(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230904BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230904BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20230904BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230904BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230904BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
C09J133/00
C09J11/04
C09J7/10
(21)【出願番号】P 2020089495
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉城 武宣
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023672(JP,A)
【文献】特開2020-045386(JP,A)
【文献】特開2015-111619(JP,A)
【文献】特開2014-132049(JP,A)
【文献】特開2001-189582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
C09J 133/00
C09J 11/04
C09J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の粘着層と、該第一の粘着層上に熱伝導層と第二の粘着層とをこの順に有し、該第一の粘着層あるいは該第二の粘着層が少なくとも酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有し、該熱伝導層が少なくとも酸化亜鉛とアクリル粘着剤を含有し、更に該熱伝導層中の熱伝導性フィラー比率が60体積%以上であることを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
第一の粘着層、熱伝導層、および第二の粘着層が何れも酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有することを特徴とする前記請求項1記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器や、LED、EL等の照明及び表示機器など、種々の装置の放熱に利用される熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、演算素子や発光素子の著しい性能向上に伴い、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器や、LED、EL等の照明及び表示機器などの性能向上は著しい。一方、演算素子や発光素子の性能向上に伴い発熱量も著しく増加していることから、電子機器、照明及び表示機器等における放熱をどのように行うかは重要な課題となっている。熱対策として、演算素子や発光素子の発生する熱をできるだけ迅速に広い面積に拡散させて放熱する方法は冷却効率を上げることを目的としたもので、積極的に冷却をするものではないが、携帯電話やパソコンなどの小型電子機器や照明における冷却方法としては最も現実的なものである。特にバインダーとして、アクリル粘着剤を用いた熱伝導性シートは簡易に貼るだけで、冷却効果を得ることでき、かつ同時に発熱材料と放熱材料を接着できる簡便性を有している。
【0003】
このような熱を拡散させる熱伝導性シートの使用量は急速に拡大している。熱伝導性シートは一般的に、粘着性を有するバインダー成分中に熱伝導性フィラーを分散した複合材料であって、熱伝導性フィラーとしてはシリカやアルミナが多く用いられている。しかし、シリカとアルミナの熱伝導率は各々1W/m・K、30W/m・K程度であり、例えばアルミナを含有する熱伝導性シートでも、その熱伝導率は一般的に1~2W/m・K程に留まっている。近年では熱伝導性のフィラーとして窒化アルミニウムや窒化ホウ素が用いられる場合も出てきたが、これら窒化アルミニウムや窒化ホウ素は価格が高く、熱伝導性シートのコストが高くなるという問題があった。
【0004】
酸化亜鉛は、一般的な熱伝導性フィラーであるアルミナや窒化アルミニウムのほぼ中間の値の熱伝導率を有し、線膨張係数、硬度等の粉体物性、価格の面で比較的バランスの取れた材料であることから、熱伝導性シートの材料として種々検討がなされている。例えば、特許文献1には熱伝導性粘着シート形成用粘着剤組成物に、窒素含有モノマーを含む各種モノマー成分、カルボキシル基含有モノマー由来単位および/または単官能アクリル酸エステルモノマー由来単位を含むプレポリマー、酸化亜鉛及び分散剤を、それぞれ特定の割合で配合することにより、優れた粘着力と再剥離性を兼ね備えた熱伝導性を有する粘着シートが得られることが記載されており、特許文献2には酸化亜鉛と、酸化亜鉛以外の第二の熱伝導性フィラーを含有することにより、良好な密着性と高い熱伝導性を両立した熱伝導性発泡シートが得られることが記載されている。
【0005】
