(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】分析システム、サーバ、プログラム及び分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0637 20230101AFI20230904BHJP
【FI】
G06Q10/0637
(21)【出願番号】P 2020188874
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517040102
【氏名又は名称】PwCコンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】林 力一
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/150758(WO,A1)
【文献】特開2012-141825(JP,A)
【文献】国際公開第2006/004132(WO,A1)
【文献】特開2006-216019(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0070681(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及び該サーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、該ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて前記特許情報及び前記財務情報に基づいた分析を実行する分析システムであって、
前記サーバは、
前記特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した前記第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、前記第1特許因子及び前記第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した前記第1特許因子及び前記第2特許因子が付与された前記特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、
前記財務情報に基づいて任意の前記産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した前記事業者に付与された前記産業分類のうち任意の重みづけが付与された前記産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、前記特許情報と前記財務情報とを照合して抽出した前記事業者が前記名義人である前記特許情報に前記バリューチェーンラベルを付与して該バリューチェーンラベルを付与した前記特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、
を実行する分析システム。
【請求項2】
前記因子分析処理及び前記クラスタリング処理における処理の結果を出力する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記第1特許因子及び前記第2特許因子は、
特許分類、要約情報または用途情報の少なくともいずれかである、請求項1または2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記特許情報は、
前記ユーザによって前記ユーザ端末を介して任意の検索条件に基づいて検索される、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記産業分類は、
NACEコードを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項6】
特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセスして前記特許情報及び前記財務情報に基づいた分析を実行するサーバであって、
前記特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した前記第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、前記第1特許因子及び前記第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した前記第1特許因子及び前記第2特許因子が付与された前記特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、
前記財務情報に基づいて任意の前記産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した前記事業者に付与された前記産業分類のうち任意の重みづけが付与された前記産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、前記特許情報と前記財務情報とを照合して抽出した前記事業者が前記名義人である前記特許情報に前記バリューチェーンラベルを付与して該バリューチェーンラベルを付与した前記特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、
を実行するサーバ。
【請求項7】
特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセスして前記特許情報及び前記財務情報に基づいた分析を
コンピュータに実行
させるプログラムであって、
前記特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した前記第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、前記第1特許因子及び前記第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した前記第1特許因子及び前記第2特許因子が付与された前記特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、
前記財務情報に基づいて任意の前記産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した前記事業者に付与された前記産業分類のうち任意の重みづけが付与された前記産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、前記特許情報と前記財務情報とを照合して抽出した前記事業者が前記名義人である前記特許情報に前記バリューチェーンラベルを付与して該バリューチェーンラベルを付与した前記特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、
