8bの先端には、屋内側に延出された補強部材延出片8dが設けられている。屋外側の延出補強部8bの先端にて屋内側に延出された補強部材延出片8dは、上及び縦の枠材30において、躯体固定部30eとともに躯体6の見付け面6aに固定される補強金具5と補強部材8とを繋ぐビス35が螺合可能な厚みを有している。
【0026】
補強金具5は、
図2、
図3、
図5に示すように、上及び縦の枠材30の躯体固定部30eの外周側の面に沿わされる第一板部5aと、第一板部5aと繋がり上及び縦の枠材30の枠外周対向面部30dの屋内側の面に沿わされる第二板部5bとを有してL字状に形成されている。第二板部5bが枠外周対向面部30dを貫通して補強部材延出片8dにビス止めされ、第一板部5aが躯体固定部30eと共に躯体6の見付け面6aと対面して当接し当該躯体6に固定される。このため、上及び縦の枠材30に設けられるガラス保持金具9は、補強部材8、補強金具5を介して躯体6と繋がって取り付けられている。
【0027】
ガラス保持金具9及びセッティングブロック4は、
図6、
図7に示すように、各枠材30のガラス収容部3aに、枠材30の長手方向に1つ、または、互いに間隔を空けて並べて複数設けられている。
【0028】
セッティングブロック4は、
図8に示すように、ガラスユニット2の面内方向の位置を規制する合成樹脂製の部材である。セッティングブロック4は、枠見込み面部30aに当接される見込み面当接部4aと、見込み面当接部4aと、平行な平面をなし、ガラスユニット2の端面2bと対面するガラス対面部4bと、を有している。
【0029】
ガラス対面部4bは、枠見込み面部30aの見込み方向の幅とほぼ同じ幅を有しており、見込み面当接部4aは、枠見込み面部30aの見込み方向において屋外側のほぼ半分と対面するように設けられている。セッティングブロック4の枠見込み面部30a側における屋内側の部位は、見込み面当接部4aが枠見込み面部30aに当接したときに、枠見込み面部30aとの間に空隙Sが形成される。セッティングブロック4と枠見込み面部30aとの間の空隙Sには、加熱発泡材10が設けられている。
【0030】
ガラス保持金具9は、
図9に示すように、屋内側に配置され枠本体31に固定される固定金具90と、室外側に配置され固定金具90に係止される係止金具91とを有している。固定金具90及び係止金具91はいずれも、例えばステンレスなどの金属製の板材により形成されており、板材のたわみにより弾性変形可能である。
【0031】
固定金具90は、左右方向に間隔を空けて配置され枠本体31の枠見込み面部30aに固定される2つの枠固定部90aと、2つの枠固定部90aの間を繋ぎ枠見込み面部30aと内外周方向に間隔を空けて対面する枠対向部90bと、枠対向部90bの屋内側の縁から内周側に延出された第一対面部としての屋内内周延出部90cと、を有している。枠固定部90aは各々ビス34により枠見込み面部30aを貫通し枠中空部30hに設けられている補強部材8に固定される。
【0032】
枠対向部90bは、枠見込み面部30aとの間に、係止金具91の挿入部91aが挿入可能に、挿入部91aの厚みよりも僅かに広く間隔が空けられており、係止金具91の係止片91bを係止する係止孔90dが、見込み方向において屋内側に偏った位置に設けられている。
【0033】
屋内内周延出部90cは、ガラスユニット2における周縁部の一方の面としての屋内側の面2cと対向する部位であり、左右方向における両端部から屋内側に突出するように延出された枠体当接部としての屋内延出片90eが設けられている。屋内延出片90eは、屋内内周延出部90cから左右方向に離れるに連れて屋内側に位置する傾斜を有している。この傾斜は、屋内内周延出部90cに沿う仮想線Lに対して鋭角をなしている。
【0034】
固定金具90は、屋内延出片90eの先端が、枠内周突出部30bの枠見付け面30gに当接する状態で枠固定部90aが枠見込み面部30aに固定される。このとき、ガラスユニット2の屋内側の面2cが屋内内周延出部90cに当接すると、枠内周突出部30bのビード7がガラスユニット2との間で押圧されて枠本体31とガラスユニット2との間が止水される。