熱伝導性シートが含有するバインダーとしては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル粘着剤などが用いられる。特にアクリル粘着剤をバインダーとする熱伝導性シートは発熱機器とヒートシンクなどの放熱機器とを簡易に接着する目的で好ましく用いられる。例えば、特許文献3には酸価が5mgKOH/g以下のアクリル系粘着剤と熱伝導性粒子を含有する熱伝導性粘着組成物によりゲル化するおそれがなく、しかも粘着性及びタック性が不十分になるおそれのない熱伝導性粘着シートが記載されている。また一般的に熱伝導性シートの熱伝導性を向上させるには熱伝導性シート中の熱伝導性フィラーの比率を高めることが有効だが、熱伝導性フィラーの比率を高めることによって粘着剤の比率が低くなり高い粘着性を得ることが困難になるため、例えば特許文献4や特許文献5のように熱伝導層と粘着層を有する多層構造とすることで高い熱伝導性と高い粘着性を有する熱伝導性シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-189767号公報
【文献】特開2018-127616号公報
【文献】特開2014-132049号公報
【文献】特開2005-60594号公報
【文献】特開2010-123850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化亜鉛は前述の通り、熱伝導性やコストのバランスが取れていて良好な材料である。しかしながら、一般的に熱伝導性シートの熱伝導性フィラーとして用いられるのはアルミナや窒化ホウ素がほとんどで、特にアクリル粘着剤をバインダーとして用いる熱伝導性シートにおいて、酸化亜鉛はほとんど用いられていないのが現状であり、例えばアクリル粘着剤を含有する熱伝導性シートに熱伝導性フィラーとして酸化亜鉛を用いた場合、アルミナなどと比較して粘着力が低くなったり、あるいは高温高湿下で保管することで、粘着力が低下して、貼合できなくなったりする場合があった。
【0008】
本発明の目的は、高い熱伝導性を有し、粘着力が強く、高温高湿下で保管しても熱伝導性や粘着力の劣化のない熱伝導性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成の熱伝導性シートによって解決できることを見出した。
【0010】
(1)第一の粘着層と、該第一の粘着層上に熱伝導層と第二の粘着層とをこの順に有し、該第一の粘着層あるいは該第二の粘着層が少なくとも酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有し、該熱伝導層が少なくとも酸化亜鉛とアクリル粘着剤を含有し、更に該熱伝導層中の熱伝導性フィラー比率が60体積%以上であることを特徴とする熱伝導性シート。
(2)第一の粘着層、熱伝導層、および第二の粘着層が何れも酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有することを特徴とする前記(1)記載の熱伝導性シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、高い熱伝導性を有し、粘着力が強く、高温高湿下で保管しても熱伝導性や粘着力の劣化のない熱伝導性シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱伝導性シートは、第一の粘着層と、該第一の粘着層上に熱伝導層と第二の粘着層とをこの順に有する。以下、各層について説明する。
【0013】
<熱伝導層>
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は、熱伝導性フィラーとして少なくとも酸化亜鉛を含有する。かかる酸化亜鉛は、特開2014-193808号公報記載の方法や、特開2001-342021号公報記載の方法など、公知の方法を用いて製造することができる。また酸化亜鉛は、その粒径分布においてシャープなものを得る必要がある場合や、粗大粒子を除去するために、粉砕あるいは篩による分級を施したものであってもよい。粉砕方法は特に限定されず、例えば、アトマイザーを挙げることができる。また篩による分級方法としては、湿式分級、乾式分級等を挙げることができる。
【0014】
酸化亜鉛の形状は特には限定されず、針状、棒状、板状、あるいは球状等を挙げることができる。
【0015】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層が含有する酸化亜鉛の算術平均粒子径は8μm以上であることが好ましく、該粒子径は10~30μmの範囲であることがより好ましい。この範囲を外れると粘着力、熱伝導性、熱抵抗などの諸性能が十分でない場合がある。なお、本発明で使用する熱伝導性フィラーの算術平均粒子径は、例えばレーザー散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0016】
本発明で用いる酸化亜鉛の好ましい市販品としては堺化学工業(株)製のLPZINC(登録商標)11、LPZINC20や、ハクスイテック(株)製の焼結亜鉛華などが挙げられる。
【0017】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は熱伝導性フィラーとして酸化亜鉛以外にも他の無機フィラーを混合して用いることができる。他の無機フィラーとしては、無水炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ダイヤモンド、珪藻土、二酸化珪素などが挙げられる。この中では安価で、熱伝導性の高い無水炭酸マグネシウム、炭化ケイ素が好ましい。また一般式MoOp・XH2O(ここにMは金属、o、pは金属の原子価によって定まる1以上の整数、Xは含有結晶水の数を示す数)で表される水和金属化合物は難燃性を有するので、これも併せて用いることが好ましく、水和金属化合物は全熱伝導性フィラーの1体積%以上を含有させることが好ましい。
【0018】
無水炭酸マグネシウムは例えば中性炭酸マグネシウム(MgCO3・nH2O、nは1~5程度)をオートクレーブ中で水熱処理した後に乾燥して無水炭酸マグネシウムとする方法など公知の方法で製造することができる。水熱処理としては撹拌下、最高温度が150~250℃で1~20時間の条件などが挙げられ、乾燥温度としては100℃以上で無水炭酸マグネシウムの分解温度(約250℃)以下で乾燥することが好ましい。かかる無水炭酸マグネシウムの市販品としては神島化学工業(株)製のマグサーモ(登録商標)MS-PSなどを挙げることができる。