を
前記コンピュータに実行
させるプログラム。
【請求項8】
前記特許情報及び前記財務情報に基づいて学習データを生成し、任意の前記バリューチェーンラベルを教師データとして、生成した前記学習データで機械学習をすることによって学習済みモデルを生成し、生成した該学習済みモデルに基づいて、抽出した前記事業者に付与された前記産業分類のうち任意の重みづけが付与された前記産業分類をバリューチェーンラベルとして把握させる、
請求項
7に記載のプログラム。
【請求項9】
特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及び該サーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、該ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて前記特許情報及び前記財務情報に基づいた分析を実行する分析システムを用いた分析方法であって、
前記サーバが、
前記特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した前記第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、前記第1特許因子及び前記第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した前記第1特許因子及び前記第2特許因子が付与された前記特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理を実行し、
前記財務情報に基づいて任意の前記産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した前記事業者に付与された前記産業分類のうち任意の重みづけが付与された前記産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、前記特許情報と前記財務情報とを照合して抽出した前記事業者が前記名義人である前記特許情報に前記バリューチェーンラベルを付与して該バリューチェーンラベルを付与した前記特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理を実行する、
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システム、サーバ、プログラム及び分析方法、特に、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及びサーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行する分析システム、サーバ、プログラム及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事業者が新規な事業を開発するに際しては、市場を分析してニーズを探索し、探索したニーズをその事業者の有するシーズと照合して、ニーズとシーズに適合した事業を立案するといった手法が採られる場合がある。
【0003】
特許文献1には、市場のニーズと事業者のシーズとを記憶して、これらニーズとシーズに適合した事業を割り出して、割り出した事業の中から、事業戦略上、進むべき方向性に適合した事業を選択する処理を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、事業者が新規な事業を開発したり、その事業者の事業上のポジションを解析したりといった事業分析を行うに際しては、市場のニーズを分析し、市場における競合の状況を分析し、かつその市場におけるバリューチェーンを分析したうえで、事業の実現や事業の解析に必要な情報を処理する手法が採られる場合もある。
【0006】
この種の情報の処理を、例えばコンサルティング業務を営むコンサルティング事業者が行う場合には、膨大な資料を収集し、収集した資料に基づいて例えば多変量解析を行う必要があるところ、このような作業は厄介で手間がかかり、数ヶ月程度の膨大な作業時間を費やす場合もある。
【0007】
特に、知的財産のような無形の資産が事業資産として含まれる可能性がある場合には、その分析や評価が困難であることから、煩雑な作業の増大やコストの増大及び作業時間の長大化を招くことが容易に想定される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、事業分析を効率的かつ比較的短時間で行うことができる分析システム、サーバ、プログラム及び分析方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための本発明に係る分析システムは、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及びサーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行する分析システムであって、サーバは、特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、第1特許因子及び第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した第1特許因子及び第2特許因子が付与された特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、財務情報に基づいて任意の産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した事業者に付与された産業分類のうち任意の重みづけが付与された産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、特許情報と財務情報とを照合して抽出した事業者が名義人である特許情報にバリューチェーンラベルを付与してバリューチェーンラベルを付与した特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、を実行するものである。
【0010】
これによれば、特許情報に付与された特許因子に基づいて因子分析処理を実行し、かつ特許情報及び財務情報に基づいてクラスタリング処理を実行することから、特許情報に開示される知的財産という無形の資産が事業資産として含まれる場合であっても、事業分析を効率的かつ比較的短時間で行うことができる。