【0035】
係止金具91は、固定金具90の枠対向部90bと、枠見込み面部30aとの間に挿入される挿入部91aと、挿入部91aの屋外側の縁から内周側に延出された第二対面部としての屋外内周延出部91cと、を有している。挿入部91aには、先端側に固定金具90の係止孔90dに係止される係止片91bが設けられている。係止片91bは、挿入部91aの一部が曲げ起こされており、屋内側から屋外側に向かって高くなる傾斜を有している。
屋外内周延出部91cは、ガラスユニット2における周縁部の他方の面としての屋外側の面2dと対向する部位であり、屋内側には合成樹脂でなる緩衝材11が設けられている。
【0036】
FIX枠3にガラスユニット2を取り付ける方法は、まず、各枠材30にセッティングブロック4及び固定金具90を取り付ける。セッティングブロック4は、下の枠材30には、載置するだけでも構わない。取り付けられた固定金具90は、屋内延出片90eの先端が、枠材30の枠見付け面30gに当接している。この状態で、固定金具90の屋内内周延出部90cの屋外側の面が、ガラスユニット2の屋内側の面2cが配置されるべき位置に配置されている。ここで、枠見付け面30gが、枠体当接部が当接される枠体部位に相当する。
【0037】
次に、枠本体31にセッティングブロック4及び固定金具90が取り付けられた状態で、ガラスユニット2を、下の枠材30に設けられているセッティングブロック4上に載置するとともに各枠材30に設けられているセッティングブロック4の内周側に配置し、屋内側の面2cを固定金具90の屋内内周延出部90cと対向させる。
【0038】
次に、係止金具91の挿入部91aを固定金具90の枠対向部90bと枠見込み面部30aとの間に挿入する。このとき、屋内側の枠凹部30lの屋内側の縁30mと枠見込み面部30aの屋外側の縁とが繋がる部位の外周面が円弧状をなしているので、挿入部91aの先端が枠対向部90bと枠見込み面部30aとの間に案内される。挿入部91aが挿入されて係止片91bが枠対向部90bと接触し、さらに係止金具91を屋内側に押圧することにより係止片91bが外周側に押されて弾性変形しつつ挿入部91aが枠対向部90bと枠見込み面部30aとの間に進入していく。
【0039】
その後、係止片91bが係止孔90dの外周側に至ると、押し曲げられていた係止片91bが弾性により復帰して係止孔90dに係止される。このとき
図10に示すように、係止金具91が固定金具90に係止された状態で、固定金具90の屋内内周延出部90cがガラスユニット2の屋内側の面2cと対面し、係止金具91に設けられた緩衝材11がガラスユニット2の屋外側の面2dに当接して、ガラスユニット2が保持される。このとき、ガラス収容部3aにおいて見込方向における耐熱強化ガラス21と屋内側のLow-Eガラス22との間の位置にて、係止金具91の係止片91bが固定金具90の係止孔90dに係止されている。
【0040】
本実施形態の建具1によれば、枠本体31に固定された固定金具90に係止金具91を係止することにより、固定金具90の屋内内周延出部90cと、係止金具91の屋外内周延出部91cとによりガラスユニット2を挟んで保持することが可能である。特に、固定金具90及び係止金具91は、いずれも金属製なので、火災等により火炎に晒されてもガラスユニット2を保持し続けるので防火性に優れている。
【0041】
また、FIX枠3のガラス収容部3aに設けられて当該FIX枠3に固定される固定金具90の、ガラスユニットの屋内側の面2cと対面する屋内内周延出部90cには、対面するガラスユニット2とは反対側にFIX枠3の枠見付け面30gに当接される屋内延出片90eを有しているので、屋内延出片90eをFIX枠3の枠見付け面30gに当接させることにより、固定金具90がFIX枠3を構成する枠材30の長手方向に移動する際には摩擦力が生じて固定金具90が移動し難くなる。このため、固定金具90が所望の位置に配置された状態が維持され易いので、枠材30の長手方向において所望の位置に配置し易いガラス保持金具9を提供することが可能である。