【0019】
炭化ケイ素は六方晶であるα型、あるいは立方晶であるβ型の何れでも使用することができる。α型は硬度が高いものの安価であり、本発明においては好ましい。α型炭化ケイ素はアチソン法で合成した後、粉砕、分級するなど公知の方法で製造することができる。α型炭化ケイ素の市販品としては(株)フジミインコーポレーテッド製のGC#320やGC#1200など、β型炭化ケイ素としては巴工業(株)製β-SiC#400などを挙げることができる。
【0020】
これらその他の無機フィラーの算術平均粒子径は0.1~50μmであることが好ましく、更に好ましくは8~30μmである。その他の無機フィラーのうち、水和金属化合物については、難燃性を発揮するために0.1~30μmであることが好ましく、更に好ましくは0.5~10μmである。
【0021】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層が含有する熱伝導性フィラーはシランカップリング剤による表面処理など公知の処理も施すことができる。また、複数の表面処理を組み合わせて用いることも可能である。
【0022】
熱伝導性フィラーの表面処理に好ましく使用するシランカップリング剤としては、モノマーあるいはオリゴマーのいずれであってもよい。かかるモノマーとしては、具体的には、R1
qSi(OR2)4-qの構造式で示される化合物を例示することができ、ここで、qは1~3の整数であり、R1は活性水素を有する基(例えばアミノ基、メルカプト基、ウレイド基など)、重合性反応基(例えばビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基など)、活性水素と反応し得る基(例えばエポキシ基、イソシアネート基など)、アルキル基(直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもあってもよく、炭素原子数が2~18の範囲内にあることが好ましい)、及びフェニル基が挙げられる。qが2以上の場合、R1は同一であっても異なっていてもよい。OR2はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基から選択される基であり、qが1~2の場合(OR2が2個以上の場合)、OR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
上記したシランカップリング剤のうち、アミノ基を有するシランカップリング剤、ビニル基を有するシランカップリング剤、アルキル基を有するシランカップリング剤等が好ましい。
【0024】
アミノ基を有するシランカップリング剤の例としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
ビニル基を有するシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン等が挙げられ、アルキル基を有するシランカップリング剤の例としてはヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。中でも粘着性の良好な熱伝導材料が得られる観点からビニル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0026】
熱伝導性フィラーのシランカップリング剤による表面の処理方法は、乾式法、湿式法のいずれであっても良い。
【0027】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は、酸化亜鉛を含有し、その好ましい含有量は全熱伝導性フィラーの50~95体積%であり、更に好ましくは60~90体積%である。
【0028】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は、バインダー成分としてアクリル粘着剤を含有する。アクリル粘着剤としては、アクリルモノマーを含む複数のモノマー成分を重合したアクリル共重合体を用いることができる。使用できるモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその無水物(例えば無水マレイン酸等)、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数が1~20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、アリルアルコール等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有モノマー、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー等が挙げられるが、(メタ)アクリル酸を始めとするカルボキシル基含有モノマーはアクリル粘着剤の酸価が2mgKOH/g以下とするため、実質的に使用しないことが好ましい。