【0011】
この分析システムは、因子分析処理及びクラスタリング処理における処理の結果を出力するものである。
【0012】
この分析システムで抽出あるいは検出する第1特許因子及び第2特許因子は、特許分類、要約情報または用途情報の少なくともいずれかであり、特許情報は、ユーザによってユーザ端末を介して任意の検索条件に基づいて検索されるものである。
【0013】
この分析システムで処理される産業分類は、NACEコードを含むものである。
【0014】
上記課題を達成するための本発明に係る分析システムは、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及びサーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行する分析システムであって、サーバは、財務情報に基づいて任意の産業分類が付与された事業者を抽出し、特許情報と財務情報とを照合して抽出した事業者の中から事業者が名義人となる特許情報が存在しない事業者を抽出して財務情報に基づいて任意の指標を付与して指標を付与した事業者をクラスタとして把握するクラスタリング処理を実行するものである。
【0015】
この分析システムが付与する指標は、事業者の事業の成熟の程度に応じて区分された複数の段階であってもよい。
【0016】
上記課題を達成するための本発明に係るサーバは、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセスして特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行するサーバであって、特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、第1特許因子及び第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した第1特許因子及び第2特許因子が付与された特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、財務情報に基づいて任意の産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した事業者に付与された産業分類のうち任意の重みづけが付与された産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、特許情報と財務情報とを照合して抽出した事業者が名義人である特許情報にバリューチェーンラベルを付与してバリューチェーンラベルを付与した特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、を実行するものである。
【0017】
上記課題を達成するための本発明に係るプログラムは、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセスして特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行するプログラムであって、特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、第1特許因子及び第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した第1特許因子及び第2特許因子が付与された特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理と、財務情報に基づいて任意の産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した事業者に付与された産業分類のうち任意の重みづけが付与された産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、特許情報と財務情報とを照合して抽出した事業者が名義人である特許情報にバリューチェーンラベルを付与してバリューチェーンラベルを付与した特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理と、を実行するものである。
【0018】
このプログラムは、人工知能技術に基づいて実装されるものであってもよい。
【0019】
上記課題を達成するための本発明に係る分析方法は、特許情報及び少なくとも産業分類を含む財務情報にアクセス可能なサーバ及びサーバとネットワークを介して接続されるユーザ端末を備え、ユーザ端末を介したユーザの要求に基づいて特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行する分析システムを用いた分析方法であって、特許情報に付与された第1特許因子を抽出し、抽出した第1特許因子と近似する第2特許因子を検出し、第1特許因子及び第2特許因子に任意の重みづけを付与するとともに重みづけを付与した第1特許因子及び第2特許因子が付与された特許情報の名義人に重みづけに基づいてスコアを付与する因子分析処理を実行し、財務情報に基づいて任意の産業分類が付与された事業者を抽出し、抽出した事業者に付与された産業分類のうち任意の重みづけが付与された産業分類をバリューチェーンラベルとして把握する一方、特許情報と財務情報とを照合して抽出した事業者が名義人である特許情報にバリューチェーンラベルを付与してバリューチェーンラベルを付与した特許情報をクラスタとして把握するクラスタリング処理を実行するものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、事業分析を効率的かつ比較的短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る分析システムの概略を説明する図である。
【
図2】同じく、本実施の形態に係る分析システムの第1データベース及び第2データベースの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図3】同じく、本実施の形態に係る分析システムのコンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図4】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバのストレージの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図5】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバの因子分析処理部の処理の概略を説明するフローチャートである。
【