【0042】
また、固定金具90は、見込み方向の押圧力に対して弾性変形可能な屋内延出片90eを有しているので、たとえば、輸送時などにガラスユニット2が見込み方向に移動し、ガラスユニット2と対面する屋内内周延出部90cを押圧したとしても、屋内延出片90eがFIX枠3に当接して弾性変形することによりガラスユニット2が衝撃を受けることを防止できる。このため、ガラスユニット2の損傷を防止することが可能である。すなわち、ガラスユニット2を見込み方向における所望の位置に配置しやすくする屋内内周延出部90cを有しつつもガラスユニット2が損傷し難いガラス保持金具9を提供することが可能である。
【0043】
上記実施形態においては、固定金具90に設けられた弾性変形可能な枠体当接部を、屋内内周延出部90cから延出させて設ける例について説明したがこれに限るものではない。たとえば、屋内内周延出部90cの屋内側の面に、コイルスプリングや、ゴム材などの弾性部材が備えられていても構わない。
【0044】
また、固定金具90は金属製の板材により形成されて、板材のたわみにより弾性変形可能であり、屋内延出片90eは、屋内内周延出部90cの縁からガラスユニット2とは反対側となる屋内側に突出するように延出され、屋内内周延出部90cに沿う方向と鋭角をなす方向に屈曲されて形成されているので、屋内内周延出部90cが見込み方向に押圧されると、枠見付け面30gに当接されている屋内延出片90eの先端が、枠見付け面30gに沿って摺動しつつ屋内内周延出部90cの端から屈曲してより小さな角度の鋭角をなすように弾性変形する。このため、固定金具90は単一の部材であっても弾性変形可能なので、製造性に優れるとともにコストを抑えることが可能である。
【0045】
上記実施形態においては、枠体当接部をなし屋内内周延出部90cに沿う方向と鋭角をなす屋内延出片90eが、屋内内周延出部90cから離れる方向に延出されている例について説明したが、これに限らず、例えば、
図11に示すように、屋内内周延出部90cの中央側に向かって鋭角をなすように延出されていても構わない。すなわち、屋内延出片90eは、屋内内周延出部90cに沿う仮想線Lに対して鋭角をなしていれば構わない。
【0046】
また、ガラス保持金具9により周端部が保持されるガラスユニット2を有する建具1によれば、ガラスユニット2を見込み方向における所望の位置に容易に配置することが可能であり、高い防火性能を備えることが可能である。
【0047】
また、ガラスとして耐熱強化ガラスを含む3枚のガラス板20、21、22を有するガラスユニット2を用いているので、より防火性に優れた建具1を提供することが可能である。
【0048】
上記実施形態においては、建具1が備えるガラスを3枚のガラス板を備えるガラスユニット2としたが、ガラスは単板であっても、2枚のガラス板でなる複層ガラスであっても、また4枚以上のガラス板を備えたガラスユニットであっても構わない。
【0049】
また、上記実施形態においては、FIX窓用の建具1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、引き違い窓用の建具、すべり出し窓用の建具、縦すべり出し窓用の建具など、ガラスを備えた障子を有する窓であって、障子の框体が備えるガラス収容部に設けられたガラス保持金具によりガラスの周縁部が保持されていても構わない。この場合には、框体が、ガラスの周縁部を収容するガラス収容部を有する枠体に相当する。
【0050】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0051】