【0029】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層が含有するアクリル粘着剤は粘着付与剤を含有することが好ましい。粘着付与剤としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンを更にアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール、テルペンフェノール樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂などのテルペン系樹脂、石油樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は単独でも複数を組み合わせて用いてもよく、中でもロジン系粘着付与剤とテルペン系粘着付与剤を組み合わせて用いることも好ましい。粘着付与剤の量はアクリル共重合体に対して5~100質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0030】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層が含有するアクリル粘着剤の酸価は2mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは1mgKOH/g以下である。また、本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層の全有機成分に対するアクリル粘着剤(アクリル共重合体と粘着付与剤の合計)の含有量は70~98質量%であることが好ましく、より好ましくは80~96質量%である。
【0031】
本発明の熱伝導層が含有するアクリル粘着剤としては、アクリル共重合体と粘着付与剤を含有した市販品を用いてもよく、特に酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤としては例えば日本カーバイド工業(株)製KP-2563、同じくKP2565、同じくKP-2610、DIC(株)製CT-6030、藤倉化成(株)製LKG-1009、同じくLKG-1013などが挙げられる。
【0032】
本発明においてアクリル粘着剤の凝集力をより一層向上させ、安定した熱伝導率を得る上で、熱伝導層はアクリル粘着剤とともに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤、アジリジン架橋剤等を使用することができる。中でも、イソシアネート架橋剤またはエポキシ架橋剤を使用することが好ましい。
【0033】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は下記一般式で示される酸性リン酸エステル化合物を含有することが好ましい。
【0034】
【0035】
式中R3はアルキル基またはアルケニル基を表す。また式中lは0以上の整数を表し、mは1もしくは2を表す。
【0036】
上記した一般式で示される酸性リン酸エステル化合物の中でも、lは0~5であることが好ましく、R3として炭素数3~20の直鎖あるいは分岐したアルキル基を有する酸性リン酸エステル化合物が特に好ましく、この具体例としては、l=0のものとしてはリン酸モノイソブチル、リン酸モノイソデシル、リン酸モノオレイル、リン酸モノ2-エチルヘキシル、リン酸ジブチル、リン酸ジオレイルなどが挙げられ、lが1以上のものとして、lが2、mが2、R3が炭素数12~15のアルキルであるポリオキシエチレンエーテルリン酸、lが4、mが2、R3が炭素数12~15のアルキルであるポリオキシエチレンエーテルリン酸などが挙げられる。また、上記一般式で示される酸性リン酸エステル化合物の市販品としては、例えばl=0の酸性リン酸エステル化合物ではDP-4、AP-10(以上、大八化学工業(株))、lが1以上の酸性リン酸エステル化合物ではニッコール(登録商標)DDP-2、DDP-4(以上、日光ケミカルズ(株)製)、などが挙げられる。
【0037】
熱伝導層における上記一般式で示される酸性リン酸エステル化合物の含有量は熱伝導性フィラーに対して0.01~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0038】
更に本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は可塑剤を含有することが好ましく、かつ該可塑剤の量が熱伝導層中の有機成分に対し、1~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが粘着力を高める上で更に好ましい。本発明において可塑剤としては、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-ヘプチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸n-ブチルベンジル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジ-n-ブチル、イソフタル酸ジ-n-ヘプチル、イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、イソフタル酸ジ-n-オクチル、イソフタル酸ジイソノニル、イソフタル酸ジイソデシル、イソフタル酸ジトリデシル、イソフタル酸n-ブチルベンジル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ-n-ブチル、テレフタル酸ジ-n-ヘプチル、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、テレフタル酸ジ-n-オクチル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ジトリデシル、テレフタル酸n-ブチルベンジル等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジ-n-オクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル系可塑剤;リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリキシリル等のリン酸エステル系可塑剤;トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ-n-オクチル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸エステル系可塑剤;二塩基酸(例えば、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸)及び二価アルコール(例えば、グリコール)などから合成される低分子量ポリエステルを主として含むポリエステル系可塑剤等の汎用の可塑剤を用いることができ、中でもリン酸エステル系可塑剤を用いることが難燃剤としても働くことから好ましい。