図6】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバのクラスタリング処理部の処理の概略を説明するブロック図である。
【
図7】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバのクラスタリング処理部の処理の概略を説明するフローチャートである。
【
図8】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバのクラスタリング処理部の処理の概略を説明する図である。
【
図9】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバのクラスタリング処理部の処理の概略を説明するフローチャートである。
【
図10】同じく、本実施の形態に係る分析システムのサーバの出力部の処理の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、
図1~
図10に基づいて、本発明の実施の形態に係る分析システムについて説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る分析システムの概略を説明する図である。図示のように、分析システム10は、第1データベース21、第2データベース22、サーバ30及び複数のユーザ端末40を主要構成として備え、これらがインターネット網200を介して互いにアクセス可能に接続される。
【0024】
第1データベース21及び第2データベース22は、本実施の形態では、データベース管理事業者1a、1bにそれぞれ配備され、サーバ30は、特許情報及び財務情報に基づいた分析を実行するサービスを提供するサービス事業者2に配備され、ユーザ端末40は、サービス事業者1が提供するサービスを利用する複数のユーザ3に配備される。
【0025】
図2は、第1データベース21及び第2データベース22の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、第1データベース41には、本実施の形態では特許情報D1が格納される。
【0026】
特許情報D1は、特許出願がなされたあるいは特許権の設定登録がなされた発明に関する特許文献についての情報であって、IPCやFターム等の特許分類、要約情報あるいは発明の用途に関する用途情報を少なくとも含む特許因子の他に、特許出願人あるいは特許権者の属性、発明の開示(特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面等)等が含まれる。
【0027】
ここで、特許分類とは、技術内容に応じて特許文献を分類し、分類した特許文献のそれぞれに記号や数字の組み合わせを記号・数字列として付与したものである。例えば、特許文献の技術内容が「電子商取引」であれば、「G06Q30/00」が付与される。
【0028】
この特許情報D1は、本実施の形態では、適時のタイミングで更新される。
【0029】
第2データベース22には、本実施の形態では財務情報D2が格納される。この財務情報D2は、事業者の財務に関する情報であって、NACEコードやSICコード等の産業分類の他に、事業者の売上、投資の状況、事業者の形態、事業者がいわゆるスタートアップである場合の事業の成熟の程度に応じて区分された複数の段階(指標)であるステージ等が含まれる。
【0030】
ここで、産業分類とは、事業者の経済活動を分類し、分類した経済活動のそれぞれに数字の組み合わせをコードとして付与したものである。例えば、電力供給業を営む電力事業者の経済活動であれば、「発電」、「送電」、「販売」及び「保守」の経済活動に分類可能であって、分類した経済活動のそれぞれに例えば「3511」、「3512」、「3513」及び「3514」等のコードが付与される。
【0031】
投資の状況には、本実施の形態では、投資規模、投資元、投資先、M&A出資や過半数以下の株を取得するマイノリティ出資等の出資の形態といった各種の情報が含まれる。
【0032】
事業者の形態には、本実施の形態では、例えば事業者がスタートアップであるか否かといった事業者の区分が含まれる。ここで、スタートアップとは、本実施の形態では例えば、設立からx年以内であって、売上規模が一定以下でかつ非上場の事業者のことをいう。
【0033】
ステージは、本実施の形態では、「シードステージ」、「アーリーステージ」、「ミドルステージ」及び「レイターステージ」の4つのステージに区分される。
【0034】
この財務情報D2は、本実施の形態では、適時のタイミングで更新される。
【0035】
サーバ30及びユーザ端末40は、本実施の形態では、ほぼ同様のハードウェア構成を具備するコンピュータ、例えばデスクトップ型あるいはノート型のコンピュータによって実装される。
【0036】
図3は、コンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、コンピュータは、プロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105を主要構成として備え、これらが互いにバス106を介して電気的に接続される。
【0037】
プロセッサ101は、コンピュータの動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、プログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。
【0038】
このプロセッサ101は、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、後述するストレージ103に格納されてメモリ102に展開されたプログラムを実行して各処理を行う。
【0039】
メモリ102は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置を備える。
【0040】
このメモリ102は、プロセッサ101の作業領域として使用される一方、コンピュータ100の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0041】
ストレージ103は、プログラムや各種の処理に用いられる情報等が記憶されている。このストレージ103の構成については、後述する。
【0042】
送受信部104は、コンピュータ100をインターネット網等のネットワークに接続するものであって、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0043】
入出力部105には、入出力機器が接続されるインターフェースであって、これら入出力機器としては、例えばキーボードやマウス、ディスプレイといったものが想定される。