ガラスの周縁部を収容するガラス収容部を有する枠体の、前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの一方の面と対面する第一対面部を有し前記枠体に固定される固定金具と、前記ガラス収容部に設けられ、前記ガラスの他方の面と対面する第二対面部を有し前記固定金具に係止される係止金具と、を有し、 前記第一対面部は、前記ガラスとは反対側に突出し、前記ガラス収容部をなす前記枠体の部位に当接される枠体当接部を有していることを特徴とするガラス保持金具である。
【0052】
このようなガラス保持金具によれば、枠体に固定された固定金具に係止金具を係止することにより、固定金具の第一対面部と、係止金具の第二対面部とによりガラスを挟んで保持することが可能である。特に、固定金具及び係止金具は、いずれも金属製なので、火災等により火炎に晒されてもガラスを保持し続けるので防火性に優れている。
【0053】
また、枠体のガラス収容部に設けられて当該枠体に固定される固定金具の、ガラスの一方の面と対面する第一対面部は、対面するガラスとは反対側に突出して枠体に当接される枠体当接部を有しているので、枠体当接部を枠体に当接させることにより、固定金具が枠体の長手方向に移動する際には摩擦力が生じて固定金具が移動し難くなる。このため、固定金具が所望の位置に配置された状態が維持され易いので、枠体の長手方向において所望の位置に配置し易いガラス保持金具を提供することが可能である。
【0054】
かかるガラス保持金具であって、前記枠体当接部は、見込み方向の押圧力に対して弾性変形可能であることを特徴とする。
このようなガラス保持金具によれば、枠体当接部は、見込み方向の押圧力に対して弾性変形可能なので、たとえば、輸送時などにガラスが見込み方向に移動し、ガラスと対面する第一対面部を押圧したとしても、ガラスとは反対側で枠体に当接している枠体当接部が弾性変形するためガラスが衝撃を受けることを防止できる。このため、ガラスの損傷を防止することが可能である。すなわち、ガラスを枠体の長手方向における所望の位置に配置しやすくする枠体当接部を有しつつもガラスが損傷し難いガラス保持金具を提供することが可能である。
【0055】
かかるガラス保持金具であって、前記枠体当接部は、前記第一対面部の縁から前記ガラスとは反対側に延出され、前記第一対面部に沿う方向と鋭角をなす方向に屈曲されていることを特徴とする。
【0056】
このようなガラス保持金具によれば、枠体当接部は、第一対面部の縁からガラスとは反対側に延出され、第一対面部に沿う方向と鋭角をなす方向に屈曲されているので、第一対面部が見込み方向に押圧されると、枠体に当接されている枠体当接部の先端が、枠体に沿って摺動しつつ第一対面部の端から屈曲してより小さな角度の鋭角をなすように弾性変形する。このため、単一の部材で弾性変形可能となるので、製造性に優れるとともにコストを抑えることが可能である。
【0057】
また、上記ガラス保持金具と、前記ガラス保持金具により周端部が保持される前記ガラスと、前記ガラス保持金具が設けられる前記ガラス収容部を有する前記枠体と、を有することを特徴とする建具である。
【0058】
このような建具によれば、ガラスを枠体の長手方向における所望の位置に容易に配置することが可能であり、防火性能が高い建具を提供することが可能である。
【0059】
かかる建具であって、前記ガラスは、耐熱強化ガラスを含む3枚以上のガラス板を有するガラスユニットであることを特徴とする。
このような建具によれば、ガラスが耐熱強化ガラスを含む3枚以上のガラス板を有するガラスユニットなので、より防火性に優れた建具を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 建具、2 ガラスユニット、2c 屋内側の面、2d 屋外側の面、
3 FIX枠、3a ガラス収容部、20 ガラス板(Low-Eガラス)、
21 ガラス板(耐熱強化ガラス)、22 ガラス板(Low-Eガラス)、
30 枠材、30g 枠見付け面、90 固定金具、90c 屋内内周延出部、
90e 屋内延出片、91 係止金具、91c 屋外内周延出部、