【0039】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層中の熱伝導性フィラーの比率は60体積%以上であることが好ましく、より好ましくは70~80体積%である。なお、熱伝導性フィラーの熱伝導性シートに対する比率は、使用する各熱伝導性フィラーの質量をそれぞれの密度で割ったものの合計値を、熱伝導層の各構成成分の質量をそれぞれの密度で割ったものの合計値との比率である。
【0040】
本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は、更に、界面活性剤、金属石鹸、赤燐などの難燃剤など公知の物質を使用することができる。本発明の熱伝導性シートが有する熱伝導層は、多孔体状や発泡体状ではなく、また泡やボイド等の欠陥を含んでいないことが熱伝導の観点で好ましく、密度が2以上あることが好ましい。
【0041】
<粘着層>
第一の粘着層と第二の粘着層は、その構成、厚み等は同じであっても異なっていても良いが、好ましい構成は同じである。第一の粘着層と第二の粘着層を、粘着層としてまとめて説明する。
【0042】
本発明の熱伝導性シートが有する粘着層は本発明の熱伝導性シートに十分な粘着力を発揮させるため、アクリル粘着剤を含有する。さらに、第一の粘着層あるいは第二の粘着層の何れかが酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有することが必要であり、好ましくは両方の粘着層が、酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤を含有する。粘着層が含有するアクリル粘着剤としては、熱伝導層が含有するアクリル粘着剤と同様のアクリル粘着剤が例示される。また、粘着層は熱伝導層と同様に各種架橋剤を含有することが好ましい。本発明の熱伝導性シートが有する粘着層に用いられる酸価が2mgKOH/g以下のアクリル粘着剤は各々の粘着層に用いる全アクリル粘着剤の少なくとも50質量%以上であることが好ましく、80%質量以上がさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0043】
本発明の熱伝導性シートが有する粘着層は熱伝導層と同様の熱伝導性フィラーを含有することができる。好ましい熱伝導性フィラーとしては水和金属化合物であり、その他に無水炭酸マグネシウム、シリカが好ましい。本発明の熱伝導性シートが有する粘着層に用いられる熱伝導性フィラーの算術平均粒子径は熱伝導性フィラーが含有される粘着層の厚み以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1μm以上から熱伝導性フィラーが含有される粘着層の厚みの1/3以下の範囲である。また粘着層中における熱伝導性フィラーの比率は、粘着力の観点から50体積%以下であることが好ましく、より好ましくは20体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。
【0044】
本発明の熱伝導性シートが有する粘着層は前記一般式で示される酸性リン酸エステル化合物および前述した熱伝導層で用いることのできる可塑剤を用いることができる。酸性リン酸エステル化合物および可塑剤の好ましい合計使用量はアクリル粘着剤に対し、1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは2~10質量%である。
【0045】
本発明の熱伝導性シートが有する粘着層は更に、界面活性剤、金属石鹸、赤燐などの難燃剤、色素、顔料など公知の物質を含有することができる。
【0046】
本発明の熱伝導性シートは、上記した成分を有機溶剤で希釈した塗液(粘着層塗液、熱伝導層塗液)を調液し、各塗液を離型フィルム上に積層することで作製される。第一の粘着層、熱伝導層、および第二の粘着層は同時に重ねて塗布、乾燥しても良いし、順次個別に塗布、乾燥しても良い。さらに、各層を別々の離型フィルムの上に塗布、乾燥した後に、それらを貼合加工して積層することもできる。また得られた熱伝導性シートの第二の粘着層上に別の離型フィルムを貼合して使用することもできる。離型フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルムなど、あるいはその表面にシリコーン離型剤など公知の離型剤を塗布した離型フィルムが例示される。熱伝導性シートを被着物に貼合する場合、片側の離型フィルムを剥離し、圧着することで仮貼合し、更に残る離型フィルムを剥離し、別の被着体を熱伝導性シートに圧着させることでなされる。
【0047】
本発明の熱伝導性シートの厚みは50~300μmであることが好ましく、より好ましくは80~250μmである。第一の粘着層の厚みは1~10μmが好ましく、更に好ましくは2~8μmである。第二の粘着層の厚みは、2~20μmが好ましく、さらに好ましくは5~15μmである。第一の粘着層および第二の粘着層の厚みが上記した範囲を下回ると平滑な面質が得られずに十分な粘着力が得られない場合があり、上述した範囲を超えると十分な熱伝導性が得られない場合がある。