【0044】
バス106は、接続したプロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0045】
図4は、サーバ30のストレージ103の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、ストレージ103は、分析プログラム50を備える。
【0046】
この分析プログラム50は、本実施の形態では、サーバ30及びユーザ端末40のディスプレイに表示されてサーバ30及びユーザ端末40で情報の入出力が可能な画面インターフェースによって実装され、因子分析処理部51、クラスタリング処理部52及び出力部53を備える。
【0047】
因子分析処理部51は、本実施の形態では、ユーザ3によってユーザ端末40を介して任意の検索条件(例えば「電力供給」)に基づいて検索された特許情報D1の名義人(特許出願人あるいは特許権者)にスコアを付与するモジュールである。
【0048】
図5は、因子分析処理部51の処理の概略を説明するフローチャートである。この因子分析処理部51は、ユーザ3がユーザ端末40を介して任意の検索条件に基づいて特許情報D1を検索すると、図示のように、ステップS1において、検索した特許情報D1に付与された任意の特許分類を第1特許分類として抽出する。
【0049】
本実施の形態では、複数の特許分類が特許情報D1に付与されているのであれば、付与された複数の特許分類が第1特許分類として抽出されるものであってもよい。
【0050】
続いて、ステップS2において、第1特許分類として抽出した特許分類と近似する特許分類を第2特許分類として検出する。例えば、第1特許分類として「G06Q30/00」(電子商取引)を抽出したのであれば、第2特許分類として「G06Q20/00」(支払アーキテクチャ等)を検出する。
【0051】
本実施の形態では、抽出した第1特許分類に応じて、複数の特許分類が第2特許分類として検出されるものであってもよい。
【0052】
その後、ステップS3において、抽出した第1特許分類及び検出した第2特許分類に、任意の観点に基づいた重みづけを付与する。例えば、電子商取引における課金処理技術についての主要な特許分類を観点とする場合は、この観点に近い特許分類から順に重みづけを付与する。
【0053】
さらに、ステップS4において、重みづけを付与した第1特許分類及び第2特許分類が付与された特許情報D1の名義人(特許出願人あるいは特許権者)を抽出し、付与した重みづけに基づいて、抽出した名義人にスコアを付与する。
【0054】
例えば、第1特許分類に「6」の重みづけをし、第2特許分類に「3」の重みづけを行った場合において、任意の事業者が、第1特許分類が付与された7件の特許権の名義人でありかつ第2特許分類が付与された3件の特許権の名義人である場合には、「54」のスコアが付与される。
【0055】
図4で示すクラスタリング処理部52は、本実施の形態では、特許情報D1にバリューチェーンラベルを付与する、あるいは任意の事業者にステージを付与することによって、バリューチェーンラベルを付与した特許情報D1あるいはステージを付与した事業者をクラスタとして把握するモジュールである。
【0056】
図6は、クラスタリング処理部52の処理の概略を説明するブロック図である。図示のように、クラスタリング処理部52は、第1処理S10及び第2処理S20を実行する。
【0057】
図7は、クラスタリング処理部52の第1処理S10の概略を説明するフローチャートである。第1処理S10では、ユーザ3がユーザ端末40を介して財務情報D2の中から任意のNACEコードに基づいて事業者を検索すると、図示のように、ステップS11において、任意のNACEコードに基づいた事業者を抽出する。
【0058】
本実施の形態では、例えば「3511」(発電)、「3512」(送電)、「3513」(販売)及び「3514」(保守)のいずれかを含む事業者のみを検索し、これらのNACEコードが付与された事業者を抽出する。
【0059】
続いて、ステップS12において、事業者に付与されたNACEコードの中から、抽出した事業者の業務内容に基づいて主要なNACEコードとそれ以外のNACEコードとで重みづけを付与し、主要なNACEコードであると重みづけをした主要なNACEコードをバリューチェーンラベルとして把握する。
【0060】
一方、ステップS13において、
図8で示すように、特許情報D1と財務情報D2とを照合して、
図7で示すステップS14において、任意のNACEコードに基づいて抽出した事業者が名義人となっている特許情報D1に、バリューチェーンラベルを付与する。
【0061】
図9は、クラスタリング処理部52の第2処理S20の概略を説明するフローチャートである。第2処理S20では、ステップS21において、第1処理S10のステップS11と同様に、任意のNACEコードに基づいた事業者を抽出する。
【0062】
一方、ステップS22において、
図8で示すように、特許情報D1と財務情報D2とを照合して、
図9で示すステップS23において、任意のNACEコードに基づいて抽出した事業者の中から、抽出した事業者が名義人となる特許情報D1が存在しない事業者を抽出する。
【0063】
このステップS23において抽出した事業者は、本実施の形態では、スタートアップであることが想定される。
【0064】
その後、ステップS24において、ステップS23で抽出した事業者に、「シードステージ」、「アーリーステージ」、「ミドルステージ」及び「レイターステージ」の4つのステージに区分されるステージを財務情報D2に基づいて付与する。
【0065】
図4で示す出力部53は、因子分析処理部51における処理の結果及びクラスタリング処理部52における処理の結果を出力するモジュールである。
【0066】
この出力部53は、本実施の形態では、因子分析処理部51における処理及びクラスタリング処理部52における処理に基づいて、例えば
図10で示すように、任意の事業者について、縦軸に「事業規模」及び横軸に「事業者の知財力」を配した総合的な処理の結果を出力する。
【0067】
複数の事業者についての因子分析処理部51及びクラスタリング処理部52における総合的な処理の結果に基づいて、複数の事業者をリスト化したりランクづけしたりして出力することも可能である。
【0068】
例えば、因子分析処理の結果とクラスタリング処理の結果とに基づいて、任意のバリューチェーンを構成する業態(要素)ごとのクラスタについてスコアを算出し、そのスコアを非優越ソートで一次元のスコアに置換することによって、そのバリューチェーンに対する事業者や研究機関等の親和性を評価してリスト化することができる。