【0048】
本発明の熱伝導性シートの熱電伝導率は高いほど好ましいが、3W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは4W/m・K以上、さらに好ましくは5W/m・K以上である。また粘着力はやはり強い方が好ましいが、少なくとも2N/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは4N/25mm以上である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明を実施例により更に詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、熱伝導層における各構成成分の含有量を算出するにあたり、各構成成分の比重は以下の値を用いた。酸化亜鉛5.6、アルミナ3.9、水酸化アルミニウム2.42、アクリル粘着剤1.19、酸性リン酸エステル化合物1.8、可塑剤(リン酸トリクレジル)1.16、イソシアネート架橋剤1.0、エポキシ架橋剤(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン)1.18、難燃剤(赤燐)2.34。
【0050】
「熱伝導性シート1の作製」
下記の粘着層塗液1を離型フィルム(アイム(株)製RF1・PET38-CS001)に乾燥後の膜厚が5μmとなるよう塗布し、90℃で1分間乾燥し、第一の粘着層塗布済ベースを得た。下記の熱伝導層塗液1を(株)シンキー製攪拌機AR250に下記の粘着層塗液1を投入し、撹拌モードで10分間撹拌した。この熱伝導層塗液を第一の粘着層塗布済ベースの第一の粘着層の上に、乾燥後の膜厚が160μmになるよう塗布した。次いで、熱伝導層の上に第二の粘着層として粘着層塗液1を乾燥後の膜厚が10μmとなるよう塗布した。第二の粘着層を設けた後直ちに該粘着剤層表面に離型フィルム(アイム(株)製RF1・PET38-CS003)を貼合し、熱伝導性シート1を得た。熱伝導性シート1の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0051】
<粘着層塗液1>
KP2565(日本カーバイド工業(株)製アクリル粘着剤、固形分47.5質量%、酸価0mgKOH/g) 10.2g
CK1215(日本カーバイド工業(株)製イソシアネート架橋剤、固形分75質量%)
0.025g
ニッコールDDP-2(日光ケミカルズ(株)製酸性リン酸エステル化合物)
0.1g
リン酸トリクレジル 0.3g
酢酸エチルを加えて全量を40gとした。
【0052】
<熱伝導層塗液1>
焼結亜鉛華(ハクスイテック(株)製酸化亜鉛、算術平均粒子径11.15μm)
100.0g
BF-13STM(日本軽金属(株)製表面処理済水酸化アルミニウム、算術平均粒子径4μm) 10.2g
ノーバレッド(登録商標)120UF(燐化学工業(株)製表面処理済赤燐、難燃剤)
0.9g
KP2565 15.0g
CK1215 0.066g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を141.1gとした。
【0053】
「熱伝導性シート2の作製」
下記の粘着層塗液2を第一および第二の粘着層の塗液として用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート2を作製した。熱伝導性シート2の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0054】
<粘着層塗液2>
オリバイン(登録商標)BPS6574(トーヨーケム(株)製アクリル粘着剤、酸価19mgKOH/g、固形分57.0質量%) 8.5g
オリバインBHS8515(トーヨーケム(株)製イソシアネート架橋剤、固形分37.5質量%) 0.022g
ニッコールDDP-2 0.1g
リン酸トリクレジル 0.3g
酢酸エチルを加えて全量を40gとした。
【0055】
「熱伝導性シート3の作製」
第二の粘着層の塗液として粘着層塗液2を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート3を作製した。熱伝導性シート3の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0056】
「熱伝導性シート4の作製」
熱伝導層の塗液として下記熱伝導層塗液2を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート4を作製した。熱伝導性シート4の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0057】
<熱伝導層塗液2>
焼結亜鉛華 100.0g
BF-13STM 10.2g
ノーバレッド120UF 0.9g
BPS6574 12.5g
BHS8515 0.033g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を141.1gとした。
【0058】
「熱伝導性シート5の作製」
熱伝導層の塗液として下記熱伝導層塗液3を用い、第一および第二の粘着層の塗液として粘着層塗液2を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート5を作製した。熱伝導性シート5の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0059】
<熱伝導層塗液3>
AS-10(昭和電工(株)製アルミナ、算術平均粒子径37.86μm)
69.6g
BF-13STM 10.2g
ノーバレッド120UF 0.9g
BPS6574 12.5g