【0069】
一方、
図5で示した因子分析処理部51の各ステップ(ステップS1~ステップS4)における処理の結果、
図7で示したクラスタリング処理部52の第1処理S10の各ステップ(ステップS11~ステップS14)及び
図9で示した第2処理S20の各ステップ(ステップS21~ステップS24)における処理の結果をそれぞれ、出力することも可能である。
【0070】
さらに、出力部53は、本実施の形態では、因子分析処理部51あるいはクラスタリング処理部52において処理を実行した後に、特許情報D1及び財務情報D2に含まれる任意の情報に基づいて処理の結果を出力することも可能である。
【0071】
例えば、クラスタリング処理によって任意のバリューチェーンラベルを付与した任意の技術に関するクラスタについて、このクラスタに含まれる事業者への投資額の総額を出力することによって、この総額をクラスタの将来市場に対する期待値(市場見込み)と把握することができる。
【0072】
さらに、クラスタリング処理によって任意のバリューチェーンラベルを付与した任意の技術に関するクラスタについて、このクラスタに含まれる投資先となっている事業者を出力することによって、その事業者の業界の競合等に対する投資の傾向等を把握することができることから、投資戦略を含めた事業戦略を検討することができる。
【0073】
一方、クラスタリング処理によって任意のステージを付与した事業者について、事業者に付与されたステージを出力することによって、このステージに関する財務情報D2に基づいて試算した値を用いて、特許情報D1の名義人となっていない事業者の評価を行うことができる。
【0074】
この分析プログラム50は、本実施の形態では、人工知能技術に基づいて実装されるものであって、特に、因子分析処理部51及びクラスタリング処理部52における処理が、人工知能技術によって実行される。
【0075】
本実施の形態では、例えば、特許情報D1及び財務情報D2に基づいて学習データを生成し、任意のバリューチェーンラベルを教師データとして、生成した学習データで機械学習をすることによって学習済みモデルを生成し、この学習済みモデルに基づいて、クラスタリング処理部52における処理を実行する。
【0076】
機械学習を行う手法としては、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)等、各種のアルゴリズムが適宜用いられる。
【0077】
このような分析プログラム50が格納されたサーバ30が配備されたサービス事業者2は、分析システム10を用いて特許情報D1及び財務情報D2に基づいた分析を実行するサービスを、サブスクリプション方式、ダウンロード方式あるいはその他の方式によって、ユーザ端末40を介してユーザ3に提供する。
【0078】
ユーザ3は、分析システム10を用いて、因子分析処理に基づく分析、クラスタリング処理に基づく分析を行うことができるとともに、因子分析処理とクラスタリング処理とを相関せしめて分析を行うこともできる。
【0079】
このように、本実施の形態の分析システム10によれば、特許情報D1に付与された特許分類に基づいて因子分析処理を実行し、かつ特許情報D1及び財務情報D2に基づいてクラスタリング処理を実行することから、特許情報D1に開示される知的財産という無形の資産が事業資産として含まれる場合であっても、事業分析を効率的かつ比較的短時間で行うことができる。
【0080】
一方、特許情報D1に開示される知的財産が事業資産として含まれない場合であっても、財務情報D2に基づいてクラスタリング処理を実行することから、知的財産が事業資産として含まれる場合と同様に、事業分析を効率的かつ比較的短時間で行うことができる。
【0081】
本実施の形態の分析システム10では、以下のような種々の目的に応じた用途が想定される。
【0082】
例えば、事業者であるユーザ3が所望する任意の技術あるいは知的財産と親和性の高いバリューチェーンを抽出して、抽出したバリューチェーンのうち参入すべき市場の検討を行うといった、新規事業開発のテーマを探索することができる。
【0083】
例えば、特定の市場に対して、事業者であるユーザ3が所望する任意の技術あるいは知的財産をベースとして、垂直統合と水平分業の観点からM&Aの候補先の検討を行うといった、M&A戦略を策定することができる。
【0084】
例えば、垂直統合と水平分業の観点でのM&Aを実行する際に必要な研究開発戦略及び知財戦略の検討を行うといった、研究開発戦略及び知財戦略を策定することができる。
【0085】
例えば、技術のクラスタリングと発明者のネットワーク分析とを組み合わせることによって、研究開発戦略のロードマップを策定することができる。
【0086】
例えば、スタートアップ(あるいはベンチャー)の事業者から大手企業等に対してアライアンスの提案を行う際に、客観的な比較優位性を提示する場合に利用することができる。
【0087】
例えば、新規事業の開発をすべきテーマにおいて、垂直統合と水平分業の観点から、補完すべき技術やノウハウに関する知見を有する人材を特定する場合に用いることができる。
【0088】
例えば、シーズ起点で起業を検討する際に、その起業を成功させることができる可能性の高い人材や組織を特定するといった、アントレプレナーの探索に用いることができる。
【0089】
例えば、技術系ベンチャー企業の中心的な技術者を特定し、そのうえで、その企業のデューデリジェンスを行う際に用いることができる。
【0090】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
上記実施の形態では、サーバ30が、投資の状況、事業者の形態やスタートアップのステージ等が含まれる財務情報D2が格納された第2データベース22にアクセスする場合を説明したが、財務情報D2とは別途でこれらの情報が含まれるスタートアップ情報が格納されたデータベースにアクセスするように構成してもよい。
【0092】
上記実施の形態では、抽出あるいは検出する特許因子が特許分類である場合を説明したが、要約情報あるいは用途情報を特許因子として抽出あるいは検出するものであってもよい。
【0093】
上記実施の形態では、サーバ30がサービス事業者2に配備される場合を説明したが、サーバ30はクラウド環境で実装されるサーバであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
2 サービス事業者
3 ユーザ
10 分析システム
21 第1データベース
22 第2データベース
30 サーバ
40 ユーザ端末
50 分析プログラム(プログラム)
51 因子分析処理部
52 クラスタリング処理部
53 出力部
D1 特許情報
D2 財務情報