BHS8515 0.033g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を141.1gとした。
【0060】
「熱伝導性シート6の作製」
第一の粘着層および第二の粘着層の塗液として下記粘着層塗液3を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート6を作製した。熱伝導性シート6の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0061】
<粘着層塗液3>
LKG1002(藤倉化成(株)製アクリル粘着剤、酸価2.3mgKOH/g、固形分30.0質量%) 16.15g
1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(エポキシ架橋剤)
0.0068g
ニッコールDDP-2 0.1g
リン酸トリクレジル 0.3g
酢酸エチルを加えて全量を40gとした。
【0062】
「熱伝導性シート7の作製」
第一の粘着層および第二の粘着層の塗液として下記粘着層塗液4を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート7を作製した。熱伝導性シート7の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は75.6体積%である。
【0063】
<粘着層塗液4>
LKG1012(藤倉化成(株)製アクリル粘着剤、酸価1.9mgKOH/g、固形分30.0質量%) 16.15g
1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(エポキシ架橋剤)
0.0068g
ニッコールDDP-2 0.1g
リン酸トリクレジル 0.3g
酢酸エチルを加えて全量を40gとした。
【0064】
「熱伝導性シート8の作製」
熱伝導層の塗液として下記熱伝導層塗液4を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート8を作製した。熱伝導性シート8の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は55.3体積%である。
【0065】
<熱伝導層塗液4>
焼結亜鉛華 40.0g
BF-13STM 4.08g
ノーバレッド120UF 0.9g
KP2565 15.0g
CK1215 0.066g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を75.0gとした。
【0066】
「熱伝導性シート9の作製」
熱伝導層の塗液として下記熱伝導層塗液5を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート9を作製した。熱伝導性シート9の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は65.0体積%である。
【0067】
<熱伝導層塗液5>
焼結亜鉛華 60.0g
BF-13STM 6.12g
ノーバレッド120UF 0.9g
KP2565 15.0g
CK1215 0.066g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を97.0gとした。
【0068】
「熱伝導性シート10の作製」
熱伝導層の塗液として下記熱伝導層塗液6を用いる以外は熱伝導性シート1と同様にして、熱伝導性シート10を作製した。熱伝導性シート10の熱伝導層における全熱伝導性フィラーの比率は82.3体積%である。
【0069】
<熱伝導層塗液6>
焼結亜鉛華 150.0g
BF-13STM 15.3g
ノーバレッド120UF 0.9g
KP2565 15.0g
CK1215 0.066g
ニッコールDDP-2 0.43g
リン酸トリクレジル 0.54g
酢酸エチルを加えて全量を196.2gとした。
【0070】
得られた熱伝導性シート1~10を下記方法に従い、熱伝導率と粘着力について評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<熱伝導率評価>
作製直後の熱伝導性シートの一方の離型フィルム(RF1・PET38-CS001)を剥離し、露出した粘着層表面に75μm厚みルミラー(登録商標)U34(東レ(株)製PETフィルム)を貼合し、続いて反対面の離型フィルム(RF1・PET38-CS003)を剥離し、同じくルミラーU34を貼合した。熱伝導率測定装置ai-Phase Mobile3((株)アイフェイズ製)を用いて、厚み方向の熱拡散率を測定した。また熱容量が既知である参照標準物質との比較からサンプルの比熱を算出した。さらに別途水上置換法により測定した密度とから、次式により厚み方向の熱伝導率を算出し、表1に記載した。
〔熱伝導率〕=〔熱拡散率〕×〔密度〕×〔比熱〕
さらにルミラーU34貼合済熱伝導性シートを85℃85%R.H.下で10日間保管し、保管後に再び熱拡散率を測定して、熱伝導率を算出した。この結果も表1に記載する。
【0072】
<粘着力評価>
作製直後の熱伝導性シートと、塗布後50℃80%R.H.の環境下で4日保管した熱伝導性シートについて、熱伝導性シートの片面の離型フィルム(RF1・PET38-CS001)を剥離し、0.2mm厚みのアクリルフィルム(日東樹脂工業(株)製)に貼合し、残る離型フィルムを剥離し、剥離した面に同じ0.2mm厚みのアクリルフィルムを貼合した。得られた貼合物を幅25mmに裁断した。得られた試験片の密着強度を剥離機((株)イマダ製T字剥離法アタッチメントとフォースゲージDSTの組み合わせ)で測定した。この結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
以上の結果から本発明の有効性が明らかに判る。